説明

高周波加熱装置

【課題】異常な設置状態における長時間の使用によりボビンにクラックが生じても、高圧巻線とコア間にスパークの発生を防止し、UコアIコア間のギャップのばらつきを抑え、トランス特性の安定化を図る。
【解決手段】コアは一次巻線または高圧巻線または一次巻線と高圧巻線の両方と対向する部分についてあらかじめボビンに挿入する前に絶縁物で覆る構成にするとともに、ボビンのクラックによる高圧巻線とコア間の高圧スパークを防止する構造とするとともに、UコアとIコアを絶縁物で全周覆い、かつ、両コアの対向する面の絶縁物の厚みを一定に作ることにより、両コア間のギャップを一定にでき、昇圧トランスの特性をバラツキの無い安定したものにすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子レンジ等の高周波加熱装置に用いられるインバータ電源用高圧トランスに関する技術であり、特にインバータの性能と安全性とを高める技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インバータ方式の高周波加熱装置としては、プリント基板にトランスを実装したトランスユニットを備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は、上記インバータ方式の高周波加熱装置におけるトランスユニットの回路構成を示すブロック構成図である。
【0004】
図6において、商用電源11からの交流は整流回路13によって直流に整流される。整流された電圧は、整流回路13の出力側のチョークコイル14と平滑コンデンサ15で平滑され、インバータ回路102の入力側に与えられる。
【0005】
制御回路29により、インバータ回路102中の半導体スイッチング素子(IGBT)17をオン/オフするよう制御されることで、昇圧トランス18の1次側に所望の高周波(20〜50kHz)の双方向電流が流れる。
【0006】
この昇圧トランス18の1次側に発生する高周波電力が昇圧トランス18で昇圧され、2次側に高圧の高周波電力が発生する。昇圧トランス18の2次側には、高圧ダイオード191、192と高圧コンデンサ193、194とからなる倍電圧全波整流方式の高圧回路19が接続され、マグネトロン10のアノード、カソード間に高圧直流電圧(例えば、−4kV)が印加される。
【0007】
また、昇圧トランス18のもう一つの高圧巻線(ヒータ巻線)5からマグネトロン10のカソード(フィラメント)121に電力が供給され、加熱されたカソードから電子が発生し、アノードに到達することによって、マイクロ波エネルギーが加熱室内の被加熱物に照射される(図示せず)。
【0008】
また制御回路29は、コネクタ26を通して高周波加熱装置の制御部からの指令に基づきインバータ102を制御する。このように、制御回路29は、IGBT17のオン/オフ制御により、2次側への電力供給を制御し、マグネトロン10からの出力マイクロ波の強度を制御する。
【0009】
図8は、従来のトランスユニットに実装された昇圧トランス18の構造を示す概略断面図である。図8に示すように、上記のトランスユニットに用いられる昇圧トランス18は、一次巻線3、高圧巻線4、及びヒータ巻線5が同心円状に巻かれたボビン2を有し、このボビン2の中心に、Uコア1とIコア39とが差し込まれた構造となっている。
【0010】
高圧巻線4は、所定の昇圧比が得られるよう、一次巻線の約10倍のターン数を有する。Uコア1はトランスの動作安定化および安全のためにアースされている。
【0011】
また、Uコア1とIコア39との間には、ボビン2の一部から突出する樹脂製のギャップスペーサ38が設けられている。
【特許文献1】特開2004−304142号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
図7(A)、(B)は昇圧トランス18の主な構成要素の位置関係を示した簡略図であり、図7(A)はコアの高さが長い場合、図7(B)はコアの高さが短い場合の例である。
【0013】
Uコア1とIコア39は対向してボビン2の中に挿入されており、前記UIコア1と39を中心とした同心円上に前記ボビン2を隔てて外側に平行に一次巻線(P巻線)3と高圧巻線(S巻線)4が巻かれている。
