説明

高分子フィルムの製法

【課題】 生産性に優れ、かつ機械特性の低下を招くことなく品位良好なフィルムを得ることができる流延製膜方法による高分子フィルムの製法の提供。
【解決手段】 分子鎖にイミド結合および/又はアミド結合を有する高分子および/又は高分子前駆体やベンザゾール結合(ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール)を有する高分子の前駆体を含む溶液を支持体上に塗布・乾燥して前記高分子および又は高分子前駆体を含む塗膜を形成する工程を少なくとも含む高分子フィルムの流延製膜方法において、当該乾燥に際し気流(風)を使用し、該風の支持体塗布面側雰囲気の風量に対し、その反対側の気流量(風量)を10%以上の量で使用することを特徴とする高分子フィルムの製法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子フィルムの製法に関し、さらに詳しくは、高分子の溶液を支持体上に塗布、乾燥する工程を経てフィルムを得る、所謂、流延製膜方法による高分子フィルムの製法に関し、なおさらに詳しくは、経済的であり、かつ高品位の高分子フィルムを得ることができる流延製膜方法による高分子フィルムの製法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子フィルムの製造方法として、流延製膜方法は公知である。流延製膜方法は、溶剤に高分子化合物を溶解してなる溶液を支持体上に塗布することで支持体上に前記高分子化合物を含む塗膜を形成する工程と、前記支持体上の塗膜を乾燥する工程とを少なくとも有する方法であり、この流延製膜方法は、実験室規模から工業的規模にいたる様々な規模にて広く実施されている(特許文献1〜4、参照)。
【特許文献1】特開2003−260715号公報
【特許文献2】特開平5−237928号公報
【特許文献3】特開平6−56992号公報
【特許文献4】特表平11−504369号公報
【0003】
流延製膜法が工業的規模で行われる場合には、支持体として鏡面研磨した金属ロールや所謂エンドレスベルトが用いられる(特許文献5〜7、参照)。
【特許文献5】特開平9−207151号公報
【特許文献6】特開平9−29852号公報
【特許文献7】特開平9−57772号公報
【0004】
支持体として金属のベルトを用いる方法は、塗布後の乾燥工程長を長くすることが容易であるため、流延製膜法において広く用いられている。流延製膜法の生産性を上げるためには乾燥速度を上げることが効果的であり、そのためには、乾燥温度を高くする、乾燥気流量(乾燥風量)を大きくする、という手段を講じることが考えられる。しかし、乾燥温度を高くしすぎると、乾燥時の溶媒の揮発速度が上がりすぎ、気泡を発生することがある。また、乾燥気流量(乾燥風量)を大きくしすぎると、塗膜表面に風紋状のシワが発生することや、支持体ベルト自体の風による振動に起因する塗膜全体のウネリが発生することがある。このように、得られるフィルムの品質という観点からは、上述の手段は必ずしも効果的ではない。
このように、流延製膜法において生産性とフィルムの品質とを共に向上させるのは困難であったが故に、従来は、高品質のフィルムを生産する場合には乾燥速度を落とす、換言すると、長時間かけて緩やかに乾燥せざるをえなかった。
【0005】
支持体として金属のベルトを使用する方法は、塗布後の乾燥工程長を長くすることが容易であるため、流延製膜方法として広く用いられている。流延フィルムの生産性を上げるためには、乾燥工程の効率化が効果的である。乾燥速度を上げるには、直接的には乾燥温度を高くする、乾燥気流量(乾燥風量)を大きくする、といった方法が取られるわけであるが、フィルムの品位という観点からは、これらの直接的な方法は、必ずしも効果的な方法とはいえない。すなわち、乾燥温度を不用意に高くすると、塗工膜に含まれる溶媒の揮発速度が上がりすぎ、気泡を発生することがある。また、乾燥気流量(乾燥風量)をむやみに大きくすると、塗膜表面に風紋状のシワが発生する場合がある。また、支持体ベルト自体が風により振動、塗膜全体のウネリなどの原因になる場合がある。
かかる問題により、流延製膜方法において生産性とフィルム品位を両立させることは困難であり、高い品位を求められるフィルムの生産時には乾燥効率を落とし、長時間かけて緩やかに乾燥するという方法を選択することが常道化していた。
【0006】
ポリイミドフィルムのように、前駆体であるポリアミド酸の流延フィルムを、さらに熱処理してポリイミドフィルム化するプロセスを踏む場合においては、前駆体の化学的安定性が必ずしも高くないために、長時間を要する乾燥工程は、単に生産性の低下のみならず、乾燥中の副反応を抑制することが困難になるという別の問題を表面化させることになる。ポリイミドの前駆体であるポリアミド酸は加水分解を生じやすく、乾燥工程中では、溶媒の揮発と、ポリアミド酸の加水分解による分子量低下とが平行して生じ、長時間の乾燥は、最終的に得られるポリイミドの分子量を低下せしめ、機械的強度低下の原因となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、フィルム品位を維持し、かつ生産性を高め、さらにポリイミドフィルムの製膜に適用した場合においても分子量の低下に伴う機械特性、電気特性の悪化を防止できる高分子フィルムの流延製膜方法による製法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意研究を続けた結果、支持体上下の気流量設定(風量設定)を工夫することにより、前記目的を達することができることを見いだし、次なる発明に到達した。
すなわち本発明は、高分子および/又は高分子前駆体を含む溶液を支持体上に塗布・乾燥して前記高分子および/又は高分子前駆体を含む塗膜を形成する工程を少なくとも含む高分子フィルムの流延製膜方法において、この乾燥に際し気流(風)を使用し、該風の支持体塗布面側雰囲気の気流量(風量)に対し、その反対側の気流量(風量)を10%以上の量で使用することを特徴とする高分子フィルムの製法であり、また溶液が、分子鎖にイミド結合および又はアミド結合を有する高分子および又は高分子前駆体を含む溶液である前記の高分子フィルムの製法であり、また溶液がベンザゾール結合(ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール)を有する高分子の前駆体を含む溶液である前記の高分子フィルムの製法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の流延製膜方法においては、高分子溶液が塗布された支持体の塗布面と反対側の面との気流量(風量)を所定の範囲に制御することにより、効率よく、短時間で、しかも、気泡発生などの品位上の問題を生じることなく乾燥を可能ならしめるものである。短時間で乾燥を終えることができるため、長時間乾燥にて危惧される乾燥中の副反応の発生を最低限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明において、高分子溶液として供される高分子および又は高分子前駆体としては、ポリアミドイミド、ポリイミド、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アラミドなどが挙げられる。特に好適であるのは、ポリベンザゾール(ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾールなど)、ポリイミド、ポリアミドイミドであり、特にポリイミドベンゾオキサゾールが好適である。
【0011】
本発明の高分子溶液に用いられる溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、塩化メチレン、テトラヒドロフラン、メタノール、メタクレゾールなどが挙げられる。
本発明において好ましく用いられる高分子溶液としては、ポリアミドイミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液、N,N−ジメチルアセトアミド溶液、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン溶液、N,N−ジメチルアセトアミド溶液、溶剤可溶なポリイミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液、N,N−ジメチルアセトアミド溶液、酢酸セルロースの塩化メチレン溶液、メタノール溶液、ポリカーボネートの塩化メチレン溶液、メタクレゾール溶液、ポリ塩化ビニルのテトラヒドロフラン溶液、アラミドのN−メチル−2−ピロリドン溶液などが挙げられる。
【0012】
本発明の流延製膜方法による高分子フィルムの製法は、特に、ポリイミドベンゾオキサゾールの前駆体であるポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の溶液を使用する製法に最も好ましく適用し得る。
以下、上記のポリイミドベンゾオキサゾールの前駆体であるポリアミド酸の溶液を使用する場合について詳述する。
ポリイミドベンゾオキサゾールは、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類と、芳香族テトラカルボン酸無水物類とを反応させて得られるポリイミドからなる。
上述の反応は、まず、溶媒中でジアミン類とテトラカルボン酸無水物類とを開環重付加反応に供してポリアミド酸溶液を得て、次いで、このポリアミド酸溶液を塗布、乾燥して、流延製膜方法で前駆体フィルムとなし、この前駆体フィルムをさらに高温で熱処理して得ることができる。
【0013】
<芳香族ジアミン類>
本発明で好適に用いられるベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類としては、具体的には以下のものが挙げられる。
【0014】
【化1】

