説明

高分子アクチュエータ及びその製造方法

【課題】 特に、良好な電極特性を備えるとともに、従来に比べて応答性を向上でき、また、簡単に電極層を基板から剥離できる高分子アクチュエータ及びその製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】 電解質層11と、前記電解質層11の厚さ方向の両面に設けられた、導電フィラーを含んでなる一対の電極層12,13を有し、前記一対の電極層12,13間に電圧を付与すると変形する高分子アクチュエータにおいて、電極層12,13は導電フィラーの密度が低い低密度導電層20,22と導電フィラーの密度が高い高密度導電層21,23との積層構造であり、高密度導電層21,23と電解質層11との間に低密度導電層20,22が介在する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極層間に電位差を与えると変形を生じるアクチュエータに係り、特に、電極層の構成を改良した高分子アクチュエータ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に示すように、イオン液体を含む電解質層と、電解質層の両面に電極層とを有して構成された高分子アクチュエータが知られている。
【0003】
電極層は、カーボンナノチューブ及びイオン液体を含有したゲル状で構成される。
電極層間に電位差が生じると、イオンが移動し、電極層が伸縮して、高分子アクチュエータが変形する。
【0004】
ところで、電極層は、電極層間に電位差を与えたときに、イオンを電極層側に多く且つ強く引き付けることが出来る電極特性を備えることが、アクチュエータ特性を向上させる上で重要と考えられた。
【0005】
そして、電極層に含まれるカーボンナノチューブの密度を高くすることで、上記した電極特性を向上できると期待されたが、電極層に引き付けられたイオンが電極層と電解質層との界面から外面方向に向けて電極層の内部にスムーズに移動できなくなり、その結果、応答性(応答速度)が低下する問題があった。
【0006】
また、電極層を基板上に形成し、この電極層を基板から剥離するとき、カーボンナノチューブの密度が高いと、電極層と基板間の密着性が良くなった。また、カーボンナノチューブの密度が高い電極層は剛性が高く脆いため、上記した密着性と合わせて、簡単且つ適切に電極層を基板から剥離できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−176428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで本発明は、上記従来の課題を解決するためのものであり、特に、良好な電極特性を備えるとともに、従来に比べて応答性を向上でき、また、簡単に電極層を基板から剥離できる高分子アクチュエータ及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電解質層と、前記電解質層の厚さ方向の両面に設けられた、導電フィラーを含んでなる一対の電極層を有し、前記一対の電極層間に電圧を付与すると変形する高分子アクチュエータにおいて、
前記一対の電極層のうちの少なくとも一方に含まれる導電フィラーの密度は、前記電解質層との界面側で低く、前記界面と反対側の外面側で高くなっていることを特徴とするものである。
【0010】
これにより、電極層間に電圧を付与したときに、イオンを、電極層と電解質層との界面から外面方向に向けて電極層内部でスムーズに移動させることができ、良好な電極特性を備えるとともに、応答性(応答速度)を向上させることができる。
【0011】
本発明では、例えば、前記界面側にアスペクト比が小さい前記導電フィラーが添加され、前記外面側に前記アスペクト比が大きい前記導電フィラーが添加される。あるいは、前記導電フィラーの単位体積あたりの含有量は、前記界面側で少なく、前記外面側で多くなっている。これにより、適切且つ簡単に、導電フィラーの密度を、電解質層との界面側で低く、外面側で高くできる。
【0012】
本発明では、前記導電フィラーの密度は、前記界面側から前記外面側に向けて連続的にあるいは段階的に高くなっていることが好ましい。
【0013】
また本発明では、例えば、前記電極層は、前記導電フィラーの密度が異なる複数の導電層を積層した構成である。
【0014】
また本発明では、前記導電フィラーは、カーボンナノチューブであることが好ましい。
本発明は、電解質層と、前記電解質層の厚さ方向の両面に設けられた第1電極層及び第2電極層を有し、前記第1電極層及び前記第2電極層間に電圧を付与すると変形する高分子アクチュエータの製造方法において、
