説明

高周波がん温熱治療装置

【課題】小型化かつ構造の簡素化を図り、より高い汎用性と簡易操作性とを備える。
【解決手段】高周波がん温熱治療装置は、架台11と、架台11に内装され、13MHz、40MHzの高周波電力を選択的に出力する高周波電力発生部82〜84、整合部84とを有する高周波回路部8と、架台11に内装され、冷却パッド101U,101Dの内部にパイプ102D,102Uを介して循環液を循環し、かつ冷却する冷凍部10と、架台11の上部に載置されるエアマットレス13と、エアマットレス13の一部から上向けに露呈する下部電極21を支持する絶縁板122と、架台11の周側辺適所に設けられ、エアマットレス13の上方位置で上部電極22を支持する支持アーム部3とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極間に高周波電力を印加し、誘電加熱によって患部を加温治療する高周波がん温熱治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の電極で患部を挾み、電極間に周波数1MHz〜100MHzの高周波電力を供給することで、がん患部に高周波電磁界を生成し、誘電加熱によりがん患部を加温する高周波がん温熱治療が知られている。すなわち、かかる高周波がん温熱治療は、がん組織と周囲の正常な細胞組織とを共に42℃〜43℃の温度範囲で加温することにより、がん組織が正常な細胞組織に比べて熱感受性が高く、熱に弱いという現象に着目し、がん組織のみを壊死させる治療法である。
【0003】
特許文献1には、患者が横臥するベッド状の治療テーブル、高周波を発生するための回路部が内装された高周波筐体部、治療テーブルと高周波筐体部との間に立設されたガントリー、及びコンソール状の制御部から構成されたシステム的な高周波加温治療装置が記載されている。ガントリーは略中央に大径の円形開口を有し、この円形開口の円周端縁の上下位置には一対の電極が周方向に移動、かつ径方向に出退可能に設けられている。一対の電極には、治療中に生体表面で発生する熱を放熱する冷却水が内装された冷却パッドが付設されている。各冷却パッドは給水用及び排水用のパイプを介して外部タンクと接続され、ポンプによって冷却水が循環するようにされている。かかる装置における治療は以下のような手順で行われる。まず、治療対象患者が治療テーブル上に横臥し、次いで、治療テーブルがガントリーの開口に臨むように移動される。この状態で、一対の電極が患者の患部を挟むように位置決めされる。そして、冷却パッドへの循環水の循環が開始され、さらに制御部からの指示に従って高周波発生回路部が動作する。高周波発生回路部からの高周波電力は、所要の治療時間に亘って、一対の電極間に供給され、患部に高周波電磁界を生成する。患部は、かかる高周波電磁界に起因する誘電加熱現象によって加温されることで施療される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−24112号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された高周波加温治療装置は、高周波回路に自励発振方式(特許文献1、段落0017)を採用し、コイル、コンデンサ及び電子管を用いているため、回路の設置にスペースを要すると共に発熱も大きいことから、他の部材とは別筐体とされている。また、加温に伴う患部側の負荷インピーダンスの変動に起因して発生する電源側とのインピーダンスマッチングのずれを解消するべく整合回路が設けられているが、自励発振方式の場合、生体側の温度上昇の他、身体の多少の動きとか咳等で生じるマッチングのずれによって発振周波数が変動することにもなり、効果的なマッチング動作が発揮しがたい。
【0006】
また、患部が生体の表層や深部にある場合に高周波電磁界を効果的に患部に照射するため、予め複数サイズの電極を準備し、患部の深さに応じて電極の組合せを変えて対応するようにしていた。また、患部が表層と深部の両方にある場合には、加温途中で動作を一時的に中断し、電極の組合せを変更するという交換作業を要していた。
【0007】
また、電極の周縁に集中しがちな電界に起因する温度上昇に鑑みて、冷却パッド内に外部タンクとの間で冷却水を循環させることによって生体表面から吸熱を行って熱感を和らげるようにしているが、冷却水を循環させる態様では充分な冷却効果が充分には果たせていない。
【0008】
また、加温治療は所定時間に亘って連続して行うが、その間、患者は患部が電極間に挟まれた状態を維持する必要がある一方、治療テーブルは木質や樹脂製で製作され、所要の堅牢性を備えているものであるため、かかる治療テーブル上で長時間に亘って同じ姿勢を維持することは、体力の衰えのあるがん患者には、必ずしも容易ではない。
【0009】