【0015】
【化2】

【0016】
【化3】

【0017】
【化4】

【0018】
【化5】

【0019】
【化6】

【0020】
【化7】

【0021】
【化8】

【0022】
【化9】

【0023】
【化10】

【0024】
【化11】

【0025】
【化12】

【0026】
【化13】

【0027】
これらの中でも、合成のし易さの観点から、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体が好ましい。ここで、「各異性体」とは、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールが有する2つアミノ基が配位位置に応じて定められる各異性体である(例;上記「化1」〜「化4」に記載の各化合物)。これらのジアミンは、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
本発明においては、前記ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミンを70モル%以上使用することが好ましい。
【0028】
本発明は、前記事項に限定されず下記の芳香族ジアミンを使用してもよいが、好ましくは全芳香族ジアミンの30モル%未満であれば下記に例示されるベンゾオキサゾール構造を有しないジアミン類を一種又は二種以上、併用してのポリイミドフィルムである。
そのようなジアミン類としては、例えば、4,4'−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、
【0029】
3,3'−ジアミノジフェニルエーテル、3,4'−ジアミノジフェニルエーテル、4,4'−ジアミノジフェニルエーテル、3,3'−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3'−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4'−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4'−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3'−ジアミノジフェニルスルホン、3,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、3,3'−ジアミノベンゾフェノン、3,4'−ジアミノベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、3,3'−ジアミノジフェニルメタン、3,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、
【0030】
1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、
【0031】
1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4'−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4'−ビス[(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4'−ジアミノジフェニルスルフィド、
【0032】
2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4'−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4'−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4'−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4'−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、
【0033】
3,3'−ジアミノ−4,4'−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノ−5,5'−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4'−ジアミノ−4,5'−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3'−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4'−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4'−ジアミノ−5'−フェノキシベンゾフェノン、3,3'−ジアミノ−4,4'−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノ−5,5'−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4'−ジアミノ−4,5'−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3'−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4'−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4'−ジアミノ−5'−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリルおよび上記芳香族ジアミンにおける芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基又はアルコキシル基、シアノ基、又はアルキル基又はアルコキシル基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基又はアルコキシル基で置換された芳香族ジアミン等が挙げられる。
【0034】
本発明で用いられるテトラカルボン酸無水物は芳香族テトラカルボン酸無水物類である。芳香族テトラカルボン酸無水物類としては、具体的には、以下のものが挙げられる。
【0035】
【化14】