少なくとも基板上に前記第1電極層を形成するとき、前記第1電極層に含まれる導電フィラーの密度が、前記基板との界面側で低く、前記界面と反対側の外面側で高くなるように前記第1電極層を形成する工程、
前記第1電極層を前記基板から剥離する工程、
前記第1電極層の前記導電フィラーの密度が低い前記界面側を前記電解質層と対向させて、前記電解質層の両面を前記第1電極層と前記第2電極層とで挟んで積層する工程、
を有することを特徴とするものである。このように本発明では。第1電極層に含まれる導電フィラーの密度を、基板との界面側で低く、外面側で高くしているので、第1電極層と基板間の密着性を低下させることができ、第1電極層を基板から容易且つ適切に剥離できる。
【0015】
本発明では、アスペクト比が小さい前記導電フィラーを前記界面側に、アスペクト比が大きい前記導電フィラーを前記外面側に添加したり、あるいは、前記導電フィラーの単位体積あたりの含有量を、前記界面側で少なく、前記外面側で多くする。これにより、適切且つ簡単に、導電フィラーの密度を、電解質層との界面側で低く、外面側で高くできる。
【0016】
本発明では、前記基板上に前記導電フィラーの密度が異なる複数の導電層を積層し、このとき前記界面側よりも前記外面側に近い前記導電層ほど前記導電フィラーの密度が高くなるように形成することが好ましい。
また本発明では、前記導電フィラーは、カーボンナノチューブであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、良好な電極特性を備えるとともに、従来に比べて応答性を向上でき、また、簡単に電極層を基板から剥離できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態における高分子アクチュエータを厚さ方向から切断した断面図、
【図2】図1に示す高分子アクチュエータの一端を固定支持した断面図、
【図3】本実施形態における高分子アクチュエータの内部構成を拡大して示した断面図、
【図4】他の実施形態における高分子アクチュエータの内部構成を拡大して示した断面図、
【図5】他の実施形態における高分子アクチュエータの内部構成を拡大して示した断面図、
【図6】他の実施形態における高分子アクチュエータの内部構成を拡大して示した断面図、
【図7】本実施形態における高分子アクチュエータの製造方法を示す工程図(断面図)、
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は本実施形態における高分子アクチュエータを厚さ方向から切断した断面図、図2は図1に示す高分子アクチュエータの一端を固定支持した断面図、図3〜図6は、本実施形態における高分子アクチュエータの内部構成を拡大して示した断面図である。
【0020】
本実施形態における高分子アクチュエータ10は、電解質層11と、電解質層11の厚さ方向(Z方向)の両側表面に形成される第1電極層12と第2電極層13を備えて構成される。
【0021】
電解質層11は、例えば、イオン液体と、樹脂材料(ポリマー)を有して構成される。
また電極層12,13は、導電フィラー、イオン液体及び樹脂材料(ポリマー)とを有して構成される。
【0022】
樹脂材料としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)や、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等を提示できる。
【0023】
また、導電フィラーとしては、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、金粒子、白金粒子、ニッケル粒子等を提示できる。
【0024】
図1に示すように電解質層11と、その両表面に電極層12,13を有する断面構造で形成された高分子アクチュエータ10は、例えば、長さ方向(Y方向)への寸法が幅方向(X方向)への寸法や厚さ方向(Z方向)への寸法に比べて長い長方形状である。
【0025】
図2に示すように例えば高分子アクチュエータ10のY方向における一端部14が支持体15に固定支持されている。支持体15は例えばベース基板であり、ベース基板の導電性の接続部と高分子アクチュエータ10の電極層12、13とが接触している。
【0026】
高分子アクチュエータ10を構成する電極層12,13間に電圧を印加すると、電解質層11内のイオン移動などによって電解質層11の上下にて膨潤差が生じ、曲げ応力が発生して、例えば図2の点線で示すように変形部16が上方向に湾曲する。イオン移動で電極間に膨潤の差が生じる原理は一般に一義的ではないとされているが、代表的な原理要因の1つに、陽イオンと陰イオンのイオン半径の差で膨潤に差が生じることが知られている。
