説明

高分子添加剤を有する歯を洗浄するよう使用される液滴洗浄流体

歯に対する液体液滴ベースの口腔ケア装置において使用される流体は、選択される濃度及び分子量を有する、水溶性であり且つ人間が摂取可能である、高分子添加剤を有し、もたらされる液滴の寸法を、毎分10−20ミリリットルの範囲内の流速において、25−30ミクロンである所望の範囲に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的に、歯を洗浄するよう高粘度流体液滴装置(high velocity fluid droplet systems)において使用される流体に係り、より特には、所望される液滴寸法を保持するよう添加剤を有するかかる流体に関わる。
【背景技術】
【0002】
米国出願番号60/537,690(特許文献1)は、歯に対して選択される効果的な粘度において方向付けられる細かい液滴の噴霧の使用によって、歯垢を除去することを含む歯を洗浄する口腔ケア装置を開示する。液滴は、複数のノズルを介して高圧で液体を押し出すこと、あるいは流れの速い空気の流れへと流体を取り入れることを有する、異なる方途において生成され得る。他の液滴生成の実施例は、一式のノズルを介して流体を加速させる、流体へ高速ポンプ効果をもたらす圧電素子を有する。
【0003】
液滴寸法は、特には流速及び流体粘度/圧力への実際的な作動制限を考慮して、適切な洗浄作用にとって重要である。液滴が小さすぎる、即ち10μmより小さい場合、200m/秒までの高い粘度は、歯垢除去を含む適切な洗浄効果をもたらすよう、必要である。
かかる高粘度は、流体ポンプによって引き起こされるべき必要な圧力、及び液体に対して供給されるエネルギを大きく増大させるため、所望されない。従来通りでは、過剰な流速又は粘度を使用することなく優れた洗浄に対して所望される寸法を有する液滴を作ることは、困難である。
【特許文献1】米国出願番号60/537,690
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
今後は、液滴寸法を制御することができると同時に、許容限界内の液滴流速を保持することが所望される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
したがって、本発明は、液滴ベースの口腔ケア装置において歯を洗浄するよう使用される流体に係り、流体液滴ベースの口腔ケア装置において歯を洗浄する際に有用である液滴の噴霧へと分散可能である流体を有する。当該流体は、選択される分子量を有し且つ選択される濃度における、水溶性であり且つ人間が摂取可能である高分子添加剤を有し、結果もたらされる添加溶液から作られる液滴寸法を、選択される範囲においてもたらすようにし、該液滴の少なくとも80%は、直径において少なくとも10μmであり、液滴噴霧が歯に対して方向付けられる際に歯垢除去を行う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1は、流体液滴を使用する口腔ケア装置の概略図である。
【0007】
本願の譲受人によって所有される、上述された、2004年1月20日出願、米国出願番号60/537,690、「Droplet Jet System For Cleaning」は、歯を洗浄する流体液滴噴霧装置に対するものであり、該特許文献の内容は、参照として本願に組み込まれる。該出願において開示される通り、流体液滴は、多種の手段によって生成され得る。
【0008】
流体の流速が制限されることは、便利な操作にとって重要である。望ましくは、流体流速は、2分間のブラッシングに対する10ml/分の流速を有して、1回のブラッシング行為(brushing event)あたり約20mlである。これは、ブラッシング行為に対するユーザにとって典型的に都合のよい口腔容量である。しかしながら、流速は、ユーザにとって著しく不便になることなく、若干より高く、おそらく総計100mlまでになり得る。範囲は、毎分5−50mlであり得る。
【0009】
かかる口腔ケア装置における所望される液滴寸法(直径)は、効果的な歯垢除去に対して、10−30μm、又はそれより大きく、場合によっては100μmまでである。特定の液滴生成装置においては、流速は許容範囲内であるが液滴が小さすぎ、他の装置においては、液滴が所望される範囲内であるが流速が許容できない大きさである。
