説明

高分子化合物の製造方法

【課題】短時間の重合で得られる高分子化合物の分子量が高くなる高分子化合物の製造方法を提供すること。
【解決手段】ホウ素原子を含む第1の官能基を少なくとも2つ有する第1の芳香族化合物と、第1の官能基と反応しうる第2の官能基を少なくとも2つ有する第2の芳香族化合物とを、有機溶媒、パラジウム錯体、塩基、及び式(1)で示される化合物の存在下で重合させる工程を包含する、式(2)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物の製造方法。




〔式中、Arは芳香族化合物から水素原子を2個除いた2価の基を表す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縮合重合による高分子化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繰り返し単位としてアリーレン基又はヘテロアリーレン基を有する高分子化合物の製造方法としては、様々な製造方法が検討されている。例えば、ホウ素原子を含む官能基を2つ有する芳香族化合物とブロモ基を2つ有する芳香族化合物とを、パラジウム錯体、塩基及び有機溶媒の存在下、Suzukiカップリング反応により重合させることによる高分子化合物の製造方法が提案されている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Polymer,vol.38,P.1221−1226(1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の高分子化合物の製造方法は、短時間の重合で得られる高分子化合物の分子量が、十分に高くないという課題があった。
【0005】
本発明の目的は、短時間の重合で得られる高分子化合物の分子量が高くなる高分子化合物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち、本発明は第一に、
ホウ素原子を含む第1の官能基を少なくとも2つ有する第1の芳香族化合物と、第1の官能基と反応しうる第2の官能基を少なくとも2つ有する第2の芳香族化合物とを、有機溶媒、パラジウム錯体、塩基、及び式(1)で示される化合物の存在下で重合させる工程を包含する、式(2)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物の製造方法を提供する。
【0007】
【化1】

【0008】
〔式中、R、R、R、R、R、及びRは、同一であるか相異なり、それぞれ水素原子又は1価の有機基を表すか、R〜Rの内の2個が連結して非芳香族性の環を形成し、残りは、同一であるか相異なり、それぞれ水素原子又は1価の有機基を表す。〕
【0009】
【化2】

【0010】
〔式中、Arは芳香族化合物から水素原子を2個除いた2価の基を表す。〕
【0011】
本発明は第二に、ホウ素原子を含む第1の官能基及び第1の官能基と反応しうる第2の官能基を有する芳香族化合物を、有機溶媒、パラジウム錯体、塩基、及び式(1)で示される化合物の存在下で重合させる工程を包含する、式(2)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物の製造方法を提供する。
【0012】
【化3】

【0013】
〔式中、R、R、R、R、R、及びRは、同一であるか相異なり、それぞれ水素原子又は1価の有機基を表すか、R〜Rの内の2個が連結して非芳香族性の環を形成し、残りは、同一であるか相異なり、それぞれ水素原子又は1価の有機基を表す。〕
【0014】
【化4】

【0015】
〔式中、Arは芳香族化合物から水素原子を2個除いた2価の基を表す。〕
【発明の効果】
【0016】
本発明の製造方法を用いれば、短時間の重合で高分子量の高分子化合物を製造できるため、本発明は工業的に極めて有用である。式(1)で示される化合物の存在下で重合を行うとき、該化合物の二重結合部位またはアリル部位によりパラジウム錯体が安定化されてこのような効果が発現すると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0018】
本発明の高分子化合物の製造方法の第1の態様は、ホウ素原子を含む第1の官能基を少なくとも2つ有する第1の芳香族化合物と、第1の官能基と反応しうる第2の官能基を少なくとも2つ有する第2の芳香族化合物とを、有機溶媒、パラジウム錯体、塩基、及び式(1)で示される化合物の存在下で重合させる式(2)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物の製造方法である。
【0019】
【化5】

