骨寸法測定器
【課題】本発明は、アームの操作性がよく、かつ、当該アームの移動を容易に拘束することが可能な骨寸法測定器を提供することを目的とする。
【解決手段】骨寸法測定器1は、上部本体4の取付軸部43に対して回動可能に係合する凹部31aと、ロック用貫通孔31fと、凹部31aを通過して貫通するアーム保持用貫通孔31eと、を有する連結部31を備える。そして、アーム保持用貫通孔31eにアーム32が挿入され、且つ、連結部31の凹部31aが取付軸部43に係合した取付状態において、ロック用貫通孔31fに挿入された固定ネジ33で取付軸部43を付勢することで、固定ネジ33と、凹部31aを形成する第2内側面31dと、アーム32と、の間で、取付軸部43を挟み込むことができる。
【解決手段】骨寸法測定器1は、上部本体4の取付軸部43に対して回動可能に係合する凹部31aと、ロック用貫通孔31fと、凹部31aを通過して貫通するアーム保持用貫通孔31eと、を有する連結部31を備える。そして、アーム保持用貫通孔31eにアーム32が挿入され、且つ、連結部31の凹部31aが取付軸部43に係合した取付状態において、ロック用貫通孔31fに挿入された固定ネジ33で取付軸部43を付勢することで、固定ネジ33と、凹部31aを形成する第2内側面31dと、アーム32と、の間で、取付軸部43を挟み込むことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、適切なインプラント寸法を特定するために骨端の寸法を測定する骨寸法測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載の骨寸法測定器が知られている。この骨寸法測定器は、当該特許文献1においてFig.1及びFig.2に示すように、先端側において屈曲するアーム(316)と、当該アーム(316)が回動自在に連結されるスライド(200)と、当該スライド(200)を一方向に移動可能に保持するベース(100)と、を有して構成される。そして、当該骨寸法測定器を用いて、以下のようにして、骨の寸法を測定することができる。
まず、ベース(100)に設けられたフィート(116)の下部参照面(118)が骨先端における後部(Fig.2において下側の端部)に当接するように保持される。
次に、この状態でアーム(316)の先端が骨の前部(Fig.2において上側の端部)の所定位置に当接するように、当該アーム(316)を回動させつつ、当該アーム(316)が固定されたスライド(200)をベース(100)に対して移動させる。
そして、アーム(316)の先端を前記所定位置に当接させたときに、ポインタ(136)により指示されている表示を視認することで、骨の寸法を判断することができる。
【0003】
【特許文献1】米国特許第7175630号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の骨寸法測定器においては、アーム(316)をスライド(200)に対して、一軸回りに回動させることでしか、アーム(316)の位置調整を行うことができない。そのため、アーム(316)の先端を骨の前部における適切な位置に当接させることができなくなるおそれがある。また、アーム(316)の自由度が低いため、当該アーム(316)を適切な位置に移動させるために必要なスペースが過大になりやすい。そのため、手術創が大きくなってしまうという問題もある。更に、所定の位置に配置されたアーム(316)をスライド(200)に対して回動しないように固定することができないため、アーム(316)の位置ずれが生じやすい。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、アームの操作性がよく、かつ、当該アームの移動を容易に拘束することが可能な骨寸法測定器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、適切なインプラント寸法を特定するために骨端の寸法を測定する骨寸法測定器に関する。
そして、本発明に係る骨寸法測定器は、上記目的を達成するために以下のようないくつかの特徴を有している。すなわち、本発明の骨寸法測定器は、以下の特徴を単独で、若しくは、適宜組み合わせて備えている。
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る骨寸法測定器における第1の特徴は、下部本体と、前記下部本体に対して一方向に移動可能に連結されるとともに、当該移動方向と略平行に延びる軸部を有する上部本体と、前記軸部に対して回動可能に係合する凹部と、外周面と前記凹部を形成する面との間を貫通するロック用貫通孔と、一端側の外周面と他端側の外周面との間を前記凹部を通過して貫通するアーム保持用貫通孔と、を有する連結部と、前記アーム保持用貫通孔に回動可能かつ進退可能に挿入されるアームと、前記ロック用貫通孔に挿入されるロック部材と、を備え、前記アーム保持用貫通孔に前記アームが挿入され、且つ、前記連結部の前記凹部が前記軸部に係合した取付状態において、前記ロック用貫通孔に挿入された前記ロック部材で前記軸部を付勢することで、当該ロック部材と、前記凹部を形成する面と、前記アームと、の間で、前記軸部を挟み込むことができることである。
【0008】
この構成によると、連結部を軸部に対して回動させることで、アームを上部本体に対して軸部回りに回動させることができる。更に、アームを当該アームの軸回りに回動させることもできるとともに、アーム保持用貫通孔に沿って進退させることもできる。これにより、アームを所望の位置に操作し易くなる。
また、ロック部材による軸部の付勢により、前記連結部及び前記アームの、前記上部本体に対する相対移動が規制される。即ち、一の操作により、アームの上部本体に対する相対移動(アーム進退・回動動作、連結部の回動動作)を規制することができる。
【0009】
本発明に係る骨寸法測定器における第2の特徴は、前記アームは、外周面の一部に平面部が形成された円柱状部を有しており、前記取付状態において、前記ロック用貫通孔に挿入された前記ロック部材で前記軸部を付勢することで、当該ロック部材と、前記凹部を形成する面と、前記アームの前記平面部と、の間で、前記軸部を挟み込むことができることである。
【0010】
この構成によると、取付状態において、ロック部材で軸部を付勢して、軸部をアームの平面部に当接させることができるので、確実にアームの回動を規制することができる。
【0011】
本発明に係る骨寸法測定器における第3の特徴は、前記ロック部材における前記軸部に当接する先端部が球面形状であることである。
【0012】
