説明

駐輪装置

【課題】ベルトにより二輪車をロックし盗難防止などを図ることができ、また、二輪車の転倒を防止することもできる駐輪装置を提供すること。
【解決手段】二輪車の前輪9を前輪後部抱持手段6の底板6aの端部へ当てがい、進行方向へ押して、当該前輪前輪後部抱持手段6を回転させる。二輪車をさらに押し込むと、前輪前部抱持手段7と前輪後部抱持手段6とで二輪車8の車輪9が半径方向から抱え込まれる。ついで、前輪前部抱持手段7を支持している第2支持部2に設けられた係止手段20からベルト30を引き出して、二輪車8のハンドル部分に掛け止める。ベルト30を二輪車のハンドル部分に掛け止めると、ベルト30をそれ以上の引き出しができないようにロックされる。二輪車を出庫させる場合には、例えば料金精算装置に利用料金を入れると、上記ロックが解除されベルト30の引き出しが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二輪車や3輪車を駐輪させる駐輪装置に関し、特に、二輪車や3輪車の前輪のタイヤを保持するとともに、ハンドル付近をベルトで固定してロックするようにした駐輪装置に関する。
【背景技術】
【0002】
通常オートバイやスクータと言われる自動二輪車や3輪車(以下では3輪車も含めて二輪車という)のうち、特に、排気量の小さい小型二輪車や自転車は、重量が軽いことから持ち去りが容易である。そのため路上に駐輪させた小型二輪車は、ロックしていても盗難に会い易い。
一方、駅周辺や商店街周辺において路上駐輪させてある二輪車は、人や車両の通行の邪魔になるため、道路交通法による規制が強化されたことから、二輪車専用の駐輪場の需要が高まっている。
この駐輪場は、一定のスペースを確保し、管理する人員をおいて管理することが望ましいが、近年、とくに駅周辺や商店街周辺の開発が進み、需要のある駅周辺や商店街周辺では十分なスペースを確保することが難しい上に、管理する人員を配置すると、どうしても駐輪代が高くならざるを得ない。
そこで、狭いスペースであっても多数台の二輪車や3輪車を駐輪させておくことができ、しかも、管理する人員を常時配置しなくとも管理でき、安い駐輪料金で二輪車を安全に駐輪させておくことのできる駐輪場が求められている。
このような駐車場に設置する駐輪装置として、下記の特許文献1が提案する駐輪装置が公知である。
【0003】
特許文献1に記載された駐輪装置は、二輪車の前輪を保持するために、据え付けたフレームに固定された断面形状がく字状の前輪前部抱持手段と、同じくフレームに前輪前部抱持手段と離間対向させて回動可能に軸支された断面形状が同じく略く字状の前輪後部抱持手段とを備え、二輪車の駐輪時には二輪車を立てたままで押して、その前輪を前輪後部抱持手段と前輪前部抱持手段とで半径方向から抱持して二輪車を自立した状態で入庫保持すると共に、入庫状態でロックし、入庫状態を解く時にこのロック状態を解除できるように構成している。
【0004】
一方、上記省スペース化を図るため、車両を載置するためのパレットを立体的に配置し、該パレットを移動可能に構成した立体駐車場が広く用いられており、この立体駐車場を利用して、自転車や二輪車を駐輪できるようにしたものも提案されている(例えば特許文献2)。
しかし、立体駐車場に二輪車を駐輪させる場合、立体駐車場のパレットは上下左右に移動するので、二輪車をしっかり固定しておかないと、パレットが移動する際、二輪車が転倒する恐れがある。
例えば前記特許文献1に記載される従来の駐輪装置では、二輪車の前輪を一対の抱持手段で保持しているだけの構造であるため、少しの外力が加わるだけで転倒することが考えられる。このため、上記立体駐車場に二輪車を駐輪させる場合には、鎖あるい紐など二輪車が転倒しないように固定しておくことが望ましい。
二輪車の転倒を防止する手段を備えた駐輪装置としては、例えば特許文献3のものが知られている。特許文献3に記載のものは、二輪車のハンドル端部に係合させる係止体を備え、該係止体を昇降させることにより、二輪車を転倒しないように保持するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第WO2005/049417号
【特許文献2】特開平9−310525号公報
