説明

高分解能の静電センシングのための非接触システム及び方法

【課題】感光体等の帯電可能な表面のポテンシャルを高い分解能で直接的に測定する。
【解決手段】非接触システムは、帯電可能な表面12を第1電圧に帯電させる第1回路16と、表面12からある距離だけ離れて配置されたプローブ表面を持つスキャナプローブ18と、第1電圧からあらかじめ定められた電圧閾値以内の第2電圧となるようスキャナプローブ18にバイアスを印加する第2回路20と、スキャナプローブ18内に振動電流を誘導するための装置と、前記スキャナプローブ内に誘導された振動電流を検知する第3回路と、スキャナプローブ18の読み取り結果とスキャナプローブ18に誘導された振動電流とに基づき帯電可能な表面12上の特定の位置のポテンシャルを判定する帯電判定モジュールを備え、特定の位置のポテンシャルを求めるために、スキャナプローブ18内に誘導された振動電流を打ち消すようにスキャナプローブ18のバイアスを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、帯電可能な表面内の欠陥を検出するためのスキャニングシステムに関する。特に、超高分解能の静電表面ポテンシャルを検知するための非接触のシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の技術分野では、光導電(光伝導)性の絶縁層を備えた電子写真プレート即ち感光体が用いられる。まず電子写真プレートの画像形成用プレート上に静電的な電荷を均一に付着させ、次にそのプレートを例えば光などの活性化用の電磁放射のパターンにより露光することにより、そのプレート上の照射された領域の電荷を選択的に消散させ、照射されなかった領域に静電潜像を残すことにより、画像が得られる。この静電潜像は、次に現像され、これにより画像形成面(画像が形成される面)上にエレクトロスコピック(検電)マーキング材料の微粒子が付加されることにより可視画像が形成される。研究、開発、エンジニアリング及び品質管理において。トナーで現像する前に静電潜像を高い空間解像度にて検出できることが重要である。更に、高い空間解像度を用いることで、潜像を構成する電荷分布の安定性、正確性及び均一性のうちの一部、横方向電荷移動(LCM: lateral charge migration)を研究する場合に、得られる結果の正確さも向上する。
【0003】
電子写真法又は潜像研究における潜像検出にて用いる感光体層は、ガラス状セレンのような単一材料の均一な層であってもよいし、光導電材料と他の材料とを含んだ複合層であってもよい。特許文献1(米国特許第4265990号明細書)には、電気的な機能を有する(electrically operative)少なくとも2つの層を有する感光部材が記載されている。1つの層には光導電層が含まれており、この光導電層は、ホール(正孔)を光により生成し、生成されたホールを隣接する電荷輸送層へと注入する能力を持つ。一般に、電気的な機能を持つ2つの層が導電性の層の上に配置され、光導電層が、隣接する電荷輸送層とその導電性の層との間に挟まれている場合、電荷輸送層の外側表面は、通常、均一な静電電荷により帯電し、導電性の層は電極として用いられる。柔軟な電子写真画像形成部材では、電極は、通常、熱可塑性樹脂のウェブ上に支持された薄い導電性コーティングである。
【0004】
電荷輸送層が、導電性の層と、電子を光により発生させるとともにその発生させた電子を電荷輸送層に注入することができる光導電層と、の間に挟まれている場合にも、その導電性の層は電極として機能する。この例の電荷輸送層は、光導電層からの光発生電子の注入に対応する能力を有し、その電子を当該電荷輸送層を通して輸送する能力を有する。感光体は、通常は多層であり、基板と、(基板自体が伝導層でない場合は)光学的伝導層と、光学的ホール遮蔽層(optical hole blocking layer)と、光学的接着層(optical adhesive layer)と、電荷発生層と、電荷輸送層とを含み、またいくつかのベルトへの実装例では更にカール(反り)防止バッキング(背面)層を含む。
【0005】
静電センシングのための第1の技術の1つは、スタイラススキャナであった。この技術は、スタイラス(針)の径により限定される高い解像度を有していたが、全体的に低速であったため広い領域のスキャンには適さなかった。
【0006】
次に来るのが、電荷欠乏スポット(CDS: Charge Deficient Spot)スキャナであり、これは以前のスタイラススキャナの低速性による限界に対処するために開発された。しかし、CDSスキャナを用いる場合、空気間隙幅の変動により測定誤差が生じることがあった。
【0007】
空力浮揚の実装、すなわちフローティング(浮揚)プローブスキャナ(FPS)により、空気間隙幅の制御能力が向上し、全体的な測定の正確さが向上した。
【0008】
ここから、この技術についての2つの異なる開発の分枝が形を取り始めた。第1の枝は、FPSに対し、空隙幅の小さな不均一さについてのルックアップテーブル補正を付け加えたものであり、この補正は電荷欠乏スポット(CDS)群の研究に用いることができたものである。CDSは、感光体の表面又は本体上の点状の電気的な欠陥である。この測定は、各測定点についての空気間隙の知識を必要とし、信号処理操作とあらかじめ定められた校正曲線とを用いて求められる。第2の分枝は、高解像度静電(浮揚プローブ)スキャナ(Hi-RES)と後で詳しく説明する本実施形態とに繋がるものである。
【0009】
静電表面ポテンシャル(電位)を検知するための他の技術として、電流発生非接触(current generation non-contact)静電電圧計(ESV: Electrostatic Voltmeter)があった。Trek社により製造された、例えばTrek 6000B−8 プローブを備えたTrek 344、Trek 3800E−2 プローブを備えたTrek 368Aなどのような装置は、電子写真法の業界ではよく知られており、比較的安価であり、広い領域をスキャンすることができ、一般的な電子写真方式に容易に適合させることができる。しかし、ESV装置はミリメートルオーダーの空間解像度を持つに過ぎず、これではLCM研究には適さない。
【0010】
静電表面ポテンシャルを検知するための他の技術として、原子間力顕微鏡法(AFM: Atomic Force Microscopy)があった。AFM装置は、1μmまでの非常に高い空間解像度を有するが、設置や使用を行うには非常に高価であるとともに一度に小さい領域しかスキャンすることができず、このことからAFMは電子写真法における潜像検出や潜像研究などの応用には全く望ましいものとはいえなかった。
【0011】
しかし、製品開発や品質管理の文脈では、静電表面ポテンシャルの機械的センシング(検知)は、検査員が何枚ものシートを手で給紙しながら各シートの最終的な質を休みなく監視するという、面倒で時間のかかる処理である。従来技術の方式は、製品開発又は品質管理での応用には向かない。なぜなら、電荷増幅器サブシステムが、点状欠陥が検出される場合などのような一時的な事象にのみ感度を持つものであるからである。補正浮揚プローブスキャナは、電荷増幅器のAC結合であるという本性からして、広い範囲にわたって均一な場合には、静電ポテンシャルを解像することができない。さらに、検査結果の正確さは、シートを給紙して評価する検査員の解釈と挙動に大きく依存している。
