骨止血組成物
【課題】本発明は、骨組織の再生を阻害せず、かつ即効性に優れた骨止血剤を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、少なくとも1種以上のオキシアルキレンユニットを有するポリアルキレングリコール重合体から形成され、20〜80%の含水率を有する高分子ゲル成分を含む骨止血組成物である。この骨止血組成剤は、非架橋のゲル成分で構成されていることから、生体内で容易に分解することができるため、止血しながら骨誘導することができるようになる。
【解決手段】本発明は、少なくとも1種以上のオキシアルキレンユニットを有するポリアルキレングリコール重合体から形成され、20〜80%の含水率を有する高分子ゲル成分を含む骨止血組成物である。この骨止血組成剤は、非架橋のゲル成分で構成されていることから、生体内で容易に分解することができるため、止血しながら骨誘導することができるようになる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科手術の止血剤の技術分野において、特に、骨からの出血を抑制または防止する骨止血組成物に関連する。
【背景技術】
【0002】
骨折や手術などで切開された骨の断面や骨髄からの出血は大量であるため、現在、骨折または切断した骨からの出血を止める方法としては、(1)非吸収性の蜜蝋を主成分とした“ボーンワックス”や“ネストップ”を手動で適度な軟度に調整して出血表面に塗布する方法、(2)コラーゲン等のゼラチン質を出血表面に塗布する方法、(3)骨の切開の際に生じる自己の骨粉を非吸収性セメントと混合してそれを充填する方法、および(4)電気メスなど行われている。しかし、いずれも即効的な止血に乏しく、さらに健康な組織に代わって瘢痕組織が生じ欠損部を埋めて修復する皮膚、筋肉、内臓などの修復プロセスとは異なり、骨の修復は、骨に損傷が生じた場合には瘢痕組織ではなく、新しい骨の組織に置き換わる。そのため、上記非吸収性の材料を切断された骨断面などに留置すると、生体内で分解されないため骨形成を阻害する物理的バリアとして働き、骨形成を阻害・抑制する原因となる。
【0003】
また、上記コラーゲン等のゼラチン質を含むゼラチン製剤は、45倍量の血液を吸収し膨潤することで患部に圧迫効果を示し、かつ吸収された血液中の血小板が凝固を促進させるため、現在、骨止血に最適な薬剤として使用されているが、当該ゼラチン自体に止血作用を有しておらず、かつ即効性に乏しく、感染の機会を増やすという問題がある。
【0004】
また、上記の“ボーンワックス”などの蜜蝋を主成分とした骨止血を使用する場合、蜜蝋自体は動物性由来であるため、蜜蝋を主成分とする骨止血剤を塗布した周囲の隣接組織に異物反応を起こし、マクロファージー、異物巨細胞、多形核白血球、リンパ球などが局部的に集積して、炎症や浮腫が起こる問題もある。さらに、その周囲を肉芽細胞ないし線維性結合組織を取り囲み、それが異物性肉芽腫となる場合もある。そこで、動物性由来でなく操作性や安全性の観点から動物性由来の物質を軽減した骨止血剤が注目されており、例えば特許文献1および非特許文献1にかかる問題を解決した骨止血剤が記載されている。
【0005】
特許文献1では、塩化第2スズを触媒に用いて、分子量2000〜6000の範囲にあるポリエチレングリコール存在下、D,L−ラクチドを開環重合させ、D,L−乳酸ユニットとエチレンオキサイドユニットを有するブロック共重合体を合成し、この共重合体をウサギの左腸骨の骨髄面に塗布し、30分間状態を観察した結果塗布面には血液の漏出は見られず完全に止血していることを確認している。
【0006】
非特許文献1では、ポリエチレングリコールとコラーゲンとの複合材料を骨用止血材として、骨損失部に留置することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平07−118157号公報
【非特許文献1】J.Biomed.Mater.Res.1998 Mar 5, 39(3) 358−63
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1では、ポリエチレングリコールとポリ乳酸とのブロック共重合体を使用しており、比較例1および2ではポリ乳酸とポリエチレングリコールとユニット比が52:48〜30:70の範囲外のブロック共重合体で行っており、止血効果がないことが示されている。そのため特許文献1の実施例と比較例との差異を鑑みると、ポリエチレングリコールユニットとポリ乳酸ユニットとの比と、分子量が所定の範囲であることが重要であり、30分間状態を観察した結果塗布面には血液の漏出は見られず完全に止血されていたと記載されている。しかしながら、当該所定のブロック共重合体をどの程度の量どのような形態で塗布しているのかは不明であり、また骨の断面積も不明であるため、特許文献1の発明の効果の優位性を見出せない。
【0009】
また、非特許文献1では、ポリエチレングリコールとコラーゲンとの複合体を使用しているため、確かに骨の出血の吸収には優れているが、止血後1ヶ月ほどは、弱い炎症が続く問題があり、骨の再生速度に比べて分解吸収速度が遅いので、依然として骨組織の再生を阻害してしまう。
【0010】
そこで、本発明は、骨組織の再生を阻害せず、かつ即効性に優れた骨止血剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、少なくとも1種以上のオキシアルキレンユニットを有するポリアルキレングリコール重合体から形成され、20〜80%の含水率を有する高分子ゲル成分を含む骨止血組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る骨止血組成剤は、非架橋のゲル成分で構成されていることから、生体内で容易に分解することができるため、止血しながら骨誘導することができる。
【0013】
本発明に係る骨止血組成物は、生体適合性および血液適合性が高いポリアルキレングリコール重合体から形成されているため血液凝固の即効性がよい。本発明は完全合成系からなるため殺菌・成型などの取り扱いがしやすい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の高分子ゲル成分の調製のための加熱時間とポリアルキレングリコール重合体の質量%との関係を示す図である。
【図2】図2は、本発明の高分子ゲル成分の調製のための加熱時間とポリアルキレングリコール重合体の質量%との関係を示す図である。
【図3】図3は、止血効果の測定方法を示す概略図である。
【図4】図4は、市販の骨止血剤と本発明の骨止血組成物との止血効果の比較実験のコントロールを示した実験結果である。
【図5】図5は、市販の骨止血剤と本発明の骨止血組成物との疑似血液を用いた止血効果の比較実験を示した実験結果である。
【図6】図6は、本発明の止血組成物の毒性評価を示す細胞の形態観察の光学顕微鏡像である。
【図7】図7は、本発明の止血組成物の止血効果を示す写真である。
【図8】本発明の実験結果をまとめた表である。
【図9】本発明の実験結果をまとめた表である。
【図10】図10は、ポリ(オキシエチレンユニット(EO)(75mol%)−オキシプロピレンユニット(PO)(25mol%))ランダム共重合体とエチレンオキサイドの複合ゲルの稠度に及ぼすCaPの影響を示す実験結果である。
【図11】ポリ(オキシエチレンユニット(EO)(75mol%)−オキシプロピレンユニット(PO)(25mol%))ランダム共重合体とエチレンオキサイドとの複合ゲルの稠度に及ぼすCaP−コラーゲン複合体添加の影響を示す実験結果である
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第一は、少なくとも1種以上のオキシアルキレンユニットを有するポリアルキレングリコール重合体から形成され、20〜80%の含水率を有する高分子ゲル成分を含む骨止血組成物である。
【0016】
本発明に係る骨止血組成剤は、非架橋のゲル成分で構成されていることから、生体内で容易に分解することができるため、止血しながら骨誘導することができる。より詳細には、本発明に係る骨止血組成物のマトリックスであるポリアルキレングリコールは、アルキレン基がエーテル結合されたオキシアルキレンユニットを繰り返し単位とする構造の高分子であり、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシエチレン‐オキシプロピレン重合体などの比較的アルキレン基鎖が短い重合体は、両親媒性であり、血液適合性、生体適合性に優れ、かつ無毒性であることが知られている。なかでも本発明に係る骨止血組成剤は、少なくとも1種以上のポリアルキレングリコール重合体と溶媒とが均一に混合されていることでポリアルキレングリコール重合体同士が絡み合い、凝集した非架橋の高分子ゲルとして、骨や骨髄からの血液を吸収することができる。さらに、本発明は、非架橋の高分子ゲルをマトリックスであることに起因して、骨組織の成長速度より当該高分子ゲルの分解速度が速いため骨組織の成長を阻害することなく骨誘導を促すことができる。
【0017】
本発明に係るオキシアルキレンユニットは、以下の式1および式2からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0018】
(式1)
【化1】
【0019】
上記式1中、hは1から10までの整数であることが好ましく、より好ましくは、上記式1中、hは2から5までの整数であり、さらに好ましくは、上記式1中、hは2から3までの整数である。
【0020】
(式2)
【化2】
【0021】
上記式1中、hは1から10までの整数であり、かつRは水素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基およびへキシル基からなる群から選択される少なくとも一つのアルキル基で示されることが好ましく、より好ましくは、上記式1中、hは2から5までの整数であり、かつRは水素、メチル基、エチル基、およびプロピル基からなる群から選択される少なくとも一つのアルキル基で示され、さらに好ましくは、上記式1中、hは2から3までの整数であり、かつRは水素、メチル基、およびエチル基からなる群から選択される少なくとも一つのアルキル基で示される。
【0022】
また、本発明に係るオキシアルキレンユニットの具体的な名称は、オキシメチレンユニット、オキシエチレンユニット、オキシプロピレンユニット、オキシブチレンユニット、オキシペンチレンユニット、オキシへキシレンユニット、オキシヘプチレンユニット、オキシオクチレンユニット、オキシノニレンユニット、およびオキシデシレンユニットが挙げられ、オキシエチレンユニット、オキシプロピレンユニット、オキシブチレンユニット、オキシペンチレンユニットが好ましい。また、本発明に係るオキシアルキレンユニットを有するポリアルキレングリコール重合体は、これらオキシアルキレンユニットを1種類から構成されるホモポリマーでも、2種類以上組み合わせてなるコポリマーであってもよいが、2種類以上組み合わせてなるコポリマーであることがより好ましい。
【0023】
また、本発明に係るポリアルキレングリコール重合体がコポリマーである場合、交互重合体、ランダム重合体が好ましい。
【0024】
本発明に係る少なくとも1種以上のオキシアルキレンユニットを有するポリアルキレングリコール重合体は、以下の式3:
【0025】
式3
【化3】
【0026】
(上記式3中、m、n、pおよびqはそれぞれ独立して、mは2以上5以下の整数であり、nは1000以上40000以下の整数であり、pは1以上5以下の整数であり、Qは600以上20000以下の整数であり、Rは、水素、メチル基、エチル基、およびプロピル基からなる群から選択される少なくとも一つのアルキル基である)
で示されるランダム共重合体であることが好ましく、より好ましくは、上記式2中のm、n、pおよびqはそれぞれ独立して、mは2以上4以下の整数であり、nは5000以上20000以下の整数であり、pは2以上4以下の整数であり、Qは900以上15000以下の整数であり、特に好ましくは、上記式中のm、n、pおよびqはそれぞれ独立して、mは2であり、nは5500以上9000以下の整数であり、pは3であり、Qは1500以上10000以下の整数である。またもっとも好ましいのは以下の式4で示されるランダム共重合体であり、式4中の記号である重合度n、Qおよび置換基Rは、上記と同様である。