この構成によると、ロック部材から軸部に力を伝えやすい。また、付勢状態を安定させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、アームの操作性が向上し、かつ、当該アームの位置固定を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しつつ説明する。
本実施形態においては、適切なインプラントサイズを特定するために大腿骨の遠位端部の前部/後部サイズ(A/Pサイズ)を測定するための骨寸法測定器1を例に挙げて説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る骨寸法測定器1を示す斜視図である。図2は、図1に示す骨寸法測定器1を裏側から見た斜視図である。図3は、図1に示す骨寸法測定器1を分解した斜視図である。図4は、図1に示すスタイラス3の(a)平面図(取付軸部43の中心軸Xと平行な方向から見た図)、および(b)側面図である。図5は、図4(a)に示す連結部31の近傍部の拡大模式図である。
【0016】
以下の骨寸法測定器1の説明においては、取付軸部43の中心軸Xと平行な方向を「上下方向」として説明する。
【0017】
図1〜図3に示すように、骨寸法測定器1は、上下に伸縮可能なサイザー本体2と、当該サイザー本体2に着脱可能なスタイラス3とを備えている。
【0018】
<サイザー本体の構成>
サイザー本体2は、寸法測定時に大腿骨の後部に当接させる面を有する下部本体5と、当該下部本体5に対して上下にスライドできるように連結される上部本体4とを有して構成されている。
【0019】
◆上部本体の構成
上部本体4は、上下に伸びる直方体形状の中央柱部41と、当該中央柱部41の下端から左右両側に延びるとともに屈曲して上方に延びる一対の延設部42,42と、当該中央柱部41の上端から上方に向かって円柱状に延びる取付軸部43と、当該取付軸部43の上端において当該取付軸部43よりも拡径するように設けられたフランジ部44とを有している。
【0020】
中央柱部41は、当該中央柱部41の下端に開口して上下方向に延びる略直方体状の空洞41aが形成されている(図3参照)。また、当該中央柱部41の前面には、上下方向に延びる長孔41bが形成されている。この長孔41bは、表面から空洞41aまで貫通している。中央柱部41の前面には、当該長孔41bに隣接する位置に、サイズを示す目盛41cが設けられている。
また、一対の延設部42の上端部近傍には、取付軸部43の中心軸および当該延設部42の中央柱部41に対する延設方向に対して垂直に延びる貫通孔42aが形成されている。
【0021】
◆下部本体の構成
下部本体5は、上下に延びるスライド板51と、当該スライド板51の下端が一体的に連結されているスライド基端部52と、当該スライド基端部52に対し回動自在に連結される底面部材53と、当該底面部材53の前記スライド基端部52に対する回動角度を調整可能なつまみ部54と、を有している。
【0022】
スライド板51は、上部本体4における中央柱部41の下端から上方に延びる空洞41aに挿入可能であり、当該空洞41a内で上下方向にスライド移動可能である。尚、スライド板51を前記空洞41aに挿入した状態で、スライド板51の表面に、長孔41bを介してポインタ55が設置される。当該ポインタ55は、表面側の端部にラインが記された円柱状部材であり、スライド板51のスライド移動に伴って、長孔41bに沿って移動する。
【0023】
底面部材53は、上部本体4と下部本体5とが連結された状態で、上部本体4の貫通孔42aと平行な軸回りに回動自在となるように、スライド基端部52に対して連結される。当該底面部材53は、スライド基端部52の位置よりも背面側に向かって延設された延設板部53aを有している。底面部材53の前記スライド基端部52に対する回動角度は、つまみ部54を回して調整することができる。手術の際には、患者の骨形状にあわせて、適切な回動角度となるように調整され、当該角度が変化しないように、底面部材53のスライド基端部52に対する位置が固定される。
【0024】
<スタイラスの構成>
スタイラス3は、上部本体4の取付軸部43に係合する連結部31と、当該連結部31に挿入されたアーム32と、連結部31にねじ込まれた固定ねじ33とを有する。
【0025】
◆連結部の構成
連結部31は、平面視(図4(a)参照)にて外周に凹部31aが形成されたブロックである。凹部31aは、凹部底面31bと、凹部底面31bから約90度屈曲して互いに略平行に延びる第1内側面31c及び第2内側面31dとで構成される。第2内側面31dは、凹部底面31bから離れた端部近傍にて第1内側面31cに近づくように屈曲している。
【0026】
また、連結部31には、第1内側面31cと垂直な方向に延びるアーム保持用貫通孔31eが形成されている。当該アーム保持用貫通孔31eは、孔軸方向中間部で、径方向に向かって、凹部底面31bに開口するように形成されている。そのため、アーム保持用貫通孔31eに、当該アーム保持用貫通孔31eと略同径の円柱状のアーム32のアーム軸部32bが挿入された状態では、平面視において、当該アーム軸部32bの外周の一部が凹部31a内に露出する。
【0027】
また、連結部31には、外周面と第1内側面31cとの間を貫通するロック用貫通孔31fが形成されている。ロック用貫通孔31fの内周には、雌ねじが形成されており、固定ねじ33の軸部33aをねじ込んで挿入することができる。ロック用貫通孔31fの中心軸は、平面視においてアーム保持用貫通孔31eの中心軸に対して約30°傾いている。
【0028】
また、図5に示すように、ロック用貫通孔31fは、第1内側面31cにおける凹部底面31bから離れた端部近傍に開口しており、当該ロック用貫通孔31fの中心軸の延長線は、当該第1内側面31cの開口よりも凹部底面31bに近い位置で、第2内側面31dと交差する。
【0029】
◆アームの構成
アーム32は、円柱状の取っ手部32aと、取っ手部32aの端部から略同軸で延びるとともに先端近傍で屈曲するアーム軸部32bとを有している。
アーム軸部32bは、略円柱状に形成されているとともに、外周面において、互いに平行に延びる一対の平面32cが形成されている。当該一対の平面32cは、アーム軸部32bの軸方向に、アーム保持用貫通孔31eの長さの約2倍を超える長さで延びる平面である。そして、当該一対の平面32cは、アーム軸部32bの屈曲方向と平行に形成される。即ち、アーム軸部32bの屈曲した中心軸は、平面32cと平行な面上に位置する。
【0030】
