説明

高い機械的性質を有する複合化デンプン含有組成物

【課題】高い相対湿度から低い相対湿度への条件を通過する際でさえ、高い衝撃強度を有する、デンプンおよびデンプンと非相溶性の熱可塑性ポリマーを含む不均質相組成物を提供する。
【解決手段】 デンプン、デンプンと非相溶性の熱可塑性ポリマーおよび可塑剤を含んでなる、分散相と連続層とを有する不均質相組成物であって、デンプンが分散相に含まれ、熱可塑性ポリマーが連続相に含まれ、組成物が、30kJ/m2を超える衝撃強度を有し、組成物のX線回折スペクトルにおいて、2θ角約20.5°に現われるアモルファスデンプンのピークに対する強度比が2より小さく、0.02より大きいピークが2θ角13〜14°の範囲に存在する不均質相組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低い温度および湿度の条件下でさえ、高い耐老化性を有し、熱可塑性デンプンおよびデンプン非相溶性熱可塑性ポリマーを含んでなり、デンプンが分散相を構成し、ポリマーが連続相を構成する不均質相ポリマー組成物に関する。
本発明は、低い湿度条件下でさえ、特に高い衝撃強度および引裂強度を保持する生成物に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性デンプンおよびデンプン非相溶性熱可塑性ポリマーを含有し、デンプンが分散相を構成する組成物から製造される生成物(特にフィルム)では、界面で周囲湿度と平衡に達するまでデンプンが水を放出するか吸収することにより機械的性質、特に衝撃強度および引裂強度はかなり低下することが知られている。
【0003】
相対的に低い湿度条件下では、水の損失によって周囲温度より高いガラス転移温度を有する分散相が充分に可塑化されないので、物質は、脆くなりがちである。
界面が充分に結合されていない場合に、この現象はマトリックスとの界面にダメージを与える。
これらの条件下で、分散相を構成するデンプン粒子が応力を受けた場合に、変形して応力を吸収できず、硬いままであり、裂けはじめる。
【0004】
本出願人によって出願されたイタリア特許出願第T096A000890号には、熱可塑性デンプンおよびデンプン非相溶性熱可塑性ポリマーを含んでなり、比較的低い湿度条件下で向上した耐老化性を有し、成分を混合する間に界面作用を有する製剤を導入することによって得られる組成物が記載されている。相溶性導入作用は、マトリックスと分散粒子の間の付着性を向上させる。
【0005】
界面張力を低下させることによって、粒子の寸法を、サブミクロンに低下することができ、それによって物質は、ポリマーアロイの性質を有する。
デンプン、熱可塑性ポリマーおよび可塑剤を含んでなる組成物は、広く特許文献に記載されている。
しかしながら、組成物の機械的性質を最大にする可塑剤の濃度は、従来技術において記載も示唆もされていない。
【0006】
EP−A−0 327 505において、0.5〜15重量%、好ましくは0.5〜5重量%の量で可塑剤が、可塑剤および水の合計量が組成物の25重量%を超えないような量の水と共に使用される組成物が記載されている(組成物中の水の最少量は10重量%である)。
【0007】
WO 92/19680において、デンプン、ヒドロキシ酸または対応のラクトンのポリエステル、例えばポリカプロラクトンおよび組成物の1〜50重量%、好ましくは1〜40重量%、さらに好ましくは5〜25重量%の量の可塑剤を含有する組成物が記載されている。
【0008】
組成物は、好ましくは1.5〜5重量%の最終水含量を有する(状態調節前に押出プレスを出る際に測定される)。
上記の明細書において、非常に高い機械的性質を得るために対応する可塑剤の濃度の可能な臨界範囲の存在の示唆およびこの目的に適した可塑剤の示唆はなされていない。
実施例に使用される可塑剤の量は、常に組成物の10重量%より高い。
【0009】
US−5 334 634において、デンプン、エチレン−ビニルアルコールコポリマーおよびデンプンの0.5〜100重量%の量で使用できる可塑剤を含有する組成物が記載されている。
この場合においても、効果的に使用される可塑剤の量は、常に組成物の10重量%より高い。
【0010】
デンプン、特にそのアミロースフラクションは、合成ポリマー、例えばポリエチレンビニルアルコールまたはポリエチレン酸アクリレートと「V」タイプ複合体を形成することが知られている(C. Bastioli and others in “Biodegradable Plastics and Polymers”第200−213頁、1994、Elsevier Science)。合成ポリマーが連続相を構成し、デンプンが分散相を構成する多相系において、複合体は、相溶性誘導剤または相化剤として作用する。
【0011】