【0020】
〔式中、R、R、R、R、R、及びRは、同一であるか相異なり、それぞれ水素原子又は1価の有機基を表すか、R〜Rの内の2個が連結して非芳香族性の環を形成し、残りは、同一であるか相異なり、それぞれ水素原子又は1価の有機基を表す。〕
【0021】
1価の有機基としては、ハロゲン基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基、複素環チオ基、アミノ基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基が挙げられる。
【0022】
非芳香族性の環とは、芳香環ではない環を表す。
【0023】
例えば、式(1)で示される化合物において、RとRとが連結して非芳香族性の環が形成されるとは、RとRとが連結して芳香環ではない環を形成することを意味する。
【0024】
式(1)で示される化合物は、常温で液体であっても固体であってもよい。常温で液体の場合は、本発明の製造方法に用いられる有機溶媒、水等と混合することが好ましい。常温で固体の場合は、本発明の製造方法に用いられる有機溶媒、水等に溶解することが好ましい。
【0025】
式(1)で示される化合物としては、鎖状オレフィン構造を有する化合物、環状オレフィン構造を有する化合物が挙げられる。
【0026】
鎖状オレフィン構造には、二重結合が含まれていてもよい。
【0027】
環状オレフィン構造には、二重結合が含まれていてもよい。また、環状オレフィン構造は、さらに環が縮合して縮合環構造になっていてもよく、架橋構造を有していてもよい。
【0028】
鎖状オレフィン構造を有する式(1)で示される化合物は、直鎖構造であっても分岐構造であってもよい。二重結合を、化合物の末端に有していても鎖中に有していてもよい。
【0029】
鎖中の二重結合は、cis型であってもtrans型であってもよい。該化合物の具体例としては、1−プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−ペンタデセン、2−ブテン、2−ペンテン、2−ヘキセン、2−ヘプテン、2−オクテン、2−ノネン、2−デセン、2−ウンデセン、2−ドデセン、2−ペンタデセン、3−ヘキセン、3−ヘプテン、3−オクテン、3−ノネン、3−デセン、3−ウンデセン、3−ドデセン、3−ペンタデセン、2−メチル−1−ペンテン、2−メチル−2−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、3−メチル−2−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−2−ペンテン、2−メチル−1−ヘキセン、4−メチル−1−ヘキセン、2−メチル−1−ヘプテン、2−メチル−2−ヘプテン、アリルシクロペンタン、アリルシクロヘキサン、カンフェン(Camphene)が挙げられる。
【0030】
該化合物としては、沸点が大気圧(1atm)において40℃以上である化合物が好ましく、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−ペンタデセンがより好ましい。
【0031】
鎖状オレフィン構造を有する式(1)で示される化合物は、二重結合を2つ以上有していてもよい。二重結合を2つ以上有する化合物の具体例としては、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、1,4−ヘプタジエン、1,5−ヘプタジエン、1,6−ヘプタジエン、1,3−オクタジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンが挙げられる。
【0032】
該化合物としては、沸点が大気圧(1atm)において40℃以上である化合物が好ましく、1,3−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,3−ヘプタジエン、1,4−ヘプタジエン、1,5−ヘプタジエン、1,6−ヘプタジエン、1,3−オクタジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエンがより好ましい。
【0033】
鎖状オレフィン構造を有する式(1)で示される化合物は、アルキル基以外の官能基を含んでいてもよい。該官能基を含む化合物の具体例としては、2−プロペン−1−オール、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、6−ヘプテン−1−オール、7−オクテン−1−オール、メチル 3−ペンテノエート、メチル 4−ペンテノエート、メチル 6−ヘプテノエートが挙げられる。
【0034】
環状オレフィン構造を有する式(1)で示される化合物の具体例としては、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロノネン、シクロデセン、シクロノネン、シクロデセン、シクロドデセン、シクロペンタデンが挙げられる。該化合物としては、沸点が大気圧(1atm)において40℃以上である化合物が好ましく、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、シクロノネン、シクロデセン、シクロドデセン、シクロペンタデセンがより好ましい。
【0035】
環状オレフィン構造を有する式(1)で示される化合物は、二重結合を2つ以上有していてもよい。二重結合を2つ以上有する化合物の具体例としては、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,3−シクロヘプタジエン、1,3−シクロオクタジエン、1,5−シクロオクタジエン、1,9−シクロヘキサデカジエン、1,5,9−シクロドデカトリエン、α−カリヨフィルレン(α−Caryophyllene)が挙げられる。
【0036】
環状オレフィン構造を有する式(1)で示される化合物は、2つ以上の環を有していてもよい。具体的には、環状オレフィン構造にさらに環が縮合して縮合環構造になっていてもよく、架橋構造を有していてもよい。
【0037】
架橋構造を有する環状オレフィン構造は、ノルボルネン構造、ノルボルナジエン構造が挙げられる。ノルボルネン構造を有する化合物としては、ノルボルネン、5−ノルボルネン−2−オール、5−ノルボルネン−2−メタノール、5−ノルボルネン−2,2−ジメタノール、5−ノルボルネン−2,3−ジメタノール、5−ノルボルネン−2−アルデヒド、5−ノルボルネン−2−カルボニトリル、5−ノルボルネン−2−カルボン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、5−ノルボルネン−2−イルアセテート、5−ノルボルネン−2,3−ジイルジアセテート、5−ビニル−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、ノルボルナジエン構造を有する化合物としては、2,5−ノルボルナジエン、7−tert−ブトキシ−2,5−ノルボルナジエンが挙げられる。
【0038】
環状オレフィン構造にさらに環が縮合して縮合環構造を有する化合物としては、テトラヒドロインデン、2−カレン、3−カレンが挙げられる。
【0039】
式(1)で示される化合物は、光学不斉炭素を有していてもよい。光学不斉炭素を有する式(1)で示される化合物の具体例としては、(R)−(+)−リモネン、(S)−(−)−リモネン、(1R)−(+)−α−ピネン、(1S)−(−)−α−ピネン、β−カリヨフィルレン(β−Caryophyllene)、(−)−α−セドレン(Cedrene)、(+)−β−セドレン(Cedrene)が挙げられる。
【0040】
式(1)で示される化合物は、アリール基を有していてもよい。アリール基を有する式(1)で示される化合物の具体例としては、アリルベンゼン、インデン、2−メチルインデン、2−フェニルプロペン、1−フェニル−1−プロペン、α−メチルスチルベン、4−フェニル−1−ブテン、2−メチル−1−フェニル−1−プロペン、2−イソプロペニルトルエン、4−イソプロペニルトルエン、2−イソプロペニルナフタレン、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテンが挙げられる。
【0041】
式(1)で示される化合物は、官能基を含むアリール基を有していてもよい。官能基を含むアリール基を有する式(1)で示される化合物の具体例としては、2−アリールフェノール、2−メチル−3−フェニル−2−プロペン−1−オール、4−アリールアニソール、アリールベンジルエーテル、2−アリール−6−メチルフェノール、4−プロペニルアニソール、アリールペンタフルオロベンゼンが挙げられる。
【0042】
式(1)で示される化合物において、短時間の重合で高分子量の高分子化合物を生成させる観点からは、Rが水素原子であることが好ましい。
【0043】
式(1)で示される化合物において、短時間の重合で高分子量の高分子化合物を生成させる観点からは、R及びRが水素原子であることが好ましい。
【0044】
式(1)で示される化合物において、R、R及びRが水素原子であることがより好ましい。
【0045】
式(1)で示される化合物が、高分子化合物を安価に製造する観点からは、炭化水素化合物、又は、炭素原子、水素原子及び酸素原子からなる化合物であることが好ましい。
【0046】
式(1)で示される化合物は、炭化水素化合物であることがより好ましい。
【0047】
式(1)で示される化合物は、高分子化合物を安価に製造する観点からは、脂肪族の化合物であることが好ましい。
【0048】
式(1)で示される化合物は、高分子化合物を安価に製造する観点からは、R、R、R、R及びRがそれぞれ水素原子であり、Rが炭素数3〜12のアルキル基であるあることが好ましい。具体的には、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−ペンタデセンが挙げられる。
【0049】
式(1)で示される化合物は、式(15)で示される化合物であることが好ましい。式(15)で示される化合物の具体例としては、置換又は非置換の1−シクロヘキセン、置換又は非置換のノルボルネン、リモネン、ピネンが挙げられる。
【0050】
【化6】

【0051】
〔式中、R〜Rは、同一であるか相異なり、それぞれ水素原子又は脂肪族炭化水素基を表す。〕
【0052】
本発明の製造方法における式(1)で示される化合物の使用量は、触媒として用いたパラジウム錯体1モルに対して0.1〜1000モルであることが好ましい。より好ましくは0.5〜500モルであり、さらに好ましくは1〜250モルである。
【0053】
本発明の製造方法における式(1)で示される化合物の使用量は、パラジウム錯体中のホスフィン化合物、あるいは配位子として用いたホスフィン化合物1モルに対して0.5〜1000モルであることが好ましい。より好ましくは0.5〜500モルであり、さらに好ましくは1〜250モルである。
【0054】
本発明の製造方法における式(1)で示される化合物の使用量は、第1の芳香族化合物と第2の芳香族化合物の合計1モルに対して0.0001〜20モルであることが好ましい。より好ましくは0.0005〜20モルであり、さらに好ましくは0.001〜10モルである。式(1)で示される化合物の使用量が第1の芳香族化合物と第2の芳香族化合物の合計1モルに対して0.0001モル未満であると高分子化合物の分子量が増加する効果が得られず、20モルを超えて使用しても効果の向上が認められない。
【0055】
特に好ましい実施形態では、式(1)で示される化合物の使用量は、第1の芳香族化合物と第2の芳香族化合物の合計1モルに対して0.01〜1モル、好ましくは0.03〜0.5モル、更に好ましくは0.05〜0.3モルである。
【0056】
式(1)で示される化合物が常温で液体である場合、該化合物を反応溶媒として用いてもよい。式(1)で示される化合物を反応溶媒として使用する際は、これを有機溶媒と混合して使用することができる。
【0057】
常温で液体である式(1)で示される化合物の沸点は、大気圧(1atm)において40℃以上であることが好ましく、反応温度より高くても低くてもよい。
【0058】
式(1)で示される化合物の沸点が、重合反応の反応温度より低い場合、沸点と反応温度の差が80℃以内であることが好ましく、さが60℃以内であることがより好ましい。
【0059】
式(1)で示される化合物の沸点が、重合反応の反応温度より高い場合、沸点と反応温度の差が200℃以内であることが好ましく、差が150℃以内であることがより好ましい。
【0060】
第1の芳香族化合物が有するホウ素原子を含む第1の官能基とは、−B(OH)で示されるボロン酸構造を有する基、−B(OR26)(OR27)、式(B−1)で示される基等で示されるボロン酸エステル構造を有する基、−BR2930等で示されるボラン構造を有する基、式(B−2)で示される基等で示されるジアザボラン構造を有する基が挙げられる。ここで、R26は、炭素数が1〜6のアルキル基であり、該アルキル基は置換基を有していてもよい。R27は炭素数が1〜6のアルキル基であり、該アルキル基は置換基を有していてもよい。また、R28は、2価の炭化水素基であり、式(A)中のホウ素原子及び2個の酸素原子とともに5員環又は6員環となったエステル環構造を形成する基である。該2価の炭化水素基は、置換基を有していてもよい。R28として好ましくは、炭素数が2又は3のアルキレン基、オルト−又はメタ−フェニレン基である。なお、該アルキレン基及びフェニレン基は、置換基を有していてもよい。R29及びR30は、同一又は相異なり、炭素数1〜6のアルキル基であり、該アルキル基は置換基を有していてもよい。R31は、2価の炭化水素基であり、該2価の炭化水素基は置換基を有していてもよい。
【0061】
【化7】