尚、アーム軸部32bは、取っ手部32aに着脱自在に取り付けられている。例えば、アーム軸部32bの端部に雄ねじを形成し、取っ手部32aに対応する雌ねじが形成されたネジ穴を形成し、アーム軸部32bの端部を取っ手部32aのネジ穴にねじ込むことで、当該アーム軸部32bを取っ手部32aに取り付けることができる。
【0031】
アーム軸部32bは、平面32cがアーム保持用貫通孔31e内に位置するように、アーム保持用貫通孔31eに挿入される。
また、連結部31には、側面からアーム保持用貫通孔31eに交差して内部まで延びるバネ用貫通孔31gが形成されており、バネ用貫通孔31gの底とアーム32のアーム軸部32bとの間に、バネ34が設置される。このバネ34により、アーム32のアーム軸部32bがアーム保持用貫通孔31eの内周面に接するように付勢される。
【0032】
尚、アーム軸部32bを軸回りに回転して、平面32cを凹部31a側に対向させたとき、当該平面32cは、凹部底面31bよりも凹部31aの開放側に位置する(図5参照)。
【0033】
◆固定ネジの構成
固定ネジ33は、軸部33aと、当該軸部33aの端部に設けられたヘッド部33bと、ヘッド部33bから突出するつまみ部33cとを有する。
【0034】
軸部33aは、先端が球面状に形成されており、ロック用貫通孔31fの雌ネジに螺合する雄ネジが刻まれている。
ヘッド部33bは、軸部33aよりも大きな径となるように、当該軸部33aの基端部に設けられている。
つまみ部33cは、ヘッド部33bにおける軸部33aと逆側の端部から突出する板状部である。当該つまみ部33cを利用して、固定ネジ33を軸回りに容易に回転することができる。
【0035】
この固定ネジ33の軸部33aの長さは、ロック用貫通孔31fよりも長い。そのため、軸部33aをロック用貫通孔31fにねじ込み、当該軸部33aの球面状の先端を第1内側面31cから凹部31a内に突出させることができる。
【0036】
<施術方法について>
以下、大腿骨の遠位端のサイズを測定するとともに、当該大腿骨の遠位端を、インプラント取付のために適切な形状に切断する方法について、図6〜図11を用いて説明する。
図6及び図7は、骨寸法測定器1の取付方法を説明するための図である。また、図8は、図7に示す骨寸法測定器及び大腿骨の側面図である。図9は、位置決めピンを大腿骨に固定した状態を示す図である。図10は、カットガイドを大腿骨に取り付けた状態を示す図である。図11(a)は、図10に示すカットガイド及び大腿骨の側面図であり、図11(b)は、大腿骨の端部をインプラント取付形状に切断した状態を示す図である。
【0037】
(1)
まず、大腿骨100の遠位端は、機能軸(大腿骨頭中心から膝関節中心を通る線)に対して垂直な断面で切断され、所定の基準平面Sが形成される(図6参照)。
【0038】
(2)
図6に示すように、下部本体5の裏面が基準平面Sに当接し、且つ、底面部材53における延設板部53aの上面が大腿骨100の遠位端の後部に当接する位置に、サイザー本体2を持っていき、その位置でサイザー本体2を保持する。
【0039】
(3)
図7に示すように、サイザー本体2の取付軸部43にスタイラス3の連結部31の凹部31aを係合させる。このとき、アーム32の先端を横に向けた状態(図4に示す状態からアーム32を約90°軸回りに回転した状態)で、スタイラス3を患部に挿入する。このようにスタイラス3を挿入した場合、屈曲部分を含むアーム軸部32bの全体が、係合方向と略平行な面内に位置するため、アーム32の先端が大腿骨の表面等に干渉しにくくなり、スタイラス3をサイザー本体2の取付軸部43に係合させ易い。
【0040】
(4)
スタイラス3をサイザー本体2の取付軸部43に係合させた後、アーム32の先端が下側を向くように、当該アーム32を約90°軸回りに回転させる。即ち、アーム32の先端が、取付軸部43の軸方向における最も下方に位置するように、アーム32を軸回りに回動させる。
尚、このとき、連結部31とアーム軸部32bとの間に設けられたバネ34(図5参照)の端面がアーム32の平面32cに当接し、当該平面32cを付勢することにより、アーム32の先端が、下側を向いた状態で保持される。
【0041】
そして、アーム32の先端が大腿骨100の前部の所定の位置に当接するように、アーム32を移動させる。このとき、固定ネジ33を、取付軸部43が凹部31aから外れない程度に緩めておくことで、アーム32を、軸方向(図7における矢印A1方向)に進退移動させることができる。また、連結部31を介してアーム32を取付軸部43の軸回り(図7における矢印A2方向)に回動させることができる。
ここで、図8に示すように、アーム32の上部本体4に対する上方への相対移動は、連結部31の上面が上部本体4のフランジ部44に当接することで規制され、下方への相対移動は、連結部31の下面が上部本体4の中央柱部41の上面に当接することで規制されている。つまり、上部本体4に対してのアーム32の上下移動は拘束されている。
一方、上部本体4は下部本体5に対して上下に移動できるので、当該アーム32を当該上部本体4とともに上下に移動させることができる。
このように、適宜、アーム32を移動して、アーム32の先端を大腿骨100の前部の所定の位置に当接させる。
【0042】
(5)
アーム32の先端が大腿骨100の前部の所定の位置に当接した状態で、凹部31a内に進出するように固定ネジ33を締め付ける。
これにより、図5に示すように、取付軸部43が、固定ネジ33の先端部と、第2内側面31dと、アーム32に設けられた平面32cと、に当接して、3点(図5において、α、β、γで当接点を示す)で支持される。
このとき、アーム32の平面32cに取付軸部43の外周面が当接することで、アーム32の軸回りの回動が規制される。そして、取付軸部43によりアーム32がアーム保持用貫通孔31eの内周面に向かう方向に付勢されるため、アーム32とアーム保持用貫通孔31eとの間の摩擦力により、当該アーム32の軸方向への移動も拘束される。更に、上記3点で生じる摩擦力により、スタイラス3の、取付軸部43回りの回動が規制される。
【0043】
(6)
アーム32の先端が大腿骨100の前部の所定の位置に当接した状態において、ポインタ55が指示するサイズを確認する。当該ポインタ55により指示されたサイズが、大腿骨100の遠位端のサイズである。そして、当該サイズに基づいて、使用されるインプラントのサイズ及び大腿骨の遠位端を切断するためのカットガイドのサイズが選択される。
【0044】
(7)
図9に示すように、2本の位置決めピン6,6を、サイザー本体2の貫通孔42a,42aを介して大腿骨100の遠位端の基準平面Sに立てる。
そして、2本の位置決めピン6,6を基準平面Sに残したまま、骨寸法測定器1を大腿骨100から取り外す。
