骨伝導イヤホン
【課題】 音声情報の再現性に優れると共に、耳甲介腔の窪みに挿入し易くかつ装着後の支持安定性に優れた骨伝導イヤホンを提供する。
【解決手段】 骨伝導振動部2と正面側凸部3と背面側凸部4を備え、骨伝導振動部2の長さ方向の一端部側2aから耳甲介腔12の窪みに挿入し、骨伝導振動部2の幅方向の下部2eが耳甲介腔12の窪みの底部12eに密着するように回転させて耳甲介腔12の窪みに装着した状態で、骨伝導振動部2の長さ方向の一端部側2aが耳珠13及び耳甲介腔12の窪みの壁部12dに圧接され、骨伝導振動部2の長さ方向の他端部側2bが対珠14及び耳甲介腔12の窪みの壁部12dに圧接され、正面側凸部3が耳珠13に圧接されると共に、背面側凸部4が耳甲介腔12の窪みの壁部12dにおける外耳道15の入口周辺に圧接されるように構成した。
【解決手段】 骨伝導振動部2と正面側凸部3と背面側凸部4を備え、骨伝導振動部2の長さ方向の一端部側2aから耳甲介腔12の窪みに挿入し、骨伝導振動部2の幅方向の下部2eが耳甲介腔12の窪みの底部12eに密着するように回転させて耳甲介腔12の窪みに装着した状態で、骨伝導振動部2の長さ方向の一端部側2aが耳珠13及び耳甲介腔12の窪みの壁部12dに圧接され、骨伝導振動部2の長さ方向の他端部側2bが対珠14及び耳甲介腔12の窪みの壁部12dに圧接され、正面側凸部3が耳珠13に圧接されると共に、背面側凸部4が耳甲介腔12の窪みの壁部12dにおける外耳道15の入口周辺に圧接されるように構成した。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の骨組織を介して音声振動を内耳へ伝達可能な骨伝導イヤホンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、骨伝導イヤホンは、人体の中耳伝音系を介さずに、骨組織を介して音声振動を内耳へ伝達するように構成されている。
【0003】
従来のこのような骨伝導イヤホンとしては、音声振動を発生させる骨伝導スピーカ部と、前記骨伝導スピーカ部から発生した音声振動を伝達する振動伝達部とからなる受話装置であって、前記骨伝導スピーカ部と前記振動伝達部が支持部を介して機械的に結合され、前記振動伝達部が耳甲介腔の窪みに納まりかつ耳珠と対珠に圧接して装着されるように構成された受話装置(例えば、特許文献1参照。)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−103989号公報(請求項1、図1、図2、等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような受話装置においては、前記振動伝達部に前記支持部を介して結合された前記骨伝導スピーカ部が耳珠や対珠に圧接して装着されるわけではなく、前記骨伝導スピーカ部から発生した音声振動にエネルギー損失が生じるので、音声情報の再現性が良くないという問題点がある。
【0006】
また、前記振動伝達部は、耳甲介腔の窪みに納まるものの、円板状に形成されているので、耳甲介腔の窪みに挿入しにくいという問題点がある。更に、前記振動伝達部は、耳甲介腔の窪みに納まりかつ耳珠と対珠に圧接して装着されるものの、耳珠と対珠に強く圧接されるわけではなく、音声振動によって緩み易い(ずれ易い)ので、装着後の支持安定性が良くないという問題点がある。
【0007】
本発明は、以上のような事情や問題点に鑑みてなされたものであり、音声情報の再現性に優れると共に、耳甲介腔の窪みに挿入し易くかつ装着後の支持安定性に優れた骨伝導イヤホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための第1の発明は、楕円体状に形成されかつ音声振動を発生させる骨伝導振動部と、前記骨伝導振動部の長さ方向の一端部側かつ厚さ方向の正面側に突設された正面側凸部と、前記骨伝導振動部の長さ方向の一端部側かつ厚さ方向の背面側に突設された背面側凸部、を備え、前記骨伝導振動部の長さ方向の一端部側から耳甲介腔の窪みに挿入し、前記骨伝導振動部の幅方向の下部が前記耳甲介腔の窪みの底部に密着するように回転させて前記耳甲介腔の窪みに装着した状態で、前記骨伝導振動部の長さ方向の一端部側が耳珠及び前記耳甲介腔の窪みの壁部に圧接され、前記骨伝導振動部の長さ方向の他端部側が対珠及び前記耳甲介腔の窪みの壁部に圧接され、前記正面側凸部が前記耳珠に圧接されると共に、前記背面側凸部が前記耳甲介腔の窪みの壁部における外耳道の入口周辺に圧接されるように構成したものである。
