説明

高さ調節可能なワークチェア

ワークチェアは、足部上の支柱により高さ調節可能に支持され、少なくとも一部分が、実質的に水平に配置された座部と、使用者の背中を直立姿勢にするように調節し得る背もたれと、を備え、支柱(3)は、3つの部分(4、5、6)からなり、その結果、座部の高さの2段階調節が可能になることと、後部(7)が固定されかつ実質的に水平な位置を常時保つように、座部が2つの部分(7、8)に分かれ、また、前部(8)が後部に対してヒンジ留めされることと、前部(8)が支柱(3)に、ロッド(9)をヒンジ(10)留め式に留めることによりヒンジ(11)留め式に留められることとを特徴とする。体格の大きさに拘わらず、実質的に全ての使用者が人間工学的な作業位置を取り、ワークステーションを広げ得るような寸法のチェアにし得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークチェアに関し、当該ワークチェアは、高さを調節し得るように足部の支柱により支持される座部と、調節可能な背もたれと、を備え、座部は、少なくとも一部分が、実質的に水平になっており、背もたれは、使用者の背中を直立姿勢にさせる。
【背景技術】
【0002】
高さ調節可能な全てのチェアの目的は、作業領域に容易に到達させることである。例えば、このタイプの作業領域は、テーブルまたは机、動くベルトまたは製造ステーション、患者の椅子または手術台であり得る。
【0003】
このタイプのワークチェアの多数のデザインが、知られている。身長に個人差があることから、種々の形状であって、同様に座部もいくぶん調節しかつ/または傾斜させ得る、高さ調節可能なワークチェアに行き着いた。しかしながら、従来、実際に個々人の体格を十分に考慮したワークチェアが開示されたことはなかった。殆どのチェアは、背の高い使用者には小さ過ぎ、または背の低い使用者には大き過ぎる。
【0004】
さらに、通常の座部の位置を高くして(この座部の寸法により異なる)座ると、血管系および筋肉系に望ましくない圧力が作用してしまう。
【0005】
人間の下肢および骨盤の複合体は、人が直立姿勢で立ち歩行するように自然に設計されている。したがって、動作の方向と反対側の筋肉が収縮する、と解剖学マニュアルでは説明される。よって、下腿が前方にあるとき、後側の筋肉が収縮し、大腿が後方にあるとき、筋肉の前側が収縮し、骨盤が前方にあるとき、筋肉の後側が収縮し、大腿および下腿は、膝で相互に旋回し、大腿と骨盤とは、股関節において同一化している。これらの解剖学上の事実は、膝の裏側に、大腿から下腿へ鋭利に画定された移行部が存在することを意味し、また、骨盤から大腿への移行部が、水平方向の臀部のひだの形態の比較的丸い境界線を有することを意味する。このひだは、部分的に臀部の筋肉および大腿の筋肉に従属している。解剖学の面から見ると、着座姿勢は、骨盤の2つの半体の坐骨結節において支持を行うことを特徴とする。力学の面から見ると、平衡のとれた着座姿勢のためには、大腿骨の位置が水平になりかつ下腿の位置が垂直になることが、最も好都合である。
【0006】
解剖学的および力学的データは、動きやすさとは無関係である。後者は、大腿の支持の程度、すなわち座部が後方へ傾斜する程度と、背中の支持の程度とにより部分的に決定される。
【0007】
しかしながら、この情報は、ワークチェアをデザインするときには関連性がないか、または異なる関連性を有する。ここで、最初のポイントに必要なのは、人体を損傷しないようにまたは人体の運動連鎖に負荷を掛け過ぎずに、能動的な作業姿勢にする、すなわち、頭または首を直立姿勢にし、肩を対称的な位置にし、また、上腕を前方へ動かし、下腕または手を水平位置に対して上方へ動かすことができなければならないことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらを考慮すると、本発明の目的は、大腿および下腿の個々の長さにより解剖学的に許容されるように、作業領域に対して着座位置の作業高さを最適化し最大にすることである。特に、本発明の目的は、実質的に全ての体格の使用者に、すなわち、身長が異なる使用者ばかりでなく、身体の部位、すなわち下腿、大腿および背中の長さが異なる使用者にも、これを適用することである。さらには、本発明では、垂直方向の位置における体幹に対する大腿の位置を90°から130°まで高さ調節して変更する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、本発明は、以下の条件で達成され、開発中のワークチェアの調節には、以下の条件を満たす必要がある。