さらに、ガントリーは、一対の電極の移動のための機構を有していることから大掛かりであり、そのため治療テーブルは昇降機構に加えて、ガントリーの円形開口に臨む位置とそこから離れた位置との間で出退する形態を要し、治療テーブルの移動を確保するスペースを要することとなる。このように、特許文献1の高周波加温治療装置は、大掛かりで高価となり、かつ設置スペースを要するものであることから、サイズ的に、また汎用性及び安価性、さらに簡易操作性の点で一定の限界があった。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたもので、小型化かつ構造の簡素化を図り、より高い汎用性と簡易操作性とを備えた高周波がん温熱治療装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の高周波がん温熱治療装置は、負荷側となる患部を挟んで対向配置され、液体が内在された第1、第2の冷却パッドが付設された第1、第2の電極の間に高周波電力を供給し、誘電加熱によって患部を加温治療する高周波がん温熱治療装置において、内部に空間を有する架台と、前記架台に内装され、第1、第2の周波数の高周波電力を選択的に生成する他励発振方式の高周波電力発生部、及び前記架台に内装され、前記高周波電力発生部と前記第1、第2の電極との間に介設され、負荷側のインピーダンスの変動に対する整合を取る整合部とを有する高周波部と、前記架台に内装され、前記第1、第2の冷却パッドの各内部に循環パイプを介して外部との間で循環液を循環させると共に、循環途中で前記循環液を冷却する冷却装置と、前記架台の上部に載置されるマットレスと、前記マットレスの一部で当該マットレスから上向けに露呈するように前記第1の電極を支持する第1の電極取付部と、前記架台の周側辺適所に設けられ、前記マットレスの上方位置で第2の電極を略下方に向けて支持する第2の電極取付部とを備えたものである。
【0012】
本発明によれば、例えば対向配置された2個の電極間に高周波電磁界が誘起されて患部が加温されることで治療が行われる。ここに、対向配置とは、文字通り対向する場合の他、患部に所要の高周波電磁界が実質的に照射される態様を含み、極端な場合、両電極が直角に近い角度に向いていてもよい。上記において、架台の上部にはマットレスが載置され、マットレスの内部空間には、第1、第2の周波数の高周波電力を選択的に生成する他励発振方式の高周波電力発生部と整合部とを有する高周波部、さらに冷却装置が内装されている。他励発振方式の高周波電力発生部を採用することで、負荷インピーダンスの変動に対して整合部が作用することで、マッチングが効果的に取れ、電力伝達効率を高めて発熱を抑制でき、また、負荷側に対しても反射波を抑制でき、患部の熱感刺激を低減できることとなる。従って、これらの回路部を架台に収納することが可能となる。なお、架台には必要に応じて外界に連通する通気構造(通気ファン等及び通気路が確保された構造)が採用されることが好ましい。例えば、架台の側面一部にメッシュ構造を取り入れてもよいし、通気ファンを設ける態様としてもよい。但し、通気構造は、患者の体重に対して堅牢性を損なわない程度であることが必要である。
【0013】
また、周波数が低いほど高周波エネルギーの身体内部への深達性(電力半減深度という)が高くなる点に鑑みて、周波数を第1、第2の周波数のように高低で選択的に切り替えるようにしたことで、患部が生体の表層、深部にあるかを問わず、好適な周波数で高周波電磁界を誘起することができ、さらに、患部が表層及び深部の双方にある場合には加温治療中であっても周波数の切り替えのみで対応でき、従来のように一端中断して電極の組合せ作業を行う必要がなくなる。さらに、第1、第2の冷却パッドの各内部に循環パイプを這わし、外部との間で循環液を循環させる構造にし、冷却パッド内の冷却液と、この冷却液を冷却する循環構造とを分けたので、循環液に対する冷却処理が容易となる。例えば、冷却液としては生体とインピーダンスの近い液体を採用でき、一方、循環液としては熱効率の高い液体(冷媒)を採用し、また、氷点下以下の低温でも液体を維持する材質の液体、例えば氷点降下剤、いわゆる不凍液を採用することができ、冷却パッド内の冷却水を循環させる従来例の水温(+5℃程度)に比して、マイナス20℃程度まで可能にすることで冷却効率を格段に高めることが可能となる。
【0014】
このように、設定された第1、第2の周波数による他励発振方式を採用して、整合部のマッチング性を高めて発熱を抑制し、かつ電極の交換を要しない態様とすると共に冷却の効率を高めたことで、装置全体として小型化かつ構造の簡素化が図れ、より高い汎用性と簡易操作性とを備えたものとすることができる。他励発振信号の増幅において半導体素子を利用すれ態様では、さらに小型化が可能となる。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載の高周波がん温熱治療装置において、前記架台及び前記第2の電極取付部の少なくとも一方に、外部から操作が可能な操作部を備え、前記操作部は、第1、第2の周波数の変更を指示するものであることを特徴とする。この構成によれば、操作部を操作することで、患部の深さに応じた方の周波数が容易に選択される。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載の高周波がん温熱治療装置において、前記循環液は、氷点降下剤であることを特徴とする。この構成によれば、冷却パッド内の冷却水を効率的に冷却することが可能となり、患者の熱痛は緩和される。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の高周波がん温熱治療装置において、前記整合部は、前記第1の電極の下方の近傍に配置することを特徴とする。この構成によれば、負荷側との距離が短い分、負荷インピーダンスに種々の要因を含まれなくなり、負荷変動に対するマッチングが容易となる。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の高周波がん温熱治療装置において、前記マットレスは、空気が充填された複数のセルの集合体からなるエアマットレスであることを特徴とする。この構成によれば、絶縁性が確保され、また、エアマットのセルのエアを調整可能とすることで、患部によって様々な体位を保ちながら治療する場合において、その体位の維持支援が図れる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、小型化かつ構造の簡素化を図り、より高い汎用性と簡易操作性とを備えることを可能とする高周波がん温熱治療装置を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の高周波がん温熱治療装置の一実施形態を示す概略構成図で、高周波がん温熱治療装置の平面図である。