【特許文献2】特開2006− 9 6 1 5 0号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1が提案する駐輪装置は、二輪車の前輪を一対の抱持手段で保持している構造であるため、前輪のサイズによっては、ロックしても前輪を上方へ抜き取ることができる場合があり、防犯上難点があるという問題があった。
また、錠前を用いてロックする構成であるので、煩雑である上に、鍵を管理する管理者が必要となるといった問題もあった。
さらに、前述したように外力が加わると転倒する恐れがあるため、鎖あるい紐などの転倒防止手段を設けておくことが望まれる。特に前述した立体駐車場に適用する場合には、上記転倒防止手段を設けて二輪車が転倒しないように固定しておくことが必要である。
しかしながら、上記鎖や紐等を用いて二輪車が倒れないように固定する作業は煩雑であり、また、使用していないときに上記鎖や紐が下に垂れさがり、濡れたり汚れたりすることもあり、濡れたり汚れた鎖や紐を二輪車に取り付けることに抵抗を感じる場合もあった。
なお、前記特許文献3に示されるように、上から垂れさがった係止体に二輪車のハンドル端部を係合させて係止体を昇降させるように構成することも考えられるが、装置構成が比較的複雑となり装置が高価になるといった問題があった。
本発明は、前記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、ベルトにより二輪車を固定してロックできるようにし、錠前など用いることなく、比較的簡単な構成の装置で二輪車を盗難などから防止することができ、また、二輪車の転倒を防止することもできる駐輪装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を本発明においては、次のようにして解決する。
(1)前輪の進入退出方向に所定間隔を空けて設けられ、前輪の進入退出方向に共に回転し、前輪の後部を抱持する前輪後部抱持手段と、前輪の前部を抱持する前輪前部抱持手段と、 該前輪後部抱持手段と前輪前部抱持手段との間で、上記前輪の後部下方と前部上方を半径方向から抱持して、二輪車もしくは3輪車を駐輪させる駐輪装置において、上記前輪前部抱持手段を支持する支持部に上記駐輪装置に駐輪された二輪車もしくは3輪車の係止手段を設ける。
上記係止手段は、引き出し可能なループ状のベルトと、該ベルトの引き出しをロックするロック機構を備え、上記二輪車もしくは3輪車のハンドルもしくはハンドルの取付部分にループ状のベルトを掛け止める。掛け止めた後、該ベルトの引き出しは上記ロック機構によりロックされる。
(2)上記(1)において、上記係止手段に設けられたベルトは、べルト巻取り機構により両端が巻とられた状態で収納されており、上記ベルト巻取り機構は上記ベルトを巻き取る一対の巻き取り軸を有し、該巻取り軸はゼンマイ状のばねにより上記ベルトを巻き取る方向に付勢され、上記ベルトを引っ張ることにより、ベルトがループ状に引き出される。(3)上記(2)において、上記べルト巻取り機構の巻き取り軸には、該巻取り軸と一体で回転する歯車が設けられ、上記ロック機構は、上記歯車に係合離脱する爪部材を有し、該爪部材を上記歯車に係合させることにより、ベルトの引き出しをロックする。
(4)上記(3)において、上記ロック機構を駆動する駆動手段が設けられ、該駆動手段は、上記爪部材を歯車に係合離脱させることにより上記ロック機構のロック及びロック解除を行なう。
(5)上記(4)において、上記爪部材は回転可能に軸支され、上記駆動手段は、爪部材を回転させて上記歯車に係合離脱させるカム部材で構成される。
(6)上記(5)において、上記カム部材を手動で回転させる手段を設ける。
(7)上記(5)において、上記カム部材を駆動させるアクチュエータを設ける。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、以下の効果を得ることができる。
(1)前輪後部抱持手段と前輪前部抱持手段との間で、上記前輪の後部下方と前部上方を半径方向から抱持して、二輪車もしくは3輪車を駐輪させる駐輪装置において、引き出し可能なループ状のベルトと、該ベルトの引き出しをロックするロック機構を備えた係止手段を設け、二輪車もしくは三輪車のハンドルもしくはハンドルの取付部分にループ状のベルトを掛け止めて、二輪車もしくは三輪車を係止し、該ベルトの引き出しをロック機構でロックするようにしたので、錠前など用いることなく、比較的簡単な構成で二輪車もしくは三輪車を係止することができ、盗難などを防止することができる。