【0045】
(8)
図10に示すように、2本の位置決めピン6,6が貫通孔7a,7aを通過するように、カットガイド7を基準平面Sに設置する。尚、この状態でカットガイド7は、大腿骨100にネジ等で固定される。
そして、このカットガイド7に設けられた複数の溝に沿って切断用の刃物を移動させて、大腿骨100の遠位端を切断する。図11(a)に切断面を二点鎖線で模式的に示す。
これにより、図11(b)に示すように、大腿骨100の遠位端が、インプラントの形状に合った所定の形状に切断される。
【0046】
<本実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態に係る骨寸法測定器1は、下部本体5と、下部本体5に対して一方向に移動可能に連結されているとともに、当該移動方向と平行に延びる取付軸部43を有する上部本体4と、取付軸部43に対して回動可能に係合する凹部31aと、外周面と凹部31aを形成する第1内側面31cとの間を貫通するネジ孔であるロック用貫通孔31fと、一端側の外周面と他端側の外周面との間を凹部31aを通過して貫通するアーム保持用貫通孔31eと、を有する連結部31と、アーム保持用貫通孔31eに回動可能かつ進退可能に挿入されるアーム32と、ロック用貫通孔31fに螺挿される固定ネジ33と、を備えている。
そして、アーム保持用貫通孔31eにアーム32が挿入され、且つ、連結部31の凹部31aが取付軸部43に係合した取付状態において、ロック用貫通孔31fに螺挿された固定ネジ33を締め付けて取付軸部43を付勢することで、固定ネジ33と、凹部31aを形成する第2内側面31dと、アーム32と、の間で、取付軸部43を挟み込むことができる。
【0047】
この構成によると、固定ネジ33を緩め、連結部31を取付軸部43に対して回動させることで、アーム32を上部本体4に対して取付軸部43回りに回動させることができる。更に、アーム32を当該アーム32の軸回りに回動させることもできるとともに、アーム保持用貫通孔31eに沿って進退させることもできる。これにより、アーム保持用貫通孔31eを所望の位置に操作し易くなる。
また、固定ネジ33による取付軸部43の付勢により、連結部31及びアーム32の、上部本体4に対する相対移動が規制される。即ち、固定ネジ33を締め付ける操作により、アーム32の上部本体4に対する相対移動(アーム進退・回動動作、連結部の回動動作)を規制することができる。
【0048】
また、骨寸法測定器1において、アーム32は、外周面の一部に平面32cが形成された円柱状のアーム軸部32bを有している。そして、連結部31にアーム32が取付られた取付状態において、ロック用貫通孔31fにねじ込まれた固定ネジ33で取付軸部43を付勢することで、固定ネジ33と、凹部31aを形成する第2内側面31dと、アーム32の平面32cと、の間で、取付軸部43を挟み込むことができる。
【0049】
この構成によると、取付状態において、固定ネジ33で取付軸部43を付勢して、取付軸部43をアーム32の平面32cに当接させることができるので、確実にアーム32の回動を規制することができる。
また、アーム32の先端を横に向けた状態(図4に示す状態からアーム32を約90°軸回りに回転した状態)では、アーム軸部32bの円弧面が取付軸部43側に対向しているため、アーム32の先端を下方に向けるように当該アーム32を回転させる操作をスムーズに行うことができる。
【0050】
また、固定ネジ33における取付軸部43に当接する先端部が球面形状であるので、当該固定ネジ33から取付軸部43に力を伝えやすい。また、付勢状態を安定させることができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。
【0052】
<変形例>
(1)
固定ネジ33をロック用貫通孔31fにねじ込んで、当該固定ネジ33で取付軸部43を付勢してスタイラス3を固定する構成に限定されない。付勢力を安定化するため弾性部材等を介して、取付軸部43を付勢する構成であってもよい。
【0053】
(2)
当接点α、β、γが、取付軸部43の外周を三等分する位置に配置されるように構成してもよい。即ち、図5において取付軸部43の中心を点Oとしたときに、角α−O−β、角β−O−γ、角γ−O−αが、約120°となるように構成してもよい。この場合、より安定してスタイラスを取付軸部43に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態に係る骨寸法測定器を示す斜視図。
【図2】図1に示す骨寸法測定器を裏側から見た斜視図。
【図3】図1に示す骨寸法測定器を分解した斜視図。
【図4】図1に示すスタイラスの(a)平面図および(b)側面図。
【図5】図4に示す連結部の近傍部の拡大模式図。
【図6】骨寸法測定器の取付方法を説明するための図。
【図7】骨寸法測定器の取付方法を説明するための図。
【図8】図7に示す骨寸法測定器及び大腿骨の側面図。
【図9】位置決めピンを大腿骨に固定した状態を示す図。
【図10】カットガイドを大腿骨に取り付けた状態を示す図。
【図11】(a)図10に示すカットガイド及び大腿骨の側面図及び(b)大腿骨切断後の模式図。
【符号の説明】
【0055】
1 骨寸法測定器
4 上部本体
5 下部本体
31 連結部
31a 凹部
31e ロック用貫通孔
31f アーム保持用貫通孔
32 アーム
33 固定ネジ(ロック部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、適切なインプラント寸法を特定するために骨端の寸法を測定する骨寸法測定器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載の骨寸法測定器が知られている。この骨寸法測定器は、当該特許文献1においてFig.1及びFig.2に示すように、先端側において屈曲するアーム(316)と、当該アーム(316)が回動自在に連結されるスライド(200)と、当該スライド(200)を一方向に移動可能に保持するベース(100)と、を有して構成される。そして、当該骨寸法測定器を用いて、以下のようにして、骨の寸法を測定することができる。
まず、ベース(100)に設けられたフィート(116)の下部参照面(118)が骨先端における後部(Fig.2において下側の端部)に当接するように保持される。
次に、この状態でアーム(316)の先端が骨の前部(Fig.2において上側の端部)の所定位置に当接するように、当該アーム(316)を回動させつつ、当該アーム(316)が固定されたスライド(200)をベース(100)に対して移動させる。