【0062】
ボロン酸エステル構造を有する基としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール、i−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、n−ペンチルアルコール、ネオペンチルアルコール、シクロペンチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、シクロヘキシルアルコール、エチレングリコール、ピナコール、プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、又は1,2−ジヒドロキシベンゼン等のアルコールと、ボロン酸とのエステル化により生成する基が挙げられ、好ましくは、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ピナコール、プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール又は1,2−ジヒドロキシベンゼンと、対応するボロン酸とのエステル化により生成する基が挙げられる。
【0063】
ボロン酸エステル構造を有する基としては、下記式で示される基が例示される。
【0064】
【化8】

【0065】
(式中、Meはメチル基を示し、Etはエチル基を示す。)
【0066】
式(B−2)で示される基としては、ジアミン化合物と、ボロン酸との脱水反応により生成する基が挙げられ、ジアザボロール構造を有する基又はジアザボリル構造を有する基が挙げられる。
【0067】
ジアザボロール構造を有する基又はジアザボリル構造を有する基としては、下記式で示される基が例示される。
【0068】
【化9】

【0069】
第2の芳香族化合物が有する第2の官能基とは、Cl、Br又はIなどのハロゲン基、トリフレート(CFSO−)、メシラート(CHSO−)、トシラート(CHSO−)などのスルホン酸エステル構造を有する基が挙げられる。
【0070】
本発明における「ホウ素原子を含む第1の官能基」と「第2の官能基」は、Suzukiカップリング反応でC−C結合を形成する際の官能基の組み合わせとなることが好ましい。
【0071】
本発明の製造方法に用いられる第1の芳香族化合物としては、式(3)〜式(6)の各々で示される化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物が好ましい。また、第2の芳香族化合物としては、式(7)〜式(10)の各々で示される化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物が好ましい。
【0072】
【化10】

【0073】
〔式中、Wはホウ素原子を含む第1の官能基を表し、Wは第2の官能基を表し、Aはアリーレン基を表し、Bは芳香族性を有する2価の複素環残基を表し、Cは2価の芳香族アミン残基を表し、Dは2個の芳香環を炭化水素基又はヘテロ原子を介して連結した化合物から水素原子を2個除いた2価の基を表す。〕
【0074】
第1の芳香族化合物又は第2の芳香族化合物は、複数種類の化合物を併用してよい。例えば、第2の芳香族化合物として、式(9)で示される化合物と式(10)で示される化合物を混合して使用してもよい。
【0075】
アリーレン基とは、芳香族炭化水素から芳香環を構成する炭素原子に結合した水素原子2個を除いた残りの原子団であり、非置換のアリーレン基及び置換のアリーレン基を意味する。アリーレン基には、ベンゼン環を持つもの、縮合環を持つもの、独立したベンゼン環又は縮合環2個以上が単結合又は2価の有機基を介して結合した基も含まれる。
置換のアリーレン基における置換基は、特には限定されないが、高分子化合物の溶解性、高分子化合物の合成の行いやすさ等の観点からは、置換基が、ハロゲン基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基、複素環チオ基、アミノ基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基であることが好ましい。
【0076】
アリーレン基における置換基を除いた部分の炭素原子数は、通常6〜60、好ましくは6〜40、より好ましくは6〜20程度である。また、置換基を含めたアリーレン基の全炭素原子数は、通常6〜100、好ましくは6〜80、より好ましくは6〜70程度である。
【0077】
アリーレン基としては、例えば、フェニレン基(例えば、下式Ph−1〜Ph−3)、ナフタレン−ジイル基(例えば、下式Naph−1〜Naph−10)、アントラセン−ジイル基(例えば、下式Anth−1〜Anth−12)、ビフェニル−ジイル基(例えば、下式BP−1〜BP−6)、ターフェニル−ジイル基(例えば、下式TP−1〜TP−7)、フルオレン−ジイル基(例えば、下式Flu−1〜Flu−10)、ベンゾフルオレン−ジイル基(例えば、下式BFlu−1〜BFlu−34)、及び、その他の2価の縮合多環式芳香族炭化水素基(例えば、下式HC−1〜HC−19)が挙げられる。
【0078】
【化11】