同様な複合体が、デンプンと脂肪族ポリエステルまたは脂肪族/芳香族コポリエステルの間で形成しうる。しかしながら、デンプンおよび上記のポリエステルを含有する組成物の調製において、比較的多い量のデンプン可塑剤が、生成物の使用条件下で、物質の可塑性を確実にするために使用され、分解および複合化のために低い比エネルギーが使用される場合に、可塑剤の存在下で低い温度および湿度で物質の靭性を確実にするにはその界面性では不充分である。
【0012】
さらに、室温で固体である可塑剤が、デンプンと非相溶性ポリマーの間の複合体が効果的な相溶性誘導作用を確実にするために充分な量で形成する比較的高い濃度で使用される場合に、これらの可塑剤は、高い相対湿度から低い相対湿度に変化する条件下で、物質を脆くさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】イタリア特許出願第T096A000890号
【特許文献2】EP−A−0 327 505
【特許文献3】WO 92/19680
【特許文献4】US−5 334 634
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】C. Bastioli and others in “Biodegradable Plastics and Polymers”第200−213頁、1994、Elsevier Science
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、高い相対湿度から低い相対湿度への条件を通過する際でさえ、高い衝撃強度を有する、デンプンおよびデンプンと非相溶性の熱可塑性ポリマーを含む不均質相組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
デンプンおよびデンプンと非相溶性の熱可塑性ポリマーを含んでなり、デンプンが分散相を構成し、熱可塑性ポリマーが連続マトリックスを構成する不均質相組成物であって、組成物は、高い相対湿度から低い相対湿度への条件を通過する際でさえ、デンプンと非相溶性ポリマーとの複合体の濃度が最大に達する臨界範囲内にある量の室温で液体である可塑剤および一定値より高いデンプン分解の比エネルギーを使用して調製される場合に、高い衝撃強度を有する不均質相組成物を調製することができることが予想外にも見出された。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1の組成物の2次微分FTIRスペクトルである。
【図2】実施例1の組成物のX線スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
可塑剤、好ましくはグリセリンの臨界量は、デンプンおよび熱可塑性ポリマーの2〜8重量%、好ましくは3〜7重量%である。しかしながら、この範囲外の量も、可塑剤のタイプおよび効率に依存して可能である。
【0019】
デンプンの分解および複合化の比エネルギーは、0.1〜0.5kW・時間/kg、好ましくは0.15〜0.4kW・時間/kg、最も好ましくは0.2〜0.35kW・時間/kgである。
【0020】
デンプンの分解および複合化の比エネルギーは、押出機によって供給されるエネルギーを意味し、押出機のスクリューは、120〜210℃の押出温度で少なくとも0.1kW・時間/kgの比エネルギーを発生できる。
【0021】
比エネルギーは、式:A×B×C/D×E×F
[式中、
A=エンジン出力
B=RPM
C=エネルギー吸収
D=RPM最大値
E=エネルギー吸収最大値
F=流速]
にしたがって決定される。
今まで、上記の臨界値は、使用されたことがなく、従来技術の組成物において提案されてもいなかった。
【0022】
このことが、本発明の特徴部分を構成し、デンプンと非相溶性ポリマーの複合体は、上記の臨界範囲で最大濃度値を達成することが見出された。
【0023】
デンプンと非相溶性ポリマーとの複合体の存在は、(複合体に特有の)947cm-1の波長でのバンドの2次微分(secondary derivative)FTIRスペクトルにおける存在によって、および2θスケールで13〜14°の範囲内のピークのX線回折スペクトル(1.5418ÅのCu Kα線)における存在によって示される。両方の場合に、複合体のバンドまたはピークの位置は、複合化ポリマーの性質が変化しても変化しない。図1および2は、X線および2次微分FTIRスペクトルを示し、デンプンおよび脂肪族ポリエステル(特にPCL)からなる配合物の典型例である。
【0024】
本発明の組成物のX線スペクトルにおいて、複合体の13〜14°のピークの高さ(Hc)と約20.5°で現われるアモルファスデンプン(アモルファス相中のピークの分布が再現される)のピークの高さ(Ha)の比Hc/Haが2未満であり、0.02を超えることが見出された。図1のスペクトルにおいて、高さHcおよびHaは、それぞれ複合体およびアモルファスデンプンのピークに対して示される。
【0025】
30%を超える結晶含量を有する結晶性ポリマーの場合、比Hc/Haの下限は0.2であり、アモルファスポリマーまたは30%未満の結晶含量を有するポリマーの場合、比Hc/Haの下限は0.2未満である。