【図2】本発明の高周波がん温熱治療装置の一実施形態を示す概略構成図で、高周波がん温熱治療装置の側面図である。
【図3】本発明の高周波がん温熱治療装置の一実施形態を示す概略構成図で、高周波がん温熱治療装置の正面図である。
【図4】本発明の高周波がん温熱治療装置の一実施形態を示す概略構成図で、高周波がん温熱治療装置の構成要素の一部である架台やマットレス等の関連を示す概略斜視図である。
【図5】下部電極周りの構造を示す部分側断面図である。
【図6】上部電極周りの構造を示す部分側断面図で、図6(a)は部分断面正面図、図6(b)は部分断面側面図、図6(c)は上部電極の概略平面視図である。
【図7】支持アーム部の開閉機構部の構造を説明する一部断面正面図である。
【図8】背もたれ部の昇降(ティルト)機構部を説明する部分概略側面図である。
【図9】他励発振方式を採用した高周波がん温熱治療装置の回路構成部の図である。
【図10】図9における、主に増幅部の周囲の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1〜4は、本発明の高周波がん温熱治療装置の一実施形態を示す概略構成図で、図1は、高周波がん温熱治療装置の平面図、図2は、高周波がん温熱治療装置の側面図、図3は、高周波がん温熱治療装置の正面図、図4は、高周波がん温熱治療装置の構成要素の一部である架台やマットレス等の関連を示す概略斜視図である。なお、図1〜図3ではエアマットレス13は省略されている。
【0022】
図において、高周波がん温熱治療装置1は、所定形状を有する架台11、及び架台11の内部及び上部に配置される各種機器を備えている。架台11はベッド本体として機能するもので、堅牢な金属材、例えばステンレス材から構成され、図4に示すように所定の強度を得るべくフレーム111構造によって各面が構成され、全体として直方体形状をしている。また、フレーム111の間には必要に応じて架台11の内空間(後述するように各部材を収容するための収容空間)を作成する補強材等の部材が敷設されている。架台11の上部の周囲端縁には、図1〜図3に示すようにフレーム111の上部を利用して嵩高部112が環状に形成されている。嵩高部112は、フレーム111を変形して形成したり、あるいは別部材を接着、機械的な連結乃至は締結のいずれかで取り付けたりする態様であってもよい。架台11の下面側の4隅には、図2、図3に示すように、移動可能とするための公知のキャスタ113が取り付けられている。
【0023】
架台11の内空間には、高周波電力の生成用その他の各種の回路部や駆動部が収容されている。また、架台11の上面には、所定厚さの導電材、好ましくはアルミニウム材等からなる金属板12が敷設され、その上面に絶縁材からなるマットレス、ここでは内部が空気であるため絶縁性の高いエアマットレス13が敷設されている。エアマットレス13は、環状の嵩高部112内に位置決めして納められ、治療対象となる患者が長手方向(図1の左右方向)に横臥するものである。マットレスはエアマットレス13の他、ウレタンゴム等が充填されたものでもよい。
【0024】
エアマットレス13は、図4に示すように、幅方向に長尺のセル(エア室)131が長手方向に複数条だけ連設されてなるものである。このエアマットレス13は、幅方向の略中央位置で各セル131が、図4にハッチングで示すように2分割されている。そして、後述するエアポンプ9で全セル131に、また必要に応じて幅方向の一方側のセル131に対してのみエアを送ることで(あるいはエアを抜くことで)、幅方向に対してエアの有り無しの状態とすることができ、これによって患者が仰向けや伏臥の他、横向きを助長するようしている。なお、長手方向にも複数のセルに分割して、患者の脚部を上半身側に比して相対的に持ち上げ(屈伸姿勢とし)たりすることで、長時間の治療姿勢に対する疲れの緩和が図れるようにしている。仰向けの場兄は、枕を採用すればよい。なお、図では示していないが、伏臥での治療を考慮して、顔部分が位置する箇所のエアマットレス13が切り欠かれており、伏臥姿勢でも呼吸及び姿勢維持を容易としている。
【0025】
また、エアマットレス13の略中央位置には、所定形状の切り抜き部132が形成されている。金属板12の適所、すなわちエアマットレス13の切り抜き部132に対応する位置には円形の開口部121が形成されている。この開口部121を利用して下部電極21が上方を臨んで配設されるようにしている(図5参照)。
【0026】
また、架台11は長手方向の一方側(患者の頭部となる側、図2の左方)には、回動可能な背もたれ部14が設けられている。背もたれ部14は、後述する回動機構部によって回動可能にされて、例えば患部が上半身の場合には横臥した姿勢で、患部が腹部等の場合には背もたれ部14を所定角度(最大30°程度)だけ持ち上げて、多少起き上がった姿勢となるようにしている。
