説明

骨吸収の阻害方法

本発明は骨吸収を阻害する方法に関する。該方法は、骨吸収マーカーレベルを少なくとも2週間減少させる量のスクレロスチンインヒビターをヒトに投与するステップを含む。本発明はまた、抗スクレロスチン治療をモニタリングする方法であって、1種以上の骨吸収マーカーレベルを測定するステップ、スクレロスチン結合物質を投与するステップ、次いで骨吸収マーカーレベルを測定するステップを含む方法を提供する。また、骨密度を増加させる方法; 破骨細胞関連障害の影響を軽減する方法; 骨密度を維持することによって骨関連障害を治療する方法; および低カルシウム血症または高カルシウム血症に罹患しているかまたはそのリスクにさらされているヒト、副甲状腺ホルモンまたはその類似体での治療が禁忌であるヒト、またはビスホスホネートでの治療が禁忌であるヒトの骨関連障害を治療する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、概して、骨密度を調節するためのスクレロスチン(sclerostin)結合物質の使用方法に関する。
【0002】
関連出願への相互参照および参照による包含
本出願は、2007年9月17日提出の米国仮特許出願第60/973,024号の優先権を主張する。
【0003】
以下の出願は、参照によりその全体がここに組み入れられる: 2006年4月17日提出の米国仮特許出願第60/792,645号、2006年3月13日提出の米国仮特許出願第60/782,244号、2006年2月24日提出の米国仮特許出願第60/776,847号、および2005年5月3日提出の米国仮特許出願第60/677,583号の優先権を主張する2006年4月25日提出の米国特許出願第11/410,540号; ならびに2006年4月17日提出の米国仮特許出願第60/792,645号、2006年3月13日提出の米国仮特許出願第60/782,244号、および2006年2月24日提出の米国仮特許出願第60/776,847号の優先権を主張する2006年4月25日提出の米国特許出願第11/411,003号。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
骨塩量の損失は多種多様な健康状態によって引き起こされ、重大な医学的問題を生じさせる。例えば、骨粗鬆症はヒトの消耗性疾患であり、骨格の骨量および無機質密度の顕著な減少、骨の構造上の劣化、例えば骨の微小構造(microarchitecture)の分解および対応する骨脆弱性増加(すなわち骨強度の減少)、罹患個体の骨折に対する感受性によって特徴付けられる。ヒトの骨粗鬆症に先立ち、概して、米国の約2500万人に見出される状態である臨床骨減少症が生じる。米国のさらに700〜800万人の患者が臨床骨粗鬆症と診断されている。ヒト集団における骨粗鬆症の頻度は年齢とともに増加する。コーカサス人において、骨粗鬆症は女性において顕著であり、女性は、米国において、骨粗鬆症患者プールの80%を構成する。老齢における骨格骨の脆弱性および骨折に対する感受性の増加は、この集団での転落事故の高いリスクによって悪化する。臀部、手関節、および椎骨の骨折は、骨粗鬆症に伴う最も一般的な傷害に含まれる。臀部骨折は、特に、患者にとって非常に不快でかつ費用がかかり、かつ女性では、高い死亡率および罹患率と関連する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明の要旨
本発明は、ヒトにおける骨吸収を阻害するためのスクレロスチンインヒビターの使用方法に関する。該方法は、骨吸収のマーカーのレベルを減少させ、かつ場合により、骨形成のマーカーのレベルも増加させるために有効な量のスクレロスチンインヒビターをヒトに投与するステップを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも約7日間、2週間、3週間、4週間、1か月、5週間、6週間、7週間、8週間、2か月、3か月またはそれ以上の期間、骨吸収が阻害され、かつ骨形成が増加する。関連実施形態では、本発明は、骨密度(骨ミネラル密度;bone mineral density)を増加させるかまたは骨関連障害を治療する方法を提供する。さらに本発明は、破骨細胞関連障害の影響を軽減する方法を提供する。該方法は、骨吸収のマーカーのレベルを、治療なしの場合の骨マーカーレベルと比較して減少させるスクレロスチンインヒビターをヒトに投与するステップを含む。またスクレロスチンインヒビターは、骨形成のマーカーのレベルを、治療なしの場合の骨マーカーレベルと比較して少なくとも約10%増加させる。スクレロスチンインヒビターは一回量でまたは複数回投与で投与することができる。例えば、スクレロスチンインヒビターは、例えば骨形成を増加させるために短期治療計画で投与することができ、かつ/または維持治療計画で骨密度の損失を予防するために長期投与することができる。
【0006】
本明細書中で開示される任意の方法において、1種以上の骨吸収マーカーのレベルは、該患者集団の治療前レベルまたは正常レベルと比較して、少なくとも2週間、3週間、30日間、1か月、6週間、2か月またはそれ以上の期間、少なくとも約5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%またはそれ以上、減少する。非限定的な例として、治療後3週間までの骨吸収のマーカーのレベルは、該患者集団の治療前レベルまたは正常レベルと比較して、例えば少なくとも約20%減少する。前述の任意の方法において、骨形成のマーカーのレベルは、該患者集団の治療前レベルまたは正常レベルと比較して、少なくとも約2週間、3週間、30日間、1か月、6週間、2か月またはそれ以上の期間、少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%またはそれ以上、増加する。非限定的な例として、治療後3週間までの骨形成のマーカーのレベルは、該患者集団の治療前レベルまたは正常レベルと比較して、例えば少なくとも約20%増加する。典型的な一実施形態では、骨吸収のマーカーはI型コラーゲンのC-テロペプチド(CTX)の血清レベルである。他の典型的な実施形態では、骨形成のマーカーは骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)、オステオカルシン(OstCa)、および/またはプロコラーゲン1型のN末端伸長部分(P1NP)である。
【0007】
また本発明は、骨関連障害の治療方法であって、全身(例えば、頭部、体幹、腕、および脚)の、または臀部(例えば臀部全体および/または大腿骨頸部)、脊椎(例えば腰椎)、手関節、手指、脛骨および/または踵での骨密度を、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約8%、約10%、約12%、約15%、約18%、約20%、約25%、または30%またはそれ以上、増加させるために有効な、1以上の量のスクレロスチンインヒビターをヒトに投与するステップを含む方法を提供する。いくつかの実施形態では、治療前のヒトの骨密度は骨粗鬆症または骨減少症の特徴を示し、かつ1以上の用量のスクレロスチンインヒビターを、骨密度がもはや骨粗鬆症および/または骨減少症の特徴を示さないように骨密度を改善するために有効な量および期間で投与する。例えば、1以上の用量は、初期期間に、2.5、または1の、若年成人の正常密度の標準偏差の範囲内(すなわち、以下で定義されるように、-2.5以上のT-スコアまたは-1以上のT-スコア)に入るよう骨密度を増加させるように投与しうる。典型的な実施形態では、初期期間は約3か月以下、6か月以下、9か月以下、1年以下、18か月以下、またはそれ以上である。さらに該方法は、それに続いて、場合により少なくとも約6か月、1年、2年またはそれ以上の(例えば被験体の一生にわたる)維持期間に、骨密度を維持するために有効な1以上の量のスクレロスチンインヒビターを投与するステップを含んでよい。
【0008】
さらに本発明は、約0.1〜約20 mg/kg、または約0.1〜約12 mg/kg、または約0.5〜約12 mg/kg、または約1〜約10 mg/kg、または約1〜約8 mg/kg、または約2〜約8 mg/kg、または約3〜約8 mg/kgの範囲の1以上の用量を投与することによってヒトの骨関連障害を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、約2週間もしくはそれ以上毎に1回、1か月もしくはそれ以上毎に1回、または2か月もしくはそれ以上毎に1回、または3か月もしくはそれ以上毎に1回、または4か月もしくはそれ以上毎に1回、または5か月もしくはそれ以上毎に1回、または6か月もしくはそれ以上毎に1回、または9か月もしくはそれ以上毎に1回、または1年もしくはそれ以上毎に1回の間隔で用量を投与する。本明細書中に記載の投与およびタイミング計画のいずれかを使用する投与のための医薬の製造にスクレロスチンインヒビターを使用できる。場合により、スクレロスチンインヒビターは、投与のためのスクレロスチンインヒビターの用量(例えば約70〜約450 mgのスクレロスチンインヒビター)を含有する容器、例えば一回量または複数回投与バイアル中で提供される。典型的な一実施形態では、バイアルは約70 mgまたは75 mgのスクレロスチンインヒビター、例えば抗スクレロスチン抗体を含有し、かつ約1 mg/kgの一回量の投与に好適である。他の実施形態では、バイアルは、約140 mgもしくは150 mg; または約210 mgもしくは220 mgもしくは250 mg; または約280 mgもしくは290 mgもしくは300 mg; または約350 mgもしくは360 mg; または約420 mgもしくは430 mgもしくは440 mgもしくは450 mgのスクレロスチンインヒビター、例えば抗スクレロスチン抗体を含有する。
【0009】
さらに、本発明は、低カルシウム血症もしくは高カルシウム血症に罹患しているかまたはそのリスクにさらされているヒト、副甲状腺ホルモンもしくはその類似体での治療が禁忌であるヒト、またはビスホスホネートでの治療が禁忌であるヒトの骨関連障害を治療する方法を提供する。該方法は、低カルシウム血症または高カルシウム血症(例えば臨床的意義のある低カルシウム血症または高カルシウム血症)を引き起こすことなく、骨形成のマーカーのレベルを増加させ、かつ/または骨吸収のマーカーのレベルを減少させるために有効な量のスクレロスチンインヒビターをヒトに投与するステップを含む。
【0010】
また本発明は、抗スクレロスチン療法をモニタリングする方法、すなわちスクレロスチンインヒビターに対する生理反応をモニタリングする方法を提供する。該方法は、1以上の用量のスクレロスチンインヒビターを投与するステップ、および1種以上の骨吸収マーカーのレベルを検出するステップを含み、該方法では、該患者集団の治療前レベルまたは正常レベルと比較して、骨吸収のマーカーのレベルの少なくとも約5%、約10%、約15%、約20%、約30%、約40%、約50%またはそれ以上の減少が有効な治療を示す。場合により、該方法は、1種以上の骨形成マーカーのレベルを検出するステップをさらに含み、該方法では、該患者集団の治療前レベルまたは正常レベルと比較して、骨形成マーカーのレベルの少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、または約100%の増加が有効な治療を示す。特定の実施形態では、骨形成マーカーレベルの増加は約20%である。該方法は、スクレロスチンインヒビターの用量を異なる量に調節するステップをさらに含んでよく、例えば、骨吸収および/または骨形成の変化が所望の変化より小さい場合に、より多量にするか、または骨吸収および/または骨形成の変化が所望の変化より大きい場合に、より少量にする。
【0011】
異なる態様では、本発明は、少なくとも約1週間、約2週間、約1か月、約6週間、約2か月、約10週間、または約3か月の期間、骨吸収のマーカーのレベルを少なくとも約5%、約10%、約15%、約20%、約30%、約40%、約50%またはそれ以上減少させ、かつ骨形成のマーカーのレベルを少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%、またはそれ以上増加させる、選択されたスクレロスチンインヒビターを提供する。関連態様では、本発明は、スクレロスチンインヒビター候補を動物に投与し、かつ骨吸収および/または形成のマーカーのレベルを所望の程度に変化させるスクレロスチンインヒビター候補を選択することによってそのようなスクレロスチンインヒビターを選択する方法を提供する。
【0012】
任意の前述の本発明の方法または実施形態では、スクレロスチンインヒビターはスクレロスチン結合物質であってよい。例えば本明細書中で開示される任意の方法における、または本明細書中で開示される任意の方法にしたがって投与するための医薬の製造のための、米国特許公開第20070110747号で開示されているスクレロスチン結合物質の使用が具体的に想定される。この関連で、本発明は、骨吸収を阻害するための医薬の製造での、約1 mg/kg〜約10 mg/kgの量のスクレロスチン結合物質の使用を含み、該量は、治療開始の3週間後までに、治療前または正常レベルと比較して、I型コラーゲンのC-テロペプチド(CTX)の血清レベルを少なくとも20%減少させるために有効な量である。また本発明は、骨密度を増加させるための医薬の製造での約1 mg/kg〜約10 mg/kgの量のスクレロスチン結合物質の使用を含み、該量は、(a) 治療開始の3週間後までに、CTXの血清レベルを、治療前または正常レベルと比較して少なくとも20%減少させるため、および(b) 治療開始の3週間後までに、骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)の血清レベル、プロコラーゲン1型のアミノ末端伸長部分のペプチド(PINP)の血清レベル、およびオステオカルシン(OstCa)の血清レベルからなる群から選択される骨形成マーカーの血清レベルを、治療前または正常レベルと比較して少なくとも20%増加させるために有効な量である。
【0013】
本発明は、骨関連障害を治療するための医薬の製造において、第一の期間について約1 mg/kg〜約10 mg/kgの量のスクレロスチン結合物質を使用し、該量は臀部、脊椎、手関節、手指、脛骨および/または踵での骨密度を少なくとも約3%増加させるために有効な量であり、そして、骨密度を維持するために有効なそれに続く第二の期間について約1 mg/kg〜約10 mg/kgの量を使用することをさらに含む。また、低カルシウム血症もしくは高カルシウム血症に罹患しているかまたはそのリスクにさらされているヒトにおいて骨関連障害を治療するための医薬の製造における約1 mg/kg〜約10 mg/kgの量のスクレロスチン結合物質の使用、ならびに(a) 副甲状腺ホルモンもしくはその類似体での治療が禁忌であるヒト、または(b) ビスホスホネートでの治療が禁忌であるヒトにおいて骨関連障害を治療するための医薬の製造におけるスクレロスチン結合物質の使用が意図される。
【0014】
また本発明は、抗スクレロスチン抗体またはその断片を含む容器を含む。一実施形態では、該容器は、抗スクレロスチン抗体またはその断片および、(a) 治療開始の3週間後までに、I型コラーゲンのC-テロペプチド(CTX)の血清レベルを、治療前または正常レベルと比較して少なくとも20%減少させるため、および(b) 治療開始の3週間後までに、骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)の血清レベル、プロコラーゲン1型のアミノ末端伸長部分のペプチド(PINP)の血清レベル、またはオステオカルシン(OstCa)の血清レベルを、治療前または正常レベルと比較して少なくとも20%増加させるために有効な量の該抗体またはその断片を投与するための使用説明書を含む。あるいは、またはさらに、該容器は約70 mg〜約450 mgの量の抗スクレロスチン抗体を含む。さらに本発明は、抗スクレロスチン抗体またはその断片および、骨関連障害を治療するために2週間または4週間毎に約1 mg/kg〜約10 mg/kgの量の該抗体またはその断片を投与するための使用説明書を含む容器を提供する。さらに、本発明は、抗スクレロスチン抗体またはその断片および、骨関連障害を治療するために約3か月の期間にわたり約1 mg/kg〜約10 mg/kgの量の該抗体またはその断片を投与するための使用説明書を含む容器を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、健康な閉経後女性での、種々の一回量のスクレロスチン結合物質の投与後の時間(日数)に対する、ベースラインおよびプラセボP1NPレベルと比較されたプロコラーゲン1型のN末端伸長部分(P1NP)レベルの変化のパーセントのグラフである。
【図2】図2は、健康な閉経後女性での、種々の一回量のスクレロスチン結合物質の投与後の時間(日数)に対する、ベースラインおよびプラセボBSAPレベルと比較された骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)レベルの変化のパーセントのグラフである。
【図3】図3は、健康な閉経後女性での、種々の一回量のスクレロスチン結合物質の投与後の時間(日数)に対する、ベースラインおよびプラセボオステオカルシンレベルと比較されたオステオカルシンレベルの変化のパーセントのグラフである。