【0036】
【化15】

【0037】
【化16】

【0038】
【化17】

【0039】
【化18】

【0040】
【化19】

これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0041】
本発明においては、全テトラカルボン酸二無水物の30モル%未満であれば下記に例示される非芳香族のテトラカルボン酸二無水物類を一種又は二種以上、併用しても構わない。そのようなテトラカルボン酸無水物としては、例えば、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ペンタン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサ−1−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−エチルシクロヘキサン−1−(1,2),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3',4'−テトラカルボン酸二無水物、
【0042】
ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、1−プロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3,4−テトラカルボン酸二無水物、1,3−ジプロピルシクロヘキサン−1−(2,3),3−(2,3)−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,4,3',4'−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0043】
ポリアミド酸を得るための重合反応(単に重合ともいう)の条件は従来公知の条件を適用すればよく、具体例として、有機溶媒中、0〜80℃の温度範囲で、10分〜30時間連続して撹拌および/又は混合することが挙げられる。必要により重合反応を分割したり、温度を上下させてもかまわない。この場合に、両モノマーの添加順序には特に制限はないが、芳香族ジアミン類の溶液中に芳香族テトラカルボン酸無水物類を添加するのが好ましい。重合反応によって得られるポリアミド酸溶液に占めるポリアミド酸の質量は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%であり、前記溶液の粘度はブルックフィールド粘度計による測定(25℃)で、送液の安定性の点から、好ましくは10〜2000Pa・sであり、より好ましくは100〜1000Pa・sである。
【0044】
重合反応により得られるポリアミド酸溶液から、ポリイミドフィルムを形成するためには、ポリアミド酸溶液を支持体上に塗布して乾燥することにより前駆体フィルムを得て、次いで、支持体から剥離した前駆体フィルムを熱処理に供することでイミド化反応させる
塗布方法としては、スキージコーティング、バーコーティング、コンマコーティング、リバースコーティング、連続スクリーン印刷、グラビアコーティングなど、公知の塗布方法を、溶液の粘度、得ようとする厚み、厚み精度に応じて適宜選択して使用すればよい。
【0045】
本発明において用いられる支持体とは、厚さが5mm以下、好ましくは3mm以下、なお好ましくは1mm以下の湾曲可能な素材からなるエンドレスベルトである。支持体の幅と長さ(周囲)は特に限定されないが、幅が30cm以上、好ましくは50cm以上であり、長さ(周囲)が100cm以上、好ましくは300cm以上である。厚さがこの範囲を超えると湾曲性に問題がでる場合がある。
本発明の支持体の材質は、金属、非金属を問わず、フィルムにしようとする素材の乾燥温度において、顕著な変形や寸法変化を生じない物であれば、特に限定されない。金属素材としては、鉄、ステンレス(SUS)、ニッケル、チタン、タンタル、銅、ハステロイ等がある。さらにベルトの表面には、耐食性、硬度の向上や粘着性低下等のために、必要に応じてクロム、金、銀、ニッケルなどのメッキや表面処理を施してもよい。表面処理の一例としてはクロムの薄膜酸化水和物皮膜形成、シリコーンあるいはフッソ皮膜形成などがある。
【0046】
本発明においては、支持体に高分子素材を用いることができる。本発明において支持体として用いられる高分子フィルムの厚さは3〜300μmであるが、支持体としての強度、寸法安定性の点から、好ましくは10μm以上、更に好ましくは20μm以上であるのが望ましい。厚みが薄すぎると塗布、凝固などでのシワの発生によって平面性の悪化などの欠点が生じる場合がある。また厚みが厚すぎると、取扱が困難になるため、300μm以下が望ましい。
【0047】