そして、アーム(316)の先端を前記所定位置に当接させたときに、ポインタ(136)により指示されている表示を視認することで、骨の寸法を判断することができる。
【0003】
【特許文献1】米国特許第7175630号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の骨寸法測定器においては、アーム(316)をスライド(200)に対して、一軸回りに回動させることでしか、アーム(316)の位置調整を行うことができない。そのため、アーム(316)の先端を骨の前部における適切な位置に当接させることができなくなるおそれがある。また、アーム(316)の自由度が低いため、当該アーム(316)を適切な位置に移動させるために必要なスペースが過大になりやすい。そのため、手術創が大きくなってしまうという問題もある。更に、所定の位置に配置されたアーム(316)をスライド(200)に対して回動しないように固定することができないため、アーム(316)の位置ずれが生じやすい。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、アームの操作性がよく、かつ、当該アームの移動を容易に拘束することが可能な骨寸法測定器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、適切なインプラント寸法を特定するために骨端の寸法を測定する骨寸法測定器に関する。
そして、本発明に係る骨寸法測定器は、上記目的を達成するために以下のようないくつかの特徴を有している。すなわち、本発明の骨寸法測定器は、以下の特徴を単独で、若しくは、適宜組み合わせて備えている。
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る骨寸法測定器における第1の特徴は、下部本体と、前記下部本体に対して一方向に移動可能に連結されるとともに、当該移動方向と略平行に延びる軸部を有する上部本体と、前記軸部に対して回動可能に係合する凹部と、外周面と前記凹部を形成する面との間を貫通するロック用貫通孔と、一端側の外周面と他端側の外周面との間を前記凹部を通過して貫通するアーム保持用貫通孔と、を有する連結部と、前記アーム保持用貫通孔に回動可能かつ進退可能に挿入されるアームと、前記ロック用貫通孔に挿入されるロック部材と、を備え、前記アーム保持用貫通孔に前記アームが挿入され、且つ、前記連結部の前記凹部が前記軸部に係合した取付状態において、前記ロック用貫通孔に挿入された前記ロック部材で前記軸部を付勢することで、当該ロック部材と、前記凹部を形成する面と、前記アームと、の間で、前記軸部を挟み込むことができることである。
【0008】
この構成によると、連結部を軸部に対して回動させることで、アームを上部本体に対して軸部回りに回動させることができる。更に、アームを当該アームの軸回りに回動させることもできるとともに、アーム保持用貫通孔に沿って進退させることもできる。これにより、アームを所望の位置に操作し易くなる。
また、ロック部材による軸部の付勢により、前記連結部及び前記アームの、前記上部本体に対する相対移動が規制される。即ち、一の操作により、アームの上部本体に対する相対移動(アーム進退・回動動作、連結部の回動動作)を規制することができる。
【0009】
本発明に係る骨寸法測定器における第2の特徴は、前記アームは、外周面の一部に平面部が形成された円柱状部を有しており、前記取付状態において、前記ロック用貫通孔に挿入された前記ロック部材で前記軸部を付勢することで、当該ロック部材と、前記凹部を形成する面と、前記アームの前記平面部と、の間で、前記軸部を挟み込むことができることである。
【0010】
この構成によると、取付状態において、ロック部材で軸部を付勢して、軸部をアームの平面部に当接させることができるので、確実にアームの回動を規制することができる。
【0011】
本発明に係る骨寸法測定器における第3の特徴は、前記ロック部材における前記軸部に当接する先端部が球面形状であることである。
【0012】
この構成によると、ロック部材から軸部に力を伝えやすい。また、付勢状態を安定させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、アームの操作性が向上し、かつ、当該アームの位置固定を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しつつ説明する。
本実施形態においては、適切なインプラントサイズを特定するために大腿骨の遠位端部の前部/後部サイズ(A/Pサイズ)を測定するための骨寸法測定器1を例に挙げて説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る骨寸法測定器1を示す斜視図である。図2は、図1に示す骨寸法測定器1を裏側から見た斜視図である。図3は、図1に示す骨寸法測定器1を分解した斜視図である。図4は、図1に示すスタイラス3の(a)平面図(取付軸部43の中心軸Xと平行な方向から見た図)、および(b)側面図である。図5は、図4(a)に示す連結部31の近傍部の拡大模式図である。
【0016】
以下の骨寸法測定器1の説明においては、取付軸部43の中心軸Xと平行な方向を「上下方向」として説明する。
【0017】
図1〜図3に示すように、骨寸法測定器1は、上下に伸縮可能なサイザー本体2と、当該サイザー本体2に着脱可能なスタイラス3とを備えている。
【0018】
<サイザー本体の構成>
サイザー本体2は、寸法測定時に大腿骨の後部に当接させる面を有する下部本体5と、当該下部本体5に対して上下にスライドできるように連結される上部本体4とを有して構成されている。
【0019】
◆上部本体の構成
上部本体4は、上下に伸びる直方体形状の中央柱部41と、当該中央柱部41の下端から左右両側に延びるとともに屈曲して上方に延びる一対の延設部42,42と、当該中央柱部41の上端から上方に向かって円柱状に延びる取付軸部43と、当該取付軸部43の上端において当該取付軸部43よりも拡径するように設けられたフランジ部44とを有している。
【0020】
中央柱部41は、当該中央柱部41の下端に開口して上下方向に延びる略直方体状の空洞41aが形成されている(図3参照)。また、当該中央柱部41の前面には、上下方向に延びる長孔41bが形成されている。この長孔41bは、表面から空洞41aまで貫通している。中央柱部41の前面には、当該長孔41bに隣接する位置に、サイズを示す目盛41cが設けられている。