【0027】
さらに、架台11には、周囲の適所から上方側にアーチ状をなした支持アームが架設されている。本実施形態では、架台11の長手方向の略中央位置で、幅方向に亘って、上方に略アーチ状をなした支持アーム部3が取り付けられている。支持アーム部3の長手方向の略中央には上部電極22が下方に向けて取り付けられている。そして、下部電極21と上部電極22との間に患部が挟持された状態で、両電極21,22間に高周波電力を供給することで、患部に高周波電磁界が印加され、誘電加熱が行われることとなる。
【0028】
架台11の支持アーム部3を取り付けた基端側である基部30には、後述するように支持アーム部3をエアマットレス13に対して開閉姿勢に変位させる開閉機構部4が設けられている。そして、支持アーム部3には、後述するように上部電極22を出退側及び長手方向に移動させる移動機構部5、さらには治療関連情報を表示するための液晶等の表示部6、各種の指示内容や所要の情報を入力するための操作部7が設けられている。
【0029】
架台11の内空間には、高周波回路部8が収容されている。高周波回路部8は、患者が横臥した場合の頭部側から順に所定の順番で、例えば制御部85、整合部84、発振部82、電源部81及び増幅部83が設置されている。各回路の動作については、図9、図10で後述する。
【0030】
架台11の内空間の患者が横臥した場合の足下側には、エアポンプ9が設置され、さらに端側には冷凍部10が配置されている。エアポンプ9は、エアマットレス13の所要のセル131にエアを充填したり、抜いたりするもので、治療開始前に行われる。冷凍部10は、下部電極21及び上部電極22が接する生体表層部位及びその近傍を冷却するもので、図4に示すように、冷凍器10D,10Uを備え、かつ架台11に機械的に取り付けられない状態で配置される。冷凍器10Dは、下部電極21の冷却パッド101Dの冷却用であり、冷凍器10Uは、上部電極22の冷却パッド101Uの冷却用である。
【0031】
図5は、下部電極21周りの構造を示す部分側断面図である。まず、下部電極21の構造を説明する。下部電極21は金属製で所定径及び所定厚みを有する円盤状で、裏面(図5の下面側)の中心から下方に立設された、例えば筒状の支柱211を有する。下部電極21の表(おもて)面(図5の上面側)には樹脂材等の薄膜で形成されたドーム状の冷却パッド101Dが張設されている。冷却パッド101Dの内部には、人体と略等しい負荷インピーダンスとなるように水(好ましくは生理食塩水)Wが封入されている。冷却パッド101D内部と冷凍器10Dとの間には水Wを冷却する冷却液を循環させる、テフロン(登録商標)等の高周波に対して絶縁性を有する材料から作製されたパイプ102Dが這わされている。パイプ102Dは、下部電極21の適所を貫通した2個の孔210を介して冷却パッド101D内に循環路が形成されている。パイプ102Dは、冷却パッド101D内で、万遍なく這いまわされるように、例えばスパイラル形状とか千鳥形状にして水Wとの接触面積を増やして、加温治療中に温度上昇する水Wとの間で熱交換効率を高めるようにしている。
【0032】
冷却液は、従来は、冷却パッド101D内の水をそのまま外部空間を経由して循環させる態様であったが、熱交換効率が不十分(凍結を考慮すると、+2℃〜+5℃あたりの水での吸熱処理)であり、そのため、放熱系を大掛かりとする等の構造が必要であった。そこで、本発明では、冷却パッド101D内の水Wとは別に冷却液として、より効果的な冷媒を使用するようにしている。本実施形態では、冷媒として蒸発温度がマイナス20°であるエタノール40%水溶液を用いている。冷凍器10は内部に、冷凍サイクルを実行するための蒸発器、コンプレッサ、凝縮器及び膨張弁の各構造体をシリアルに連接して備え、蒸発冷媒をパイプ102D内で循環させ、その途中で外部から(冷却パッド101D内の水Wの熱量を)吸熱するようにしている。このように、冷媒が水であれば+2℃〜+5℃が限度である一方、本実施形態ではマイナス20°という低温度の冷媒を用いることが可能となることから、冷却パッド101D内の水Wの熱量を高効率で吸熱でき、水温を好ましい温度に保持させることが可能となり、熱痛が緩和される。なお、冷媒としては、エタノールを主成分とする氷点降下剤以外に、アルコールやエチレングリコール等を主成分とする、いわゆる不凍液等に使用される氷点降下剤であってもよい。
【0033】
金属板12に形成された開口部121は、その周端に所要径を有する環状の絶縁板122が嵌め込まれている。絶縁板122の内径は下部電極21の支柱211の径と対応している。従って、下部電極21の支柱211を、下部電極21が絶縁板122に当接するまで、絶縁板122の内径部に挿通して下部電極21の取り付けが行われる。なお、絶縁板122にはパイプ102Dを挿通する孔123が穿設されている。
【0034】
金属板12の下方には、整合部84が配置されており、下部電極21の取付状態で、支柱211の適所、例えば下端が整合部84の正極側の出力端子841と接触するようになっている。なお、両者の接触をより強固とするために、嵌合構造が採用されることが好ましい。また、整合部84は、図4に示すように、負極(アース)側を金属板12と接続する導線842が所要本数、例えば2本接続されている。導線842は高周波に対して低抵抗となる帯状であることが好ましい。また、絶縁板122の下部は部分的に蛇腹部材で覆われていてもよい(図2参照)。
【0035】