【0012】
さらに、どのモデル又はタイプでも機械の特性は機械ごとに変わるので、ある機械モデルについての最終的な検査結果の信頼性は、特に、同じモデル又はタイプの他の機械と比較したときの当該機械の癖を考慮に入れなければならなかった。機械の複雑さと機械ごとの多様性のため、1つの機械についてのテストからのデータは、感光体材料の1つの生産バッチ全部の廃棄を正当化するのに十分な信頼性を持たない。
【0013】
このため、検査は通常3台以上の機械で行われる。1つの感光体は、コピー機、複写機、及びプリンタなどの様々な異なる種類の機械において、顕著に異なる動作条件下で使用されるので、代表となる検査用感光体サンプルの機械検査に基づく静電表面ポテンシャルのセンシングは、その検査対象のバッチに含まれる感光体が最終的に使用されることになる実際の機械に固有のものである。このように、1つの機械についての感光体の検査からは、同じ種類の感光体が異なる種類の機械に用いられた場合に同じ静電表面ポテンシャルが生じるかどうかを必ずしも予測することができない。
【0014】
このように、機械の潜像検査について、この検査は機械の種類ごとに行わなければならない。これは費用が非常に高くつき、時間もかかる。更に、機械検査に要する時間の長さのため、機械の寿命テストに基づく承認を待っている備蓄の感光体の在庫は、受け入れがたいほど高レベルに達することもあり得る。例えば、1バッチが多数のロールからなり、各ロールから何千ものベルトを生産する場合もある。
【0015】
1つの検査方法は、Z. D. Popovic et aI., "Characterization of Microscopic Electrical Defects in Xerographic Photoreceptors", Journal of Imaging Technology, vol. 17, No.2, April/May, 1991, pp. 71-75. に示されるようなスタイラススキャナを用いる。このスタイラススキャナは、シールドされたプローブにバイアス電圧を印加し、このプローブはシリコンオイルに浸漬されており感光体の表面に接触している。シリコンオイルによりアーク放電と絶縁破壊が防止される。プローブを通って流れる電流は、欠陥についての情報を含んでおり、約15分で6×6平方ミリメートルのスキャン(走査)速度が達成された。スタイラススキャナは再現性の高いツールであり、いくつかの重要な発見を可能にしたが、低速であるという基本的な欠点を持っている。
【0016】
非接触プローブを設計することによりスキャン時間を低減する試みも、過去になされてきた。例えば、あるプローブは論文に記載され、X線電子写真(xeroradiographic)のアモルファスセレンプレートの読み出しに用いられた(W. Hillen, St. Rupp, U. Schieble, T. Zaengel, Proc. SPIE, Vol. 1090, Medical Imaging III, Image Fonnation, 296 (1989); W. Hillen, U. Schieble, T. Zaengel, Proc. SPIE, Vol. 914, Medical Imaging II, 253 (1988); and U. Schieble, T. Zaemge, Proc. SPIE, Vol. 626, Medicine XIV/PACS IV, 176 (1986)を参照)。これらのプローブは、測定の解像度を向上させるのに、プローブから感光体表面までの距離を低減することに頼っている。プローブから感光体表面までの典型的な距離は、50〜150μmである。空気絶縁破壊を避けるため、X線電子写真プレートのグラウンド面には適切にバイアス電圧が印加され、プローブと感光体表面との間の電位差をほぼ0にしている。
【0017】
一時的な事象を検出するための従来の装置及び方法が知られているが、これら装置及び方法は絶対的な表面電圧をセンシングすることはできない。例えば、電子写真画像形成部材内の表面ポテンシャル電荷パターンを検出するための公知の非接触処理がある。この処理では、例えば、感光体の画像形成面に一定の電圧を印加し、外側シールド電極を有する容量性スキャナプローブに、画像形成面の平均表面ポテンシャルの約±300ボルト以内のバイアスを印加する。プローブは、画像形成面の近くにその表面から間隔を空けた状態を維持され、プローブと画像形成面との気体により平行平板キャパシタを形成する。プローブと画像形成面との間は、互いの距離を実質的に一定に保ちながらも、相対的な移動が可能になっている。プローブは同期的にバイアスが印加されており、表面ポテンシャルの変動がプローブにより測定される。表面ポテンシャルの変動は、プローブと画像形成面との間の距離の変動により補償される。上述のプロセスは、プローブと画像形成面との間の距離を実質的に一定に保つためのシステムを用いて実現される。他のシステムでは、画像形成面をスキャンしている間プローブと画像形成面との間の距離は理想的には一定に維持されるが、現実には小さい変動が生じる。プローブと画像形成面との間の距離の変動を補償するためのアルゴリズムが提案されている。このアルゴリズムは、平行板キャパシタの補償に基づくものであり、既知の時間的に変動する参照電荷(参照電圧)がドラムと試験対象材料の導電性基板との間に印加され、プローブ面の下に空間的に均一に分布する。しかし、潜像を研究・解析する場合には、表面上の電荷分布は不均一になる場合がある。
【0018】
静電表面ポテンシャルのセンシングに関する他の技術には、電子写真方式に用いる感光体表面上の潜像内の電荷欠乏スポット(CDS)を検出する装置及び方法を用いるものがある。この装置は、第1の電圧に保持された帯電可能感光体面と、表面が第2の電圧に保持されたプローブとを用い、プローブからの読み取り結果に基づきその帯電可能な感光体面上のCDSのポテンシャルを求め、その帯電可能な感光体面に基準電荷を印加してCDSを補正する。更に、この装置は、CDSの点状の性質を考慮に入れた高次の数学的補正を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第4265990号明細書
【特許文献2】米国特許第6119536号明細書
【特許文献3】米国特許第6008653号明細書
【特許文献4】米国特許第7271593号明細書
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Z. D. Popovic et aI., "Characterization of Microscopic Electrical Defects in Xerographic Photoreceptors", Journal of Imaging Technology, vol. 17, No.2, April/May, 1991, pp. 71-75.