本発明の流延製膜方法において支持体として用いられる高分子フィルムの中心線平均粗さRaは0.1〜1.0nmである。支持体上に溶液をキャストして製膜を行った場合、支持体の表面性は製膜したフィルムに転写する。そのため、支持体表面には従来から用いられている鏡面化した金属ベルトに相当する平滑性が求められる。本発明においては、高分子フィルムの中心線平均粗さRaが金属ベルトの表面に相当するものを用いることにより、非常に平滑なポリイミドフィルムの表面性を達成できる。
【0048】
本発明の流延製膜方法において支持体として用いられる高分子フィルムの引張弾性率は、好ましくは長手方向、幅方向とも3GPa以上、より好ましくは4GPa以上であるのが望ましく、3GPa未満の場合には、支持体の寸法安定性が不足する場合があり、支持体フィルムが製膜時の搬送の際に変形し、製膜した樹脂フィルムのカールが増大し、また、たるみ、シワなどの平面性が低下する問題を生じる。
【0049】
本発明の流延製膜方法において支持体として用いられる高分子フィルムの線膨張係数は、好ましくは長手方向、幅方向とも2ppm/℃以上、30ppm/℃以下、より好ましくは25ppm/℃以下であることが望ましい。30ppm/℃以上である場合、塗布した樹脂溶液を加熱乾燥させる際に支持体の寸法変化を生じる。その結果、製膜した樹脂フィルムのカールが増大し、また、たるみ、シワなどの平面性が低下する問題を生じる。
【0050】
本発明の流延製膜方法において支持体として用いられる高分子フィルムとしては具体的にはポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリフェニレンオキサイド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリサルフォン系樹脂等が挙げられる。ポリエステル系樹脂のポリエステルとは、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンナフタレートなどであって、これらの2種以上が混合されたものであってもよい。また、これらと他のジカルボン酸成分やジオール成分が共重合されたものであってもよい。また内層と表層の2層以上の複合体フィルムであってもよい。中でも、耐熱性が高く、安価でかつ加工性に優れ、耐薬品性も高いことからポリエチレンテレフタレートが好ましく用いられる。さらに好ましくは表面が平滑である必要があることから滑剤を無添加のポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく用いることができる。
具体的なポリエチレンテレフタレートフィルムとしては、光学用ポリエチレンテレフタレートフィルムである「コスモシャイン(R)A4100」(東洋紡績株式会社製)が挙げられる。
【0051】
本発明での乾燥方法は加熱乾燥である。加熱方法としては、赤外線加熱、温風加熱、マイクロ波加熱など公知の方法を用いることができるが、いずれの場合も加熱蒸散する揮発分の積極除去のために気流(風)を使用する。
本発明では乾燥時に、気流(風)の量すなわち風量を、塗布面側の雰囲気の気流量(風量)に対し、反対側の気流量(風量)を10%以上から100%程度多く設定することが必須である。塗布面の反対側からロールで保持された支持体はロール間にて自重により撓み。そのため支持体に脈動が生じ、流延フィルムに周期的な歪みが加わり、その歪みが得られる流延フィルムの不均一性の原因となる。本発明では塗布面と反対側の気流量(風量)を増すことにより支持体を持ち上げ、自重による撓みを矯正することにより支持体に生じる脈動を抑制することができる。支持体を持ち上げるには、塗布面側の気流量(風量)に対して10%以上反対側の気流量(風量)を増す必要がある。また反対側の気流量(風量)を100%以上増すと支持体の走行安定性が損なわれる。
乾燥気流量(乾燥風量)を大きくしすぎると、塗膜表面に風紋状のシワが発生することや、支持体ベルト自体の風による振動に起因する塗膜全体のウネリが発生することを惹起しがちとなり、塗布面側(上側)の雰囲気の気流量(風量)に対し、反対側(下側)の気流量(風量)を10%以上多く設定する際、下側気流量(下側風量)を上側気流量(上側風量)に対し100%程度増加さすことがその上限となる。
気流量(風量)の絶対値や風速は塗工される溶液の量やその乾燥ゾーン通過時間によって適宜選択採用すればよい。
【0052】
本発明では、乾燥時に、塗布面側の雰囲気温度に対し、反対側の雰囲気温度を1℃〜55℃高く設定することが好ましい。ここに雰囲気温度とは、支持体の表面から5mmないし30mm離れた位置において、熱電対などで測定した温度を云う。
本発明においては、塗布面側の雰囲気温度に対し、反対側の雰囲気温度を5〜55℃高く設定することが好ましく、さらに10〜50℃高く設定することが好ましく、なおさらに15〜45℃高く設定することが好ましい。