【0009】
第2の発明は、前記骨伝導振動部が、被覆部と、前記被覆部に埋設された圧電セラミック振動子を備え、前記被覆部と前記正面側凸部と前記背面側凸部が柔軟性部材で構成されると共に、前記被覆部と前記正面側凸部と前記背面側凸部を一体成形したものである。
【0010】
第3の発明は、前記骨伝導振動部の厚さ方向の正面側につまみ部を突設したものである。
【0011】
第4の発明は、前記つまみ部を前記骨伝導振動部の長さ方向に沿って延びるように設け、前記耳甲介腔の窪みに装着した状態で、前記つまみ部が前記対珠に圧接されるように構成したものである。
【0012】
第5の発明は、前記骨伝導振動部が、被覆部と、前記被覆部に埋設された骨伝導振動子を備え、前記被覆部と前記正面側凸部と前記背面側凸部と前記つまみ部が柔軟性部材で構成されると共に、前記被覆部と前記正面側凸部と前記背面側凸部と前記つまみ部を一体成形したものである。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によれば、音声振動を発生させる骨伝導振動部が耳珠と耳甲介腔の窪みの壁部と対珠に圧接され、骨伝導振動部から発生した音声振動にエネルギー損失が生じにくいので、音声情報の再現性に優れている。また、楕円体状に形成された骨伝導振動部の長さ方向の一端部側から耳甲介腔の窪みに挿入して回転させればよく、骨伝導振動部の長さ方向の寸法よりも幅方向の寸法の方が小さいので、耳甲介腔の窪みに挿入し易い。更に、耳甲介腔の窪みに装着した状態においては、骨伝導振動部の長さ方向の一端部側が耳珠及び耳甲介腔の窪みの壁部に圧接され、骨伝導振動部の長さ方向の他端部側が対珠及び耳甲介腔の窪みの壁部に圧接され、正面側凸部が耳珠に圧接されると共に、背面側凸部が耳甲介腔の窪みの壁部における外耳道の入口周辺に圧接され、音声振動によって緩みにくい(ずれにくい)ので、装着後の支持安定性に優れている。
【0014】
第2の発明によれば、骨伝導振動子として圧電セラミック振動子を採用しているので、小型化、軽量化、及び製造コストの低減化を図り易い。また、骨伝導振動部の被覆部と正面側凸部と背面側凸部を柔軟性部材で構成して一体成形しているので、耳甲介腔の窪みへのフィット感が良好であると共に、製造し易い。
【0015】
第3の発明によれば、骨伝導振動部の厚さ方向の正面側に突設されたつまみ部をつまむことができるので、耳甲介腔の窪みに装着する際に回転させ易い。
【0016】
第4の発明によれば、つまみ部を骨伝導振動部の長さ方向に沿って延びるように設け、耳甲介腔の窪みに装着した状態で、つまみ部が対珠に圧接されるように構成しているので、耳甲介腔の窪みに装着する際により回転させ易いと共に、装着後の支持安定性をより向上できる。
【0017】
第5の発明によれば、第2の発明と同様、骨伝導振動子として圧電セラミック振動子を採用しているので、小型化、軽量化、及び製造コストの低減化を図り易い。また、骨伝導振動部の被覆部と正面側凸部と背面側凸部とつまみ部を柔軟性部材で構成して一体成形しているので、耳甲介腔の窪みへのフィット感が良好であると共に、製造し易い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態に係る骨伝導イヤホンの正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】骨伝導イヤホンの右側面図である。
【図4】骨伝導イヤホンを耳甲介腔の窪みに挿入する様子を示す説明図である。
【図5】骨伝導イヤホンを回転させる様子を示す説明図である。
【図6】骨伝導イヤホンを耳甲介腔の窪みに装着した状態を示す説明図である。
【図7】骨伝導イヤホンを耳甲介腔の窪みに装着した状態を示す要部拡大断面図である。
【図8】第2実施形態に係る骨伝導イヤホンの正面図である。
【図9】骨伝導イヤホンの平面図である。
【図10】骨伝導イヤホンを回転させる様子を示す説明図である。