【非特許文献2】W. Hillen, St. Rupp, U. Schieble, T. Zaengel, Proc. SPIE, Vol. 1090, Medical Imaging III, Image Fonnation, 296 (1989); W. Hillen, U. Schieble, T. Zaengel, Proc. SPIE, Vol. 914, Medical Imaging II, 253 (1988); and U. Schieble, T. Zaemge, Proc. SPIE, Vol. 626, Medicine XIV/PACS IV, 176 (1986)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
ここに説明した方法は、CDS(これは小さく、均一に帯電した感光体面において空間的に局限された放電スポット即ち欠乏部分である)のような一時的な事象を検出するのに非常に効果的であるが、上述の装置又は器具は、例えばCDSにより引き起こされる、表面電圧における一時的な変化を検出するものである。以上に説明した従来技術の装置及び方法は、表面電圧の絶対値を検出することができない。これに対し、本実施形態では、プローブの振動により絶対的な表面電圧を検出し、この絶対的な表面電圧は、電子写真法の潜像を検出するとき又は潜像を研究するときに強く要望される特徴である。
【0022】
このように、電荷の移動すなわち表面電圧を高い分解能(解像度)で直接的に測定するとともに、使用が容易で、感光体研究においてすぐに実用できるシステム及び方法が要望される。
【課題を解決するための手段】
【0023】
以下に示す実施形態では、電子写真法式の感光体の研究、及び材料科学、表面科学及び品質管理のための諸応用のための、帯電可能な表面上の静電ポテンシャルを検知するための非接触システムに関するものであり、前記帯電可能な表面に電荷を供給することによりその表面が第1電圧の電荷を受け取って保持するようにする第1回路と、前記帯電可能な表面からある距離を隔てて配置されるプローブ面を持つスキャナプローブと、前記第1電圧の電荷からあらかじめ定められた電圧閾値以内の第2電圧の電荷で帯電するよう前記スキャナプローブにバイアスをかける第2回路と、キャパシタ(このキャパシタは、前記帯電可能な表面と、前記スキャナプローブの表面と前記帯電可能な表面との間の誘電体材料と、前記スキャナプローブの表面と、により構成される)と、を含み、前記スキャナプローブは、前記帯電可能な表面上に印加された電荷に対応するポテンシャルを検知する。本実施形態のスキャナプローブの表面と帯電可能な表面との間の空気ギャップの絶対間隔を知ることは必要ではないが、その間隔は比較的一定したまま(設定値から±20μmの変動)であり、試験対象のサンプルに十分に近接している(50〜150μm)。これによりシステムがより簡素なものになり、間隔の較正なしで運用できるようになる。
【0024】
また、実施形態は、更に、ある振動数でスキャナプローブを振動させることでスキャナプローブに、スキャナプローブの読み取り結果として規定される振動電流を誘導する装置と、スキャナプローブ内に誘導された振動電流を検知する第3の回路と、プロセッサと、帯電可能な表面上の電荷の移動を含む前記スキャナプローブの読み取り結果と当該スキャナプローブに誘導された振動電流とに基づき前記帯電可能な表面上の特定の位置のポテンシャルを判定するための、そのプロセッサにより実行可能なプログラム命令を含んだ帯電判定モジュールと、を更に備え、特定の位置のポテンシャルを求めるにあたり、スキャナプローブ内に誘導された振動電流を打ち消す(ゼロにする)ようにスキャナプローブのバイアス電圧を調整する。
【0025】
他の実施形態における帯電可能な表面上の静電ポテンシャルを検知する方法は、帯電可能な表面に電荷を供給して第1電圧の電荷を受け取って保持させ、スキャナプローブの表面を前記帯電可能な表面からある間隔を空けて配置し、前記第1電圧の電荷からあらかじめ定められた電圧閾値以内の第2電圧の電荷で帯電するよう前記スキャナプローブにバイアスを印加し、ここで前記帯電可能な表面と、前記スキャナプローブの表面と前記帯電可能な表面との間の誘電体材料と、前記スキャナプローブの表面と、によりキャパシタが構成され、ある振動数でスキャナプローブを振動させることでスキャナプローブに、スキャナプローブの読み取り結果として規定される振動電流を誘導し、スキャナプローブ内に誘導された振動電流を検知し、スキャナプローブと帯電可能な表面との少なくとも一方に基準電荷を印加し、スキャナプローブ内に誘導された振動電流を打ち消すようにスキャナプローブのバイアス電圧を調整することにより、スキャナプローブの読み取り結果に基づき前記帯電可能な表面上の特定の位置のポテンシャルを求める。
【0026】
更に別の実施形態では、感光体上の静電ポテンシャルを検知する非接触走査システムを提供する。このシステムは、第1電圧の電荷を受け取って保持するように感光体に充電する第1回路と、前記感光体からある距離だけ離れて配置されたプローブ表面を有するスキャナプローブと、前記第1電圧の電荷からあらかじめ定められた電圧閾値以内の第2電圧の電荷で帯電するよう前記スキャナプローブにバイアスをかける第2回路と、を備え、前記感光体と、前記プローブ表面と前記感光体との間の誘電体材料と、前記スキャナプローブと、の組み合わせによりキャパシタが構成され、前記スキャナプローブは、感光体上に印加された電荷に対応するポテンシャルを検知する。このシステムは、更に、スキャナプローブの振動数でスキャナプローブを振動させることでスキャナプローブ内に振動電流を誘起させる装置と、スキャナプローブ内に誘導された振動電流を検知する第3の回路と、プロセッサと、帯電可能な表面上の電荷の移動を含む前記スキャナプローブの読み取り結果と当該スキャナプローブに誘起された振動電流とに基づき前記帯電可能な表面上の特定の位置のポテンシャルを判定するための、そのプロセッサにより実行可能なプログラム命令を含んだ帯電判定モジュールと、スキャナプローブ内に誘起された振動電流を打ち消す(ゼロにする)ようにスキャナプローブのバイアス電圧を調整する第4の回路と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本明細書におけるスキャナシステムの実施形態を模式的に示す図である。
