説明

駐輪器

【課題】駐輪を容易に行うことができるとともに自転車の前輪の向きを所定方向に固定することができ、しかも、自転車が倒れにくく、さらには部品点数が少ない駐輪器を提供する。
【解決手段】駐輪器10は、合成樹脂により一体成形された基部11を有し、この基部11上には、手前側から入れられた自転車の前輪を保持してその向きを固定する複数の谷状保持部12が形成されている。各谷状保持部12は、互いに平行に、かつ、長尺状の基部11の長さ方向に対して傾斜した状態で形成されている。谷状保持部12における両壁部のうち奥側の壁部には、谷状保持部12の端部から奥側へ向かって延びるとともに谷状保持部12の底側へ向かって傾斜する案内面13が形成されている。また、同両壁部のうち案内面13と対向する側の壁部には、案内面13よりも高い規制面14が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自転車を駐輪させるための駐輪器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の駐輪器としては、例えば特許文献1に開示されるものがある。図12及び図13に示すように、この駐輪器50では、例えば合成樹脂からなる帯状体51の表側に、自転車の前輪52が嵌挿される複数の凹溝53が互いに平行に形成されている。
【特許文献1】実開平6−10089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記駐輪器50においては、自転車の前輪52を嵌挿させる各凹溝53は単純な形状である。このため、駐輪時に前輪52を凹溝53に入れにくく、駐輪に手間取り易い。
【0004】
これに対し、前輪52を入れやすくするために前記の形状において凹溝53の幅を前輪52の幅よりも十分に大きくしたとすると、前輪52の側面と、凹溝53の壁面との間に空間ができるため、前輪52が一定方向に向きにくくなり、駐輪された複数の自転車の整列状態が悪くなる。また、前輪がしっかりと保持されないため、例えば人が自転車に触れたときに、自転車が簡単に倒れてしまう問題がある。
【0005】
また、駐輪器50においては、ワイヤ錠54による前輪52の錠止のための係止用部材55が帯状体51とは別体で設けられているため、部品点数が多くなる。
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、駐輪を容易に行うことができるとともに自転車の前輪の向きを所定方向に固定することができ、しかも、自転車が倒れにくく、さらには部品点数が少なく構成が簡単な駐輪器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は、設置面上に載置される基部上に、その手前側から入れられた自転車の前輪を保持してその向きを固定する谷状保持部を手前側及び上方に開口するように形成し、同谷状保持部における両壁部のうち一方の壁部には、谷状保持部の端部から奥部へ向かって延びるとともに同谷状保持部側へ向かって傾斜する案内面を形成し、前記案内面と対向する側の壁部には、錠を取り付けるための取付部を形成したことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、前輪を谷状保持部に進入させようとするときに、前輪は案内面により谷状保持部側へ案内され、谷状保持部に容易に進入する。従って、自転車の駐輪が容易となる。また、自転車の前輪は、谷状保持部の両壁部により保持され、その向きが固定される。このため、前輪の倒れが規制され、自転車の倒れが防止される。さらに、ワイヤ錠等の錠により前輪を施錠することができるため、自転車の盗難を有効に防止することができる。また、基部と別体の部品を用いる必要がないため、部品点数が少なく構成が簡単になる。
【0008】
また、この発明は、前記案内面と対向する側の壁部には、同案内面よりも高い規制面を形成したことを特徴とする。
この構成によれば、谷状保持部に保持されている前輪が、案内面と対向する側へ倒れようすると、その側の壁部に形成されている規制面に当接してそれ以上の倒れが規制される。従って、自転車の倒れを有効に防止することができる。
【0009】
また、この発明は、複数の谷状保持部を、その延長方向が互いに平行となるように並設するとともに、同延長方向を傾斜させたことを特徴とする。
この構成によれば、各谷状保持部に保持された自転車の前輪は、互いに平行で、かつ、位置がずれた状態で配置される。このため、隣り合う自転車のハンドルが互いに干渉することが防止され、自転車のハンドルの幅よりも狭い間隔で自転車の駐輪が可能となる。