【図4】図4は、健康な閉経後女性での、種々の一回量のスクレロスチン結合物質の投与後の時間(日数)に対する、ベースラインおよびプラセボ血清CTXレベルと比較された血清中のI型コラーゲンのC末端テロペプチド(CTX)レベルの変化のパーセントのグラフである。
【図5】図5は、健康な閉経後女性での、一回量の5 mg/kgまたは10 mg/kgのスクレロスチン結合物質の投与後の時間(日数)に対する、ベースラインおよびプラセボレベルと比較されたオステオカルシン、BSAP、P1NP、およびCTXレベルの変化のパーセントのグラフである。
【図6】図6は、健康な閉経後女性での、種々の一回量のスクレロスチン結合物質の投与後の時間(日数)に対する、ベースラインおよびプラセボ血清カルシウムレベルと比較された血清カルシウムレベルの変化のパーセントのグラフである。
【図7】図7は、健康な閉経後女性での、種々の一回量のスクレロスチン結合物質の投与後の時間(日数)に対する、ベースラインおよびプラセボと比較された骨密度の変化のパーセントのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
本発明は、少なくとも部分的に、ヒトスクレロスチンの生物学的活性の阻止または阻害によって、骨吸収の顕著な阻害を含む骨密度(骨ミネラル密度;BMD)の増加と関連している複数の生理学的反応が誘発されるという驚くべき発見に基づいている。最良の現在利用可能な治療は骨吸収を阻害するだけで、骨形成を増加させない。BMDの減少に伴う障害に関するいくつかの現在利用可能な治療は、骨形成を増加させるだけで、骨吸収を顕著に減少させることはない。例えば、いくつかの現在の薬剤によって骨形成が誘発される場合、骨吸収も増加する(場合により治療前より低い割合であっても)。これに対し、スクレロスチン活性を妨げる物質は、骨形成を増強し、かつ骨吸収を減少させる。換言すれば、スクレロスチンインヒビターは骨形成と骨吸収を「脱共役」して、より効果的に骨を構築する。本発明の物質および方法は、治療効力が限定的でかつ潜在的に重大な有害副作用を伴う従来の治療より優れている。
【0017】
この関連で、本発明は、骨吸収、例えば、骨ミネラル基質を溶解させる骨細胞である破骨細胞によって媒介される骨吸収を阻害する方法を提供する。さらに本発明は、破骨細胞関連障害、すなわち、いくつかの実施形態で、異常に高い骨吸収として現れる異常に増加した破骨細胞活性によって引き起こされる障害の影響を軽減する方法を提供する。本発明の方法は、骨吸収のマーカーのレベルを減少させ、かつ場合により、骨形成のマーカーのレベルを増加させる量のスクレロスチン結合物質をヒトに投与するステップを含む。
【0018】
スクレロスチンインヒビター、例えばスクレロスチン結合物質の活性(以下でさらに説明する)は、種々の方法で測定することができる。スクレロスチン結合物質によって媒介される骨塩量または骨密度(bone density)の増加は、単一および二重エネルギーX線吸光光度法(single- and dual-energy X-ray absorptometry)、超音波、コンピュータ断層撮影法、X線撮影、および磁気共鳴映像法を使用して測定することができる。骨量は、体重から、または他の方法を使用して算出することもできる(Guinness-Hey, Metab. Bone Dis. Relat. Res., 5:177-181 (1984)を参照のこと)。当技術分野では、例えば骨量減少、骨吸収、骨形成、骨強度、または骨ミネラル化のパラメータに対する医薬組成物および方法の効果を試験するために、ヒト疾患、例えば骨粗鬆症および骨減少症の症状を模倣する動物および特定の動物モデルが使用される。そのようなモデルの例には、卵巣切除されたラットモデルが含まれる(Kalu, Bone and Mineral, 15:175-192 (1991); Frost and Jee, Bone and Mineral, 18:227-236 (1992); およびJee and Yao, J. Musculoskel. Neuron. Interact., 1:193-207 (2001))。また、本明細書中に記載のスクレロスチン結合物質活性を測定するための方法を使用して、他のスクレロスチンインヒビターの効力を決定することができる。
【0019】
ヒトでは、例えば臀部および脊椎の二重X線吸光光度法(DXA)を使用して骨密度を臨床的に測定することができる。他の技術には、定量的コンピュータ断層撮影法(QCT)、超音波検査、単一エネルギーX線吸光光度法(SXA)、およびX線撮影吸光光度法(radiographic absorptiometry)が含まれる。測定のための一般的な中枢骨格部位には、脊椎および臀部が含まれ; 末梢部位には、前腕、手指、手関節および踵が含まれる。超音波検査を除き、米国医師会(American Medical Association)は、BMD技術が、典型的に、X線の使用を含み、かつ、照射の減弱が照射経路中の組織の厚みおよび組成に依存するという原理に基づくことを指摘している。すべての技術は、結果と基準データベースとの比較を含む。
【0020】
あるいは、1種以上のスクレロスチン結合物質に対する生理反応は、骨マーカーレベルをモニタリングすることによって計測することができる。骨マーカーは骨リモデリングプロセス中に生成される生成物であり、骨、骨芽細胞、および/または破骨細胞によって放出される。骨吸収および/または骨形成「マーカー」レベルの変動は骨リモデリング/モデリングの変化を示唆する。国際骨粗鬆症財団(International Osteoporosis Foundation;IOF)は、骨マーカーを使用して骨密度治療をモニタリングすることを推奨している(例えばDelmas et al., Osteoporos Int., Suppl. 6:S2-17 (2000) (参照によりここに組み入れられる)を参照のこと)。骨吸収(または破骨細胞活性)を示すマーカーには、例えば、C-テロペプチド(例えば1型コラーゲンのC末端テロペプチド(CTX)または血清中の架橋型C-テロペプチド)、N-テロペプチド(1型コラーゲンのN末端テロペプチド(NTX))、デオキシピリジノリン(DPD)、ピリジノリン、尿ヒドロキシプロリン、ガラクトシルヒドロキシリシン、および酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(例えば血清中の酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼアイソフォーム5b)が含まれる。骨形成/ミネラル化マーカーには、非限定的に、骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)、I型プロコラーゲンのNおよびC末端伸長部分から放出されるペプチド(PINP, PICP)、およびオステオカルシン(OstCa)が含まれる。臨床サンプル、例えば尿および血液中のマーカーを検出および定量するためのいくつかのキットが市販されている。
【0021】
投与時に、スクレロスチン結合物質は、好ましくは、1種以上の骨吸収マーカーのレベル、例えばI型コラーゲンのC-テロペプチド(CTX)の血清レベルを減少させる。したがって、本発明は、抗スクレロスチン療法をモニタリングする方法、すなわちスクレロスチン結合物質または他のスクレロスチンインヒビターに対する生理反応をモニタリングする方法をさらに提供する。該方法は、スクレロスチン結合物質を投与するステップ、次いで1種以上の骨吸収マーカーのレベルを測定するステップを含む。さらに、該方法は、スクレロスチン結合物質の投与前に1種以上の骨形成マーカーのレベルを測定するステップを含んでよい。スクレロスチン結合物質での治療中および/または治療後の骨吸収マーカーのレベルを治療前レベルと比較するか、あるいは該患者集団に典型的な標準範囲と比較してよい。当業者は、類似の年齢、性別、疾患レベル、および/または他の特性の患者集団の代表的な数の患者を検査することによって、好適な標準範囲を容易に決定することができる。一回量のスクレロスチン結合物質によって骨吸収マーカーのレベルを少なくとも約5% (例えば、約10%、約20%、または約30%)減少させることができる。いくつかの実施形態では、スクレロスチン結合物質の投与は、スクレロスチン結合物質の投与前の骨吸収マーカーのレベルと比較して、骨吸収マーカーのレベルを少なくとも約40% (例えば、約50%、約60%、または約70%)減少させる。さらに、骨吸収マーカーレベルは、一回量のスクレロスチン結合物質の投与後、少なくとも約3日間(例えば、約7日間、約2週間、約3週間、約1か月、約5週間、約6週間、約7週間、約2か月、約9週間、約10週間、約11週間、または約3か月)減少する。
【0022】
骨吸収マーカーのレベルを減少させることに加えて、患者に投与されるスクレロスチン結合物質の量はまた、1種以上の骨形成マーカーのレベル、例えばBSAPの血清レベル、PINPの血清レベル、および/またはOstCaの血清レベルを増加させうる。一回量のスクレロスチン結合物質によって、骨形成マーカーのレベルを、例えば少なくとも約5% (例えば、約10%、約20%、または約30%)増加させることができる。いくつかの実施形態では、スクレロスチン結合物質の投与は骨形成マーカーのレベルを少なくとも約40% (例えば、約50%、約60%、または約70%)上昇させる。他の実施形態では、スクレロスチン結合物質の投与は1種以上の骨形成マーカーのレベルを少なくとも約75% (例えば、約80%、約90%、約100%、または約110%)増加させる。さらに他の実施形態では、スクレロスチン結合物質の投与は骨形成マーカーのレベルを少なくとも約120% (例えば、約130%、約140%、約150%、約160%または約170%)増加させる。代替の実施形態では、スクレロスチン結合物質は骨形成マーカーのレベルを少なくとも約180% (例えば約190%または約200%)増加させる。理想的には、骨形成マーカーレベルは、一回量のスクレロスチン結合物質の投与後、少なくとも約3日間(例えば、約7日間、約2週間、約3週間、約1か月、約5週間、約6週間、約7週間、約2か月、約9週間、約10週間、約11週間、または約3か月) (治療前の骨形成マーカーレベルまたは該患者集団に典型的な標準範囲と比較して)上昇したままである。
【0023】
また本発明は、骨密度(BMD)を増加させる方法であって、(a) 骨吸収のマーカーのレベルを減少させ、かつ(b) 骨形成のマーカーのレベルを増加させる量のスクレロスチン結合物質をヒトに投与する方法を提供する。BMDは、概して、骨格の脆弱性および骨粗鬆症と相関する。典型的に、BMDは「全身」(例えば、頭部、体幹、腕、および脚)または臀部(例えば臀部全体および/または大腿骨頸部)、脊椎(例えば腰椎)、手関節、手指、脛骨および/または踵において測定することができる。骨粗鬆症の診断では、患者のBMDを30歳の成人健常者(すなわち「若年成人」)のピーク密度と比較して、いわゆる「T-スコア」を作成する。また、患者のBMDを「年齢適合」骨密度と比較してもよい(例えば、骨粗鬆症の予防および管理に関する世界保健機構科学グループ(World Health Organization Scientific Group on the Prevention and Management of Osteoporosis), "Prevention and management of osteoporosis: report of a WHO scientific group." WHO Technical Report Series; 921, Geneva, Switzerland (2000)を参照のこと)。患者のBMDと若年成人健常者のBMDとの差異は、通常、様々な「標準偏差」の観点から言及され、それは典型的に骨密度の約10%〜約12%減少に等しい。世界保健機構(World Health Organization)はBMD T-スコアに基づく4つの診断カテゴリーを提唱した。若年成人参照平均の1標準偏差以内のBMD値(T-スコア -1以下)は「正常」である。低い骨量(骨減少症)は、1標準偏差を超えて若年成人平均を下回るが2標準偏差未満のBMD値(T-スコア< -1および> -2.5)によって示される。2.5標準偏差を超えて標準を下回るT-スコアは骨粗鬆症の診断を裏付ける。患者が1以上の脆弱性骨折にさらに罹患しているならば、該患者は重症骨粗鬆症を有することになる。
【0024】
患者のT-スコアにかかわらず、骨密度を改善するために、スクレロスチンインヒビター、例えばスクレロスチン結合物質を患者に投与してよい。患者のBMDを少なくとも約1% (約2%、約3%、約4%、約5%、または約6%)増加させるために有効な用量でかつ期間でスクレロスチン結合物質を投与してよい。いくつかの実施形態では、BMDは少なくとも約8% (例えば、少なくとも約10%、約12%、約15%、または約18%)増加する。他の実施形態では、スクレロスチン結合物質によって、臀部、脊椎、手関節、手指、脛骨、および/または踵でのBMDが少なくとも約20% (例えば、少なくとも約22%、約25%、または約28%)増加する。さらに他の実施形態では、BMDは少なくとも約30% (例えば、少なくとも約32%、約35%、約38%、または約40%)増加する。換言すれば、BMDは、若年成人健常者の正常BMDを下回る約1〜約2.5標準偏差の範囲(好ましくは約0〜約1標準偏差の範囲)まで増加させうる。
【0025】
骨リモデリングの変化は身体全体のミネラル濃度の変動を生じさせうる。骨は血流中のカルシウムレベルの主要な調節器の1つである。破骨細胞によって媒介される骨吸収は、貯蔵カルシウムを体循環に放出し、骨芽細胞によって媒介される骨形成は循環からカルシウムを取り出して骨組織に取り込む。正常な骨リモデリングでは、これらのプロセスが循環して健康な強い骨を維持し、約8.5 mg/dL〜約10.5 mg/dLの遊離カルシウムレベルを維持する(例えば約2.2 mmol/L〜約2.6 mmol/L)。骨障害、他の疾病、およびある種の治療でさえ、全身カルシウムレベルを崩壊させ、恐ろしい結果を有しうる。高カルシウム血症は、血液中の高レベルの(例えば12 mg/dLまたは3 mmol/Lを超える)カルシウムと関連する。異常に高いカルシウムレベルは、例えば、疲労、錯乱、便秘、食欲低下、頻尿、心臓障害、および骨痛を生じさせる。低カルシウム血症は血液中の異常に低レベル(例えば約9 mg/dLまたは2.2 mmol/L未満)なカルシウムによって示される電解質平衡障害である。7.5 mg/dL未満(1.87 mmol/L未満)のカルシウムレベルは重症低カルシウム血症と考えられ、臨床症状を伴うことがある。
【0026】
低カルシウム血症の一般的徴候には、神経および筋の痙攣および痙直、しびれ、四肢の刺痛、錯乱、ならびに心臓の不整が含まれる。系(system)カルシウムの極度の変動は昏睡および死を招きうる。
【0027】
いくつかの病気および医薬品治療は系カルシウムレベルを変化させる。高カルシウム血症および低カルシウム血症は、例えば、慢性腎疾患、腎不全、原発性または続発性副甲状腺機能亢進症、偽性副甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能低下症、偽性副甲状腺機能低下症、マグネシウム枯渇、アルコール依存症、ビスホスホネート治療、重症高マグネシウム血症、ビタミンD欠乏、高リン酸血症、急性膵炎、飢餓骨症候群、キレート化、骨芽細胞転移、敗血症、外科手術、化学療法、新生物症候群、家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症(familial hypocalciuric hypercalcemia)、サルコイドーシス、結核、ベリリウム症、ヒストプラスマ症、カンジダ症、コクシジオイデス症、組織球症X、ホジキンまたは非ホジキンリンパ腫、クローン病、ウェゲナー肉芽腫症、白血病、肺炎、シリコーン誘発性肉芽腫、運動抑制、または薬物療法、例えばチアジド系利尿薬、リチウム、エストロゲン、フッ化物、グルコース、およびインスリンの投与に起因しうる。さらに、血清カルシウムの変動は多数の従来の骨関連治療、例えばビスホスホネートおよび副甲状腺ホルモン治療の副作用である。カルシウム不均衡の、潜在的に生命を危うくする影響のため、低カルシウム血症または高カルシウム血症に感受性の患者は特定の治療選択肢を差し控える(forego)必要がある。
【0028】
意外なことに、スクレロスチンインヒビター、例えばスクレロスチン結合物質は、全身カルシウムレベルの最小限の変動しか伴わずに(例えば、カルシウムレベルはベースライン血清カルシウムレベルから10%以下しか変動しない)、骨形成を促進し、かつ骨吸収を阻害する(または遅らせる)ことが示された。したがって、本発明の物質および方法は、不安定なカルシウムレベルに感受性であるかまたはその影響を受けやすい患者の治療に特に有益である。本発明のこの態様の関連でヒトに投与されるスクレロスチン結合物質の量は、低カルシウム血症または高カルシウム血症(例えば臨床的意義のある低カルシウム血症または高カルシウム血症)を生じさせない量である。さらに、本発明は、低カルシウム血症または高カルシウム血症に罹患しているかまたはそのリスクにされされているヒト、またはビスホスホネート、副甲状腺ホルモン、もしくは副甲状腺ホルモン類似体での治療が禁忌であるヒトの骨関連障害を治療する方法を提供する。該方法は、骨形成のマーカーのレベル、例えばBSAP、P1NP、および/またはOstCaの血清レベルを増加させ、かつ/または骨吸収のマーカー、例えばCTXのレベルを減少させるために有効な量のスクレロスチン結合物質をヒトに投与するステップを含む。
