説明

骨音速測定用装具、骨音速測定装置、および骨音速測定方法

【課題】脛骨の骨音速を測定する際、測定者に依存することなく、骨の一定の場所を安定して測定できる骨音速測定用装具および骨音速測定装置と、それらを用いた骨音速測定方法を提供する。
【解決手段】脛骨粗面部を基準として位置決め可能に固定され、該脛骨粗面部との遠位当接部128に該脛骨粗面部が嵌る開口21を有した第1固定機構20と、脛骨の内果部を基準として位置決め可能に固定され、該内果部との近位当接部132に該内果部が嵌る開口31を有した第2固定機構30と、第1固定機構20と第2固定機構30とを連結し、第1固定機構20と第2固定機構30との間隔を拡縮可能な連結機構10と、連結機構10に取り付けられ、超音波を送受信するプローブ51を脛骨の所定部位に当接可能に保持するプローブ保持機構40と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脛骨の表面に対して超音波を送受信して、骨音速を測定するための骨音速測定用装具および骨音速測定装置と、それらを用いた骨音速測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、超音波を用いて、脛骨などの長管骨部位の荷重方向の皮質骨音速を測定する装置や方法が知られている。ところで、図4(a)に示すように、脛骨は、骨断面が三角形となっており、前縁、骨間縁、内側縁の3つの稜線に区切られている。このうち、体外から超音波で測定できる部位は前縁付近から内側縁までの内側面の部位に限られている。従来の方法では、この内側面を、骨の軸に対して平行方向に手持ちのプローブを走査しながら超音波を送受信し、その信号を解析することによって骨音速を測定していた。
【0003】
また、その他、長管骨の荷重方向に加えて、それに直交する円周方向に超音波を送受信して骨音速を測定する方法は、特許文献1ないし4に開示されている。そして、これら長管骨の荷重方向や円周方向の骨音速測定から、骨強度を計測することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−57520号公報
【特許文献2】特開2010−29240号公報
【特許文献3】特開2010−29241号公報
【特許文献4】特開2010−246692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5は、脛骨の断面図である。健常な脛骨は骨髄204以外が緻密骨であるが、骨粗鬆症などによる骨量が低下した脛骨は、前縁206に近い部位Aでは多孔質化して全体的に骨量が低下し海綿骨化(海面骨202)する。一方、内側面207の内側縁208に近い部位Bでは皮質骨203が緻密骨の状態を維持しながら薄くなる。このように、脛骨201の部位によって骨微細構造の変化傾向が異なり、それに伴い、超音波で測定する骨音速測定も部位によって異なる。そこで、脛骨201の内側面207における測定では、この2箇所の部位Aおよび部位Bの一方または両方の測定を行っている。例えば、骨の軸に対して平行方向については、脛骨201と平行になるようにプローブを軟組織に当接させて骨音速など骨強度指標を測定し、骨の軸に対して直交方向については、脛骨201と直交になるようにプローブを軟組織に当接させて骨音速など骨強度指標を測定すればよい。
【0006】
しかしながら、この2つの部位A、B間は、位置に応じて骨音速の測定値が変化する値となるため、手持ちのプローブを走査した場合は、測定位置のずれによって結果が大きく異なり、再現性が悪くなる問題があった。つまり、手でプローブを走査する測定方法では、測定結果が測定者の技術に大きく依存してしまう。また、特許文献1ないし4に開示された骨強度測定方法においても、プローブを軟組織に当接させて骨音速を測定する事しか開示されておらず、測定者の手によってプローブを走査する場合は、測定場所が一定にならず、再現性が悪くなる。
【0007】
また、従来の測定方法では、皮膚に直接マーキングするなどして測定場所を予め決定していた。この場合、骨に対して皮膚が動きやすく、骨の形状を触診する間に皮膚が動いてしまうため、正確な位置決めをすることが難しかった。また、このようなマーキングの方法では、測定準備に時間がかかり手間である。なお、脛骨201の前縁206や内側縁208を触診で見つけて位置決めすることも出来るが、女性では男性に比べて見つけにくいなど、被測定者によっては見つけにくい場合がある。さらに、触診する測定者によっても個人差があるため、触診だけでは、誤差が生じていた。