図6は、上部電極22周りの構造を示す部分側断面図で、図6(a)は部分断面正面図、図6(b)は部分断面側面図、図6(c)は上部電極の概略平面視図である。まず、上部電極22の構造を説明する。上部電極22は、金属製で所定径及び所定厚みを有する円盤状で、裏面(図6の上面側)には所定厚みの絶縁板221が敷設されている。絶縁板221は、電極板と同等乃至は多少大径を有する。上部電極22は、絶縁板221を介して上方に、同じく絶縁材である支柱222が立設されている。上部電極22の表面(図6の下面側)には樹脂材等の薄膜で形成されたドーム状の冷却パッド101Uが張設されている。冷却パッド101Uの内部には、冷却パッド101Dと同様、水(好ましくは生理食塩水)Wが封入されている。冷却パッド101U内部と冷凍器10Uとの間には水Wを冷却する冷却液を循環させるパイプ102Uが這わされている。パイプ102Uには、上部電極22の適所に貫通された2個の孔220(図6(c)参照)を介して冷却パッド101U内に循環路が形成されている。パイプ102Uは、パイプ102Dと同一材料で作製されており、冷却パッド101U内で、例えばスパイラル形状とか千鳥形状にして水Wとの接触面積を増やして、加温治療中に温度上昇する水Wとの間で熱交換効率を高めるようにしている。冷却液は、冷凍器10Dに使用されるものと同一で、本実施形態では、蒸発温度がマイナス20°であるエタノール40%水溶液である。
【0036】
図1及び図2に破線で示すように、架台11側と冷凍部10とは連結されておらず、連接部100で冷凍部10側のパイプと架台11側のパイプとが連接されている。より具体的には、下部電極21の冷却パッド101D及び上部電極22の冷却パッド101Uと冷凍器10D,10Uから蒸発冷媒を入出力する冷却パッド101、101Uとは連接部100を介して連接されている。冷凍部10は、コンプレッサを内蔵し、治療中に動作するため、振動を発生する。従って、冷凍部10と架台11とを機械的に連結させた場合、冷凍部10の振動が治療中に架台11側に伝わり、この振動が下部電極21と上部電極22との間に生じる高周波電磁界、また、他の部材の位置関係の保持等にも影響し、治療効率を低下させる可能性があるが、本実施形態では、冷凍部10を架台11の下部に配設する一方、冷却パッド101D,101Uのみで連接していることから、冷凍部10内のコンプレッサの振動が架台11側に伝わることがないため、上述の問題が生じることはない。また、振動や振動音から患者が受ける不快感をなくすこともできる。
【0037】
上部電極22の上面には、図6(c)に示すように、対向する位置に一対の孔220が形成されると共に、孔220とは周方向の異なる位置に一対の導線223が取り付けられている。導線223は好ましくは帯状であり、負極側として支持アーム部3に、あるいは支持アーム部3に設けられた図略のアース部材に接続されている。ここでは、便宜上、支持アーム部3に接続されている。
【0038】
支柱222と支持アーム部3との間の移動機構部5は、上部電極22をリンク機構を利用して昇降させる昇降機構51を備えている。なお、図6(a)(b)には、昇降機構51を支持アーム部3の長手方向にスライドさせるスライド機構52を、必要に応じて採用した構成を記載している。昇降機構51は蛇腹部材50で覆われるようにしてもよい。
【0039】
昇降機構51は、上下支持片511,512と、上下支持片511,512間でX字状に交差して連結されるリンク片513,514とを備えている。リンク片513,514は中間位置でピン等によって回動自在に連結されている。また、リンク片513の両端及びリンク片514の上端は対応する上下支持片511,512にピン等で回動自在に連結されている。さらに、リンク片514の下端のピンは、下支持片512上をスライド可能なように、スライド溝5121に嵌合状態で連結されている。なお、リンク片513,514は、図6(b)に示すように上下支持片511,512の前面及び後面にそれぞれ連結されている。
【0040】
さらに、リンク片514の下端には伸縮駆動部材としてのシリンダ515のプランジャが係合されており、シリンダ515のプランジャの水平方向における出没によってリンク片514の下端が図6(a)の水平方向にスライドすることで、前述したX字状による上下支持片511,512間の距離が変更するようになっている。すなわち、X字状の形状が上下方向に伸縮することで、上支持片511に対して上部電極22側が昇降するようにしている。この昇降によって、エアマットレス13上に横臥した患者の患部に適宜の押圧力で上部電極22を当接するようにし、さらにシリンダ515をロック状態とすることで押圧力を保持するようにしている。伸縮駆動部材は、シリンダ515に代えて、電動モータとボールネジが形成されたステー部材を利用したもの、ラック・ピニオン等が採用可能である。なお、スライド機構52を採用しない態様では、上支持片511が支持アーム部3に取り付けられている。
【0041】
ここで、スライド機構52を採用する実施態様について説明する。スライド機構52は、上支持片511の左右両端に一対のコロ部521,522を有する。コロ部521は、上下に所定距離隔てて配置されたコロ521U,521Dを有する。コロ部522は、上下に所定距離隔てて配置されたコロ522U,522Dを有する。
【0042】
