高処理能力の電気生理学システム
組織部位からの電気生理情報をモニターするためのシステムと方法は、複数の電極を有する少なくとも1つのプローブを含む。システムはまた、モニター対象の電気的に刺激される組織部位を選択するコントローラも備える。本発明の一変形では、複数の多極プローブがコントローラで管理される。システムは、更に、複数の増幅器モジュールを備え、1つの増幅器モジュールが各プローブに対応する。増幅器モジュールは、電極で検知された電気信号を増幅すること、選択された電極に刺激信号を配信すること、組織部位から誘発された信号をフィルタ処理すること等の、多数の機能を有することができる。システムは、複数の組織部位をモニター及び刺激するために、電極の選択及び切り換えを自動的に行うことができる。複数の組織部位を並列的に識別するように、複数のプローブがコントローラと接続されるとともに、各プローブが複数の組織部位をモニターするように構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2004年3月23日に出願された米国仮特許出願第60/555,756号の優先権を主張するもので、ここで参照することによりその全体を本明細書に組み込むものとする。
【0002】
本発明は、非常に多数の神経組織及びその薄片における電気的アクティビティ(活動)を検知、測定、記録することが可能な高処理能力(スループット)を有する装置に関する。該装置は、1つの変形例として、高処理能力の電気生理記録システム、特に、実験室での使用に適した電気生理記録システムが考えられる。
【背景技術】
【0003】
過去10年間以上に渡って、医学研究者は、神経細胞及び神経単位(ニューロン)組織に及ぼす精神活性(向精神)物質の影響の判定において、神経細胞及び神経単位組織の電気的アクティビティを利用することを積極的に遂行してきた。神経細胞が活動すると、その活動量は電位又は電圧の発生により明示される。この電位は、神経細胞内のイオン透過率の変化に伴う細胞膜の内外におけるイオン濃度の変化により誘起するものである。この神経細胞近傍における電位の変化とイオン濃度の変化(即ち、イオン電流)を、電極を用いて測定することにより、神経細胞又は組織の活動を検知することを可能とする。
【0004】
この分野における初期の作業者は、このような細胞活動による電位の測定を、細胞を含む領域にガラス電極を挿入して細胞外の電位を測定することにより行っていた。刺激により発生した電位を測定する場合は、記録用のガラス電極と共に刺激用の金属電極を挿入していた。しかし、これらの電極を挿入することは細胞を損傷させる可能性があり、長期間の測定を行うことは困難であった。また、スペース的な制約と正確に手術を施す必要性から、多点同時測定を実現することを困難にしていた。
【0005】
Sugihara等による米国特許5,563,067号公報(1996年10月8日登録)、米国特許5,810,725号公報(1998年9月22日登録)、米国特許6,132,683号公報(2000年10月17日登録)、米国特許6,151,519号公報(2000年11月21日登録)、米国特許6,281,670号公報(2001年8月28日登録)、米国特許6,288,527号公報(2001年9月2日登録)、米国特許6,297,025号公報(2001年10月2日登録)では、絶縁基板上に多数のマイクロ電極を有する平板電極を用いた装置が記載され、これにより第1に多数の地点における電位の変化を多点同時測定することを可能とするものであり、ここで参照することにより本明細書に組み込むものとする。この装置は、電極間距離が短く、神経の電気的アクティビティを長期間測定することを可能とするものであった。
【0006】
上記リストアップされた米国特許に基づいて作成された市販の装置は、複数のマイクロ電極とガラス板の表面に配置されたそれぞれの引き込み線を備えた平板電極アセンブリを有する一体型細胞保持具を組み込んでいた。電極アセンブリは、平板電極をその上端と下端から保持することで固定する二分割保持部を含むものがよくあった。この保持部はプリント回路基板上に配置されることがよくあった。
【0007】
典型的な平板電極アセンブリは、厚さ1.1mmでサイズが50×50mmの透明のパイレックス(登録商標)ガラスシートで作成された。この基板の中央部には、64個のマイクロ電極が8×8のマトリックス状に形成されていた。各マイクロ電極は導体引き込み線に接続された。例示の各電極は50×50μm平方(面積が25×102μm2)で、隣接する電極の中心間距離は150μmであった。基板の各側面には1.27mmのピッチで16個の接触点、即ち合計64個の接触点が設けられた。これらの電気接触点は、1対1の対応で基板中央のマイクロ電極に接続された。
【0008】
これらの平板電極は以下のような仕方で作成された。例えば、ITO(インジウム錫酸化物)が供給され、基板として使用されるガラスプレートの表面に厚さ150nmの層を形成した。次いで、フォトレジストとエッチングにより導電性アレイを形成した。この層の上部にネガチブな感光性のポリイミドが供給されて厚さ約1.4μmの層を形成し、次いで、上面を覆う絶縁膜を形成した。次いで、ITO層を、マイクロ電極領域とその周辺部の電気接触点において、(厚さ15〜500nmの)ニッケルと(厚さ16〜50nmの)金で被覆した。次いで、内径22mm、外径26mm、高さ8mmの円筒形状の高分子物質(ポリスチレン等)のフレームを、シリコンの接着剤でガラスプレートの中央に取り付け、64個のマイクロ電極の中央部の周囲に細胞保持部を形成した。このポリスチレンのフレームの内部は、ヘキサクロロ白金酸、酢酸鉛、塩酸等を含む溶液で満たされる。適度の電流を与えて、マイクロ電極に白金黒金メッキを施した。
【0009】
二分割された保持部は、平板電極の端部を保持するためのアーム部を有する樹脂で成型されることがよくあった。また、保持部の上部は軸ピンにより回転可能とした。保持部の上部は典型的には16×4組の接触子を有する制御固定器具を備えた。上側保持部の接触子は平板電極の電気接触点に対応し、NiとAuで被覆されたBeCu等の金属製バネで形成した。
【0010】
上側保持部から突き出るピン部は、上側保持部から突き出る16個のピン部が2列のスタッガード(千鳥)状に交互に配置されている。このピン部は、外部との接続用にプリント回路基板上に設けられたコネクタに接続される。
【0011】
また、バネ接触子は上側保持部の底面から突き出している。これら全ての接触子が所定の接触圧力で平板電極と接触し、その結果、ごく小さい接触抵抗での電気接続を構成している。
【0012】
プリント回路基板は、平板電極と保持部のアセンブリ(組立部品)を固定するだけでなく、(コネクタを介して)外部との電気接続、即ち、平板電極のマイクロ電極を起点とし、導電性パターン及び電気接触点を介して接触子に至る電気接続も構成している。更に、プリント回路基板は、例えば、測定装置に設置する際に、操作手順を簡単にしている。
【0013】
プリント回路基板は、両面がパターン形成されるとともに、中央部に形成された円形開口部の周囲の4箇所にコネクタが設けられたガラスエポキシ基板を有する。
【0014】
通常、プリント回路基板は、両面コネクタ端部に電気接触点を備えた各側面に端部を有する。機械的な固定を確実にするために、上側保持部は、例えば、クランプを用いてプリント回路基板に固定することができる。
【0015】
上記構成の一体型細胞保持具を用いた細胞電位測定装置の構成は、一体型細胞保持具に置かれた細胞又は組織を光学的に観測するための倒立顕微鏡等の光学的観測装置を含む。システムは、細胞に刺激信号を与える装置と細胞からの出力信号を処理する装置を含む1つ以上のコンピュータを備えてもよい。最後に、装置は、細胞にとって適当な培養基を維持するための細胞培養手段を有してもよい。
【0016】
倒立顕微鏡に加えて、カメラも顕微鏡の代わりに使用または含むことができる。また、システムは画像ファイリング装置を備えてもよい。カメラはSITカメラであってもよい。SITカメラは、静電誘導トランジスタを撮像管に適用したカメラに用いられる一般的な用語であり、非常に感度の高いカメラの代表例である。
【0017】
コンピュータとしては、A/D変換基板と測定ソフトウェアを有する(例えば、WINDOWS(登録商標)と互換性のある)パソコンが代表的である。A/D変換基板はA/D変換器とD/A変換器を含む。A/D変換器は16ビットで64チャンネルを有し、D/A変換器は16ビットで8チャンネルを有する。
【0018】
初期のソフトウェアは、刺激信号を与えるのに必要な条件又は得られた検知信号の記録条件を決定するためのソフトウェアを含んでいた。このようなソフトウェアを用いることで、コンピュータは細胞に対する刺激信号を生成することができるとともに、組織又は細胞からの検出信号を処理することができ、また、光学的観測装置(SITカメラや画像ファイリング装置)や細胞培養手段を制御することが可能であった。
【0019】
初期のソフトウェアは、(例えば、コンピュータを用いて刺激波形を描くことにより)複雑な刺激条件が可能となるように、道理的な順応性があった。記録条件には、64個の入力チャンネル、10kHzのサンプリングレート、数時間以上に渡る連続記録が含まれていた。刺激信号を供給する電極及び検知信号の電極の選択は、例えば、手動で又はコンピュータのマウスやペンを用いて特定された。また、細胞培養液の温度やpHなどの種々の条件も表示することができた。
【0020】
ソフトウェアは、検知された自発的活動電位または誘発電位を、最大64チャンネルでリアルタイムで表示する記録画面を提供した。記録又は誘発された電位は組織又は細胞の顕微鏡画像の上部に表示された。誘発電位が測定されると、全記録波形が表示された。自発的活動電位が測定されると、自発的活動の発生がウインドウ識別装置又は波形識別装置を用いたスパイク波検知機能により検知された場合のみ、記録波形が表示された。記録波形が表示されると、記録時点での(例えば、刺激条件、記録条件、温度、pHなどの)測定パラメータが同時にリアルタイムで表示された。
【0021】
ソフトウェアは、例えば、FFT解析、コヒーレンス解析などのデータ解析又は他の解析ソフトウェアを含んでいた。更に、ソフトウェアは、波形識別装置を用いた単一のスパイク分離、一時的特性表示機能、トポグラフィー表示機能、電流源密度解析機能などの他の機能性を有していた。これらの解析結果は、画像ファイリング装置に記憶された顕微鏡画像の上部に表示することができた。
【0022】
上記構成のコンピュータから刺激信号が発せられると、刺激信号はD/A変換器とアイソレータを経由して細胞又は組織に供給された。マイクロ電極と接地レベル(培養液の電位)間に誘起する誘発電位は、(例えば、NIHON KODEN CO.,LTD.製の”AB−610J”などの)感光性増幅器の64チャンネルとA/D変換器を介してコンピュータに送電される。増幅器の増幅率は100dBであり、周波数帯は0〜10kHzであった。しかし、刺激信号による誘発電位が測定されると、周波数帯としては低周波遮断フィルタを用いて100Hz〜10kHzの帯域が選択された。
【0023】
組織または細胞培養の構成部品は、温度調整器、培養液用のサーキュレータ、空気と二酸化炭素の混合ガスの供給装置を備えていた。
【0024】
刺激信号の他の形体としては、人為要素を除去するため、即ち、DC成分が流れるのを防止するために、一組の正と負のパルスを有するバイポーラ(二極性)の定電圧パルスがあった。好ましい刺激信号は、100μ秒のパルス幅及び100μ秒の周期の正のパルスと100μ秒の負のパルスであった。正負のパルスのピーク電流は30〜200μAの範囲であった。
【0025】
細胞培養手段は、測定装置内に配置するこることで、長時間に渡って連続測定を行うことができた。又は、一体型細胞保持具は、測定装置とは独立して培養することを可能にした。
【0026】
上記の細胞電位測定装置を用いることで、神経細胞又は神経組織は一体型細胞保持具に載せられて培養され、神経細胞又は神経組織の活動に伴う電位の変化が測定された。
【0027】