【0008】
本発明は、上記の問題を鑑みてされたものであり、脛骨の骨音速を測定する際、測定者に依存することなく、骨の一定の場所を安定して測定できる骨音速測定用装具および骨音速測定装置と、それらを用いた骨音速測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の骨音速測定用装具は、脛骨より近位側の体表から特定可能な特徴骨部分を基準として位置決め可能に固定され、該特徴骨部分との当接部に該特徴骨部分が嵌る開口を有した第1固定機構と、脛骨より遠位側の体表から特定可能な特徴骨部分を基準として位置決め可能に固定され、該特徴骨部分との当接部に該特徴骨部分が嵌る開口を有した第2固定機構と、前記第1固定機構と前記第2固定機構とを連結し、前記第1固定機構と前記第2固定機構との間隔を拡縮可能な連結機構と、前記連結機構に取り付けられ、超音波を送受信するプローブを前記脛骨の所定部位に当接可能に保持するプローブ保持機構と、を有する。
【0010】
上記の構成によれば、第1固定機構、及び、第2固定機構は、連結機構により連結された状態で夫々、近位側、及び、遠位側の特徴骨部分を基準に、両者の間隔を拡縮して固定される。これにより、第1固定機構、及び、第2固定機構の位置関係が連結機構により固定される。さらに、プローブは、連結機構に取り付けられたプローブ保持機構により保持されるため、測定時におけるプローブの位置を安定させることができる。その結果、測定場所の再現性及び測定の安定性を向上させることができる。
【0011】
また、本発明の骨音速測定用装具において、前記第1固定機構は、前記特徴骨部分との近位当接部に該特徴骨部分が嵌る開口を有し、前記第2固定機構は、前記特徴骨部分との遠位当接部に該特徴骨部分が嵌る開口を有している構成にされていてもよい。
【0012】
上記の構成によれば、第1固定機構、及び、第2固定機構は、夫々の特徴骨部分との当接部に開口を有しているため、この開口に夫々の特徴骨部分の突出部が嵌る。これにより、脛骨に対する骨音速測定用装具の位置が安定すると共に、装具装着後でも第1固定機構、及び、第2固定機構の夫々の開口から特徴骨部分を確認して正しく装着できているかを確認することができる。その結果、測定場所の再現性及び測定の安定性をより向上させることができる。
【0013】
また、本発明の骨音速測定用装具において、前記第1固定機構と前記第2固定機構とは、前記連結機構によって、前記プローブ保持機構を中心とした対称方向に進退移動可能にされていてもよい。
【0014】
上記の構成によれば、連結機構によって、第1固定機構と第2固定機構との距離が拡縮する際、プローブ保持機構を中心とした対称方向に第1固定機構と第2固定機構とが進退移動する。これにより、脛骨の長さに合わせて第1固定機構と第2固定機構との距離を拡縮した場合でも、プローブ保持機構に保持されるプローブは、必ず脛骨の一定の所定部位に当接するようになる。従って、脛骨に対するプローブによる超音波の送受信部位が一定の場所に定められ、一定の場所で骨音速の測定をすることができる。
【0015】
また、本発明の骨音速測定用装具において、前記プローブ保持機構は、前記連結機構に対する取り付け角度を変更可能に取り付けられていてもよい。
【0016】
上記の構成によれば、プローブ保持機構の取り付け角度を所望の角度にすることができる。これにより、プローブ保持機構を軟組織に密着させ、プローブで所望の場所を測定することができる。
【0017】
また、本発明の骨音速測定用装具において、前記プローブ保持機構は、前記脛骨の軸に対して平行方向に前記プローブを保持可能な平行ガイド溝をさらに有していてもよい。
【0018】
上記の構成によれば、脛骨の軸に対して平行方向に沿って、プローブによる骨音速の測定をすることができる。
【0019】
また、本発明の骨音速測定用装具において、前記プローブ保持機構は、前記脛骨の軸に対して直交方向に前記プローブを保持可能な直交ガイド溝をさらに有していてもよい。
【0020】
上記の構成によれば、脛骨の軸に対して直交方向に沿って、プローブによる骨音速の測定をすることができる。
【0021】
また、本発明の骨音速測定用装具において、前記プローブ保持機構は、所定の距離を隔てて、複数の前記平行ガイド溝をさらに有していてもよい。
【0022】
上記の構成によれば、脛骨に対して平行方向に沿った複数の場所をプローブによって測定することができる。