【0079】
【化12】

【0080】
【化13】

【0081】
【化14】

【0082】
【化15】

【0083】
【化16】

【0084】
【化17】

【0085】
【化18】

【0086】
【化19】

【0087】
上記式中、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基、複素環チオ基、アミノ基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、カルボキシル基、シアノ基又はニトロ基を表す。
【0088】
芳香族性を有する2価の複素環残基とは、芳香族性を有する複素環化合物から水素原子2個を除いた残りの原子団をいい、該基は置換基を有していてもよい。
ここに芳香族性を有する複素環化合物とは、環式構造をもつ有機化合物であって、環を構成する元素が炭素原子だけでなく、酸素、硫黄、窒素、リン、ホウ素、ヒ素などのヘテロ原子も含む化合物をいう。
【0089】
置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、ハロゲン原子、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、1価の複素環基、カルボキシル基、置換カルボキシル基、シアノ基が挙げられる。
【0090】
芳香族性を有する2価の複素環残基における置換基を除いた部分の炭素数は通常3〜60程度である。また、芳香族性を有する2価の複素環残基の置換基を含めた全炭素数は、通常3〜100程度である。
【0091】
芳香族性を有する2価の複素環残基としては、例えば以下のものが挙げられる。
ヘテロ原子として、窒素を含む2価の複素環残基;ピリジン−ジイル基(下図の式Py−1〜Py−6)、ジアザフェニレン基(下図の式Py−7〜Py−12)、キノリン−ジイル基(下図の式Quin−1〜Quin−20)、キノキサリン−ジイル基(下図の式Quin−51〜Quin−58)、アクリジン−ジイル基(下図の式Acri−1〜Acri−17)、フェナントロリン−ジイル基(下図の式Phen−1〜Phen−4)、ビピリジン−ジイル基(下図の式BPY−1〜BPY−21)、ヘテロ原子として珪素、窒素、硫黄、セレンなどを含みフルオレン構造を有する複素残基(下図の式HeFlu−1〜HeFlu−15)、ヘテロ原子として珪素、窒素、硫黄、セレンなどを含む5員環複素環残基(下図の式Hetero−1〜Hetero−5)、ヘテロ原子として珪素、窒素、硫黄、セレンなどを含む5員環縮合複素残基(下図の式Hetero−6〜Hetero−27)、ヘテロ原子として珪素、窒素、硫黄、セレンなどを含む5員環複素環残基でそのヘテロ原子のα位で結合し2量体やオリゴマーになっている基(下図の式Hetero−28〜Hetero−31)、ヘテロ原子として珪素、窒素、硫黄、セレンなどを含む5員環複素環残基でそのヘテロ原子のα位でフェニル基に結合している基(下図の式Hetero−32〜Hetero−38)、ヘテロ原子として酸素、窒素、硫黄などを含む5員環縮合複素環残基にフェニル基やフリル基、チエニル基が置換した基(下図の式Hetero−39〜Hetero−48)が挙げられる。
【0092】
【化20】

【0093】
(式中、Rは前記と同じ意味を表す。)
【0094】
【化21】

【0095】
(式中、Rは前記と同じ意味を表す。)
【0096】
【化22】

【0097】
(式中、Rは前記と同じ意味を表す。)
【0098】
【化23】

【0099】
(式中、Rは前記と同じ意味を表す。)
【0100】
【化24】

【0101】
(式中、Rは前記と同じ意味を表す。)
【0102】
【化25】

【0103】
(式中、Rは前記と同じ意味を表す。)
【0104】
【化26】

【0105】
(式中、Rは前記と同じ意味を表す。)
【0106】
【化27】

【0107】
(式中、Rは前記と同じ意味を表す。)
【0108】
【化28】

【0109】
(式中、Rは前記と同じ意味を表す。)
【0110】
【化29】



【0111】
(式中、Rは前記と同じ意味を表す。)
【0112】
【化30】

【0113】
(式中、Rは前記と同じ意味を表す。)
【0114】
2価の芳香族アミン残基とは、芳香族アミンから芳香環を構成する炭素原子に結合した水素原子2個を除いた残りの原子団をいい、非置換の2価の芳香族アミン残基及び置換の2価の芳香族アミン残基を意味する。置換の2価の芳香族アミン残基における置換基は、特には限定されないが、置換基の具体例としては、ハロゲン基、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、1価の複素環基、複素環チオ基、アミノ基、シリル基、アシル基、アシルオキシ基、イミン残基、アミド基、酸イミド基、カルボキシル基、シアノ基、ニトロ基が挙げられる。2価の芳香族アミン残基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常5〜100、好ましくは15〜80、より好ましくは15〜60程度である。
【0115】
2価の芳香族アミン残基としては、例えば、以下の式Am−1〜Am−12で示される基が挙げられる。
【0116】
【化31】

【0117】
(式中、Rは前記と同じ意味を表す。)
【0118】
2個の芳香環を炭化水素基又はヘテロ原子を介して連結した化合物から水素原子を2個除いた2価の基とは、2個の芳香環の各々から水素原子を1個除き、水素原子を除いた炭素原子同士を、炭化水素基又はヘテロ原子である連結基を介して連結した化合物から水素原子を2個除いた残りの2価の基を意味する。なお、該2価の基のここに記した形成プロセスは、当該基の構造を表現するために便宜的に記載したものであり、当該2価の基は、このプロセスで形成された基には限定されない。
【0119】
連結基の構造は、炭化水素基又はヘテロ原子単独の構造でもよく、複数のヘテロ原子、又は1個以上の炭化水素基及び1個以上のヘテロ原子を組み合わせた構造でもよい。
【0120】
ここで「芳香環から水素原子を1個除く」とは、芳香族炭化水素から芳香環を構成する炭素原子に結合した水素原子1個を除くことを意味し、水素原子を除いた結果、芳香環はアリール基となる。このようなアリール基は、非置換のアリール基であっても、基中の水素原子がハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、カルボニル基、カルボキシル基等で置換されたアリール基であってもよい。置換基の数は1個でも複数個でもよく、複数個の置換基は同一であっても相異なっていてもよい。アリール基には、ベンゼン環を持つアリール基、縮合環を持つアリール基、独立したベンゼン環又は縮合環2個以上が単結合又は2価の有機基を介して結合したアリール基も含まれる。アリール基の炭素原子数は、通常6〜60、好ましくは6〜48、より好ましくは6〜30程度である。アリール基としては、例えば、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基(C1〜C12は、炭素数1〜12であることを示す。以下も同様である。)、ビス(C1〜C12アルコキシ)フェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基、ビス(C1〜C12アルキルフェニル)フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、9−アントラセニル基、テトラフルオロフェニル基などが挙げられ、中でも、フェニル基、C1〜C12アルコキシフェニル基、ビス(C1〜C12アルコキシ)フェニル基、C1〜C12アルキルフェニル基、ビス(C1〜C12アルキルフェニル)フェニル基が好ましい。
【0121】
炭化水素基又はヘテロ原子を介して連結する構造としては、以下に示す構造、及び以下に示す構造のうち2つ以上を組み合わせた構造などが例示される。ここで、Rは前記のものと同じ置換基から選ばれる基であり、Arは炭素数6〜60個の炭化水素基を示す。
【0122】
【化32】

【0123】
本発明の製造方法において、第1の芳香族化合物、第2の芳香族化合物に加え、他の化合物を重合させてもよい。該他の化合物としては、式(16)〜式(18)の各々で示される化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物が挙げられる。
【0124】
【化33】

【0125】
〔式中、Wはホウ素原子を含む第1の官能基を表し、Wは第2の官能基を表し、Eは金属錯体構造を有する2価の基を表す。〕
【0126】
金属錯体構造を有する2価の基とは、有機配位子を有する金属錯体の有機配位子から水素原子を2個除いた残りの2価の基を意味する。
【0127】
該有機配位子の炭素数は、通常4〜60程度である。有機配位子の具体例としては、8−キノリノール及びその誘導体、ベンゾキノリノール及びその誘導体、2−フェニル−ピリジン及びその誘導体、1−フェニル−イソキノリン及びその誘導体、2−フェニル−ベンゾチアゾール及びその誘導体、2−フェニル−ベンゾキサゾール及びその誘導体、ポルフィリン及びその誘導体が挙げられる。
【0128】
また、該錯体の中心金属としては、例えば、アルミニウム、亜鉛、ベリリウム、イリジウム、白金、金、ユーロピウム、テルビウム、ルテニウムが挙げられる。
【0129】
有機配位子を有する金属錯体としては、低分子の蛍光材料や低分子の燐光材料として公知の金属錯体や三重項発光錯体などが挙げられる。
【0130】
金属錯体構造を有する2価の基としては、具体的には、以下の式(Metal−1〜Metal−8)で示される基が挙げられる。
【0131】
【化34】