このような装置とそれに対応するソフトウェアの順応性にもかかわらず、初期の装置では、高処理能力のサンプリングと適応試験様式の選択を全て行うことができる装置は存在しなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
細胞から電気生理記録を行うもっと高い処理能力の方法と装置を開発することは相当な努力が必要であった。これらの方法と装置は、数百又は数千もの合成物が細胞又は組織に対して電気生理的にテストされる薬の開発において、特に重要である。この分野での最近の開発は、平板電極を用いた高処理能力の全細胞クランピングと、ロボット工学を用いた自動パッチ・クランピングと、ロボット工学を用いた高処理能力の卵母細胞電圧クランピングを含む。これらの、所謂、細胞に基づく電気生理アッセイ(検定)は、薬開発の経路の初期段階を明確に促進するであろうが、組織に基づく(又は薄片の)生理機能は、無傷のままの組織における生理活動の影響を決定する必要があり、合成物の活動のメカニズムを理解する必要がある。分散した細胞は溶液として扱えるので、比較的操作が簡単である。細胞を転移するのに多種のディスペンサーが利用可能である。これに対して、神経組織及び薄片は操作が非常に困難であり、同等ではない。組織及び薄片の場合の特徴は、簡単な実験を行うにも熟練した生理学者が必要であり、また更に高い処理能力のシステムの開発を阻止している。
【0029】
平板電極アレイシステムの最近の開発により、例えば、電極の調整と刺激及び記録部位の検索などの工程を除くことで、あまり熟練していない研究者でも薄片の生理学的実験を幾分かは利用可能としている。しかし、システムを操作する1人の生理学者が通常必要である。
【0030】
ここに記載の装置と工程は、電極刺激部位のコンピュータ制御による切り換えを可能とするものである。以前のシステムでは、異なる部位から刺激することが可能なものであっても、物理的接続をある部位から他の部位に(ケーブル線又は同様のハードウェアを用いて)移動させるのに、人による操作が必要であった。この処理工程を図1に示す。
【0031】
図1に示すように、組織薄片の生理機能実験は3つの主要なステップ(1.)〜(3.)を有する。即ち、(1.)オペレータは多極プローブ上に選択された脳の薄片を載置する(1〜2秒)。(2.)オペレータとコンピュータは刺激部位を選択し、刺激パラメータを作成する(10秒)。このステップは下記の2つのサブステップ:(a.)ソフトウェアは脳の薄片を刺激し、データを補足して解析し、その結果をオペレータに表示することと、(b.)オペレータは薄片上の刺激部位に変化を起こして刺激パラメータを調整すること、を反復することより成る。(3.)最後に、実験が行われ、これには例えば60〜120秒の時間がかかる。
【0032】
薄片上の刺激部位と刺激パラメータが一旦設定されてしまうと、特化されたソフトウェアと専門のシステム技術を駆使して実験の実施を自動的に行うことができる。しかし、コンピュータ制御によるハードウェアが刺激部位を任意に選択することを可能にしなければ、上記ステップ(2.)を自動化することはできない。
【0033】
実際には、1人のオペレータだけで実施できる実験の数はステップ(1)と(2)を実行するのに要する時間の長さにより制限される。これを図2に示しており、図において、「O」は実験の装置に脳の薄片を物理的に配置する時間を表し、「C」は刺激部位を選定又は刺激パラメータを作成するのに要する時間を表し、「E」は実験を実行する時間を表している。図2に示すように、刺激部位とパラメータの選択はオペレータにより手動で行われる。このことは実験の処理能力を著しく阻害している。
【0034】
市販のシステムはいずれも上記刺激部位とパラメータの形成工程を自動化するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明は、電気生理情報をモニター(監視及び観察)するためのシステムであって、プローブ上に置かれた組織試料の複数の組織部位を監視及び刺激するための少なくとも1つの多極プローブを備える。システムは、更に、監視及び刺激されるべき組織部位を選択するように構成されたコントローラを備える。本発明の一形態では、コントローラは、監視及び刺激されるべき組織部位を自動的に選択するように構成されている。
【0036】
システムは、また、各プローブと接続された増幅器モジュールを備えてもよい。一形態では、増幅器モジュールは、前記組織部位から誘発された電気信号を増幅するように構成されている。別の形態では、増幅器モジュールは、接続されたプローブの電極に刺激信号を供給するように構成されている。これにより、増幅器はコントローラと組合せて機能し、プローブ及び電極を管理・操作することができる。
【0037】
コントローラは、広範な種類の刺激信号と組織部位を選択するように構成してもよい。一形態では、異なった電圧電位が組織部位に与えられる。別の形態では、一定の電圧電位が異なる組の電極に与えられる。刺激信号は、例えば、0.5〜2.5m秒などの所定の時間内で、第1の組織部位から第2の組織部位に切り換えることができる。刺激信号は、各刺激信号に対応して誘発された電気信号が別々に監視及び記録されるように時間変調してもよい。
【0038】
システムは、コントローラに接続されたコンピュータを更に備えてもよい。コンピュータは種々の機能を発揮することができ、代表的な機能としては、組織部位を自動的に選択して監視し、先に選択された刺激信号を一組の電極に付与するようにコントローラをプログラミングするように、コンピュータは構成されている。また、コンピュータは、監視された組織部位から発生した電気信号を受信し、記録することもできる。このような信号は、殆ど(又は全く)電気的刺激を受けていない組織部位から発生している内発的な活動信号とともに、刺激されている組織部位から誘発された電気信号も含んでいる。実際、電気的な活動を示さない組織部位が観察されることがあり得る。
【0039】
プローブの大きさと構造は種々に変形可能である。一変形例では、プローブは平坦な底部を有する穴部を有する。穴部は、ネズミの脳組織の薄片などの組織薄片を含むように構成されている。底部は複数の電極を支持している。各プローブには16個より多く、又は恐らく64個より多くの電極を備えることができる。更に、多数の実験を並列に実施できるように、多数のプローブをコントローラに接続してもよい。
【0040】
電気生理情報を監視するための方法は、(a)複数の電極を備えたプローブ上に組織試料を載置し、(b)前記組織の電気的活動(アクティビティ)を監視するために第1の組の電極を選択し、(c)前記組織の電気的活動を監視するために第2の組の電極を自動選択し、(d)前記電気的活動を監視する、工程を備える。組織は哺乳動物の脳の薄片などの組織薄片であってもよい。
【0041】
本発明の一形態では、前記方法は、更に、刺激信号で刺激すべき組織部位を選択する工程を有する。刺激信号は変化してもよいし同一であってもよい。また、刺激信号を受ける組織部位又は箇所は変えてもよい。第2の刺激信号を与える前、与えるのと同時、又は与えた後で、第1の刺激信号を供給してもよい。一形態では、少なくとも64種類の刺激信号が組織試料の異なる部位に順次供給される。
【0042】
監視するための電極を選択する工程は、コントローラを用いて実行することができる。コントローラは、また、刺激信号を選択するとともに、刺激すべき組織部位を選択するように構成することも可能である。
【0043】
前記方法は、モニターされた各信号を増幅する工程を更に有してもよい。選択された刺激信号をプローブの選択された電極に供給するとともに誘発信号を増幅するために、増幅器モジュールを設けることもできる。
【0044】
一方法では、組織試料は、コントローラで集約的に管理される複数の多要素プローブ内に配置される。前記増幅器モジュールは各プローブを管理するために設けてもよい。増幅器モジュールは、コントローラで選択された刺激信号を、各プローブ及び該プローブの各電極に供給する。このようにして、複数の組織試料は並列且つ自動的に識別される。
【0045】
また別の電気生理情報監視システムは、組織試料の1つ以上の組織部位の電気的活動を監視するための少なくとも1つのプローブ手段と、プローブ手段に接続された制御手段を有する。通常、プローブ手段は複数の多極体を備える。制御手段は、組織部位を監視するために電極を自動選択するように構成されている。制御手段はまた、プローブ手段に送付すべき電気刺激信号を選択するように構成することもできる。また、各マイクロ電極から検知された電気信号を増幅できるように、各プローブ手段毎に増幅器手段を設けてもよい。増幅器手段はまた、刺激信号をコントローラからプローブ手段のマイクロ電極に供給するように構成してもよい。システムはまた、組織部位を監視及び刺激する指令を制御手段に供給するために、制御手段に接続されたコンピュータを備えることもできる。コンピュータはまた、モニターされている組織部位からの電気信号を監視及び/又は記録するように構成してもよい。
【0046】
本発明のまた別の形態では、電気生理情報監視用システムは、各プローブが組織薄片を保持するように構成された複数のプローブを備える。プローブは、組織薄片がプローブに配置されたとき、組織薄片の組織部位の電気的活動を監視することができる複数の電極を備える。システムは、更に、各プローブ毎に子増幅器モジュールを有する。子増幅器モジュールは、組織部位から誘起又は誘発された信号を増幅するように構成されている。システムは更に、子増幅器を制御するように構成された複数の子コントローラを含む。主コントローラは、全ての子コントローラを管理するように構成されている。
【0047】
本発明の態様は変形可能である。即ち、プローブは少なくとも16個の電極を有してもよい。他の変形例では、プローブは少なくとも64個の電極を有する。システムはまた、各子コントローラ毎に4〜10個のプローブを有してもよい。
【0048】
一体型ハウジングにコントローラと増幅器を含めることも可能である。しかし、プローブは典型的にはハウジングとは別体構成である。また、コンピュータを主コントローラに接続してもよい。コンピュータは、どの組織部位をモニターすべきかの決定とともに、電気的刺激信号を選択する指示を、主コントローラに与えるように構成されている。コントローラは刺激信号を時間多重化するように構成してもよい。このようにして、多数の組織試料の実験が並列的に実施できるとともに、同時に分析することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
ここで記載するシステムとそれを使用した処理工程は、多極プローブ上に置かれた組織薄片の電気生理活動をモニターするために、コンピュータと多極プローブ間にコントローラを配置することを中心に説明する。特に、コントローラは電極を切り換え(又は、選択)することで、組織薄片の様々な組織部位における電気的活動(アクティビティ)を検知する。コントローラは、また、1つ以上の電極を刺激信号で励起することで、対応する組織部位を刺激するように構成することもできる。コンピュータは、典型的には、コントローラに選択及び切り換え処理動作を実行させる指令を与えるか又はプログラミング設定するのに使用される。また、神経組織で生成された信号が低レベルであるので、増幅器モジュールを各プローブとコントローラ間に挿入して、組織から誘起する信号の増幅して、必要な条件を満たすことが好ましい。
【0050】
図3は、コントローラを用い、アナライザとオペレータが所望の特殊な分析に基づいて好適な薄片位置とパラメータを選択するのをコンピュータにより支援することを可能とする仕方を示すブロック図である。コントローラは、オペレータからの入力操作を必要としないで、モニターされる組織部位、即ち、刺激が与えられる組織部位を選択する。
【0051】
図4に示すように、コントローラを用いて測定すべき特定のプローブを選択すると共に、ソフトウェアによりこの特定のプローブを測定し、比較し、選択(すべきか否か)決定し、また、必要に応じて特定部位の刺激パラメータを適用することで、図2に示すマニュアル学習と選択工程を削除することができる。特に、図4は、一連の実験が行われる状況では、オペレータ又は技術者は単に初期設定を行うのみである。このような種類の実験では、実験を設定するのに必要とされたオペレータの経験的な熟練が実質的に軽減される。