【0026】
本発明の不均質相組成物は、デンプン、デンプン非相溶性熱可塑性ポリマー、デンプン可塑剤またはデンプン可塑剤の混合物を含んでなり、デンプンが不連続相を構成し、熱可塑性ポリマーが連続相を構成し、組成物が、30kJ/m2より高い、好ましくは45kJ/m2より高い、最も好ましくは60kJ/m2より高い衝撃強度を有するフィルム(10℃、5%未満の相対湿度で30ミクロンの厚さを有する吹込フィルムについて測定される)を形成し、2θ角約20.5°に現われるアモルファスデンプンのピークとの強度比が2より小さく、0.02より大きいピークを2θ角13〜14°の範囲に有するX線スペクトルを有することを特徴とする。
【0027】
組成物が、デンプン、熱可塑性ポリマー、臨界範囲量の可塑剤、ならびに5%未満の量の水(状態調節前に押出プレスを出る際に測定される)を含んでなる溶融物を押出し、少なくとも0.1kW・時間/kgおよび0.5kW・時間/kg未満の比エネルギーを供給して得られる。
【0028】
押出による組成物の調製は、既知の温度条件、例えば120〜210℃、好ましくは130〜190℃の温度で行われる。適した使用できる押出機は、30%を超えるスクリューの長さに対して「逆の」断面(reverse profile)を有するスクリューを備えたものである(逆の断面は、ピストン効果によって材料を進行させる)。
【0029】
押出段階での水含量は、デンプンの破壊段階では高いことがあるが、ガス抜きによってまたは低い水含量の出発デンプンを使用することによって5重量%未満の所望の値に押出の終わりで調節されうる(状態調節の前に水含量は押出機の出口で測定される)。
【0030】
組成物またはそれから製造される生成物を、水で洗浄する場合、その中に含まれる可塑剤は抽出されるが、組成物および生成物は、洗浄前のフィルムの性質と同等の機械的性質、特に衝撃強度を保持する。これらの組成物および生成物も、本発明の一部である。
【0031】
デンプン非相溶性熱可塑性ポリマーは、好ましくは2個もしくはそれ以上の炭素原子を有するヒドロキシ酸、対応するラクトンもしくはラクチド、または2〜22個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、および2〜22個の炭素原子を有するジオールから得られる脂肪族(コ)ポリエステル、ポリエステル−アミド、ポリエステル−ウレアおよび脂肪族−芳香族コポリエステルならびにそれらの混合物からなる群から選択される。
これらの熱可塑性ポリマーまたはそれらの混合物は、130℃未満、好ましくは110℃未満の融点を有する。
【0032】
上記のポリマーの代表的な例は、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリエチレン−またはポリブチレンスクシネート、ポリヒドロキシブチレート−ヒドロキシバレレート、ポリ乳酸、ポリアルキレンアジペート、ポリアルキレンアジペート−スクシネート、ポリアルキレンアジペート−カプロラクタム、ポリアルキレンアジペート−ε−カプロラクトン、ジフェノールジグリシジルエーテルのポリアジペート、ポリ−ε−カプロラクトン/ε−カプロラクタム、ポリブチレンアジペート−コ−テレフタレート、ポリアルキレンセバケート、ポリアルキレンアゼレートおよびそれらのコポリマーまたはそれらの混合物である。
【0033】
これらのポリマーは、ジイソシアネート、ポリエポキシドおよび類似の多官能組成物によって「連鎖延長」されてもよい。
ポリ−ε−カプロラクトンおよび脂肪族−芳香族コポリエステルが好ましい。使用できる他のポリマーは、セルロースおよびデンプンのエステルおよびエーテルである。
【0034】
デンプン非相溶性ポリマーは、不均質相組成物の連続相を形成するのに充分な量で存在する。通常、この量は、デンプンの約30〜90重量%である。
ポリマーは、エチレン/ビニルアルコール、エチレン/アクリル酸タイプおよびポリビニルアルコールのポリマーを少量含有する混合物で使用されうる。
【0035】
使用できるデンプンは、天然デンプン、例えばコーン、ジャガイモ、米、タピオカデンプンであり、物理的または化学的に変性されたデンプン、例えばエトキシル化デンプン、スターチアセテートおよびヒドロキシプロピル化デンプン、架橋デンプンまたは酸化デンプン、デキストリン化デンプンおよびデキストリンおよびそれらの混合物である。
【0036】
使用されるデンプン可塑剤は、2〜22個の炭素原子を有する多価アルコール、2〜6個の炭素原子を有するヒドロキシル化単位1〜20個を有する多価アルコール、エーテル、チオエーテルならびにこれらの多価アルコールの有機および無機エステルである。
【0037】
使用できる可塑剤の例は、グリセリン、エトキシル化ポリグリセロール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ソルビトールモノアセテート、ソルビトールジアセテート、ソルビトールモノエトキシレート、ソルビトールジエトキシレートおよびそれらの混合物である。
