説明

高い色温度を持つセラミックガス放電メタルハライドランプ

高い色温度(4500Kを超える)を呈するセラミックガス放電メタルハライド(CDM)ランプ23は、不活性ガス、水銀及び金属ハロゲン化物塩混合物の充填物を含み、該塩混合物は、少なくとも約62モル%のヨウ化カルシウム(CaI)と、約8モル%以下のヨウ化セリウム(CeI)と、約15モル%以下のヨウ化セシウム(CsI)と、約15モル%以下の、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、インジウム(In)、マンガン(Mn)、鉛(Pb)、プラセオジム(Pr)、ユーロピウム(Eu)、ガリウム(Ga)及びタリウム(Tl)のハロゲン化物から成る群から選択された1つ以上のハロゲン化物と、の塩混合物であり、ナトリウム(Na)のハロゲン化物の量は約5モル%より少なく、タリウム(Tl)のハロゲン化物の量は約5モル%よりも少ない。斯かるランプは、園芸用途、スポーツ照明、水槽照明、及びその他の専門的照明用途に特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックガス放電メタルハライド(CDM)ランプに関し、更に詳細には、金属ハロゲン化物塩の混合物を含むアーク放電持続充填物を含む多結晶アルミナ(PCA)セラミックガス放電容器を利用する斯かるランプに関する。
【背景技術】
【0002】
CDMランプは一般に、外側ガラス封体部と気密容器を提供する該封体部にシールされた基部とにより囲まれたPCAセラミック放電容器を利用する。該放電容器は、高い内圧を収容し、最小限の温度勾配しか示さないための特定の形状を持つ。該放電容器は、不活性ガス、塩混合物及び水銀といった充填物を含み、該放電容器の対向する端に配置された放電電極の対の間のアーク放電を持続することが可能である。該放電電極は、フレームワイヤを介して基部に接続され、該ワイヤはまた該放電容器を支持する。
【0003】
金属ハロゲン化物の特定の組み合わせ及び塩混合物における比率は、ランプのルーメン出力、相関色温度(CCT)、及び演色指数(CRI)といったランプ特性を大きく決定する。
【0004】
国際特許出願公開WO2005/088675は、2500乃至4500Kの範囲内にCCTを持つ、高効率及び長寿命のメタルハライドランプを開示している。該ランプは、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化タリウム(TlI)、ヨウ化カルシウム(CaI)、並びにSc、Y、La、Ce、Pr、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びNdのヨウ化物から選択されたヨウ化物の化学的充填物を持つ。塩混合物中の開示された金属ヨウ化物の組み合わせは、長寿命に達するのに必要な放電容器の少ない腐食に帰着するといわれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
国際特許出願公開WO2005/088675に記載されたランプの欠点は、CCTが通常、4500Kよりも低い値に限られている点である。塩混合物におけるかなりの量のハロゲン化ナトリウム(例えば70モル%)のため、より高いCCTは可能ではない。
【0006】
米国特許US7,268,495もまた、2500乃至4500Kの範囲内にCCTを持つセラミックメタルハライドランプを開示している。該ランプは、NaI(少なくとも5mol%)、TlI、CaIであっても良いアルカリ金属ハロゲン化物、及び希土類ハロゲン化物の化学的充填物を持つ。該ランプは、Ba又はSrの少なくとも1つのハロゲン化物を持つ必要があるが、CsIも含んでも良い。
【0007】
米国特許US7,268,495のランプは、高い効率及び優れた演色を持つといわれるが、国際特許出願公開WO2005/088675の場合におけるように、CCTが4500Kまでの値に限られる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態によれば、CDMランプは、不活性ガス、水銀及び金属ハロゲン化物の塩混合物の充填物を含むPCA放電容器を有し、前記塩混合物が、
少なくとも約62モル%、好適には約62乃至約65モル%の、ヨウ化カルシウム(CaI2)と、
約8モル%以下の、好適には約2乃至6モル%の、ヨウ化セリウム(CeI)と、
約15モル%以下の、好適には約3乃至15モル%の、ヨウ化セシウム(CsI)と、
約15モル%以下の、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、インジウム(In)、マンガン(Mn)、鉛(Pb)、プラセオジム(Pr)、ユーロピウム(Eu)、ガリウム(Ga)及びタリウム(Tl)のハロゲン化物から成る群から選択された1つ以上のものと、
を有し、ナトリウム(Na)のハロゲン化物の量は約5モル%よりも少なく、タリウム(Tl)のハロゲン化物の量は約5%よりも少ないことを特徴とする。
【0009】