【0052】
例えば、準備段階中に人為的介在を必要とする図1に示す装置を使用した場合、脳の薄片を実験装置台に物理的に載置するのに平均1分の時間がかかり、刺激部位を選択して刺激パラメータを生成するのに平均10分の時間がかかると仮定すると、一人の技術者が開始できる実験数は1時間当たり高々6である。これに対して、図3と4に示すシステムを使用すると、図4の「O」で示す多要素プローブの正確な場所に脳の薄片を配置する工程は、技術者が時間を抑制できる工程であるので、1時間当たり60の実験を開始することが理論的には可能となる。
【0053】
上述の方法と装置を使用するだけで、高度に複雑で精巧なプロトコルを実現することが更に可能となる。例えば、数箇所の独立した部位を刺激することが必要な場合など、複雑な刺激パターンを必要とするようなプロトコルの設計は、刺激と刺激の間の僅かな時間遅延があるだけで実現可能である。初期の多極型生理組織モニターシステムでは、刺激部位を設定するのに人間のオペレータが必要であるので、刺激間の時間を最短とすることは、ある部位から他の部位に実際に切り換えを人為的に行う速度により制約されている。これに対して、前述の装置と方法を用いることで、切り換え動作はミリ秒単位で実行されるので、神経組織は僅かな時間内に異なる部位から刺激されると、神経組織の誘発された反応(レスポンス)を観測することが可能となる。このような脳の自然現象が脳内の自然な事象の時間制約内に起こるので、現実の挙動を研究するためには、同一の複雑な刺激パターンを模造できることが重要である。
【0054】
上述の処理手順とハードウェアを使用することで、ハードウェア素子の数を削減することにより多極型実験において高処理能力を達成する経費を顕著に低減することができる。図1に示す処理手順を用いた従来構成では、N×Nの独立したシステムの要素により処理能力を高めるために、何人かの技術者を必要とするとともに、各システムはコンピュータと、増幅器と、更に付加的装置を必要とする。これに対して、図3と4に対応する処理手順と設計を使用する場合、単一のコンピュータと簡単なモジュールを必要とするだけで、これら全ては一人の技術者により管理される可能性があり、複雑さとコストを削減している。
【0055】
例えば、適用量応答(ドーセジ・レスポンス)による調査などの多数実験による調査は、例えば、前述の処理手順と装置を使用する1つのシステムで数個の実験を行った結果を組み合わせて、各実験を複数の実験結果の関数として再構成することにより、最適にすることができる。
【0056】
現在の装置と処理手順を用い、処理能力が従来のままの基本的システムは、多極配列("MED-Probe")と、アナログ増幅器("MED-amplifier")と、A/D変換器("A/D converter")及び好適なソフトウェアを含むコンピュータとを備える。
【0057】
ここで記載のシステムは、2個の基本ハードウェア素子、即ち、DS−MEDコントローラと各プローブに対応して専用のDS−MED増幅器モジュールを備える。DS−MED増幅器モジュールは、信号を受信、配信及び/又はコンディショニング(条件付け)するための多回線と基板を備えた増幅装置であってもよい。
【0058】
DS−MEDコントローラはシステム増幅器に接続され、該システム増幅器に直接接続されたMEDプローブの動作をエミュレートする。コントローラはまた2本のバス、即ち、制御バスラインとアナログ信号バスラインにも接続されている。コントローラが例えば8個のチャンネル間で切り換えを行う場合は、切り換えられた各チャンネルは各プローブのDS−MED増幅器モジュールを含むことになる。制御バスは、DS−MEDコントローラによりアクセスされた中からプローブ即ちチャンネルを選択する。このような選択が一旦成されると、プローブで発生された信号は当該チャンネルのDS−MED増幅器モジュールで増幅され、この増幅信号はアナログ信号バスを通り、DS−MEDコントローラ及びMED−AMPLIFIER即ちシステム増幅器を通過してコンピュータに送信される。制御バスとアナログ信号バスは共に、アクセスされた各DS−MED増幅器モジュールを共有している。これら制御バスと信号バスに接続されていることに加えて、増幅器モジュールはMEDプローブに直接接続されている。図5Aに示すように、各増幅器モジュールは対応する1つのプローブだけを管理している。
【0059】
更に、各プローブは複数の電極を含む。電極はプローブ上又はプローブ内に配置された組織薄片の電気的アクティビティ(活動)を検知する。電極又は組織部位は、例えば、刺激信号を電極に送信することで、励起/刺激される。例えば、電圧電位を2個以上の電極間に印加してもよい。DS−MEDコントローラは、モニターおよび励起すべき電極を自動的に選択するように構成することができる。このようにして、実験のための電極モニター及び刺激パラメータを比較的迅速に形成することができる。更に、複数のプローブを1つのコントローラとコンピュータに接続することにより、多数の組織薄片の実験を構成して、例えば、時間多重化ソフトウェアを使用して並列的に実験を行うことができる。
【0060】
更に複雑な構成では、1つ以上の姉妹(子)増幅器を管理する主増幅器を使用し、該姉妹(子)増幅器を一群の増幅器に順次接続する等のように構成することもできる。このようにして、複数のコントローラとプローブの階層構造を構築することができる。図5Bは多重レベル(多層)のDS−MED構成の一例を示す。
【0061】
DS−MEDコントローラと増幅器モジュールの更に詳細について次に説明する。
【0062】
DS−MEDコントローラ
図6に示すDS−MEDコントローラは10個の回路構成、即ち、1つのデジタルマザーボード(母板)と、1つのアナログマザーボードと、8個の同一の8電極構成のフィルタバンク・ドーターボード(姉妹板)を含む。そのハードウェアのブロック図を図6に示す。
【0063】
デジタルマザーボードは、DS−MED増幅器モジュールを制御するために低レベルのプログラムを実行するマイクロプロセッサを含み、該増幅器モジュールは、コンピュータで実行されるDS−MEDソフトウェアと交信するとともに、制御バス及びアナログ信号バスに接続されている。マイクロプロセッサは、制御バスを介してDS−MED増幅器モジュールに、コマンドと、アドレスと、オペランドを送信する。また、マイクロプロセッサは、コンピュータとの交信を管理するとともに、DS−MED増幅器モジュールに送信されたコマンドをコンピュータにより実行する。これらのコマンドは、(1)個々のDS−MED増幅器モジュールを形成するため、(2)利用できる(例えば4つ以上の)刺激発生源の1つを選択するため、(3)8個の8電極構成のドーターボード上の特定の高周波フィルタを選択するため、に使用される。図6に示すように、直列ポートと、クロックと、刺激選択回路装置も、DS−MEDコントローラ内に含めることもできる。
【0064】
最後に、コントローラ内にインターフェースを備えることで、マイクロプロセッサにおいて実行すべき新バージョンの低レベルプログラムをダウンロードすることを可能にし、これにより、特定のDS−MEDコントローラ及び通常のDS−MED構成の機能性を再プログラムし、拡張することを可能にする。その回路構成の一例を図7(図7A〜7E)に示す。
【0065】
アナログマザーボードは、アナログ信号バスと8電極構成のドーターボードへの入力端子間、及び、これらの出力端子とMED又はシステム増幅器へのコネクタ間に、上記インターフェースを備える。
【0066】
8個の8電極構成のドーターボードは各々一組の高周波フィルタとコンディショニング増幅器を各電極毎に1組ずつ備えてもよい。該フィルタは、A/Dデータ取得カードが電気生理信号を二段(副次)抽出することを可能とするために使用され、これにより、各実験毎に記憶すべきデータ量を削減している。コンディショニング増幅器は、アナログ信号の電気特性をMED増幅器の必要条件に一致させることを可能にする。その回路構成例を図8A(8A1〜8A3)及び図8Bに示す。
【0067】
DS−MED増幅器
図9に示すDS−MED増幅器モジュールは、10個の回路構成、即ち、1つのデジタルマザーボードと、1つのアナログマザーボードと、8個のドーターボードを有することができる。図9は1つのDS−MED増幅器のブロック図を示す。
【0068】
DS−MED増幅器モジュールのデジタルマザーボードは、典型的には、(1)各増幅器を独特のものとして識別するため、(2)コントローラから送信されたアドレスを復号化するため、(3)コントローラからの読み出し・書き込みコマンドに応答するため、(4)プローブの状態を維持するため、(5)刺激信号をそれぞれ対応するドーターボードを介して(例えば64個の)電極に配信するため、の回路構成を備えている。対応する回路図を図10(10A〜10G)に示す。
【0069】
DS−MED増幅器モジュールのアナログマザーボードは、典型的には、MEDプローブと8電極構成のドーターボードへの入力端子間、及び、これらの出力端子とアナログ信号バス間に、インターフェースを備える。
【0070】
8電極構成のドーターボードは、MEDプローブから入力するアナログ信号を顕著な歪みを生じることなくアナログ信号バスに転送するために条件付けするヘッドアンプバンクを含む。各電極が記録用または刺激用電極として機能し、刺激信号をプローブに転送できるための回路構成も存在する。そのような回路図を図11(11A〜11C)乃至図12に示す。
【0071】
上述したDS−MED構成は多くの利点及び利益をもたらす。上記処理手順は例えば構成規模を融通性のあるものとすることができる。即ち、広範な種類のシステムが、上記装置及び処理手順を用いることにより可能となる。例えば、上記装置は、単一のプローブ、又はN個のプローブを有する1次元構成のシステム、又は例えば、コントローラが数個の1次元構成のシステムを管理する2次元構成のシステムであって、各1次元構成のシステムが数個のプローブを有する2次元構成の更に複雑なシステムを構築するように使用することもできる。上記システムは、また、モジュール方式を提供することもできる。上記の構成要素を組み合わせることにより、単一のコンピュータで制御される任意の数のプローブを有する1つのシステム、又は、各々がもっと少ない個数のプローブを有するとともに、各々が単一のコンピュータに接続された数個のシステムを構築することができる。このシステムは、更に、複数(例えば4個)のMED増幅器刺激装置の1つを自動選択することと、刺激の対象部位として複数(例えば64個)のMEDプローブ電極の1つを自動選択することも可能としている。更に、ソフトウェアの制御下で操作される利用可能なMEDプローブを時間多重化にて使用することにより、全ての実験を同時に実施することができる。
【0072】
ここで記載の処理手順及びシステムを実行するための好適なソフトウェアは、当業者に公知又はすでに開発済みである。ソフトウェアは、モニター及び活性化すべき電極と組織部位の選択を制御する便利なユーザインターフェースを提供することが好ましい。例えば、ソフトウェアは、種々の刺激信号で各部位及び全ての部位を刺激するとともに、各部位及び全ての部位を任意にモニターする処理手順を実行することもできる。ソフトウェアは、また、情報の記録及び解析を容易にするものであることも好ましい。例えば、ソフトウェアは、測定された信号の値とスレッショールド(閾値)とを比較するアルゴリズムを実行するものでもよい。更に別の好適なソフトウェアとして、ここで記載のハードウェアを用いて使用可能なものとすることもできる。
【0073】
本発明のシステムと方法は、更に他の利点と利益をもたらすものである。本発明は、その精神又は基本的特徴から逸脱することなく、他の形態で実施することも可能である。ここで記載した実施形態は、単に図示により例示したもので、本発明はこれらに限定するものではないと。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲に記載された内容として開示され、本発明の請求の範囲と同等の技術内容に基づく変形はすべて本発明に含まれると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】実際の実験が開始される前に、オペレータがシステムの設定を変化させることを示す初期の多極システムの工程を示すブロック図である。