また、本発明において、塗布面に対し、その反対側の温度を高く設定する領域については、乾燥に用いられる支持体有効長の全般にわたってもよく、またその一部でもよい。本発明においては、概ね、乾燥有効長の10〜80%程度の範囲において、さらには15〜50%の範囲において、当該条件を満足することが好ましい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例および比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって限定されるものではない。
なお、以下の実施例における物性などの評価方法は以下の通りである。
1.ポリアミド酸の還元粘度(ηsp/C)
ポリマー濃度が0.2g/dlとなるようにN−メチル−2−ピロリドンに溶解した溶液をウベローデ型の粘度管により30℃で測定した。
(ポリアミド酸溶液の調製に使用した溶媒がDMAcの場合はDMAcを使用してポリマーを溶解、同様に測定した。)
【0054】
2.ポリイミドフィルムおよび支持体用フィルムの厚さ
マイクロメーター(ファインリューフ社製、ミリトロン(R)1245D)を用いて測定した。
3.ポリイミドフィルムおよび支持体用フィルムの引張破断強度および引張破断伸度
測定対象のポリイミドフィルムを、流れ方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ100mm×10mmの短冊状に切り出したものを試験片とした。引張試験機(島津製作所製、オートグラフ(R)機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmの条件で、MD方向、TD方向それぞれについて、引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度を測定した。
【0055】
4.支持体用フィルムの中心線平均粗さRa
マイクロマップ社製3次元非接触表面形状計測システムを用い、133μm×133μmの範囲において平均表面粗さRaを測定した。
5.支持体用フィルムの線膨張係数(CTE)
測定対象の高分子フィルムについて、下記条件にて長手方向(MD)および幅方向(TD)の伸縮率を測定し、30℃〜40℃、40℃〜50℃、…と10℃の間隔での伸縮率/温度を測定し、この測定を100℃まで行い、全測定値の平均値をCTEとして算出した。
装置名 ; MACサイエンス社製TMA4000S
試料長さ ; 20mm
試料幅 ; 2mm
昇温開始温度 ; 30℃
昇温終了温度 ; 100℃
昇温速度 ; 5℃/min
雰囲気 ; アルゴン
【0056】
5.ポリイミドフィルムの熱特性
測定対象のポリイミドフィルムについて、下記条件で示差走査熱量測定(DSC)を行い、融点(融解ピーク温度Tpm)とガラス転移点(Tmg)をJIS K 7121に準拠して求めた。
装置名 ; MACサイエンス社製DSC3100S
パン ; アルミパン(非気密型)
試料質量 ; 4mg
昇温開始温度 ; 30℃
昇温終了温度 ; 600℃
昇温速度 ; 20℃/min
雰囲気 ; アルゴン
【0057】
6.乾燥時の雰囲気温度
支持体の塗工面側および非塗工面側について幅方向中央部分であって各ゾーンの中央位置で、支持体から5mm離れた位置に下記熱電対の検出部を設置。各乾燥ゾーン内で各設定乾燥条件での乾燥速度(乾燥時間)、気流量(風量)、温度で支持体を搬送し、その際の各ゾーンでの検出温度を記録した。
熱電対: K熱電対(直径;1.0mm、長さ12m)
データ取り込み装置:キーエンス株式会社製NR−250
7.ポリイミドフィルムの表面品位(気泡・欠陥の有無)
得られた最終フィルムを、目視によりフィルム表面の皺状欠陥や気泡やクレーターなどの欠陥の有無を確認し、殆どそれら欠陥が見られないものを◎、それら欠陥が僅かに観察されるものを○、それら欠陥が多数確認できるものを×として評価した。
【0058】
(実施例1)
(無機粒子の予備分散)
アモルファスシリカの球状粒子シーホスター(R)KE−P30(日本触媒株式会社製)を1.22質量部、N−メチル−2−ピロリドン420質量部を、容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである容器に入れホモジナイザーT−25ベイシック(IKA Labor technik社製)にて、回転数10000回転/分で1分間攪拌した後、400メッシュのフィルターにて濾過し、予備分散液を得た。予備分散液中の平均粒子径は0.38μm、標準偏差0.032μm、CV値8.4%、であり、球形度0.98であった。