【0038】
組成物は、a)4.5未満の解離定数pK(ポリカルボン酸の場合第1カルボキシル基のpKに関する)および8より高い親水性/親油性指数(HLB)を有するモノ−またはポリカルボン酸と多価アルコールとのエステル;
b)4.5より高いpK値および5.5〜8のHLB指数を有する12個未満の炭素原子を有するモノ−またはポリカルボン酸と多価アルコールとのエステル;
c)5.5未満のHLB指数を有するC12〜C22脂肪酸と多価アルコールのエステル;
d)ノニオン性水溶性界面活性剤;および
e)ジイソシアネートと反応する末端基を有するポリマーと脂肪族または芳香族ジイソシアネートとの反応生成物
から選択されるイタリア特許出願T096A000890に記載される種類の界面剤も含有できる。
【0039】
本発明の組成物は、添加剤、例えば尿素(20重量%までの量)、ホウ素化合物、特に硼酸、タンパク質、例えばカゼイン、グルテンおよびアビエチン酸またはロジン酸、天然ゴム、難燃剤、酸化防止剤、殺カビ剤、除草剤、肥料、不透明剤、ネズミ駆除剤、ワックス、滑り防止剤(例えば、エルクアミド、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛)を含有できる。
【0040】
本発明の組成物は、0.5〜70重量%の有機および無機充填剤ならびに天然繊維を含有できる。本発明の組成物は、フィルム、シートの製造において、熱成形において、通常、低い温度および湿度の条件下でさえ高い耐老化性と共に製品の良好な機械的性質が要求されるあらゆる用途において、特に適用できる。
【0041】
本発明の組成物を使用して製造できる製品の例としては、上記に加えて、バッグ、ラミネート、成形および吹込物品、発泡シート、発泡材料、タイヤ用バイオフィラー、おむつ用バックシート、包装フィルム、マルチフィルム、多層フィルム、草用袋、買い物袋、不織布、おもちゃ、ペット用おもちゃ、犬の首輪、農業分野で使用される調節放出製品、糸が挙げられる。
【実施例】
【0042】
以下の実施例は、例示であって本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1
Globe 03401-Cerestar天然デンプン* 27
Tone-787 PCL 65
グリセリン 4.5
3.5
合計100.0
(*水含量12重量%)
から形成される混合物(重量部)を、直径60mm、L/D=36、RPM=180の2軸OMC押出機に供給した。
温度プロファイルは、次のとおりであった:60/145/175/180×4/155×2℃。
押出機は自由ガス抜きしながら操作した。
供給した比エネルギーは0.4kW・時間/kgであった。
押出材料をペレット化した。水含量は1.3重量%であった。
直径60mmおよびL/D=30のMailleferタイプのスクリューを備えたGhioldi装置を用いて、ペレットを使用してフィルムを製造した。温度プロファイルは次のとおりであった:90/120/140/150×3/147×2℃。
フィルムヘッドは、180mmの直径を有していた。
【0043】
製造されたままのフィルム(約30μの厚さ)を、機械的性質について試験した。他方で同じフィルムの試料を、デンプン可塑剤を除去するために水中に24時間浸した。その後、洗浄したフィルムから取り出した試料を、機械的性質を測定するために使用される環境と等しい温度および湿度の環境に状態調整するために72時間放置した。
【0044】
実施例2
Globe 03401 コーンスターチ 33.4
Tone-787 PCL 54.3
グリセリン 5.8
6.5
合計100.0
から形成される混合物(重量部)を、2軸APV−2030押出機に供給した;L/D=35+5XLT;RPM=170;温度プロファイル:60/100/170×14℃。
押出機は自由ガス抜きしながら操作した。
供給した比エネルギーは0.17kW・時間/kgであった。
押出材料をペレット化した。水含量は1.5重量%であった。
1:3一定テーパースクリューを備えた改良AEMME押出機(直径30mm、L/D=25、RPM=35)を用いて、ペレットを使用して、流延押出によりシートを製造した。押出機は、0.8mmのリップ口を備えた150mm幅の平らなヘッドを有していた。得られたシートは0.6mmの厚さであった。
別のペレットから、実施例1のようにフィルムを製造し、機械的性質を試験するための試料を得た(製造されたままの、および水中で洗浄されたフィルムの試料)。
【0045】
実施例3
実施例2で使用したタイプのデンプン33.4重量部、Tone-787 PCL54.3重量部、グリセリン4.8重量部および水7.5重量の組成物を用いて実施例2の試験を繰り返した。得られたフィルムを、機械的性質について試験した(製造されたままの、および水中で洗浄されたフィルム)。