【図2】実際に実験を開始する前に、オペレータが刺激部位と刺激パラメータを構成及び再構成すべき手順を示す図である。
【図3】刺激部位の選択と刺激パラメータの構築を自動的に行うコントローラを有する多極システムの工程を示すブロック図である。
【図4】実際に実験を開始する前に、刺激部位と刺激パラメータを自動的に構築する手順を示す図である。
【図5A】多電極装置構成のブロック図である。
【図5B】2段階レベルのコントローラを有する多電極装置構成のブロック図である。
【図6】上記コントローラのブロック図である。
【図7】図7の割付けである。
【図7A】上記コントローラのデジタルマザーボードの例示回路図である。
【図7B】上記コントローラのデジタルマザーボードの例示回路図である。
【図7C】上記コントローラのデジタルマザーボードの例示回路図である。
【図7D】上記コントローラのデジタルマザーボードの例示回路図である。
【図7E】上記コントローラのデジタルマザーボードの例示回路図である。
【図8A】図8Aの割付けである。
【図8A−1】上記コントローラのドーターボードの例示回路図である。
【図8A−2】上記コントローラのドーターボードの例示回路図である。
【図8A−3】上記コントローラのドーターボードの例示回路図である。
【図8B】上記コントローラのドーターボードの例示回路図である。
【図9】増幅器モジュールのブロック図である。
【図10】図10の割付けである。
【図10A】増幅器のデジタルマザーボードの例示回路図である。
【図10B】増幅器のデジタルマザーボードの例示回路図である。
【図10C】増幅器のデジタルマザーボードの例示回路図である。
【図10D】増幅器のデジタルマザーボードの例示回路図である。
【図10E】増幅器のデジタルマザーボードの例示回路図である。
【図10F】増幅器のデジタルマザーボードの例示回路図である。
【図10G】増幅器のデジタルマザーボードの例示回路図である。
【図11】図11の割付けである。
【図11A】増幅器のドーターボードの例示回路図である。
【図11B】増幅器のドーターボードの例示回路図である。
【図11C】増幅器のドーターボードの例示回路図である。
【図12】増幅器のドーターボードの例示回路図である。
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2004年3月23日に出願された米国仮特許出願第60/555,756号の優先権を主張するもので、ここで参照することによりその全体を本明細書に組み込むものとする。
【0002】
本発明は、非常に多数の神経組織及びその薄片における電気的アクティビティ(活動)を検知、測定、記録することが可能な高処理能力(スループット)を有する装置に関する。該装置は、1つの変形例として、高処理能力の電気生理記録システム、特に、実験室での使用に適した電気生理記録システムが考えられる。
【背景技術】
【0003】
過去10年間以上に渡って、医学研究者は、神経細胞及び神経単位(ニューロン)組織に及ぼす精神活性(向精神)物質の影響の判定において、神経細胞及び神経単位組織の電気的アクティビティを利用することを積極的に遂行してきた。神経細胞が活動すると、その活動量は電位又は電圧の発生により明示される。この電位は、神経細胞内のイオン透過率の変化に伴う細胞膜の内外におけるイオン濃度の変化により誘起するものである。この神経細胞近傍における電位の変化とイオン濃度の変化(即ち、イオン電流)を、電極を用いて測定することにより、神経細胞又は組織の活動を検知することを可能とする。
【0004】
この分野における初期の作業者は、このような細胞活動による電位の測定を、細胞を含む領域にガラス電極を挿入して細胞外の電位を測定することにより行っていた。刺激により発生した電位を測定する場合は、記録用のガラス電極と共に刺激用の金属電極を挿入していた。しかし、これらの電極を挿入することは細胞を損傷させる可能性があり、長期間の測定を行うことは困難であった。また、スペース的な制約と正確に手術を施す必要性から、多点同時測定を実現することを困難にしていた。
【0005】
Sugihara等による米国特許5,563,067号公報(1996年10月8日登録)、米国特許5,810,725号公報(1998年9月22日登録)、米国特許6,132,683号公報(2000年10月17日登録)、米国特許6,151,519号公報(2000年11月21日登録)、米国特許6,281,670号公報(2001年8月28日登録)、米国特許6,288,527号公報(2001年9月2日登録)、米国特許6,297,025号公報(2001年10月2日登録)では、絶縁基板上に多数のマイクロ電極を有する平板電極を用いた装置が記載され、これにより第1に多数の地点における電位の変化を多点同時測定することを可能とするものであり、ここで参照することにより本明細書に組み込むものとする。この装置は、電極間距離が短く、神経の電気的アクティビティを長期間測定することを可能とするものであった。
【0006】
上記リストアップされた米国特許に基づいて作成された市販の装置は、複数のマイクロ電極とガラス板の表面に配置されたそれぞれの引き込み線を備えた平板電極アセンブリを有する一体型細胞保持具を組み込んでいた。電極アセンブリは、平板電極をその上端と下端から保持することで固定する二分割保持部を含むものがよくあった。この保持部はプリント回路基板上に配置されることがよくあった。
【0007】
典型的な平板電極アセンブリは、厚さ1.1mmでサイズが50×50mmの透明のパイレックス(登録商標)ガラスシートで作成された。この基板の中央部には、64個のマイクロ電極が8×8のマトリックス状に形成されていた。各マイクロ電極は導体引き込み線に接続された。例示の各電極は50×50μm平方(面積が25×102μm2)で、隣接する電極の中心間距離は150μmであった。基板の各側面には1.27mmのピッチで16個の接触点、即ち合計64個の接触点が設けられた。これらの電気接触点は、1対1の対応で基板中央のマイクロ電極に接続された。
【0008】
これらの平板電極は以下のような仕方で作成された。例えば、ITO(インジウム錫酸化物)が供給され、基板として使用されるガラスプレートの表面に厚さ150nmの層を形成した。次いで、フォトレジストとエッチングにより導電性アレイを形成した。この層の上部にネガチブな感光性のポリイミドが供給されて厚さ約1.4μmの層を形成し、次いで、上面を覆う絶縁膜を形成した。次いで、ITO層を、マイクロ電極領域とその周辺部の電気接触点において、(厚さ15〜500nmの)ニッケルと(厚さ16〜50nmの)金で被覆した。次いで、内径22mm、外径26mm、高さ8mmの円筒形状の高分子物質(ポリスチレン等)のフレームを、シリコンの接着剤でガラスプレートの中央に取り付け、64個のマイクロ電極の中央部の周囲に細胞保持部を形成した。このポリスチレンのフレームの内部は、ヘキサクロロ白金酸、酢酸鉛、塩酸等を含む溶液で満たされる。適度の電流を与えて、マイクロ電極に白金黒金メッキを施した。
【0009】
二分割された保持部は、平板電極の端部を保持するためのアーム部を有する樹脂で成型されることがよくあった。また、保持部の上部は軸ピンにより回転可能とした。保持部の上部は典型的には16×4組の接触子を有する制御固定器具を備えた。上側保持部の接触子は平板電極の電気接触点に対応し、NiとAuで被覆されたBeCu等の金属製バネで形成した。
【0010】
上側保持部から突き出るピン部は、上側保持部から突き出る16個のピン部が2列のスタッガード(千鳥)状に交互に配置されている。このピン部は、外部との接続用にプリント回路基板上に設けられたコネクタに接続される。
【0011】
また、バネ接触子は上側保持部の底面から突き出している。これら全ての接触子が所定の接触圧力で平板電極と接触し、その結果、ごく小さい接触抵抗での電気接続を構成している。
【0012】
プリント回路基板は、平板電極と保持部のアセンブリ(組立部品)を固定するだけでなく、(コネクタを介して)外部との電気接続、即ち、平板電極のマイクロ電極を起点とし、導電性パターン及び電気接触点を介して接触子に至る電気接続も構成している。更に、プリント回路基板は、例えば、測定装置に設置する際に、操作手順を簡単にしている。
【0013】
プリント回路基板は、両面がパターン形成されるとともに、中央部に形成された円形開口部の周囲の4箇所にコネクタが設けられたガラスエポキシ基板を有する。
【0014】
通常、プリント回路基板は、両面コネクタ端部に電気接触点を備えた各側面に端部を有する。機械的な固定を確実にするために、上側保持部は、例えば、クランプを用いてプリント回路基板に固定することができる。
【0015】
上記構成の一体型細胞保持具を用いた細胞電位測定装置の構成は、一体型細胞保持具に置かれた細胞又は組織を光学的に観測するための倒立顕微鏡等の光学的観測装置を含む。システムは、細胞に刺激信号を与える装置と細胞からの出力信号を処理する装置を含む1つ以上のコンピュータを備えてもよい。最後に、装置は、細胞にとって適当な培養基を維持するための細胞培養手段を有してもよい。
【0016】
倒立顕微鏡に加えて、カメラも顕微鏡の代わりに使用または含むことができる。また、システムは画像ファイリング装置を備えてもよい。カメラはSITカメラであってもよい。SITカメラは、静電誘導トランジスタを撮像管に適用したカメラに用いられる一般的な用語であり、非常に感度の高いカメラの代表例である。
【0017】
コンピュータとしては、A/D変換基板と測定ソフトウェアを有する(例えば、WINDOWS(登録商標)と互換性のある)パソコンが代表的である。A/D変換基板はA/D変換器とD/A変換器を含む。A/D変換器は16ビットで64チャンネルを有し、D/A変換器は16ビットで8チャンネルを有する。
【0018】
初期のソフトウェアは、刺激信号を与えるのに必要な条件又は得られた検知信号の記録条件を決定するためのソフトウェアを含んでいた。このようなソフトウェアを用いることで、コンピュータは細胞に対する刺激信号を生成することができるとともに、組織又は細胞からの検出信号を処理することができ、また、光学的観測装置(SITカメラや画像ファイリング装置)や細胞培養手段を制御することが可能であった。
【0019】
初期のソフトウェアは、(例えば、コンピュータを用いて刺激波形を描くことにより)複雑な刺激条件が可能となるように、道理的な順応性があった。記録条件には、64個の入力チャンネル、10kHzのサンプリングレート、数時間以上に渡る連続記録が含まれていた。刺激信号を供給する電極及び検知信号の電極の選択は、例えば、手動で又はコンピュータのマウスやペンを用いて特定された。また、細胞培養液の温度やpHなどの種々の条件も表示することができた。
【0020】
ソフトウェアは、検知された自発的活動電位または誘発電位を、最大64チャンネルでリアルタイムで表示する記録画面を提供した。記録又は誘発された電位は組織又は細胞の顕微鏡画像の上部に表示された。誘発電位が測定されると、全記録波形が表示された。自発的活動電位が測定されると、自発的活動の発生がウインドウ識別装置又は波形識別装置を用いたスパイク波検知機能により検知された場合のみ、記録波形が表示された。記録波形が表示されると、記録時点での(例えば、刺激条件、記録条件、温度、pHなどの)測定パラメータが同時にリアルタイムで表示された。
【0021】
ソフトウェアは、例えば、FFT解析、コヒーレンス解析などのデータ解析又は他の解析ソフトウェアを含んでいた。更に、ソフトウェアは、波形識別装置を用いた単一のスパイク分離、一時的特性表示機能、トポグラフィー表示機能、電流源密度解析機能などの他の機能性を有していた。これらの解析結果は、画像ファイリング装置に記憶された顕微鏡画像の上部に表示することができた。
【0022】