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、223質量部の5−アミノ−2−(p−アミノフェニル)ベンゾオキサゾールを入れた。次いで、4000質量部のN−メチル−2−ピロリドンを加えて完全に溶解させてから、先に得た予備分散液を420質量部と217質量部のピロメリット酸二無水物を加えて、25℃にて40時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Aが得られた。このポリアミド酸溶液Aの還元粘度(ηsp/C)は4.7dl/gであった。
【0059】
(ポリアミド酸フィルムの製造)
上記ポリアミド酸溶液Aを、支持体として、厚さ188μmのポリエステルフィルム
(コスモシャイン(R)A−4100、東洋紡績株式会社製、中心線平均粗さRaは0.3nm、引張弾性率(MD方向およびTD方向の平均値)が3.5GPa、線膨張係数(MD方向およびTD方向の平均値)は18ppm/℃)の無滑剤面を塗布面側にしてコーティングし(スキージ/支持体間のギャップは、650μm)、3つの乾燥ゾーンを有する、熱風乾燥装置(図1)を用い、(1)第1ゾーンの要通過時間10分で、支持体塗工面側(以下上側という)の雰囲気温度90℃、裏側の非塗工面側(以下下側という)雰囲気温度120℃、上側への風量を15m3/分、下側への風量17m3/分、(2)第2ゾーンの要通過時間10分で、上側の雰囲気温度90℃、下側の雰囲気温度120℃、上側への風量を15m3/分、下側への風量17m3/分、(3)第3ゾーンの要通過時間10分で、上側の雰囲気温度90℃、下側の雰囲気温度120℃、上側への風量を15m3/分、下側への風量17m3/分、の乾燥条件で乾燥し乾燥後、自己支持性となったポリアミド酸フィルムを支持体から剥離して、幅650mm、長さ60m、厚さ40μmのポリアミド酸フィルム(グリーンフィルム)を得た。
【0060】
(ポリイミドフィルムの製造)
得られたグリーンフィルムを、連続式の熱処理炉に通し、200℃で5分、450℃で5分の条件で2段階の加熱を施して、イミド化反応を進行させた。その後、5分間で室温にまで冷却することで、褐色を呈するポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの測定結果を表1に記載する。なお表1、2においては、引張破断強度、引張破断伸度、引張弾性率の値は全てMD方向の値を示した。
【0061】
(実施例2)
支持体として、厚さ125μmのポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製E5100、中心線平均粗さRaは7.5nm、引張弾性率(MD方向およびTD方向の平均値)が3.4GPa、線膨張係数(MD方向およびTD方向の平均値)は19ppm/℃)を用い、ポリアミド酸溶液Aの塗布時のスキージ/支持体間のギャップを240μmとし、ポリアミド酸フィルムの製造条件として実施例1における乾燥条件を、(1)第1ゾーンの要通過時間10分で、支持体塗工面側(以下上側という)の雰囲気温度90℃、裏側の非非塗工面側(以下下側という)雰囲気温度90℃、上側への風量を15m3/分、下側への風量18m3/分、(2)第2ゾーンの要通過時間10分で、支持体塗工面側(以下上側という)の雰囲気温度80℃、裏側の非非塗工面側(以下下側という)雰囲気温度110℃、上側への風量を15m3/分、下側への風量18m3/分、(3)第3ゾーンの要通過時間10分で、支持体塗工面側(以下上側という)の雰囲気温度90℃、裏側の非非塗工面側(以下下側という)雰囲気温度120℃、上側への風量を15m3/分、下側への風量18m3/分、の乾燥条件で乾燥する以外は実施例1と同様に操作して、表1に示すポリイミドフィルムを得た。
【0062】
(実施例3)
(ポリアミド酸溶液の調製)
窒素導入管、温度計、攪拌棒を備えた容器の接液部、および輸液用配管はオーステナイト系ステンレス鋼SUS316Lである反応容器内を窒素置換した後、200質量部のジアミノジフェニルエーテルを入れた。次いで、3800質量部のジメチルアセトアミドを加えて完全に溶解させてから、コロイダルシリカをジメチルアセトアミドに分散してなるスノーテックスDMAC−ST30(日産化学工業株式会社製)40.5質量部(シリカを8.1質量部含む)と217質量部のピロメリット酸二無水物を加えて、25℃にて5時間攪拌すると、褐色の粘調なポリアミド酸溶液Bが得られた。この還元粘度(ηsp/C)は3.9dl/gであった。
以下実施例1と同様に操作してポリイミド前駆体フィルムを得、さらに同様に熱処理してポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0063】
(実施例4)