【図11】骨伝導イヤホンを耳甲介腔の窪みに装着した状態を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
第1実施形態に係る骨伝導イヤホン1は、図1〜図3に示すように、骨伝導振動部2と正面側凸部3と背面側凸部4を備えている。
【0020】
骨伝導振動部2は、楕円体状に形成されており、音声振動を発生可能である。また、骨伝導振動部2は、図2に示すように、柔軟性部材で構成された被覆部5と、被覆部5に埋設された骨伝導振動子としての圧電セラミック振動子6を備えている。なお、図示を省略しているが、圧電セラミック振動子6には、被覆部5を貫通するように配線コードが電気的に接続されている。
【0021】
柔軟性部材としては、シリコーンゴム等のゴム、熱可塑性エラストマー等のエラストマー等が挙げられる。柔軟性部材のゴム硬度(JIS K 6253)としては、4〜5が好適である。これに対し、柔軟性部材のゴム硬度が4未満の場合には、圧電セラミック振動子6等の骨伝導振動子から発生した音声振動が伝達されにくくなると共に、強度の低下に伴って破損し易くなる傾向にある。また、柔軟性部材のゴム硬度が5を超える場合には、人体の耳介(耳)における耳甲介腔の窪みへのフィット感が悪くなる傾向にある。
【0022】
圧電セラミック振動子6は、図1〜図3に示すように、正面視形状が楕円状の板状に形成されている。圧電セラミック振動子6のタイプとしては、ユニモルフ、バイモルフ、積層型等が挙げられる。圧電セラミック振動子6の形状は、特に限定されるものではなく、正面視形状が長円形状の板状、正面視形状が卵状の板状、正面視形状が多角形状の板状や、棒状、楕円体状等でもよい。音声振動を発生可能な骨伝導振動子の種類も、特に限定されるものではないが、本実施形態のような圧電セラミック振動子6を採用すれば、小型化、軽量化、及び製造コストの低減化を図り易いという利点がある。
【0023】
正面側凸部3は、骨伝導振動部2の長さ方向(図1の左右方向、図2の左右方向。以下同じ。)の一端部側2aかつ厚さ方向(図2の上下方向、図3の左右方向。以下同じ。)の正面側2cに突設されている。背面側凸部4は、骨伝導振動部2の長さ方向の一端部側2aかつ厚さ方向の背面側2dに突設されている。正面側凸部3や背面側凸部4は、柔軟性部材で構成されており、骨伝導振動部2の被覆部5と一体成形されている。正面側凸部3や背面側凸部4の断面形状は、円弧状に限定されるものではなく、適宜変更可能である。このように、骨伝導振動部2の被覆部5と正面側凸部3と背面側凸部4を柔軟性部材で構成して一体成形すれば、耳甲介腔の窪みへのフィット感が良好であると共に、製造し易いという利点がある。
【0024】
図4〜図7に示すように、上記のように構成された骨伝導イヤホン1を人体の耳介11における耳甲介腔12の窪みに装着する際に、骨伝導振動部2の長さ方向の一端部側2aから耳甲介腔12の窪みに挿入し、骨伝導振動部2の幅方向(図1の上下方向、図3の上下方向。以下同じ。)の下部2eが耳甲介腔12の窪みの底部12eに密着するように回転させれば、骨伝導振動部2の長さ方向の一端部側2aが耳珠13及び耳甲介腔12の窪みの壁部12dに圧接され、骨伝導振動部2の長さ方向の他端部側2bが対珠14及び耳甲介腔12の窪みの壁部12dに圧接され、正面側凸部3が耳珠13に圧接されると共に、背面側凸部4が耳甲介腔12の窪みの壁部12dにおける外耳道15の入口周辺に圧接される。
【0025】
このように、骨伝導イヤホン1においては、音声振動を発生させる骨伝導振動部2が耳珠13と耳甲介腔12の窪みの壁部12dと対珠14に圧接され、骨伝導振動部2から発生した音声振動にエネルギー損失が生じにくいので、音声情報の再現性に優れるという利点がある。また、楕円体状に形成された骨伝導振動部2の長さ方向の一端部側2aから耳甲介腔12の窪みに挿入して回転させればよく、骨伝導振動部2の長さ方向の寸法よりも幅方向の寸法の方が小さいので、耳甲介腔12の窪みに挿入し易いという利点がある。更に、耳甲介腔12の窪みに装着した状態においては、骨伝導振動部2の長さ方向の一端部側2aが耳珠13及び耳甲介腔12の窪みの壁部12dに圧接され、骨伝導振動部2の長さ方向の他端部側2bが対珠14及び耳甲介腔12の窪みの壁部12dに圧接され、正面側凸部3が耳珠13に圧接されると共に、背面側凸部4が耳甲介腔12の窪みの壁部12dにおける外耳道15の入口周辺に圧接され、音声振動によって緩みにくい(ずれにくい)ので、装着後の支持安定性に優れるという利点がある。