【0023】
また、本発明の骨音速測定用装具において、前記プローブ保持機構は、所定の距離を隔てて、複数の前記直交ガイド溝をさらに有していてもよい。
【0024】
上記の構成によれば、脛骨の軸に対して直交方向に沿った複数の場所をプローブによって測定することができる。
【0025】
また、本発明の骨音速測定用装具において、前記プローブ保持機構は、前記脛骨を押し当てる押付部材が嵌る開口領域をさらに有しており、当該押付部材が当該脛骨の前記前縁を押し当てた状態で当該開口領域に嵌められた時、当該プローブ保持機構は当該前縁を基準にした所定の場所に位置されていてもよい。
【0026】
上記の構成によれば、押付部材によって脛骨の前縁を押し当てることによって例えば触診のみで前縁を探る場合よりも正確に前縁の位置を知ることができ、さらに押し当てた状態で、押付部材をプローブ保持機構に嵌め込むことによって、前縁を基準にした所定の場所にプローブ保持機構を位置することができる。これにより、プローブ保持機構に装着されるプローブの測定場所が前縁を基準にして一定になり、例えば測定者が変わったり、測定を数回行ったりした場合でも、同一測定場所を再現性高く測定することができる。
【0027】
また、本発明の骨音速測定用装具において、前記近位当接部が当接する前記特徴骨部分の特徴骨は、脛骨粗面、内側顆、又は、膝蓋骨であってもよい。
【0028】
また、本発明の骨音速測定用装具において、前記遠位当接部が当接する前記特徴骨部分の特徴骨は、内果、外果、又は、踵骨であってもよい。
【0029】
また、本発明の骨音速測定装置は、上述した前記骨音速測定用装具と、前記プローブ保持機構に装着可能な前記プローブと、を備えている。
【0030】
上記の構成によれば、骨音速測定用装具によって、プローブの測定場所を内側面の一定の場所に定めることができる。これにより、例えば測定者が変わったり、測定を数回行ったりした場合でも、同一測定場所を再現性高く測定することができる。
【0031】
また、本発明の骨音速測定方法は、上述した前記押付部材を脛骨の前縁に押し当て、前記プローブ保持機構の前記開口領域に当該押付部材を嵌め込んで当該プローブ保持機構の位置を固定した状態で、前記プローブによって骨音速を測定する方法である。
【0032】
上記の方法によれば、押付部材によって脛骨の前縁を押し当てた状態で、押付部材をプローブ保持機構に嵌め込むことによって、前縁を基準にした所定の場所にプローブ保持機構を固定することができる。これにより、プローブ保持機構に装着されるプローブの測定場所が前縁を基準にして一定になり、例えば測定者が変わったり、測定を数回行ったりした場合でも、同一測定場所を再現性高く測定することができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明の骨音速測定用装具によると、脛骨に対するプローブによる超音波の送受信部位が一定の場所に定められ、一定の場所で骨音速の測定をすることができる。従って、例えば測定者が変わったり、測定を数回行ったりした場合でも、同一測定場所を再現性高く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態に係る骨音速測定用装具を足部に装着した状態を示す斜視図である。
【図2】本実施形態に係る骨音速測定用装具およびプローブユニットを示す斜視図である。
【図3】(a)本実施形態に係る押付部材を示す斜視図である。(b)本実施形態に係る押付部材をプローブ保持機構の開口領域に嵌め込んだ状態を示す図である。
【図4】(a)脛骨の断面図である。(b)脛骨の側面図である。
【図5】骨量が低下した脛骨の断面図を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0036】
(骨音速測定用装具および骨音速測定装置の概要)
本実施形態に係る骨音速測定装置100は、例えば、図3に示すような脛骨201などの長管状の骨の皮質骨203について骨音速を測定するものである。ただし、測定対象はこれに限定されない。骨は一般的に筋肉や脂肪などの軟組織に覆われており、皮質骨203の内部には骨髄204が内在している。本実施形態に係る骨音速測定装置100は、プローブ51を用いて軟組織の外側から皮質骨203に対して超音波を送受信し、皮質骨203中の音速(骨音速)を測定することによって、骨音速計測を行うことができるようになっている。また、本実施形態に係る骨音速測定装置100は、上記のように骨(特に脛骨201)の骨音速を測定する際、足部90に合わせて装着することによって、脛骨201を固定する骨音速測定用装具1を備えている。この骨音速測定用装具1を用いることによって、脛骨201を固定し、脛骨201の所定部位に合わせてプローブ51を保持することができるようになっている。