【図2】図1に示されたスキャナシステムに用いられるスキャナプローブの縦断面を模式的に示す図である。
【図3】図1に示されたスキャナシステムに用いられるスキャナプローブを例示する図である。
【図4】図1に示されるスキャナプローブとドラムとの間に電位差がありスキャナプローブが振動している場合の、実験的に求めたプローブのAC(交流)信号の大きさをある時間間隔にわたってプロットした図である。
【図5】実験的に求めた、プローブ・ドラム間の電位差を様々に変えた場合の、フィルタリング後のプローブ信号のRMS値をプロットした図である。
【図6】図1に示されたスキャナシステムに用いられるデータ取得コンピュータの一例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
例示する実施形態では、潜像検出及び横方向電荷移動(LCM)テストのために帯電可能な表面をスキャン(走査)するための走査システムを提供する。帯電可能な表面は第1のポテンシャル(電位)まで充電(電荷供給)され、スキャナプローブはその第1のポテンシャルからみてあらかじめ定められたポテンシャル差以内の第2のポテンシャルまで充電される。また、スキャナプローブと帯電可能な表面とのうちの少なくとも一方に、基準波が印加される。スキャナプローブは、ある周波数で振動し、その振動により誘起された振動電流の読み取り即ち測定を行い、帯電可能な表面上の潜像を検出する。プロセッサは、そのプローブの測定結果(読み取り結果とも呼ぶ)を処理することで、帯電可能な表面上の潜像のポテンシャルを求める。この処理は、スキャナプローブの読み取り結果に基づき行われるものであるとともに、帯電可能な表面上に存在するかもしれない不均一な電荷分布を計算に入れるために、潜像のポテンシャルの算出結果をプローブ表面から帯電可能な表面までの距離に基づき調整することも含んでいる。
【0029】
この例示の実施形態は、電子写真法、インクジェット印刷、イオノグラフィ、コーティングのための押し出しダイス、LED画像形成、LCM研究又は検査等といった応用に用いられる帯電可能な表面のような、あらゆる種類の帯電可能な表面についての非接触走査の方法に関するものである。以下に説明するこの実施形態では、一例として電子写真方式とLCM研究に用いられる感光体の画像形成面の走査を代表にとって説明するが、この明細書の範囲は、そのような走査に限られるものではなく、他の様々な応用に用いられる様々な帯電可能な表面の走査に適用可能である。
【0030】
例示の実施形態の特徴を概略的に理解するために、図面を参照して説明する。図面では、同じ要素を示すのに、似た参照符号を用いた。図1には、スキャナシステムの例が示されており、このシステムは、ステッパモータ11により一定速度で回転駆動される導電性の絶縁されたドラム14を備える。電子写真方式の画像形成システムと同様、柔軟な感光体12(例えば感光体ベルトとして形成されている)として具現化された帯電可能な表面が、ドラム14上に装着されており、感光体12をある一定の電圧へと静電的に帯電させるスコロトロンなどのような帯電器16により帯電させられる。感光体12は、電荷が印加されるグラウンド板として機能する本質的に導電性のボトムプレート(底板)である。この代わりに、ドラム14は、感光体12として機能する少なくとも1つの電子写真コーティングにより被覆された感光体ドラム基板であってもよい。明らかに理解されるように、この実施形態は、例示したベルト方式に限定されるものではなく、ドラム構成の感光体や他の材料や、平板x−y走査システムについてもこのシステムにより研究が可能である。
【0031】
システムは、更に、出力がバイアス電圧増幅器20に接続された静電電圧計プローブ15と、距離制御システム29に搭載され電荷積分器(charge integrator)21に接続された高分解能スキャナプローブ18と、を備えている。電荷積分器21の出力は、図示しない信号増幅器に光学的に接続されており、この信号増幅器はデータ取得コンピュータ22に接続されており、このコンピュータ22にエンコーダ30の出力が接続されている。ステッピングアクチュエータが、プローブ18に機械的に接続されており、これにより感光体12に対するプローブ18の移動を制御する。また、必須ではないが、少なくとも1つの波発生器31を設け、その波発生器の出力がプローブ18に接続されるようにしてもよい。静電プローブ15は、バイアス出力増幅器の出力に接続されており、これによりスキャナプローブ18に対し、感光体12の平均表面ポテンシャルからみてあらかじめ定められたポテンシャル差の閾値以内となるようにバイアスが印加される。この明細書のある実施形態では、静電プローブ15は、空間分解能の低い静電電圧計である。
【0032】