【0046】
比較例1
Globe 03401 コーンスターチ 33.4
Tone-787 PCL 54.3
グリセリン 9.7
5.5
合計100.0
から形成される混合物(重量部)を、押出機中で混合し、実施例1のようにフィルムにした。
供給した比エネルギーは0.22kW・時間/kgであった。
得られたフィルムを機械的性質について試験した(実施例1のように製造されたままの、および水中で洗浄されたフィルム)。
【0047】
比較例2
湿度6%のジャガイモデンプン65部およびグリセリンとソルビトール(ソルビトールは室温で固体である)の重量比1:1の混合物35部を含んでなる組成物を実施例1で使用した2軸APV−2030押出機に供給し、次の温度プロファイルで操作した:60/100/190×14℃。配合は、活発にガス抜きしながら行い、0.5%未満の水含量を有する押出物を得た。
次いで、乾燥したペレット35部とTone-787 PCL 65部をAPV−2030押出機で混合した。押出物質を、ペレットにし、最後に実施例1と全く同じようにして、約30μの厚さのフィルムにした。
【0048】
実施例4
グリセリン3.8部および水8.5部を使用することの違いだけで、実施例3の試験を繰り返した。
得られたフィルムを、その機械的性質について試験した(実施例1のように、製造されたままの、および水中で洗浄されたフィルム)。
【0049】
実施例5
Globe 03401-Cerestar天然デンプン 26.4
Ecoflex(登録商標) 63.8
グリセリン 5.5
水 4.3
エルクアミド 0.3
合計100.0
から形成される混合物(重量部)を、直径60mm、L/D=36、RPM=180の2軸OMC押出機に供給した。
Ecoflexは、BASFの登録商標であり、ポリブチレンアジペート−コ−テレフタレートコポリマーである。
温度プロファイルは、次のとおりであった:60/140/175/180×4℃。
押出機は自由ガス抜きしながら操作した。
供給した比エネルギーは0.36kW・時間/kgであった。
押出材料をペレット化した。水含量は1.7重量%であった。
直径60mmおよびL/D=30のMailleferタイプのスクリューを備えたGhioldi装置を用いて、ペレットを使用してフィルムを製造した。温度プロファイルは次のとおりであった:120/135/145×5/140℃。
フィルムヘッドは、100mmの直径を有していた。
【0050】
製造されたままのフィルム(約30μの厚さ)を、その機械的性質について試験した。他方で同じフィルムの試料を、デンプン可塑剤を除去するために水中に24時間浸した。その後、洗浄したフィルムから取り出した試料を、機械的性質を測定するために使用される環境と等しい温度および湿度の環境に状態調整するために72時間放置した。
【0051】
【表1】

【0052】
表2は、実施例2〜4および比較例1〜2のシートの粗さを示す。美的概観を害するが、高いレベルの粗さは、印刷インクによるシートの印刷適性にとって重要である。
【0053】
【表2】

【0054】
表3および4は、引裂および衝撃トラクションについての試験データを示す。
【表3】

*)ASTM 標準d−1938
【0055】
【表4】

**
テストを、エネルギーを検出するための従来の「圧電ロードセル」を有する装置を使用して行い、セルは、30〜40ミクロンの厚さ、30mmの幅および35mmの長さの試験片の端が固定されるターミナルに配置される。
【0056】
試料に沿って対称に半分の位置に2つの切り込みを入れ、各切り込みは、試料の幅の4分の1まで伸びる。棒を試料の他の端につなぎ、棒は、500gの重量で、軸上に貫通した円柱の心棒として作用する。棒は、板の上で終点となり、重りは、高さ5cmから1m/秒の速度で離される。
装置を10℃およびRH<5%で作動する耐候試験セル内に配置した。
試料を、試験の前に48時間同じ温度で状態調整した。
【0057】
【表5】

図1および2は、それぞれ実施例1の組成物の2次微分FTIRおよびX線スペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デンプン、デンプンと非相溶性の熱可塑性ポリマーおよび可塑剤を含んでなる、分散相と連続層とを有する不均質相組成物であって、デンプンが分散相に含まれ、熱可塑性ポリマーが連続相に含まれ、組成物が、30kJ/m2を超える衝撃強度(10℃、5%未満のRHで30ミクロンの厚さを有する吹込フィルムについて測定される)を有し、さらに、組成物のX線回折スペクトルにおいて、2θ角約20.5°に現われるアモルファスデンプンのピークに対する強度比が2より小さく、0.02より大きいピークが2θ角13〜14°の範囲に存在することを特徴とする不均質相組成物。
【請求項2】