成形したPCA放電容器の使用と併せた、上述した金属ハロゲン化物塩の組み合わせは、高い相関色温度(CCT)(約4500Kより高い)、高い発光効率(100Lm/Wより高い)、高い演色指数(CRI)(85以上)、及び低い最小知覚色差(MPCD)を持つ優れた色安定性の実現を可能とし、加えて、該金属ハロゲン化物塩混合物は低い腐食性を特徴とし、本発明のCDMランプの好適なルーメン保持及び長い寿命を確実にするのを支援する。
【0010】
斯かるランプは、園芸用途、スポーツ照明、水槽照明、及びその他の専門的照明用途に特に有用である。
【0011】
本発明の実施例は、図面を参照しながら説明される。
【0012】
図面は図式的なものであって定縮尺で描かれてはいない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施例による、金属ハロゲン化物塩の化学的充填物を用い高い色温度を持つ、中位のワット数のセラミックガス放電メタルハライド(CDM)ランプを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
より詳細には、放電空間20を囲む中央が広がった回転楕円体型部分12aと、一対の管状の端部12b及び12cとを含むPCA放電容器12を持つ、中位のワット数(315W)のCDMランプ23を示す。PCA放電容器12の中央部12aは、長軸に沿った長さLと短軸に沿った幅Wとにより定義される形状及びサイズを持ち、高い内圧を収容し且つ最小限の温度勾配を呈し、高いルーメン出力及び長寿命をもたらすよう設計される。
【0015】
一対の放電電極13及び14は、放電容器12の端部12b及び12cを通って放電空間20へと延在し、これら端部12b及び12cにより支持される。外側の球状の封体部10は、放電容器12並びに放電電極13及び14を囲み、基部25に封止されて気密容器を提供する。
【0016】
それぞれ端子部21a及び21bを持つ導線22a及び22bは、基部25を通って延在し、それぞれ支持部材15及び支持フレーム部材16を介して放電電極13及び14に電気的に接続される。フレーム部材16の延長部19は、封体部10の上端からの突起部11へと内向きに延在し、付加的な支持を提供する。フレーム部材16にはゲッタ17が装着される。放電空間20は、不活性ガス、水銀、並びにCaI、CeI、CsIから選択された金属ハロゲン化物塩とLi、Na、In、Mn、Pb、Pr、Eu、Ga及びTlのハロゲン化物との混合物の化学的充填物により満たされる。
【0017】
CeIは、発光スペクトル中、特に青色領域において、非常に多くの線を持ち、優れたCRI及び高いCCTの両方に寄与する。CeIの総モル量は8%を超えるべきではなく、この量を超えるとPCA壁の腐食の見込みが高くなり、放電空間から塩を吸収する傾向のある多孔質構造に帰着し、ランプの寿命を短くしてしまう。好適には、CeIは約2モル%から約6モル%までの範囲内に保たれ、この範囲より少ない場合、CeIの発光への寄与は高い色温度及び高い発光効率を達成するには不十分であり、この範囲より多い場合は、PCAの腐食が始まり長いランプ寿命の実現を制限してしまう。
【0018】
約4乃至6モル%の範囲内では、増大するCeIが増大する発光効率及びランプ電圧の効果を及ぼすが、それに付随して黒体放射曲線から逸脱したy軸に沿った色点のシフトを伴う。
【0019】
CsIはアークを安定化させる効果を持ち、アークの屈曲及び付随するPCA壁腐食を防止し、発光スペクトルに悪影響を与えることなく寿命を延ばす。CsIのモル量は15%を超えるべきではなく、この量を超えると発光効率が実用的なレベルを下回るまで低下する。好適には、CsIの量は約3乃至約15モル%の範囲内に保たれるべきであり、この範囲より少ないとアーク安定性が損なわれる。
【0020】
米国特許出願公開US6,031,332において説明されているように、CaIは優れた発光効率及び高い力率を呈する。CaIはまた低いPCA腐食率を持ち、従って塩組成物のモル百分率を100モル%にまで完全化するための溶媒として機能し得る。それ故、他の要素の最大モル量を考慮すると、CaIのモル量は約62%よりも多いべきであり、特に約62乃至95%であるべきであり、この量より少ないと、他の成分のモル量が最大値を超え、この量より多いと、他の成分のモル量が最小値を下回る。
【0021】
該塩組成物は更に、CCTの微調整のため及び黒体放射曲線に対するランプの色点の調節のため、少ないモル量のLi、Na、In、Mn、Pb、Pr、Eu、Ga又はTlのような金属のハロゲン化物を含んでも良い。微調整付加物のモル量は、選択されたハロゲン化物の蒸気圧に依存するが、塩混合物全体の15モル%を超えるべきではなく、これを超えると、PCA腐食率が長いランプ寿命の実現を不可能にする。
【0022】
以上のハロゲン化物の群に関し、NaIの存在は高いCCTを持つランプを実現するために必須ではなく、特にNaIはCCTの微調整及びランプの色点の調節に有用であり得るが、いずれの場合でも塩混合物全体の約5モル%よりも少なく保たれるべきであり、これを超えると、その影響が所望の高い色温度の実現を妨げる。
【0023】
特に、NaIの付加は、x軸に沿って色点をシフトさせ、色温度を低下させる。斯くしてNaIは、以上に説明したように、色点に対するCeIの影響を弱めるために利用され得る。
【0024】