【0014】
Uコア1とIコア39はボビン2に挿入されているがボビン2外壁部50(Uコア側)、51(Iコア側)に当てて中に挿入されている。そもそもコアは鉄・マンガンなどの磁性材料を一定の寸法で固め焼成して完成させているが焼成時収縮するので出来上がりの寸法精度が悪い。よってUコア1とIコア39の向き合っている隙間(ギャップ)g52の寸法ばらつきが大きくなる。
【0015】
ギャップg52のばらつきが大きいと昇圧トランス18のインダクタンスのばらつきが大きくなり、前記昇圧トランス18の性能や特性が悪くなるという課題を有していた。図7(A)ではギャップg52が小さくなり、図7(B)ではギャップg52が大きくなる。
【0016】
一方、図8において、この昇圧トランス18高周波加熱時は通電するので一次巻線3や高圧巻線4、マグネトロン10(図6)のカソード部(フィラメント)を暖めるヒータ巻線5は発熱するので、昇圧トランス18は温度上昇する。高周波加熱終了後は発熱がストップするので昇圧トランス18の温度は下がっていく。
【0017】
すなわち、昇圧トランス18は温度上昇と下降を繰り返す、いわゆる温度サイクルを繰り返すわけであるが、この時昇圧トランス18を構成する材料が徐々にではあるが熱疲労で劣化していく。
【0018】
通常使用状態では問題にならない劣化の進行ではあるが、高周波加熱装置の設置条件や使用条件で想定できないような悪い条件で異常使用をされた場合や、冷却部品用の他部品の故障時には、たとえば家具の中の上下左右奥の5面にくっつけて置いたりして、高周波加熱装置の給排気口が塞がれてしまうといった時や、あるいは高周波加熱装置の冷却ファンのモータコイル部が断線してしまい、冷却ファンが動作不能となるといったトラブル発生時、図8のようにボビンにクラック7が発生したりする懸念が出てくる。
【0019】
昇圧トランス18のボビン2部分にクラック7が生ずると高圧巻線4とアースに接続されたUコア1部分間には約3000Vの高圧がかかっており、空間距離が比較的大きくないのでスパークが発生する(拡大構造部分)。
【0020】
スパークがあると、図6における高圧回路19部分が電気的に大きく変化し、その影響でインバータ回路部分102も大きく変動し、この変化を検出して安全また部品保護の目的で高周波加熱を停止する。よってスパークの発生もこの時停止する。
【0021】
しかしながら、使用者が再度高周波加熱を行おうとするとまたスパークが発生し、またこれを検知・停止を繰り返すようになる。さらにこれを繰り返すと、図8に示すように高圧巻線4の部分が異常発熱し絶縁破壊を起こし、レアショート状態になって、そのレアショート部分でさらに発熱が増し、発煙・発火が発生したりして、使用者にとって非常に不安感を与えるとともに不安全な状況にもなりうる。
【0022】
ボビン2の劣化を防ぎ、寿命を伸ばす方法またはスパークを発生させない方法としては、高圧巻線4とUコア1の距離をもっと大きくとる、または、高圧巻線4の外装の絶縁厚みを増し耐圧を高くする方法もある。
【0023】
しかし、昇圧トランス18の形状が大きくなり省スペースではなくなり、使用者の利便性を損なう。しかもコスト高ともなり、これも使用者の利便性に反するものとなる。
【0024】
またUコア1のアースをとらないようにすれば、クラック7が発生しても高圧巻線4コア1間にスパークは発生しないが、逆にボビン2のクラックがどんどん進行しいたるところでクラックまたは穴が開き始めると、今度は一次巻線3と高圧巻線4間でスパークが発生するようなことになる。
【0025】
この時、もし使用者が高周波加熱装置のアースをとっていなかった場合、使用者が高周波加熱装置に触れたとき高圧感電するという大変な危険な状況になる。
【0026】
この最悪の状況を回避するため、Uコア1のアースをとりボビン2のクラックや穴開きが発生しても、高圧巻線4からは必ず距離が一番近いUコア1にスパークが飛ぶような一次巻線とのボビン2の距離・構造とする。
【0027】
すなわち、高圧巻線とUコア1との最短距離をd1、高圧巻線と一次巻線との最短距離をd2とすると、d1<<d2の位置関係でボビン設計を施し、かつ一次巻線と高圧巻線間には隔壁を2重に設けるなどして、クラックや穴開き発生で直接一次巻線と高圧巻線間がスパークする確率を低めるような実質はありえないような安全構造にもしている。