【0010】
本発明では、小濃度の高分子量高分子(a small concentration of a high molecular weight polymer)は、本願中は添加溶液として称されるものを作るよう、液滴の生成に先立って、水等である流体に対して添加される。該高分子は、所望される液滴寸法を作ることを支援する。液滴は続いて、便利で効果的な洗浄を達成するよう決定された流速を有して適用され得る。添加溶液は、いかなる液滴生成装置を有しても使用され得る。高分子量高分子はまた、例えばマウスウォッシュである水以外の口腔ケア流体に対して添加され得る。
【0011】
添加される高分子は、可能性のある幅広い種類の高分子のうちの1つであり得る。2つの一般的な必要条件は、高分子が水溶性でなければならないこと、及び、摂取可能、即ち人間が摂取して安全でなければならないこと、である。可能性のある高分子は、キサンタンガム等である「剛性の」高分子、又はポリエチレンオキシド等である「可撓性の」高分子のいずれも有する。選択される高分子の分子量、及び起始流体(fluid of origin)における高分子の濃度は、いずれも重要である。高分子量高分子の濃度は、結果もたらされる添加溶液の剪断粘度の増大を制限するよう、比較的小さくあるべきである。このことは、以下においてより詳細に説明される。高分子の分子量は、所望される小濃度においてでも、結果もたらされる添加溶液の伸張粘度が起始流体に対して大きく増大するよう、十分に高くなければならない。伸張粘度は、伸張流に対する流体の抵抗である。
【0012】
例えば、水等である起始のニュートン流体は、その剪断粘度の3倍の伸張粘度を有する。これは、形成中に十分容易に分解する液滴をもたらし、結果もたらされる液滴は口腔ケア装置に対して小さすぎる。小濃度の高分子量高分子が起始液体に対して添加される際、液体は、非ニュートンとなり、結果として、他にも効果はあるがその中でも、剪断粘度の3倍より更に大きな値まで、伸張粘度における増大をもたらす。この増大された伸張粘度は、特定の寸法を有する液滴構造をより小さな液滴へと分離することなく保持する流体の特徴に属する。基本的には、高伸張粘度を有して、既存の液滴は、より小さな液滴へと分離する前に大幅に「伸びる」。高伸張粘度は故に、液滴生成中により大きな液滴寸法を保持するという所望の結果を与える。添加される高分子の分子量は十分に大きいべきであり、所望の液滴寸法をもたらすよう、添加溶液の伸張粘度が添加溶液の剪断粘度の約6倍又はそれより大きいようにする、ことは発見されている。
【0013】
上述された通り、起始流体への高分子量高分子の効果は、結果もたらされる添加溶液が小さな液滴、即ち液滴生成中にもたらされる液滴の寸法へと分解する傾向を低減する、ことである。これは、小濃度の高分子量高分子添加剤により、剪断粘度における比較的に小さな増大のみを伴う添加溶液の伸張粘度における増大によって達成される。
【0014】
更に、高分子量高分子は、液滴生成中の付随(satellite)液滴の形成を防ぎ、また更には、乱流(turbulent flow)中の流体の抗力(drag)を低減する。該乱流は、前出の特許文献1中に記載される液滴生成装置の1つ又はそれより多くにおいて、特にはノズルを使用する実施例において、発生する。
【0015】
高分子の例のうちの1つであるキサンタンガムは、約7.6×10g/モルである分子量を有し、他の例であるポリエチレンオキシドは、幅広い分子量において作られ得る。本願に対する最小分子量は、0.1×10g/モルのオーダである。かかる高分子はいずれも、所望の結果をもたらす。添加高分子の分子量は、上述された通り、結果もたらされる添加溶液の伸張粘度を実質的に増大するよう十分に高くなければならず、添加溶液の剪断粘度における増大もまた小さいよう、大変小さい添加高分子の濃度を有する。もたらされる液滴のうち実質的に全て(少なくとも80%)は、少なくとも10マイクロメートルの直径を有する。典型的には、該パーセンテージは、100%により近い。
【0016】
特定の用語である溶液の「固有」粘度[μ]は、次の式、
【数2】