走査の間、スキャナプローブ18、電荷積分器21及びデータ取得コンピュータ22は、帯電後の感光体12上の、ある選ばれたスポットすなわち画素のポテンシャルの変化を測定する。測定結果は、エンコーダ30から、ある一定の角度位置でパルスを印加することにより得られる。エンコーダ30は、スキャナプローブ18によるプローブ読み取り結果の空間的な見当合わせ(位置合わせ)を保証し、トランジスタ・トランジスタロジック(TTL)パルスのような個々の走査線のデータ取得のトリガとして機能する1回転あたり1つのパルスを供給することにより、感光体の表面の正確なマップを形成できるようにする。データ取得には、後で説明するように、システムクロックにしたがって動作するA/D変換プロセスが含まれる。距離制御システム29は、スキャナプローブ18と、例えば感光体12の表面などの、走査されている表面との間の距離すなわちギャップ(この明細書で、ギャップ距離とも呼ぶ)を制御する。ギャップ距離は、距離制御システム29により空気力学的浮揚のプロセスを通じて維持され、当業者にはよく知られている。少なくとも1つの波発生器31は、感光体12のグラウンド板又はスキャナプローブ18又はその両方に対して基準波を印加する。波発生器31は、感光体12に基準波を印加するために、(図示しない導電性ブラシのシステムのような)適切なコネクタを用いてドラム14に接続されている。この代わりに、波発生器31はシールド34に接続されていてもよい。
【0033】
スキャナプローブ18の下端24は、なめらかな表面を有し、その表面は感光体12の外側画像形成面に平行であり且つその画像形成面の上に位置している(例えば、図3に示すように感光体12の外側画像形成面の約100μm上)。プローブ18が感光体12の部分に到達するまでに要する時間(感光体12は帯電器16によりちょうど帯電させられたばかりである)の間に、スキャナプローブ18により走査される前に表面電荷分布が形成される。感光体12上の電荷を、感光体12がスキャナプローブ18を通り過ぎた後に、消去ライトのような図1に示した除電器26により除去するようにしてもよい。
【0034】
電荷積分器(charge integrator)21は、光結合増幅器(optocoupled amplifier)を有する光アイソレータ(図示省略)のような、スキャナプローブ18の高電圧プローブバイアスからデータ取得コンピュータ22を分離するための回路を備える。光結合増幅器は、互いに完全に電圧分離(絶縁)することを必要とする2つの電気的コンポーネント同士の間に光学的なリンクを提供するためのものとして、電子分野でよく知られている。この光学的なリンクは、通常、電気的に駆動される光源とこの光源から電気的に絶縁された光検出器とを用いることで、連続した電気的な接続なしで、信号を伝送することにより実現される。更に、ここで用いているように、「回路」という用語は、全体として所望の電気的な機能を持つものであれば、いかなる単一の電気的要素であってもよいし複数の電気的要素の組み合わせであってもよく、ソフトウエアにより制御される電気的要素も含まれる。スキャナプローブ18をデータ取得コンピュータ22から絶縁することで、感光体12の事実上のグラウンドプレーン(板)にバイアスを印加するよりも、むしろスキャナプローブ18に対して感光体の平均表面ポテンシャルまでバイアスをかけることができ、空気絶縁破壊及びアーク放電を防止することができる。光学的に結合された電荷積分器21は、プローブ信号の記録及び/又は解析を行うデータ取得コンピュータ22に対してプローブ信号を供給する。
【0035】
スキャナプローブ18は、感光体12のポテンシャルの変化を検知し、この変化に対応するアナログのプローブ信号を生成する。スキャナプローブ18はここでは感光体12の表面を走査するものとして説明しているが、これはあくまで一例に過ぎず、明らかに理解されるように、スキャナプローブ18は、静電ポテンシャルを保持するどのような表面(例えばドラム14そのもの)を走査するものであってもよい。電荷積分器21の信号は、プローブ信号をデータ取得コンピュータ22により処理できるようにするために調整する。この調整には、例えばプローブ信号を増幅することが含まれる。
【0036】
図6に示すように、コンピュータ22は、プロセッサ302、システムクロック314、及びプローブ信号をデジタル信号に変換するためのクロック駆動のアナログ・デジタル変換(ADC)モジュール312を備える。この変換のプロセスでは、アナログのプローブ信号をクロック314に同期したあらかじめ定められた周波数(ADCモジュール312の周波数とも呼ぶ)でサンプリングする。これは、エンコーダ30の動作に対応している。この例では、クロック314は、例えばTTLに適合したものであり、1回転あたり約20000パルスを生成する。ドラム14を回転させるステッパモータ11は、1回転あたり20000ステップの分解能を有する。クロック314は、ステッパモータ11をある回転数(例えば毎分60回転)で駆動するのにも用いられる。このように、20000HzのTTLパルス列が、ステッパモータ11を駆動するのに用いられ、また周波数分周器を用いてADCモジュール312にメインシステムクロック314の半分の周波数、すなわち約10000HzのクロックをADCモジュール312を供給するのにも用いられる。この方法によれば、取得を同期的に遅延することを、ノイズ除去の手段として用いることができる。ステッパモータ11が回転すると、その瞬間のデータに望ましくないノイズスパイクがしばしば検出される。同期した(ただし少し遅延した)クロック314を用いてADC信号を取得することにより、ステッパーサイクルにおいて望ましくないノイズ源が最小限になっているポイントで、データが取得される。最後に、エンコーダ30からの1回転あたり1つのTTLパルスにより、取得されたデータの走査線が、かならず、ドラム14上の同じ角度位置から始まるようにすることができる。エンコーダ30の1回転あたり1つの(すなわちインデックス付け)信号は、クロック314の信号からは分離されているものの、緊密に相関している。デジタルプローブ信号は、いったん変換されると、プロセッサ302により処理されるための状態となる。