【0027】
以下、本実施形態における高分子アクチュエータ10の特徴的構成について説明する。
図3の構成では、電解質層11の厚さ方向(図示Z方向)の両面に形成された第1電極層12と第2電極層13とが、夫々、導電フィラーの密度が低い低密度導電層20,22と、導電フィラーの密度が低密度導電層20,22に比べて高い高密度導電層21,23との積層構造で形成されている。低密度導電層20,22は、電解質層11と高密度導電層21,23の間に形成される。
【0028】
図3の構成により、各電極層12,13に含まれる導電フィラーの密度は、電解質層11との界面24側で低く、界面24と反対側の外面25側で高くなっている。
【0029】
図3の実施形態では、低密度導電層20,22と高密度導電層21,23との界面26付近で最も導電フィラーの密度変化が大きくなり、各導電層20〜23内での導電フィラーの密度はほぼ一定か、あるいは、密度変化は、各導電層20〜23間の界面26付近に比べて小さい。このように、図3の実施形態では、第1電極層12及び第2電極層13の導電フィラーの密度が界面24側から外面25側に向けて段階的に変化する。
【0030】
図3の実施形態では、第1電極層12及び第2電極層13が2層構造であったが3層以上であってもよい。界面24側から見て、1層目の導電層、2層目の導電層、3層目の導電層・・・の順に導電フィラーの密度を高く設定する。
【0031】
図4の実施形態では、図3と違って、第1電極層12内及び第2電極層13内には、導電フィラーの密度が急激に変化する界面26が存在せず、図4の右図(グラフ)に示すように、電極層12,13内の導電フィラーの密度は、電解質層11との界面24側から外面25側にかけてほぼ連続的に高くなっている。例えば図4の実施形態では電極層12、13は単一の層で構成される。なお図4では密度変化を直線で示したが、湾曲変化等であってもよく、密度変化曲線を限定する意図ではない。
【0032】
図5の実施形態は、図3の実施形態と図4の実施形態とを組み合わせたものである。すなわち図5の実施形態では、電解質層11との界面24側に図4のように導電フィラーの密度が連続的に変化する連続変化導電層30が設けられ、連続変化導電層30,31の外面に中間密度導電層32,33及び高密度導電層34,35が形成される。この形態における中間密度導電層32,33の導電フィラーの密度は、連続変化導電層30,31の導電フィラーの最大密度以上に規定される。
【0033】
図5では、連続変化導電層30を電解質層11との界面24側に設けたが、電極層12,13の外面25側に設けてもよいし、電極層12,13が3層以上の積層構造である場合に、その中間層に連続変化導電層30を設けてもよい。
【0034】
図6の実施形態では、第1電極層12は、図3と同じように導電層20,21の積層構造で形成され、導電フィラーの密度が電解質層11との界面24側で低く、外面25側で高くなっている。一方、第2電極層13は低密度導電層22の単層構造で形成されており、導電フィラーの密度を、電解質層11との界面24側と外面25側とで変化させていない。
【0035】
図6の形態は、例えば、電極の極性を変えず、高分子アクチュエータ10を一方向にのみ変形させるような使用形態に好ましく適用できる。例えば上記した、イオン移動で電極間に膨潤の差が生じる原理を利用して、高分子アクチュエータ10を変形させる場合、電位差が生じたときに、引き寄せられるイオンの半径が大きく、伸びる電極層(第1電極層12)側に導電フィラーの密度変化を持たせることが必要である。もう一方の電極層(第2電極層13)側は、変形動作の妨げにならないように、低密度導電層22で形成することが好適である。
【0036】
なお、図6の実施形態において、第1電極層12を図4や図5の構成で形成することも出来る。
【0037】
上記のように電極層12,13の導電フィラーの密度を変化させるには、例えば、導電フィラーのアスペクト比を変えることで調整できる。すなわち、界面24側にアスペクト比が小さい導電フィラーが添加され、外面25側にアスペクト比が大きい導電フィラーが添加されている。アスペクト比が大きいほど、断面積が一定であるとして、その断面に直交する長さ寸法が長く形成される。よって、アスペクト比が大きい導電フィラーを添加すれば、アスペクト比が小さい導電フィラーを添加するのに比べて導電フィラーの密度を高くできる。したがって、例えば、図3の実施形態では、高密度導電層21,23に含まれる導電フィラーのアスペクト比は、低密度導電層20,22に含まれる導電フィラーのアスペクト比に比べて大きくされる。例えば、高密度導電層21,23に含まれる導電フィラーのアスペクト比は1000で、低密度導電層20,22に含まれる導電フィラーのアスペクト比は200000である。