上記構成のコンピュータから刺激信号が発せられると、刺激信号はD/A変換器とアイソレータを経由して細胞又は組織に供給された。マイクロ電極と接地レベル(培養液の電位)間に誘起する誘発電位は、(例えば、NIHON KODEN CO.,LTD.製の”AB−610J”などの)感光性増幅器の64チャンネルとA/D変換器を介してコンピュータに送電される。増幅器の増幅率は100dBであり、周波数帯は0〜10kHzであった。しかし、刺激信号による誘発電位が測定されると、周波数帯としては低周波遮断フィルタを用いて100Hz〜10kHzの帯域が選択された。
【0023】
組織または細胞培養の構成部品は、温度調整器、培養液用のサーキュレータ、空気と二酸化炭素の混合ガスの供給装置を備えていた。
【0024】
刺激信号の他の形体としては、人為要素を除去するため、即ち、DC成分が流れるのを防止するために、一組の正と負のパルスを有するバイポーラ(二極性)の定電圧パルスがあった。好ましい刺激信号は、100μ秒のパルス幅及び100μ秒の周期の正のパルスと100μ秒の負のパルスであった。正負のパルスのピーク電流は30〜200μAの範囲であった。
【0025】
細胞培養手段は、測定装置内に配置するこることで、長時間に渡って連続測定を行うことができた。又は、一体型細胞保持具は、測定装置とは独立して培養することを可能にした。
【0026】
上記の細胞電位測定装置を用いることで、神経細胞又は神経組織は一体型細胞保持具に載せられて培養され、神経細胞又は神経組織の活動に伴う電位の変化が測定された。
【0027】
このような装置とそれに対応するソフトウェアの順応性にもかかわらず、初期の装置では、高処理能力のサンプリングと適応試験様式の選択を全て行うことができる装置は存在しなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
細胞から電気生理記録を行うもっと高い処理能力の方法と装置を開発することは相当な努力が必要であった。これらの方法と装置は、数百又は数千もの合成物が細胞又は組織に対して電気生理的にテストされる薬の開発において、特に重要である。この分野での最近の開発は、平板電極を用いた高処理能力の全細胞クランピングと、ロボット工学を用いた自動パッチ・クランピングと、ロボット工学を用いた高処理能力の卵母細胞電圧クランピングを含む。これらの、所謂、細胞に基づく電気生理アッセイ(検定)は、薬開発の経路の初期段階を明確に促進するであろうが、組織に基づく(又は薄片の)生理機能は、無傷のままの組織における生理活動の影響を決定する必要があり、合成物の活動のメカニズムを理解する必要がある。分散した細胞は溶液として扱えるので、比較的操作が簡単である。細胞を転移するのに多種のディスペンサーが利用可能である。これに対して、神経組織及び薄片は操作が非常に困難であり、同等ではない。組織及び薄片の場合の特徴は、簡単な実験を行うにも熟練した生理学者が必要であり、また更に高い処理能力のシステムの開発を阻止している。
【0029】
平板電極アレイシステムの最近の開発により、例えば、電極の調整と刺激及び記録部位の検索などの工程を除くことで、あまり熟練していない研究者でも薄片の生理学的実験を幾分かは利用可能としている。しかし、システムを操作する1人の生理学者が通常必要である。
【0030】
ここに記載の装置と工程は、電極刺激部位のコンピュータ制御による切り換えを可能とするものである。以前のシステムでは、異なる部位から刺激することが可能なものであっても、物理的接続をある部位から他の部位に(ケーブル線又は同様のハードウェアを用いて)移動させるのに、人による操作が必要であった。この処理工程を図1に示す。
【0031】
図1に示すように、組織薄片の生理機能実験は3つの主要なステップ(1.)〜(3.)を有する。即ち、(1.)オペレータは多極プローブ上に選択された脳の薄片を載置する(1〜2秒)。(2.)オペレータとコンピュータは刺激部位を選択し、刺激パラメータを作成する(10秒)。このステップは下記の2つのサブステップ:(a.)ソフトウェアは脳の薄片を刺激し、データを補足して解析し、その結果をオペレータに表示することと、(b.)オペレータは薄片上の刺激部位に変化を起こして刺激パラメータを調整すること、を反復することより成る。(3.)最後に、実験が行われ、これには例えば60〜120秒の時間がかかる。
【0032】
薄片上の刺激部位と刺激パラメータが一旦設定されてしまうと、特化されたソフトウェアと専門のシステム技術を駆使して実験の実施を自動的に行うことができる。しかし、コンピュータ制御によるハードウェアが刺激部位を任意に選択することを可能にしなければ、上記ステップ(2.)を自動化することはできない。
【0033】
実際には、1人のオペレータだけで実施できる実験の数はステップ(1)と(2)を実行するのに要する時間の長さにより制限される。これを図2に示しており、図において、「O」は実験の装置に脳の薄片を物理的に配置する時間を表し、「C」は刺激部位を選定又は刺激パラメータを作成するのに要する時間を表し、「E」は実験を実行する時間を表している。図2に示すように、刺激部位とパラメータの選択はオペレータにより手動で行われる。このことは実験の処理能力を著しく阻害している。
【0034】
市販のシステムはいずれも上記刺激部位とパラメータの形成工程を自動化するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明は、電気生理情報をモニター(監視及び観察)するためのシステムであって、プローブ上に置かれた組織試料の複数の組織部位を監視及び刺激するための少なくとも1つの多極プローブを備える。システムは、更に、監視及び刺激されるべき組織部位を選択するように構成されたコントローラを備える。本発明の一形態では、コントローラは、監視及び刺激されるべき組織部位を自動的に選択するように構成されている。
【0036】
システムは、また、各プローブと接続された増幅器モジュールを備えてもよい。一形態では、増幅器モジュールは、前記組織部位から誘発された電気信号を増幅するように構成されている。別の形態では、増幅器モジュールは、接続されたプローブの電極に刺激信号を供給するように構成されている。これにより、増幅器はコントローラと組合せて機能し、プローブ及び電極を管理・操作することができる。
【0037】
コントローラは、広範な種類の刺激信号と組織部位を選択するように構成してもよい。一形態では、異なった電圧電位が組織部位に与えられる。別の形態では、一定の電圧電位が異なる組の電極に与えられる。刺激信号は、例えば、0.5〜2.5m秒などの所定の時間内で、第1の組織部位から第2の組織部位に切り換えることができる。刺激信号は、各刺激信号に対応して誘発された電気信号が別々に監視及び記録されるように時間変調してもよい。
【0038】
システムは、コントローラに接続されたコンピュータを更に備えてもよい。コンピュータは種々の機能を発揮することができ、代表的な機能としては、組織部位を自動的に選択して監視し、先に選択された刺激信号を一組の電極に付与するようにコントローラをプログラミングするように、コンピュータは構成されている。また、コンピュータは、監視された組織部位から発生した電気信号を受信し、記録することもできる。このような信号は、殆ど(又は全く)電気的刺激を受けていない組織部位から発生している内発的な活動信号とともに、刺激されている組織部位から誘発された電気信号も含んでいる。実際、電気的な活動を示さない組織部位が観察されることがあり得る。
【0039】
プローブの大きさと構造は種々に変形可能である。一変形例では、プローブは平坦な底部を有する穴部を有する。穴部は、ネズミの脳組織の薄片などの組織薄片を含むように構成されている。底部は複数の電極を支持している。各プローブには16個より多く、又は恐らく64個より多くの電極を備えることができる。更に、多数の実験を並列に実施できるように、多数のプローブをコントローラに接続してもよい。
【0040】
電気生理情報を監視するための方法は、(a)複数の電極を備えたプローブ上に組織試料を載置し、(b)前記組織の電気的活動(アクティビティ)を監視するために第1の組の電極を選択し、(c)前記組織の電気的活動を監視するために第2の組の電極を自動選択し、(d)前記電気的活動を監視する、工程を備える。組織は哺乳動物の脳の薄片などの組織薄片であってもよい。
【0041】
本発明の一形態では、前記方法は、更に、刺激信号で刺激すべき組織部位を選択する工程を有する。刺激信号は変化してもよいし同一であってもよい。また、刺激信号を受ける組織部位又は箇所は変えてもよい。第2の刺激信号を与える前、与えるのと同時、又は与えた後で、第1の刺激信号を供給してもよい。一形態では、少なくとも64種類の刺激信号が組織試料の異なる部位に順次供給される。
【0042】
監視するための電極を選択する工程は、コントローラを用いて実行することができる。コントローラは、また、刺激信号を選択するとともに、刺激すべき組織部位を選択するように構成することも可能である。
【0043】
前記方法は、モニターされた各信号を増幅する工程を更に有してもよい。選択された刺激信号をプローブの選択された電極に供給するとともに誘発信号を増幅するために、増幅器モジュールを設けることもできる。
【0044】
一方法では、組織試料は、コントローラで集約的に管理される複数の多要素プローブ内に配置される。前記増幅器モジュールは各プローブを管理するために設けてもよい。増幅器モジュールは、コントローラで選択された刺激信号を、各プローブ及び該プローブの各電極に供給する。このようにして、複数の組織試料は並列且つ自動的に識別される。
【0045】
また別の電気生理情報監視システムは、組織試料の1つ以上の組織部位の電気的活動を監視するための少なくとも1つのプローブ手段と、プローブ手段に接続された制御手段を有する。通常、プローブ手段は複数の多極体を備える。制御手段は、組織部位を監視するために電極を自動選択するように構成されている。制御手段はまた、プローブ手段に送付すべき電気刺激信号を選択するように構成することもできる。また、各マイクロ電極から検知された電気信号を増幅できるように、各プローブ手段毎に増幅器手段を設けてもよい。増幅器手段はまた、刺激信号をコントローラからプローブ手段のマイクロ電極に供給するように構成してもよい。システムはまた、組織部位を監視及び刺激する指令を制御手段に供給するために、制御手段に接続されたコンピュータを備えることもできる。コンピュータはまた、モニターされている組織部位からの電気信号を監視及び/又は記録するように構成してもよい。
【0046】
本発明のまた別の形態では、電気生理情報監視用システムは、各プローブが組織薄片を保持するように構成された複数のプローブを備える。プローブは、組織薄片がプローブに配置されたとき、組織薄片の組織部位の電気的活動を監視することができる複数の電極を備える。システムは、更に、各プローブ毎に子増幅器モジュールを有する。子増幅器モジュールは、組織部位から誘起又は誘発された信号を増幅するように構成されている。システムは更に、子増幅器を制御するように構成された複数の子コントローラを含む。主コントローラは、全ての子コントローラを管理するように構成されている。
【0047】
本発明の態様は変形可能である。即ち、プローブは少なくとも16個の電極を有してもよい。他の変形例では、プローブは少なくとも64個の電極を有する。システムはまた、各子コントローラ毎に4〜10個のプローブを有してもよい。
【0048】
一体型ハウジングにコントローラと増幅器を含めることも可能である。しかし、プローブは典型的にはハウジングとは別体構成である。また、コンピュータを主コントローラに接続してもよい。コンピュータは、どの組織部位をモニターすべきかの決定とともに、電気的刺激信号を選択する指示を、主コントローラに与えるように構成されている。コントローラは刺激信号を時間多重化するように構成してもよい。このようにして、多数の組織試料の実験が並列的に実施できるとともに、同時に分析することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