【0026】
第2実施形態に係る骨伝導イヤホン21は、図8及び図9に示すように、第1実施形態において、骨伝導振動部2の厚さ方向の正面側2cにつまみ部22を突設したものである。
【0027】
つまみ部22は、骨伝導振動部2の長さ方向に沿ってその他端部側2bから正面側凸部3まで延びるように設けられている。このつまみ部22は柔軟性部材で構成されており、骨伝導振動部2の被覆部5と正面側凸部3と背面側凸部4とつまみ部22が一体成形されている。このように、被覆部5と正面側凸部3と背面側凸部4とつまみ部22を柔軟性部材で構成して一体成形すれば、第1実施形態と同様、耳甲介腔12の窪みへのフィット感が良好であると共に、製造し易いという利点がある。
【0028】
上記のように構成された骨伝導イヤホン21を耳甲介腔12の窪みに装着する際には、第1実施形態と同様、骨伝導振動部2の長さ方向の一端部側2aから耳甲介腔12の窪みに挿入し、つまみ部22をつまんだ状態で、図10及び図11に示すように、骨伝導振動部2の幅方向の下部2eが耳甲介腔12の窪みの底部12eに密着するように回転させればよい。
【0029】
このように、骨伝導振動部2の厚さ方向の正面側2cにつまみ部22を突設しておけば、つまみ部22をつまむことができるので、耳甲介腔12の窪みに装着する際に回転させ易いという利点がある。また、つまみ部22を骨伝導振動部2の長さ方向に沿って延びるように設け、耳甲介腔12の窪みに装着した状態で、つまみ部22が対珠14に圧接されるように構成しておけば、耳甲介腔12の窪みに装着する際により回転させ易いと共に、装着後の支持安定性をより向上できるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上のように、本発明に係る骨伝導イヤホンは、人体の骨組織を介して音声振動を内耳へ伝達可能なイヤホンとして有用であり、特に、音声情報の再現性の向上、耳甲介腔の窪みへの装着容易性の向上、及び装着後の支持安定性の向上を図るための骨伝導イヤホンとして好適である。
【符号の説明】
【0031】
1,21 骨伝導イヤホン
2 骨伝導振動部
2a 一端部側
2b 他端部側
2c 正面側
2d 背面側
2e 下部
3 正面側凸部
4 背面側凸部
5 被覆部
6 圧電セラミック振動子
12 耳甲介腔
12d 壁部
12e 底部
13 耳珠
14 対珠
15 外耳道
22 つまみ部
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の骨組織を介して音声振動を内耳へ伝達可能な骨伝導イヤホンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、骨伝導イヤホンは、人体の中耳伝音系を介さずに、骨組織を介して音声振動を内耳へ伝達するように構成されている。
【0003】
従来のこのような骨伝導イヤホンとしては、音声振動を発生させる骨伝導スピーカ部と、前記骨伝導スピーカ部から発生した音声振動を伝達する振動伝達部とからなる受話装置であって、前記骨伝導スピーカ部と前記振動伝達部が支持部を介して機械的に結合され、前記振動伝達部が耳甲介腔の窪みに納まりかつ耳珠と対珠に圧接して装着されるように構成された受話装置(例えば、特許文献1参照。)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−103989号公報(請求項1、図1、図2、等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような受話装置においては、前記振動伝達部に前記支持部を介して結合された前記骨伝導スピーカ部が耳珠や対珠に圧接して装着されるわけではなく、前記骨伝導スピーカ部から発生した音声振動にエネルギー損失が生じるので、音声情報の再現性が良くないという問題点がある。
【0006】
また、前記振動伝達部は、耳甲介腔の窪みに納まるものの、円板状に形成されているので、耳甲介腔の窪みに挿入しにくいという問題点がある。更に、前記振動伝達部は、耳甲介腔の窪みに納まりかつ耳珠と対珠に圧接して装着されるものの、耳珠と対珠に強く圧接されるわけではなく、音声振動によって緩み易い(ずれ易い)ので、装着後の支持安定性が良くないという問題点がある。