また、ベルトをハンドル等に掛け止めるにしたので、車輪サイズや車体サイズの異なる二輪車や3輪車であっても、確実に係止することができ、盗難などを防ぐことができる。(2)二輪車もしくは三輪車を係止するとき、ベルトを引き出すように構成したので、ベルトが下に垂れ下がって邪魔になったり、汚れたりぬれたりすることはない。このため、比較的見栄えがよく、また、汚れたりぬれたりしたベルトを車体に掛けることで車体が汚れることを心配することもない。
(3)前輪前部抱持手段を支持する支持部に係止手段を設け、該係止手段から引き出したベルトを二輪車もしくは三輪車ハンドル付近に掛け止めて、ベルトの引き出しをロックするようにしたので、外力が加わった際、二輪車や三輪車が転倒するのを防止することができる。
このため、本発明の駐輪装置を立体駐車場に適用しても、パレットの移動時に二輪車や三輪車が転倒することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の駐輪装置により二輪車を駐輪させる場合の概要を説明する図である。
【図2】本発明の実施形態の駐輪装置の構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態の駐輪装置に設けられる係止手段の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態の駐輪装置において、ベルトが収納された状態およびベルトか引き出された状態を示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態の係止手段のロック機構の構成を示す図である。
【図6】本発明の実施形態の駐輪装置のアクチュエータを示す図である。
【図7】移動式の立体駐車場に二輪車を駐輪させる場合の概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の駐輪装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は本発明の駐輪装置により二輪車を駐輪させる場合の概要を説明する図であり、図1(a)は、駐輪装置に二輪車を入庫する前の状態を示し、図1(b)は入庫させた状態を示すしている。なお、以下では自動二輪車を入庫駐車させる駐輪装置について説明するが、本発明の駐輪装置は、二輪車以外に3輪車の入庫駐車にも同様に適用可能である。
駐輪装置1が二輪車8の入庫を待つ入庫待機状態の時は、図1(a)に示すように前輪後部抱持手段6と前輪前部抱持手段7は、同図の線A、A’で示した入庫待機位置にある。
この入庫待機状態の駐輪装置1に二輪車8を入庫させるべく、図1(a)に示したように、その前輪を前輪後部抱持手段6の端部へ当てがい、進行方向へ押して、当該前輪(車輪)9を進行方向へ押すと、前輪後部抱持手段6は、同図(b)に示すように回転して、車輪9の進入を許容する。
【0011】
車輪9が進入すると、進入した二輪車8の前輪の前部の上部によって、前輪前部抱持手段7が押されて図中反時計方向へ回転し、この前輪前部抱持手段7と前輪後部抱持手段6とで、入庫のために進入した二輪車8の車輪9を半径方向から抱え込む。
この状態で、前輪前部抱持手段7を支持している第2支持部2に設けられた係止手段20からベルト30を引き出して、同図(b)に示すように、二輪車8のハンドル部分に掛け止める。ベルト30を二輪車のハンドル部分に掛け止めると、上記ベルト30は係止手段20に設けられたロック機構により、それ以上の引き出しができないようにロックされる。これにより、上記ロックを解除しない限り、二輪車8を駐輪装置1から引き外すことはできない。
このようにロックされた二輪車8を出庫させるには、例えば図示しない料金精算装置へ、料金の入金操作をすることで、図示しないアクチュエータ等により上記ロックが解除され、二輪車8の引き外しが可能となる。なお、盗難防止等を図るため、上記ベルト30は容易に切断されないように、例えば鋼線などで補強したものを用いるのが望ましい。
【0012】
以下、本実施形態の駐輪装置の具体的な構成について説明する。
図2は本実施形態の駐輪装置の構成を示す図であり、同図(a)は二輪車の進入方向Aに対して横方向から見た図(側面図)、同図(b)は車両進入方向(同図(a)のA方向)から見た図である。