【0029】
本発明の方法は、骨関連障害、例えば異常な骨芽細胞または破骨細胞活性に関連する骨関連障害の治療または予防に有用である。実際、以下の障害からなる群から選択される骨関連障害に罹患しているヒトにスクレロスチンインヒビター(例えばスクレロスチン結合物質)を投与することができる: 軟骨形成不全、鎖骨頭蓋異骨症、内軟骨腫症、繊維性骨異形成症、ゴーシェ病、低リン血症性くる病、マルファン症候群、多発性遺伝性外骨腫(multiple hereditary exotoses)、神経線維腫症、骨形成不全、大理石骨病、骨斑症、硬化性病変、偽関節、化膿性骨髄炎、歯周病、抗てんかん薬誘発性骨量減少、原発性および続発性副甲状腺機能亢進症、家族性副甲状腺機能亢進症候群、無重力誘発性骨量減少、男性の骨粗鬆症、閉経後骨量減少、骨関節炎、腎性骨異栄養症、骨の浸潤性障害、口腔骨量減少、顎の骨壊死、若年性パジェット病、メロレオストーシス、代謝性骨疾患、肥満細胞症、鎌形赤血球貧血/疾患、器官移植関連骨量減少、腎臓移植関連骨量減少、全身性エリテマトーデス、強直性脊椎炎、てんかん、若年性関節炎症、地中海貧血症、ムコ多糖症、ファブリー病、ターナー症候群、ダウン症候群、クラインフェルター症候群、ハンセン病、ペルテス病(Perthe's Disease)、青年期特発性脊柱側弯症、乳児性発症多系統炎症性疾患(infantile onset multi-system inflammatory disease)、ウィンチェスター症候群、メンケス病、ウィルソン病、虚血性骨疾患(例えばレッグ・カルヴェ・ペルテス病および局所遊走性骨粗鬆症)、貧血状態、ステロイドに起因する症状、糖質コルチコイド誘発性骨量減少、ヘパリン誘発性骨量減少、骨髄障害、壊血病、栄養不良、カルシウム欠乏症、骨粗鬆症、骨減少症、アルコール依存症、慢性肝疾患、閉経後状態、慢性炎症性症状、関節リウマチ、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、炎症性大腸炎、クローン病、希発月経、無月経、妊娠、糖尿病、甲状腺機能亢進症、甲状腺障害、副甲状腺障害、クッシング病、末端肥大症、性腺機能低下症、運動抑制または廃用、反射性交感神経性ジストロフィ症候群、局所骨粗鬆症、骨軟化症、関節置換に関連する骨量減少、HIV関連骨量減少、成長ホルモンの損失に関連する骨量減少、嚢胞性線維症に関連する骨量減少、化学療法関連骨量減少、腫瘍誘発性骨量減少、癌関連骨量減少、ホルモン切除の骨量減少(hormone ablative bone loss)、多発性骨髄腫、薬物誘発性骨量減少、拒食症、疾患関連顔面骨量減少、疾患関連頭蓋(cranial)骨量減少、顎の疾患関連骨量減少、頭蓋(skull)の疾患関連骨量減少、加齢に伴う骨量減少、加齢に伴う顔面骨量減少、加齢に伴う頭蓋(cranial)骨量減少、加齢に伴う顎骨量減少、加齢に伴う頭蓋(skull)骨量減少、および宇宙旅行に関連する骨量減少。
【0030】
本発明の方法は、有益な生物学的応答を達成するために、上記障害の患者を治癒させなくてもよく、または骨関連障害の発症を完全に防がなくてもよい。該方法を予防的に使用してよく、それは骨関連障害またはその徴候を完全にまたは部分的に防ぐことを意味する。また該方法を治療的に使用して、骨関連障害またはその徴候を完全にまたは部分的に軽減するか、または、骨関連障害またはその徴候のさらなる進行を完全にまたは部分的に防ぎうる。実際、本発明の物質および方法は、骨密度を増加させかつ増加したBMDを一定期間にわたって維持するために特に有用である。この関連で、本発明は、骨関連障害の治療方法であって、(a) 全身(例えば、頭部、体幹、腕、および脚)に関して、または臀部(例えば臀部全体および/または大腿骨頸部)、脊椎(例えば腰椎)、手関節、手指、脛骨および/または踵で測定されるBMDを、約1%、約2%、約3%、約6%、約8%、約10%、約12%、約15%、約18%、約20%、約25%、または30%またはそれ以上、増加させるために有効な、1以上の量のスクレロスチン結合物質を投与するステップを含む方法を提供する。スクレロスチン結合物質を含む医薬組成物の1回以上の投与は、例えば、約1か月〜約12か月(例えば、約2か月、約3か月、約4か月、約5か月、約6か月、約7か月、約8か月、約9か月、約10か月、または約11か月)の治療期間にわたって実施してよい。該方法はさらに、(b) それに続く、骨密度を維持するために有効な1以上の量のスクレロスチン結合物質を投与するステップを含む。「骨密度を維持する」とは、ステップ(a)で得られる増加したBMDがステップ(b)の過程にわたって(例えば、約6か月、約9か月 約1年、約18か月、約2年、または患者の一生の過程にわたって)、約1%〜約5%を超えて低下しないことを意味する。患者は骨密度の増加および骨密度の維持のための交互の治療段階を必要としうることが理解される。
【0031】
スクレロスチン結合物質は、好ましくは、生理学的に許容される(例えば医薬)組成物中に含有させて患者に投与され、該組成物は、担体、賦形剤、または希釈剤を含んでよい。本明細書中に記載のスクレロスチン結合物質を、本明細書中で開示される任意の投与計画およびタイミング計画を使用する投与のための医薬の製造に使用してよいことが理解される。医薬組成物および治療方法は米国特許公開第20050106683号に開示されている。該文献は参照によりここに組み入れられる。「生理学的に許容される」とは、ヒトに投与された場合にアレルギー反応または同様の有害反応を生じさせない分子的実体および組成物を表す。さらに、被験体に投与される組成物は、1種以上のスクレロスチンインヒビター(例えばスクレロスチン結合物質および合成化学スクレロスチンインヒビター)または異なる作用機構を有する1種以上の治療薬と組み合わされたスクレロスチンインヒビターを含有してよい。
【0032】
例えば、皮下、経口、非経口、静脈内、鼻腔内、および筋肉内投与および製剤を含む、種々の治療計画での本明細書中に記載の具体的組成物の使用に好適な投薬および治療計画の開発は当技術分野において周知であり、米国特許公開第20070110747号で考察されている。例えば、特定の状況では、スクレロスチン結合物質を含む医薬組成物を、皮下、非経口、静脈内、筋肉内、または、さらには腹腔内で送達することが望ましい。そのようなアプローチは当業者に周知であり、そのいくつかは、例えば、米国特許第5,543,158号; 第5,641,515号; および第5,399,363号でさらに説明されている。注射用途に好適な例示的医薬剤形には、滅菌水性溶液または分散物および、滅菌注射用溶液または分散物の即席調製のための滅菌粉末が含まれる(例えば、米国特許第5,466,468号を参照のこと)。全事例で、剤形は滅菌されている必要であり、かつ容易な注射針通過性(syringability)が存在する程度に液体である必要がある。
【0033】
一実施形態では、水性溶液中の非経口投与のために、必要であれば溶液を好適に緩衝化すべきであり、十分な生理食塩水またはグルコースで液体希釈剤をまず等張にすべきである。これらの特定の水性溶液は静脈内、筋肉内、皮下、および腹腔内投与に特に好適である。例えば、1 mlの等張NaCl溶液に1用量を溶解し、1000 mlの皮下注入液に加えるか、または注入の予定部位で注射する(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 15th ed., Mack Pub. Co., Easton, PA, pp. 1035-1038および1570-1580を参照のこと)。治療対象の被験体の症状; 患者の年齢、身長、体重、および全般的健康; および任意の副作用の存在に応じて、投与の用量および頻度のいくつかのバリエーションが存在する。さらに、スクレロスチン結合物質を含む医薬組成物を、そのような医薬組成物の使用に関する使用説明書を提供するパッケージング材料とともに容器(例えばバイアル)内に入れる。概して、そのような使用説明書は、試薬濃度、ならびに、特定の実施形態では、医薬組成物を再構成するために必要な賦形剤成分または希釈剤(例えば、水、生理食塩水またはPBS)の相対量を記載する明らかな表示を含む。
【0034】
骨吸収マーカーのレベルを減少させ、かつ/または骨形成マーカーのレベルを増加させ、かつ/または骨密度を増加させる量のスクレロスチン結合物質を投与する。スクレロスチン結合物質の投与量は約0.5 mg/体重kg〜約20 mg/体重kg (例えば12 mg/体重kg)の範囲である。例えば、スクレロスチン結合物質の用量は、約1 mg/kg〜約10 mg/kg (例えば約2 mg/kgまたは約9 mg/kg)、約1 mg/kg〜約3 mg/kg、または約3 mg/kg〜約8 mg/kg (例えば約4 mg/kg、5 mg/kg、6 mg/kg、または7 mg/kg)の範囲である。
【0035】
さらに、特定の患者に選択される治療計画に応じて、スクレロスチン結合物質の複数回投与を実施するか、または投与の実施の間隔をあけることは有益である。スクレロスチン結合物質を1年以下(例えば、9か月以下、6か月以下、または3か月以下)の期間にわたって定期的に投与することができる。この関連で、約7日、または2週間、または3週間、または1か月、または5週間、または6週間、または7週間、または2か月、または9週間、または10週間、または11週間、または3か月、または13週間、または14週間、または15週間、または4か月、または17週間、または18週間、または19週間、または5か月、または21週間、または22週間、または23週間、または6か月、または12か月毎に1回、スクレロスチン結合物質をヒトに投与することができる。
【0036】
本発明の方法は、ある量の「スクレロスチンインヒビター」を投与するステップを含む。本明細書中で使用される用語「スクレロスチンインヒビター」とは、骨ミネラル化、骨密度、骨芽細胞および/または破骨細胞に対する影響、骨形成マーカー、骨吸収マーカー、骨芽細胞活性マーカー、および/または破骨細胞活性マーカーの変化によって測定される、骨に対するスクレロスチンの生物学的活性を阻害する任意の分子を意味する。そのようなインヒビターは、スクレロスチンまたはその受容体または結合パートナーに結合することによって作用する。このカテゴリーのインヒビターには、「スクレロスチン結合物質」、例えば抗体またはペプチドに基づく分子が含まれる。また「スクレロスチンインヒビター」は、スクレロスチンに結合してその活性を阻害する、場合により分子量が約1000ダルトン未満の小さい有機化学物質を表す。あるいはインヒビターは、スクレロスチンの発現を阻害することによって作用する。このカテゴリーのインヒビターには、スクレロスチンDNAまたはmRNAに結合してスクレロスチン発現を阻害するポリヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドが含まれ、それには、スクレロスチンの発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチド、阻害性RNA、DNA酵素、リボザイム、アプタマーまたは製薬的に許容されるその塩が含まれる。
【0037】
「スクレロスチン結合物質」は、スクレロスチンまたはその一部に特異的に結合し、1種以上のリガンドに対するヒトスクレロスチンの結合をブロックするかまたは弱める。SOST遺伝子の産物であるスクレロスチンは、骨の過成長および強い高密度の骨によって特徴付けられる骨格の疾患である硬結性骨化症では存在しない(Brunkow et al., Am. J. Hum. Genet., 68:577-589 (2001); Balemans et al., Hum. Mol. Genet., 10:537-543 (2001))。ヒトスクレロスチンのアミノ酸配列はBrunkow et al.によって報告され、米国特許公開第20070110747号で配列番号1として開示されている(該特許公開は、スクレロスチン結合物質についてのその記載および配列表に関するその全体が組み入れられる)。組換えヒトスクレロスチン/SOSTはR&D Systems (Minneapolis, Minn., USA; 2006カタログ#1406-ST-025)から市販されている。さらに、組換えマウススクレロスチン/SOSTはR&D Systems (Minneapolis, Minn., USA; 2006カタログ#1589-ST-025)から市販されている。研究グレードのスクレロスチン結合モノクローナル抗体はR&D Systems (Minneapolis, Minn., USA; マウスモノクローナル: 2006カタログ# MAB1406; ラットモノクローナル: 2006カタログ# MAB1589)から市販されている。米国特許第6,395,511号および第6,803,453号、および米国特許公開第20040009535号および第20050106683号は概して抗スクレロスチン抗体に言及している。本発明の関連での使用に好適なスクレロスチン結合物質の例は、米国特許公開第20070110747号および第20070072797号(参照によりここに組み入れられる)にも記載されている。スクレロスチン結合物質を製造するための材料および方法に関する追加情報は米国特許公開第20040158045号に見出せる。
【0038】
本発明のスクレロスチン結合物質は好ましくは抗体である。用語「抗体」とは、インタクトの抗体、またはその結合性断片を表す。抗体は、完全抗体分子(全長重鎖および/または軽鎖を有するポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、またはヒト型を含む)を含んでよく、その抗原結合性フラグメントを含んでよい。抗体断片には、F(ab')2、Fab、Fab'、Fv、Fc、およびFd断片が含まれ、単ドメイン抗体、単鎖抗体、マキシボディ(maxibodies)、ミニボディ(minibodies)、イントラボディ、ダイアボディ(diabodies)、トリアボディ(triabodies)、テトラボディ(tetrabodies)、v-NARおよびビス-scFvに組み入れることができる(例えばHollinger and Hudson, Nature Biotechnology, 23(9):1126-1136 (2005)を参照のこと)。フィブロネクチンポリペプチドモノボディを含む抗体ポリペプチドはまた、米国特許第6,703,199号に開示されている。他の抗体ポリペプチドは米国特許公開第20050238646号に開示されている。抗スクレロスチン抗体は配列番号1のスクレロスチン、または天然に存在するその変異体に、1 x 10-7M以下、1 x 10-8M以下、1 x 10-9M以下、1 x 10-10M以下、1 x 10-11M以下、または1 x 10-12 M以下の親和性で結合する。親和性はアフィニティELISAアッセイによって決定してよい。特定の実施形態では、BIAcoreアッセイによって親和性を決定する。特定の実施形態では、速度論的方法によって親和性を決定する。特定の実施形態では、平衡/溶液法によって親和性を決定する。
【0039】
抗体断片は任意の合成または遺伝子改変タンパク質であってよい。例えば、抗体断片には、軽鎖可変領域からなる単離された断片、重鎖および軽鎖の可変領域からなる「Fv」断片、軽鎖および重鎖可変領域がペプチドリンカーによって連結されている組換え単鎖ポリペプチド分子(scFvタンパク質)が含まれる。
【0040】
抗体断片の別の形式は抗体の1個以上の相補性決定領域(CDR)を含むペプチドである。CDR (「最小認識単位」または「超可変領域」とも称される)は、目的のCDRをコードするポリヌクレオチドを構築することによって取得することができる。そのようなポリヌクレオチドは、例えばポリメラーゼ連鎖反応を使用し、抗体産生細胞のmRNAを鋳型として使用して可変領域を合成することによって製造される(例えば、Larrick et al., Methods: A Companion to Methods in Enzymology, 2:106 (1991); Courtenay-Luck, "Genetic Manipulation of Monoclonal Antibodies," in Monoclonal Antibodies Production, Engineering and Clinical Application, Ritter et al. (eds.), 166ページ, Cambridge University Press (1995); およびWard et al., "Genetic Manipulation and Expression of Antibodies," in Monoclonal Antibodies: Principles and Applications, Birch et al., (eds.), 137ページ, Wiley-Liss, Inc. (1995)を参照のこと)。
【0041】