【0007】
本発明は、以上のような事情や問題点に鑑みてなされたものであり、音声情報の再現性に優れると共に、耳甲介腔の窪みに挿入し易くかつ装着後の支持安定性に優れた骨伝導イヤホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための第1の発明は、楕円体状に形成されかつ音声振動を発生させる骨伝導振動部と、前記骨伝導振動部の長さ方向の一端部側かつ厚さ方向の正面側に突設された正面側凸部と、前記骨伝導振動部の長さ方向の一端部側かつ厚さ方向の背面側に突設された背面側凸部、を備え、前記骨伝導振動部の長さ方向の一端部側から耳甲介腔の窪みに挿入し、前記骨伝導振動部の幅方向の下部が前記耳甲介腔の窪みの底部に密着するように回転させて前記耳甲介腔の窪みに装着した状態で、前記骨伝導振動部の長さ方向の一端部側が耳珠及び前記耳甲介腔の窪みの壁部に圧接され、前記骨伝導振動部の長さ方向の他端部側が対珠及び前記耳甲介腔の窪みの壁部に圧接され、前記正面側凸部が前記耳珠に圧接されると共に、前記背面側凸部が前記耳甲介腔の窪みの壁部における外耳道の入口周辺に圧接されるように構成したものである。
【0009】
第2の発明は、前記骨伝導振動部が、被覆部と、前記被覆部に埋設された圧電セラミック振動子を備え、前記被覆部と前記正面側凸部と前記背面側凸部が柔軟性部材で構成されると共に、前記被覆部と前記正面側凸部と前記背面側凸部を一体成形したものである。
【0010】
第3の発明は、前記骨伝導振動部の厚さ方向の正面側につまみ部を突設したものである。
【0011】
第4の発明は、前記つまみ部を前記骨伝導振動部の長さ方向に沿って延びるように設け、前記耳甲介腔の窪みに装着した状態で、前記つまみ部が前記対珠に圧接されるように構成したものである。
【0012】
第5の発明は、前記骨伝導振動部が、被覆部と、前記被覆部に埋設された骨伝導振動子を備え、前記被覆部と前記正面側凸部と前記背面側凸部と前記つまみ部が柔軟性部材で構成されると共に、前記被覆部と前記正面側凸部と前記背面側凸部と前記つまみ部を一体成形したものである。
【発明の効果】
【0013】
第1の発明によれば、音声振動を発生させる骨伝導振動部が耳珠と耳甲介腔の窪みの壁部と対珠に圧接され、骨伝導振動部から発生した音声振動にエネルギー損失が生じにくいので、音声情報の再現性に優れている。また、楕円体状に形成された骨伝導振動部の長さ方向の一端部側から耳甲介腔の窪みに挿入して回転させればよく、骨伝導振動部の長さ方向の寸法よりも幅方向の寸法の方が小さいので、耳甲介腔の窪みに挿入し易い。更に、耳甲介腔の窪みに装着した状態においては、骨伝導振動部の長さ方向の一端部側が耳珠及び耳甲介腔の窪みの壁部に圧接され、骨伝導振動部の長さ方向の他端部側が対珠及び耳甲介腔の窪みの壁部に圧接され、正面側凸部が耳珠に圧接されると共に、背面側凸部が耳甲介腔の窪みの壁部における外耳道の入口周辺に圧接され、音声振動によって緩みにくい(ずれにくい)ので、装着後の支持安定性に優れている。
【0014】
第2の発明によれば、骨伝導振動子として圧電セラミック振動子を採用しているので、小型化、軽量化、及び製造コストの低減化を図り易い。また、骨伝導振動部の被覆部と正面側凸部と背面側凸部を柔軟性部材で構成して一体成形しているので、耳甲介腔の窪みへのフィット感が良好であると共に、製造し易い。
【0015】
第3の発明によれば、骨伝導振動部の厚さ方向の正面側に突設されたつまみ部をつまむことができるので、耳甲介腔の窪みに装着する際に回転させ易い。
【0016】
第4の発明によれば、つまみ部を骨伝導振動部の長さ方向に沿って延びるように設け、耳甲介腔の窪みに装着した状態で、つまみ部が対珠に圧接されるように構成しているので、耳甲介腔の窪みに装着する際により回転させ易いと共に、装着後の支持安定性をより向上できる。
【0017】