【0027】
式4
【化4】
【0028】
また、本発明に係る少なくとも1種以上のオキシアルキレンユニットを有するポリアルキレングリコール重合体は、オキシエチレンユニットと、オキシプロピレンユニットとから構成された二元のランダム共重合体が特に好ましい。また、この場合のオキシエチレンユニットと、オキシプロピレンユニットとの比率(オキシエチレンユニット/オキシプロピレンユニット)は、1〜9が好ましく、1.5〜6がより好ましく、2〜4がさらに好ましい。
【0029】
本発明に係るポリアルキレングリコール重合体は、重量平均分子量50000〜2000000であることが好ましく、重量平均分子量300000〜1800000であることがより好ましく、重量平均分子量500000〜1500000であることが特に好ましい。
【0030】
ポリアルキレングリコール重合体の重量平均分子量50000未満だと骨止血組成物として成型できず、操作性が悪い。また、ポリアルキレングリコール重合体の分子量が2000000を超えると骨止血組成物が固くなり操作性が悪い。
【0031】
本発明に係るポリアルキレングリコール重合体は、分子量分布1.5〜20であることが好ましく、分子量分布が2.5〜18であることがより好ましく、分子量分布が6〜17であることが特に好ましい。
【0032】
本発明に係る高分子ゲル成分は、前記ポリアルキレングリコール重合体と、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ペンチレンオキサイド、へキシレンオキサイド、ヘプチレンオキサイド、オクチレンオキサイド、ノニレンオキサイド、およびデシレンオキサイドからなる群から選択される少なくとも一つのアルキレンオキサイドを含み、20〜80%の含水率を有する高分子ゲル成分を含むことが好ましい。
【0033】
尚、本発明に係るポリアルキレングリコールの合成方法は、公知の合成方法を使用することができ、特に制限されることはなく、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ペンチレンオキサイド、へキシレンオキサイド、ヘプチレンオキサイド、オクチレンオキサイド、ノニレンオキサイド、およびデシレンオキサイドからなる群から選択される少なくとも一つのアルキレンオキサイドを開環して、鉱酸等の酸触媒や水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)等のアルカリ触媒などの存在下で重合することができ、なかでもエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ペンチレンオキサイドからなる群から選択される一つと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ペンチレンオキサイドからなる群から選択される一つと、を混合して重合することが好ましく、エチレンオキサイドと、プロピレンオキサイドとを混合して重合することが特に好ましい。
【0034】
尚、重量平均分子量の測定方法は、GPC、光散乱法、粘度測定法、質量分析法(TOFMASSなど)が挙げられ、本発明に係るポリアルキレングリコール重合体の分子量は、GPCにより重量平均分子量を測定している。
【0035】
本発明に係る高分子ゲル成分は、少なくとも1種以上のオキシアルキレンユニットを有するポリアルキレングリコール重合体と、溶媒とから構成されていることが好ましく、必要により塩を含んでいることが好ましい。
【0036】
本発明に係る高分子ゲル成分は、含水率が20〜80%であり、30〜75%であることがより好ましく、40〜70%であることが特に好ましい。
【0037】
含水率が20〜80%の範囲であると、他の成分との混和が容易であり、操作性に優れ複雑な骨断面形状への付着特性が高く、高い止血効果が期待できる。
【0038】
なお、本発明に係る高分子ゲル成分の含水率は、−20〜−50℃、24時間凍結乾燥したものを乾燥状態とし、また、製造直後から25℃、10分静置したものを湿潤状態として各質量を測定し、以下の数式1で定義している。
【0039】
【数1】
【0040】
また、上記塩は、生体に許容される塩であれば特に制限されることはなく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムだけではなく、公知の緩衝溶液に使用される塩であれば制限されない。
【0041】
本発明に係る高分子ゲル成分は、さらに液体薬剤、サイトカイン(TGFβ、FGF、BMP)を含んでもよい。
【0042】
本発明に係る骨止血組成剤は、高分子ゲル成分と、骨誘導成分と、を含むことが好ましい。
【0043】
本発明に係る骨止血組成剤に、骨誘導成分や人工骨助剤成分が含有されていると、骨止血だけではなく、骨誘導をより促進することができる。
【0044】
本発明に係る骨誘導成分は、リン酸系カルシウムが好ましく、リン酸4カルシウムCa4O(PO4)2、水酸アパタイトCa10(PO4)6(OH)2、リン酸8カルシウムCa8H2(PO4)6・5H2O、リン酸2カルシウム2水和物CaHPO4・2H2O、リン酸2カルシウムCaHPO4、ピロリン酸カルシウムCa2P2O7、ピロリン酸カルシウム2水和物Ca2P2O8・2H2O、リン酸7カルシウムCa7(P5O16)2、リン酸2水素カルシウムCa4H2P6O20、リン酸1カルシウム・2水和物Ca(H2PO4)2・H2O、およびメタリン酸カルシウムCa(PO3)2からなる群から選択される少なくとも一つを骨誘導成分として含むことがより好ましい。
【0045】
本発明に係る骨誘導成分は、多孔質体が好ましく、この際の骨誘導成分のBET比表面積は、生体内で骨成分が溶解しやすい範囲または後述する人工骨助剤成分と複合体を形成しやすい範囲であればよいが、好ましくは0.5〜90m2/g、より好ましくは30〜60m2/gとするのがよい。前記比表面積が、0.5〜90m2/gであると、体内でのタンパク質の吸着により高い細胞吸着を期待できる。
【0046】
なお、本発明に係る骨誘導体成分(CaP)の比表面積は、吸着ガスに窒素を用いてBET(Brunauer−Emmett−Teller)法により測定した。装置は日本ベル株式会社製のBELSORP−minを使用している。測定には、約0.4gの粉体状の骨誘導体成分を使用している。死体積(Dead Volume)の測定はヘリウムガスを用いて行なっている。
【0047】
また、前記骨誘導成分は、100質量部の高分子ゲル成分に対して、10〜80質量部含んでいることが好ましく、40〜70質量部含んでいることがより好ましい。
【0048】
また、本発明に係る骨誘導成分は、粒状(顆粒も含む)、フィラー状、髭状、多角形状、円柱状、円錐状、角錐状、多角柱状のいずれであってもよく、なかでも粒状、フィラー状、髭状、円柱状、多角柱状が好ましい。また、本発明に係る骨誘導成分の形状が、フィラー状、髭状、円柱状、多角柱状などの場合、長手方向の平均長さは特に制限されることはないが、例えば5〜100μmが好ましい。
【0049】
前記長手方向の平均長さが5〜100μmであると、アスペクト比が増加して、骨止血組成物の強度が上昇し、骨の断面に対する固定力が上昇し、骨誘導成分を多く含有させることができ、特定のタンパク質との吸着特性が骨誘導しやすい。
【0050】
本発明に係る骨誘導成分の形状が粒状である場合、当該骨誘導成分の1次粒子の平均粒子径は、1μm〜5mmであることが好ましい。
【0051】
前記1次粒子の平均粒子径が顆粒状である場合、すなわち基本的にmm単位の大きさの場合は、顆粒同士の固定が可能になり安定した細胞保持担体として期待することができる。
【0052】
また、本明細書において「1次粒子」とは、骨誘導成分、例えば上記の骨誘導成分などのリン酸カルシウムは、一般的に複数凝集しているが、その個々の粒子をいい、凝集体を構成する個々の粒子をいう。
【0053】
なお、本明細書中において、「長さ」および「粒子径」とは、骨誘導成分の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均長さ」および「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される骨誘導成分の長さまたは粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
【0054】
なお、本発明に係る骨誘導体成分の形状(CaPの形状)および長さは、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)によって観察した。装置は日立製作所製(S−4500)を使用し、加速電圧は5〜20 kVで行なっている。また合成したCaPはカーボン製両面テープを用いて、アルミニウム製試料台に固定した。SEM観察の前処理としてイオンスパッター(E−1030、日立製作所製)を用いてPt−Pd蒸着を行なっている。
【0055】
本発明に係る骨誘導成分であるリン酸系カルシウムは、市販のものでも合成してもよく特に制限されることはなく、リン酸カルシウムを合成する方法としては水熱合成,均一沈殿法,リフラックス法,寒天ゲル法,アルギン酸塩紡糸等の方法などの公知の方法を利用することができ、合成方法は制限されることはなく、所望の骨誘導成分の形状により合成法を選択することができる。尚、本発明ではウィスカー状の骨誘導成分は均一沈殿法により合成している。以下、ウィスカー状の骨誘導成分(リン酸系カルシウム)を一例にして、その合成方法の好ましい一例を記載するが、本発明の範囲はこれに限定されることはない。
【0056】
本発明に係るウィスカー状の骨誘導成分(リン酸系カルシウム、以下HApと称する)の化学組成(Ca/P比)が、好ましくは1.6〜1.67になるように、所定量硝酸カルシウム四水和物(Ca(NO3)2・4H2O)、 所定量リン酸水素二アンモニウム((NH4)2HPO4)および所定量mol dm−3尿素((NH2)2CO)を混合し、さらに濃HNO3を加えて溶解して混合水溶液を調製した後、この混合水溶液に対して濃NH3を用いてpHを2〜5に調節したのち、前駆体溶液を得る。次いで、当該前駆体溶液を60〜120℃で16〜96時間加熱して、HApの前駆体を得たのち、60〜120℃で48〜96時間加熱を行い、尿素の加水分解を利用したpH制御によって、ウィスカー状のHApを生成させ、精製水で洗浄後、風乾して目的物のウィスカー状のHApを得ている。
【0057】
本発明に係る骨止血組成物は、高分子ゲル成分と、人工骨助剤成分とを含むことが好ましく、高分子ゲル成分と、骨誘導成分と、人工骨助剤成分とを含むことがより好ましく、高分子ゲル成分と、骨誘導成分および人工骨助剤成分が複合体を形成して含まれていることが特に好ましい。
【0058】
本発明に係る人工骨助剤成分としては、アルギン酸およびその塩(アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸アンモニウム等)が好ましい。一般にアルギン酸は、β−D−マンヌロン酸とα−L−グルロン酸から成るポリウロン酸であり、本発明に使用できるアルギン酸は特に制限されることはないが、β−D−マンヌロン酸とα−L−グルロン酸とのユニット比(β−D−マンヌロン酸/α−L−グルロン酸)が、0.5〜2.5が好ましく、0.8〜1.5がより好ましい。
【0059】
人工骨助剤成分としては、アルギン酸およびその塩を使用すると、アルギン酸およびその塩自体止血効果を備えているため血液凝固の即効性がよいと考えられる。
【0060】
本発明に係る人工骨助剤成分は、骨誘導成分と複合体を形成していることが好ましい。より具体的には、人工骨助剤成分がCa架橋したゲル状の物質と骨誘導成分とが混合されたものが好ましい。すなわち、人工骨助剤成分としてアルギン酸およびその塩を使用した場合、アルギン酸はCa架橋したエッグボックス構造と呼ばれるゲル状を形成することができ、より多くの血液を吸収することができると考えられる。特に、骨誘導成分を多孔質体の構造である場合、人工骨助剤成分が当該多孔質体の内部に入り込み、細孔内もゲル状のアルギン酸で満たすことができるため、より多くの血液を吸収することができると考えられる。