【0010】
また、この発明は、前記案内面を、前記谷状保持部における両壁部のうち奥側の壁部に形成したことを特徴とする。
この構成によれば、自転車の前輪を谷状保持部に進入させようとしたときに、前輪が案内面上に乗りやすい。このため、駐輪を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明の駐輪器によれば、駐輪を容易に行うことができるとともに自転車の前輪の向きを所定方向に固定することができ、しかも、自転車が倒れにくく、さらには部品点数が少なく構成が簡単であるという効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、この発明を具体化した一実施形態について、図1〜図9及び図11を参照して説明する。
図1及び図2に示す駐輪器10は、例えばアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、ポリアミド6(PA6)、ポリエチレン(PE)等の熱可塑性合成樹脂により一体成形されたものであって、中空形状に形成されるとともに全体として奥側から手前側に向かって緩やかに下降する傾斜状に形成されている。この駐輪器10は、地面等の設置面上に載置される長尺状の基部11の奥側にその全幅にわたって延びる山部11Aを有し、その山部11Aは補強を担っている。基部11の上面には前記山部11Aから手前側の斜め方向に向かって複数の山枝部11Bが並設状態で形成され、各山枝部11Bには、手前側及び上方に開口する谷状保持部12がそれぞれ形成されている。各谷状保持部12は、その延長方向が互いに平行となるように、かつ、その延長方向が基部11の長さ方向に対して傾斜されている。この傾斜角θは、80〜45度、好ましくは65度である。
【0013】
図1〜図4に示すように、谷状保持部12は、手前側又は上方から自転車の前輪Tを進入させることができるように形成されている。また、谷状保持部12は、その底側ほど幅がわずかに狭くなるように形成され、その底部の幅は、標準的な実用自転車のタイヤ幅よりも若干広く設定されている。この構成により、谷状保持部12は、前輪Tを保持してその向きを固定した状態で自転車を自立保持するようになっている。
【0014】
図1、図2、図3及び図5に示すように、谷状保持部12を形成する両壁部のうち、基部11の奥側の壁部上側には、谷状保持部12の端部から奥部へ向かって延びるとともに同谷状保持部12側へ向かって傾斜する案内面13が形成されている。
【0015】
また、谷状保持部12を形成する両壁部のうち、案内面13と対向する側の壁部、すなわち、手前側の壁部には、案内面13よりも高い規制面14が形成されている。規制面14は、谷状保持部12に保持された前輪Tの手前側への倒れを規制するようになっている。規制面14は、谷状保持部12の手前側の壁部上側から上方に突出する凸状に形成されている。また、規制面14側の壁部には、図示しないワイヤ錠等の錠を取り付けるための取付部としての取付孔15が形成されている。この取付孔15には、同取付孔15を内面及び周縁を保護するためのはと目18が設けられている。
【0016】
また、図1〜図4に示すように、基部11の手前側には、谷状保持部12内の前輪Tの後退を止めるための車輪止め部16が形成されている。この車輪止め部16は、谷状保持部12の底面の最も低い部分よりも高く形成されている。さらに、谷状保持部12の底部の位置には、基部11の下面に開口する水抜き孔17が形成されている。
【0017】
また、図1及び図2に示すように、谷状保持部12を有する各山枝部11Bの両側には、谷状保持部12よりも大きな幅(基部11の長さ方向における幅)を有する凹部20がそれぞれ形成されている。各凹部20の底面は、基部11の手前側から奥側に向かって高くなるように傾斜している。また、凹部20の底部には、基部11の下面に開口する複数の貫通孔21が形成されている。この各貫通孔21の周壁22により、基部11に剛性が付与されている。各貫通孔21は、水抜き孔の機能も有している。
【0018】
また、基部11の両端には、駐輪器10を地面等の設置面上に固定するアンカーを挿通させるための貫通孔23が形成されている。
さらに、基部11の山部11Aにおける一端上面には、基部11の内部に水や砂を注入するための注入口24が形成されている。この注入口24は、図示しない栓によって塞がれ、基部11の内部が密封される。