として定義付けられる。式中、cは、起始流体の単位容積あたりの質量における濃度であり、μは、添加溶液の粘度であり、μは、起始流体の粘度である。1/[μ]より大きい濃度cにおいては、添加溶液の剪断粘度は大きく影響され、所望され得ない。
【0017】
効果的である添加高分子に対して、濃度は、0.1c乃至10cであるべきであるが、より望ましくは0.25c−2.5cの範囲にある。
【0018】
キサンタンガム及び水に対しては、c=0.0045重量%が効果的である、と判明している。
【0019】
上述された流体を有する洗浄装置は、図1中において参照符号10において全体的に示されるような、電動歯ブラシを有する。該歯ブラシは、全体的に参照符号12において示される、液滴生成装置を有する。作動する高分子添加剤を有する流体は、ブラシヘッド16におけるノズル14を介して押し出される。ブラシヘッドから出てくる流体は、所望される流速及び粘度において、並びに、高分子量高分子添加剤によってある程度制御される所望される液滴寸法を有して、細かい噴霧へと分解する。噴霧は、歯に対して方向付けられ、結果として歯の洗浄、特には歯垢除去をもたらす。
【0020】
本発明の望ましい一実施例が例証を目的として開示されてきたが、多種の変更、修正及び代替案が、添付の請求項によって定義付けられる本発明の趣旨から逸脱することなく該実施例において組み込まれ得る、ことは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】流体液滴を使用する口腔ケア装置の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴ベースの口腔ケア装置において歯を洗浄するよう使用される流体であって:
流体液滴ベースの口腔ケア装置において歯を洗浄する際に有用である液滴の噴霧へと分散可能である流体、を有し、
前記流体は、選択される分子量を有し且つ選択される濃度における、水溶性であり且つ人間が摂取可能である高分子添加剤を有し、結果もたらされる添加溶液から作られる液滴寸法を、選択される範囲においてもたらすようにし、前記液滴のうち少なくとも80%は、直径において少なくとも10μmであり、前記液滴の噴霧が前記歯に対して方向付けられる際に歯垢除去を行う、
流体。
【請求項2】
前記流体の流速は、毎分5−50ミリメートルである、
請求項1記載の流体。
【請求項3】
前記高分子添加剤の前記分子量は、十分に高く、前記濃度は、前記添加溶液の伸張粘度がその剪断粘度の少なくとも6倍であるよう、十分に小さい、
請求項1記載の流体。
【請求項4】
前記高分子添加剤の前記分子量は、1分子あたり少なくとも0.1×10グラムである、
請求項1記載の流体。
【請求項5】
前記高分子の前記濃度は、0.1c乃至10cであり、cは1/[μ]であり、また、
【数1】

であり、式中、cは起始流体の容積あたりの質量における濃度であり、μは前記もたらされる添加溶液の前記粘度であり、μは前記起始流体の前記粘度である、
請求項1記載の流体。
【請求項6】
前記液滴寸法は、10−100μmの範囲にある、
請求項1記載の装置。
【請求項7】
流体液滴の流れを使用して歯を洗浄する装置であって:
流体の源と;
前記流体から液滴の流れを作る流体液滴生成器と;
前記歯の選択される範囲上へと前記液滴の流れを方向付ける部材と;
を有し、
前記流体は、選択される濃度及び分子量を有する水溶性であり且つ人間が摂取可能である高分子添加剤を有し、
前記液滴は、選択される範囲における寸法を有し、前記液滴のうち少なくとも80%は、直径が少なくとも10マイクロメートルである、
装置。
【請求項8】
前記流体の前記流速は、毎分5−50ミリリットルの範囲内である、
請求項7記載の装置。
【請求項9】
前記液滴は、直径が10−100マイクロメートルの範囲内である、
請求項7記載の装置。

【図1】
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【公表番号】特表2008−524320(P2008−524320A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547766(P2007−547766)
【出願日】平成17年12月20日(2005.12.20)
【国際出願番号】PCT/IB2005/054339
【国際公開番号】WO2006/067748
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】