本発明の一実施形態では、スクレロスチン結合物質は、抗体Ab-A、Ab-B、Ab-C、Ab-D、Ab-1、Ab-2、Ab-3、Ab-4、Ab-5、Ab-6、Ab-7、Ab-8、Ab-9、Ab-10、Ab-11、Ab-12、Ab-13、Ab-14、Ab-15、Ab-16、Ab-17、Ab-18、Ab-19、Ab-20、Ab-21、Ab-22、Ab-23、およびAb-24 (すべての抗体は米国特許公開第20070110747号に記載されている)の少なくとも1つの、スクレロスチンに対する結合を交差阻害(cross-blocks)する。あるいはまたはさらに、スクレロスチン結合物質は、抗体Ab-A、Ab-B、Ab-C、Ab-D、Ab-1、Ab-2、Ab-3、Ab-4、Ab-5、Ab-6、Ab-7、Ab-8、Ab-9、Ab-10、Ab-11、Ab-12、Ab-13、Ab-14、Ab-15、Ab-16、Ab-17、Ab-18、Ab-19、Ab-20、Ab-21、Ab-22、Ab-23、およびAb-24 (すべての抗体は米国特許公開第20070110747号に記載されている)の少なくとも1つによって、スクレロスチンに対する結合を交差阻害される。用語「交差阻害」、「cross-blocked」、および「cross-blocking」は、本明細書中で交換可能に使用され、抗体または他の結合物質が、他の抗体または結合物質のスクレロスチンに対する結合を妨げる能力を意味する。抗体または他の結合物質が、スクレロスチンに対する別の抗体または他の結合物質の結合を妨げることができる程度、およびしたがってそれが交差阻害すると言えるかかどうかは、競合結合アッセイを使用して決定することができる。本発明のいくつかの態様では、交差阻害性抗体またはその断片は、参照抗体のスクレロスチン結合を約40%〜約100%の範囲、例えば約60%〜約100%の範囲、特に70%〜100%の範囲、より特に80%〜100%の範囲で減少させる。交差阻害の検出に特に好適な定量アッセイでは、表面プラズモン共鳴テクノロジーを使用して相互作用の程度を測定するBiacore装置を使用する。別の好適な定量的交差阻害アッセイでは、ELISAに基づくアプローチを使用して、スクレロスチンに対する結合に関する抗体または他の結合物質の間の競合を測定する。
【0042】
好適なスクレロスチン結合物質には、米国特許公開第20070110747号に記載の抗体およびその部分、例えば該文献で具体的に開示されているCDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2およびCDR-L3の1つ以上が含まれる。CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3の少なくとも1つの領域は、結合物質が非置換CDRの結合特異性を保持するならば、少なくとも1つのアミノ酸置換を有してよい。結合物質の非CDR部分は非タンパク質分子であってよく、該結合物質はスクレロスチンに対する本明細書中で開示される抗体の結合を交差阻害し、かつ/またはスクレロスチンを中和する。結合物質の非CDR部分は非タンパク質分子であってよく、該結合物質は、ヒトスクレロスチンペプチドエピトープ競合結合アッセイにおいて、ヒトスクレロスチンペプチドに対して、抗体Ab-A、Ab-B、Ab-C、Ab-D、Ab-1、Ab-2、Ab-3、Ab-4、Ab-5、Ab-6、Ab-7、Ab-8、Ab-9、Ab-10、Ab-11、Ab-12、Ab-13、Ab-14、Ab-15、Ab-16、Ab-17、Ab-18、Ab-19、Ab-20、Ab-21、Ab-22、Ab-23、およびAb-24 (すべての抗体は米国特許公開第20070110747号に記載されている)の少なくとも1つによって示されるパターンと類似の結合パターンを示し、かつ/またはスクレロスチンを中和する。結合物質の非CDR部分はアミノ酸から構成されてよく、該結合物質は組換え結合タンパク質または合成ペプチドであり、かつ該組換え結合タンパク質はスクレロスチンに対する抗体の結合を交差阻害しかつ/またはスクレロスチンを中和する。結合物質の非CDR部分はアミノ酸から構成されてよく、該結合物質は組換え結合タンパク質であり、かつ該組換え結合タンパク質は、ヒトスクレロスチンペプチドエピトープ競合結合アッセイ(米国特許公開第20070110747号に記載されている)において、ヒトスクレロスチンペプチドに対して、抗体Ab-A、Ab-B、Ab-C、Ab-D、Ab-1、Ab-2、Ab-3、Ab-4、Ab-5、Ab-6、Ab-7、Ab-8、Ab-9、Ab-10、Ab-11、Ab-12、Ab-13、Ab-14、Ab-15、Ab-16、Ab-17、Ab-18、Ab-19、Ab-20、Ab-21、Ab-22、Ab-23、およびAb-24 (米国特許公開第20070110747号に記載されている)の少なくとも1つによって示されるパターンと類似の結合パターンを示し、かつ/またはスクレロスチンを中和する。好ましくは、スクレロスチン結合物質は、米国特許公開第20070110747号のAb-A、Ab-B、Ab-C、Ab-D、Ab-1、Ab-2、Ab-3、Ab-4、Ab-5、Ab-6、Ab-7、Ab-8、Ab-9、Ab-10、Ab-11、Ab-12、Ab-13、Ab-14、Ab-15、Ab-16、Ab-17、Ab-18、Ab-19、Ab-20、Ab-21、Ab-22、Ab-23、またはAb-24である。
【0043】
さらに、スクレロスチン結合物質は、米国特許公開第20070110747号で開示されている配列番号39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、78、79、80、81、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、237、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254、255、256、257、258、259、260、261、262、263、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285、286、287、288、289、290、291、292、293、294、295、296、297、298、351、352、353、358、359、および360から選択されるCDRに対して少なくとも75%の同一性(例えば100%の同一性)を有する少なくとも1つのCDR配列を含んでよい。好ましくは、スクレロスチン結合物質は、配列番号245、246、247、78、79、80、269、270、271、239、240、および24(すべての配列は米国特許公開第20070110747号に記載されている)から選択されるCDRに対して少なくとも75%の同一性を有する少なくとも1つのCDR配列を含む。米国特許公開第20070110747号に記載されるように、スクレロスチン結合物質は、(a) 配列番号54、55、および56のCDR配列ならびに配列番号51、52、および53のCDR配列; (b) 配列番号60、61、および62のCDR配列ならびに配列番号57、58、および59のCDR配列; (c) 配列番号48、49、および50のCDR配列ならびに配列番号45、46、および47のCDR配列; (d) 配列番号42、43、および44のCDR配列ならびに配列番号39、40、および41のCDR配列; (e) 配列番号275、276、および277のCDR配列ならびに配列番号287、288、および289のCDR配列; (f) 配列番号278、279、および280のCDR配列ならびに配列番号290、291、および292のCDR配列; (g) 配列番号78、79、および80のCDR配列ならびに配列番号245、246、および247のCDR配列; (h) 配列番号81、99、および100のCDR配列ならびに配列番号248、249、および250のCDR配列; (i) 配列番号101、102、および103のCDR配列ならびに配列番号251、252、および253のCDR配列; (j) 配列番号104、105、および106のCDR配列ならびに配列番号254、255、および256のCDR配列; (k) 配列番号107、108、および109のCDR配列ならびに配列番号257、258、および259のCDR配列; (l) 配列番号110、111、および112のCDR配列ならびに配列番号260、261、および262のCDR配列; (m) 配列番号281、282、および283のCDR配列ならびに配列番号293、294、および295のCDR配列; (n) 配列番号113、114、および115のCDR配列ならびに配列番号263、264、および265のCDR配列; (o) 配列番号284、285、および286のCDR配列ならびに配列番号296、297、および298のCDR配列; (p) 配列番号116、237、および238のCDR配列ならびに配列番号266、267、および268のCDR配列; (q) 配列番号239、240、および241のCDR配列ならびに配列番号269、270、および271のCDR配列; (r) 配列番号242、243、および244のCDR配列ならびに配列番号272、273、および274のCDR配列; または(s) 配列番号351、352、および353のCDR配列ならびに配列番号358、359、および360のCDR配列を含んでよい。
【0044】
スクレロスチン結合物質はまた、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1、CDR-L2、およびCDR-L3から選択されるCDRに対し少なくとも75%の同一性を有する少なくとも1つのCDR配列を含んでよく、CDR-H1は配列番号245または配列番号269に記載の配列を有し、CDR-H2は配列番号246または配列番号270に記載の配列を有し、CDR-H3は配列番号247または配列番号271に記載の配列を有し、CDR-L1は配列番号78または配列番号239に記載の配列を有し、CDR-L2は配列番号79または配列番号240に記載の配列を有し、CDR-L3は配列番号80または配列番号241に記載の配列を有する(すべての配列は米国特許公開第20070110747号に記載されている)。
【0045】
あるいは、スクレロスチン結合物質は、CDRのH1、H2、およびH3を含みかつ配列番号137に記載の配列を有するポリペプチドを含む重鎖または該CDRがそれぞれ配列番号245、246、および247に対し少なくとも75%同一であるその変異体、およびCDRのL1、L2およびL3を含みかつ配列番号133に記載の配列を有するポリペプチドを含む軽鎖または該CDRがそれぞれ配列番号78、79、および80に対し少なくとも75%同一であるその変異体を有してよい(米国特許公開第20070110747号に記載されている通りである)。
【0046】
スクレロスチン結合物質は、CDRのH1、H2、およびH3を含みかつ配列番号145または392に記載の配列を有するポリペプチドを含む重鎖または該CDRがそれぞれ配列番号245、246、および247に対し少なくとも75%同一であるその変異体、およびCDRのL1、L2、およびL3を含みかつ配列番号141に記載の配列を有するポリペプチドを含む軽鎖または該CDRがそれぞれ配列番号78、79、および80に対し少なくとも75%同一であるその変異体を有してよい(米国特許公開第20070110747号に記載されている通りである)。
【0047】
スクレロスチン結合物質は、CDRのH1、H2、およびH3を含みかつ配列番号335に記載の配列を有するポリペプチドを含む重鎖または該CDRがそれぞれ配列番号269、270、および271に対し少なくとも75%同一であるその変異体、およびCDRのL1、L2、およびL3を含みかつ配列番号334に記載の配列を有するポリペプチドを含む軽鎖または該CDRがそれぞれ配列番号239、240、および241に対し少なくとも75%同一であるその変異体を有してよい(米国特許公開第20070110747号に記載されている通りである)。
【0048】
あるいは、スクレロスチン結合物質は、CDRのH1、H2、およびH3を含みかつ配列番号331に記載の配列を有するポリペプチドを含む重鎖または該CDRがそれぞれ配列番号269、270、および271に対し少なくとも75%同一であるその変異体、およびCDRのL1、L2、およびL3を含みかつ配列番号330に記載の配列を有するポリペプチドを含む軽鎖または該CDRがそれぞれ配列番号239、240、および241に対し少なくとも75%同一であるその変異体を有する(米国特許公開第20070110747号に記載されている通りである)。
【0049】
スクレロスチン結合物質は、CDRのH1、H2、およびH3を含みかつ配列番号345または396に記載の配列を有するポリペプチドを含む重鎖または該CDRがそれぞれ配列番号269、270、および271に対し少なくとも75%同一であるその変異体、およびCDRのL1、L2、およびL3を含みかつ配列番号341に記載の配列を有するポリペプチドを含む軽鎖または該CDRがそれぞれ配列番号239、240、および241に対し少なくとも75%同一であるその変異体を有してよい(米国特許公開第20070110747号に記載されている通りである)。
【0050】
あるいは、スクレロスチン結合物質は、配列番号137に記載の配列を有するポリペプチドを含む重鎖、および配列番号133に記載の配列を有するポリペプチドを含む軽鎖; または配列番号145または392に記載の配列を有するポリペプチドを含む重鎖、および配列番号141に記載の配列を有するポリペプチドを含む軽鎖; または配列番号335に記載の配列を有するポリペプチドを含む重鎖、および配列番号334に記載の配列を有するポリペプチドを含む軽鎖; または配列番号331に記載の配列を有するポリペプチドを含む重鎖、および配列番号330に記載の配列を有するポリペプチドを含む軽鎖; または配列番号345または396に記載の配列を有するポリペプチドを含む重鎖、および配列番号341に記載の配列を有するポリペプチドを含む軽鎖を有する(米国特許公開第20070110747号に記載されている通りである)。
【0051】
本発明の方法で使用するためのスクレロスチン結合物質は、好ましくは、米国特許公開第20070110747号に記載の細胞に基づくアッセイおよび/または米国特許公開第20070110747号に記載のin vivoアッセイにおいてスクレロスチン機能を改変(modulate)し、かつ/または米国特許公開第20070110747号に記載の1以上のエピトープに結合し、かつ/または米国特許公開第20070110747号に記載の抗体の1つの結合を交差阻害し、かつ/または米国特許公開第20070110747号に記載の抗体の1つによってスクレロスチンとの結合が交差阻害される。
【0052】
あるいは、本発明の方法は、本明細書中に記載のスクレロスチン結合物質以外のスクレロスチンインヒビターを投与するステップを含んでよい。そのような物質は直接または間接的にSOSTまたはスクレロスチンに作用することができる。本発明の方法での使用に想定されるスクレロスチンインヒビターには、米国特許公開第20030229041号(該文献の開示内容全体は参照によりここに組み入れられ、スクレロスチンインヒビターの記載が特に重要である)に記載のスクレロスチンインヒビターが含まれる。例えば、SOST発現およびスクレロスチン活性の調節に有用な物質には、非限定的に、ステロイド(例えば米国特許公開第20030229041号の式1に相当するステロイド)、アルカロイド、テルペノイド、ペプトイド、および合成化学物質が含まれる。いくつかの実施形態では、SOSTアンタゴニストまたはアゴニストは糖質コルチコイド受容体に結合することができる。例えば、デキサメタゾンは、SOST発現に対するBMP-4およびBMP-6の促進効果を無効にする傾向がある。糖質コルチコイド類似体、胆汁酸塩(例えば米国特許公開第20030229041号の式3に相当する胆汁酸塩)、およびプロスタグランジン(例えば米国特許公開第20030229041号の式2に相当するプロスタグランジン)を含む他の化学物質もまた、SOST発現に対する骨形成タンパク質の影響を調節し、本発明の方法での使用に想定される。
【0053】
スクレロスチンインヒビターは、in vivoにおいて、SOSTまたはスクレロスチンに対して直接または間接的に作用して少なくとも1つの骨吸収マーカーのレベルを減少させかつ/または少なくとも1つの骨形成マーカーのレベルを増加させる他の小分子治療薬であってもよい。用語「小分子」には、合成、天然由来、または部分的に合成の、好ましくは5,000ダルトン未満(例えば約100〜1,500ダルトンの範囲)の分子量を有する化合物または分子複合体が含まれる。当技術分野において公知のコンビナトリアルライブラリー法の多数のアプローチ、例えば空間的にアドレス可能な並行固相または液相ライブラリー、逆重畳積分を必要とする合成ライブラリー法、「1ビーズ1化合物」ライブラリー法、およびアフィニティークロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー法のいずれかを使用して、物質を取得することができる(例えば、Lam, Anticancer Drug Des., 12:145 (1997)および米国特許第5,738,996号; 第5,807,683号; および第7,261,892号を参照のこと)。スクレロスチンインヒビターの開発およびスクリーニング方法は米国特許公開第20030229041号(該文献の考察は参照によりここに組み入れられる)にさらに記載されている。
【0054】