本実施形態の駐輪装置1は、図2に示すように、第1支持部3と、この第1支持部3より斜め上方に立ち上げた第2支持部2とから成るフレーム5と、このフレーム5に回転可能に取り付けられた前輪後部抱持手段6と前輪前部抱持手段7とを備える。
前輪後部抱持手段6と前輪前部抱持手段7とは、二輪車の前輪の進入退出方向に所定間隔を開けて設けられる。前輪後部抱持手段6、前輪前部抱持手段7は、前述したように前輪の進入退出方向に共に回転して、それぞれ、前輪の後部、前輪の前部を抱持する。
【0013】
フレーム5の第1支持部3は、例えば、大型の二輪車8の前輪が出入りしても変形することがない剛性と材厚を有する金属板で構成され、地面Gにアンカーボルトなどを用いて据え付けられる。この第1支持部3の前側に位置する部分には、斜め上方向へ立ち上がる第2支持部2が取り付けられている。
第1支持部3には、前端部側に位置して上述した前輪後部抱持手段6が回動可能に設けられている。この前輪後部抱持手段6は、例えば、側面略クの字状に形成された底板6aと、該底板6aの両側部より立設された側板6b,6bとを有する。また、底板6aの屈曲部分に回転軸6cが設けられており、前輪が前輪後部抱持手段6に進入し、該底板6a上に載ったときに、該回転軸6cを軸として、該底板6aが回転するように構成されている。
底板6aの略中央部には、凹溝6dが設けられている。この凹溝6dは、例えば、原付自転車のような小型二輪車の前輪を駐輪させるためのものである。小型二輪車の車輪は、大型二輪車の車輪より幅が狭く、径が大きいものが多いために、この小型二輪車の車輪を駐輪させるのに凹溝6dを設けてある。凹溝6dの深さは、とくに限定はない。
【0014】
また、図2に示すように、第2支持部2には、上述した前輪前部抱持手段7が回転軸7cを軸として回動可能に取り付けられている。この前輪前部抱持手段7は、側面略クの字形状に折り曲げて成る底板7aと、この底板7aの両側部より立設されて前輪の両側部をそれぞれ覆うと共に、それぞれ外側に傾斜して形成されている両側板7b、7bとから成る。
底板7aの幅は、例えば、大型二輪車の前輪の幅より狭く、原付自転車のような小型二輪車の車輪の幅より若干広い寸法に形成されている
【0015】
第2支持部2の上端部近くには、ベルトを収納している係止手段20が設けられる。また、第2支持部2の背部のおおい板4の内部には、上記係止手段20のロック/ロック解除を行うアクチュエータ40が設けられている。アクチュエータ40は、後述するように形状記憶合金を備え、この形状記憶合金に電流を流して温度を上昇させ、形状記憶合金を変形させることにより、ロック機構を駆動する。
なお、図2では第2支持部2、アクチュエータ40が見えるように、第2支持部2、おおい板4を切り欠いて示している。
図3は上記係止手段の構成を示す図であり、同図(a)は係止手段を図3(b)のC方向(図2のB方向)から見た図、(b)は同図(a)のD−D断面図である。図4はベルトが収納された状態およびを引き出された状態を示す説明図であり、図3のE−E断面図である。また、図5はロック機構の構成を示す図であり図3(a)のF方向から見た図である。
図3において、22a,22bは、係止手段のフレーム21に回転可能に取り付けられたベルト巻取り軸であり、前記図1に示した二輪車のハンドル部分に掛け止めるベルトが巻き付けられる。なお、同図では、ベルト30が2点鎖線で示されている。
【0016】
フレーム21には、図3(b)に示す三角形のアングルであるベルト案内部材23a,23bが軸23c,23dを軸として回転可能に取り付けられている。ベルト30の両端部は、それぞれ上記ベルト巻取り軸22a,22bに固定され、ベルト巻取り軸22a,22bに略等しい巻数で巻き付けられている。ベルト巻取り軸22a,22bに巻き付けられたベルトは、上記三角形のベルト案内部材23の上記回転軸23c,23dに対向する辺23e,23fに掛けられて折り返され、前記図2(b)に示したように第2支持部2のA側(車両進入方向側)に設けれた一対の穴30aから第2支持部2の表側に引き出されている。
ベルト巻取り軸22a,22bの一方端はフレーム21を貫通して突出し、端部に歯車24a,24bが取り付けられている。歯車24a,24bは噛み合っており、一方の巻取り軸が回転すると、他方の巻とり軸は反対方向に回転する。
【0017】
25はロック機構として機能する爪部材であり、後述するように上記歯車24bと係合することにより、歯車の回転を止め、ベルトの引き出しをロックする。26は上記爪部材25を駆動するカムであり、図3(b)では省略されている。