【0132】
(式中、Rは前記と同じ意味を表す。)
【0133】
本発明の高分子化合物の製造方法は、第1の芳香族化合物及び第2の芳香族化合物として、嵩高い芳香族化合物を用いる場合に好ましい。ここで「嵩高い」とは、芳香族化合物自体が大きい分子であること、あるいは、ホウ素原子を含む第1の官能基の近傍の空間及び第2の官能基の近傍の空間の少なくとも一方に大きな置換基が存在していることを意味する。
【0134】
本発明の高分子化合物の製造方法に用いられる有機溶媒は、第1の芳香族化合物及び第2の芳香族化合物を溶解しうる有機溶媒、重合反応で生成した高分子化合物を溶解しうる有機溶媒が挙げられる。これらの有機溶媒に、必要に応じて塩基を溶解するための水を加えてもよい。
【0135】
重合反応に用いる有機溶媒としては、非極性芳香族溶媒、極性含酸素溶媒、極性含窒素溶媒、極性含硫黄溶媒等が挙げられる。有機溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリジノン、ジメチルスルホキシドが挙げられる。好ましくは、テトラヒドロフラン、トルエンである。
有機溶媒を混合して用いてよく、好ましい有機溶媒の混合の組み合わせは、トルエンとジメチルスルホキシド、トルエンとN−メチル−2−ピロリジノントルエンとエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランとN−メチル−2−ピロリジノンである。
【0136】
重合反応における有機溶媒の使用量は、第1の芳香族化合物の重量と第2の芳香族化合物の重量の合計に対して1〜1000倍が好ましい。
【0137】
重合反応で生成した高分子化合物を溶解させる有機溶媒としては、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、トルエン、キシレン、メシチレン、テトラリン、デカリン、アニソール、n−ブチルベンゼン、n−ヘキシルベンゼンなどが挙げられ、これらの有機溶媒を混合して用いてもよい。高分子化合物の構造や分子量にもよるが、通常は、これらの有機溶媒に高分子化合物を0.1重量%以上溶解させることができる。
【0138】
本発明の高分子化合物の製造方法に用いられるパラジウム錯体は、一般的には、触媒として用いられる。ホスフィンが含まれているパラジウム錯体を用いてもよい。パラジウム錯体がホスフィンを含まない場合、配位子として作用する化合物を添加する。配位子として作用する化合物としては、ホスフィン化合物が挙げられる。
【0139】
本発明に用いられるパラジウム錯体としては、パラジウム(0)錯体又はパラジウム(II)塩が挙げられる。
【0140】
パラジウム錯体としては、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)、テトラキス(メチルジフェニルホスフィン)パラジウム(0)トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)クロロホルム付加体、酢酸パラジウム(II)又は塩化パラジウム(II)、(ビシクロ[2.2.1 ]ヘプタ−2,5−ジエン)ジクロロパラジウム(II)、(2,2’−ビピリジル)ジクロロパラジウム(II)、ビス(アセテート)ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ビス(アセトニトリル)クロロニトロパラジウム(II)、ビス(ベンゾニトリル) ジクロロパラジウム(II)、ビス(アセトニトリル)ジクロロパラジウム(II)、ビス[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム(0)、[1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン]ジクロロパラジウム(II)、トランス−ジブロモビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロ(1,5−シクロオクタジエン)パラジウム(II)、ジクロロ(エチレンジアミン)パラジウム(II)、ジクロロ(N,N,N',N’−テトラメチレンジアミン)パラジウム(II)、ジクロロ(1,10−フェナントロリン)パラジウム(II)、シス−ジクロロビス(ジメチルフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(メチルジフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリシクロヘキシルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリエチルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリ−o−トルイルホスフィン)パラジウム(II)、パラジウム(II)アセチルアセトナート、臭化パラジウム(II)、パラジウム(II)ヘキサフルオロアセチルアセトナート、ヨウ化パラジウム(II)、硝酸パラジウム(II)、硫酸パラジウム(II)、トリフルオロ酢酸パラジウム(II)、臭化カリウムパラジウム(II)、塩化カリウムパラジウム(II)、塩化ナトリウムパラジウム(II)、硝酸テトラアンミンパラジウム(II)、テトラキス(アセトニトリル)パラジウム(II)テトラフルオロボレートが好ましく、より好ましくは酢酸パラジウム(II)である。
【0141】
触媒として用いるパラジウム錯体の使用量は、第1の芳香族化合物と第2の芳香族化合物の合計1モルに対して0.0001〜0.1モルであることが好ましく、より好ましくは0.0005〜0.05モルであり、さらに好ましくは0.001〜0.03モルである。パラジウム錯体の使用量が第1の芳香族化合物と第2の芳香族化合物の合計1モルに対して0.0001モル未満であると高分子化合物の分子量が増加する効果が得られず、0.1モルを超えて使用しても効果の向上が認められない。
【0142】
特に好ましい実施形態では、パラジウム錯体の使用量は、第1の芳香族化合物と第2の芳香族化合物の合計1モルに対して0.0003〜0.01モル、好ましくは0.0005〜0.005モル、更に好ましくは0.0008〜0.003モルである。
【0143】
パラジウム錯体がホスフィンを含まない場合には、配位子として作用する以下の化合物を添加することが好ましい。
【0144】
配位子として作用する化合物としては、アルキル基を有するホスフィン化合物、アリール基を有するホスフィン化合物、又はアルキル基及びアリール基の両方を有するホスフィン化合物を挙げることができる。配位子として作用する化合物は、トリフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリス( ペンタフルオロフェニル)ホスフィン、トリス(p−フルオロフェニル)ホスフィン、トリス(o−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(m−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(p−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6−トリメトキシフェニル)ホスフィン、トリ(m−クロロフェニル)ホスフィン、トリ(p−クロロフェニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ−tert−ブチルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−2−フリルホスフィン、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)ビフェニル、2−ジ−tert−ブチルホスフィノ−2’−メチルビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ−2’,6’−ジメトキシ−1,1’−ビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’−(N,N−ジメチルアミノ)ビフェニル、2−ジシクロヘキシルホスフィノ−2’−メチル−ビフェニル、2−(ジシクロヘキシルホスフィノ)−2’,4’,6’−トリ−イソプロピル−1,1’−ビフェニルが好ましく、より好ましくはトリフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリス(o−メトキシフェニル)ホスフィンである。
【0145】
配位子として作用する化合物の使用量は、特に限定されるものではないが、第1の芳香族化合物と第2の芳香族化合物の合計1モルに対して0.0001〜0.5モルであることが好ましい。配位子として作用する化合物の使用量が第1の芳香族化合物と第2の芳香族化合物の合計1モルに対して0.0001モル未満であると高分子化合物の分子量が増加する効果が得られず、0.5モルを超えて使用しても効果の向上が認められない。
【0146】
特に好ましい実施形態では、配位子として作用する化合物の使用量は、第1の芳香族化合物と第2の芳香族化合物の合計1モルに対して0.0003〜0.02モル、好ましくは0.0005〜0.01モル、更に好ましくは0.001〜0.008モルである。
【0147】
本発明の高分子化合物の製造方法に用いられる塩基としては、無機塩基、有機塩基、無機塩が挙げられる。塩基は、必要に応じて有機溶媒又は水に溶解して用いられる。
【0148】
塩基としては、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウム等の無機塩基;テトラエチルアンモニウム水酸化物、ビス(テトラエチルアンモニウム)炭酸塩、トリエチルアミン等の有機塩基;フッ化セシウム等の無機塩が挙げられる。
塩基は、必要に応じて有機溶媒又は水に溶解して用いられる。例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、テトラエチルアンモニウム水酸化物、ビス(テトラエチルアンモニウム)炭酸塩は水溶液の形態で用いることもできる。
重合反応における塩基の使用量は、第1の芳香族化合物と第2の芳香族化合物の合計1モルに対して0.1〜50モルであることが好ましく、より好ましくは1〜20モルである。
【0149】
本発明の高分子化合物の製造方法では、相間移動触媒の存在下で重合を行ってもよい。
中でも、無機塩基を水溶液として用い、反応系が有機溶媒層と水溶液層の2層となる条件においては、相間移動触媒を用いることが好ましい。
【0150】
相間移動触媒としては、テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物が挙げられる。テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物の種類や量は、使用する第1の芳香族化合物、第2の芳香族化合物、溶媒の種類、溶媒の量に応じて適宜選定される。相間移動触媒を用いる場合、その使用量は、第1の芳香族化合物と第2の芳香族化合物の合計1モルに対して0.1〜20モルであることが好ましい。
【0151】
テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物は、単一のものであってもよいし、異なる種類のテトラアルキルアンモニウムハロゲン化物が混合されたものであってもよい。
【0152】
テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物において、アルキル基としてはメチル基、エチル基、イソプロピル基、n−プロピル基、tert−ブチル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基又はn−オクチル基が挙げられる。テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物が有するハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素が挙げられる。
【0153】
テトラアルキルアンモニウムハロゲン化物の具体例として、フッ化テトラメチルアンモニウム、フッ化テトラエチルアンモニウム、フッ化テトラ−n−ブチルアンモニウム、フッ化テトラ−tert−ブチルアンモニウム、塩化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、塩化テトラ−n−ブチルアンモニウム、塩化テトラ−tert−ブチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラ−n−ブチルアンモニウム、臭化テトラ−tert−ブチルアンモニウム、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラ−n−ブチルアンモニウム、ヨウ化テトラ−tert−ブチルアンモニウム、テトラ−n−ペンチルアンモニウムフルオライド、塩化テトラ−n−ペンチルアンモニウム、臭化テトラ−n−ペンチルアンモニウム、ヨウ化テトラ−n−ペンチルアンモニウム、テトラ−n−ヘキシルアンモニウムフルオライド、塩化テトラ−n−ヘキシルアンモニウム、臭化テトラ−n−ヘキシルアンモニウム、ヨウ化テトラ−n−ヘキシルアンモニウム、テトラ−n−ヘプチルアンモニウムフルオライド、塩化テトラ−n−ヘプチルアンモニウム、臭化テトラ−n−ヘプチルアンモニウム、ヨウ化テトラ−n−ヘプチルアンモニウム、テトラ−n−オクチルアンモニウムフルオライド、塩化テトラ−n−オクチルアンモニウム、臭化テトラ−n−オクチルアンモニウム、ヨウ化テトラ−n−オクチルアンモニウム、塩化トリ−n−オクチルメチルアンモニウムが挙げられる。
【0154】
本発明の高分子化合物の製造方法により、第1の芳香族化合物と第2の芳香族化合物から、式(2)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物が製造される。
【0155】
【化35】