本発明の方法にしたがって使用してよいスクレロスチン発現インヒビターには、インヒビターオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチド(製薬的に許容されるその塩、例えばナトリウム塩を含む)が含まれる。非限定的な例には、以下のものが含まれる: アンチセンスオリゴヌクレオチド(Eckstein, Antisense Nucleic Acid Drug Dev., 10: 117-121 (2000); Crooke, Methods Enzymol., 313: 3-45 (2000); Guvakova et al., J. Biol. Chem., 270: 2620-2627 (1995); Manoharan, Biochim. Biophys. Acta, 1489: 117-130 (1999); Baker et al., J. Biol. Chem., 272: 11994-12000 (1997); Kurreck, Eur. J. Biochem., 270: 1628-1644 (2003); Sierakowska et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 93: 12840-12844 (1996); Marwick, J. Am. Med. Assoc., 280: 871 (1998); Tomita and Morishita, Curr. Pharm. Des., 10: 797-803 (2004); Gleave and Monia, Nat. Rev. Cancer, 5: 468-479 (2005) およびPatil, AAPS J., 7: E61-E77 (2005))、三重オリゴヌクレオチド(Francois et al., Nucleic Acids Res., 16: 11431-11440 (1988) およびMoser and Dervan, Science, 238: 645-650 (1987))、リボザイム/デオキシリボザイム(DNAザイム) (Kruger et al., Tetrahymena. Cell, 31: 147-157 (1982); Uhlenbeck, Nature, 328: 596-600 (1987); Sigurdsson and Eckstein, Trends Biotechnol., 13: 286-289 (1995); Kumar et al., Gene Ther., 12: 1486-1493 (2005); Breaker and Joyce, Chem. Biol., 1: 223-229 (1994); Khachigian, Curr. Pharm. Biotechnol., 5: 337-339 (2004); Khachigian, Biochem. Pharmacol., 68: 1023-1025 (2004) およびTrulzsch and Wood, J. Neurochem., 88: 257-265 (2004))、低分子干渉RNA/RNAi (Fire et al., Nature, 391: 806-811 (1998); Montgomery et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 95: 15502-15507 (1998); Cullen, Nat. Immunol., 3: 597-599 (2002); Hannon, Nature, 418: 244-251 (2002); Bernstein et al., Nature, 409: 363-366 (2001); Nykanen et al., Cell, 107: 309-321 (2001); Gilmore et al., J. Drug Target., 12: 315-340 (2004); Reynolds et al., Nat. Biotechnol., 22: 326-330 (2004); Soutschek et al., Nature, 432173-178 (2004); Ralph et al., Nat. Med., 11: 429-433 (2005); Xia et al., Nat. Med., 10816-820 (2004) およびMiller et al., Nucleic Acids Res., 32: 661-668 (2004))、アプタマー(Ellington and Szostak, Nature, 346: 818-822 (1990); Doudna et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 92: 2355-2359 (1995); Tuerk and Gold, Science, 249: 505-510 (1990); White et al., Mol. Ther., 4: 567-573 (2001); Rusconi et al., Nature, 419: 90-94 (2002); Nimjee et al., Mol. Ther., 14: 408-415 (2006); Gragoudas et al., N. Engl. J. Med., 351: 3805-2816 (2004); Vinores, Curr. Opin. Mol. Ther., 5673-679 (2003) およびKourlas and Schiller et al., Clin. Ther., 28: 36-44 (2006))またはデコイオリゴヌクレオチド(decoy oligonucleotides) (Morishita et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 92: 5855-5859 (1995); Alexander et al., J. Am. Med. Assoc., 294: 2446-2454 (2005); Mann and Dzau, J. Clin. Invest., 106: 1071-1075 (2000) およびNimjee et al., Annu. Rev. Med., 56:555-583 (2005))。前記文献は参照によりその全体がここに組み入れられ、阻害性オリゴヌクレオチドの設計、作製および使用方法に関する該文献のセクションが特に重要である。市販の供給元、例えばAmbion Inc. (Austin, TX)、Darmacon Inc. (Lafayette, CO)、InvivoGen (San Diego, CA)、およびMolecular Research Laboratories, LLC (Herndon, VA)はカスタムsiRNA分子を製造している。さらに、カスタムsiRNA分子を製造するための市販のキット、例えばSILENCERTM siRNA Construction Kit (Ambion Inc., Austin, TX)またはpsiRNA System (InvivoGen, San Diego, CA)が入手可能である。
【0055】
安定で、ヌクレアーゼに対する高い抵抗性を有し、好適な薬物動態を有してそれらが無毒な用量で標的組織部位に往来することを可能にし、かつ原形質膜を横断する能力を有する阻害性オリゴヌクレオチドが治療薬としての使用に想定される。阻害性オリゴヌクレオチドは標的遺伝子のコード部分、3'または5'非翻訳領域、または遺伝子中のイントロン配列、あるいは標的mRNA中のコード配列またはイントロン配列に相補的である。イントロン配列は概してあまり保存されておらず、ゆえに高い特異性を提供する。一実施形態では、阻害性オリゴヌクレオチドは、1つの種の遺伝子産物の発現を阻害するが、別の種のその相同体の発現を阻害せず; 他の実施形態では、阻害性オリゴヌクレオチドは、2つの種、例えばヒトおよび霊長類、またはヒトおよびマウスにおいて遺伝子の発現を阻害する。
【0056】
細胞でのアンチセンスオリゴヌクレオチドの構成的発現は、恐らく翻訳の遮断またはスプライシングの妨害を介して、遺伝子発現を阻害することが示されている。特定の実施形態では、阻害性オリゴヌクレオチドは、中または高ストリンジェンシー条件下で、スクレロスチン遺伝子またはmRNA (またはその逆鎖)の少なくとも8、9、10、11、または12個の連続した塩基とハイブリダイズ可能である。好適な阻害性オリゴヌクレオチドは一本鎖であってよく、かつmRNAまたはDNA分子に対して、それが該mRNAまたはDNA分子にハイブリダイズしかつ転写、スプライシングまたは翻訳を阻害するほど十分に相補的でかつ特異的なセグメント、例えば少なくとも12、15または18塩基長を含有してよい。一般に、30塩基未満の長さにわたる相補性で十分過ぎるほどである。
【0057】
典型的に、ストリンジェントな条件は、pH 7.0〜8.3で塩濃度が約1.5 M未満のNaイオン、典型的に約0.01〜1.0 M Naイオン濃度(または他の塩)であり、かつ温度が短い核酸(例えば10〜50ヌクレオチド)については少なくとも約30℃であり、長い核酸(例えば50ヌクレオチドを超える核酸)については少なくとも約60℃である条件である。不安定化剤、例えばホルムアミドを加えることによってストリンジェントな条件を達成してもよい。典型的な低ストリンジェンシー条件は、30%〜35%ホルムアミド、1 M NaCl、1% SDS (ドデシル硫酸ナトリウム)の緩衝液で37℃でのハイブリダイゼーション、および1X〜2X SSC (20X SSC = 3.0 M NaCl/0.3 M クエン酸3ナトリウム)中で50℃〜55℃での洗浄を含む。典型的な中ストリンジェンシー条件は、40%〜45%ホルムアミド、1.0 M NaCl、1% SDS中で37℃でのハイブリダイゼーション、および0.5X〜1X SSC中で55℃〜60℃での洗浄を含む。典型的な高ストリンジェンシー条件は、50%ホルムアミド、1 M NaCl、1% SDS中で37℃でのハイブリダイゼーション、および0.1X SSC中で60℃〜65℃での洗浄を含む。ハイブリダイゼーションの期間は概して約24時間未満であり、通常約4時間〜約12時間である。
【0058】
いくつかの事例では、相補的領域の長さに応じて、1、2またはそれ以上のミスマッチが阻害機能に影響なく許容される。特定の実施形態では、阻害性オリゴヌクレオチドは、アンチセンスオリゴヌクレオチド、阻害性RNA (siRNAまたはRNAi、またはshRNAを含む)、DNA酵素、リボザイム(場合によりハンマーヘッド型リボザイム)、アプタマー、または製薬的に許容されるその塩である。一実施形態では、該オリゴヌクレオチドは米国特許公開第20040158045号の配列番号1をコードするヌクレオチド配列の少なくとも10塩基に相補的である。一実施形態では、該オリゴヌクレオチドは、スクレロスチンmRNAの3'非翻訳領域の近くに位置するヌクレオチドを標的にする。
【0059】
オリゴヌクレオチドの設計に利用される具体的配列は、標的の発現された遺伝子転写物(gene message)内に含まれる任意の連続したヌクレオチド配列であってよい。阻害性オリゴヌクレオチド配列の標的部位を支配する要因には、オリゴヌクレオチドの長さ、結合親和性、および標的配列の接近可能性が含まれる。配列は、標的タンパク質翻訳および標的関連表現型の阻害、例えば培養細胞での細胞増殖の阻害を測定することによってその阻害活性の効力に関してin vitroでスクリーニングすることができる。一般に、アンチセンスオリゴヌクレオチドを使用して、RNAのほとんどの領域(5'および3'非翻訳領域、AUG開始部位、コード領域、スプライス結合部位およびイントロン)を標的にすることができることが知られている。当技術分野において公知のプログラムおよびアルゴリズムを使用して、適切な標的配列を選択することができる。さらに、指定された一本鎖核酸配列の二次構造を予測するように設計されかつフォールディングしたmRNAの露出した一本鎖領域に存在する可能性が高い配列の選択を可能にするプログラムを利用して最適な配列を選択することができる。適切なオリゴヌクレオチドを設計するための方法および組成物は、例えば、米国特許第6,251,588号(該文献の内容は参照によりその全体がここに組み入れられる)に見出せる。
【0060】
ホスホロチオアートアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用してよい。リン酸ジエステル結合ならびに複素環または糖の改変によって効率の増加をもたらすことができる。ホスホロチオアート(Phophorothioate)を使用してリン酸ジエステル結合を改変する。N3'-P5'ホスホルアミダート結合は、ヌクレアーゼに対してオリゴヌクレオチドを安定化しかつRNAに対する結合を増加させると報告されている。ペプチド核酸(PNA)結合はリボースおよびリン酸ジエステル主鎖の全置換であり、ヌクレアーゼに対して安定であり、RNAに対する結合親和性を増加させ、RNアーゼHによる切断を許容しない。またその基本構造は、アンチセンス成分としてのその最適化を可能にする改変を施しやすい。複素環の改変では、特定の複素環改変は、RNアーゼH活性を妨害することなく、アンチセンス効果を増大することが判明している。そのような改変の例はC-5チアゾール改変である。最後に、糖の改変を考慮してもよい。2'-O-プロピルおよび2'-メトキシエトキシリボース改変は、細胞培養中およびin vivoでヌクレアーゼに対してオリゴヌクレオチドを安定化する。
【0061】
ほとんどのmRNAはいくつかの二次構造および三次構造を含有することが示されている。RNA中の二次構造エレメントは、主に、同一RNA分子の異なる領域間のワトソン・クリック型相互作用によって形成される。重要な二次構造エレメントには、分子内二本鎖領域、ヘアピンループ、二重鎖RNA中のバルジおよび内部ループが含まれる。二次構造エレメントが互いにまたは一本鎖領域と接触して、より複合な三次元構造を作ると、三次構造エレメントが形成される。複数の研究者が、多数のRNA二重鎖構造の結合エネルギーを測定し、RNAの二次構造を予測するために使用できる一連のルールを導き出している(例えば、Jaeger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86:7706 (1989); およびTurner et al., Annu. Rev. Biophys. Biophys. Chem. 17:167 (1988)を参照のこと)。該ルールはRNA構造エレメントの特定に有用であり、特に、siRNA、リボザイム、またはアンチセンステクノロジーの標的としてのmRNAのセグメントである一本鎖RNA領域を特定するために有用である。
【0062】
短鎖干渉(short interfering;si)RNAテクノロジー(RNAiとしても知られる)は、概して、該配列に相同な二本鎖RNA (dsRNA)によって誘発される特定の配列のmRNAの分解を含み、それにより、対応する遺伝子の発現を「妨害(干渉)」する。任意の選択遺伝子は、該遺伝子のmRNAの全体または実質的部分に対応するdsRNAを導入することによって抑制することができる。長いdsRNAが発現される場合、まずリボヌクレアーゼIIIによってプロセシングされて、わずか21〜22塩基対長の短いdsRNAオリゴヌクレオチドになるようである。したがって、siRNAは比較的短い相同dsRNAの導入または発現によって影響される。典型的なsiRNAは、各3'末端に2ヌクレオチドのオーバーハングを有する約19ヌクレオチドの二本鎖RNAを形成する約21ヌクレオチドのセンスおよびアンチセンス鎖を有する。実際、比較的短い相同dsRNAの使用は特定の利点を有する。
【0063】
哺乳類細胞は、二本鎖RNA (dsRNA)によって影響を受ける少なくとも2つの経路を有する。配列特異的siRNA経路では、上記のように、開始dsRNAが最初に分解されて短鎖干渉RNAになる。短鎖干渉RNAは、特定のメッセンジャーRNAが分解の標的になることを可能にする配列情報を提供すると考えられる。対照的に、非特異的経路は、任意の配列のdsRNAによって、それが少なくとも約30塩基対長である限り、誘発される。
【0064】
非特異的効果は、2つの酵素: PKR (その活性型において翻訳開始因子eIF2をリン酸化してすべてのタンパク質合成を停止させる)、および2', 5' オリゴアデニル酸シンテターゼ(2', 5'-AS) (すべてのmRNAを標的にする非特異的酵素であるRNアーゼLを活性化する分子を合成する)をdsRNAが活性化するために生じる。非特異的経路はストレスまたはウイルス感染に対する宿主応答であってよく、概して、非特異的経路の影響は好ましくは最小限にされる。重要なことに、非特異的経路を誘発するためには長いdsRNAが必要とされるようであり、したがって、RNAiによる遺伝子抑制を達成するために約30塩基対より短いdsRNAが想定される(Hunter et al., J. Biol. Chem., 250: 409-17 (1975); Manche et al., Mol. Cell. Biol. 12: 5239-48 (1992); Minks et al., J. Biol. Chem., 254: 10180-3 (1979); およびElbashir et al., Nature, 411: 494-8 (2001)を参照のこと)。
【0065】
siRNAは、種々の細胞タイプでの遺伝子発現を減少させる有効な手段であることが示されている。siRNAは、典型的に、遺伝子の発現を減少させて、アンチセンス技術を使用して達成されるレベルより低いレベルにし、発現を完全に排除することが多い(Bass, Nature, 411: 428-9 (2001)を参照のこと)。哺乳類細胞では、siRNAは、アンチセンス実験で典型的に使用される濃度より桁違いに低い濃度で有効である(Elbashir et al., Nature, 411:494-8 (2001))。