第5の発明によれば、第2の発明と同様、骨伝導振動子として圧電セラミック振動子を採用しているので、小型化、軽量化、及び製造コストの低減化を図り易い。また、骨伝導振動部の被覆部と正面側凸部と背面側凸部とつまみ部を柔軟性部材で構成して一体成形しているので、耳甲介腔の窪みへのフィット感が良好であると共に、製造し易い。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態に係る骨伝導イヤホンの正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】骨伝導イヤホンの右側面図である。
【図4】骨伝導イヤホンを耳甲介腔の窪みに挿入する様子を示す説明図である。
【図5】骨伝導イヤホンを回転させる様子を示す説明図である。
【図6】骨伝導イヤホンを耳甲介腔の窪みに装着した状態を示す説明図である。
【図7】骨伝導イヤホンを耳甲介腔の窪みに装着した状態を示す要部拡大断面図である。
【図8】第2実施形態に係る骨伝導イヤホンの正面図である。
【図9】骨伝導イヤホンの平面図である。
【図10】骨伝導イヤホンを回転させる様子を示す説明図である。
【図11】骨伝導イヤホンを耳甲介腔の窪みに装着した状態を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
第1実施形態に係る骨伝導イヤホン1は、図1〜図3に示すように、骨伝導振動部2と正面側凸部3と背面側凸部4を備えている。
【0020】
骨伝導振動部2は、楕円体状に形成されており、音声振動を発生可能である。また、骨伝導振動部2は、図2に示すように、柔軟性部材で構成された被覆部5と、被覆部5に埋設された骨伝導振動子としての圧電セラミック振動子6を備えている。なお、図示を省略しているが、圧電セラミック振動子6には、被覆部5を貫通するように配線コードが電気的に接続されている。
【0021】
柔軟性部材としては、シリコーンゴム等のゴム、熱可塑性エラストマー等のエラストマー等が挙げられる。柔軟性部材のゴム硬度(JIS K 6253)としては、4〜5が好適である。これに対し、柔軟性部材のゴム硬度が4未満の場合には、圧電セラミック振動子6等の骨伝導振動子から発生した音声振動が伝達されにくくなると共に、強度の低下に伴って破損し易くなる傾向にある。また、柔軟性部材のゴム硬度が5を超える場合には、人体の耳介(耳)における耳甲介腔の窪みへのフィット感が悪くなる傾向にある。
【0022】
圧電セラミック振動子6は、図1〜図3に示すように、正面視形状が楕円状の板状に形成されている。圧電セラミック振動子6のタイプとしては、ユニモルフ、バイモルフ、積層型等が挙げられる。圧電セラミック振動子6の形状は、特に限定されるものではなく、正面視形状が長円形状の板状、正面視形状が卵状の板状、正面視形状が多角形状の板状や、棒状、楕円体状等でもよい。音声振動を発生可能な骨伝導振動子の種類も、特に限定されるものではないが、本実施形態のような圧電セラミック振動子6を採用すれば、小型化、軽量化、及び製造コストの低減化を図り易いという利点がある。
【0023】
正面側凸部3は、骨伝導振動部2の長さ方向(図1の左右方向、図2の左右方向。以下同じ。)の一端部側2aかつ厚さ方向(図2の上下方向、図3の左右方向。以下同じ。)の正面側2cに突設されている。背面側凸部4は、骨伝導振動部2の長さ方向の一端部側2aかつ厚さ方向の背面側2dに突設されている。正面側凸部3や背面側凸部4は、柔軟性部材で構成されており、骨伝導振動部2の被覆部5と一体成形されている。正面側凸部3や背面側凸部4の断面形状は、円弧状に限定されるものではなく、適宜変更可能である。このように、骨伝導振動部2の被覆部5と正面側凸部3と背面側凸部4を柔軟性部材で構成して一体成形すれば、耳甲介腔の窪みへのフィット感が良好であると共に、製造し易いという利点がある。
【0024】
図4〜図7に示すように、上記のように構成された骨伝導イヤホン1を人体の耳介11における耳甲介腔12の窪みに装着する際に、骨伝導振動部2の長さ方向の一端部側2aから耳甲介腔12の窪みに挿入し、骨伝導振動部2の幅方向(図1の上下方向、図3の上下方向。以下同じ。)の下部2eが耳甲介腔12の窪みの底部12eに密着するように回転させれば、骨伝導振動部2の長さ方向の一端部側2aが耳珠13及び耳甲介腔12の窪みの壁部12dに圧接され、骨伝導振動部2の長さ方向の他端部側2bが対珠14及び耳甲介腔12の窪みの壁部12dに圧接され、正面側凸部3が耳珠13に圧接されると共に、背面側凸部4が耳甲介腔12の窪みの壁部12dにおける外耳道15の入口周辺に圧接される。