【0019】
この駐輪器10は、図2に示すように、単独で用いられても、また、図11に示すように、複数の駐輪器10がその長さ方向に連結された状態で用いられてもよい。このように複数の駐輪器10が連結された場合、各谷状保持部12は等ピッチで配列される。また、基部11の端部における半割状態の凹部20は、隣接する他の基部11の端部における半割状態の凹部20とともに1つの凹部20を形成する。これらの凹部20も等ピッチで配列される。
【0020】
なお、基部11において、各谷状保持部12及び各凹部20の内側と、底面とを除く表面には、滑り止めのためのしぼ加工が施されている。
さて、駐輪器10は、注入口24から基部11の内部に水又は砂が注入された状態で、所望の位置に設置され、貫通孔23に挿通されたアンカーにより固定される。
【0021】
自転車を駐輪器10に駐輪させようとするとき、いずれかの谷状保持部12に対し、手前側から前輪Tを進入させる。このようにすると、図7及び図8に二点鎖線で示すように、前輪Tは、谷状保持部12の案内面13によって谷状保持部12の底部側へ案内される。従って、前輪Tは、谷状保持部12に容易に進入する。
【0022】
谷状保持部12に進入した前輪Tは、前輪Tの幅よりも若干広い幅の底部を有する谷状保持部12によって両側から保持されてその向きが固定されるとともに、自転車全体が自立される。このとき、谷状保持部12の底面の最も低い部分よりも高く形成された車輪止め部16により、前輪Tの後退が規制されるため、前輪Tは所定位置に位置決めされる。この状態で、自転車のスタンドを立てればよい。そして、駐輪器10の各谷状保持部12に対して自転車を駐輪させた状態では、各自転車の前輪Tがいずれも同方向に向いて整列される。
【0023】
図9に示すように、各谷状保持部12に前輪Tを入れて複数の自転車が駐輪している状態では、各谷状保持部12の延長方向に沿ってハンドルHがθ=約65°傾斜することから、標準的な実用自転車の各ハンドルHは隣接する他の自転車のハンドルHと重ならない。
【0024】
さらに、谷状保持部12に入れられた前輪Tには、規制面14の取付孔15に挿通されたワイヤ錠が施錠される。
また、谷状保持部12よりも広い幅を有する凹部20には、図7に二点鎖線で示すように、自転車の前輪Tよりも広い幅を有する原動機付き自転車や自動二輪車の前輪Wを進入させることができる。このため、原動機付き自転車や自動二輪車をこの駐輪器10によって駐車させることができる。
【0025】
以上詳述したこの実施形態は、以下の各効果を有する。
(1) 谷状保持部12に形成した案内面13により、前輪Tを谷状保持部12内に案内するようにした。そして、谷状保持部12によって前輪Tを保持してその向きを固定するようにした。従って、駐輪を容易に行うことができるとともに自転車の前輪Tの向きを同方向に固定することができ、しかも、自転車を倒れることなく整列させることができる。
【0026】
(2) 長尺状の基部11に対し、複数の谷状保持部12を、その延長方向が互いに平行となるように、かつ、その延長方向が基部11の長さ方向に対してθ=65°傾斜するように形成した。このため、隣り合って駐輪された自転車のハンドルHは、互いに平行で、かつ、ずれた位置に配置され、互いに干渉することはない。従って、図9に示すように、標準的な実用自転車のハンドルHの幅よりも狭い間隔Pで複数の自転車が駐輪可能となり、狭いスペースを有効に利用できる。
【0027】
(3) 案内面13を、谷状保持部12における両壁部のうち奥側の壁部に、谷状保持部12の端部から奥側へ向かって延びるとともに谷状保持部12側へ傾斜するように形成した。このため、谷状保持部12に前輪Tを進入させようとしたときに、前輪Tが案内面13上に乗りやすくなり、案内面13に案内されて谷状保持部12に進入しやすくなる。従って、駐輪の容易さが向上する。
【0028】
(4) 谷状保持部12を有する山枝部11Bの両側に、谷状保持部12よりも広い幅を有する凹部20を形成した。このため、原動機付き自転車や自動二輪車の前輪Wを凹部20に進入させた状態で駐輪器10に駐車させることができる。
【0029】
(5) 谷状保持部12に隣接させて、ワイヤ錠等の錠を取り付けるための取付孔15を形成した。従って、取付孔15に取り付けたワイヤ錠により前輪Tを施錠することができ、駐輪させた自転車の盗難を有効に防止することができる。
【0030】
(6) 駐輪器10を、合成樹脂により内部を密封可能な中空状に成形したので軽量であり、運搬や設置を容易に行うことができる。一方、内部に水や砂を充填して密封することにより、安定した設置状態を維持することができる。