【0061】
また、本発明に係る人工骨助剤成分としてアルギン酸およびその塩を使用した場合、必要により二価の金属イオンを含む塩、特にCaCl2、CaF2などのハロゲン化カルシウムやCa(OH)2、Ca(NO3)2、CaSO4などのカルシウム含有塩を、当該アルギン酸およびその塩に対して、過剰に含有させることが好ましい。
【0062】
これにより、アルギン酸はCa架橋したエッグボックス構造と呼ばれるゲル状を形成するため、より多くの血液を吸収できると考えられる。
【0063】
本発明に係る人工骨助剤成分と骨誘導成分との複合体の合成方法は、特に制限されるものではなく公知の方法を利用することができ、本発明では好ましい一態様として骨誘導成分の多孔体を利用して、アルギン酸またはアルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸塩100質量部に対して、所望の形状の骨誘導成分(例えば、ウィスカー状のCaPや粒子状のCaP)が30〜70質量%になるように水に添加してこれらを混合した後、CaCl2、CaF2、などのハロゲン化カルシウムやCa(OH)2、Ca(NO3)2、CaSO4などのカルシウム含有塩が含まれた溶液を過剰量滴下させてゲル化させた後、当該ゲル化した物質を回収し、−1℃以下、好ましくは−20℃以下で凍結させて凍結乾燥機を用いて減圧下、−10〜−50℃程度で6時間〜72時間凍結乾燥させて目的物である人工骨助剤成分と骨誘導成分との複合体(HAp−アルギン酸複合体)を調製している。
【0064】
本発明に係る骨止血組成物は、高分子ゲル成分と、骨誘導成分と、人工骨助剤成分とを含むことが好ましく、前記骨止血組成物は、100質量部の高分子ゲル成分に対して、10〜80質量部の骨誘導成分と、10〜80質量部の人工骨助剤成分とを含むことが好ましく、100質量部の高分子ゲル成分に対して、50〜70質量部の骨誘導成分と、50〜70質量部の人工骨助剤成分とを含むことがより好ましい。
【0065】
本発明に係る骨止血組成物の製造方法としては、上述したように公知の方法で合成したまたは市販の少なくとも1種以上のオキシアルキレンユニットを有するポリアルキレングリコール重合体100質量部に対して、水を好ましくは10〜600質量部、より好ましくは25〜400質量部添加して、必要により所望の形状の骨誘導成分(例えば、リン酸系カルシウム)を好ましくは10〜80質量部、より好ましくは50〜70質量部と、必要により人工骨助剤成分(例えば、アルギン酸またはその塩)を好ましくは10〜80質量部、より好ましくは50〜70質量部と、さらに必要により前記所望の形状の骨誘導成分および/または人工骨助剤成分に代えて人工骨助剤成分と骨誘導成分との複合体(例えば、上記したCaP−アルギン酸複合体)を好ましくは10〜80質量部、より好ましくは50〜70質量部と、を混合した後、当該混合物を25℃〜105℃、好ましくは50℃〜100℃まで加熱しつつ、20分〜780分、好ましくは80分〜180分撹拌しながら混合して、水または溶媒を蒸発させ含水率が20〜80%になるように調整しポリアルキレングリコール重合体と水または溶媒とを構成成分とする高分子ゲル成分からなる骨止血組成物を調製することが好ましい。
【0066】
また、本発明に係る骨止血組成物が高分子ゲルからなる場合(少なくとも1種以上のオキシアルキレンユニットを有するポリアルキレングリコール重合体と、水または溶媒とを構成成分)において、後述する実験例1にも示すように、高分子ゲルを調製するための加熱時間と質量パーセント濃度との関係を図1に示す。140℃で加熱・撹拌を行ったところ、ポリアルキレングリコール重合体の質量パーセント濃度は加熱時間の増加に伴って急激に増大し、75分後に100%を超え、さらに加熱を続けると、一部炭化している(図1(a))。そこで、加熱温度を140℃から120℃および110℃に下げたが、ポリアルキレングリコール重合体の質量パーセント濃度は100%を超えて一部炭化している(図1(b)および(c))。さらに、加熱温度を100℃まで下げたところ、ポリアルキレングリコール重合体の質量パーセント濃度は加熱の初期に急激に増加したのち、100分経過後にはほぼ一定になったが、その時点で100%を超えていた(図1 (d))。加熱温度をさらに100℃から80℃に下げたところ、質量パーセント濃度は100℃の場合と同様に100%を超えた図1(e))。さらに、加熱温度を80℃から70℃まで下げたところ、ポリアルキレングリコール重合体の質量パーセント濃度はほぼ100%となった(図1(f))。
【0067】
この実験の結果から、高分子ゲルを調製するための温度は最終的にポリアルキレングリコール重合体の質量パーセント濃度がほぼ100%となった100℃前後、好ましくは80℃、特に好ましいのが70℃での加熱が最も適していることが確認されている。しかしながら、80℃で加熱した場合と比較して高分子ゲル成分の合成に要する時間が長く、さらにポリアルキレングリコール重合体は粉体状であるため、当該ポリアルキレングリコール重合体と精製水とが均一に混合しにくい。そのため、高分子ゲル成分を比較的短時間に調製する場合には、70℃よりも高い温度に設定する必要がある。
【0068】
そこで、ポリアルキレングリコール重合体と水との混合物を最初に100〜120℃まで加熱し、次いでポリアルキレングリコール重合体と精製水とが均一に混合されたと判断される50%の質量パーセント濃度まで加熱・かく拌を続けたのち、60〜80℃まで温度を下げて高分子ゲルを調製する実験を行っている(実験例2)。最終的に確定した実験条件を時間の関数でプロットして図2に示す。まず、出発物質であるポリアルキレングリコール重合体を100〜120℃で30〜50分加熱してポリアルキレングリコール重合体の質量パーセント濃度を40%から50%まで増加させた後、60〜80℃で50〜760分加熱して、水分量を調整している。
【0069】
したがって、本発明に係る骨止血組成物のより好ましい製造方法としては、上述したように公知の方法で合成したまたは市販の少なくとも1種以上のオキシアルキレンユニットを有するポリアルキレングリコール重合体100質量部に対して、水を好ましくは10〜600質量部、より好ましくは25〜400質量部添加して、必要により所望の形状の骨誘導成分(例えば、リン酸系カルシウム)を好ましくは10〜80質量部、より好ましくは50〜70質量部と、必要により人工骨助剤成分(例えば、アルギン酸またはその塩)を好ましくは10〜80質量部、より好ましくは50〜70質量部と、さらに必要により前記所望の形状の骨誘導成分および/または人工骨助剤成分に代えて人工骨助剤成分と骨誘導成分との複合体(例えば、上記したCaP−アルギン酸複合体)を好ましくは10〜80質量部、より好ましくは50〜70質量部と、を混合した後、100〜120℃まで加熱しつつ、30〜50分撹拌しながら混合して前記ポリアルキレングリコール重合体の質量パーセント濃度を40%から50%まで増加させた後、次いで60〜80℃で50〜760分加熱して水または溶媒を蒸発させて骨止血組成物を調製する方法が挙げられる。
【0070】
尚、前記ポリアルキレングリコール重合体、水、骨誘導成分、人工骨助剤成分、および人工骨助剤成分と骨誘導成分との複合体を混合する順番は特に制限されず、前記ポリアルキレングリコール重合体と水とから高分子ゲル成分を調製した後、当該高分子ゲル成分にさらに骨誘導成分、人工骨助剤成分、および人工骨助剤成分と骨誘導成分との複合体を混合してもよく、同時に前記ポリアルキレングリコール重合体、水、骨誘導成分、人工骨助剤成分、および人工骨助剤成分と骨誘導成分との複合体を混合してもよい。
【0071】
また、上記製造方法において粉体の状態で撹拌、混合または単なる撹拌、混合の方法としては、特に限定されず、例えば、ジェットミル、ライカイ機、ボールミル、ビーズミル、遊星ミル、ハイブリダイザー、メカノフュージョン、混練押出し機、高速回転ミルなどを使用することができ、好適にはライカイ機、ボールミル、遊星ミル、高速回転ミルが使用され、より好適には高速回転ミルが使用される。
【0072】
本発明に係る骨止血組成物の稠度は、15〜20mmが好ましく、17.5〜18.5mmがより好ましい。
【0073】
当該骨止血組成物の稠度が15〜20mmの範囲であると、手術の際は手でこねて使用されることから、操作性に優れる。尚、本発明に係る骨止血組成物の稠度は、JIS T 6602−1993の4・3の規定のおもりを質量100gから質量500gに変更した以外は同一の測定方法に準拠したものである。
【0074】
本発明の第二は、上記の本発明の骨止血組成物を、5〜30時間凍結乾燥して吸水量100〜700%に調整されたものであり、10〜24時間凍結乾燥して吸水量200〜600%に調整されたものがより好ましい。
【0075】
凍結乾燥することにより長期保存性に優れ、かつ使用時ゲルとして使用する際に溶媒を選ばないため、水のみならず液体薬剤、サイトカインなど高濃度での薬物保持が可能となる。
【0076】
また、ここでいう吸水量とは、当該骨止血組成物の質量に対して最大吸収できる血液の量の割合をいう。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例および比較例を参照して具体的に説明する。尚、本発明は、上記の実施形態および下記の実施例に限定されるものではない。これらは、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0078】
「止血組成物の調製」
(ゲル成分の合成)
図8に示すように、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム共重合体(エチレンオキサイドユニット:プロピレンオキサイドユニットの重合比=9:1〜7:3)に、精製水を添加し、当該精製水と当該ランダム共重合体の総質量が全体の20%になるように混合した後に、熱電対を挿入して70〜100℃の範囲で薬さじで加熱、攪拌し、精製水を蒸発させることにより含水率が20〜50%のゲルをそれぞれ得た。
【0079】
すなわち、図8に示す条件で調製した各ゲルをS1〜S9として、それぞれの分子量(重量平均分子量)、分子量分布、稠度、止血時間および毒性などを評価した。
【0080】
尚、以下、S1〜S9は、図8の組成を示す各骨止血組成物であることを意味する。
【0081】
また、図8において、PO/EOの比は、エチレンオキサイドユニット/プロピレンオキサイドユニットを示すのである。
【0082】
(ウィスカー状のCa10(PO4)6(OH)2の合成)
HApの化学組成(Ca/P比:1.6)になるように、0.167 mol dm−3硝酸カルシウム四水和物(Ca(NO3)2・4H2O), 0.100 mol dm−3リン酸水素二アンモニウム((NH4)2HPO4)および0.500 mol dm−3尿素((NH2)2CO)を混合し、さらに濃HNO3を加えて溶解した。この混合水溶液に対して濃NH3を用いてpHを2.2〜4.5に調節したのち、前駆体溶液の全量を500cm3とした。この前駆体溶液300cm3を約80℃で24h加熱して、HApの前駆体を得たのち、90℃で72 h加熱を行い、尿素の加水分解を利用したpH制御によって、ウィスカー状のCa10(PO4)6(OH)2を生成した。生成物は精製水で洗浄後、風乾した。また、粒状のCa10(PO4)6(OH)2は、市販のもの(太平化学産業製HAP−100,n−HAp)を利用した。
【0083】
(CaP−AGの合成)
α−D−マンヌロン酸/β−L−グルロン酸の比(M/G比)が0.9のアルギン酸ナトリウム(AG)について、AGの濃度が2.0質量%となるように精製水に溶解した。上記合成したウィスカー状のCa10(PO4)6(OH)2および超微粉体Ca10(PO4)6(OH)2(太平化学産業製HAP−100, n−HAp)に対して2.0質量%のAGをCa10(PO4)6(OH)2/AGの質量比が1.0の割合になるように混合した。つぎに、これらをシリンジと霧吹きを用いて1mol dm−3CaCl2溶液に一滴ずつ滴下してゲル化させた。得られた球状ゲルを回収し、続いて−80℃のフリーザーまたは−20℃の冷凍庫で凍結させたのち、凍結乾燥機(東京理化器械株式会社 EYEL4)を用いて13Paの減圧下で−50℃で24h凍結乾燥させ、それぞれの形状のCa10(PO4)6(OH)2−AG複合体(図9ではアルギン酸−CaP複合体と称している)を作製した。