【0038】
あるいは、導電フィラーの単位体積当たりの含有量(含有数)を、電極層12,13の界面24側で少なく、外面25側で多くして、導電フィラーの密度に変化を与えてもよい。例えば、同じ導電フィラーを用い、図3の形態において、低密度導電層20,22に含まれる導電フィラーの単位体積当たりの含有量(含有数)を少なく、高密度導電層21,23に含まれる導電フィラーの単位体積当たりの含有量(含有数)を多くする。これによって、電極層12,13の導電フィラーの密度を、界面24側で低く、外面25側で高くすることができる。
【0039】
なお、電極層12,13の導電フィラーの密度を、界面24側で低く、外面25側で高くする方法は上記以外であってもよい。
【0040】
導電フィラーには、カーボンナノチューブを用いることが好適である。カーボンナノチューブは、高分子アクチュエータ10の電極層12,13の電極特性を向上させるに適している。また、上記したように、導電フィラーのアスペクト比を変える場合に、例えば低密度導電層20,21には、HiPCO法によるカーボンナノチューブを用い、高密度導電層21,23には、微量の水分存在下でのCVD法によるカーボンナノチューブを用いれば、容易に導電フィラーのアスペクト比に差を設けることが可能である。
【0041】
以上のように本実施形態では、電極層12,13に含まれる導電フィラーの密度は、電解質層11との界面24側で低く、外面25側で高くなっている。このように本実施形態では、電極層12、13に導電フィラーの密度が高い領域を設けるとともに、界面24側での導電フィラーの密度を低くしたため、電極層12、13間に電位差を与えたときに、イオンを、界面24から外面25方向に向けて電極層12,13の内部にスムーズに移動させることができ、良好な電極特性を備えるとともに、応答性(応答速度)を向上させることができる。
【0042】
図7を用いて、本実施形態の高分子アクチュエータ10の製造方法を説明する。各図は、高分子アクチュエータ10の製造工程中における断面図である。
【0043】
図7(a)の工程では、石英等で形成された基板40上に、導電フィラーを含む低密度導電層41を形成する。例えば、低密度導電層41をキャスト法にて形成する。まず、イオン液体、導電フィラー、及び樹脂材料(ポリマー)を溶媒に溶かしてしてャスト液を作製する。
【0044】
続いて、上記キャスト液を基板40上にキャストし、真空乾燥して溶媒を蒸発させ、低密度導電層41を得る。
【0045】
次に、図7(b)に示す工程では、低密度導電層41上に導電フィラーを含む高密度導電層42を形成する。このとき、高密度導電層42の導電フィラーの密度を、低密度導電層41の導電フィラーの密度よりも高くなるように調製する。
【0046】
例えば、既に述べたように、導電フィラーのアスペクト比や単位体積あたりの含有量(含有数)を変えることで、導電層41,42の導電フィラーの密度を変えることが出来る。
【0047】
この高密度導電層42も、低密度導電層41と同じようにキャスト法で形成できる。
なお低密度導電層41や高密度導電層42をスクリーン印刷法等、キャスト法以外で形成することも可能である。
【0048】
また、導電層41,42に含まれる導電フィラーにはカーボンナノチューブを用いることが好適である。例えば、低密度導電層41には、HiPCO法によるカーボンナノチューブを用い、高密度導電層42には、CVD法によるカーボンナノチューブを用いる。CVD法によるカーボンナノチューブのアスペクト比は、HiPCO法によるカーボンナノチューブのアスペクト比より大きい。よって、上記により、容易に、導電層41,42の導電フィラーの密度を異ならせることが出来る。
【0049】
以上により、低密度導電層41と高密度導電層42から成る第1電極層12を形成する。
【0050】
次に図7(c)の工程では、第1電極層12を基板40から剥離する。
なお第2電極層13も上記と同じ工程にて、低密度導電層41と高密度導電層42から成る2層構造で形成する。
【0051】
次に図7(d)の工程では、電解質層11の厚さ方向の上下面に、第1電極層12及び第2電極層13の低密度導電層41側を対向させる。電解質層11はイオン液体と樹脂材料(ポリマー)を含み、電極層12,13と同様にキャスト法にて形成できる。
【0052】
そして図7(e)の工程では、電解質層11と第1電極層12間、電解質層11と第2電極層13間を加熱圧着することで、電解質層11の上下面を電極層12,13で挟んだ積層構造からなる高分子アクチュエータ10を得ることが出来る。
【0053】