更に、以上のハロゲン化物の群に関し、TiIの存在も同様に、高いCCTを持つランプを実現するために必要とされない。しかしながら、約535nmの目が感知する領域における強い線を特徴とする発光スペクトルのため、TiIもまたCCTの微調整及びランプの色点の調節のために有用であるが、いずれの場合でも塩混合物全体の約5モル%よりも少なく保たれるべきであり、これを超えると、CCTが下方にシフトしはじめる。加えて、MPCDが過度に高くなり、対象となる商業的用途には光が過度に緑色となる。加えて、Tlの化学的活性は腐食性を増大させ、寿命を危うくし得る。以上の考察に基づき、約2乃至約3モル%の範囲のTlIが好適である。しかしながら、約5000Kを超えるCCTのためには、TlIレベルは約1モル%以下に保たれるべきである。
【0025】
実施例
図に示される形状によってアーク管が形成された。該形状は、約18mmの短軸幅Wと約26mmの長軸長Lとを持つ扁長の回転楕円体の形を持つ。本体の壁厚は、約1mmである。該回転楕円体の端部は、中空の軸方向延長部に一体的に形成され、該延長部にタングステンの放電電極が挿入される。タングステン電極間の距離は、14mmである。或る量のHgが該アーク管及び塩混合物自体に追加される。該アーク管はArにより満たされ、少量のKr85を付加される。充填圧力は75Torrであった。放電電極は、アーク管本体の延長部において堅固に封止された。
【0026】
ランプは、315Wの定格出力で製造された。該ランプの電圧は約100Vであり、Hgの量により調節された。CCT、CRI及びMPCDの値は、ランプが100時間垂直に動作させられた後に測定された。一連のランプの化学的充填物、及びそのパラメータは、表1に示される。
【表1】

【0027】
表1は、測定されたランプが、約106乃至114L/Wの発光効率、4700乃至5000KのCCT、86乃至91のCRI、及び29乃至56のMPCDを持ったことを示している。
【0028】
本発明は、やむを得ず限られた数の実施例によって説明された。該説明から、他の実施例及び実施例の変形例が当業者には明らかであり、本発明の範囲及び添付される請求の範囲内に完全に包含されることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電空間を囲む中央部及び一対の端部を持つセラミック放電容器と、
前記端部のそれぞれを通って前記放電空間へと延在する一対の放電電極と、
前記放電電極を囲む外側ガラス封体部と、
基部と、
を有し、前記外側ガラス封体部は、前記基部に封止されて前記放電容器の気密容器を形成する、セラミックガス放電メタルハライドランプにおいて、
前記放電空間は、不活性ガス、水銀及び金属ハロゲン化物塩混合物を有する充填物を含み、前記塩混合物は、
少なくとも約62モル%のヨウ化カルシウム(CaI)と、
約8モル%以下のヨウ化セリウム(CeI)と、
約15モル%以下のヨウ化セシウム(CsI)と、
約15モル%以下の、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、インジウム(In)、マンガン(Mn)、鉛(Pb)、プラセオジム(Pr)、ユーロピウム(Eu)、ガリウム(Ga)及びタリウム(Tl)のハロゲン化物から成る群から選択された1つ以上のハロゲン化物と、
を有し、ナトリウム(Na)のハロゲン化物の量は約5モル%よりも少なく、タリウム(Tl)のハロゲン化物の量は約5%よりも少ないことを特徴とする、セラミックガス放電メタルハライドランプ。
【請求項2】
前記ヨウ化カルシウム(CaI)は、約62乃至約95モル%の範囲内で存在する、請求項1に記載のセラミックガス放電メタルハライドランプ。
【請求項3】
前記ヨウ化セリウム(CeI)は、約2乃至約6モル%の範囲内で存在する、請求項1に記載のセラミックガス放電メタルハライドランプ。
【請求項4】
前記ヨウ化セシウム(CsI)は、約3乃至約15モル%の範囲内で存在する、請求項1に記載のセラミックガス放電メタルハライドランプ。
【請求項5】
ヨウ化タリウムが、約2乃至約3モル%の範囲内で存在する、請求項1に記載のセラミックガス放電メタルハライドランプ。
【請求項6】
ヨウ化タリウムが、約1モル%以下の量で存在する、請求項1に記載のセラミックガス放電メタルハライドランプ。
【請求項7】
前記放電容器の前記中央部の形状は、高い内圧を収容し且つ最小限の温度勾配を呈するように設計された、請求項1に記載のセラミックガス放電メタルハライドランプ。
【請求項8】
前記放電容器の前記中央部の形状は扁長の回転楕円体である、請求項1に記載のセラミックガス放電メタルハライドランプ。

【図1】
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【公表番号】特表2012−515413(P2012−515413A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544952(P2011−544952)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【国際出願番号】PCT/IB2010/050024
【国際公開番号】WO2010/082144
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】