【0084】
(SA1〜SA4の調製)
上記で得られたS1〜S9と、それぞれの形状のCa10(PO4)6(OH)2−AG複合体、粒状のCa10(PO4)6(OH)2およびウィスカー状のCa10(PO4)6(OH)2とを図9に示す組成で混合し、以下に示す止血効果の測定を行った。
【0085】
また、図9に示す条件で調製した各ゲルをSA1〜SA4として、それぞれの止血時間および毒性などを評価した。尚、以下、SA1〜SA4は、図9の組成を示す各骨止血組成物であることを意味する。
【0086】
「評価方法」
(稠度)
稠度測定の方法をJIS T 6602−1993の4・3の規定に示すように、アクリル板にS1〜9をそれぞれ約1g挟み、500gの分銅(c)をのせて、広がったゲルの最大長さを方眼用紙測定した。なお、おもりが100gであると〜であるため、JIS T 6602−1993の4・3の規定のおもりを質量100gから500gに変更した。
【0087】
(止血時間)
作製した試料の止血効果を評価するために以下の実験をおこなった。止血測定法を図3に示す。市販のCaP多孔体3(ボーンフィル 登録商標 HOYA製)(気孔率70 %、気孔径200μm)の上に0.1gの上記で得られた各止血組成物(S1〜S9)2(; 9 ×9 ×1 mm3)(断面積は9×9)を接着させた。これらを精製水1または擬似血液1が入ったシャーレーの中に入れ精製水と擬似血液(Laerdal BLOOD−COLORED CONCENTRATION)とをそれぞれ浸透させた。精製水の場合は、試料に塩化コバルト紙をのせ、青色から赤色に変化した際の時間を止血時間として測定した。擬似血液の場合は、試料の上にキムワイプ4を載せ、浸透して色の変化が見られた時間を止血時間と定義した。また、本発明の骨止血組成物は、なお、動物の血液は血液が凝固するため使用不可であった。
【0088】
これら実験結果を図4および図5に示す。ここで図4は、シャーレーの中に精製水1をいれた場合のコントロール実験であり、図5は、シャーレーの中に擬似血液1をいれた場合を示すものである。図4において、(a)は市販の骨止血剤であるボーンワックス(ネオトップ 登録商標)(b)は上記調製した本発明の骨止血組成物であるS4、(c)は上記調製した本発明の骨止血組成物であるSA1、(d)は上記調製した本発明の骨止血組成物であるSA2である。
【0089】
また、図5において、(a)は市販の骨止血剤であるボーンワックス(ネオトップ 登録商標)(b)は上記調製した本発明の骨止血組成物であるS4、(c)は上記調製した本発明の骨止血組成物であるSA1、(d)は上記調製した本発明の骨止血組成物であるSA2である。
【0090】
図6に、本発明に係る骨止血組成物の止血効果のキムワイプの経時的変化を示す写真を示す。図6において(a)は上記調製した本発明の骨止血組成物であるSA1を示し、(b)は上記調製した本発明の骨止血組成物であるSA2を示し、(c)は上記調製した本発明の骨止血組成物であるS2を示す。
【0091】
(毒性)
培養面積25 cm3の組織培養フラスコ(IWAKI製)を用いて、37℃±0.02℃、5 %CO2雰囲気下のインキュベーター内においてMC3T3−E1細胞の培養を行った。培地には抗生物質である50μgゲンタマイシンおよび250μgカナマイシンを添加し、さらにウシ胎児血清(FBS)を10 vol% 添加して作製したα−最小必須培地(α−MEM(+))を用いた。培地は3dおきに交換した。7d後にフラスコ内でコンフルエントに達した細胞を、0.5 %トリプシン−EDTAを用いて剥がした。細胞の洗浄にはリン酸塩緩衝液(PBS(−))を用いた。この細胞を15cm3遠心チューブで遠心分離を行い、新たにα−MEMを加えて細胞懸濁液を調製した。この溶液の細胞濃度を血球計算版(トーマ)で測定した。
【0092】
上記骨止血組成物1〜9(S1〜S9)のそれぞれを精製水に溶解させオートクレーブで滅菌し、当該組成物を1wellに0.001 gとなるように加えた1×104個のMC3T3−E1細胞を細胞培養用24 wellポリスチレンプレートに播種して、細胞数を測定した。なお、トランズウェルを設置した日を0dとした。継代のときと同様、MC3T3−E1細胞は37℃±0.02℃、5 % CO2雰囲気下のインキュベーター内で培養した。種々の期間培養した細胞は、継代のときと同様の操作でフラスコからはがし浮遊させたのち、細胞数を計測した。また、計測する前には光学顕微鏡(島津理化製 倒立顕微鏡AE 31)による細胞の形態観察を行なった。そのうち代表的なものとしてS2の結果を図6に示す。また、図6において、(a)はコントロール、(b)はS2であり、1dは一日後、4dは4日後を示す。この結果をみると培養期間1dには球状の細胞が存在していたが、4d経過後には増殖していた。コントロールおよび上記S1〜S9のいずれも同様の増殖傾向が見られた。上記の結果から、本発明に係る骨止血組成物は細胞の増殖に対して特に阻害効果はないことが確認された。
【0093】
(実験例1)
エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム共重合体(エチレンオキサイドユニット:プロピレンオキサイドユニットの重合比=8:2)に、精製水を添加し、当該精製水と当該ランダム共重合体との総質量が全体の20%になるように混合した後に、熱電対を挿入して70℃(f)、80℃(e)、100℃(d)、110℃(c)、120℃(b)、および140℃(a)のそれぞれの温度条件において、薬さじで加熱、攪拌し、精製水を蒸発させることにより、時間と高分子ゲル成分における前記ランダム共重合体の質量%とを関係を調べる実験を行った(図1 参照)。
【0094】
(実験例2)
エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム共重合体(エチレンオキサイドユニット:プロピレンオキサイドユニットの重合比=8:2)に、精製水を添加し、当該精製水と当該ランダム共重合体との総質量が全体の20%になるように混合した後に、熱電対を挿入して100℃で185分間加熱・攪拌(a)した後、次いで70℃で960分間(b)加熱・攪拌して、精製水を蒸発させることにより、時間と高分子ゲル成分における前記ランダム共重合体の質量%とを関係を調べる実験を行った(図2参照)。
【0095】
(参考実験)
高分ゲル成分の調製:エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム共重合体(エチレンオキサイドユニット:プロピレンオキサイドユニットの重合比=8:2)の濃度が20 mass%となるように水と混合したのち,100℃で185 min,ついで70℃で960 min加熱して調製した。
【0096】
エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム共重合体(エチレンオキサイドユニット:プロピレンオキサイドユニットの重合比=8:2)とエチレンオキサイド(EO)との複合ゲルの調製:EOには分子量が100万(EO(100))および500万(EO(500))のものを使用し,これらのEOとエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム共重合体に対して水を添加し,上述と同じ条件で3種類のゲルを調製した。EPO(エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム共重合体とも称する),EOおよび水の混合比(質量)はEPO / EO(100) / 水 = 25 : 15 : 60 (25EPO−15EO(100)), EPO / EO(500) / 水 = 25 : 15 : 60 (25EPO − 15EO(500))およびEP / EO(100) / 水 = 15 : 15 : 70 (15EPO−15EO(100))であった。CaP−Col(コラーゲン)複合体の調製:Colゲル由来のCol繊維とリン酸緩衝液との懸濁液に対して,9 mmol・dm−3 CaCl2溶液を添加して30℃で24h加熱して複合体を調製した。評価:稠度の測定では,0.1gの試料をアクリル板に挟み,500gの荷重をかけて広がった長さを調べた。止血時間の測定では,1cm3の立方体状CaP(気孔径:200μm)の上面に試料を設置し,下面を擬似血液に浸し,毛管現象で上昇してきた疑似血液の到達時間を調べた。また、SBF溶液に試料を所定時間浸漬した後の質量を測定し,浸漬前の質量を基に溶解率を求めた。これらの結果を図10と図11に示す。
【産業上の利用可能性】
【0097】
医療用途、特に骨からの出血を抑制する。
【符号の説明】
【0098】
1 精製水または擬似血液、
2 止血組成物、
3 CaP多孔体、
4 キムワイプ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科手術の止血剤の技術分野において、特に、骨からの出血を抑制または防止する骨止血組成物に関連する。
【背景技術】
【0002】
骨折や手術などで切開された骨の断面や骨髄からの出血は大量であるため、現在、骨折または切断した骨からの出血を止める方法としては、(1)非吸収性の蜜蝋を主成分とした“ボーンワックス”や“ネストップ”を手動で適度な軟度に調整して出血表面に塗布する方法、(2)コラーゲン等のゼラチン質を出血表面に塗布する方法、(3)骨の切開の際に生じる自己の骨粉を非吸収性セメントと混合してそれを充填する方法、および(4)電気メスなど行われている。しかし、いずれも即効的な止血に乏しく、さらに健康な組織に代わって瘢痕組織が生じ欠損部を埋めて修復する皮膚、筋肉、内臓などの修復プロセスとは異なり、骨の修復は、骨に損傷が生じた場合には瘢痕組織ではなく、新しい骨の組織に置き換わる。そのため、上記非吸収性の材料を切断された骨断面などに留置すると、生体内で分解されないため骨形成を阻害する物理的バリアとして働き、骨形成を阻害・抑制する原因となる。
【0003】
また、上記コラーゲン等のゼラチン質を含むゼラチン製剤は、45倍量の血液を吸収し膨潤することで患部に圧迫効果を示し、かつ吸収された血液中の血小板が凝固を促進させるため、現在、骨止血に最適な薬剤として使用されているが、当該ゼラチン自体に止血作用を有しておらず、かつ即効性に乏しく、感染の機会を増やすという問題がある。
【0004】
また、上記の“ボーンワックス”などの蜜蝋を主成分とした骨止血を使用する場合、蜜蝋自体は動物性由来であるため、蜜蝋を主成分とする骨止血剤を塗布した周囲の隣接組織に異物反応を起こし、マクロファージー、異物巨細胞、多形核白血球、リンパ球などが局部的に集積して、炎症や浮腫が起こる問題もある。さらに、その周囲を肉芽細胞ないし線維性結合組織を取り囲み、それが異物性肉芽腫となる場合もある。そこで、動物性由来でなく操作性や安全性の観点から動物性由来の物質を軽減した骨止血剤が注目されており、例えば特許文献1および非特許文献1にかかる問題を解決した骨止血剤が記載されている。
【0005】
特許文献1では、塩化第2スズを触媒に用いて、分子量2000〜6000の範囲にあるポリエチレングリコール存在下、D,L−ラクチドを開環重合させ、D,L−乳酸ユニットとエチレンオキサイドユニットを有するブロック共重合体を合成し、この共重合体をウサギの左腸骨の骨髄面に塗布し、30分間状態を観察した結果塗布面には血液の漏出は見られず完全に止血していることを確認している。
【0006】
非特許文献1では、ポリエチレングリコールとコラーゲンとの複合材料を骨用止血材として、骨損失部に留置することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平07−118157号公報