上記した実施形態では、基板40上にまず低密度導電層41を形成し、続いて高密度導電層42を形成する。基板40上に直接形成するのは低密度導電層41であるため、高密度導電層42を基板40上に直接、形成する場合に比べて、基板40との密着性を低下できる。また高剛性で脆い高密度導電層42と基板40との間に高密度導電層42よりも軟質な低密度導電層41を設けている。
【0054】
以上により本実施形態では、容易に低密度導電層41と高密度導電層42から成る電極層12,13を基板40から剥離できる。よって、良好な電極特性を備えるとともに、応答性(応答速度)に優れた高分子アクチュエータを簡単且つ適切に製造することが可能である。
【0055】
図4のように、電極層12,13に含まれる導電フィラーの密度が界面24側から外面25側に向けて連続的に変化するようにするには、例えば、基板40上に複数の導電層を重ね塗りし、このとき、基板40から離れる導電層ほど導電フィラーの密度を高くし、成膜後、全導電層に対して乾燥工程や加熱工程を施す。
【符号の説明】
【0056】
10 高分子アクチュエータ
11 電解質層
12 第1電極層
13 第2電極層
20,22,41 低密度導電層
21,23,34,35,42 高密度導電層
24,26 界面
25 外面
30,31 連続変化導電層
32,33 中間密度導電層
40 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質層と、前記電解質層の厚さ方向の両面に設けられた、導電フィラーを含んでなる一対の電極層を有し、前記一対の電極層間に電圧を付与すると変形する高分子アクチュエータにおいて、
前記一対の電極層のうちの少なくとも一方に含まれる導電フィラーの密度は、前記電解質層との界面側で低く、前記界面と反対側の外面側で高くなっていることを特徴とする高分子アクチュエータ。
【請求項2】
前記界面側にアスペクト比が小さい前記導電フィラーが添加され、前記外面側に前記アスペクト比が大きい前記導電フィラーが添加される請求項1記載の高分子アクチュエータ。
【請求項3】
前記導電フィラーの単位体積あたりの含有量は、前記界面側で少なく、前記外面側で多くなっている請求項1又は2に記載の高分子アクチュエータ。
【請求項4】
前記導電フィラーの密度は、前記界面側から前記外面側に向けて連続的にあるいは段階的に高くなっている請求項1ないし3のいずれかに記載の高分子アクチュエータ。
【請求項5】
前記電極層は、前記導電フィラーの密度が異なる複数の導電層を積層した構成である請求項1ないし4のいずれかに記載の高分子アクチュエータ。
【請求項6】
前記導電フィラーは、カーボンナノチューブである請求項1ないし5のいずれかに記載の高分子アクチュエータ。
【請求項7】
電解質層と、前記電解質層の厚さ方向の両面に設けられた第1電極層及び第2電極層を有し、前記第1電極層及び前記第2電極層間に電圧を付与すると変形する高分子アクチュエータの製造方法において、
少なくとも基板上に前記第1電極層を形成するとき、前記第1電極層に含まれる導電フィラーの密度が、前記基板との界面側で低く、前記界面と反対側の外面側で高くなるように前記第1電極層を形成する工程、
前記第1電極層を前記基板から剥離する工程、
前記第1電極層の前記導電フィラーの密度が低い前記界面側を前記電解質層と対向させて、前記電解質層の両面を前記第1電極層と前記第2電極層とで挟んで積層する工程、
を有することを特徴とする高分子アクチュエータの製造方法。
【請求項8】
アスペクト比が小さい前記導電フィラーを前記界面側に、アスペクト比が大きい前記導電フィラーを前記外面側に添加する請求項7記載の高分子アクチュエータの製造方法。
【請求項9】
前記導電フィラーの単位体積あたりの含有量を、前記界面側で少なく、前記外面側で多くする請求項7又は8に記載の高分子アクチュエータの製造方法。
【請求項10】
前記基板上に前記導電フィラーの密度が異なる複数の導電層を積層して前記電極層を形成し、このとき前記界面側よりも前記外面側に近い前記導電層ほど前記導電フィラーの密度を高くする請求項7ないし9のいずれかに記載の高分子アクチュエータの製造方法。
【請求項11】
前記導電フィラーは、カーボンナノチューブである請求項7ないし10のいずれかに記載の高分子アクチュエータの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−80595(P2012−80595A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25782(P2009−25782)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】