一方、支持アーム部3には、図6(b)に示すように、その側面から水平方向に庇状のガイドレール523がアーム方向の所定範囲に亘って立設されている。スライド機構52は、コロ521Uとコロ521Dとの間、及びコロ522Uとコロ522Dとの間にガイドレール523を挟持することで、昇降機構51すなわち上部電極22をガイドレール523に沿った方向への移動及び上部電極22のティルト変更を可能にしている。なお、図では見えていないが、上述したようにガイドレール523は支持アーム部3の左右所定距離の範囲に形成されており、その範囲内で上部電極22のスライド量が調整可能にされている。なお、スライドロック構造は、種々の構成が採用可能であり、例えば、4個のコロのいずれか乃至は全てのコロの回動を規制し、また解除する公知の機構を採用すればよい。パイプ102Uは、例えば管状構造を有する支持アーム部3の下面適所に穿設された開口3aから管内部を経由して支持アーム部3の基部30側から架台11内に延設されている。なお、このように上部電極22を支持アーム部3に対して所定の範囲内でスライド可能とする態様が採用される場合には、パイプ102U及び絶縁外皮が巻かれた導線223はスライド長に対応し得るに十分な寸法長とする必要がある。
【0043】
図7は、支持アーム部3の開閉機構部4の構造を説明する一部断面正面図である。開閉機構部4は、支持アーム部3の基部30を架台11に支承する水平な支軸41を有する。支持アーム部3は、この支軸41周りに揺動可能にされ、エアマットレス13の上方を開閉可能にしている。すなわち、患者がエアマットレス13に横臥するまでは、支持アーム部3を開いておいて患者のエアマットレス13上への移動をスムーズに行わせ、次いで、患者がエアマットレス13上に横臥した状態で、支持アーム部3を閉じて、上部電極22の位置調整(昇降調整)を行うようにしている。
【0044】
支軸41には同軸状に扇状ギア42が一体で固定されている。また、架台11側には駆動源である開閉モータ43が配設され、開閉モータ43の出力軸に取り付けられた出力ギア431が扇状ギア42と噛合されている。従って、開閉モータ43が回転すると、その回転力は出力ギア431、扇状ギア42を介して支軸41を回転させ、回転方向に応じて、支持アーム部3を開方向へ、あるいは閉方向へ位置変位させる。なお、支持アーム部3の基部30と反対側である先端部31には取手311が設けられている。また、図で示していないが、先端部31は、例えば架台の嵩高部112の対応する位置に穴が形成され、この穴に所要のフック感(節度感)を有して係合するようにしている。そして、操作者が取手311を把持して上方に引き上げることで、嵩高部112との係合を解除し、その状態で、開閉モータ43の回転駆動が可能にされている。開閉モータ43は、支持アーム部3の開閉量を、回転量で、あるいは扇状ギア42の回動範囲をセンサで検知することで回動制御される。開閉モータ43の動作範囲への支持アーム部3の位置変位は操作者が行う。そして、所定範囲内まで移行すると、操作者の操作指示を受けて開閉モータ43が動作することになる。
【0045】
図8は、背もたれ部14の昇降(ティルト)機構部を説明する部分概略側面図である。回動機構部140は、金属板12を長手方向の所定位置で例えば蝶番からなる回動軸141で回動可能に連結し、回動側の金属板12の下面には補強用としての昇降板142が好ましくは一体状にして敷設されている。昇降板142の基部には回動軸141と同心の扇状ギア143が固設されている。また、架台11の適所には昇降モータ144が配設され、昇降モータ144の出力軸に取り付けられた出力ギア1441が扇状ギア143と噛合している。従って、昇降モータ144が回転すると、その回転力は出力ギア1441、扇状ギア143を介して回動軸141を回転させ、回転方向に応じて、昇降板142を起立方向へ、あるいは元の水平方向へ動作させる。
【0046】
図9は、他励発振方式を採用した高周波がん温熱治療装置の回路構成部の図である。高周波がん温熱治療装置の高周波回路部8は、電源部81、水晶振動子を有する発振部82、増幅部83、整合部84及び制御部85を備えている。電源部81は、発振部82や後述するプリアンプ831に電源供給するための補助直流電源811とそれ以外の各部へ必要な電力を供給するための主直流電源812とを備えている。
【0047】
発振部82は、固定周波数で発振動作を行う、例えば水晶振動子を備えている。発振部82は、複数種類の周波数を発振する回路を並設しており、本実施形態では、図10に示すように、13.56MHzと40.68MHzである。電磁波の生体内への深達度合は電磁波の周波数、すなわち発振周波数に依存し、周波数が低い程(例えば13.56MHz)、生体の奥まで深達し、深層の患部に対して効果的な加温が可能となり、また、周波数が高い場合(例えば40.68MHz)、表層の患部に対して効果的な加温が可能となる。従って、患部の深さ位置に応じて使用周波数を選択するようにしている。
【0048】
増幅部83は、プリアンプ831及び出力部832、出力フィルタ833及び出力・反射レベルセンサ834を備えている。プリアンプ831は水晶発振信号の波形を所定レベルまで初段増幅する。出力部832はパワーアンプ用のMOSFET(Metal-Oxide-SemiconductorField-Effect Transistor)等の電界効果半導体素子で、所要の電力の発振信号を生成する。出力フィルタ833は、発振信号に重畳される高調波成分を濾波するローパスフィルタ等である。出力・反射レベルセンサ834は、高周波出力電力と反射電力のモニタ用と、出力電力を設定値に自動制御する制御用として使用される。
【0049】