また、フレーム21には、上記ベルト巻取り軸22a,22bをベルト巻取り方向に回転させるためのゼンマイ機構27が取り付けられている。
ベルト巻取り軸22bの他方端はフレーム21を貫通して突出し、上記ゼンマイ機構27から引く出された巻取りばね27aの端部が固定され、巻取りばね27aによりベルト巻取り軸22a,22bはベルト巻取り方向に付勢されている。ベルト巻取り軸22bの端部には、巻取りばね27aが軸22bからはずれるのを抑えるリブ27bが設けられている。
そして、ベルト30を引っ張って引き出すと、ベルト巻取り軸22a,22bが回転し、ゼンマイ機構27から引き出された巻取りばね27aがベルト巻取り軸22bの上記突出した部分に巻きつき、ベルト巻取り軸22a,22bをベルト巻取り方向に回転させる力が作用する。
【0018】
図4(a)はベルト30がベルト巻取り軸22a,22bに巻き付けられてい状態を示し、この状態では、上記ゼンマイ機構27によりベルト巻取り軸22a,22bはベルト巻取り方向に付勢され、ベルト30は弛みない状態で、第2支持部2の表側に出ている。
この状態から、ベルト30の第2支持部2の表側に引き出された部分を引っ張ると、ベルト巻取り軸22a,22bが回転し、図4(b)に示すようにベルトは引き出される。またベルト30には前記ゼンマイ機構27によりベルト巻取り方向の力が作用する。
ここで、前述したように軸23c,23dを軸として回転可能に取り付けられたベルト案内部材23a,23bが設けられ、ベルト30は、このベルト案内部材23a,bの辺23e,fに掛けられて折り返されている。このため、ベルト30を多少上下方向に移動させても、上記ベルト案内部材23a,bが軸23c,dを軸として回転するので、ベルト30を滑らかに引き出すことができる。 このように、ベルト30を引っ張ると、ベルト30は両端が上記係止手段20に係止された状態でループ状に引き出され、駐輪した二輪車のハンドル部分に掛け止めることができる。係止手段20には次に説明するようにベルトの引き出しをロックするロック機構が設けられ、引き出されたベルト30はそれ以上引き出せないようにロックすることができる。
なお、盗難防止等を図るため、前述したように上記ベルト30は容易に切断されないように鋼線などで補強したものを用いるのが望ましく、例えば、図4(c)の断面図に示すように、ベルト30の両側部を鋼線30bで補強するのが望ましい。
【0019】
前述したようにベルト巻取り軸22a,22bに取り付けられた歯車24a,24bは噛み合っており、ベルト30が引き出されると、該歯車24a,24bが回転する。
この歯車24a,24bの近傍には、図5に示すように、軸25aを軸として回転する爪部材25が設けられる。また、この爪部材25を駆動するための駆動手段であるカム26が軸26aを軸として回転可能に設けられている。
爪部材25は図示しないばねにより図5の矢印方向に回転するように付勢され、カム26が図5(a)の回転位置にあり、カムの凸部Aが爪部材25を押圧しているときは、爪部材25の爪部25bは歯車24bとは係合しない。このため、歯車24a,24bは自由に回転することができる。
一方、カム26が回転し、図5(b)の状態になると、爪部材25はカム26からの押圧から解除されることで回転し、爪部材25の爪部25bは歯車24bに食い込むようになる。このため、歯車24a,24bの回転はロックされる。なお、上記爪部材25の爪部25bの形状を、ベルト引き出し方向の回転は阻止するが、ベルト巻取り方向の回転は阻止しないような形状としてもよい。
【0020】
上記カム26に設けられたピン26bとその軸26aに取り付けたピン26cとの間には、引張りコイルスプリングから成るひっぱりばね26dが張設されている。そして、ピン26cの位置は軸26aに対してセンターをずらせてあるので、カム26は左右いずれの方向へ回動させられても、一度回転させられた後は、上記ひっぱりばね26dにより、その回動位置が保持される。
上記カム26には、その軸26aを挟んだ両側に一対のワイヤ取り付け部26eが設けられ、ここに図3に示したアクチュエータ40に駆動される一対のワイヤ41a,43aが接続される。このワイヤ41a,43aを駆動することにより、上記カム26を回転させることができ、カム26が駆動されると、上述したようにカム26は回転位置を保持する。