【非特許文献1】J.Biomed.Mater.Res.1998 Mar 5, 39(3) 358−63
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1では、ポリエチレングリコールとポリ乳酸とのブロック共重合体を使用しており、比較例1および2ではポリ乳酸とポリエチレングリコールとユニット比が52:48〜30:70の範囲外のブロック共重合体で行っており、止血効果がないことが示されている。そのため特許文献1の実施例と比較例との差異を鑑みると、ポリエチレングリコールユニットとポリ乳酸ユニットとの比と、分子量が所定の範囲であることが重要であり、30分間状態を観察した結果塗布面には血液の漏出は見られず完全に止血されていたと記載されている。しかしながら、当該所定のブロック共重合体をどの程度の量どのような形態で塗布しているのかは不明であり、また骨の断面積も不明であるため、特許文献1の発明の効果の優位性を見出せない。
【0009】
また、非特許文献1では、ポリエチレングリコールとコラーゲンとの複合体を使用しているため、確かに骨の出血の吸収には優れているが、止血後1ヶ月ほどは、弱い炎症が続く問題があり、骨の再生速度に比べて分解吸収速度が遅いので、依然として骨組織の再生を阻害してしまう。
【0010】
そこで、本発明は、骨組織の再生を阻害せず、かつ即効性に優れた骨止血剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、少なくとも1種以上のオキシアルキレンユニットを有するポリアルキレングリコール重合体から形成され、20〜80%の含水率を有する高分子ゲル成分を含む骨止血組成物を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る骨止血組成剤は、非架橋のゲル成分で構成されていることから、生体内で容易に分解することができるため、止血しながら骨誘導することができる。
【0013】
本発明に係る骨止血組成物は、生体適合性および血液適合性が高いポリアルキレングリコール重合体から形成されているため血液凝固の即効性がよい。本発明は完全合成系からなるため殺菌・成型などの取り扱いがしやすい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の高分子ゲル成分の調製のための加熱時間とポリアルキレングリコール重合体の質量%との関係を示す図である。
【図2】図2は、本発明の高分子ゲル成分の調製のための加熱時間とポリアルキレングリコール重合体の質量%との関係を示す図である。
【図3】図3は、止血効果の測定方法を示す概略図である。
【図4】図4は、市販の骨止血剤と本発明の骨止血組成物との止血効果の比較実験のコントロールを示した実験結果である。
【図5】図5は、市販の骨止血剤と本発明の骨止血組成物との疑似血液を用いた止血効果の比較実験を示した実験結果である。
【図6】図6は、本発明の止血組成物の毒性評価を示す細胞の形態観察の光学顕微鏡像である。
【図7】図7は、本発明の止血組成物の止血効果を示す写真である。
【図8】本発明の実験結果をまとめた表である。
【図9】本発明の実験結果をまとめた表である。
【図10】図10は、ポリ(オキシエチレンユニット(EO)(75mol%)−オキシプロピレンユニット(PO)(25mol%))ランダム共重合体とエチレンオキサイドの複合ゲルの稠度に及ぼすCaPの影響を示す実験結果である。
【図11】ポリ(オキシエチレンユニット(EO)(75mol%)−オキシプロピレンユニット(PO)(25mol%))ランダム共重合体とエチレンオキサイドとの複合ゲルの稠度に及ぼすCaP−コラーゲン複合体添加の影響を示す実験結果である
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第一は、少なくとも1種以上のオキシアルキレンユニットを有するポリアルキレングリコール重合体から形成され、20〜80%の含水率を有する高分子ゲル成分を含む骨止血組成物である。
【0016】
本発明に係る骨止血組成剤は、非架橋のゲル成分で構成されていることから、生体内で容易に分解することができるため、止血しながら骨誘導することができる。より詳細には、本発明に係る骨止血組成物のマトリックスであるポリアルキレングリコールは、アルキレン基がエーテル結合されたオキシアルキレンユニットを繰り返し単位とする構造の高分子であり、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、またはポリオキシエチレン‐オキシプロピレン重合体などの比較的アルキレン基鎖が短い重合体は、両親媒性であり、血液適合性、生体適合性に優れ、かつ無毒性であることが知られている。なかでも本発明に係る骨止血組成剤は、少なくとも1種以上のポリアルキレングリコール重合体と溶媒とが均一に混合されていることでポリアルキレングリコール重合体同士が絡み合い、凝集した非架橋の高分子ゲルとして、骨や骨髄からの血液を吸収することができる。さらに、本発明は、非架橋の高分子ゲルをマトリックスであることに起因して、骨組織の成長速度より当該高分子ゲルの分解速度が速いため骨組織の成長を阻害することなく骨誘導を促すことができる。
【0017】
本発明に係るオキシアルキレンユニットは、以下の式1および式2からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0018】
(式1)
【化1】
【0019】
上記式1中、hは1から10までの整数であることが好ましく、より好ましくは、上記式1中、hは2から5までの整数であり、さらに好ましくは、上記式1中、hは2から3までの整数である。
【0020】
(式2)
【化2】
【0021】
上記式1中、hは1から10までの整数であり、かつRは水素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基およびへキシル基からなる群から選択される少なくとも一つのアルキル基で示されることが好ましく、より好ましくは、上記式1中、hは2から5までの整数であり、かつRは水素、メチル基、エチル基、およびプロピル基からなる群から選択される少なくとも一つのアルキル基で示され、さらに好ましくは、上記式1中、hは2から3までの整数であり、かつRは水素、メチル基、およびエチル基からなる群から選択される少なくとも一つのアルキル基で示される。
【0022】
また、本発明に係るオキシアルキレンユニットの具体的な名称は、オキシメチレンユニット、オキシエチレンユニット、オキシプロピレンユニット、オキシブチレンユニット、オキシペンチレンユニット、オキシへキシレンユニット、オキシヘプチレンユニット、オキシオクチレンユニット、オキシノニレンユニット、およびオキシデシレンユニットが挙げられ、オキシエチレンユニット、オキシプロピレンユニット、オキシブチレンユニット、オキシペンチレンユニットが好ましい。また、本発明に係るオキシアルキレンユニットを有するポリアルキレングリコール重合体は、これらオキシアルキレンユニットを1種類から構成されるホモポリマーでも、2種類以上組み合わせてなるコポリマーであってもよいが、2種類以上組み合わせてなるコポリマーであることがより好ましい。
【0023】
また、本発明に係るポリアルキレングリコール重合体がコポリマーである場合、交互重合体、ランダム重合体が好ましい。
【0024】
本発明に係る少なくとも1種以上のオキシアルキレンユニットを有するポリアルキレングリコール重合体は、以下の式3:
【0025】
式3
【化3】
【0026】
(上記式3中、m、n、pおよびqはそれぞれ独立して、mは2以上5以下の整数であり、nは1000以上40000以下の整数であり、pは1以上5以下の整数であり、Qは600以上20000以下の整数であり、Rは、水素、メチル基、エチル基、およびプロピル基からなる群から選択される少なくとも一つのアルキル基である)
で示されるランダム共重合体であることが好ましく、より好ましくは、上記式2中のm、n、pおよびqはそれぞれ独立して、mは2以上4以下の整数であり、nは5000以上20000以下の整数であり、pは2以上4以下の整数であり、Qは900以上15000以下の整数であり、特に好ましくは、上記式中のm、n、pおよびqはそれぞれ独立して、mは2であり、nは5500以上9000以下の整数であり、pは3であり、Qは1500以上10000以下の整数である。またもっとも好ましいのは以下の式4で示されるランダム共重合体であり、式4中の記号である重合度n、Qおよび置換基Rは、上記と同様である。
【0027】
式4
【化4】
【0028】
また、本発明に係る少なくとも1種以上のオキシアルキレンユニットを有するポリアルキレングリコール重合体は、オキシエチレンユニットと、オキシプロピレンユニットとから構成された二元のランダム共重合体が特に好ましい。また、この場合のオキシエチレンユニットと、オキシプロピレンユニットとの比率(オキシエチレンユニット/オキシプロピレンユニット)は、1〜9が好ましく、1.5〜6がより好ましく、2〜4がさらに好ましい。
【0029】
本発明に係るポリアルキレングリコール重合体は、重量平均分子量50000〜2000000であることが好ましく、重量平均分子量300000〜1800000であることがより好ましく、重量平均分子量500000〜1500000であることが特に好ましい。
【0030】
ポリアルキレングリコール重合体の重量平均分子量50000未満だと骨止血組成物として成型できず、操作性が悪い。また、ポリアルキレングリコール重合体の分子量が2000000を超えると骨止血組成物が固くなり操作性が悪い。
【0031】
本発明に係るポリアルキレングリコール重合体は、分子量分布1.5〜20であることが好ましく、分子量分布が2.5〜18であることがより好ましく、分子量分布が6〜17であることが特に好ましい。
【0032】
本発明に係る高分子ゲル成分は、前記ポリアルキレングリコール重合体と、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ペンチレンオキサイド、へキシレンオキサイド、ヘプチレンオキサイド、オクチレンオキサイド、ノニレンオキサイド、およびデシレンオキサイドからなる群から選択される少なくとも一つのアルキレンオキサイドを含み、20〜80%の含水率を有する高分子ゲル成分を含むことが好ましい。
【0033】
尚、本発明に係るポリアルキレングリコールの合成方法は、公知の合成方法を使用することができ、特に制限されることはなく、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ペンチレンオキサイド、へキシレンオキサイド、ヘプチレンオキサイド、オクチレンオキサイド、ノニレンオキサイド、およびデシレンオキサイドからなる群から選択される少なくとも一つのアルキレンオキサイドを開環して、鉱酸等の酸触媒や水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)等のアルカリ触媒などの存在下で重合することができ、なかでもエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ペンチレンオキサイドからなる群から選択される一つと、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ペンチレンオキサイドからなる群から選択される一つと、を混合して重合することが好ましく、エチレンオキサイドと、プロピレンオキサイドとを混合して重合することが特に好ましい。
【0034】
尚、重量平均分子量の測定方法は、GPC、光散乱法、粘度測定法、質量分析法(TOFMASSなど)が挙げられ、本発明に係るポリアルキレングリコール重合体の分子量は、GPCにより重量平均分子量を測定している。
【0035】
本発明に係る高分子ゲル成分は、少なくとも1種以上のオキシアルキレンユニットを有するポリアルキレングリコール重合体と、溶媒とから構成されていることが好ましく、必要により塩を含んでいることが好ましい。
【0036】
本発明に係る高分子ゲル成分は、含水率が20〜80%であり、30〜75%であることがより好ましく、40〜70%であることが特に好ましい。