【0037】
(骨音速測定用装具)
本実施形態に係る骨音速測定用装具1を具体的に説明する。
【0038】
図1、2に示すように、本実施形態に係る骨音速測定用装具1は、脛骨201から近位側の体表から特定可能な特徴骨(脛骨粗面)部分を基準として位置決め可能に固定され該特徴骨部分との近位当接部132に該特徴骨部分が嵌る開口21を有した第1固定機構20と、脛骨から遠位側の体表から特定可能な特徴骨(内果)部分を基準として位置決め可能に固定され、該特徴骨部分との遠位当接部に該特徴骨部分が嵌る開口31を有した第2固定機構30と、第1固定機構20と第2固定機構30とを連結し、第1固定機構20と第2固定機構30との間隔を拡縮可能な連結機構10と、連結機構10に取り付けられ、超音波を送受信するプローブ51を脛骨201の所定部位に当接可能に保持するプローブ保持機構40と、を有している。なお、脛骨粗面とは、脛骨201の上方に位置する箇所であり、この部分を軟組織205の表面上から触ると出っ張っていることが分かる。また、内果とは、図4(b)に示すように、脛骨201の下方に位置する箇所であり、所謂くるぶしに相当する。
【0039】
ここで、「近位」とは、四肢における体幹に近い側を示し、「遠位」とは、四肢における体幹から遠い側を示す。尚、「脛骨から近位側」、「脛骨から遠位側」とは、脛骨を含んでいてもよい。即ち、「脛骨から近位側の体表から特定可能な特徴骨」は、脛骨の近位にある頸骨粗面や内側顆でもよいし、膝蓋骨であってもよい。また、「脛骨から遠位側の体表から特定可能な特徴骨」は、脛骨の遠位にある内果、脛骨に隣り合うひ骨の遠位にある外果、さらには踵骨であってもよい。
【0040】
また、「特徴骨部分」とは、上記のような特徴骨、及び、体表の軟組織等を含む突出部を示す。以下、脛骨粗面の特徴骨部分を脛骨粗面部、内果の特徴骨部分を内果部と称す。
【0041】
本実施形態では、第1固定機構20は、脛骨粗面部が、近位当接部132の開口21に嵌るように当接された状態で固定される。一方、第2固定機構30は、脛骨201の内果部が、遠位当接部128の開口31に嵌るように当接された状態で固定される。第1固定機構20と第2固定機構30とは、連結機構10によって連結されており、連結機構10のスライド部111、117が互いに対称方向に進退移動することによって、第1固定機構20と第2固定機構30との間隔が拡縮するようになっている。これにより、脛骨201の長さに合わせて骨音速測定用装具1を装着することができるようになっている。
【0042】
また、脛骨201の長さに合わせて骨音速測定用装具1を装着した場合、連結機構10に取り付けられたプローブ保持機構40は、必ず脛骨201の1/2位の箇所に位置するようになっている。さらに、プローブ保持機構40は、連結機構10との取り付け箇所である取付ピン155を中心にして取り付け角度を変更できるようになっている。これにより、脛骨201の特に内側面207に沿わせてプローブ保持機構40を固定することができ、プローブ保持機構40に装着されたプローブ51の測定場所を所望の位置に合わせることができるようになっている。
【0043】
以下、骨音速測定用装具1を構成する各部材を説明する。
【0044】
(連結機構)
上述のように、連結機構10は、スライド部111、117を有している。図示しないが、スライド部111、117には、対向する側にダンパーガイドが設けられ、これらに歯合するスプールギアが挟持されている。これにより、スライド部111、117は、互いに対称方向に進退移動する。即ち、連結機構10は、スライド部111、117の夫々に設けられた第1固定機構20と第2固定機構30とをプローブ保持機構40を中心とした対称方向への進退移動を可能にしている。このように、第1固定機構20と第2固定機構30とをプローブ保持機構40を中心とした対称方向への進退移動を可能にすることで、第1固定機構20と第2固定機構30の間の距離に対して、プローブ保持機構の位置が一意的に決められる。尚、本実施形態において、第1固定機構20および第2固定機構30は、互いに対称方向に進退移動するものであるがこれに限定されず、第1固定機構20と第2固定機構30の間の距離に対して、プローブ保持機構40の位置が一意的に決まりさえすればどのような構成であってもよい。例えば、第1固定機構20および第2固定機構30は、夫々独立して進退移動するものであってもよい。即ち、プローブ保持機構40は第1固定機構20および第2固定機構30間の何れの位置にあってもよい。また、例えば、プローブ保持機構40は、歯車やスライド等により、第1固定機構20および第2固定機構30を接続する連結機構10から所定のオフセットを持つ位置に移動可能な構成にされていてもよい。