【0037】
走査の間、ステッピングアクチュエータの組み合わせ28(例えばステッパモータとマイクロメータねじとの組み合わせ)により、スキャナプローブ18が新たな走査線位置へと動かされ、帯電、電荷の変化の測定、及び感光体12の除電というプロセスが繰り返される。ステッパアクチュエータの組み合わせ28により、スキャナプローブ18が、検査中の表面をより高速に走査することが可能になる。ある実施形態では、間隔を空けて、及び/または少しずつずらして配列した高分解能プローブ18のアレイが設けられ、この高分解能プローブ18のアレイは、それぞれ異なる走査線に沿って同時に走査を行う。
【0038】
図2及び3には、スキャナプローブ18の一例が示される。スキャナプローブ18は、下端25を有する中央電極32と、シールド電極34とを備える。中央電極32及びシールド電極34は、どちらも金属などの導電性材料から形成されている。中央電極32は、薄い絶縁コーティング(図示省略)によりシールド電極34から絶縁されている。中央電極32の導電性材料は、非常に薄い材料で絶縁された小径ワイヤであってもよい。例えば、その導電性材料は、エナメル加工、すなわち薄い電気絶縁コーティング(図示省略)により被覆されていてもよい。適切なものであればどのような絶縁コーティングを用いてもよい。大略的には、絶縁コーティングは、約1013Ω/cmを超える抵抗と約5〜約50μmの厚みを持つ膜形成材料である。下端25の断面はほぼ円形であり、直径は例えば113μmである。明らかに理解されるように、この実施形態の精神と範囲から外れることなく、以上に示した寸法以外の寸法を用いてもよい。
【0039】
中央電極32は、グラウンドワイヤ36により電気的に接地されたシールド電極34内に埋め込まれている。接地されたシールド電極34は、電磁ノイズに対するシールドとして用いられる。ポテンシャルの変化は、埋め込まれた中央電極32により検知される。中央電極32がシールド電極34内に埋め込まれているという配置構成により、スキャナプローブ18は外部ノイズからよく遮蔽され、相応に堅牢であると見なすことができる。
【0040】
シールド電極34内にある中央電極32のワイヤの一連の小さな湾曲37により、ワイヤがシールド電極34内に引き戻される状況すなわちシールド電極34内に引き込まれた状態となったり、ワイヤがある意味でシールド電極34からすっかり引き出されてしまったりする傾向が抑止される。中央電極32の端部25と感光体12の外側画像形成面との間の容量性結合は、中央電極32がシールド電極34内に引き込まれると変化し、読み取り結果に悪影響を与える。グラウンドワイヤ36は、シールド電極34に電気的な接地のための接続を提供する。グラウンドワイヤ36は、ループ38を備えており、これによりグラウンドワイヤ36の位置がシールド電極34内に確実に位置するようにすることができる。
【0041】
スキャナプローブ18の端面24は、当該高分解能のプローブ18の中心線に垂直であり、電極32の下端25と電極シールド34の下端とは互いにほぼ同一平面上にある。もし電極32の中心がシールド電極34内の奥深く引っ込んでしまえば、中心電極32よりもむしろ電極シールド34に対して多くの電束がカップリングすることとなり、信号が小さくなる。もし、中心電極32の下端が電極シールド34から突き出してしまえば、感光体12を傷つけてしまうかもしれない。研磨もなされているので、中心電極32の下端と電極シールド34の底部とは同一平面に位置しており、良好な遮蔽及び検出特性が達成されている。このように、過剰な電場が抑制され、感光体12を引っ掻いてしまう可能性が低減され、スキャナプローブ18の遮蔽及び検出特性が向上している。
【0042】
明らかに理解されるように、直径100μmの平坦に研磨されたプローブを構築するには様々な方法がある。前段落は、例示という目的のためにあくまでその一実施形態を示したものであり、いかなる意味でも限定することを意図したものではない。関連分野の当業者ならば、取り扱いにおいて頑健で、静電的に良好に遮蔽され、検査対象の表面に適合してその表面を保護するようによく研磨されたプローブを構築する方法には他にも等価な方法が様々に存在することを了解するであろう。
【0043】
電極シールド34には、静電電圧計プローブ15の増幅出力によりバイアスが印加される。この代わりに、印加されるバイアスが、感光体12の外側の画像形成面上の平均表面ポテンシャルに対してあらかじめ定められた電圧範囲(この例では例えば±300V)内になるようにするものであれば、静電電圧計プローブ15を用いずに電極シールド34にバイアスを印加するようにしてもよい。低分解能静電プローブ15の出力監視信号は、高電圧増幅器(図示省略)を駆動するのに用い、この増幅器の出力をスキャナプローブ18に接続し、この高電圧増幅器がプローブ15により検知された表面電圧に追従するようにすることもできる。
【0044】
中心電極32の下端25と感光体12の外側の画像形成面との組み合わせが。小さな平行板キャパシタを形成する。この平行板キャパシタにより形成される容量により、潜像が検出される。一例としては、プローブの端部24(例えば中心電極32の下端25)と感光体12の外側画像形成面との間の例えば100μmのギャップ距離では、次式で示される近似的な関係を用いると、容量(キャパシタンス)は約1fFであることが分かる。
【数1】

ここで、Ccouplingは誘起される容量、Aは中心電極32の下端25の表面の面積(これが平行板キャパシタの一方の端面として機能する)、ε0は自由空間(真空)の誘電率(物理定数)、dは感光体12とスキャナプローブ18とにより形成されるキャパシタ板同士のギャップ距離である。一実施形態では、ギャップ距離は約20〜約200μmの間であり、別の実施形態では約50〜約100μmの間である。ギャップ距離が約20μmを下回ると、プローブ18が感光体12の表面に接触する危険性が増大し、これにより誤った結果に繋がる可能性がある。ギャップ距離が約200μmより大きくなると、プローブの感度と分解能が実質的に下がってしまう。