【0037】
含水率が20〜80%の範囲であると、他の成分との混和が容易であり、操作性に優れ複雑な骨断面形状への付着特性が高く、高い止血効果が期待できる。
【0038】
なお、本発明に係る高分子ゲル成分の含水率は、−20〜−50℃、24時間凍結乾燥したものを乾燥状態とし、また、製造直後から25℃、10分静置したものを湿潤状態として各質量を測定し、以下の数式1で定義している。
【0039】
【数1】
【0040】
また、上記塩は、生体に許容される塩であれば特に制限されることはなく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムだけではなく、公知の緩衝溶液に使用される塩であれば制限されない。
【0041】
本発明に係る高分子ゲル成分は、さらに液体薬剤、サイトカイン(TGFβ、FGF、BMP)を含んでもよい。
【0042】
本発明に係る骨止血組成剤は、高分子ゲル成分と、骨誘導成分と、を含むことが好ましい。
【0043】
本発明に係る骨止血組成剤に、骨誘導成分や人工骨助剤成分が含有されていると、骨止血だけではなく、骨誘導をより促進することができる。
【0044】
本発明に係る骨誘導成分は、リン酸系カルシウムが好ましく、リン酸4カルシウムCa4O(PO4)2、水酸アパタイトCa10(PO4)6(OH)2、リン酸8カルシウムCa8H2(PO4)6・5H2O、リン酸2カルシウム2水和物CaHPO4・2H2O、リン酸2カルシウムCaHPO4、ピロリン酸カルシウムCa2P2O7、ピロリン酸カルシウム2水和物Ca2P2O8・2H2O、リン酸7カルシウムCa7(P5O16)2、リン酸2水素カルシウムCa4H2P6O20、リン酸1カルシウム・2水和物Ca(H2PO4)2・H2O、およびメタリン酸カルシウムCa(PO3)2からなる群から選択される少なくとも一つを骨誘導成分として含むことがより好ましい。
【0045】
本発明に係る骨誘導成分は、多孔質体が好ましく、この際の骨誘導成分のBET比表面積は、生体内で骨成分が溶解しやすい範囲または後述する人工骨助剤成分と複合体を形成しやすい範囲であればよいが、好ましくは0.5〜90m2/g、より好ましくは30〜60m2/gとするのがよい。前記比表面積が、0.5〜90m2/gであると、体内でのタンパク質の吸着により高い細胞吸着を期待できる。
【0046】
なお、本発明に係る骨誘導体成分(CaP)の比表面積は、吸着ガスに窒素を用いてBET(Brunauer−Emmett−Teller)法により測定した。装置は日本ベル株式会社製のBELSORP−minを使用している。測定には、約0.4gの粉体状の骨誘導体成分を使用している。死体積(Dead Volume)の測定はヘリウムガスを用いて行なっている。
【0047】
また、前記骨誘導成分は、100質量部の高分子ゲル成分に対して、10〜80質量部含んでいることが好ましく、40〜70質量部含んでいることがより好ましい。
【0048】
また、本発明に係る骨誘導成分は、粒状(顆粒も含む)、フィラー状、髭状、多角形状、円柱状、円錐状、角錐状、多角柱状のいずれであってもよく、なかでも粒状、フィラー状、髭状、円柱状、多角柱状が好ましい。また、本発明に係る骨誘導成分の形状が、フィラー状、髭状、円柱状、多角柱状などの場合、長手方向の平均長さは特に制限されることはないが、例えば5〜100μmが好ましい。
【0049】
前記長手方向の平均長さが5〜100μmであると、アスペクト比が増加して、骨止血組成物の強度が上昇し、骨の断面に対する固定力が上昇し、骨誘導成分を多く含有させることができ、特定のタンパク質との吸着特性が骨誘導しやすい。
【0050】
本発明に係る骨誘導成分の形状が粒状である場合、当該骨誘導成分の1次粒子の平均粒子径は、1μm〜5mmであることが好ましい。
【0051】
前記1次粒子の平均粒子径が顆粒状である場合、すなわち基本的にmm単位の大きさの場合は、顆粒同士の固定が可能になり安定した細胞保持担体として期待することができる。
【0052】
また、本明細書において「1次粒子」とは、骨誘導成分、例えば上記の骨誘導成分などのリン酸カルシウムは、一般的に複数凝集しているが、その個々の粒子をいい、凝集体を構成する個々の粒子をいう。
【0053】
なお、本明細書中において、「長さ」および「粒子径」とは、骨誘導成分の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離Lを意味する。「平均長さ」および「平均粒子径」の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数〜数十視野中に観察される骨誘導成分の長さまたは粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。
【0054】
なお、本発明に係る骨誘導体成分の形状(CaPの形状)および長さは、走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)によって観察した。装置は日立製作所製(S−4500)を使用し、加速電圧は5〜20 kVで行なっている。また合成したCaPはカーボン製両面テープを用いて、アルミニウム製試料台に固定した。SEM観察の前処理としてイオンスパッター(E−1030、日立製作所製)を用いてPt−Pd蒸着を行なっている。
【0055】
本発明に係る骨誘導成分であるリン酸系カルシウムは、市販のものでも合成してもよく特に制限されることはなく、リン酸カルシウムを合成する方法としては水熱合成,均一沈殿法,リフラックス法,寒天ゲル法,アルギン酸塩紡糸等の方法などの公知の方法を利用することができ、合成方法は制限されることはなく、所望の骨誘導成分の形状により合成法を選択することができる。尚、本発明ではウィスカー状の骨誘導成分は均一沈殿法により合成している。以下、ウィスカー状の骨誘導成分(リン酸系カルシウム)を一例にして、その合成方法の好ましい一例を記載するが、本発明の範囲はこれに限定されることはない。
【0056】
本発明に係るウィスカー状の骨誘導成分(リン酸系カルシウム、以下HApと称する)の化学組成(Ca/P比)が、好ましくは1.6〜1.67になるように、所定量硝酸カルシウム四水和物(Ca(NO3)2・4H2O)、 所定量リン酸水素二アンモニウム((NH4)2HPO4)および所定量mol dm−3尿素((NH2)2CO)を混合し、さらに濃HNO3を加えて溶解して混合水溶液を調製した後、この混合水溶液に対して濃NH3を用いてpHを2〜5に調節したのち、前駆体溶液を得る。次いで、当該前駆体溶液を60〜120℃で16〜96時間加熱して、HApの前駆体を得たのち、60〜120℃で48〜96時間加熱を行い、尿素の加水分解を利用したpH制御によって、ウィスカー状のHApを生成させ、精製水で洗浄後、風乾して目的物のウィスカー状のHApを得ている。
【0057】
本発明に係る骨止血組成物は、高分子ゲル成分と、人工骨助剤成分とを含むことが好ましく、高分子ゲル成分と、骨誘導成分と、人工骨助剤成分とを含むことがより好ましく、高分子ゲル成分と、骨誘導成分および人工骨助剤成分が複合体を形成して含まれていることが特に好ましい。
【0058】
本発明に係る人工骨助剤成分としては、アルギン酸およびその塩(アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸アンモニウム等)が好ましい。一般にアルギン酸は、β−D−マンヌロン酸とα−L−グルロン酸から成るポリウロン酸であり、本発明に使用できるアルギン酸は特に制限されることはないが、β−D−マンヌロン酸とα−L−グルロン酸とのユニット比(β−D−マンヌロン酸/α−L−グルロン酸)が、0.5〜2.5が好ましく、0.8〜1.5がより好ましい。
【0059】
人工骨助剤成分としては、アルギン酸およびその塩を使用すると、アルギン酸およびその塩自体止血効果を備えているため血液凝固の即効性がよいと考えられる。
【0060】
本発明に係る人工骨助剤成分は、骨誘導成分と複合体を形成していることが好ましい。より具体的には、人工骨助剤成分がCa架橋したゲル状の物質と骨誘導成分とが混合されたものが好ましい。すなわち、人工骨助剤成分としてアルギン酸およびその塩を使用した場合、アルギン酸はCa架橋したエッグボックス構造と呼ばれるゲル状を形成することができ、より多くの血液を吸収することができると考えられる。特に、骨誘導成分を多孔質体の構造である場合、人工骨助剤成分が当該多孔質体の内部に入り込み、細孔内もゲル状のアルギン酸で満たすことができるため、より多くの血液を吸収することができると考えられる。
【0061】
また、本発明に係る人工骨助剤成分としてアルギン酸およびその塩を使用した場合、必要により二価の金属イオンを含む塩、特にCaCl2、CaF2などのハロゲン化カルシウムやCa(OH)2、Ca(NO3)2、CaSO4などのカルシウム含有塩を、当該アルギン酸およびその塩に対して、過剰に含有させることが好ましい。
【0062】
これにより、アルギン酸はCa架橋したエッグボックス構造と呼ばれるゲル状を形成するため、より多くの血液を吸収できると考えられる。
【0063】
本発明に係る人工骨助剤成分と骨誘導成分との複合体の合成方法は、特に制限されるものではなく公知の方法を利用することができ、本発明では好ましい一態様として骨誘導成分の多孔体を利用して、アルギン酸またはアルギン酸ナトリウムなどのアルギン酸塩100質量部に対して、所望の形状の骨誘導成分(例えば、ウィスカー状のCaPや粒子状のCaP)が30〜70質量%になるように水に添加してこれらを混合した後、CaCl2、CaF2、などのハロゲン化カルシウムやCa(OH)2、Ca(NO3)2、CaSO4などのカルシウム含有塩が含まれた溶液を過剰量滴下させてゲル化させた後、当該ゲル化した物質を回収し、−1℃以下、好ましくは−20℃以下で凍結させて凍結乾燥機を用いて減圧下、−10〜−50℃程度で6時間〜72時間凍結乾燥させて目的物である人工骨助剤成分と骨誘導成分との複合体(HAp−アルギン酸複合体)を調製している。
【0064】
本発明に係る骨止血組成物は、高分子ゲル成分と、骨誘導成分と、人工骨助剤成分とを含むことが好ましく、前記骨止血組成物は、100質量部の高分子ゲル成分に対して、10〜80質量部の骨誘導成分と、10〜80質量部の人工骨助剤成分とを含むことが好ましく、100質量部の高分子ゲル成分に対して、50〜70質量部の骨誘導成分と、50〜70質量部の人工骨助剤成分とを含むことがより好ましい。
【0065】
本発明に係る骨止血組成物の製造方法としては、上述したように公知の方法で合成したまたは市販の少なくとも1種以上のオキシアルキレンユニットを有するポリアルキレングリコール重合体100質量部に対して、水を好ましくは10〜600質量部、より好ましくは25〜400質量部添加して、必要により所望の形状の骨誘導成分(例えば、リン酸系カルシウム)を好ましくは10〜80質量部、より好ましくは50〜70質量部と、必要により人工骨助剤成分(例えば、アルギン酸またはその塩)を好ましくは10〜80質量部、より好ましくは50〜70質量部と、さらに必要により前記所望の形状の骨誘導成分および/または人工骨助剤成分に代えて人工骨助剤成分と骨誘導成分との複合体(例えば、上記したCaP−アルギン酸複合体)を好ましくは10〜80質量部、より好ましくは50〜70質量部と、を混合した後、当該混合物を25℃〜105℃、好ましくは50℃〜100℃まで加熱しつつ、20分〜780分、好ましくは80分〜180分撹拌しながら混合して、水または溶媒を蒸発させ含水率が20〜80%になるように調整しポリアルキレングリコール重合体と水または溶媒とを構成成分とする高分子ゲル成分からなる骨止血組成物を調製することが好ましい。
【0066】