なお、カム26は必ずしもアクチュエータで駆動する必要はなく、上記カム26を手動で動かせるようにしてもよい。停電などによりアクチュエータが動作しない場合も考慮すると、アクチュエータで駆動するように構成した場合でも、上記カム26を手動で操作できるようにしておくことが望ましい。
そのため、例えば、上記カム26を手動で回転させる機構を設け、カム26を回転させるための操作手段を例えば第2支持部2の上端部に設ける。なお、有料駐車場などに適用する場合には、通常は鍵をかけてカム26を手動で操作できないようにしておき、停電やアクチュエータの故障などでロックを解除する必要がある事態になったとき、解錠して手動で上記操作手段によりロックを解除できるようにしてもよい。
【0021】
図6は、駐輪装置のアクチュエータを示す図である。
図6(a)は、アクチュエータ40の正面図を示し、図6(b)は、アクチュエータ40の側面図を示す。
図6に示すように、アクチュエータ40は、前記カム26を図5(b)の状態(ロック状態)になるように回転させる第1アクチュエータ41と、前記カム26を図5(a)の状態(ロック解除状態)になるように回転させる第2アクチュエータ43を有する。
カム26を図5(b)の状態(ロック状態)になるように回転させるワイヤ41aは、第1アクチュエータ41の第1スライドドラム41bに取付具41cを介して取り付けられている。
第1スライドドラム41bは、その外周に懸架した第1形状記憶合金線41dを介して例えば第1端子41eから吊り下げられており、第1スライドドラム41bと第1形状記憶合金線41dと第1端子41eとで第1アクチュエータ41を構成している。
第1スライドドラム41bは取付板44へ上下方向へ摺動可能に取り付けられている。第1スライドドラム41bを取付板44へ摺動可能に取り付ける手段は、第1スライドドラム41bの中心部に設けたガイド長孔41fと、このガイド長孔41fへ挿入係止されると共に、取付板44に取り付けた一対のガイドピン41gとで構成されている。
前記カム26をロック状態になるように回転させる場合、上記第1端子41eから第1形状記憶合金線41dに電流を流して第1形状記憶合金線41dの温度を上昇させ、第1形状記憶合金線41dを変形させ、第1スライドドラム41bを上方向に摺動させる。
【0022】
なお、図6に示したように、第1スライドドラム41bの左上に設けられているものは、第1形状記憶合金線41dに流した電流を動作終了後、直ちに遮断するためのマイクロスイッチ42aである。
即ち、第1形状記憶合金線41dに電流が流れると、加熱されて瞬時に収縮するので、第1スライドドラム41bは上方へ摺動する。すると、この第1スライドドラム41bの左上外周端がマイクロスイッチ42aの作動片42cに接触してこれを押すので、このマイクロスイッチ42aがONされ、第1形状記憶合金線41dに流れている電流を遮断することになる。
このことによって、第1形状記憶合金線41dに流れる電流を10分の1秒程度にして節約することができる。なお、第1スライドドラム41bが上動すると、この第1スライドドラム41bに懸架されたワイヤー41aを牽引して、カム26(図5参照)を回動動作させる。そしてこのようにして動作させられたカム26は、前記したように引っ張りばね26dによってその回動位置を保持するので、動作後ワイヤー41aがマイクロスイッチ42aの動作により弛んでもそれだけで元位置へは自動的に戻ることはない。
【0023】
前記カム26を図5(a)の状態(ロック解除状態)になるように回転させるワイヤ43aは、第2アクチュエータ43の第1スライドドラム43bに取付具43cを介して取り付けられている。
第2アクチュエータ43の構成は、第1アクチュエータ41と同様であり、第2スライドドラム43bは、その外周に懸架した第2形状記憶合金線43dを介して例えば第2端子43eから吊り下げられており、第2スライドドラム43bと第2形状記憶合金線41dと第2端子43eとで第2アクチュエータ43を構成している。
第2スライドドラム43bは、第1アクチュエータ41と同様、ガイド長孔43fと、このガイド長孔43fへ挿入係止された一対のガイドピン43gにより、取付板44へ上下方向へ摺動可能に取り付けられている。
前記カム26をロック解除状態になるように回転させる場合、上記第2端子43eから、第2形状記憶合金線43dに電流を流して第3形状記憶合金線43dの温度を上昇させ、第3形状記憶合金線43dを変形させ、第2スライドドラム43bを上方向に摺動させる。