【0045】
0.1pCの電荷が存在する場合、Q=CVに従えば、1fFの容量を横切る電圧は、プローブ端部24で100Vである。表面ポテンシャルは、容量−電圧の関係式Q=CVを用いて次のように求められる。
【数2】

ここで、Vsurfaceは表面ポテンシャルであり、Qは表面の電荷である。
【0046】
上述の式(1)から次式が導かれる。
【数3】

【0047】
この式を反転させることで較正曲線が得られる。
【数4】

Vは、ギャップ距離dに直接的に比例するので、意味のある結果を得るためには走査の間ギャップ距離dを一定に保つことが重要である。これは簡単ではない。なぜなら、感光体12が装着されたドラム14がかすかに偏心しており、この偏心が例えば±25μmの範囲にわたるからである。dを変動させる他の機械的な要因には、例えば、ドラム14に関係する軸受けの遊び、ガスを供給する空気力学的浮揚装置の空気ホースチューブの遊び及び引っ張り即ち張力、スキャナプローブ18の位置合わせ誤差、及び感光体12の表面45の変動などがある。また、プローブシステムに接続される電気ケーブルにも遊びが存在する。ドラム14やこれに関連するドラム軸受けなどのスキャナの機械ハードウエアを正確に位置合わせし、なめらかに動作するマイクロステッピングモータを選ぶことでステッパモータ11からの振動を低減することは、dの変動による過大な測定誤差を低減するのに役立つ。
【0048】
距離制御システム29は、更に、ギャップ距離の変動を低減する。距離制御システム29は、能動的制御機器を有する能動的な距離制御システムであってもよいし、受動的距離制御システムであってもよい。しかし、ギャップ距離になおもかすかな変動が残るかもしれず、ギャップ距離のかすかな変動を検知してポテンシャルの読み取り結果をその変動に関して補正する必要がある。このような変動は、スキャナプローブ18のケーブル及び/又は空力浮揚装置の空気ホースの張力の経時的な変化、スキャナプローブ18の位置合わせ誤差、ドラム14の偏心、ドラム14に関連する軸受けのずれなどに起因するかもしれない。初期ギャップ距離を再現することは難しい。したがって、スキャナプローブ18を交換したときに、望ましい初期ギャップ距離を実現することは難しい。そこで、ギャップ距離の変動とかすかに誘起された電荷の変動との補正が実行される。
【0049】
図3に示されるように、そして上述したように、スキャナプローブ18、感光体12の表面、及びそれら両者の間の小さな空気のギャップ(間隙)が、近似的に平行板キャパシタを構成し、感光体12の表面の静電ポテンシャルはV0となる。スキャン用プローブ18は、約200Hzの固有振動周波数を有する。この固有振動は、例えば、圧縮空気の連続的な噴流をスキャナプローブ18と感光体12との間の空気ギャップの基部(付け根:base)に向けることにより励起される。しかし、プローブサブシステムに振動を誘起するための他の方法を用いてもよい。このような他の方法としては、例えば、圧搾ガスを用いた気体圧駆動(ニューマチック)での励起、巻き上げられたバネ(wound-up spring)等の機械的手段、ラウドスピーカーの音声コイル即ちソレノイドに似た機構などのような電気機械的手段又は電気音響的手段、等があるが、もちろんこれらに限定されるものではない。更に、圧電素子は非常に好ましいとも考えられる。なぜなら、かなり小型、軽量で、電気的に高周波数で駆動できる圧電素子が容易に入手できるからである。周波数を高くすればするほど、検出可能な信号、及びシステムの信号/ノイズ比を増大させることができ、もし20kHzを超える周波数で駆動されると、この装置を操作する人にはいかなる音響的な放射も聞こえないようにすることができるであろう。
【0050】
更に、この実施形態は、必要ならば、非点状距離効果(non-point-like distance effect)を補正する「標準」距離補正を実行する能力を持つ。これには、例えば発生器31からの基準信号を用いればよい。上述のように、この方法は、距離の小さな変化に対する感度が低く、空力浮揚と組み合わせることで、平均空気ギャップ距離を一定に維持するのに十分である。
【0051】
スキャナプローブ18が1μmの振幅で約100Hzで振動することで、約4pAのピークAC電流が誘起される。このピーク電流は、プローブが振動しておりスキャナプローブ18と感光体12の表面との間に電圧差があるときはいつでも測定できる。図4は、プローブ増幅器(図示省略)の出力にオシロスコープ(図示省略)を接続したときの結果を示す。図示の信号は、一例としてプローブと感光体表面との間に100VDCのポテンシャル差がある場合のものであり、環境28及び11からの高周波ノイズを除去するために250Hzでデジタルフィルタリングするようにしてもよい。
【0052】