トリメリット酸無水物1モル、2,4トリレンジイソシアネート0.25モル、o−トリジンジイソシアネート0.75モルから合成されたポリアミドイミド樹脂を20質量%含有するnメチル2ピロリドン溶液を、塗布時のスキージ/支持体間のギャップを90μmとした以外は実施例1と同様に操作して、自己支持性のフィルムを得た。ついで、連続式の熱処理炉に通し、200℃で5分、300℃で5分の条件で2段階の加熱を施して、その後、5分間で室温にまで冷却することで、ポリアミドイミド樹脂からなるフィルムを得た。得られたポリアミドイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0064】
(実施例5)
実施例1.での乾燥において、支持体をポリエステルフィルムから、鏡面仕上げ(表面粗さ Ra:0.5nm)したエンドレスのステンレスベルトに代えてセットし、他は実施例1と同様に操作して、ポリイミドフィルムを得た。得られたポリイミドフィルムの評価結果を表1に示す。
【0065】
(比較例1)
(ポリアミド酸溶液の調製)
実施例1と同様にしてポリアミド酸溶液を得た。
(ポリアミド酸フィルムの製造)
上記ポリアミド酸ワニスを、支持体として、厚さ188μmのポリエステルフィルム(東洋紡績株式会社製E5100、中心線平均粗さRaは6.8nm、引張弾性率(MD方向およびTD方向の平均値)が3.7GPa、線膨張係数(MD方向およびTD方向の平均値)は19ppm/℃)にコーティングし(スキージ/支持体間のギャップは、650μm)、3つの乾燥ゾーンを有する、熱風乾燥装置(図1)を用い、図1における、(1)第1ゾーンの要通過時間10分で、支持体塗工面側(以下上側という)の雰囲気温度120℃、裏側の非塗工面側(以下下側という)雰囲気温度120℃、上側への風量を15m3/分、下側への風量15m3/分、(2)第2ゾーンの要通過時間10分で、上側の雰囲気温度120℃、下側の雰囲気温度120℃、上側への風量を15m3/分、下側への風量15m3/分、(3)第3ゾーンの要通過時間10分で、上側の雰囲気温度120℃、下側の雰囲気温度120℃、上側への風量を15m3/分、下側への風量15m3/分、の乾燥条件で乾燥し、乾燥後、自己支持性となったポリアミド酸フィルムを支持体から剥離して、幅650mm、長さ60m、厚さ40μmのポリアミド酸フィルム(グリーンフィルム)を得た。
(ポリイミドフィルムの製造)
得られたグリーンフィルムを、連続式の熱処理炉に通し、200℃で5分、450℃で5分の条件で2段階の加熱を施して、イミド化反応を進行させた。その後、5分間で室温にまで冷却することで、褐色を呈するポリイミドフィルムを得た。得られた各ポリイミドフィルムの測定結果を表2に記載する。
【0066】
(比較例2)
ポリアミド酸フィルムの製造条件として比較例1における乾燥条件を、(1)第1ゾーンの要通過時間20分で、上側の雰囲気温度90℃、下側の雰囲気温度90℃、上側への風量を15m3/分、下側への風量15m3/分、(2)第2ゾーンの要通過時間20分で、上側の雰囲気温度90℃、下側の雰囲気温度90℃、上側への風量を15m3/分、下側への風量15m3/分、(3)第3ゾーンの要通過時間20分で、上側の雰囲気温度90℃、下側の雰囲気温度90℃、上側への風量を15m3/分、下側への風量15m3/分、の乾燥条件で乾燥する以外は比較例1と同様に操作して、表2に示すポリイミドフィルムを得た。
【0067】
(比較例3)
ポリアミド酸フィルムの製造条件として比較例1における乾燥条件を、(1)第1ゾーンの要通過時間10分で、上側の雰囲気温度120℃、下側の雰囲気温度90℃、上側への風量を15m3/分、下側への風量15m3/分、(2)第2ゾーンの要通過時間10分で、上側の雰囲気温度120℃、下側の雰囲気温度90℃、上側への風量を15m3/分、下側への風量15m3/分、(3)第3ゾーンの要通過時間10分で、上側の雰囲気温度120℃、下側の雰囲気温度90℃、上側への風量を15m3/分、下側への風量15m3/分、の乾燥条件で乾燥する以外は比較例1と同様に操作して、表2に示すポリイミドフィルムを得た。
【0068】
(比較例4)
ポリアミド酸フィルムの製造条件として比較例1における乾燥条件を、(1)第1ゾーンの要通過時間10分で、上側の雰囲気温度120℃、下側の雰囲気温度90℃、上側への風量を15m3/分、下側への風量15m3/分、(2)第2ゾーンの要通過時間10分で、上側の雰囲気温度120℃、下側の雰囲気温度90℃、上側への風量を15m3/分、下側への風量15m3/分、(3)第3ゾーンの要通過時間10分で、上側の雰囲気温度120℃、下側の雰囲気温度90℃、上側への風量を15m3/分、下側への風量15m3/分、の乾燥条件で乾燥する以外は比較例1と同様に操作して、ポリアミド酸フィルム(グリーンフィルム)を得た。得られたグリーンフィルムを、連続式の熱処理炉に通し、200℃で5分、300℃で5分の条件で2段階の加熱を施して、イミド化反応を進行させた。その後、5分間で室温にまで冷却することで、褐色を呈するポリイミドフィルムを得た。得られた各ポリイミドフィルムの測定結果を表2に記載する。
【0069】
【表1】