1)チェアが、作業領域に対する能動的な着座位置における作業を可能にするものでなければならないこと。
2)チェアが、人の身長と体重との比に関連して調節し得るものでなければならないこと。
3)チェアが、選択されたまたは目的とする作業領域の位置において最大限の支持を提供するものでなければならないこと。
4)チェアが、最大限の支持を安定化させる選択肢を提供するものでなければならないこと。
【0010】
本発明に係るチェアは、基本的なコンセプトにおいて、支柱が座部の高さを2段階に調節し得ることと、後部が固定されているとともに実質的に水平な位置を常時保ち、また前部が後部に対してヒンジ留めされるように、座部が分かれていることと、ロッドを支柱にヒンジ式に固定することにより、前部が支柱にヒンジ留め式に固定されていること、とを特徴とする。
【0011】
第1の高さ調節によって、下腿の長さに基づく座部高さの個別の設定が決定される。
【0012】
第2の高さ調節によって、チェアを、本発明が目的とする範囲内において、背の低い使用者の使用に適するものにするが、ワークステーションを広げる選択肢も提供する。座部が分かれるようにデザインすることによって、確実に最大の高さに調節することができ、また、第2の高さ調節中に、座部の前部を連続して低くすることができるので、大腿の解剖学的構造体に大きな力がかからない。
【0013】
Dined2003の1頁から99頁の、Dutch tables for height and width dimensions of the Dutch populationに含まれている、全ての点で使用者に適切な寸法のチェアにし得る。オランダ人は、世界で最も背が高い2つの国の国民の一方であるので、世界中での使用に適切となるように調節し得ることが考慮される。
【0014】
米国特許第3,445,532号明細書および米国特許第5,401,077号明細書は、固定部と、固定部に対してヒンジ留めされた前部とを座部が有するチェアを、開示している。本発明の他の特徴は、これらの明細書からは知られていない。
【0015】
典型的な実施形態を概略図示した添付の図面を参照して本発明を以下に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
3つの部分からなる支柱3が、足部1上に配置され、当該足部1は、少なくとも50cmの中央軸において、既知の方法で、一組の車輪2などで動かされ得る。支柱の伸縮部をそれぞれ4、5および6で示す。
【0017】
上方支柱6が、坐骨を支持するための、座部の固定部7を支持している。大腿を支持するための前方座部8を、固定された後部7に対してヒンジ留めして、座部を分けることができる。
【0018】
座部8は、ロッド9により安定させている。このロッドは、座部8の下側に配置されたヒンジ10から、中央の中間支柱5上のヒンジ留め式固定位置11に向かって延びている。中央の中間支柱5のみを図1に示すように引き上げている限り、座部7、8は、平坦なままである。第3の支柱6を引き上げた場合、図2に最も高い位置を示すように、ロッド9は、前方座部8を傾斜位置へ引っ張る。
【0019】
全体を12で示す背もたれが、上部支柱6に配置されている。支柱6に固定された固定ロッド14と、上向きに延びるロッド15との間の摺動連結部13によって、使用者の骨盤と接触する背もたれ12の部品の高さを調節し得るとともに、ロッド15を傾斜させることにより、固定された座部7の後縁に対して前後に動かし得る。
【0020】
さらに、ロッド17によって、背もたれ部分16を前後に調節し得る。ロッド15とロッド17との間の連結部18は、それ自体は既知の機構により垂直方向のロッド15を傾斜させると、ロッド17が水平方向の位置に保持されることを、保証する。
【0021】
背もたれは、連結部17の前において2つの半体16、16’に分かれていることを特徴とする(図3を参照)。このように2つの部分に分かれていることによって、背もたれが、脊柱と接触することが妨げられる。2つの支持用背もたれ半体16、16’は、点線および矢印Pで示すように、受動的ばねシステム19によりある距離だけ前方に回動して押し出される。半体は、次に、圧力を軽くかけられて、相互に一直線になるように押し戻され得、この一直線の位置は、実線で示している。全体として、背もたれ部16、16’と使用者の骨盤の2つに分かれた部分との接触を受動的に支持することになる。
【0022】
骨盤の支持部をこのようにデザインすることによって、解剖学的および神経生理学的データに基づいて個々に設定を行って、座部7から座部8への移行部に水平方向の臀部のひだが精確に配置されるような座り方ができる。その形状は、遠位側の部分に丸みをつけて背もたれ半体を若干長くすることにより変化させ得る。