【0045】
また、連結機構10は、プローブ保持機構40を支持する支持ホルダー153を有している。支持ホルダー153は、屈折した階段形状に形成されている。また、図示しないが、連結機構10は、支持ホルダー153を上下移動可能にするスライドレールを内部に有している。これにより、プローブ保持機構40の上下方向(脛骨に対して直交する方向)の位置を調節することができる。また、支持ホルダー153の先端部には、プローブ保持機構40を回転可能に保持する取付ピン155が嵌合するための孔部156が形成されている。
【0046】
(第1固定機構)
図2に示すように、第1固定機構20は、長尺状のニーホルダー131と、ニーホルダー131に傾斜するように形成されたニーベース133と、ニーベース133上に形成されたニーパッド134と、から構成される。ニーホルダー131には、脛骨粗面に当接する近位当接部132が形成されている。近位当接部132には、上下方向に貫通する開口21が形成されている。また、ニーパッド134は、連結機構10のスライド部111に取り付けられている。なお、近位当接部132などの人体に直接触れる部材は柔らかくて清潔な樹脂によって形成されている方が好ましい。
【0047】
(第2固定機構)
第2固定機構30は、アンクルホルダー部124とアンクルベース部121とから構成される。アンクルホルダー部124は、L字型形状であり、その長手面には図示しない突出部が形成されている。アンクルホルダー部124の短手面には、平均的な内果の大きさに合わせた孔型の遠位当接部128が形成されている。アンクルベース部121は、L字型形状であり、その長手面に図示しないミニスライドレールが取り付けられている。このミニスライドレールには、アンクルホルダー部124の突出部がスライド方向へ移動可能に取り付けられている。また、アンクルベース部121の短手面には、連結機構10のスライド部117が取り付けられている。なお、遠位当接部128など、人体に直接触れる部材は、樹脂によって形成されている方が好ましい。
【0048】
(プローブ保持機構)
プローブ保持機構40は、図2に示すように、幅のある十字型の形状を有し、左右側の端部は、支持ホルダー153によって回転可能に支持されている。具体的に、プローブ保持機構40は、連結機構10の前方中央位置において、支持ホルダー153に、取付ピン155を介して取り付けられており、取付ピン155を回転軸として、回転可能になっている。これにより、第1固定機構20および第2固定機構30で脛骨201を固定した場合、プローブ保持機構40は必ず脛骨201の1/2位の箇所に位置するようになり、また、その取り付け角度を変更することによって、例えば内側面207の角度に合わせてプローブ保持機構40を固定できるようになっている。
【0049】
また、プローブ保持機構40の中央部には開口部が形成されており、連結機構10側に開口領域145a、第1固定機構20側に開口領域145b、連結機構10の反対側に開口領域145c、第2固定機構30側に開口領域145d、を有している。開口領域145b、145dには、脛骨201の軸に対して平行方向にプローブ51を保持可能な平行ガイド溝141が所定の距離を隔てて複数設けられている。例えば、3箇所の平行ガイド溝141が設けられている場合、中央の平行ガイド溝141は、脛骨201の前縁206から規程距離(例えば15mm)移動した中央部位にプローブ51が当たる位置とその中央部位を中心に規程距離(例えば±5mm)の3箇所に平行ガイド溝141が設けられている。また、開口領域145a、145cには、脛骨201の軸に対して直交方向にプローブ51を保持可能な直交ガイド溝142が設けられている。なお、図示はしていないが、直交ガイド溝142も所定の距離を隔てて複数設けられていてもよい。なお、複数の平行ガイド溝141および直交ガイド溝142の夫々の間隔は、適宜設定可能である。例えば、夫々の間隔を短くすれば、プローブ51によって、より細かく音速を測定することができ、より正確に骨音速を測定することが可能になる。また、上記の平行ガイド溝141および直交ガイド溝142には、後述するプローブユニット50のプローブ取付部53が丁度嵌るようになっており、開口領域145aには、後述する押付部材70が嵌るようになっている。