【0156】
〔式中、Arは芳香族化合物から水素原子を2個除いた2価の基を表す。即ち、Arは第1の芳香族化合物の残基又は第2の芳香族化合物の残基である。〕
【0157】
本発明の高分子化合物の製造方法の第2の態様は、ホウ素原子を含む第1の官能基及び第1の官能基と反応しうる第2の官能基を有する芳香族化合物を、有機溶媒、パラジウム錯体、塩基、及び式(1)で示される化合物の存在下で重合させる式(2)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物の製造方法である。
【0158】
【化36】

【0159】
〔式中、R、R、R、R、R、及びRは、同一であるか相異なり、それぞれ水素原子又は1価の有機基を表すか、R〜Rの内の2個が連結して非芳香族性の環を形成し、残りは、同一であるか相異なり、それぞれ水素原子又は1価の有機基を表す。〕
【0160】
【化37】

【0161】
〔式中、Arは芳香族化合物から水素原子を2個除いた2価の基を表す。〕
【0162】
本発明の高分子化合物の製造方法の第2の態様に用いられる式(1)で表される化合物の具体例としては、第1の態様に用いられる式(1)で表される化合物と同じ化合物が挙げられる。
【0163】
本発明の製造方法における式(1)で示される化合物の使用量は、前記芳香族化合物1モルに対して0.0001〜20モルであることが好ましい。より好ましくは0.0005〜20モルであり、さらに好ましくは0.001〜10モルである。式(1)で示される化合物の使用量が前記芳香族化合物1モルに対して0.0001モル未満であると高分子化合物の分子量が増加する効果が得られず、20モルを超えて使用しても効果の向上が認められない。
【0164】
特に好ましい実施形態では、式(1)で示される化合物の使用量は、前記芳香族化合物1モルに対して0.01〜1モル、好ましくは0.03〜0.5モル、更に好ましくは0.05〜0.3モルである。
【0165】
本発明の製造方法に用いられる芳香族化合物としては、式(11)〜式(14)の各々で示される化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物が挙げられる。
【0166】
【化38】