【0025】
このように、骨伝導イヤホン1においては、音声振動を発生させる骨伝導振動部2が耳珠13と耳甲介腔12の窪みの壁部12dと対珠14に圧接され、骨伝導振動部2から発生した音声振動にエネルギー損失が生じにくいので、音声情報の再現性に優れるという利点がある。また、楕円体状に形成された骨伝導振動部2の長さ方向の一端部側2aから耳甲介腔12の窪みに挿入して回転させればよく、骨伝導振動部2の長さ方向の寸法よりも幅方向の寸法の方が小さいので、耳甲介腔12の窪みに挿入し易いという利点がある。更に、耳甲介腔12の窪みに装着した状態においては、骨伝導振動部2の長さ方向の一端部側2aが耳珠13及び耳甲介腔12の窪みの壁部12dに圧接され、骨伝導振動部2の長さ方向の他端部側2bが対珠14及び耳甲介腔12の窪みの壁部12dに圧接され、正面側凸部3が耳珠13に圧接されると共に、背面側凸部4が耳甲介腔12の窪みの壁部12dにおける外耳道15の入口周辺に圧接され、音声振動によって緩みにくい(ずれにくい)ので、装着後の支持安定性に優れるという利点がある。
【0026】
第2実施形態に係る骨伝導イヤホン21は、図8及び図9に示すように、第1実施形態において、骨伝導振動部2の厚さ方向の正面側2cにつまみ部22を突設したものである。
【0027】
つまみ部22は、骨伝導振動部2の長さ方向に沿ってその他端部側2bから正面側凸部3まで延びるように設けられている。このつまみ部22は柔軟性部材で構成されており、骨伝導振動部2の被覆部5と正面側凸部3と背面側凸部4とつまみ部22が一体成形されている。このように、被覆部5と正面側凸部3と背面側凸部4とつまみ部22を柔軟性部材で構成して一体成形すれば、第1実施形態と同様、耳甲介腔12の窪みへのフィット感が良好であると共に、製造し易いという利点がある。
【0028】
上記のように構成された骨伝導イヤホン21を耳甲介腔12の窪みに装着する際には、第1実施形態と同様、骨伝導振動部2の長さ方向の一端部側2aから耳甲介腔12の窪みに挿入し、つまみ部22をつまんだ状態で、図10及び図11に示すように、骨伝導振動部2の幅方向の下部2eが耳甲介腔12の窪みの底部12eに密着するように回転させればよい。
【0029】
このように、骨伝導振動部2の厚さ方向の正面側2cにつまみ部22を突設しておけば、つまみ部22をつまむことができるので、耳甲介腔12の窪みに装着する際に回転させ易いという利点がある。また、つまみ部22を骨伝導振動部2の長さ方向に沿って延びるように設け、耳甲介腔12の窪みに装着した状態で、つまみ部22が対珠14に圧接されるように構成しておけば、耳甲介腔12の窪みに装着する際により回転させ易いと共に、装着後の支持安定性をより向上できるという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上のように、本発明に係る骨伝導イヤホンは、人体の骨組織を介して音声振動を内耳へ伝達可能なイヤホンとして有用であり、特に、音声情報の再現性の向上、耳甲介腔の窪みへの装着容易性の向上、及び装着後の支持安定性の向上を図るための骨伝導イヤホンとして好適である。
【符号の説明】
【0031】
1,21 骨伝導イヤホン
2 骨伝導振動部
2a 一端部側
2b 他端部側
2c 正面側
2d 背面側
2e 下部
3 正面側凸部
4 背面側凸部
5 被覆部
6 圧電セラミック振動子
12 耳甲介腔
12d 壁部
12e 底部
13 耳珠
14 対珠
15 外耳道
22 つまみ部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
楕円体状に形成されかつ音声振動を発生させる骨伝導振動部と、
前記骨伝導振動部の長さ方向の一端部側かつ厚さ方向の正面側に突設された正面側凸部と、
前記骨伝導振動部の長さ方向の一端部側かつ厚さ方向の背面側に突設された背面側凸部、
を備え、
前記骨伝導振動部の長さ方向の一端部側から耳甲介腔の窪みに挿入し、前記骨伝導振動部の幅方向の下部が前記耳甲介腔の窪みの底部に密着するように回転させて前記耳甲介腔の窪みに装着した状態で、前記骨伝導振動部の長さ方向の一端部側が耳珠及び前記耳甲介腔の窪みの壁部に圧接され、前記骨伝導振動部の長さ方向の他端部側が対珠及び前記耳甲介腔の窪みの壁部に圧接され、前記正面側凸部が前記耳珠に圧接されると共に、前記背面側凸部が前記耳甲介腔の窪みの壁部における外耳道の入口周辺に圧接されるように構成したことを特徴とする骨伝導イヤホン。