また、本発明に係る骨止血組成物が高分子ゲルからなる場合(少なくとも1種以上のオキシアルキレンユニットを有するポリアルキレングリコール重合体と、水または溶媒とを構成成分)において、後述する実験例1にも示すように、高分子ゲルを調製するための加熱時間と質量パーセント濃度との関係を図1に示す。140℃で加熱・撹拌を行ったところ、ポリアルキレングリコール重合体の質量パーセント濃度は加熱時間の増加に伴って急激に増大し、75分後に100%を超え、さらに加熱を続けると、一部炭化している(図1(a))。そこで、加熱温度を140℃から120℃および110℃に下げたが、ポリアルキレングリコール重合体の質量パーセント濃度は100%を超えて一部炭化している(図1(b)および(c))。さらに、加熱温度を100℃まで下げたところ、ポリアルキレングリコール重合体の質量パーセント濃度は加熱の初期に急激に増加したのち、100分経過後にはほぼ一定になったが、その時点で100%を超えていた(図1 (d))。加熱温度をさらに100℃から80℃に下げたところ、質量パーセント濃度は100℃の場合と同様に100%を超えた図1(e))。さらに、加熱温度を80℃から70℃まで下げたところ、ポリアルキレングリコール重合体の質量パーセント濃度はほぼ100%となった(図1(f))。
【0067】
この実験の結果から、高分子ゲルを調製するための温度は最終的にポリアルキレングリコール重合体の質量パーセント濃度がほぼ100%となった100℃前後、好ましくは80℃、特に好ましいのが70℃での加熱が最も適していることが確認されている。しかしながら、80℃で加熱した場合と比較して高分子ゲル成分の合成に要する時間が長く、さらにポリアルキレングリコール重合体は粉体状であるため、当該ポリアルキレングリコール重合体と精製水とが均一に混合しにくい。そのため、高分子ゲル成分を比較的短時間に調製する場合には、70℃よりも高い温度に設定する必要がある。
【0068】
そこで、ポリアルキレングリコール重合体と水との混合物を最初に100〜120℃まで加熱し、次いでポリアルキレングリコール重合体と精製水とが均一に混合されたと判断される50%の質量パーセント濃度まで加熱・かく拌を続けたのち、60〜80℃まで温度を下げて高分子ゲルを調製する実験を行っている(実験例2)。最終的に確定した実験条件を時間の関数でプロットして図2に示す。まず、出発物質であるポリアルキレングリコール重合体を100〜120℃で30〜50分加熱してポリアルキレングリコール重合体の質量パーセント濃度を40%から50%まで増加させた後、60〜80℃で50〜760分加熱して、水分量を調整している。
【0069】
したがって、本発明に係る骨止血組成物のより好ましい製造方法としては、上述したように公知の方法で合成したまたは市販の少なくとも1種以上のオキシアルキレンユニットを有するポリアルキレングリコール重合体100質量部に対して、水を好ましくは10〜600質量部、より好ましくは25〜400質量部添加して、必要により所望の形状の骨誘導成分(例えば、リン酸系カルシウム)を好ましくは10〜80質量部、より好ましくは50〜70質量部と、必要により人工骨助剤成分(例えば、アルギン酸またはその塩)を好ましくは10〜80質量部、より好ましくは50〜70質量部と、さらに必要により前記所望の形状の骨誘導成分および/または人工骨助剤成分に代えて人工骨助剤成分と骨誘導成分との複合体(例えば、上記したCaP−アルギン酸複合体)を好ましくは10〜80質量部、より好ましくは50〜70質量部と、を混合した後、100〜120℃まで加熱しつつ、30〜50分撹拌しながら混合して前記ポリアルキレングリコール重合体の質量パーセント濃度を40%から50%まで増加させた後、次いで60〜80℃で50〜760分加熱して水または溶媒を蒸発させて骨止血組成物を調製する方法が挙げられる。
【0070】
尚、前記ポリアルキレングリコール重合体、水、骨誘導成分、人工骨助剤成分、および人工骨助剤成分と骨誘導成分との複合体を混合する順番は特に制限されず、前記ポリアルキレングリコール重合体と水とから高分子ゲル成分を調製した後、当該高分子ゲル成分にさらに骨誘導成分、人工骨助剤成分、および人工骨助剤成分と骨誘導成分との複合体を混合してもよく、同時に前記ポリアルキレングリコール重合体、水、骨誘導成分、人工骨助剤成分、および人工骨助剤成分と骨誘導成分との複合体を混合してもよい。
【0071】
また、上記製造方法において粉体の状態で撹拌、混合または単なる撹拌、混合の方法としては、特に限定されず、例えば、ジェットミル、ライカイ機、ボールミル、ビーズミル、遊星ミル、ハイブリダイザー、メカノフュージョン、混練押出し機、高速回転ミルなどを使用することができ、好適にはライカイ機、ボールミル、遊星ミル、高速回転ミルが使用され、より好適には高速回転ミルが使用される。
【0072】
本発明に係る骨止血組成物の稠度は、15〜20mmが好ましく、17.5〜18.5mmがより好ましい。
【0073】
当該骨止血組成物の稠度が15〜20mmの範囲であると、手術の際は手でこねて使用されることから、操作性に優れる。尚、本発明に係る骨止血組成物の稠度は、JIS T 6602−1993の4・3の規定のおもりを質量100gから質量500gに変更した以外は同一の測定方法に準拠したものである。
【0074】
本発明の第二は、上記の本発明の骨止血組成物を、5〜30時間凍結乾燥して吸水量100〜700%に調整されたものであり、10〜24時間凍結乾燥して吸水量200〜600%に調整されたものがより好ましい。
【0075】
凍結乾燥することにより長期保存性に優れ、かつ使用時ゲルとして使用する際に溶媒を選ばないため、水のみならず液体薬剤、サイトカインなど高濃度での薬物保持が可能となる。
【0076】
また、ここでいう吸水量とは、当該骨止血組成物の質量に対して最大吸収できる血液の量の割合をいう。
【実施例】
【0077】
以下、本発明を実施例および比較例を参照して具体的に説明する。尚、本発明は、上記の実施形態および下記の実施例に限定されるものではない。これらは、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0078】
「止血組成物の調製」
(ゲル成分の合成)
図8に示すように、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム共重合体(エチレンオキサイドユニット:プロピレンオキサイドユニットの重合比=9:1〜7:3)に、精製水を添加し、当該精製水と当該ランダム共重合体の総質量が全体の20%になるように混合した後に、熱電対を挿入して70〜100℃の範囲で薬さじで加熱、攪拌し、精製水を蒸発させることにより含水率が20〜50%のゲルをそれぞれ得た。
【0079】
すなわち、図8に示す条件で調製した各ゲルをS1〜S9として、それぞれの分子量(重量平均分子量)、分子量分布、稠度、止血時間および毒性などを評価した。
【0080】
尚、以下、S1〜S9は、図8の組成を示す各骨止血組成物であることを意味する。
【0081】
また、図8において、PO/EOの比は、エチレンオキサイドユニット/プロピレンオキサイドユニットを示すのである。
【0082】
(ウィスカー状のCa10(PO4)6(OH)2の合成)
HApの化学組成(Ca/P比:1.6)になるように、0.167 mol dm−3硝酸カルシウム四水和物(Ca(NO3)2・4H2O), 0.100 mol dm−3リン酸水素二アンモニウム((NH4)2HPO4)および0.500 mol dm−3尿素((NH2)2CO)を混合し、さらに濃HNO3を加えて溶解した。この混合水溶液に対して濃NH3を用いてpHを2.2〜4.5に調節したのち、前駆体溶液の全量を500cm3とした。この前駆体溶液300cm3を約80℃で24h加熱して、HApの前駆体を得たのち、90℃で72 h加熱を行い、尿素の加水分解を利用したpH制御によって、ウィスカー状のCa10(PO4)6(OH)2を生成した。生成物は精製水で洗浄後、風乾した。また、粒状のCa10(PO4)6(OH)2は、市販のもの(太平化学産業製HAP−100,n−HAp)を利用した。
【0083】
(CaP−AGの合成)
α−D−マンヌロン酸/β−L−グルロン酸の比(M/G比)が0.9のアルギン酸ナトリウム(AG)について、AGの濃度が2.0質量%となるように精製水に溶解した。上記合成したウィスカー状のCa10(PO4)6(OH)2および超微粉体Ca10(PO4)6(OH)2(太平化学産業製HAP−100, n−HAp)に対して2.0質量%のAGをCa10(PO4)6(OH)2/AGの質量比が1.0の割合になるように混合した。つぎに、これらをシリンジと霧吹きを用いて1mol dm−3CaCl2溶液に一滴ずつ滴下してゲル化させた。得られた球状ゲルを回収し、続いて−80℃のフリーザーまたは−20℃の冷凍庫で凍結させたのち、凍結乾燥機(東京理化器械株式会社 EYEL4)を用いて13Paの減圧下で−50℃で24h凍結乾燥させ、それぞれの形状のCa10(PO4)6(OH)2−AG複合体(図9ではアルギン酸−CaP複合体と称している)を作製した。
【0084】
(SA1〜SA4の調製)
上記で得られたS1〜S9と、それぞれの形状のCa10(PO4)6(OH)2−AG複合体、粒状のCa10(PO4)6(OH)2およびウィスカー状のCa10(PO4)6(OH)2とを図9に示す組成で混合し、以下に示す止血効果の測定を行った。
【0085】
また、図9に示す条件で調製した各ゲルをSA1〜SA4として、それぞれの止血時間および毒性などを評価した。尚、以下、SA1〜SA4は、図9の組成を示す各骨止血組成物であることを意味する。
【0086】
「評価方法」
(稠度)
稠度測定の方法をJIS T 6602−1993の4・3の規定に示すように、アクリル板にS1〜9をそれぞれ約1g挟み、500gの分銅(c)をのせて、広がったゲルの最大長さを方眼用紙測定した。なお、おもりが100gであると〜であるため、JIS T 6602−1993の4・3の規定のおもりを質量100gから500gに変更した。
【0087】
(止血時間)
作製した試料の止血効果を評価するために以下の実験をおこなった。止血測定法を図3に示す。市販のCaP多孔体3(ボーンフィル 登録商標 HOYA製)(気孔率70 %、気孔径200μm)の上に0.1gの上記で得られた各止血組成物(S1〜S9)2(; 9 ×9 ×1 mm3)(断面積は9×9)を接着させた。これらを精製水1または擬似血液1が入ったシャーレーの中に入れ精製水と擬似血液(Laerdal BLOOD−COLORED CONCENTRATION)とをそれぞれ浸透させた。精製水の場合は、試料に塩化コバルト紙をのせ、青色から赤色に変化した際の時間を止血時間として測定した。擬似血液の場合は、試料の上にキムワイプ4を載せ、浸透して色の変化が見られた時間を止血時間と定義した。また、本発明の骨止血組成物は、なお、動物の血液は血液が凝固するため使用不可であった。
【0088】
これら実験結果を図4および図5に示す。ここで図4は、シャーレーの中に精製水1をいれた場合のコントロール実験であり、図5は、シャーレーの中に擬似血液1をいれた場合を示すものである。図4において、(a)は市販の骨止血剤であるボーンワックス(ネオトップ 登録商標)(b)は上記調製した本発明の骨止血組成物であるS4、(c)は上記調製した本発明の骨止血組成物であるSA1、(d)は上記調製した本発明の骨止血組成物であるSA2である。
【0089】
また、図5において、(a)は市販の骨止血剤であるボーンワックス(ネオトップ 登録商標)(b)は上記調製した本発明の骨止血組成物であるS4、(c)は上記調製した本発明の骨止血組成物であるSA1、(d)は上記調製した本発明の骨止血組成物であるSA2である。
【0090】
図6に、本発明に係る骨止血組成物の止血効果のキムワイプの経時的変化を示す写真を示す。図6において(a)は上記調製した本発明の骨止血組成物であるSA1を示し、(b)は上記調製した本発明の骨止血組成物であるSA2を示し、(c)は上記調製した本発明の骨止血組成物であるS2を示す。
【0091】
(毒性)
培養面積25 cm3の組織培養フラスコ(IWAKI製)を用いて、37℃±0.02℃、5 %CO2雰囲気下のインキュベーター内においてMC3T3−E1細胞の培養を行った。培地には抗生物質である50μgゲンタマイシンおよび250μgカナマイシンを添加し、さらにウシ胎児血清(FBS)を10 vol% 添加して作製したα−最小必須培地(α−MEM(+))を用いた。培地は3dおきに交換した。7d後にフラスコ内でコンフルエントに達した細胞を、0.5 %トリプシン−EDTAを用いて剥がした。細胞の洗浄にはリン酸塩緩衝液(PBS(−))を用いた。この細胞を15cm3遠心チューブで遠心分離を行い、新たにα−MEMを加えて細胞懸濁液を調製した。この溶液の細胞濃度を血球計算版(トーマ)で測定した。