ここで記載するシステムとそれを使用した処理工程は、多極プローブ上に置かれた組織薄片の電気生理活動をモニターするために、コンピュータと多極プローブ間にコントローラを配置することを中心に説明する。特に、コントローラは電極を切り換え(又は、選択)することで、組織薄片の様々な組織部位における電気的活動(アクティビティ)を検知する。コントローラは、また、1つ以上の電極を刺激信号で励起することで、対応する組織部位を刺激するように構成することもできる。コンピュータは、典型的には、コントローラに選択及び切り換え処理動作を実行させる指令を与えるか又はプログラミング設定するのに使用される。また、神経組織で生成された信号が低レベルであるので、増幅器モジュールを各プローブとコントローラ間に挿入して、組織から誘起する信号の増幅して、必要な条件を満たすことが好ましい。
【0050】
図3は、コントローラを用い、アナライザとオペレータが所望の特殊な分析に基づいて好適な薄片位置とパラメータを選択するのをコンピュータにより支援することを可能とする仕方を示すブロック図である。コントローラは、オペレータからの入力操作を必要としないで、モニターされる組織部位、即ち、刺激が与えられる組織部位を選択する。
【0051】
図4に示すように、コントローラを用いて測定すべき特定のプローブを選択すると共に、ソフトウェアによりこの特定のプローブを測定し、比較し、選択(すべきか否か)決定し、また、必要に応じて特定部位の刺激パラメータを適用することで、図2に示すマニュアル学習と選択工程を削除することができる。特に、図4は、一連の実験が行われる状況では、オペレータ又は技術者は単に初期設定を行うのみである。このような種類の実験では、実験を設定するのに必要とされたオペレータの経験的な熟練が実質的に軽減される。
【0052】
例えば、準備段階中に人為的介在を必要とする図1に示す装置を使用した場合、脳の薄片を実験装置台に物理的に載置するのに平均1分の時間がかかり、刺激部位を選択して刺激パラメータを生成するのに平均10分の時間がかかると仮定すると、一人の技術者が開始できる実験数は1時間当たり高々6である。これに対して、図3と4に示すシステムを使用すると、図4の「O」で示す多要素プローブの正確な場所に脳の薄片を配置する工程は、技術者が時間を抑制できる工程であるので、1時間当たり60の実験を開始することが理論的には可能となる。
【0053】
上述の方法と装置を使用するだけで、高度に複雑で精巧なプロトコルを実現することが更に可能となる。例えば、数箇所の独立した部位を刺激することが必要な場合など、複雑な刺激パターンを必要とするようなプロトコルの設計は、刺激と刺激の間の僅かな時間遅延があるだけで実現可能である。初期の多極型生理組織モニターシステムでは、刺激部位を設定するのに人間のオペレータが必要であるので、刺激間の時間を最短とすることは、ある部位から他の部位に実際に切り換えを人為的に行う速度により制約されている。これに対して、前述の装置と方法を用いることで、切り換え動作はミリ秒単位で実行されるので、神経組織は僅かな時間内に異なる部位から刺激されると、神経組織の誘発された反応(レスポンス)を観測することが可能となる。このような脳の自然現象が脳内の自然な事象の時間制約内に起こるので、現実の挙動を研究するためには、同一の複雑な刺激パターンを模造できることが重要である。
【0054】
上述の処理手順とハードウェアを使用することで、ハードウェア素子の数を削減することにより多極型実験において高処理能力を達成する経費を顕著に低減することができる。図1に示す処理手順を用いた従来構成では、N×Nの独立したシステムの要素により処理能力を高めるために、何人かの技術者を必要とするとともに、各システムはコンピュータと、増幅器と、更に付加的装置を必要とする。これに対して、図3と4に対応する処理手順と設計を使用する場合、単一のコンピュータと簡単なモジュールを必要とするだけで、これら全ては一人の技術者により管理される可能性があり、複雑さとコストを削減している。
【0055】
例えば、適用量応答(ドーセジ・レスポンス)による調査などの多数実験による調査は、例えば、前述の処理手順と装置を使用する1つのシステムで数個の実験を行った結果を組み合わせて、各実験を複数の実験結果の関数として再構成することにより、最適にすることができる。
【0056】
現在の装置と処理手順を用い、処理能力が従来のままの基本的システムは、多極配列("MED-Probe")と、アナログ増幅器("MED-amplifier")と、A/D変換器("A/D converter")及び好適なソフトウェアを含むコンピュータとを備える。
【0057】
ここで記載のシステムは、2個の基本ハードウェア素子、即ち、DS−MEDコントローラと各プローブに対応して専用のDS−MED増幅器モジュールを備える。DS−MED増幅器モジュールは、信号を受信、配信及び/又はコンディショニング(条件付け)するための多回線と基板を備えた増幅装置であってもよい。
【0058】
DS−MEDコントローラはシステム増幅器に接続され、該システム増幅器に直接接続されたMEDプローブの動作をエミュレートする。コントローラはまた2本のバス、即ち、制御バスラインとアナログ信号バスラインにも接続されている。コントローラが例えば8個のチャンネル間で切り換えを行う場合は、切り換えられた各チャンネルは各プローブのDS−MED増幅器モジュールを含むことになる。制御バスは、DS−MEDコントローラによりアクセスされた中からプローブ即ちチャンネルを選択する。このような選択が一旦成されると、プローブで発生された信号は当該チャンネルのDS−MED増幅器モジュールで増幅され、この増幅信号はアナログ信号バスを通り、DS−MEDコントローラ及びMED−AMPLIFIER即ちシステム増幅器を通過してコンピュータに送信される。制御バスとアナログ信号バスは共に、アクセスされた各DS−MED増幅器モジュールを共有している。これら制御バスと信号バスに接続されていることに加えて、増幅器モジュールはMEDプローブに直接接続されている。図5Aに示すように、各増幅器モジュールは対応する1つのプローブだけを管理している。
【0059】
更に、各プローブは複数の電極を含む。電極はプローブ上又はプローブ内に配置された組織薄片の電気的アクティビティ(活動)を検知する。電極又は組織部位は、例えば、刺激信号を電極に送信することで、励起/刺激される。例えば、電圧電位を2個以上の電極間に印加してもよい。DS−MEDコントローラは、モニターおよび励起すべき電極を自動的に選択するように構成することができる。このようにして、実験のための電極モニター及び刺激パラメータを比較的迅速に形成することができる。更に、複数のプローブを1つのコントローラとコンピュータに接続することにより、多数の組織薄片の実験を構成して、例えば、時間多重化ソフトウェアを使用して並列的に実験を行うことができる。
【0060】
更に複雑な構成では、1つ以上の姉妹(子)増幅器を管理する主増幅器を使用し、該姉妹(子)増幅器を一群の増幅器に順次接続する等のように構成することもできる。このようにして、複数のコントローラとプローブの階層構造を構築することができる。図5Bは多重レベル(多層)のDS−MED構成の一例を示す。
【0061】
DS−MEDコントローラと増幅器モジュールの更に詳細について次に説明する。
【0062】
DS−MEDコントローラ
図6に示すDS−MEDコントローラは10個の回路構成、即ち、1つのデジタルマザーボード(母板)と、1つのアナログマザーボードと、8個の同一の8電極構成のフィルタバンク・ドーターボード(姉妹板)を含む。そのハードウェアのブロック図を図6に示す。
【0063】
デジタルマザーボードは、DS−MED増幅器モジュールを制御するために低レベルのプログラムを実行するマイクロプロセッサを含み、該増幅器モジュールは、コンピュータで実行されるDS−MEDソフトウェアと交信するとともに、制御バス及びアナログ信号バスに接続されている。マイクロプロセッサは、制御バスを介してDS−MED増幅器モジュールに、コマンドと、アドレスと、オペランドを送信する。また、マイクロプロセッサは、コンピュータとの交信を管理するとともに、DS−MED増幅器モジュールに送信されたコマンドをコンピュータにより実行する。これらのコマンドは、(1)個々のDS−MED増幅器モジュールを形成するため、(2)利用できる(例えば4つ以上の)刺激発生源の1つを選択するため、(3)8個の8電極構成のドーターボード上の特定の高周波フィルタを選択するため、に使用される。図6に示すように、直列ポートと、クロックと、刺激選択回路装置も、DS−MEDコントローラ内に含めることもできる。
【0064】
最後に、コントローラ内にインターフェースを備えることで、マイクロプロセッサにおいて実行すべき新バージョンの低レベルプログラムをダウンロードすることを可能にし、これにより、特定のDS−MEDコントローラ及び通常のDS−MED構成の機能性を再プログラムし、拡張することを可能にする。その回路構成の一例を図7(図7A〜7E)に示す。
【0065】
アナログマザーボードは、アナログ信号バスと8電極構成のドーターボードへの入力端子間、及び、これらの出力端子とMED又はシステム増幅器へのコネクタ間に、上記インターフェースを備える。
【0066】
8個の8電極構成のドーターボードは各々一組の高周波フィルタとコンディショニング増幅器を各電極毎に1組ずつ備えてもよい。該フィルタは、A/Dデータ取得カードが電気生理信号を二段(副次)抽出することを可能とするために使用され、これにより、各実験毎に記憶すべきデータ量を削減している。コンディショニング増幅器は、アナログ信号の電気特性をMED増幅器の必要条件に一致させることを可能にする。その回路構成例を図8A(8A1〜8A3)及び図8Bに示す。
【0067】
DS−MED増幅器
図9に示すDS−MED増幅器モジュールは、10個の回路構成、即ち、1つのデジタルマザーボードと、1つのアナログマザーボードと、8個のドーターボードを有することができる。図9は1つのDS−MED増幅器のブロック図を示す。
【0068】
DS−MED増幅器モジュールのデジタルマザーボードは、典型的には、(1)各増幅器を独特のものとして識別するため、(2)コントローラから送信されたアドレスを復号化するため、(3)コントローラからの読み出し・書き込みコマンドに応答するため、(4)プローブの状態を維持するため、(5)刺激信号をそれぞれ対応するドーターボードを介して(例えば64個の)電極に配信するため、の回路構成を備えている。対応する回路図を図10(10A〜10G)に示す。
【0069】
DS−MED増幅器モジュールのアナログマザーボードは、典型的には、MEDプローブと8電極構成のドーターボードへの入力端子間、及び、これらの出力端子とアナログ信号バス間に、インターフェースを備える。
【0070】
8電極構成のドーターボードは、MEDプローブから入力するアナログ信号を顕著な歪みを生じることなくアナログ信号バスに転送するために条件付けするヘッドアンプバンクを含む。各電極が記録用または刺激用電極として機能し、刺激信号をプローブに転送できるための回路構成も存在する。そのような回路図を図11(11A〜11C)乃至図12に示す。
【0071】
上述したDS−MED構成は多くの利点及び利益をもたらす。上記処理手順は例えば構成規模を融通性のあるものとすることができる。即ち、広範な種類のシステムが、上記装置及び処理手順を用いることにより可能となる。例えば、上記装置は、単一のプローブ、又はN個のプローブを有する1次元構成のシステム、又は例えば、コントローラが数個の1次元構成のシステムを管理する2次元構成のシステムであって、各1次元構成のシステムが数個のプローブを有する2次元構成の更に複雑なシステムを構築するように使用することもできる。上記システムは、また、モジュール方式を提供することもできる。上記の構成要素を組み合わせることにより、単一のコンピュータで制御される任意の数のプローブを有する1つのシステム、又は、各々がもっと少ない個数のプローブを有するとともに、各々が単一のコンピュータに接続された数個のシステムを構築することができる。このシステムは、更に、複数(例えば4個)のMED増幅器刺激装置の1つを自動選択することと、刺激の対象部位として複数(例えば64個)のMEDプローブ電極の1つを自動選択することも可能としている。更に、ソフトウェアの制御下で操作される利用可能なMEDプローブを時間多重化にて使用することにより、全ての実験を同時に実施することができる。