デンプン非相溶性熱可塑性ポリマーが、2個もしくはそれ以上の炭素原子を有する脂肪族ヒドロキシ酸、対応するラクトンもしくはラクチド、または2個もしくはそれ以上の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、および2個もしくはそれ以上の炭素原子を有するジオールから得られる脂肪族ポリエステル、脂肪族−芳香族コポリエステル、ポリエステル−アミド、ポリエステル−エーテル−アミド、ポリエステル−ウレタン、ポリエステル−ウレアおよびそれらの混合物からなる群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ポリエステルが、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリエチレン−またはポリブチレンスクシネート、ポリアルキレンアジペート、ジフェノールジグリシジルエーテルポリアジペート、ポリアルキレンアジペート−スクシネート、ポリアルキレンアジペート−ε−カプロラクトン、ポリ−ε−カプロラクトン/ε−カプロラクタム、ポリブチレンアジペート−コ−テレフタレート、ポリアルキレンセバケート、ポリアルキレンアゼレートである請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
可塑剤が、2〜22個の炭素原子を有する多価アルコールである請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
可塑剤が、グリセリン、ポリグリセロール、グリセロールエトキシレート、ソルビトールアセテート、ソルビトールジアセテート、ソルビトールモノ−およびジエトキシレートおよびそれらの混合物からなる群から選択される請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
可塑剤がグリセリンである請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
a)4.5未満の解離定数pK(ポリカルボン酸の場合第1カルボキシル基のpKに相当する)および8より高い親水性/親油性指数(HLB)を有するモノ−またはポリカルボン酸と多価アルコールとのエステル;
b)4.5未満のpK値および5.5〜8のHLB指数を有する12個未満の炭素原子を有するモノ−またはポリカルボン酸と多価アルコールとのエステル;
c)5.5未満のHLB指数を有するC12〜C22脂肪酸と多価アルコールとのエステル;
d)ノニオン性水溶性界面活性剤;および
e)ジイソシアネートと反応性である末端基を有するポリマーと脂肪族または芳香族ジイソシアネートとの反応生成物
から選択される界面剤を含む請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
2次微分FTIRスペクトルにおいて947cm-1にバンドを示す請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の組成物から得られるフィルム。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の組成物から得られるシート。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載の組成物から得られるバッグ。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれかに記載の組成物から得られるラミネート。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれかに記載の組成物から得られる発泡シート。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれかに記載の組成物から得られる発泡材料。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれかに記載の組成物から得られるショッピングバック。
【請求項16】
請求項1〜8のいずれかに記載の組成物から得られるマルチフィルム。
【請求項17】
請求項1〜8のいずれかに記載の組成物から得られる包装フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−185305(P2009−185305A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126702(P2009−126702)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【分割の表示】特願2000−554802(P2000−554802)の分割
【原出願日】平成11年6月17日(1999.6.17)
【出願人】(592081988)ノバモント・ソシエタ・ペル・アチオニ (19)
【氏名又は名称原語表記】NOVAMONT SOCIETA PER AZIONI
【Fターム(参考)】