【0092】
上記骨止血組成物1〜9(S1〜S9)のそれぞれを精製水に溶解させオートクレーブで滅菌し、当該組成物を1wellに0.001 gとなるように加えた1×104個のMC3T3−E1細胞を細胞培養用24 wellポリスチレンプレートに播種して、細胞数を測定した。なお、トランズウェルを設置した日を0dとした。継代のときと同様、MC3T3−E1細胞は37℃±0.02℃、5 % CO2雰囲気下のインキュベーター内で培養した。種々の期間培養した細胞は、継代のときと同様の操作でフラスコからはがし浮遊させたのち、細胞数を計測した。また、計測する前には光学顕微鏡(島津理化製 倒立顕微鏡AE 31)による細胞の形態観察を行なった。そのうち代表的なものとしてS2の結果を図6に示す。また、図6において、(a)はコントロール、(b)はS2であり、1dは一日後、4dは4日後を示す。この結果をみると培養期間1dには球状の細胞が存在していたが、4d経過後には増殖していた。コントロールおよび上記S1〜S9のいずれも同様の増殖傾向が見られた。上記の結果から、本発明に係る骨止血組成物は細胞の増殖に対して特に阻害効果はないことが確認された。
【0093】
(実験例1)
エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム共重合体(エチレンオキサイドユニット:プロピレンオキサイドユニットの重合比=8:2)に、精製水を添加し、当該精製水と当該ランダム共重合体との総質量が全体の20%になるように混合した後に、熱電対を挿入して70℃(f)、80℃(e)、100℃(d)、110℃(c)、120℃(b)、および140℃(a)のそれぞれの温度条件において、薬さじで加熱、攪拌し、精製水を蒸発させることにより、時間と高分子ゲル成分における前記ランダム共重合体の質量%とを関係を調べる実験を行った(図1 参照)。
【0094】
(実験例2)
エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム共重合体(エチレンオキサイドユニット:プロピレンオキサイドユニットの重合比=8:2)に、精製水を添加し、当該精製水と当該ランダム共重合体との総質量が全体の20%になるように混合した後に、熱電対を挿入して100℃で185分間加熱・攪拌(a)した後、次いで70℃で960分間(b)加熱・攪拌して、精製水を蒸発させることにより、時間と高分子ゲル成分における前記ランダム共重合体の質量%とを関係を調べる実験を行った(図2参照)。
【0095】
(参考実験)
高分ゲル成分の調製:エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム共重合体(エチレンオキサイドユニット:プロピレンオキサイドユニットの重合比=8:2)の濃度が20 mass%となるように水と混合したのち,100℃で185 min,ついで70℃で960 min加熱して調製した。
【0096】
エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム共重合体(エチレンオキサイドユニット:プロピレンオキサイドユニットの重合比=8:2)とエチレンオキサイド(EO)との複合ゲルの調製:EOには分子量が100万(EO(100))および500万(EO(500))のものを使用し,これらのEOとエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム共重合体に対して水を添加し,上述と同じ条件で3種類のゲルを調製した。EPO(エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのランダム共重合体とも称する),EOおよび水の混合比(質量)はEPO / EO(100) / 水 = 25 : 15 : 60 (25EPO−15EO(100)), EPO / EO(500) / 水 = 25 : 15 : 60 (25EPO − 15EO(500))およびEP / EO(100) / 水 = 15 : 15 : 70 (15EPO−15EO(100))であった。CaP−Col(コラーゲン)複合体の調製:Colゲル由来のCol繊維とリン酸緩衝液との懸濁液に対して,9 mmol・dm−3 CaCl2溶液を添加して30℃で24h加熱して複合体を調製した。評価:稠度の測定では,0.1gの試料をアクリル板に挟み,500gの荷重をかけて広がった長さを調べた。止血時間の測定では,1cm3の立方体状CaP(気孔径:200μm)の上面に試料を設置し,下面を擬似血液に浸し,毛管現象で上昇してきた疑似血液の到達時間を調べた。また、SBF溶液に試料を所定時間浸漬した後の質量を測定し,浸漬前の質量を基に溶解率を求めた。これらの結果を図10と図11に示す。
【産業上の利用可能性】
【0097】
医療用途、特に骨からの出血を抑制する。
【符号の説明】
【0098】
1 精製水または擬似血液、
2 止血組成物、
3 CaP多孔体、
4 キムワイプ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種以上のオキシアルキレンユニットを有するポリアルキレングリコール重合体から形成され、20〜80%の含水率を有する高分子ゲル成分を含む骨止血組成物。
【請求項2】
前記ポリアルキレングリコール重合体は、以下の式1:
【化1】
(上記式中、m、n、pおよびqはそれぞれ独立して、mは2以上5以下の整数であり、nは1000以上40000以下の整数であり、pは1以上5以下の整数であり、Qは600以上20000以下の整数であり、Rは、水素、メチル基、エチル基、およびプロピル基からなる群から選択される少なくとも一つのアルキル基である)
で示されるランダム共重合体である、請求項1に記載の骨止血組成物。
【請求項3】
前記ポリアルキレングリコールランダム重合体は、重量平均分子量50000〜2000000である、請求項1または2に記載の骨止血組成物。
【請求項4】
さらに、リン酸4カルシウムCa4O(PO4)2、水酸アパタイトCa10(PO4)6(OH)2、リン酸8カルシウムCa8H2(PO4)6・5H2O、リン酸2カルシウム2水和物CaHPO4・2H2O、リン酸2カルシウムCaHPO4、ピロリン酸カルシウムCa2P2O7、ピロリン酸カルシウム2水和物Ca2P2O8・2H2O、リン酸7カルシウムCa7(P5O16)2、リン酸2水素カルシウムCa4H2P6O20、リン酸1カルシウム・2水和物Ca(H2PO4)2・H2O、およびメタリン酸カルシウムCa(PO3)2からなる群から選択される少なくとも一つを骨誘導成分として含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の骨止血組成物。
【請求項5】
さらに、アルギン酸を人工骨助剤成分として含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の骨止血組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の骨止血組成物は、100質量部の高分子ゲル成分に対して、10〜80質量部の骨誘導成分と、10〜80質量部の人工骨助剤成分とを含む、骨止血組成物。
【請求項7】
前記ポリアルキレングリコール重合体にさらにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ペンチレンオキサイド、へキシレンオキサイド、ヘプチレンオキサイド、オクチレンオキサイド、ノニレンオキサイド、およびデシレンオキサイドからなる群から選択される少なくとも一つのアルキレンオキサイドを混合させ、かつ20〜80%の含水率を有する高分子ゲル成分を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の骨止血組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の骨止血組成物を、5〜30時間凍結乾燥して吸水量100〜700%に調整された、骨止血前駆体組成物。
【請求項1】
少なくとも1種以上のオキシアルキレンユニットを有するポリアルキレングリコール重合体から形成され、20〜80%の含水率を有する高分子ゲル成分を含む骨止血組成物。
【請求項2】
前記ポリアルキレングリコール重合体は、以下の式1:
【化1】
(上記式中、m、n、pおよびqはそれぞれ独立して、mは2以上5以下の整数であり、nは1000以上40000以下の整数であり、pは1以上5以下の整数であり、Qは600以上20000以下の整数であり、Rは、水素、メチル基、エチル基、およびプロピル基からなる群から選択される少なくとも一つのアルキル基である)
で示されるランダム共重合体である、請求項1に記載の骨止血組成物。
【請求項3】
前記ポリアルキレングリコールランダム重合体は、重量平均分子量50000〜2000000である、請求項1または2に記載の骨止血組成物。
【請求項4】
さらに、リン酸4カルシウムCa4O(PO4)2、水酸アパタイトCa10(PO4)6(OH)2、リン酸8カルシウムCa8H2(PO4)6・5H2O、リン酸2カルシウム2水和物CaHPO4・2H2O、リン酸2カルシウムCaHPO4、ピロリン酸カルシウムCa2P2O7、ピロリン酸カルシウム2水和物Ca2P2O8・2H2O、リン酸7カルシウムCa7(P5O16)2、リン酸2水素カルシウムCa4H2P6O20、リン酸1カルシウム・2水和物Ca(H2PO4)2・H2O、およびメタリン酸カルシウムCa(PO3)2からなる群から選択される少なくとも一つを骨誘導成分として含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の骨止血組成物。
【請求項5】
さらに、アルギン酸を人工骨助剤成分として含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の骨止血組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の骨止血組成物は、100質量部の高分子ゲル成分に対して、10〜80質量部の骨誘導成分と、10〜80質量部の人工骨助剤成分とを含む、骨止血組成物。
【請求項7】
前記ポリアルキレングリコール重合体にさらにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、ペンチレンオキサイド、へキシレンオキサイド、ヘプチレンオキサイド、オクチレンオキサイド、ノニレンオキサイド、およびデシレンオキサイドからなる群から選択される少なくとも一つのアルキレンオキサイドを混合させ、かつ20〜80%の含水率を有する高分子ゲル成分を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の骨止血組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の骨止血組成物を、5〜30時間凍結乾燥して吸水量100〜700%に調整された、骨止血前駆体組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−251055(P2011−251055A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128192(P2010−128192)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(510155254)
【出願人】(505320540)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(510155254)
【出願人】(505320540)
【Fターム(参考)】
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