【0023】
寸法は、以下のように選択できる。座部7および座部8を水平方向に配置する場合、支柱4および5の高さを35cmから55cmに調節し得る。座部7の長さを(前または後方向に)15cmにし、座部8の長さを20cmにする。背もたれ12(部分16および16’)の、骨盤の縁までの高さは、15cmから25cmまでである。背もたれは、座部7の後縁に対して12cm前方向または後方向に変化させ得る。これは、座部7の前記後縁に対して+6cmと、−6cmとに分けられる。
【0024】
支柱の第3の支持体、すなわち支柱6は、最大約20cmさらに上昇することになる。種々の程度上昇させることによって、ロッド9は、水平方向の臀部のひだが保持されている限り坐骨結節および支持部に関して有効な座部7とともに、座部の前方部8を図1に示す90°と図2に示す最大130°との間の傾斜位置に引っ張る。
【0025】
よって、要約すると、本発明は、以下の新規な方法を提供する。
a)座部を分け得ること、
b)実質的にすべての使用者の体格のために、人間工学的に信頼できる方法で、最大値まで、個々に高さを調節可能であること、
c)腸骨稜の上縁に対して背もたれの位置を調節可能であること、
d)実際の筋骨格の骨盤の幅に基づいて、横方向の背もたれ部の位置を調節可能であること、
e)補償動作の調節を妨げるために、脊柱の場所を支持しないこと、
を含む。
【0026】
このワークチェアによって、種々の作業条件下で、大腿を水平に配置した能動的な着座位置から始まる、人間工学的に適切な着座位置を用い得る。高さ調節を二重に行うことによって、大腿を適切に支持しながら個々の水平方向の座部面より上の20cmにまで動かすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】中間位置にあるチェアの側面図である。
【図2】最も高い位置にあるチェアの側面図である。
【図3】背もたれの平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークチェアであって、
足部上の支柱により高さ調節可能に支持され、少なくとも部分的に、実質的に水平に配置される座部と、
使用者の背中を直立姿勢にする、調節可能な背もたれと、
を備え、
前記支柱(3)は、3つの部分(4、5、6)からなる結果、前記座部の高さが2段階に調節されること、
前記座部は、2つの部分(7、8)に分かれており、後部(7)が、固定され常時実質的に水平な位置を保ち、また前部(8)が、前記後部に対してヒンジ留めされること、および
前記前部(8)が、ヒンジ(10)留め式に留められたロッド(9)により、ヒンジ(11)留め式に前記支柱(3)に留められること、
を特徴とするワークチェア。
【請求項2】
前記前部(8)は、前記支柱(3)の前記第2の支持体(5)に前記ロッド(9)によりヒンジ留め式に留められることを特徴とする請求項1に記載のワークチェア。
【請求項3】
前記支柱の第1の支持体の寸法は、前記座部の前記固定部(7)により決定される前記座部の高さが下腿の長さに基づいて個々に設定されるような寸法であることを特徴とする請求項1または2に記載のワークチェア。
【請求項4】
前記支柱の第2の支持体は、さらに、直立した体幹に対する大腿の曲りの値が130°になる、最大高さに調節されることを特徴とする請求項3に記載のワークチェア。
【請求項5】
前記背もたれは、脊柱の場所を支持しない2つの部分(16、16’)を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のワークチェア。
【請求項6】
前記背もたれには、前記背もたれ部分(16、16’)を前方に押し出す受動的ばねシステム(19)が設けられていることを特徴とする請求項5に記載のワークチェア。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−507281(P2007−507281A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532139(P2006−532139)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【国際出願番号】PCT/NL2004/000610
【国際公開番号】WO2005/030007
【国際公開日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(506105696)
【Fターム(参考)】