【0050】
次に、骨音速測定装置100が有するプローブユニット50について説明する。
【0051】
(プローブユニット)
プローブユニット50は、中空状のプローブ支持部52と、プローブ支持部52の中央の開口部に嵌合するプローブ51と、プローブ51とプローブ支持部52とを連結するプローブ取付部53と、を有している。プローブ51は、超音波を送受信することによって、骨音速を測定することができる。例えば、脛骨201などの骨に対してプローブ51から斜めに送信された超音波は、脛骨201の表面を伝搬する際、軟組織側へ音波を再放射しながら伝搬する(漏洩表面波)。プローブ51によって再び受信した漏洩表面波を解析することにより、骨の音速が測定できる。プローブ取付部53は、プローブ支持部52にプローブ51を固定すると共に、プローブ保持機構40の平行ガイド溝141および直交ガイド溝142に嵌合するようになっている。つまり、プローブ取付部53は、爪状のものが平行ガイド溝141および直交ガイド溝142に嵌合するようになっており、例えば、プローブ取付部53をプローブ保持機構40の開口領域145b、145dに設けられた対となる何れかの平行ガイド溝141に嵌め込むことによって、脛骨201の軸に対して平行方向にプローブ51を合わせて骨音速を測定することができるようになっている。また、プローブ取付部53をプローブ保持機構40の開口領域145a、145cに設けられた対となる何れかの直交ガイド溝142に嵌め込むことによって、脛骨201の軸に対して直交方向にプローブ51を合わせて骨音速を測定することができるようになっている。なお、プローブ保持機構40には、平行方向および直交方向の何れにおいても、複数の溝(平行ガイド溝141、直交ガイド溝142)が形成されているため、複数の場所をプローブ51によって測定することができるようになっている。
【0052】
以上のような構成を有する骨音速測定用装具1によれば、脛骨201の脛骨粗面に対して固定される第1固定機構20と、内果に対して固定される第2固定機構30と、によって脛骨201全体を固定すると共に、連結機構10によって第1固定機構20と第2固定機構30との間隔を拡縮して脛骨201の長さに合わすことができる。また、連結機構10に取り付けられたプローブ保持機構40によって、脛骨201の所定部位に合わせてプローブ51を保持することができる。これにより、脛骨201に対するプローブ51による超音波の送受信部位が一定の場所に定められ、一定の場所で骨音速の測定をすることができる。従って、例えば測定者が変わったり、測定を数回行ったりした場合でも、同一測定場所を再現性高く測定することができる。
【0053】
また、連結機構10によって、第1固定機構20と第2固定機構30との距離が拡縮する際、プローブ保持機構40を中心とした対称方向に第1固定機構20と第2固定機構30とが進退移動する。これにより、脛骨201の長さに合わせて第1固定機構20と第2固定機構30との距離を拡縮した場合でも、プローブ保持機構40に保持されるプローブ51は、必ず脛骨201の一定の所定部位に当接するようになる。従って、脛骨201に対するプローブ51による超音波の送受信部位が一定の場所に定められ、一定の場所で骨音速の測定をすることができる。
【0054】
また、プローブ保持機構40の取り付け角度を所望の角度にすることができる。これにより、プローブ保持機構40を軟組織に密着させ、プローブ51で所望の場所を測定することができる。
【0055】
また、骨音速測定装置100によれば、骨音速測定用装具1によって、プローブ51の測定場所を一定の場所に定めることができる。これにより、例えば測定者が変わったり、測定を数回行ったりした場合でも、同一測定場所を再現性高く測定することができる。
【0056】
(押付部材)
次に、骨音速を測定する際に使用する押付部材70について説明する。押付部材70は、図3(a)に示すように、凸型の形状を有しており、図3(b)に示すように、その突出部をプローブ保持機構40の開口領域145aに嵌め込むことができるようになっている。この押付部材70は、脛骨201の前縁206(図5参照)を確認するために用いられ、押付部材70を脛骨201の前縁206に押し当てた状態でプローブ保持機構40の開口領域145aに嵌め込むことによって、前縁206を基準にした所定の場所にプローブ保持機構40が位置されるようになっている。