【0031】
(7) ワイヤ錠等の錠を取り付けるために、谷状保持部12の壁部に取付孔15を形成しただけであるため、部品点数が増えることはなく、構成が簡単である。
(8) 基部11が全体として長尺状をなしているため、複数の基部11を一直線状に並べることにより、多数の自転車を駐輪させることができる。
【0032】
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 底壁を持たない基部11を有する駐輪器10とする。
・ 基部11を中実体とする。
【0033】
・ ワイヤ錠を挿通させるための取付孔15を備えない構成とする。
・ 凹部20を備えない構成とする。
・ 複数の谷状保持部12を、その延長方向が基部11の長さ方向に直交するように形成する。
【0034】
・ 基部11の手前側及び上方に開口する複数の谷状保持部12と、基部11の奥側及び上方に開口する複数の谷状保持部12とを基部11に形成する。
・ 図10に示すように、凹部20を基部11の手前側から奥側まで突き抜けさせる。
【0035】
・ 平面視で例えば円形あるいは四角形の基部11に1つの谷状保持部12のみを形成した駐輪器10とする。
・ 基部を、例えばアルミニウム合金等の金属材料よりなる中空体又は中実体によって構成する。
【0036】
以下、上記実施形態から把握される技術的思想を記載する。
(1) 請求項3又は請求項4に記載の駐輪器において、前記谷状保持部の間には、同谷状保持部の幅よりも大きな幅を有する凹部を形成したことを特徴とする駐輪器。この構成によれば、原動機付き自転車や自動二輪車の前輪Wを凹部に進入させた状態で駐車させることができる。
【0037】
(2) 請求項1〜請求項4のいずれか一項、又は、上記技術的思想(1)に記載の駐輪器において、前記基部が中空状に形成されていることを特徴とする駐輪器。この構成によれば、駐輪器が軽量となり、運搬や設置を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】一実施形態の駐輪器を示す斜視図。
【図2】駐輪器を示す平面図。
【図3】図2におけるa−a線断面図。
【図4】図2におけるb−b線断面図。
【図5】図2におけるc−c線断面図。
【図6】図2におけるd−d線断面図。
【図7】駐輪器の一部を示す平面図。
【図8】駐輪器を示す縦断面図。
【図9】駐輪状態を示す駐輪器の模式図。
【図10】他の実施形態の駐輪器を示す斜視図。
【図11】一実施形態の駐輪器を連結して設置した状態を示す平面図。
【図12】従来の駐輪器を示す平面図。
【図13】同じく駐輪器を示す縦断面図。
【符号の説明】
【0039】
10…駐輪器、11…基部、12…谷状保持部、13…案内面、14…規制面、15…取付部としての取付孔、20…凹部、T…前輪。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置面上に載置される基部上に、その手前側から入れられた自転車の前輪を保持してその向きを固定する谷状保持部を手前側及び上方に開口するように形成し、
同谷状保持部における両壁部のうち一方の壁部には、谷状保持部の端部から奥部へ向かって延びるとともに同谷状保持部側へ向かって傾斜する案内面を形成し、
前記案内面と対向する側の壁部には、錠を取り付けるための取付部を形成したことを特徴とする駐輪器。
【請求項2】
前記案内面と対向する側の壁部には、同案内面よりも高い規制面を形成したことを特徴とする請求項1に記載の駐輪器。
【請求項3】
複数の谷状保持部を、その延長方向が互いに平行となるように並設するとともに、同延長方向を傾斜させたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の駐輪器。
【請求項4】
前記案内面を、前記谷状保持部における両壁部のうち奥側の壁部に形成したことを特徴とする請求項3に記載の駐輪器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−247309(P2008−247309A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93857(P2007−93857)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000207562)大日本プラスチックス株式会社 (23)