【0072】
ここで記載の処理手順及びシステムを実行するための好適なソフトウェアは、当業者に公知又はすでに開発済みである。ソフトウェアは、モニター及び活性化すべき電極と組織部位の選択を制御する便利なユーザインターフェースを提供することが好ましい。例えば、ソフトウェアは、種々の刺激信号で各部位及び全ての部位を刺激するとともに、各部位及び全ての部位を任意にモニターする処理手順を実行することもできる。ソフトウェアは、また、情報の記録及び解析を容易にするものであることも好ましい。例えば、ソフトウェアは、測定された信号の値とスレッショールド(閾値)とを比較するアルゴリズムを実行するものでもよい。更に別の好適なソフトウェアとして、ここで記載のハードウェアを用いて使用可能なものとすることもできる。
【0073】
本発明のシステムと方法は、更に他の利点と利益をもたらすものである。本発明は、その精神又は基本的特徴から逸脱することなく、他の形態で実施することも可能である。ここで記載した実施形態は、単に図示により例示したもので、本発明はこれらに限定するものではないと。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲に記載された内容として開示され、本発明の請求の範囲と同等の技術内容に基づく変形はすべて本発明に含まれると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】実際の実験が開始される前に、オペレータがシステムの設定を変化させることを示す初期の多極システムの工程を示すブロック図である。
【図2】実際に実験を開始する前に、オペレータが刺激部位と刺激パラメータを構成及び再構成すべき手順を示す図である。
【図3】刺激部位の選択と刺激パラメータの構築を自動的に行うコントローラを有する多極システムの工程を示すブロック図である。
【図4】実際に実験を開始する前に、刺激部位と刺激パラメータを自動的に構築する手順を示す図である。
【図5A】多電極装置構成のブロック図である。
【図5B】2段階レベルのコントローラを有する多電極装置構成のブロック図である。
【図6】上記コントローラのブロック図である。
【図7】図7の割付けである。
【図7A】上記コントローラのデジタルマザーボードの例示回路図である。
【図7B】上記コントローラのデジタルマザーボードの例示回路図である。
【図7C】上記コントローラのデジタルマザーボードの例示回路図である。
【図7D】上記コントローラのデジタルマザーボードの例示回路図である。
【図7E】上記コントローラのデジタルマザーボードの例示回路図である。
【図8A】図8Aの割付けである。
【図8A−1】上記コントローラのドーターボードの例示回路図である。
【図8A−2】上記コントローラのドーターボードの例示回路図である。
【図8A−3】上記コントローラのドーターボードの例示回路図である。
【図8B】上記コントローラのドーターボードの例示回路図である。
【図9】増幅器モジュールのブロック図である。
【図10】図10の割付けである。
【図10A】増幅器のデジタルマザーボードの例示回路図である。
【図10B】増幅器のデジタルマザーボードの例示回路図である。
【図10C】増幅器のデジタルマザーボードの例示回路図である。
【図10D】増幅器のデジタルマザーボードの例示回路図である。
【図10E】増幅器のデジタルマザーボードの例示回路図である。
【図10F】増幅器のデジタルマザーボードの例示回路図である。
【図10G】増幅器のデジタルマザーボードの例示回路図である。
【図11】図11の割付けである。
【図11A】増幅器のドーターボードの例示回路図である。
【図11B】増幅器のドーターボードの例示回路図である。
【図11C】増幅器のドーターボードの例示回路図である。
【図12】増幅器のドーターボードの例示回路図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気生理情報をモニターするためのシステムであって、
プローブ上に置かれた組織試料の複数の組織部位の電気的活動をモニターするために複数の電極を備えた少なくとも1つのプローブと、
1つ以上の組織部位における電気的活動をモニターするための前記複数電極の少なくとも1つを選択するように構成されたコントローラを備えたことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記コントローラは、更に、前記複数の組織部位の少なくとも1つを刺激するために、前記複数の電極の少なくとも1つに刺激信号を与えるように構成された請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
各プローブと接続され、前記組織部位から誘発された電気信号を増幅するように構成された増幅器モジュールを有する請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記増幅器モジュールは、更に、前記少なくとも1つのプローブの電極に前記刺激信号を供給するように構成された請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記コントローラに接続され、該コントローラがモニターすべき組織部位を自動的に選択し、選択された刺激信号を前記組織部位に供給するように前記コントローラをプログラミングするコンピュータを、更に備えた請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、第1の組の電極間に供給される第1の電位を選択し、所定の時間内に、前記第1の組の電極間に供給される前記第1の電位と異なる第2の電位を選択する請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の組の電極は一組の電極である請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記所定の時間は1ミリ秒である請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラは第1の組の電極間に供給される第1の電圧電位を選択し、引き続いて前記第1の組の電極と異なる第2の組の電極間に供給される前記第1の電圧電位を選択する請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記プローブは少なくとも64個の電極を備える請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記プローブを複数個有する請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記刺激信号は、各組織部位に対応して誘発された電気信号を別々にモニターできるように時間変調されている請求項2に記載のシステム。
【請求項13】
前記プローブは平坦な底部を有する穴部を有し、前記底部は前記複数の電極を備える請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
組織試料からの電気生理情報をモニターするための方法であって、
(a)複数の電極を備えたプローブ上に組織試料を載置し、
(b)前記組織の電気信号をモニターするために第1の組の電極を選択し、
(c)前記組織の電気信号をモニターするために第2の組の電極を自動選択し、
(c)前記電気信号をモニターする、
工程を備えたことを特徴とする方法。
【請求項15】
刺激信号が前記組織に供給されるように、第1の組の電極を選択して電気的に励起する工程を更に有する請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第2の組の電極を選択して電気的に励起する工程を更に有する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
励起されるべき前記第1及び第2の組の電極が同一の刺激信号で励起される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
励起されるべき前記第1及び第2の組の電極が異なる刺激信号で励起される請求項17に記載の方法。
【請求項19】
励起されるべき前記第1及び第2の組の電極が順次励起される請求項17に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも64種類の刺激信号を前記プローブの異なる組の電極に順次供給する工程を有する請求項19に記載の方法。
【請求項21】
モニターされている電極で検知された電気信号を増幅する工程を更に有する請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記プローブは16個以上の電極を有する請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記増幅は増幅器モジュールによって行われ、該増幅器モジュールはまた刺激信号を前記電極に供給するように構成されている請求項21に記載の方法。
【請求項24】
コントローラが前記増幅器モジュールを構成し、該増幅器モジュールに供給される刺激信号を制御する請求項23に記載の方法。
【請求項25】
コントローラが前記組織試料の複数の組織部位を自動的にモニターして刺激を実行する指令を、コンピュータからコントローラに対して与える請求項24に記載の方法。
【請求項26】
複数のプローブの各々が組織試料を含む請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記組織試料が組織薄片である請求項26に記載の方法。
【請求項28】
励起されるべき前記第1の組の電極は、少なくとも2個の電極間に電位を供給することにより励起される請求項15に記載の方法。
【請求項29】
電気生理情報のモニターシステムであって、
組織薄片を保持するとともに、該組織薄片の1つ以上の組織部位の電気的活動をモニターするための少なくとも1つのプローブ手段と、
前記少なくとも1つのプローブ手段に接続され、モニターすべき組織部位を選択するための制御手段を備えたことを特徴とするシステム。
【請求項30】
前記制御手段は、更に、電気的刺激信号を自動選択し、前記少なくとも1つのプローブ手段に送信するように構成された請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
各プローブ手段の増幅器手段であって、前記制御手段とプローブ手段の間に接続され、各組織部位から発生された電気信号を増幅するように構成された増幅器手段を更に備えた請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記増幅器手段は、更に、前記プローブ手段の少なくとも1つの電極に前記刺激信号を自動的に供給するように構成された請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記プローブ手段は少なくとも64個の電極を有する請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記組織から電気信号を誘発するために、刺激信号が前記電極に順次送信される請求項32に記載のシステム。
【請求項35】
前記制御手段に接続され、前記刺激信号を選択するために該制御手段に指令を与えるとともに、各組織部位から誘発された前記電気信号を記録するように構成されたコンピュータを更に備えた請求項32に記載のシステム。
【請求項36】
複数のプローブを有する請求項32に記載のシステム。
【請求項37】
電気生理情報をモニターするためのシステムであって、
各プローブが組織薄片を保持するように構成されるとともに、各プローブ手段が組織薄片の電気的活動をモニターするために複数の電極を備えた複数のプローブと、
各プローブのためのドーター増幅器モジュールであって、その各々が前記電極で検知された信号を増幅するように構成されたドーター増幅器モジュールと、
各々が1つ以上のドーター増幅器を制御するように構成された複数のドーターコントローラと、