また、一対の延設部42の上端部近傍には、取付軸部43の中心軸および当該延設部42の中央柱部41に対する延設方向に対して垂直に延びる貫通孔42aが形成されている。
【0021】
◆下部本体の構成
下部本体5は、上下に延びるスライド板51と、当該スライド板51の下端が一体的に連結されているスライド基端部52と、当該スライド基端部52に対し回動自在に連結される底面部材53と、当該底面部材53の前記スライド基端部52に対する回動角度を調整可能なつまみ部54と、を有している。
【0022】
スライド板51は、上部本体4における中央柱部41の下端から上方に延びる空洞41aに挿入可能であり、当該空洞41a内で上下方向にスライド移動可能である。尚、スライド板51を前記空洞41aに挿入した状態で、スライド板51の表面に、長孔41bを介してポインタ55が設置される。当該ポインタ55は、表面側の端部にラインが記された円柱状部材であり、スライド板51のスライド移動に伴って、長孔41bに沿って移動する。
【0023】
底面部材53は、上部本体4と下部本体5とが連結された状態で、上部本体4の貫通孔42aと平行な軸回りに回動自在となるように、スライド基端部52に対して連結される。当該底面部材53は、スライド基端部52の位置よりも背面側に向かって延設された延設板部53aを有している。底面部材53の前記スライド基端部52に対する回動角度は、つまみ部54を回して調整することができる。手術の際には、患者の骨形状にあわせて、適切な回動角度となるように調整され、当該角度が変化しないように、底面部材53のスライド基端部52に対する位置が固定される。
【0024】
<スタイラスの構成>
スタイラス3は、上部本体4の取付軸部43に係合する連結部31と、当該連結部31に挿入されたアーム32と、連結部31にねじ込まれた固定ねじ33とを有する。
【0025】
◆連結部の構成
連結部31は、平面視(図4(a)参照)にて外周に凹部31aが形成されたブロックである。凹部31aは、凹部底面31bと、凹部底面31bから約90度屈曲して互いに略平行に延びる第1内側面31c及び第2内側面31dとで構成される。第2内側面31dは、凹部底面31bから離れた端部近傍にて第1内側面31cに近づくように屈曲している。
【0026】
また、連結部31には、第1内側面31cと垂直な方向に延びるアーム保持用貫通孔31eが形成されている。当該アーム保持用貫通孔31eは、孔軸方向中間部で、径方向に向かって、凹部底面31bに開口するように形成されている。そのため、アーム保持用貫通孔31eに、当該アーム保持用貫通孔31eと略同径の円柱状のアーム32のアーム軸部32bが挿入された状態では、平面視において、当該アーム軸部32bの外周の一部が凹部31a内に露出する。
【0027】
また、連結部31には、外周面と第1内側面31cとの間を貫通するロック用貫通孔31fが形成されている。ロック用貫通孔31fの内周には、雌ねじが形成されており、固定ねじ33の軸部33aをねじ込んで挿入することができる。ロック用貫通孔31fの中心軸は、平面視においてアーム保持用貫通孔31eの中心軸に対して約30°傾いている。
【0028】
また、図5に示すように、ロック用貫通孔31fは、第1内側面31cにおける凹部底面31bから離れた端部近傍に開口しており、当該ロック用貫通孔31fの中心軸の延長線は、当該第1内側面31cの開口よりも凹部底面31bに近い位置で、第2内側面31dと交差する。
【0029】
◆アームの構成
アーム32は、円柱状の取っ手部32aと、取っ手部32aの端部から略同軸で延びるとともに先端近傍で屈曲するアーム軸部32bとを有している。
アーム軸部32bは、略円柱状に形成されているとともに、外周面において、互いに平行に延びる一対の平面32cが形成されている。当該一対の平面32cは、アーム軸部32bの軸方向に、アーム保持用貫通孔31eの長さの約2倍を超える長さで延びる平面である。そして、当該一対の平面32cは、アーム軸部32bの屈曲方向と平行に形成される。即ち、アーム軸部32bの屈曲した中心軸は、平面32cと平行な面上に位置する。
【0030】
尚、アーム軸部32bは、取っ手部32aに着脱自在に取り付けられている。例えば、アーム軸部32bの端部に雄ねじを形成し、取っ手部32aに対応する雌ねじが形成されたネジ穴を形成し、アーム軸部32bの端部を取っ手部32aのネジ穴にねじ込むことで、当該アーム軸部32bを取っ手部32aに取り付けることができる。
【0031】
アーム軸部32bは、平面32cがアーム保持用貫通孔31e内に位置するように、アーム保持用貫通孔31eに挿入される。
また、連結部31には、側面からアーム保持用貫通孔31eに交差して内部まで延びるバネ用貫通孔31gが形成されており、バネ用貫通孔31gの底とアーム32のアーム軸部32bとの間に、バネ34が設置される。このバネ34により、アーム32のアーム軸部32bがアーム保持用貫通孔31eの内周面に接するように付勢される。
【0032】
尚、アーム軸部32bを軸回りに回転して、平面32cを凹部31a側に対向させたとき、当該平面32cは、凹部底面31bよりも凹部31aの開放側に位置する(図5参照)。
【0033】
◆固定ネジの構成
固定ネジ33は、軸部33aと、当該軸部33aの端部に設けられたヘッド部33bと、ヘッド部33bから突出するつまみ部33cとを有する。
【0034】
軸部33aは、先端が球面状に形成されており、ロック用貫通孔31fの雌ネジに螺合する雄ネジが刻まれている。
ヘッド部33bは、軸部33aよりも大きな径となるように、当該軸部33aの基端部に設けられている。
つまみ部33cは、ヘッド部33bにおける軸部33aと逆側の端部から突出する板状部である。当該つまみ部33cを利用して、固定ネジ33を軸回りに容易に回転することができる。
【0035】
この固定ネジ33の軸部33aの長さは、ロック用貫通孔31fよりも長い。そのため、軸部33aをロック用貫通孔31fにねじ込み、当該軸部33aの球面状の先端を第1内側面31cから凹部31a内に突出させることができる。
【0036】
<施術方法について>
以下、大腿骨の遠位端のサイズを測定するとともに、当該大腿骨の遠位端を、インプラント取付のために適切な形状に切断する方法について、図6〜図11を用いて説明する。
図6及び図7は、骨寸法測定器1の取付方法を説明するための図である。また、図8は、図7に示す骨寸法測定器及び大腿骨の側面図である。図9は、位置決めピンを大腿骨に固定した状態を示す図である。図10は、カットガイドを大腿骨に取り付けた状態を示す図である。図11(a)は、図10に示すカットガイド及び大腿骨の側面図であり、図11(b)は、大腿骨の端部をインプラント取付形状に切断した状態を示す図である。