【0167】
〔式中、Wはホウ素原子を含む第1の官能基を表し、Wは第2の官能基を表し、Aはアリーレン基を表し、Bは芳香族性を有する2価の複素環残基を表し、Cは2価の芳香族アミン残基を表し、Dは2個の芳香環を炭化水素基又はヘテロ原子を介して連結した化合物から水素原子を2個除いた2価の基を表す。〕
【0168】
ホウ素原子を含む第1の官能基、第2の官能基、アリーレン基、芳香族性を有する2価の複素環残基、2価の芳香族アミン残基、2個の芳香環を炭化水素基又はヘテロ原子を介して連結した化合物から水素原子を2個除いた2価の基の定義、具体例は、前述のホウ素原子を含む第1の官能基、第2の官能基、アリーレン基、芳香族性を有する2価の複素環残基、2価の芳香族アミン残基、2個の芳香環を炭化水素基又はヘテロ原子を介して連結した化合物から水素原子を2個除いた2価の基の定義、具体例と同じである。
【0169】
本発明の製造方法において、前記芳香族化合物に加え、他の化合物を重合させてもよい。該他の化合物としては、式(16)〜式(18)の各々で示される化合物が挙げられる。
【0170】
本発明の高分子化合物の製造方法は、前記芳香族化合物として、嵩高い芳香族化合物を用いる場合に好ましい。ここで「嵩高い」とは、芳香族化合物自体が大きい分子であること、あるいは、ホウ素原子を含む第1の官能基の近傍の空間及び第2の官能基の近傍の空間の少なくとも一方に大きな置換基が存在していることを意味する。
【0171】
本発明の高分子化合物の製造方法の第2の態様に用いられる有機溶媒の具体例としては、第1の態様に用いられる有機溶媒と同じ有機溶媒が挙げられる。
有機溶媒の使用量は、前記芳香族化合物に対して1〜1000重量倍が好ましい。
【0172】
本発明の高分子化合物の製造方法の第2の態様に用いられるパラジウム錯体の具体例としては、第1の態様に用いられるパラジウム錯体と同じ錯体が挙げられる。
【0173】
触媒として用いるパラジウム錯体の使用量は、前記芳香族化合物1モルに対して0.00001〜0.1モルであることが好ましく、より好ましくは0.00005〜0.05モルであり、さらに好ましくは0.0001〜0.03モルである。パラジウム錯体の使用量が前記芳香族化合物1モルに対して0.00001モル未満であると高分子化合物の分子量が増加する効果が得られず、0.1モルを超えて使用しても効果の向上が認められない。
【0174】
パラジウム錯体がホスフィンを含まない場合には、配位子として作用する化合物を添加することが好ましい。
【0175】
配位子として作用する化合物の使用量は、特に限定されるものではないが、前記芳香族化合物1モルに対して0.0001〜0.5モルであることが好ましい。配位子として作用する化合物の使用量が前記芳香族化合物1モルに対して0.0001モル未満であると高分子化合物の分子量が増加する効果が得られず、0.5モルを超えて使用しても効果の向上が認められない。
【0176】
特に好ましい実施形態では、配位子として作用する化合物の使用量は、前記芳香族化合物1モルに対して0.0003〜0.02モル、好ましくは0.0005〜0.01モル、更に好ましくは0.001〜0.008モルである。
【0177】
本発明の高分子化合物の製造方法の第2の態様に用いられる塩基の具体例としては、第1の態様に用いられる塩基と同じ塩基が挙げられる。
塩基の使用量は、前記芳香族化合物1モルに対して0.1〜50モルであることが好ましく、より好ましくは1〜20モルである。
【0178】
本発明の高分子化合物の製造方法の第2の態様において、相間移動触媒の存在下で重合を行ってもよい。相間移動触媒の具体例としては、第1の態様に用いられる相間移動触媒と同じ塩基が挙げられる。相間移動触媒を用いる場合、その使用量は、前記芳香族化合物1モルに対して0.1〜20モルであることが好ましい。
【0179】
本発明の高分子化合物の製造方法により、前記芳香族化合物から、式(2)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物が製造される。
【0180】
【化39】

【0181】
〔式中、Arは芳香族化合物から水素原子を2個除いた2価の基を表す。即ち、Arは前記芳香族化合物の残基である。〕
【0182】
本発明の高分子化合物の製造方法において、好ましい態様としては、ホウ素原子を含む第1の官能基のモル数の合計(J)と、第2の官能基のモル数の合計(K)との比K/Jが実質的に1(通常、0.6〜1.4の範囲、好ましくは0.9〜1.1の範囲)である製造方法が挙げられる。
【0183】
本発明の高分子化合物の製造方法に用いる有機溶媒は、用いる有機溶媒によっても異なるが、一般的に副反応を抑制するために、重合前に十分に脱酸素処理を施すことが好ましい。重合反応はアルゴンや窒素などの不活性雰囲気下で進行させることが好ましい。また、塩基が水溶液の場合、水溶液の脱酸素処理を施すことが好ましい。
【0184】
塩基、触媒であるパラジウム錯体又は配位子を反応系中に添加する方法としては、芳香族化合物を有機溶媒に溶解した溶液をアルゴンや窒素などの不活性雰囲気下で攪拌しながら塩基又は触媒であるパラジウム錯体又は配位子の溶液を添加する方法が例示される。別の方法として、塩基、触媒であるパラジウム錯体又は配位子の溶液をアルゴンや窒素などの不活性雰囲気下で攪拌しながら、芳香族化合物を有機溶媒に溶解した溶液を添加する方法が例示される。
【0185】
本発明の製造方法における重合は、有機溶媒の融点以上沸点以下の温度で行うことができる。反応温度は、通常、室温(25℃)〜250℃であり、好ましくは50〜200℃であり、より好ましくは80〜150℃である。
【0186】
本発明の方法における反応時間は、96時間以下であることが好ましく、より好ましくは24時間以下である。特に好ましい実施形態では、本発明の方法における反応時間は、12時間以下、より好ましくは0.3〜8時間、更に好ましくは0.5〜4時間である。
【0187】
本発明において、ポリスチレン換算の数平均分子量及びポリスチレン換算の重量平均分子量は、サイズエクスクルージョンクロマトグラフィー(SEC)を用いて測定することができる。
【0188】
本発明の方法は、重合所要時間と、その重合によって得られる高分子化合物の分子量との割合で定義される重合効率に優れる方法であり、該方法で製造する高分子化合物の分子量そのものは特に限定されず、該方法は、例えば、さほど分子量が大きくない高分子化合物の製造にも適用することができる。しかしながら、該方法は、ポリスチレン換算の重量平均分子量が1.5×10を超える高分子化合物の製造、特にポリスチレン換算の重量平均分子量が2.0×10〜3.0×10である高分子化合物の製造に好適に適用されたときに、特に有益である。
【実施例】
【0189】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例及び比較例を示すが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0190】
高分子化合物のポリスチレン換算の数平均分子量及びポリスチレン換算の重量平均分子量は、サイズエクスクルージョンクロマトグラフィー(SEC)(島津製作所製:LC−10Avp)により求めた。なお、該SECの分析条件として、下記の分析条件を用いた。
【0191】
[分析条件]
測定する高分子化合物は、約0.05重量%の濃度になるようにテトラヒドロフランに溶解させ、SECに30μL注入した。SECの移動相としてテトラヒドロフランを、1.0mL/minの流速で流した。カラムとして、Rapide M(ポリマーラボラトリーズ製)1本を用いた。検出器にはフォトダイオードアレイ紫外可視検出器(島津製作所製:SRD−M10Avp)を用いた。検出波長は、258nmに設定した。
【0192】
実施例1及び実施例2では、下記の重合反応を実施した。実施例1及び実施例2は、式(1)で示される化合物の存在下での重合反応である。図中の( )は、重合に用いた各化合物のモル%を表す。
【0193】
【化40】