前記ドーターコントローラを制御し、モニター及び励起すべき電極を選択するように構成された主要コントローラと、
前記主要コントローラに指令を与え、複数の組織薄片の電気的活動をモニターするように前記コンピュータに送信された情報を記録するためのコンピュータ、
を備えたことを特徴とするシステム。
【請求項38】
前記各ドーターコントローラのための主要増幅器モジュールであって、前記主要コントローラにより構成されるとともに、対応するドーターコントローラを管理するための主要増幅器モジュールを更に有する請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記プローブは少なくとも16個のマイクロ電極を有する請求項37に記載のシステム。
【請求項40】
4乃至10個のドーターコントローラを有する請求項37に記載のシステム。
【請求項41】
4乃至10個のプローブを有する請求項39に記載のシステム。
【請求項42】
前記主要コントローラと、前記主要増幅器モジュールと、前記ドーターコントローラと、前記ドーター増幅器モジュールを含む一体型ハウジングを有する請求項38に記載のシステム。
【請求項43】
前記主要コントローラは、時分割多重化により、組織薄片を電気的に刺激し、モニターするように構成されている請求項37に記載のシステム。
【請求項1】
電気生理情報をモニターするためのシステムであって、
プローブ上に置かれた組織試料の複数の組織部位の電気的活動をモニターするために複数の電極を備えた少なくとも1つのプローブと、
1つ以上の組織部位における電気的活動をモニターするための前記複数電極の少なくとも1つを選択するように構成されたコントローラを備えたことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記コントローラは、更に、前記複数の組織部位の少なくとも1つを刺激するために、前記複数の電極の少なくとも1つに刺激信号を与えるように構成された請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
各プローブと接続され、前記組織部位から誘発された電気信号を増幅するように構成された増幅器モジュールを有する請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記増幅器モジュールは、更に、前記少なくとも1つのプローブの電極に前記刺激信号を供給するように構成された請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記コントローラに接続され、該コントローラがモニターすべき組織部位を自動的に選択し、選択された刺激信号を前記組織部位に供給するように前記コントローラをプログラミングするコンピュータを、更に備えた請求項2に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、第1の組の電極間に供給される第1の電位を選択し、所定の時間内に、前記第1の組の電極間に供給される前記第1の電位と異なる第2の電位を選択する請求項2に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の組の電極は一組の電極である請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記所定の時間は1ミリ秒である請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラは第1の組の電極間に供給される第1の電圧電位を選択し、引き続いて前記第1の組の電極と異なる第2の組の電極間に供給される前記第1の電圧電位を選択する請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記プローブは少なくとも64個の電極を備える請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記プローブを複数個有する請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記刺激信号は、各組織部位に対応して誘発された電気信号を別々にモニターできるように時間変調されている請求項2に記載のシステム。
【請求項13】
前記プローブは平坦な底部を有する穴部を有し、前記底部は前記複数の電極を備える請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
組織試料からの電気生理情報をモニターするための方法であって、
(a)複数の電極を備えたプローブ上に組織試料を載置し、
(b)前記組織の電気信号をモニターするために第1の組の電極を選択し、
(c)前記組織の電気信号をモニターするために第2の組の電極を自動選択し、
(c)前記電気信号をモニターする、
工程を備えたことを特徴とする方法。
【請求項15】
刺激信号が前記組織に供給されるように、第1の組の電極を選択して電気的に励起する工程を更に有する請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第2の組の電極を選択して電気的に励起する工程を更に有する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
励起されるべき前記第1及び第2の組の電極が同一の刺激信号で励起される請求項16に記載の方法。
【請求項18】
励起されるべき前記第1及び第2の組の電極が異なる刺激信号で励起される請求項17に記載の方法。
【請求項19】
励起されるべき前記第1及び第2の組の電極が順次励起される請求項17に記載の方法。
【請求項20】
少なくとも64種類の刺激信号を前記プローブの異なる組の電極に順次供給する工程を有する請求項19に記載の方法。
【請求項21】
モニターされている電極で検知された電気信号を増幅する工程を更に有する請求項14に記載の方法。
【請求項22】
前記プローブは16個以上の電極を有する請求項14に記載の方法。
【請求項23】
前記増幅は増幅器モジュールによって行われ、該増幅器モジュールはまた刺激信号を前記電極に供給するように構成されている請求項21に記載の方法。
【請求項24】
コントローラが前記増幅器モジュールを構成し、該増幅器モジュールに供給される刺激信号を制御する請求項23に記載の方法。
【請求項25】
コントローラが前記組織試料の複数の組織部位を自動的にモニターして刺激を実行する指令を、コンピュータからコントローラに対して与える請求項24に記載の方法。
【請求項26】
複数のプローブの各々が組織試料を含む請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記組織試料が組織薄片である請求項26に記載の方法。
【請求項28】
励起されるべき前記第1の組の電極は、少なくとも2個の電極間に電位を供給することにより励起される請求項15に記載の方法。
【請求項29】
電気生理情報のモニターシステムであって、
組織薄片を保持するとともに、該組織薄片の1つ以上の組織部位の電気的活動をモニターするための少なくとも1つのプローブ手段と、
前記少なくとも1つのプローブ手段に接続され、モニターすべき組織部位を選択するための制御手段を備えたことを特徴とするシステム。
【請求項30】
前記制御手段は、更に、電気的刺激信号を自動選択し、前記少なくとも1つのプローブ手段に送信するように構成された請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
各プローブ手段の増幅器手段であって、前記制御手段とプローブ手段の間に接続され、各組織部位から発生された電気信号を増幅するように構成された増幅器手段を更に備えた請求項30に記載のシステム。
【請求項32】
前記増幅器手段は、更に、前記プローブ手段の少なくとも1つの電極に前記刺激信号を自動的に供給するように構成された請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記プローブ手段は少なくとも64個の電極を有する請求項32に記載のシステム。
【請求項34】
前記組織から電気信号を誘発するために、刺激信号が前記電極に順次送信される請求項32に記載のシステム。
【請求項35】
前記制御手段に接続され、前記刺激信号を選択するために該制御手段に指令を与えるとともに、各組織部位から誘発された前記電気信号を記録するように構成されたコンピュータを更に備えた請求項32に記載のシステム。
【請求項36】
複数のプローブを有する請求項32に記載のシステム。
【請求項37】
電気生理情報をモニターするためのシステムであって、
各プローブが組織薄片を保持するように構成されるとともに、各プローブ手段が組織薄片の電気的活動をモニターするために複数の電極を備えた複数のプローブと、
各プローブのためのドーター増幅器モジュールであって、その各々が前記電極で検知された信号を増幅するように構成されたドーター増幅器モジュールと、
各々が1つ以上のドーター増幅器を制御するように構成された複数のドーターコントローラと、
前記ドーターコントローラを制御し、モニター及び励起すべき電極を選択するように構成された主要コントローラと、
前記主要コントローラに指令を与え、複数の組織薄片の電気的活動をモニターするように前記コンピュータに送信された情報を記録するためのコンピュータ、
を備えたことを特徴とするシステム。
【請求項38】
前記各ドーターコントローラのための主要増幅器モジュールであって、前記主要コントローラにより構成されるとともに、対応するドーターコントローラを管理するための主要増幅器モジュールを更に有する請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記プローブは少なくとも16個のマイクロ電極を有する請求項37に記載のシステム。
【請求項40】
4乃至10個のドーターコントローラを有する請求項37に記載のシステム。
【請求項41】
4乃至10個のプローブを有する請求項39に記載のシステム。
【請求項42】
前記主要コントローラと、前記主要増幅器モジュールと、前記ドーターコントローラと、前記ドーター増幅器モジュールを含む一体型ハウジングを有する請求項38に記載のシステム。
【請求項43】
前記主要コントローラは、時分割多重化により、組織薄片を電気的に刺激し、モニターするように構成されている請求項37に記載のシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図8A】
【図8A−1】
【図8A−2】
【図8A−3】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図10F】
【図10G】
【図11】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図8A】
【図8A−1】
【図8A−2】
【図8A−3】
【図8B】
【図9】
【図10】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図10F】
【図10G】
【図11】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【公表番号】特表2007−535345(P2007−535345A)
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505112(P2007−505112)
【出願日】平成17年3月21日(2005.3.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/009569
【国際公開番号】WO2005/094476
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月21日(2005.3.21)
【国際出願番号】PCT/US2005/009569
【国際公開番号】WO2005/094476
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]