【請求項2】
前記骨伝導振動部が、被覆部と、前記被覆部に埋設された圧電セラミック振動子を備え、
前記被覆部と前記正面側凸部と前記背面側凸部が柔軟性部材で構成されると共に、
前記被覆部と前記正面側凸部と前記背面側凸部を一体成形した請求項1に記載の骨伝導イヤホン。
【請求項3】
前記骨伝導振動部の厚さ方向の正面側につまみ部を突設した請求項1に記載の骨伝導イヤホン。
【請求項4】
前記つまみ部を前記骨伝導振動部の長さ方向に沿って延びるように設け、
前記耳甲介腔の窪みに装着した状態で、前記つまみ部が前記対珠に圧接されるように構成した請求項3に記載の骨伝導イヤホン。
【請求項5】
前記骨伝導振動部が、被覆部と、前記被覆部に埋設された骨伝導振動子を備え、
前記被覆部と前記正面側凸部と前記背面側凸部と前記つまみ部が柔軟性部材で構成されると共に、
前記被覆部と前記正面側凸部と前記背面側凸部と前記つまみ部を一体成形した請求項3又は4に記載の骨伝導イヤホン。
【請求項1】
楕円体状に形成されかつ音声振動を発生させる骨伝導振動部と、
前記骨伝導振動部の長さ方向の一端部側かつ厚さ方向の正面側に突設された正面側凸部と、
前記骨伝導振動部の長さ方向の一端部側かつ厚さ方向の背面側に突設された背面側凸部、
を備え、
前記骨伝導振動部の長さ方向の一端部側から耳甲介腔の窪みに挿入し、前記骨伝導振動部の幅方向の下部が前記耳甲介腔の窪みの底部に密着するように回転させて前記耳甲介腔の窪みに装着した状態で、前記骨伝導振動部の長さ方向の一端部側が耳珠及び前記耳甲介腔の窪みの壁部に圧接され、前記骨伝導振動部の長さ方向の他端部側が対珠及び前記耳甲介腔の窪みの壁部に圧接され、前記正面側凸部が前記耳珠に圧接されると共に、前記背面側凸部が前記耳甲介腔の窪みの壁部における外耳道の入口周辺に圧接されるように構成したことを特徴とする骨伝導イヤホン。
【請求項2】
前記骨伝導振動部が、被覆部と、前記被覆部に埋設された圧電セラミック振動子を備え、
前記被覆部と前記正面側凸部と前記背面側凸部が柔軟性部材で構成されると共に、
前記被覆部と前記正面側凸部と前記背面側凸部を一体成形した請求項1に記載の骨伝導イヤホン。
【請求項3】
前記骨伝導振動部の厚さ方向の正面側につまみ部を突設した請求項1に記載の骨伝導イヤホン。
【請求項4】
前記つまみ部を前記骨伝導振動部の長さ方向に沿って延びるように設け、
前記耳甲介腔の窪みに装着した状態で、前記つまみ部が前記対珠に圧接されるように構成した請求項3に記載の骨伝導イヤホン。
【請求項5】
前記骨伝導振動部が、被覆部と、前記被覆部に埋設された骨伝導振動子を備え、
前記被覆部と前記正面側凸部と前記背面側凸部と前記つまみ部が柔軟性部材で構成されると共に、
前記被覆部と前記正面側凸部と前記背面側凸部と前記つまみ部を一体成形した請求項3又は4に記載の骨伝導イヤホン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−222682(P2012−222682A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88026(P2011−88026)
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【特許番号】特許第4772930号(P4772930)
【特許公報発行日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(508025817)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月12日(2011.4.12)
【特許番号】特許第4772930号(P4772930)
【特許公報発行日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(508025817)
【Fターム(参考)】
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