整合部84は、電源側と、上下電極21,22及び患部等を含めた負荷側の負荷インピーダンスとの整合(マッチング)を取るものである。負荷インピーダンスの変動は、治療に伴う患部の温度上昇、患者の動き、呼吸など全てが変動要因となり、かかる変動に対して整合部84がマッチングを取ることで、電源側からの出力電力が高い効率で負荷側に伝達されるようにしている。電力伝達の効率が低下すると、出力電圧が高くなって、電界の集中も顕在化し、生体への電気的な熱的な刺激が強くなり、患者に苦痛を与えることに繋がることになるが、本実施形態のように、他励発振方式を採用して固定周波数の中でマッチングを精度良く取ることで、電力伝達の効率を維持可能にしている。
【0050】
整合部84は、整合用の50Ωの同軸ケーブルで電源側と接続され、整合部84を距離的に上下電極21,22側に配置可能にしている。整合部84は内部に、Z,θ(インピーダンス、位相差)センサを有すると共に、マッチング用の直並列の可変コンデンサCs,Cpを備えている。可変コンデンサCs,Cpは電極の対向面積を変更することで、静電容量の変更を可能にするものである。モータ84s,84pは、例えば可変コンデンサCs,Cpの対向する電極を相対移動させて対向面積を変更することで静電容量を変更するものである。モータ84s,84pは制御部85からの指示に従って、制御器86によって駆動される。可変コンデンサCs,Cpは、マッチング状態がずれると、モータ84s,84pを回転させて静電容量を変化させることでマッチングを取るように調整される。
【0051】
図10は、図9において、主に増幅部83の周囲の回路図である。図10において、発振部82は、13.56MHzで発振する第1発振回路821と40.68MHzで発振する第2発振回路822とを備えている。第1、第2発振回路821,822は制御部からの選択信号に従って選択された回路側が動作する。増幅部83は、プリアンプ831の他、順番に、選択された発振周波数に対する高調波成分をカットする中間フィルタ8311、発振電力を確保するべく所定数に分配、ここでは並列4ラインで増幅動作を行わせる分配器8321、並列された4個のパワーアンプ8322,…、順次2ラインずつ出力電力を合成するための合成器8323、及び選択された発振周波数に対する高調波成分をカットする終段フィルタ8324を備えている。パワーアンプ8322及び合成器8323を併設する回路構成とすることで、所要のパワー、例えば3KW程度を確保することが可能となる。
【0052】
表示部6及び操作部7は支持アーム部3の適所に設けられている。表示部6及び操作部7は支持アーム部3の基部30側か先端部31側の一方側に設ける態様でもよいが、両側に設けてもよい。なお、両側に設ける態様では、情報の更新を監視しておき、最新の入力内容が設定情報として優先するようにすればよい。
【0053】
表示部6には、制御部85が内蔵するタイマを利用して計時する治療開始からの経過時間、高周波出力電力の設定値、温度計で計測された温度の表示、エアマットレス13のティルト角の状態が表示される。温度は、高周波電磁界において対応可能な温度計700、好ましくは熱電対温度計で測定される。温度計700は、侵襲式、無侵襲式を問わず、患部位置に応じた位置に1個又は所定数が配置してセットされる。
【0054】
操作部7は、図2に示す表示部6の画面に積層される透明材で構成されるタッチパネル70と、表示部6の機能の一部であって各種ボタン(画像のテンキーなどを含む)が表示されるボタン表示機能部とから構成される。公知のように、各種ボタンの表示座標と、タッチパネル70の押圧位置とを予め関連付けておくことで、いずれのボタンが押圧指定されたかが識別可能になっている。各種ボタンとしては、テンキーを利用して入力可能な、患者識別情報、治療時間、出力値、周波数切替、エアマットレス12の制御指示が想定されている。
【0055】
また、操作部7は、機械的なボタン71も備えている。図2に示すように、機械的なボタンとしては、電源オンオフ用、高周波オン(治療開始指示)用、背もたれ(ティルト)設定用及び支持アーム部3の開閉用が想定される。また、高周波電力の供給を強制的に停止させる非常停止ボタンを付加してもよい。なお、操作部7は、機械的なボタンのみで構成してもよく、あるいはタッチパネル方式で行う態様としてもよい。
【0056】
制御部85は、内部にマイクロコンピュタ等を備え、上述した操作部7からの操作内容を受け付けて、制御部85内の図略の情報記憶部に予め格納された治療制御プログラムに沿って治療動作が実行される。治療動作を簡単に説明すると、以下のとおりである。まず、患者がエアマットレス13に横臥し、電源が投入された後、操作部7を介して患者識別情報が入力される。患部が認識されることで、操作者によって上部下部電極21,22が対応する治療位置にセットされる。また、患者識別情報に従って、治療時間、出力値、使用周波数及びエアマットレス13のティルト角が設定される。
【0057】
次いで、高周波オンのボタンが押下されて加温治療が開始される。整合部84ではモータ84s,84pによってマッチングが図られつつ治療が継続される。また、治療期間中、温度計700からの温度が表示部6に表示されて、温度監視が可能にされている。そして、設定時間が経過すると、制御部85は治療終了と判断して高周波出力を自動的にオフにする。これにより、1回分の治療が終了する。
【0058】
なお、本発明は、以下の態様が採用可能である。
【0059】