【0037】
(1)
まず、大腿骨100の遠位端は、機能軸(大腿骨頭中心から膝関節中心を通る線)に対して垂直な断面で切断され、所定の基準平面Sが形成される(図6参照)。
【0038】
(2)
図6に示すように、下部本体5の裏面が基準平面Sに当接し、且つ、底面部材53における延設板部53aの上面が大腿骨100の遠位端の後部に当接する位置に、サイザー本体2を持っていき、その位置でサイザー本体2を保持する。
【0039】
(3)
図7に示すように、サイザー本体2の取付軸部43にスタイラス3の連結部31の凹部31aを係合させる。このとき、アーム32の先端を横に向けた状態(図4に示す状態からアーム32を約90°軸回りに回転した状態)で、スタイラス3を患部に挿入する。このようにスタイラス3を挿入した場合、屈曲部分を含むアーム軸部32bの全体が、係合方向と略平行な面内に位置するため、アーム32の先端が大腿骨の表面等に干渉しにくくなり、スタイラス3をサイザー本体2の取付軸部43に係合させ易い。
【0040】
(4)
スタイラス3をサイザー本体2の取付軸部43に係合させた後、アーム32の先端が下側を向くように、当該アーム32を約90°軸回りに回転させる。即ち、アーム32の先端が、取付軸部43の軸方向における最も下方に位置するように、アーム32を軸回りに回動させる。
尚、このとき、連結部31とアーム軸部32bとの間に設けられたバネ34(図5参照)の端面がアーム32の平面32cに当接し、当該平面32cを付勢することにより、アーム32の先端が、下側を向いた状態で保持される。
【0041】
そして、アーム32の先端が大腿骨100の前部の所定の位置に当接するように、アーム32を移動させる。このとき、固定ネジ33を、取付軸部43が凹部31aから外れない程度に緩めておくことで、アーム32を、軸方向(図7における矢印A1方向)に進退移動させることができる。また、連結部31を介してアーム32を取付軸部43の軸回り(図7における矢印A2方向)に回動させることができる。
ここで、図8に示すように、アーム32の上部本体4に対する上方への相対移動は、連結部31の上面が上部本体4のフランジ部44に当接することで規制され、下方への相対移動は、連結部31の下面が上部本体4の中央柱部41の上面に当接することで規制されている。つまり、上部本体4に対してのアーム32の上下移動は拘束されている。
一方、上部本体4は下部本体5に対して上下に移動できるので、当該アーム32を当該上部本体4とともに上下に移動させることができる。
このように、適宜、アーム32を移動して、アーム32の先端を大腿骨100の前部の所定の位置に当接させる。
【0042】
(5)
アーム32の先端が大腿骨100の前部の所定の位置に当接した状態で、凹部31a内に進出するように固定ネジ33を締め付ける。
これにより、図5に示すように、取付軸部43が、固定ネジ33の先端部と、第2内側面31dと、アーム32に設けられた平面32cと、に当接して、3点(図5において、α、β、γで当接点を示す)で支持される。
このとき、アーム32の平面32cに取付軸部43の外周面が当接することで、アーム32の軸回りの回動が規制される。そして、取付軸部43によりアーム32がアーム保持用貫通孔31eの内周面に向かう方向に付勢されるため、アーム32とアーム保持用貫通孔31eとの間の摩擦力により、当該アーム32の軸方向への移動も拘束される。更に、上記3点で生じる摩擦力により、スタイラス3の、取付軸部43回りの回動が規制される。
【0043】
(6)
アーム32の先端が大腿骨100の前部の所定の位置に当接した状態において、ポインタ55が指示するサイズを確認する。当該ポインタ55により指示されたサイズが、大腿骨100の遠位端のサイズである。そして、当該サイズに基づいて、使用されるインプラントのサイズ及び大腿骨の遠位端を切断するためのカットガイドのサイズが選択される。
【0044】
(7)
図9に示すように、2本の位置決めピン6,6を、サイザー本体2の貫通孔42a,42aを介して大腿骨100の遠位端の基準平面Sに立てる。
そして、2本の位置決めピン6,6を基準平面Sに残したまま、骨寸法測定器1を大腿骨100から取り外す。
【0045】
(8)
図10に示すように、2本の位置決めピン6,6が貫通孔7a,7aを通過するように、カットガイド7を基準平面Sに設置する。尚、この状態でカットガイド7は、大腿骨100にネジ等で固定される。
そして、このカットガイド7に設けられた複数の溝に沿って切断用の刃物を移動させて、大腿骨100の遠位端を切断する。図11(a)に切断面を二点鎖線で模式的に示す。
これにより、図11(b)に示すように、大腿骨100の遠位端が、インプラントの形状に合った所定の形状に切断される。
【0046】
<本実施形態の効果>
以上説明したように、本実施形態に係る骨寸法測定器1は、下部本体5と、下部本体5に対して一方向に移動可能に連結されているとともに、当該移動方向と平行に延びる取付軸部43を有する上部本体4と、取付軸部43に対して回動可能に係合する凹部31aと、外周面と凹部31aを形成する第1内側面31cとの間を貫通するネジ孔であるロック用貫通孔31fと、一端側の外周面と他端側の外周面との間を凹部31aを通過して貫通するアーム保持用貫通孔31eと、を有する連結部31と、アーム保持用貫通孔31eに回動可能かつ進退可能に挿入されるアーム32と、ロック用貫通孔31fに螺挿される固定ネジ33と、を備えている。
そして、アーム保持用貫通孔31eにアーム32が挿入され、且つ、連結部31の凹部31aが取付軸部43に係合した取付状態において、ロック用貫通孔31fに螺挿された固定ネジ33を締め付けて取付軸部43を付勢することで、固定ネジ33と、凹部31aを形成する第2内側面31dと、アーム32と、の間で、取付軸部43を挟み込むことができる。
【0047】
この構成によると、固定ネジ33を緩め、連結部31を取付軸部43に対して回動させることで、アーム32を上部本体4に対して取付軸部43回りに回動させることができる。更に、アーム32を当該アーム32の軸回りに回動させることもできるとともに、アーム保持用貫通孔31eに沿って進退させることもできる。これにより、アーム保持用貫通孔31eを所望の位置に操作し易くなる。
また、固定ネジ33による取付軸部43の付勢により、連結部31及びアーム32の、上部本体4に対する相対移動が規制される。即ち、固定ネジ33を締め付ける操作により、アーム32の上部本体4に対する相対移動(アーム進退・回動動作、連結部の回動動作)を規制することができる。
【0048】