【0066】
RNAiを達成するために使用される二本鎖オリゴヌクレオチドは好ましくは30塩基対未満の長さであり、例えば、約25、24、23、22、21、20、19、18、または17塩基対以下の長さであり、かつ標的mRNAに対するハイブリダイゼーションを可能にするために十分に標的mRNAに相補的なセグメントを含有する。場合により、dsRNAオリゴヌクレオチドは3'オーバーハング末端を含んでよい。典型的な2-ヌクレオチドの3'オーバーハングは任意のタイプのリボヌクレオチド残基から構成されてよく、2'-デオキシチミジン残基(resides)から構成されてもよく、それにより、RNA合成のコストが下がり、細胞培養培地中およびトランスフェクト細胞内でのsiRNAのヌクレアーゼ抵抗性が高まる(Elbashi et al., 上記を参照のこと)。典型的なdsRNAは化学合成するか、または適切な発現ベクターを使用してin vitroまたはin vivoで生産することができる(例えばElbashir et al., Genes Dev., 15:188-200 (2001)を参照のこと)。当技術分野において公知のプロモーター、例えばT7 RNAポリメラーゼプロモーターから長いRNAを転写させてよい。
【0067】
本発明の特定の実施形態において、50、75、100、さらには500塩基対またはそれ以上の長いdsRNAを利用してもよい。RNAiを達成するためのdsRNAの典型的な濃度は、約0.05 nM、0.1 nM、0.5 nM、1.0 nM、1.5 nM、25 nM、または100 nMであるが、治療対象の細胞、遺伝子標的および当業者によって容易に認識される他の要因の性質に応じて他の濃度を利用してもよい。
【0068】
siRNAテクノロジーの追加の組成物、方法および適用は米国特許第6,278,039号; 第5,723,750号; および第5,244,805号(該文献は参照によりその全体がここに組み入れられる)に記載されている。
【0069】
siRNAと比較して、shRNAはサイレンシング寿命および送達選択肢において利点を提供する。レビューに関して、例えばHannon et al., Nature, 431:371-378 (2004)を参照のこと。細胞内でプロセシングされて、siRNA様特性を有する短い二重鎖RNAになるshRNAを生産するベクターが報告されている(Brummelkamp et al., Science, 296: 550-553 (2000); Paddison et al., Genes Dev., 16: 948-958 (2002))。そのようなベクターは、宿主細胞ゲノムへのベクターの安定な組み込み後に持続的遺伝子サイレンシングを媒介できる遺伝子サイレンシング試薬の再生可能な供給源を提供する。さらに、異所mRNA発現を可能にするDNA構築物の送達のために開発された無数の方法のいずれかにおいて、コアサイレインシング「ヘアピン」カセットを、レトロウイルス、レンチウイルス、またはアデノウイルスベクターに容易に挿入し、広範囲の細胞タイプへのshRNAの送達を促進することができる(Brummelkamp et al., Cancer Cell, 2:243-247 (2002); Dirac et al., J. Biol. Chem., 278:11731-11734 (2003); Michiels et al., Nat. Biotechnol., 20:1154-1157 (2002); Stegmeie et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 102:13212-13217 (2005); Khvorova et al., Cell, 115:209-216 (2003))。
【0070】
ヘアピンは、左巻きヘアピン(すなわち5'-アンチセンス-ループ-センス-3')または右巻きヘアピン(すなわち5'-センス-ループ-アンチセンス-3')で構成することができる。ヘアピンの構成に応じて、siRNAはセンス鎖またはアンチセンス鎖の5'または3'末端にオーバーハングを含有してもよい。好ましくは、任意のオーバーハングが存在するならば、それらはヘアピンの3'末端であり、1〜6個の範囲の塩基を含む。オーバーハングは無改変であるか、または1個以上の特異性または安定化改変、例えば2'位のハロゲンまたはO-アルキル改変、またはヌクレオチド間改変、例えばホスホロチオアート、ホスホロジチオアート、またはメチルホスホナート改変を含有してよい。オーバーハングは、リボ核酸、デオキシリボ核酸、またはリボ核酸およびデオキシリボ核酸の組み合わせであってよい。
【0071】
加えて、ヘアピンは最も5'側のヌクレオチド上にリン酸基をさらに含んでよい。最も5'側のヌクレオチドのリン酸化とは、5'末端ヌクレオチドの糖部分の5'炭素に取り付けられている1個以上のリン酸基の存在を表す。好ましくは、Dicerプロセシング後にアンチセンス鎖を形成する領域の5'末端に1個のリン酸基のみが存在する。典型的な一実施形態では、右巻きヘアピンは、5'リン酸基を有さない5'末端(すなわちセンス領域の遊離5'末端)を含むか、またはリン酸化を妨げるように改変される、センス領域の遊離の最も5'側のヌクレオチドの5'炭素を有してよい。これは種々の方法によって達成することができ、該方法には、非限定的に、リン酸化遮断基(例えば5'-O-アルキル基)の付加、または5'-OH官能基の除去(例えば最も5'側のヌクレオチドが5'-デオキシヌクレオチドである)が含まれる。ヘアピンが左巻きヘアピンである場合、好ましくは、最も5'側のヌクレオチドの5'炭素位置がリン酸化される。
【0072】
26塩基対より基部(ステム)の長さ(stem lengths)を有するヘアピンをDicerによってプロセシングして、いくつかの部分が、mRNA分解を促進するsiRNA生成物に含まれないようにすることができる。したがって、センスヌクレオチドを含む第一の領域、およびアンチセンスヌクレオチドを含む第二の領域は、相補的(または少なくとも実質的に互いに相補的)であるが標的mRNAと同一またはそれに相補的であってもなくてもよいヌクレオチドのストレッチを含有してもよい。shRNAの基部はオーバーハングを除いて相補的または部分的に相補的なアンチセンスおよびセンス鎖から構成されてよく、またshRNAは以下の部分または領域: (1) 最終的なDicer切断部位の遠位の、標的mRNAに実質的に相補的/相同である領域を含有する分子の部分; および(2) Dicer切断部位の近位(すなわちループに隣接する領域)の、標的mRNAに無関連または部分的にしか関連しない(例えば相補的/相同でない)基部の領域を含んでよい。この第二の領域のヌクレオチド含量は、非限定的に熱力学的特性またはプロファイルを含むいくつかのパラメータに基づいて選択することができる。
【0073】
改変されたshRNAはDicerプロセシング後の二重鎖において改変を保持することができる。典型的な実施形態では、ヘアピンが、分子の3'末端に2-6ヌクレオチドのオーバーハングを含有する右巻きヘアピン(例えば5'-S-ループ-AS-3')である場合、ヘアピンの5'末端の第2位、第1および2位、または第1、2、および3位のヌクレオチドに2'-O-メチル改変を付加することができる。また、この立体配置を有するヘアピンのDicerプロセシングはセンス鎖の5'末端をインタクトのまま保持することができ、ゆえにDicerプロセシング後の二重鎖において化学改変のパターンを保存することができる。この立体配置における3'オーバーハングの存在は特に有益でありうる。その理由は、所定の改変パターンを含有する平滑末端分子をDicerによってさらにプロセシングして、2'改変を有するヌクレオチドが除去されるようにすることができるからである。3'オーバーハングが存在し/保持されている場合、センス改変ヌクレオチドを有する得られた二重鎖はサイレンシング特異性および機能性に関して非常に好都合な特性を有しうる。典型的な改変パターンの例は、米国特許公開第20050223427号および国際特許公開第WO 2004/090105号および第WO 2005/078094号(該各文献の開示内容は参照によりその全体がここに組み入れられる)に詳細に記載されている。
【0074】
shRNAはランダムにまたは任意の合理的デザイン選択手順にしたがって選択された配列を含んでよい。例えば、合理的デザインアルゴリズムは、国際特許公開第WO 2004/045543号および米国特許公開第20050255487号(該文献の開示内容は参照によりその全体がここに組み入れられる)に記載されている。さらに、細胞機構によるアクセスまたはプロセシングを容易にする平均内部安定性プロファイル(「AISP」)または局所内部安定性プロファイル(「RISP」)に全体的または部分的に基づいて配列を選択することが望ましい。
【0075】
リボザイムは、mRNAの特異的切断を触媒し、ゆえに翻訳を妨げることが可能な酵素的RNA分子である。(レビューに関して、Rossi, Current Biology, 4:469-471 (1994)を参照のこと)。リボザイム作用の機構は、相補的標的RNAに対するリボザイム分子の配列特異的ハイブリダイゼーション、その後のヌクレオチド鎖切断(endonucleolytic cleavage)イベントを含む。リボザイム分子は、好ましくは、(1) 標的mRNAに相補的な1以上の配列、および(2) mRNA切断に関与する周知の触媒配列または機能上等価な配列を含む(例えば米国特許第5,093,246号(該文献は参照によりその全体がここに組み入れられる)を参照のこと)。
【0076】
部位特異的認識配列の位置でmRNAを切断するリボザイムを使用して標的mRNAを破壊することができるが、ハンマーヘッド型リボザイムを代わりに使用してもよい。ハンマーヘッド型リボザイムは、標的mRNAと相補的塩基対を形成するフラキング領域によって決定される位置でmRNAを切断する。好ましくは、標的mRNAは2塩基の以下の配列: 5'-UG-3'を有する。ハンマーヘッド型リボザイムの構築および製造は当技術分野において周知であり、Haseloff and Gerlach, Nature, 334:585-591 (1988); および国際特許公開第WO 89/05852号(該文献の内容は参照によりその全体がここに組み入れられる)でさらに完全に記載されている。
【0077】
遺伝子ターゲティングリボザイムは、標的mRNAの2領域に相補的なハイブリダイズ領域を含有し、該各領域は、少なくとも5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20個連続したヌクレオチドである(が、それらはともに同じ長さである必要はない)。
【0078】
ハンマーヘッド型リボザイム配列を安定なRNA、例えばトランスファーRNA (tRNA)に組み込んで、in vivoの切断効率を高めることができる(Perriman et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92:6175-79 (1995); de Feyter and Gaudron, Methods in Molecular Biology, Vol. 74, Chapter 43, "Expressing Ribozymes in Plants," Turner, P. C. (ed.), Humana Press Inc., Totowa, N.J.)。特に、tRNA融合リボザイムのRNAポリメラーゼIII媒介性発現は当技術分野において周知である(Kawasaki et al., Nature, 393:284-9 (1998); Kuwabara et al., Nature Biotechnol., 16:961-5 (1998); およびKuwabara et al., Mol. Cell, 2:617-27 (1998); Koseki et al., J. Virol., 73:1868-77 (1999); Kuwabara et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 96:1886-91 (1999); Tanabe et al., Nature, 406:473-4 (2000)を参照のこと)。所定の標的cDNA配列内に、典型的にいくつかの潜在的ハンマーヘッド型リボザイム切断部位が存在する。好ましくはリボザイムは、効率を高めかつ非機能的mRNA転写物の細胞内蓄積を最小限にするために切断認識部位が標的mRNA-の5'末端付近に位置するように操作される。さらに、標的mRNAの異なる部分をコードする標的配列中に位置する任意の切断認識部位を使用すると、一方または他方の標的遺伝子の選択的ターゲティングが可能になる。
【0079】
また、本発明の方法で使用するためのリボザイムには、RNAエンドリボヌクレアーゼ(「Cech型リボザイム」)、例えばTetrahymena thermophilaに天然に存在するもの(IVS、またはL-19 IVS RNAとして知られる)およびZaug et al., Science, 224:574-578 (1984); Zaug, et al., Science, 231:470-475 (1986); Zaug et al., Nature, 324:429-433 (1986); 国際特許公開第WO 88/04300号; およびBeen et al., Cell, 47:207-216 (1986))において広範囲に記載されているものが含まれる。Cech型リボザイムは8塩基対の活性部位を有し、それは標的RNA配列にハイブリダイズし、その後、標的RNAの切断が生じる。一実施形態では、本発明の方法では、標的遺伝子または核酸配列中に存在する8塩基対の活性部位配列を標的にするCech型リボザイムを用いる。
【0080】
リボザイムは修飾オリゴヌクレオチド(例えば、向上した安定性、ターゲティング、等のための修飾オリゴヌクレオチド)から構成されてよく、化学合成するか、または発現ベクターによって生産することができる。リボザイムは、アンチセンス分子と異なり、触媒作用を有するため、効率のために、より低い細胞内濃度しか必要とされない。さらに、特定の実施形態では、まず、RNAiによる有効なノックダウンを生じさせるために十分な配列部分を特定することによってリボザイムを設計することができる。そして、同配列の部分をリボザイムに組み込んでよい。
【0081】
あるいは、遺伝子の調節領域(すなわちプロモーターおよび/またはエンハンサー)に相補的なデオキシリボヌクレオチド配列をターゲティングして、身体の標的細胞での遺伝子の転写を妨げる三重らせん構造を形成させることによって、標的遺伝子発現を減少させることができる。(一般に、Helene, C., Anticancer Drug Des., 6:569-84 (1991); Helene et al., Ann. N.Y. Acad. Sci., 660:27-36 (1992); およびMaher, L. J., Bioassays, 14:807-15 (1992)を参照のこと)。
【0082】
転写の阻害のための三重らせん形成に使用するための核酸分子は好ましくは一本鎖であり、かつデオキシリボヌクレオチドから構成される。これらのオリゴヌクレオチドの塩基組成は、Hoogsteen塩基対合則による三重らせん形成を促進すべきであり、それは概して、プリンまたはピリミジンのかなりの大きさのストレッチが二重鎖の一方のストランド上に存在することを必要とする。ヌクレオチド配列はピリミジンに基づく配列であってよく、それは、得られた三重らせんの3つの関連する鎖を横断するTATおよびCGCトリプレットを生じさせる。ピリミジンリッチ分子は、該鎖に対して平行の配向の二重鎖の一本鎖のプリンリッチ領域に対する塩基相補性を提供する。さらに、例えばG残基のストレッチを含有するプリンリッチの核酸分子を選択することができる。これらの分子は、大多数のプリン残基が、標的である二重鎖の一本鎖上に位置する、GCペアに富むDNA二重鎖を有する三重らせんを形成し、三重鎖の3つの鎖を横断するCGCトリプレットを生じさせる。
【0083】
あるいは、いわゆる「スイッチバック」核酸分子を作製することによって三重らせん形成の標的になりうる標的配列を増加させることができる。スイッチバック分子は、交互の5'-3'、3'-5'様式で、それらが二重鎖の第一のストランドおよび次いで他方のストランドと塩基対形成するように合成され、プリンまたはピリミジンのかなりの大きさのストレッチが二重鎖の一方のストランド上に存在する必要性を排除する。
【0084】
あるいは、DNA酵素を使用して、標的遺伝子、例えばスクレロスチン遺伝子の発現を阻害することができる。DNA酵素は、アンチセンスおよびリボザイムの両テクノロジーのいくつかの機構的特徴を含んでいる。DNA酵素は、アンチセンスオリゴヌクレオチドと同様にそれらが特定の標的核酸配列を認識するように設計される。しかし、それらは触媒作用をも有し、標的核酸を特異的に切断する。
【0085】
DNA酵素には、Santoro and Joyceによって同定された2つの基本的種類が含まれる(例えば米国特許第6,110,462号を参照のこと)。10-23 DNA酵素は、2つのアームを連結するループ構造を含む。2つのアームは、特定の標的核酸配列を認識することによって特異性を提供し、ループ構造は生理的条件下での触媒機能を提供する。
【0086】