【0024】
第1アクチュエータ41と同様、第2形状記憶合金線43dに流した電流を動作終了後、直ちに遮断するためのマイクロスイッチ42bが設けられ、第2スライドドラム43bが上方へ摺動すると、第2スライドドラム43bの左上外周端がマイクロスイッチ42bの作動片42dに接触して、第2形状記憶合金線43dに流れている電流を遮断する。これによって、第2形状記憶合金線43dに流れる電流を10分の1秒程度にすることができる。
なお、第2スライドドラム43bが上動すると、この第2スライドドラム43bに懸架されたワイヤー43aを牽引して、カム26(図5参照)を回動動作させ、前述したようにカム26はその回動位置を保持し、動作後ワイヤー43aがマイクロスイッチ42bの動作により弛んでもそれだけで元位置へは自動的に戻ることはない。
【0025】
上記ワイヤ41a,43aの外周にはワイヤー管41h,43hが設けられ、ワイヤー管41h,43hの一端は取付板44に固定され、他端は図2に示した係止手段の近傍に設けられた取付板(図示せず)に固定されている。
なお、図示していないが、第1アクチュエータ41と第2アクチュエータ43に電流を流すための起動回路(アクチュエータ起動回路)には、異なる極性の電流を流す電源回路と、該電源回路に接続された2個のダイオードを逆極性に接続した回路が設けられている。そして、それぞれのダイオードに直列に前記端子41e、43eの一方の端子が接続され、端子41e、43eの他方の端子は接地されている。
このため、上記電源回路から入力させる電流の極性を変えることにより、第1アクチュエータ41と第2アクチュエータ43を交互に動作させることができる。
【0026】
本発明の駐輪装置は、多数台の二輪車を駐輪できる時間貸しの有料の駐輪場に設置して用いることもできるが、盗難防止用に、自宅あるいは会社や工場等の有料でない駐輪場に設置して用いることもできる。
特に、本発明の駐輪装置は、ベルトにより二輪車を係止するようにしているので二輪車の転倒を防ぐことができる。このため、図7に示すように車両を搭載したパレット51が上下左右に移動する立体駐車場50において、該パレット51に、本発明の駐輪装置を設置して二輪車を駐輪させるようにすれば、二輪車の転倒を防ぐことができ特に効果的である。
【0027】
有料駐輪場に設置する場合には、例えば、駐輪場に本発明の駐輪装置を例えば複数設置するとともに、この各駐輪装置1を制御する料金精算装置を設け、この料金精算装置と各駐輪装置間に信号を伝送するためケーブルを設ける。
そして、例えば有料駐輪場では、利用者は次のようにして二輪車を駐輪させる。
すなわち、図1(a)に示したように、二輪車の前輪9を前輪後部抱持手段6の底板6aの端部へ当てがい、進行方向へ押して、当該前輪前輪後部抱持手段6を回転させる。二輪車をさらに押し込むと、図1(b)に示すように、前輪前部抱持手段7と前輪後部抱持手段6とで二輪車8の車輪9が半径方向から抱え込まれる。
ついで、図1(b)に示すように、前輪前部抱持手段7を支持している第2支持部2に設けられた係止手段20からベルト30を引き出して、二輪車8のハンドル部分に掛け止める。
【0028】
ベルト30を二輪車のハンドル部分に掛け止めると、例えば料金精算装置の制御部は、掛け止めてから所定時間経過後に、ロック信号を送出する。これにより、係止手段20は、ベルト30をそれ以上の引き出しができないようにロックする。
すなわち、図6に示した第1アクチュエータ41の第1形状記憶合金線41dに電流を流して第1スライドドラム41bを上方向に摺動させ、ワイヤ41aを引っ張る。これにより、前記カム26が図5(b)のように回動し、爪部材26の爪部26bが歯車24bと係合し、歯車24a,24bが回転しないようにロックされる。
歯車24a,24bの回転が一度ロックされると、アクチュエータ41に対する通電をOFFさせても、カム26は前記したようにその状態に保持され、ロック状態は維持されている。
したがって、上記ロックを解除しない限り、二輪車8を駐輪装置1から引き外すことはできない。
【0029】
二輪車を出庫させる場合には、上記料金精算装置に利用料金を入れる。これにより、料金精算装置の制御部は、上記ロック機構のロックを解除する。