スキャナプローブ18が振動していることで、誘導電流が検知され、アナログ又はデジタルの手段を用いるフィードバックシステムは当業者に一般によく理解されている。フィードバックシステムの出力は、高電圧増幅器20に接続され、この増幅器20の出力が図3に示すようにプローブ18にバイアスを印加する。フィードバックシステムは、感光体の表面のV0に合わせるように、振動により誘導された電流を打ち消すように、すなわちΔVが0に等しくなるように、スキャナプローブ18のバイアス電圧を増大させる。感光体12の走査された各領域の電圧の絶対値が記録され、デジタル画像としてプロットされる。もしプローブがDC(直流)電圧Vprobeになるようバイアスを印加され、プローブの下方の表面が局所的に一定電位Vsurfaceとなっている場合は、DC電圧差(Vsurface−Vprobe)ができることになる。プローブの電荷増幅器は、DC信号に対して感度がないので、DC電圧差を用いる静電システムにとっては、信号は検出されないことになる。しかし、プローブに強制的な上及び/又は下の振動を誘起することで、小さい電流信号が誘導され、この電流信号は電荷増幅器により検出することができる。したがって、振動中に信号が存在すれば、それは、プローブと感光体表面との間にゼロでない電圧差が存在することを示す。プローブバイアスは、誘導された信号を打ち消す即ち最小化するように調整される。この信号が最小値に到達したとき(ゼロに達するという故障は、ノイズ及びその他の制御できない外部要因によるものである)、プローブと感光体表面との間のポテンシャルの差はゼロのはずであることがわかる。したがって、プローブバイアス電圧を制御して測定することにより、感光体表面が(局所的に)同じポテンシャルとなっているはずであることがわかる。ΔVが0であるときにのみ、電流も0になる。例えば、約4000個の電子が、この技術を用いて分解される。この結果は、ここに記載したプローブの配置構成について、1Vの分解能に対応する。
【0053】
図5には、プローブ−ドラム間のポテンシャル差が、フィルタリングした信号の二乗平均平方根(RMS)値に対してプロットされている。このプロットから明らかなように、信号のRMS値はゼロ近傍の最小値に達しており、このことはスキャナプローブ18が調査対象の表面、即ちこの例では感光体12の表面と同じポテンシャルに達したことを意味する。このゼロ差異(zero-discrepancy)は、電圧増幅器20におけるDCオフセットによって起こる。このオフセットは、当該分野でよく知られた技術を用いて容易に補償することができる。
【0054】
ここに示した様々な実施形態には、感光体を均一に帯電させることにより電子写真方式の表面上に静電潜像を生成し、熱可塑性トナーが静電引力により帯電領域に移動し、現像された画像が熱と圧力を加えること定着プロセスにより定着されることを含む画像形成の方法が含まれる。
【符号の説明】
【0055】
11 ステッパモータ、12 感光体、14 ドラム、15 静電電圧計プローブ、16 帯電器、18 スキャナプローブ、20 バイアス電圧増幅器、21 光結合電荷積分器、22 データ取得コンピュータ、29 距離制御システム、30 エンコーダ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯電可能な表面上の静電ポテンシャルを検知するための非接触システムであって、
前記帯電可能な表面を、第1電圧の電荷を受け取って保持するように帯電させる第1回路と、
前記帯電可能な表面からある距離だけ離れて配置されたプローブ表面を持つスキャナプローブと、
前記第1電圧の電荷からあらかじめ定められた電圧閾値以内の第2電圧の電荷まで、前記スキャナプローブにバイアスを印加する第2回路と、
前記帯電可能な表面と、前記プローブ表面と前記帯電可能な表面との間の誘電体材料と、前記プローブ表面とから構成されるキャパシタであって、前記スキャナプローブが前記帯電可能な表面上に印加された電荷に対応するポテンシャルを検知するようにしたキャパシタと、
前記スキャナプローブ内に前記スキャナプローブ読み取り結果として規定される振動電流を誘導するための装置と、
前記スキャナプローブ内に誘導された振動電流を検知する第3回路と、
プロセッサと、
前記帯電可能な表面上の電荷の移動を含む前記スキャナプローブの読み取り結果と当該スキャナプローブに誘導された振動電流とに基づき前記帯電可能な表面上の特定の位置のポテンシャルを判定するための、そのプロセッサにより実行可能なプログラム命令群、を含んだ帯電判定モジュールであって、特定の位置のポテンシャルを求めるために、前記スキャナプローブ内に誘導された振動電流を打ち消すように前記スキャナプローブのバイアス電圧を調整する帯電判定モジュールと、
を備える非接触システム。
【請求項2】
クレーム1に記載の非接触システムであって、前記帯電判定モジュールは、表面ポテンシャルの絶対値の検知に基づき、特定の位置のポテンシャルを判定する、ことを特徴とする非接触システム。
【請求項3】
請求項1に記載の非接触システムであって、更に、
前記スキャナプローブと前記帯電可能な表面との間の相対的な移動を可能にし、前記帯電可能な表面と前記スキャナプローブとが互いに対して相対的に移動するにつれて、前記帯電可能な表面を走査して静電ポテンシャルを求めるための機構と、
前記スキャナプローブと前記帯電可能な表面とが相対的に移動している間、前記プローブ表面と前記帯電可能な表面との間の平均距離を一定に維持する装置と、
を備える非接触システム。
【請求項4】
請求項3に記載の非接触システムであって、更に、前記スキャナプローブ読み取り結果と前もって生成された較正カーブとに基づき、前記帯電可能な表面が走査されている位置での前記プローブ表面と前記帯電可能な表面との間の距離を求めるための、前記プロセッサにより実行可能なプログラム命令群、を含んだ平均距離補正モジュール、を備える非接触システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−243494(P2010−243494A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−85062(P2010−85062)
【出願日】平成22年4月1日(2010.4.1)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】