好ましくは、特有(unique)または実質的に特有の配列は約18〜22ヌクレオチドのG/Cリッチセグメントである。高いG/C含量はDNA酵素と標的配列との強い相互作用を保証するために役立つ。酵素をその転写物(message)に向けて標的化する特異的アンチセンス認識配列はDNA酵素の2つのアームの間に分配される。
【0087】
DNA酵素の作製および投与方法は例えば米国特許第6,110,462号に見出せる。さらに、アンチセンスオリゴヌクレオチドと同様に、DNA酵素を場合により改変して、安定性を改善し、かつ分解に対する抵抗性を改善することができることを当業者は認識する。
【0088】
阻害性オリゴヌクレオチドは、直接投与するか、またはベクター、例えばウイルスベクターまたはプラスミドを介する形質転換またはトランスフェクションによって細胞に送達することができ、該ベクターには、所望の細胞中で阻害性オリゴヌクレオチドの発現を生じさせるために、プロモーターを含む適切な調節配列を有する阻害性オリゴヌクレオチドをコードするDNAが配置されている。公知の方法には、標準的な一過性トランスフェクション、安定トランスフェクションおよびレトロウイルス〜アデノウイルスにおよぶウイルスを使用する送達が含まれる。複製または複製欠損ベクターによる核酸インヒビターの送達が想定される。発現は、構成性または誘導性プロモーター系によって駆動することもできる(Paddison et al., Methods Mol. Biol., 265:85-100 (2004))。他の実施形態では、発現は組織または発生特異的プロモーターの制御下にあってよい。
【0089】
例えば、担体組成物、例えばLipofectamine 2000 (Life Technologies)またはOligofectamine (Life Technologies)を使用するトランスフェクションによってベクターを導入してもよい。hGFPをコードするpAD3の共トランスフェクション後に哺乳類セルラインの蛍光顕微鏡検査を使用してトランスフェクション効率を調査することができる(Kehlenback et al., J. Cell Biol., 141:863-74 (1998))。
【0090】
送達経路は、上記基準にしたがって測定される最良の阻害効果を提供する経路である。カチオン性リポソームによって媒介される送達、レトロウイルスベクターによる送達および直接送達が効率的である。
【0091】
阻害性オリゴヌクレオチドの有効性は、新規タンパク質合成を抑制した後、内因性プールの代謝回転に十分な時間の後に、複数のアッセイのいずれかによって評価することができ、該アッセイには、ヒトスクレロスチンmRNAの存在レベルを測定するための逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応またはノーザンブロット分析、またはヒトスクレロスチンタンパク質を認識する抗体を使用するウエスタンブロット分析が含まれる。
【0092】
以下に実施例を挙げ、本発明をさらに説明する。実施例は本発明を説明するためだけに役立つものであり、いかなる意味においても本発明の範囲を限定しないものとする。
【実施例】
【0093】
実施例
本実施例は、スクレロスチン結合物質が骨吸収のマーカーのレベルを減少させかつ1種以上の骨形成マーカーのレベルを増加させたin vivo研究を記載する。
【0094】
健康な男性および閉経後女性における、単一施設、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、漸増(ascending)単回投与研究を実施した。約72人の被験体が6用量コホートの1つに参加した。コホート1、2、3a、4、5および6aでは、8人の健康な閉経後女性を、3:1の比でスクレロスチン結合物質またはプラセボを、それぞれ0.1 mg/kg、0.3 mg/kg、1 mg/kg、3 mg/kg、5 mg/kg、または10 mg/kgの用量レベルで皮下注射によって投与されるよう無作為化した。コホート3bおよび6bでは、8人の健康な男性に、3:3:1:1の比(静脈内のスクレロスチン結合物質: 皮下のスクレロスチン結合物質: 静脈内のプラセボ: 皮下のプラセボ)でスクレロスチン結合物質またはプラセボを、それぞれ1 mg/kgまたは10 mg/kg (5 mg/kgに減らす)の用量レベルで静脈内および皮下投与した。コホート3cおよび6cでは、4人の健康な閉経後女性を、それぞれ1 mg/kgまたは10 mg/kg (5 mg/kgに減らされる)の用量レベルで、3:1の比でスクレロスチン結合物質またはプラセボを静脈内投与されるよう無作為化した。
【0095】
投与前、そして投与後12週間少なくとも毎週、骨吸収マーカーおよび骨形成マーカーのレベルを測定することによって抗スクレロスチン治療をモニタリングした。健康な閉経後女性でのスクレロスチン結合物質の一回量の皮下投与後にP1NPおよびBSAPレベルをモニタリングした(図1および2を参照のこと)。0.1 mg/kgおよび0.3 mg/kgを投与された被験体は、P1NPまたはBSAPレベルの最小の上昇しか享受しなかった(例えばレベルは20%未満しか増加しなかった)。
【0096】
1 mg/kgを投与された被験体でのP1NPレベルは10日目までに約20%増加し、次第に減少して56日目頃にベースラインになったが、一方BSAPレベルは14日目にベースラインを約30%超える値でピークに達した。3 mg/kgを投与された被験体のP1NPおよびBSAPレベルは、21日目にベースラインからの約100% (P1NP)および60% (BSAP)増加でピークに達し、約56日目でベースラインに戻った。5 mg/kgを投与された被験体では、P1NPのレベルは投与後14日目にベースラインを約140%超えるまで増加し、77日目に上昇したままであった。換言すれば、P1NPのレベルは治療後2週間までに約140%増加した。BSAPはベースラインを約115%超えるまで増加し、84日目に上昇したままであった。同様に、10 mg/kgの投与は、約28日目でP1NPレベルの180%増加を誘発した。モニタリング期間を通してP1NPレベルは上昇したままであった。10 mg/kgを投与された被験体は、21日目にBSAPレベルのピークの増加(投与3週間で125%ベースライン)を示し、それもまた、84日目に上昇したままであった。この研究の結果を図1および2に示す。
【0097】
また、健康な閉経後女性でのスクレロスチン結合物質の一回量の皮下投与後にオステオカルシンをモニタリングした(図3を参照のこと)。1 mg/kg未満を投与された被験体はオステオカルシンの上昇をほとんど経験しなかった。1 mg/kgを投与された患者のオステオカルシンレベルは変動し、21および35日目にベースラインを約30%を超える値でピークに達した。3 mg/kgを投与された被験体では、オステオカルシンレベルは21日目でベースラインを約100%を超える値でピークに達し、約56日目までレベルは上昇したままであった。同様に、5 mg/kgスクレロスチン結合物質を投与すると、28日目でオステオカルシンレベルが140%増加し、該レベルは84日目にも維持された。10 mg/kgを投与された被験体は35日の時点でベースラインを約180%超えるピークオステオカルシンレベルを示した。オステオカルシンレベルは少なくとも約77日目までベースラインよりも上昇したままであった。
【0098】
また、骨吸収マーカーsCTxのレベルをモニタリングした(図4を参照のこと)。プラセボおよび0.1 mg/kgを投与された被験体はsCTxレベルの小幅(例えば20%未満)の減少を示した。0.3 mg/kgのスクレロスチン結合物質を投与すると、21日目までにsCTxレベルが約20%減少した(すなわち、sCTXレベルは治療後2週間までに約20%減少した)。1 mg/kgを投与された被験体でのレベルは変動するが、10、28、および49日目にベースラインを約30%下回る値に達した。3 mg/kg、5 mg/kg、および10 mg/kgを投与された被験体でのレベルは14日目に最も低くなり、それぞれベースラインを約35%、55%、および55%下回る値までになり、その後のモニタリング時にはレベルはベースラインを下回ったままであった。すべてのモニタリングされたバイオマーカーのレベルの比較を図5に挙げる。
【0099】
健康な閉経後女性でのスクレロスチン結合物質の一回量の皮下投与後に血清イオン化カルシウムレベルをモニタリングした(図6を参照のこと)。意外なことに、イオン化カルシウムレベルはいずれの用量でも劇的には変動しなかった。実際、すべての被験体(プラセボを投与された被験体を含む)は、モニタリング期間中に、約5%の血清イオン化カルシウムの小幅の一時的減少を経験した。
【0100】
最後に、1 mg/kg、3 mg/kg、5 mg/kg、または10 mg/kgスクレロスチン結合物質を投与された健康な閉経後女性の脊椎および臀部の骨密度を測定した(図7を参照のこと)。特に5 mg/kgおよび10 mg/kgを投与された患者において、例えば28、56、および84日目に、脊椎のBMDの顕著な増加が観察された。臀部のBMDは脊椎のBMDより増加しなかったが、3 mg/kg、5 mg/kg、および10 mg/kgを投与された患者において56日目でBMDが上昇していた。BMDは、5 mg/kgおよび10 mg/kgを投与された患者において84日目でさらに上昇していた。
【0101】
この実施例は、本発明の方法が、血清カルシウムの劇的な変化を伴わずに、骨吸収のマーカーのレベルを減少させ、骨形成のマーカーのレベルを上昇させ、そして骨密度を増加させる能力を説明する。一回量のスクレロスチン結合物質の治療効果は長寿命であり、骨形成マーカーレベルの増加および骨吸収マーカーレベルの減少は治療の84日(12週間)後に依然として観察される。さらに、本明細書中に記載のデータは、本発明の治療効力が、骨形成と骨吸収を「脱共役」してin vivoでの骨形成およびミネラル化を最大にすることによって、他の治療と比較して顕著な利点を有することを示す。
【0102】
本明細書中で引用されるすべての参考文献、例えば、特許、特許出願、文献刊行物、等は、参照によりその全体がここに組み入れられる。
【0103】
好ましい実施形態を中心に本発明を説明してきたが、好ましい化合物および方法のバリエーションを使用してよいことおよび本明細書に具体的に記載される様式とは別の様式で本発明を実施してよいものとすることが当業者に自明である。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲によって規定される本発明の思想および範囲内に包含されるすべての改変を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体での骨吸収を阻害するための方法であって、約1 mg/kg〜約10 mg/kgの量のスクレロスチン結合物質を被験体に投与するステップを含み、
該量は、I型コラーゲンのC-テロペプチド(CTX)の血清レベルを、治療開始後3週間までに治療前または正常レベルと比較して少なくとも20%減少させるために有効であり、
かつ、骨吸収が阻害される、方法。
【請求項2】
該量のスクレロスチン結合物質が、骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)の血清レベル、プロコラーゲン1型のアミノ末端伸長部分のペプチド(PINP)の血清レベル、およびオステオカルシン(OstCa)の血清レベルからなる群から選択される骨形成のマーカーを、治療開始後3週間までに治療前または正常レベルと比較して少なくとも20%増加させる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
該量のスクレロスチン結合物質が低カルシウム血症または高カルシウム血症を引き起こさない、請求項1記載の方法。
【請求項4】
被験体での骨密度(bone mineral density)を増加させるための方法であって、約1 mg/kg〜約10 mg/kgの量のスクレロスチン結合物質を被験体に投与するステップを含み、
該量は、(a) CTXの血清レベルを、治療開始後3週間までに治療前または正常レベルと比較して少なくとも20%減少させるため、および(b) 骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)の血清レベル、プロコラーゲン1型のアミノ末端伸長部分のペプチド(PINP)の血清レベル、およびオステオカルシン(OstCa)の血清レベルからなる群から選択される骨形成マーカーの血清レベルを、治療開始後3週間までに治療前または正常レベルと比較して少なくとも20%増加させるために有効であり、
かつ、骨密度が増加する、方法。
【請求項5】
臀部、脊椎、手関節、手指、脛骨および/または踵の骨密度を少なくとも約1%増加させる、請求項4記載の方法。
【請求項6】
脊椎の骨密度を少なくとも約1%増加させる、請求項5記載の方法。
【請求項7】
若年成人健常者の正常な骨密度を下回る約1〜2.5標準偏差の範囲に骨密度を増加させる、請求項4記載の方法。
【請求項8】
若年成人健常者の正常な骨密度を下回る約0〜1標準偏差の範囲に骨密度を増加させる、請求項4記載の方法。
【請求項9】
被験体の骨関連障害を治療するための方法であって、
(a) 第一の期間に約1 mg/kg〜約10 mg/kgの量のスクレロスチン結合物質を被験体に投与し、該量が、臀部、脊椎、手関節、手指、脛骨および/または踵の骨密度を少なくとも約3%増加させるために有効であるステップ、および
(b) 骨密度を維持するために有効な第二の期間に約1 mg/kg〜約10 mg/kgの量のスクレロスチン結合物質を被験体に投与するステップ
を含む方法。
【請求項10】
第一の期間が3か月以下である、請求項9記載の方法。
【請求項11】
第二の期間が少なくとも6か月である、請求項9記載の方法。
【請求項12】
脊椎の骨密度を少なくとも約3%増加させる、請求項9の方法。
【請求項13】
低カルシウム血症または高カルシウム血症に罹患しているかまたはそのリスクにさらされているヒトの骨関連障害を治療する方法であって、約1 mg/kg〜約10 mg/kgの治療有効量のスクレロスチン結合物質をヒトに投与するステップを含む方法。
【請求項14】
低カルシウム血症または高カルシウム血症が、慢性腎疾患、腎不全、原発性もしくは続発性副甲状腺機能亢進症、偽性副甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能低下症、偽性副甲状腺機能低下症、マグネシウム枯渇、重症高マグネシウム血症、ビタミンD欠乏、高リン酸血症、急性膵炎、飢餓骨症候群、キレート化、骨芽細胞転移、敗血症、外科手術、化学療法、新生物症候群、副甲状腺機能低下症、家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症(familial hypocalciuric hypercalcemia)、サルコイドーシス、結核、ベリリウム症、ヒストプラスマ症、カンジダ症、コクシジオイデス症、組織球症X、ホジキンもしくは非ホジキンリンパ腫、クローン病、ウェゲナー肉芽腫症、肺炎、シリコーン誘発性肉芽腫、チアジド系利尿薬もしくはリチウムの投与、または運動抑制に起因する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
(a) 副甲状腺ホルモンもしくはその類似体での治療が禁忌であるヒトまたは(b) ビスホスホネートでの治療が禁忌であるヒトの骨関連障害を治療する方法であって、約1 mg/kg〜約10 mg/kgの治療有効量のスクレロスチン結合物質をヒトに投与するステップを含む方法。
【請求項16】
該量のスクレロスチン結合物質を2週間毎に1回被験体に投与する、請求項1〜15のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
該量のスクレロスチン結合物質を月に1回被験体に投与する、請求項1〜15のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
スクレロスチン結合物質が、スクレロスチンに対する、抗体Ab-A、Ab-B、Ab-C、Ab-D、Ab-1、Ab-2、Ab-3、Ab-4、Ab-5、Ab-6、Ab-7、Ab-8、Ab-9、Ab-10、Ab-11、Ab-12、Ab-13、Ab-14、Ab-15、Ab-16、Ab-17、Ab-18、Ab-19、Ab-20、Ab-21、Ab-22、Ab-23、およびAb-24の少なくとも1つの結合を交差阻害(cross-blocks)する、請求項1〜17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
スクレロスチン結合物質が、スクレロスチンに対する結合について、抗体Ab-A、Ab-B、Ab-C、Ab-D、Ab-1、Ab-2、Ab-3、Ab-4、Ab-5、Ab-6、Ab-7、Ab-8、Ab-9、Ab-10、Ab-11、Ab-12、Ab-13、Ab-14、Ab-15、Ab-16、Ab-17、Ab-18、Ab-19、Ab-20、Ab-21、Ab-22、Ab-23、およびAb-24の少なくとも1つによって交差阻害される、請求項1〜18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
スクレロスチン結合物質が、1 x 10-7 M以下の、配列番号1のスクレロスチンに対する結合親和性を示す抗体またはその断片である、請求項1〜17のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