すなわち、料金の入金操作に応じて、第2アクチュエータ43の第2形状記憶合金線43dに電流を流して第2スライドドラム43bを上方向に摺動させ、ワイヤ43aを引っ張る。これにより、前記カム26が図5(a)のように回動し、爪部材26の爪部26bと歯車24bとの係合が解除され、ベルトの引き出しが可能となる。
そこで、ベルト30を引き出して、自動二輪車のハンドル部分からベルトをはずす。
なお、前述したように、歯車24a,24bの回転が一度ロックされると、アクチュエータ41に対する通電をOFFさせても、カム26は前記したようにその状態に保持され、ロック解除状態は維持される。このため、上記カム26をロック状態に駆動しない限り、ベルト30を自由に引き出すことができる。
【符号の説明】
【0030】
1 駐輪装置
2 第2支持部
3 第1支持部
4 覆い板
5 フレーム
6 前輪後部抱持手段
6a、7a 底板
6b、7b 両側板
6d 凹溝
7 前輪前部抱持手段
8 二輪車
9 車輪
20 係止手段
21 フレーム
22a,22b ベルト巻取り軸
23a,23b 案内部材
24a,24b 歯車
25 爪部材
25a 回転軸
25b 爪部
26 カム
26a 回転軸
26b,26c ピン
26d 引っ張りばね
27 ゼンマイ機構
27a 巻取りばね
27b リブ
30 ベルト
30a 穴
30b 鋼線
40 アクチュエータ
41a、43a ワイヤ
41,43 第1、第2アクチュエータ
41b,43b スライドドラム
41c,43c 取付具
41d,43d 形状記憶合金線
41e,43e 端子
41f,43f ガイド長孔
41g,43g ガイドピン
42a,42b マイクロスイッチ
42c,42d 作動片
41h,43h ワイヤー管
44 取付板
50 立体駐車場
51 パレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪の進入退出方向に所定間隔を空けて設けられ、前輪の進入退出方向に共に回転し、前輪の後部を抱持する前輪後部抱持手段と、前輪の前部を抱持する前輪前部抱持手段と、 該前輪後部抱持手段と前輪前部抱持手段との間で、上記前輪の後部下方と前部上方を半径方向から抱持して、二輪車もしくは3輪車を駐輪させる駐輪装置であって、
上記前輪前部抱持手段を支持する支持部には、上記駐輪装置に駐輪された二輪車もしくは3輪車の係止手段が設けられ、
上記係止手段は、上記二輪車もしくは3輪車のハンドルもしくはハンドルの取付部分に掛け止められる引き出し可能なループ状のベルトと、該ベルトの引き出しをロックするロック機構を備えている
ことを特徴とする駐輪装置。
【請求項2】
上記係止手段に設けられたベルトは、べルト巻取り機構により両端が巻とられた状態で収納されており、上記ベルト巻取り機構は上記ベルトを巻き取る一対の巻き取り軸を有し、該巻取り軸はゼンマイ状のばねにより上記ベルトを巻き取る方向に付勢され、
上記ベルトを引っ張ることにより、ベルトがループ状に引き出される
ことを特徴とする請求項1に記載の駐輪装置。
【請求項3】
上記べルト巻取り機構の巻き取り軸には、該巻取り軸と一体で回転する歯車が設けられ、上記ロック機構は、上記歯車に係合離脱する爪部材を有する
ことを特徴とする、請求項2に記載の駐輪装置。
【請求項4】
上記ロック機構を駆動する駆動手段が設けられ、
上記駆動手段は、上記爪部材を歯車に係合離脱させることにより上記ロック機構のロック及びロック解除を行なう
ことを特徴とする請求項3に記載の駐輪装置。
【請求項5】
上記爪部材は回転可能に軸支され、上記駆動手段は、爪部材を回転させて上記歯車に係合離脱させるカム部材である
ことを特徴とする請求項4に記載の駐輪装置。
【請求項6】
上記カム部材を手動で回転させる手段が設けられている
ことを特徴とする請求項5に記載の駐輪装置。
【請求項7】
上記カム部材を駆動させるアクチュエータが設けられている
ことを特徴とする請求項5に記載の駐輪装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−264859(P2010−264859A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−117403(P2009−117403)
【出願日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(500577932)株式会社庄内クリエート工業 (8)