【0057】
(骨音速測定方法)
次に、本実施形態に係る骨音速測定装置100を用いた脛骨201の骨音速測定方法を説明する。
【0058】
本実施形態に係る骨音速測定においては、先ず、人体の接触面をアルコールを含ませたガーゼなどで拭き取る。次に、第1固定機構20の近位当接部132を通して脛骨粗面の位置を視認しながら、近位当接部132を脛骨粗面に合わせて第1固定機構20を固定する。一方、第2固定機構30の遠位当接部128を通して内果の位置を視認しながら、遠位当接部128を内果に合わせて第2固定機構30を固定する。各当接部には開口21・31が形成されているので装着中および装着後も特徴骨部分の視認・触診が可能である。この時、第1固定機構20と第2固定機構30との間隔は、連結機構10によって拡縮できるため、脛骨201の長さに合わせることが可能である。このようにして、骨音速測定用装具1を脛骨201に固定すると、プローブ保持機構40は、脛骨201の1/2位に相当する位置に自動的に位置する。連結機構10の支持ホルダー153に取り付けられたプローブ保持機構40の回転軸(取付ピン155)は、前縁206の位置に沿うようになる。これにより、プローブ保持機構40は、前縁206の位置を基準にして回転することができるため、プローブ保持機構40を回転させて、内側面207に沿わせた所定の場所に固定することができる。
【0059】
次に、押付部材70を用いて脛骨201の前縁206の位置を確認する。具体的には、押付部材70を前縁206のやや外側面側に当て、前縁206に押し付ける。このとき脛骨粗面側を支点とし、装具全体が回転するので、第2固定機構30のアンクルベース部121に取り付けられたミニスライドレールがスライドして可動するようになっている。これにより、前縁206の位置が正確に把握できるようになる。そして、押付部材70を前縁206に押し付けた状態で、プローブ保持機構40の開口領域145aに押付部材70を嵌め込んでプローブ保持機構40の位置決めを行う。なお、図3(b)は、開口領域145aに押付部材70を嵌め込んだ状態である。このように、押付部材70を用いて前縁206の位置を確認し、プローブ保持機構40によってプローブ51の測定場所を固定することができるため、従来のように、触診や皮膚に直接マーキングするなどして測定場所を決めるよりも正確な位置決めをすることができる。
【0060】
次に、プローブ51を平行ガイド溝141に装着する。これにより、内側面207において、脛骨201の軸に対して平行方向にプローブ51を当てることができる。その後、プローブ51によって超音波を送受信して音速を測定し、脛骨201の骨強度指標を算出する。なお、プローブ51を直交ガイド溝142に装着することによって、脛骨201に対して直交方向に沿ってプローブ51を当てて骨音速を測定することができる。
【0061】
このように、本実施形態に係る骨音速測定方法によれば、押付部材70によって脛骨201の前縁206を押し当てた状態で、押付部材70をプローブ保持機構40に嵌め込むことによって、前縁206を基準にした所定の場所にプローブ保持機構40を固定することができる。これにより、プローブ保持機構40に装着されるプローブ51の測定場所が前縁206を基準にして一定になり、例えば測定者が変わったり、測定を数回行ったりした場合でも、同一測定場所を再現性高く測定することができる。
【0062】
以上、本発明の実施例を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施形態に記載された、作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用および効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0063】
例えば、本実施形態の場合、押付部材70は、プローブ保持機構40とは別体であるが、これに限定される必要はない。例えば、押付部材70は、プローブ保持機構40の開口領域145c付近に予め設けられて一体となっていてもよい。また、ボタンなどで操作することによって、プローブ保持機構40から突出させたり引っ込めたりできる形態であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、脛骨の表面に対して超音波を送受信して骨音速を診断する装置およびその方法に適用することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 骨音速測定用装具