抗体またはその断片が以下のCDR配列: (a) 配列番号54、55、および56のCDR配列ならびに配列番号51、52、および53のCDR配列; (b) 配列番号60、61、および62のCDR配列ならびに配列番号57、58、および59のCDR配列; (c) 配列番号48、49、および50のCDR配列ならびに配列番号45、46、および47のCDR配列; (d) 配列番号42、43、および44のCDR配列ならびに配列番号39、40、および41のCDR配列; (e) 配列番号275、276、および277のCDR配列ならびに配列番号287、288、および289のCDR配列; (f) 配列番号278、279、および280のCDR配列ならびに配列番号290、291、および292のCDR配列; (g) 配列番号78、79、および80のCDR配列ならびに配列番号245、246、および247のCDR配列; (h) 配列番号81、99、および100のCDR配列ならびに配列番号248、249、および250のCDR配列; (i) 配列番号101、102、および103のCDR配列ならびに配列番号251、252、および253のCDR配列; (j) 配列番号104、105、および106のCDR配列ならびに配列番号254、255、および256のCDR配列; (k) 配列番号107、108、および109のCDR配列ならびに配列番号257、258、および259のCDR配列; (l) 配列番号110、111、および112のCDR配列ならびに配列番号260、261、および262のCDR配列; (m) 配列番号281、282、および283のCDR配列ならびに配列番号293、294、および295のCDR配列; (n) 配列番号113、114、および115のCDR配列ならびに配列番号263、264、および265のCDR配列; (o) 配列番号284、285、および286のCDR配列ならびに配列番号296、297、および298のCDR配列; (p) 配列番号116、237、および238のCDR配列ならびに配列番号266、267、および268のCDR配列; (q) 配列番号239、240、および241のCDR配列ならびに配列番号269、270、および271のCDR配列; (r) 配列番号242、243、および244のCDR配列ならびに配列番号272、273、および274のCDR配列; または(s) 配列番号351、352、および353のCDR配列ならびに配列番号358、359、および360のCDR配列を含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
抗体またはその断片が、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1 CDR-L2およびCDR-L3を含み、(a) CDR-H1は配列番号245であり、CDR-H2は配列番号246であり、CDR-H3は配列番号247であり、CDR-L1は配列番号78であり、CDR-L2は配列番号79であり、かつCDR-L3は配列番号80であるか; または(b) CDR-H1は配列番号269であり、CDR-H2は配列番号270であり、CDR-H3は配列番号271であり、CDR-L1は配列番号239であり、CDR-L2は配列番号240であり、かつCDR-L3は配列番号241である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体、モノクローナル抗体、またはキメラ抗体である、請求項20〜22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
骨吸収を阻害するための医薬の製造における、約1 mg/kg〜約10 mg/kgの量のスクレロスチン結合物質の使用であって、該量は、I型コラーゲンのC-テロペプチド(CTX)の血清レベルを、治療開始後3週間までに治療前または正常レベルと比較して少なくとも20%減少させるために有効である、使用。
【請求項25】
該量のスクレロスチン結合物質が、骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)の血清レベル、プロコラーゲン1型のアミノ末端伸長部分のペプチド(PINP)の血清レベル、およびオステオカルシン(OstCa)の血清レベルからなる群から選択される骨形成のマーカーを、治療開始後3週間までに治療前または正常レベルと比較して少なくとも20%増加させる、請求項24記載の使用。
【請求項26】
該量のスクレロスチン結合物質が低カルシウム血症または高カルシウム血症を引き起こさない、請求項24または請求項25記載の使用。
【請求項27】
骨密度を増加させるための医薬の製造における、約1 mg/kg〜約10 mg/kgの量のスクレロスチン結合物質の使用であって、該量は、(a) 治療開始後3週間までに、CTXの血清レベルを、治療前または正常レベルと比較して少なくとも20%減少させるため、および(b) 治療開始後3週間までに、骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)の血清レベル、プロコラーゲン1型のアミノ末端伸長部分のペプチド(PINP)の血清レベル、およびオステオカルシン(OstCa)の血清レベルからなる群から選択される骨形成マーカーの血清レベルを、治療前または正常レベルと比較して少なくとも20%増加させるために有効である、使用。
【請求項28】
臀部、脊椎、手関節、手指、脛骨および/または踵の骨密度を少なくとも約1%増加させる、請求項27記載の使用。
【請求項29】
脊椎の骨密度を少なくとも約1%増加させる、請求項28記載の使用。
【請求項30】
若年成人健常者の正常な骨密度を下回る約1〜2.5標準偏差の範囲に骨密度を増加させる、請求項27〜29のいずれか一項記載の使用。
【請求項31】
若年成人健常者の正常な骨密度を下回る約0〜1標準偏差の範囲に骨密度を増加させる、請求項27〜29のいずれか一項記載の使用。
【請求項32】
骨関連障害を治療するための医薬の製造における、第一の期間についての臀部、脊椎、手関節、手指、脛骨および/または踵での骨密度を少なくとも約3%増加させるために有効である約1 mg/kg〜約10 mg/kgの量、およびそれに続く、骨密度を維持するために有効な第二の期間についての約1 mg/kg〜約10 mg/kgの量のスクレロスチン結合物質の使用。
【請求項33】
第一の期間が3か月以下である、請求項32記載の使用。
【請求項34】
第二の期間が少なくとも6か月である、請求項32または請求項33記載の使用。
【請求項35】
脊椎の骨密度を少なくとも約3%増加させる、請求項32〜34のいずれか一項記載の使用。
【請求項36】
低カルシウム血症または高カルシウム血症に罹患しているかまたはそのリスクにさらされているヒトの骨関連障害を治療するための医薬の製造における、約1 mg/kg〜約10 mg/kgの量のスクレロスチン結合物質の使用。
【請求項37】
低カルシウム血症または高カルシウム血症が、慢性腎疾患、腎不全、原発性もしくは続発性副甲状腺機能亢進症、偽性副甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能低下症、偽性副甲状腺機能低下症、マグネシウム枯渇、重症高マグネシウム血症、ビタミンD欠乏、高リン酸血症、急性膵炎、飢餓骨症候群、キレート化、骨芽細胞転移、敗血症、外科手術、化学療法、新生物症候群、副甲状腺機能低下症、家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症、サルコイドーシス、結核、ベリリウム症、ヒストプラスマ症、カンジダ症、コクシジオイデス症、組織球症X、ホジキンもしくは非ホジキンリンパ腫、クローン病、ウェゲナー肉芽腫症、肺炎、シリコーン誘発性肉芽腫、チアジド系利尿薬もしくはリチウムの投与、または運動抑制に起因する、請求項36記載の使用。
【請求項38】
(a) 副甲状腺ホルモンもしくはその類似体での治療が禁忌であるヒトまたは(b) ビスホスホネートでの治療が禁忌であるヒトの骨関連障害を治療するための医薬の製造におけるスクレロスチン結合物質の使用。
【請求項39】
骨関連障害が、軟骨形成不全、鎖骨頭蓋異骨症、内軟骨腫症、繊維性骨異形成症、ゴーシェ病、低リン血症性くる病、マルファン症候群、多発性遺伝性外骨腫(multiple hereditary exotoses)、神経線維腫症、骨形成不全、大理石骨病、骨斑症、硬化性病変、偽関節、化膿性骨髄炎、歯周病、抗てんかん薬誘発性骨量減少、原発性および続発性副甲状腺機能亢進症、家族性副甲状腺機能亢進症候群、無重力誘発性骨量減少、男性の骨粗鬆症、閉経後骨量減少、骨関節炎、腎性骨異栄養症、骨の浸潤性障害、口腔骨量減少、顎の骨壊死、若年性パジェット病、メロレオストーシス、代謝性骨疾患、肥満細胞症、鎌形赤血球貧血/疾患、器官移植関連骨量減少、腎臓移植関連骨量減少、全身性エリテマトーデス、強直性脊椎炎、てんかん、若年性関節炎症、地中海貧血症、ムコ多糖症、ファブリー病、ターナー症候群、ダウン症候群、クラインフェルター症候群、ハンセン病、ペルテス病、青年期特発性脊柱側弯症、乳児性発症多系統炎症性疾患(infantile onset multi-system inflammatory disease)、ウィンチェスター症候群、メンケス病、ウィルソン病、虚血性骨疾患(例えばレッグ・カルヴェ・ペルテス病、局所遊走性骨粗鬆症)、貧血状態、ステロイドに起因する症状、糖質コルチコイド誘発性骨量減少、ヘパリン誘発性骨量減少、骨髄障害、壊血病、栄養不良、カルシウム欠乏症、骨粗鬆症、骨減少症、アルコール依存症、慢性肝疾患、閉経後状態、慢性炎症性症状、関節リウマチ、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、炎症性大腸炎、クローン病、希発月経、無月経、妊娠、糖尿病、甲状腺機能亢進症、甲状腺障害、副甲状腺障害、クッシング病、末端肥大症、性腺機能低下症、運動抑制または廃用、反射性交感神経性ジストロフィ症候群、局所骨粗鬆症、骨軟化症、関節置換に関連する骨量減少、HIV関連骨量減少、成長ホルモンの損失に関連する骨量減少、嚢胞性線維症に関連する骨量減少、化学療法関連骨量減少、腫瘍誘発性骨量減少、癌関連骨量減少、ホルモン切除の骨量減少(hormone ablative bone loss)、多発性骨髄腫、薬物誘発性骨量減少、拒食症、疾患関連顔面骨量減少、疾患関連頭蓋(cranial)骨量減少、顎の疾患関連骨量減少、頭蓋(skull)の疾患関連骨量減少、加齢に伴う骨量減少、加齢に伴う顔面骨量減少、加齢に伴う頭蓋(cranial)骨量減少、加齢に伴う顎骨量減少、加齢に伴う頭蓋(skull)骨量減少、および宇宙旅行に関連する骨量減少からなる群から選択される、請求項32〜38のいずれか一項記載の使用。
【請求項40】
スクレロスチン結合物質が、スクレロスチンに対する、抗体Ab-A、Ab-B、Ab-C、Ab-D、Ab-1、Ab-2、Ab-3、Ab-4、Ab-5、Ab-6、Ab-7、Ab-8、Ab-9、Ab-10、Ab-11、Ab-12、Ab-13、Ab-14、Ab-15、Ab-16、Ab-17、Ab-18、Ab-19、Ab-20、Ab-21、Ab-22、Ab-23、およびAb-24の少なくとも1つの結合を交差阻害する、請求項24〜39のいずれか一項記載の使用。
【請求項41】
スクレロスチン結合物質が、スクレロスチンに対する結合について、抗体Ab-A、Ab-B、Ab-C、Ab-D、Ab-1、Ab-2、Ab-3、Ab-4、Ab-5、Ab-6、Ab-7、Ab-8、Ab-9、Ab-10、Ab-11、Ab-12、Ab-13、Ab-14、Ab-15、Ab-16、Ab-17、Ab-18、Ab-19、Ab-20、Ab-21、Ab-22、Ab-23、およびAb-24の少なくとも1つによって交差阻害される、請求項24〜39のいずれか一項記載の使用。
【請求項42】
スクレロスチン結合物質が、1 x 10-7 M以下の、配列番号1のスクレロスチンに対する結合親和性を示す抗体またはその断片である、請求項24〜39のいずれか一項記載の使用。
【請求項43】
抗体またはその断片が以下のCDR配列: (a) 配列番号54、55、および56のCDR配列ならびに配列番号51、52、および53のCDR配列; (b) 配列番号60、61、および62のCDR配列ならびに配列番号57、58、および59のCDR配列; (c) 配列番号48、49、および50のCDR配列ならびに配列番号45、46、および47のCDR配列; (d) 配列番号42、43、および44のCDR配列ならびに配列番号39、40、および41のCDR配列; (e) 配列番号275、276、および277のCDR配列ならびに配列番号287、288、および289のCDR配列; (f) 配列番号278、279、および280のCDR配列ならびに配列番号290、291、および292のCDR配列; (g) 配列番号78、79、および80のCDR配列ならびに配列番号245、246、および247のCDR配列; (h) 配列番号81、99、および100のCDR配列ならびに配列番号248、249、および250のCDR配列; (i) 配列番号101、102、および103のCDR配列ならびに配列番号251、252、および253のCDR配列; (j) 配列番号104、105、および106のCDR配列ならびに配列番号254、255、および256のCDR配列; (k) 配列番号107、108、および109のCDR配列ならびに配列番号257、258、および259のCDR配列; (l) 配列番号110、111、および112のCDR配列ならびに配列番号260、261、および262のCDR配列; (m) 配列番号281、282、および283のCDR配列ならびに配列番号293、294、および295のCDR配列; (n) 配列番号113、114、および115のCDR配列ならびに配列番号263、264、および265のCDR配列; (o) 配列番号284、285、および286のCDR配列ならびに配列番号296、297、および298のCDR配列; (p) 配列番号116、237、および238のCDR配列ならびに配列番号266、267、および268のCDR配列; (q) 配列番号239、240、および241のCDR配列ならびに配列番号269、270、および271のCDR配列; (r) 配列番号242、243、および244
のCDR配列ならびに配列番号272、273、および274のCDR配列; または(s) 配列番号351、352、および353のCDR配列ならびに配列番号358、359、および360のCDR配列を含む、請求項42記載の使用。
【請求項44】
抗体またはその断片が、CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3、CDR-L1 CDR-L2およびCDR-L3を含み、(a) CDR-H1は配列番号245であり、CDR-H2は配列番号246であり、CDR-H3は配列番号247であり、CDR-L1は配列番号78であり、CDR-L2は配列番号79であり、かつCDR-L3は配列番号80であるか; または(b) CDR-H1は配列番号269であり、CDR-H2は配列番号270であり、CDR-H3は配列番号271であり、CDR-L1は配列番号239であり、CDR-L2は配列番号240であり、かつCDR-L3は配列番号241である、請求項43記載の使用。
【請求項45】
抗体が、ヒト抗体、ヒト化抗体、モノクローナル抗体、またはキメラ抗体である、請求項42〜44のいずれか一項記載の使用。
【請求項46】
抗スクレロスチン抗体またはその断片および、(a) 治療開始後3週間までに、I型コラーゲンのC-テロペプチド(CTX)の血清レベルを、治療前または正常レベルと比較して少なくとも20%減少させるため、および(b) 治療開始後3週間までに、骨特異的アルカリホスファターゼ(BSAP)の血清レベル、プロコラーゲン1型のアミノ末端伸長部分のペプチド(PINP)の血清レベル、またはオステオカルシン(OstCa)の血清レベルを、治療前または正常レベルと比較して少なくとも20%増加させるために有効な量の該抗体またはその断片を投与するための使用説明書を含む、容器。
【請求項47】
約70 mg〜約450 mgの量の抗スクレロスチン抗体を含む容器。
【請求項48】
抗スクレロスチン抗体またはその断片および、骨関連障害を治療するために2週間または4週間毎に約1 mg/kg〜約10 mg/kgの量の該抗体またはその断片を投与するための使用説明書を含む容器。
【請求項49】
抗スクレロスチン抗体またはその断片および、骨関連障害を治療するために、約3か月の期間、約1 mg/kg〜約10 mg/kgの量の該抗体またはその断片を投与するための使用説明書を含む容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−539190(P2010−539190A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−525108(P2010−525108)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/076679
【国際公開番号】WO2009/039175
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(500049716)アムジエン・インコーポレーテツド (242)
【Fターム(参考)】