【0028】
そこで本発明は、上記課題を解決するもので、UコアIコア間のギャップばらつきを低く抑えトランスの特性を安定化させるとともに、異常使用、異常設置状態、超長期間の使用により、ボビンが熱疲労しクラックが発生して高圧巻線とコア間にスパークし、最終的に高圧巻線が絶縁破壊を起こし、レアショート状態になって、そのレアショート部分でさらに発熱が増し、発煙・発火が発生したりして、使用者に非常に不安感を与えたりまた不安全な状況になることを確実に防止する装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0029】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、交流電源を整流するとともに、高周波化するインバータ部と、前記インバータ部により出力される高周波電力を昇圧する昇圧トランスと、前記昇圧トランスの出力を高圧直流電圧に変換する高圧ダイオードを含む高圧回路と、前記高圧直流電圧を受けてマイクロ波を放射するマグネトロンとを有し、前記昇圧トランスはアース電位に接続されたUコアと該Uコアに対面しているIコアを中心とした同心円上にボビンを隔てて外側にインバータ部側の一次巻線と昇圧側の高圧巻線が平行に周回されており、前記UコアおよびIコアは全周を絶縁物で覆ってから前記昇圧トランス本体に挿入したものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、絶縁物であらかじめ覆いかつUコアIコアそれぞれ対向する面側の絶縁物の厚みを一定値に管理することで両コア間のギャップばらつきを低く抑えトランスの特性を安定化させるとともに、超長期間の異常使用または設置と長期間の使用によりボビンにクラックが発生して高圧巻線とコア間にスパークし、最終的に高圧巻線が絶縁破壊を起こしレアショート状態になり、そのレアショート部分でさらに発熱を増し発煙・発火が発生したりして、使用者に非常に不安感をまた不安全な状況なることをコアがボビンとは別のもうひとつ追加の絶縁物で覆うことにより防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
第1の発明は、交流電源を整流するとともに、高周波化するインバータ部と、前記インバータ部により出力される高周波電力を昇圧する昇圧トランスと、前記昇圧トランスの出力を高圧直流電圧に変換する高圧ダイオードを含む高圧回路と、前記高圧直流電圧を受けてマイクロ波を放射するマグネトロンとを有し、前記昇圧トランスはアース電位に接続されたUコアと該Uコアに対面しているIコアを中心とした同心円上にボビンを隔てて外側にインバータ部側の一次巻線と昇圧側の高圧巻線が平行に周回されており、前記UコアおよびIコアは全周を絶縁物で覆ってから前記昇圧トランス本体に挿入したものである。
【0032】
第2の発明は、第1の発明において、前記UコアとIコアの対向する面の絶縁物の厚みは一定にした上で前記昇圧トランス本体に挿入したものである。
【0033】
第3の発明は、第1または2の発明において、前記Uコアを覆う絶縁物には高圧側巻線側の対向する部分について、前記高圧側巻線から前記一次側巻線間距離の最小値よりも高圧側巻線からの距離が近い位置にスリット部を設け、前記Uコアと高圧巻線間にあり絶縁の役割を担う前記ボビンが破壊し、絶縁性能が低下した場合に通常使用電圧では前記高圧巻線と前記コア間の高圧スパークを防止する構造とするとともに、異常電圧が発生した場合でも高圧側巻線から必ずUコアのスリット部にスパークし、一次巻線側にはスパークしないものである。
【0034】
第4の発明は、第1から3の発明のいずれかにおいて、前記キャップ状の絶縁物の材料は、前記ボビンの材料と同じ材料の樹脂を使用するものである。
【0035】
第5の発明は、第1から3の発明のいずれかにおいて、前記キャップ状の絶縁物の材料は、前記ボビンの材料と異なる材料の樹脂を使用するものである。
【0036】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明に係るマグネトロン駆動電源(インバータ)のブロック構成図は、従来のもの(図6)と同一であるので、その説明を省略する。また、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0037】