20 第1固定機構
30 第2固定機構
40 プローブ保持機構
51 プローブ
90 足部
100 骨音速測定装置
111 スライド部
117 スライド部
128 内果当接部
132 脛骨粗面当接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脛骨から近位側の体表から特定可能な特徴骨部分を基準として位置決め可能に固定された第1固定機構と、
脛骨から遠位側の体表から特定可能な特徴骨部分を基準として位置決め可能に固定された第2固定機構と、
前記第1固定機構と前記第2固定機構とを連結し、前記第1固定機構と前記第2固定機構との間隔を拡縮可能な連結機構と、
前記連結機構に取り付けられ、超音波を送受信するプローブを前記脛骨の所定部位に当接可能に保持するプローブ保持機構と、
を有することを特徴とする骨音速測定用装具。
【請求項2】
前記第1固定機構は、前記特徴骨部分との近位当接部に該特徴骨部分が嵌る開口を有し、
前記第2固定機構は、前記特徴骨部分との遠位当接部に該特徴骨部分が嵌る開口を有していることを特徴とする請求項1に記載の骨音速測定用装具。
【請求項3】
前記第1固定機構と前記第2固定機構とは、前記連結機構によって、前記プローブ保持機構を中心とした対称方向に進退移動可能にされていることを特徴とする請求項1または2に記載の骨音速測定用装具。
【請求項4】
前記プローブ保持機構は、前記連結機構に対する取り付け角度を変更可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の骨音速測定用装具。
【請求項5】
前記プローブ保持機構は、前記脛骨の軸に対して平行方向に前記プローブを保持可能な平行ガイド溝をさらに有していることを特徴とする請求項1ないし4の何れか1項に記載の骨音速測定用装具。
【請求項6】
前記プローブ保持機構は、前記脛骨の軸に対して直交方向に前記プローブを保持可能な直交ガイド溝をさらに有していることを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載の骨音速測定用装具。
【請求項7】
前記プローブ保持機構は、所定の距離を隔てて、複数の前記平行ガイド溝をさらに有していることを特徴とする請求項5に記載の骨音速測定用装具。
【請求項8】
前記プローブ保持機構は、所定の距離を隔てて、複数の前記直交ガイド溝をさらに有していることを特徴とする請求項6に記載の骨音速測定用装具。
【請求項9】
前記プローブ保持機構は、前記脛骨を押し当てる押付部材が嵌る開口領域をさらに有しており、当該押付部材が当該脛骨の前記前縁を押し当てた状態で当該開口領域に嵌められた時、当該プローブ保持機構は当該前縁を基準にした所定の場所に位置されることを特徴とする請求項1ないし8の何れか1項に記載の骨音速測定用装具。
【請求項10】
前記近位当接部が当接する前記特徴骨部分の特徴骨は、脛骨粗面、内側顆、又は、膝蓋骨であることを特徴とする請求項1ないし9の何れか1項に記載の骨音速測定用装具。
【請求項11】
前記遠位当接部が当接する前記特徴骨部分の特徴骨は、内果、外果、又は、踵骨であることを特徴とする請求項1ないし10の何れか1項に記載の骨音速測定用装具。
【請求項12】
請求項1ないし11の何れか1項に記載の前記骨音速測定用装具と、
前記プローブ保持機構に装着可能な前記プローブと、
を備えたことを特徴とする骨音速測定装置。
【請求項13】
請求項9に記載の前記押付部材を脛骨の前縁に押し当て、前記プローブ保持機構の前記開口領域に当該押付部材を嵌め込んで当該プローブ保持機構の位置を固定した状態で、前記プローブによって骨音速を測定することを特徴とする骨音速測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−13567(P2013−13567A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148524(P2011−148524)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000166247)古野電気株式会社 (441)
【Fターム(参考)】