また、骨寸法測定器1において、アーム32は、外周面の一部に平面32cが形成された円柱状のアーム軸部32bを有している。そして、連結部31にアーム32が取付られた取付状態において、ロック用貫通孔31fにねじ込まれた固定ネジ33で取付軸部43を付勢することで、固定ネジ33と、凹部31aを形成する第2内側面31dと、アーム32の平面32cと、の間で、取付軸部43を挟み込むことができる。
【0049】
この構成によると、取付状態において、固定ネジ33で取付軸部43を付勢して、取付軸部43をアーム32の平面32cに当接させることができるので、確実にアーム32の回動を規制することができる。
また、アーム32の先端を横に向けた状態(図4に示す状態からアーム32を約90°軸回りに回転した状態)では、アーム軸部32bの円弧面が取付軸部43側に対向しているため、アーム32の先端を下方に向けるように当該アーム32を回転させる操作をスムーズに行うことができる。
【0050】
また、固定ネジ33における取付軸部43に当接する先端部が球面形状であるので、当該固定ネジ33から取付軸部43に力を伝えやすい。また、付勢状態を安定させることができる。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。
【0052】
<変形例>
(1)
固定ネジ33をロック用貫通孔31fにねじ込んで、当該固定ネジ33で取付軸部43を付勢してスタイラス3を固定する構成に限定されない。付勢力を安定化するため弾性部材等を介して、取付軸部43を付勢する構成であってもよい。
【0053】
(2)
当接点α、β、γが、取付軸部43の外周を三等分する位置に配置されるように構成してもよい。即ち、図5において取付軸部43の中心を点Oとしたときに、角α−O−β、角β−O−γ、角γ−O−αが、約120°となるように構成してもよい。この場合、より安定してスタイラスを取付軸部43に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態に係る骨寸法測定器を示す斜視図。
【図2】図1に示す骨寸法測定器を裏側から見た斜視図。
【図3】図1に示す骨寸法測定器を分解した斜視図。
【図4】図1に示すスタイラスの(a)平面図および(b)側面図。
【図5】図4に示す連結部の近傍部の拡大模式図。
【図6】骨寸法測定器の取付方法を説明するための図。
【図7】骨寸法測定器の取付方法を説明するための図。
【図8】図7に示す骨寸法測定器及び大腿骨の側面図。
【図9】位置決めピンを大腿骨に固定した状態を示す図。
【図10】カットガイドを大腿骨に取り付けた状態を示す図。
【図11】(a)図10に示すカットガイド及び大腿骨の側面図及び(b)大腿骨切断後の模式図。
【符号の説明】
【0055】
1 骨寸法測定器
4 上部本体
5 下部本体
31 連結部
31a 凹部
31e ロック用貫通孔
31f アーム保持用貫通孔
32 アーム
33 固定ネジ(ロック部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部本体と、
前記下部本体に対して一方向に移動可能に連結されるとともに、当該移動方向と略平行に延びる軸部を有する上部本体と、
前記軸部に対して回動可能に係合する凹部と、外周面と前記凹部を形成する面との間を貫通するロック用貫通孔と、一端側の外周面と他端側の外周面との間を前記凹部を通過して貫通するアーム保持用貫通孔と、を有する連結部と、
前記アーム保持用貫通孔に回動可能かつ進退可能に挿入されるアームと、
前記ロック用貫通孔に挿入されるロック部材と、
を備え、
前記アーム保持用貫通孔に前記アームが挿入され、且つ、前記連結部の前記凹部が前記軸部に係合した取付状態において、前記ロック用貫通孔に挿入された前記ロック部材で前記軸部を付勢することで、当該ロック部材と、前記凹部を形成する面と、前記アームと、の間で、前記軸部を挟み込むことができる骨寸法測定器。
【請求項2】
前記アームは、外周面の一部に平面部が形成された円柱状部を有しており、
前記取付状態において、前記ロック用貫通孔に挿入された前記ロック部材で前記軸部を付勢することで、当該ロック部材と、前記凹部を形成する面と、前記アームの前記平面部と、の間で、前記軸部を挟み込むことができる請求項1に記載の骨寸法測定器。
【請求項3】
前記ロック部材における前記軸部に当接する先端部が球面形状である請求項1または請求項2に記載の骨寸法測定器。
【請求項1】
下部本体と、
前記下部本体に対して一方向に移動可能に連結されるとともに、当該移動方向と略平行に延びる軸部を有する上部本体と、
前記軸部に対して回動可能に係合する凹部と、外周面と前記凹部を形成する面との間を貫通するロック用貫通孔と、一端側の外周面と他端側の外周面との間を前記凹部を通過して貫通するアーム保持用貫通孔と、を有する連結部と、
前記アーム保持用貫通孔に回動可能かつ進退可能に挿入されるアームと、
前記ロック用貫通孔に挿入されるロック部材と、
を備え、
前記アーム保持用貫通孔に前記アームが挿入され、且つ、前記連結部の前記凹部が前記軸部に係合した取付状態において、前記ロック用貫通孔に挿入された前記ロック部材で前記軸部を付勢することで、当該ロック部材と、前記凹部を形成する面と、前記アームと、の間で、前記軸部を挟み込むことができる骨寸法測定器。
【請求項2】
前記アームは、外周面の一部に平面部が形成された円柱状部を有しており、
前記取付状態において、前記ロック用貫通孔に挿入された前記ロック部材で前記軸部を付勢することで、当該ロック部材と、前記凹部を形成する面と、前記アームの前記平面部と、の間で、前記軸部を挟み込むことができる請求項1に記載の骨寸法測定器。
【請求項3】
前記ロック部材における前記軸部に当接する先端部が球面形状である請求項1または請求項2に記載の骨寸法測定器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−136763(P2010−136763A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−313446(P2008−313446)
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(504418084)日本メディカルマテリアル株式会社 (106)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月9日(2008.12.9)
【出願人】(504418084)日本メディカルマテリアル株式会社 (106)
【Fターム(参考)】
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