(1)本実施形態では、架台11としてフレームで囲った構造体を示したが、実際には周囲に化粧板等を配置することで、内部は見えないようにする。また、架台11はフレーム構造に限定されず、放熱が可能な構造が採用されておれば、箱形であってもよいし、直方体形状でなくてもよい。
【0060】
(2)さらに、冷凍部10を架台11の下部に機械的な連結なしで配置する構成としたが、これに代えて、振動吸収部材を介して機械的な連結をする態様としてもよい。これによれば、装置が全体としてコンパクトとなり、かつコンプレッサで発生する振動が架台11側へ伝達することが可及的に抑止される。
【0061】
(3)高周波回路部8を、患者が横臥した場合の頭部側から順に制御部85、整合部84、発振部82、電源部81及び増幅部83で設置したが、これに限定されず、その他の配列でもよい。また、必要に応じて上下方向に積層したり、幅方向に配置する態様としてもよい。なお、整合部84は下部電極21の近傍に配置するのが、マッチング上好ましい。いずれにしても、架台11の内空間に実質的に全ての構造物を収容することで、基本的に1台の架台11で済み、全体としてコンパクトな装置として実現することができる。
【0062】
(4)上部電極22をティルトさせる態様の場合、上部電極22と下部電極21とが対向配置されない状態があり得るが、この場合でも、上部電極22と下部電極21との間に生じる高周波電磁界内に患部がさらされれば、実質的に加温治療が可能である。このように、上部電極22の角度を変えたり、患者の姿勢を変えることで患部の位置に対して好適に高周波電磁界を印加することができる。
【0063】
(5)上部電極22の向き(ティルト)の変更は、スライド機構52に代えて、支柱222を屈曲する簡易な機構を採用することで実現してもよい。
【0064】
(6)支持アーム部3は基部30と先端部31とを持つアーチ形状に限定されず、先端部31が空中途中までとし、その先端部位に上部電極22が取り付けられる構造であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
11 架台
12 金属板
121 開口部(第1の電極取付部の一部)
122 絶縁板(第1の電極取付部の一部)
13 エアマットレス(マットレス)
14 背もたれ部
21 下部電極(第1の電極)
22 上部電極(第2の電極)
3 支持アーム部(第2の電極取付部)
4 開閉機構部
5 移動機構部
6 表示部
7 操作部
8 高周波回路部(電源部)
81 電源部(高周波電力発生部の一部)
82 発振部(高周波電力発生部の一部)
821 第1発振回路(高周波電力発生部の一部)
822 第2発振回路(高周波電力発生部の一部)
83 増幅部(高周波電力発生部の一部)
84 整合部
85 制御部
86 制御器
9 エアポンプ
10 冷凍部(冷却装置)
100 連接部
101D,101U 冷却パッド(第1、第2の冷却パッド)
102D,102U パイプ(循環パイプ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷側となる患部を挟んで対向配置され、液体が内在された第1、第2の冷却パッドが付設された第1、第2の電極の間に高周波電力を供給し、誘電加熱によって患部を加温治療する高周波がん温熱治療装置において、
内部に空間を有する架台と、
前記架台に内装され、第1、第2の周波数の高周波電力を選択的に生成する他励発振方式の高周波電力発生部、及び前記架台に内装され、前記高周波電力発生部と前記第1、第2の電極との間に介設され、負荷側のインピーダンスの変動に対する整合を取る整合部とを有する電源部と、
前記架台に内装され、前記第1、第2の冷却パッドの各内部に循環パイプを介して外部との間で循環液を循環させると共に、循環途中で前記循環液を冷却する冷却装置と、
前記架台の上部に載置されるマットレスと、
前記マットレスの一部で当該マットレスから上向けに露呈するように前記第1の電極を支持する第1の電極取付部と、
前記架台の周側辺適所に設けられ、前記マットレスの上方位置で第2の電極を略下方に向けて支持する第2の電極取付部とを備えた高周波がん温熱治療装置。
【請求項2】
前記架台及び前記第2の電極取付部の少なくとも一方に、外部から操作が可能な操作部を備え、前記操作部は、第1、第2の周波数の変更を指示するものであることを特徴とする請求項1に記載の高周波がん温熱治療装置。
【請求項3】
前記循環液は、氷点降下剤であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高周波がん温熱治療装置。
【請求項4】
前記整合部は、前記第1の電極の下方の近傍に配置することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高周波がん温熱治療装置。
【請求項5】
前記マットレスは、空気が充填された複数のセルの集合体からなるエアマットレスであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高周波がん温熱治療装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−223339(P2012−223339A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92958(P2011−92958)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(390024394)山本ビニター株式会社 (16)
【Fターム(参考)】