【0194】
実施例1
(1−へキセン存在下での重合)
冷却装置が取り付けられたガラス反応容器に、9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジホウ酸ビス(ピナコール)エステル 0.6515g(1.0mmol)、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン 0.4449g(0.8mmol)、N,N−ビス(4−ブロモフェニル)−4−sec−ブチルアニリン 0.0931g(0.2mmol)、トルエン20mLを加え、モノマー溶液を作製した。窒素ガス雰囲気下、モノマー溶液を100℃で加熱し、酢酸パラジウム 0.5mg、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン 2.9mg、式(1)で表される化合物である1−へキセン 13.7mg、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液 3.4mLを加えた。100℃で攪拌し、1時間重合して得られた高分子化合物のポリスチレン換算数平均分子量は、1.1×105であり、ポリスチレン換算重量平均分子量は3.2×105であった。
【0195】
実施例2
((R)−(+)−リモネン 存在下での重合)
冷却装置が取り付けられたガラス反応容器に、9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジホウ酸ビス(ピナコール)エステル 0.6515g(1.0mmol)、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン 0.4449g(0.8mmol)、N,N−ビス(4−ブロモフェニル)−4−sec−ブチルアニリン 0.0931g(0.2mmol)、トルエン20mLを加え、モノマー溶液を作製した。窒素ガス雰囲気下、モノマー溶液を100℃で加熱し、酢酸パラジウム 0.5mg、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン 2.9mg、式(1)で表される化合物である(R)−(+)−リモネン 44.2mg、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液 3.4mLを加えた。100℃で攪拌し、1時間重合して得られた高分子化合物のポリスチレン換算数平均分子量は、8.5×10であり、ポリスチレン換算重量平均分子量は2.4×105であった。
【0196】
比較例1
(式(1)の化合物なし)
冷却装置が取り付けられたガラス反応容器に、9,9−ジオクチルフルオレン−2,7−ジホウ酸ビス(ピナコール)エステル 0.6515g(1.0mmol)、2,7−ジブロモ−9,9−ジオクチルフルオレン 0.4449g(0.8mmol)、N,N−ビス(4−ブロモフェニル)−4−sec−ブチルアニリン 0.0931g(0.2mmol)、トルエン20mLを加え、モノマー溶液を作製した。窒素ガス雰囲気下、モノマー溶液を100℃で加熱し、酢酸パラジウム 0.5mg、トリス(2−メトキシフェニル)ホスフィン 2.9mg、20重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液 3.4mLを加えた。100℃で攪拌し、1時間重合して得られた高分子化合物のポリスチレン換算数平均分子量は、6.0×10であり、ポリスチレン換算重量平均分子量は1.5×105であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホウ素原子を含む第1の官能基を少なくとも2つ有する第1の芳香族化合物と、第1の官能基と反応しうる第2の官能基を少なくとも2つ有する第2の芳香族化合物とを、有機溶媒、パラジウム錯体、塩基、及び式(1)で示される化合物の存在下で重合させる工程を包含する、式(2)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物の製造方法。
【化1】

〔式中、R、R、R、R、R、及びRは、同一であるか相異なり、それぞれ水素原子又は1価の有機基を表すか、R〜Rの内の2個が連結して非芳香族性の環を形成し、残りは、同一であるか相異なり、それぞれ水素原子又は1価の有機基を表す。〕
【化2】

〔式中、Arは芳香族化合物から水素原子を2個除いた2価の基を表す。〕
【請求項2】
第1の芳香族化合物が、式(3)〜式(6)の各々で示される化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物であり、第2の芳香族化合物が、式(7)〜式(10)の各々で示される化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物である請求項1に記載の高分子化合物の製造方法。
【化3】

〔式中、Wはホウ素原子を含む第1の官能基を表し、Wは第2の官能基を表し、Aはアリーレン基を表し、Bは芳香族性を有する2価の複素環残基を表し、Cは2価の芳香族アミン残基を表し、Dは2個の芳香環を炭化水素基又はヘテロ原子を介して連結した化合物から水素原子を2個除いた2価の基を表す。〕
【請求項3】
ホウ素原子を含む第1の官能基及び第1の官能基と反応しうる第2の官能基を有する芳香族化合物を、有機溶媒、パラジウム錯体、塩基、及び式(1)で示される化合物の存在下で重合させる工程を包含する、式(2)で示される繰り返し単位を有する高分子化合物の製造方法。
【化4】

〔式中、R、R、R、R、R、及びRは、同一であるか相異なり、それぞれ水素原子又は1価の有機基を表すか、R〜Rの内の2個が連結して非芳香族性の環を形成し、残りは、同一であるか相異なり、それぞれ水素原子又は1価の有機基を表す。〕
【化5】

〔式中、Arは芳香族化合物から水素原子を2個除いた2価の基を表す。〕
【請求項4】
芳香族化合物が、式(11)〜式(14)の各々で示される化合物からなる群から選択される少なくとも1つの化合物である請求項3に記載の高分子化合物の製造方法。
【化6】

〔式中、Wはホウ素原子を含む第1の官能基を表し、Wは第2の官能基を表し、Aはアリーレン基を表し、Bは芳香族性を有する2価の複素環残基を表し、Cは2価の芳香族アミン残基を表し、Dは2個の芳香環を炭化水素基又はヘテロ原子を介して連結した化合物から水素原子を2個除いた2価の基を表す。〕
【請求項5】
が水素原子である請求項1〜4のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法。
【請求項6】
及びRが水素原子である請求項1〜5のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法。
【請求項7】
、R及びRが水素原子である請求項1〜6のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法。
【請求項8】
式(1)で示される化合物が、炭化水素化合物、又は、炭素原子、水素原子及び酸素原子からなる化合物である請求項1〜7のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法。
【請求項9】
式(1)で示される化合物が、炭化水素化合物である請求項8に記載の高分子化合物の製造方法。
【請求項10】
式(1)で示される化合物が、脂肪族化合物である請求項1〜9のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法。
【請求項11】
、R、R、R及びRがそれぞれ水素原子であり、Rが炭素数3〜12のアルキル基である請求項10に記載の高分子化合物の製造方法。
【請求項12】
式(1)で示される化合物が、式(15)で表される化合物である請求項10に記載の高分子化合物の製造方法。
【化7】

〔式中、R〜Rは、同一であるか相異なり、それぞれ水素原子又は脂肪族炭化水素基を表す。〕
【請求項13】
式(1)で示される化合物の沸点が、圧力1atmにおいて40℃以上である請求項1〜12のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法。
【請求項14】
式(1)で示される化合物の量が、パラジウム錯体1モルに対して0.1〜1000モルである請求項1〜13のいずれか一項に記載の高分子化合物の製造方法。
【請求項15】
式(1)で示される化合物の量が、第1の芳香族化合物と第2の芳香族化合物の合計1モルに対して0.0001〜20モルである請求項1又は2に記載の高分子化合物の製造方法。
【請求項16】
式(1)で示される化合物の量が、芳香族化合物1モルに対して0.0001〜20モルである請求項3又は4に記載の高分子化合物の製造方法。

【公開番号】特開2011−195832(P2011−195832A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39551(P2011−39551)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】