【0070】
【表2】

【0071】
本発明の乾燥方法において、短時間の乾燥においても品位良好で、機械特性に問題ないフィルムを得ることができる。しかしながら比較例において、風量を所定範囲内に制御することなく乾燥を行った場合には生産性の低下はもちろん、得られたフィルムの物性においても、特に機械的強度が低下していることが認められる。また単に温度を高く、風量を規定範囲外にして乾燥しグリーンフィルムを製造すると最終のフィルム表面に気泡が発生し、品位が大幅に低下することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の製造方法によって得られたポリイミドフィルムは、気泡発生などのないフィルム表面品位の優れたものとなり、かつフィルムの製造工程が煩雑化することなく製造できろので経済的にも効果的であり、耐熱性ポリイミドフィルムの製造においても資するところ大である。また本発明の製造方法によって得られたポリイミドフィルムは、強度や耐熱性に優れかつ表面外観良好なフィルムが得られ、フレキシブルプリント配線板の基板や電子材料電気材料の絶縁性基板などに有用であり、電子機器の部品や機械部品として広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】乾燥装置の概要を示す図である。
【符号の説明】
【0074】
1 巻き取りロール
2 第3ゾーン下側吹き出し口
3 第2ゾーン下側吹き出し口
4 第1ゾーン下側吹き出し口
5 巻き出し塗工部
6 支持体
7 第1ゾーン上側吹き出し口
8 第2ゾーン上側吹き出し口
9 第3ゾーン上側吹き出し口
10 風量計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子および又は高分子前駆体を含む溶液を支持体上に塗布・乾燥して前記高分子および又は高分子前駆体を含む塗膜を形成する工程を少なくとも含む高分子フィルムの流延製膜方法において、当該乾燥に際し気流(風)を使用し、該気流(風)の支持体塗布面側雰囲気の気流量(風量)に対し、その反対側の風量を10%以上の量で使用することを特徴とする高分子フィルムの製法。
【請求項2】
溶液が、分子鎖にイミド結合および/又はアミド結合を有する高分子および/又は高分子前駆体を含む溶液である請求項1記載の高分子フィルムの製法。
【請求項3】
溶液が、ベンザゾール結合(ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンゾイミダゾール)を有する高分子の前駆体を含む溶液である請求項1記載の高分子フィルムの製法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−176643(P2006−176643A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−371278(P2004−371278)
【出願日】平成16年12月22日(2004.12.22)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】