(実施の形態)
本発明の実施の形態にかかる昇圧トランス18のUコアとIコアの構造を図1に示す。あらかじめ樹脂など絶縁物55で覆われたUコア1とIコア39は対向してボビンの中に挿入されており、Uコア1とIコア39の対向する面の絶縁物の厚みは一定にした上で昇圧トランス本体に挿入し互いの先端が当っている構造とした。
【0038】
Iコア46Uコア47はコア高さが低い場合でIコア48Uコア49はコア高さが高い場合であるが、どちらも対向する面の絶縁物の厚みを一定にしているので、Uコア47や49とIコア46や48の向き合っている隙間(ギャップ)は、A1+B1でどちらも一定である。
【0039】
図3に示すように、ボビン2本体に挿入する時、ボビン2に当っている面(Uコアの場合45、Iコアの場合44)もボビンとの勘合時の隙間が出ないように一定高さ(寸法)としている。
【0040】
すなわち、Uコアの場合は図1ではA2、IコアではB2と一定としている。コア高さの違いは図1のA3やB3の寸法で、A3やB3部分の絶縁物の厚みの厚い薄いで調整している。これによりコア高さのバラツキがあっても特性上重要な管理値となるギャップ寸
法A1+B1が一定にできる。
【0041】
図2は、全周を絶縁物で覆ったUコア1とIコア39をトランスボビン2に挿入した時の構造図(図1の補足)であり、Uコア1Iコア39の対向面のギャップがコアの寸法バラツキにかかわらず一定であることを図示している。
【0042】
図3も本発明になる昇圧トランス18の主な構成要素の位置関係を示した簡略図(図1と図2を組み合わせた説明用の簡略図)で、図3(A)はUコア1とIコア39の高さが長い場合、図3(B)はUコア1とIコア39の高さが低い場合である。どちらの場合でもボビン2の中に挿入され対向している面のギャップg52は一定になることを図示している。
【0043】
また、昇圧トランス18の構造を図2と図4に示している。図2と図4は同じ内容(構造)であるが、通常時が図1でクラック発生時が図4である。図6において、インバータ部102側の1次巻線3と昇圧側の高圧巻線4がUコア1とIコア39を中心とした同心円上にボビン2を隔てて外側に平行に所定の昇圧比(巻線比)が得られるよう約10倍のターン数で周回され、Uコア1は昇圧トランスの動作安定化(雑防)および安全のためにアース電位に接続されている。
【0044】
図4において、この昇圧トランス18は、高周波加熱時には通電するので一次巻線3や高圧巻線4マグネトロン10(図6)のカソード部(フィラメント)を暖めるヒータ巻線5は発熱するので昇圧トランス18は温度上昇する。高周波加熱終了後は発熱がストップするので昇圧トランス18の温度は下がっていく。
【0045】
すなわち昇圧トランス18は温度上昇と下降を繰り返す、いわゆる温度サイクルを繰り返すわけであるが、この時昇圧トランス18を構成する材料が徐々にではあるが劣化していく。
【0046】
通常使用状態では問題にならない劣化の進行ではあるが、高周波加熱装置の設置条件や使用条件で想定できないような悪い条件で異常使用をされた場合や冷却部品用の他部品の故障時には、たとえば家具の中の上下左右奥の5面にくっつけて置いたりして高周波加熱装置の給排気口が塞がれてしまうといった時や、高周波加熱装置の冷却ファンのモータコイル部が断線してしまい、冷却ファンが動作不能となるといったトラブル発生時に、図4のようにボビンにクラック7が発生したりする懸念が出てくる。
【0047】
ただし、昇圧トランス18のボビン2部分にクラック7が生じて高圧巻線4とアースに接続されたコア1部分間に約3000vの高圧がかかってもコア1を周回して囲うようにキャップ状の絶縁物6が存在するのでスパークが発生しない(拡大構造部分)。
【0048】
よって従来のようにクラック7部分を通じてスパークが何回も発生し高圧巻線4の部分が異常発熱し絶縁破壊をしレアショート状態になってそのレアショート部分でさらに発熱を増し発煙・発火が発生したりし使用者にとって非常に不安感を与えたり不安全な状況にはならないよう回避できる。
【0049】
コアの全周を覆った絶縁物6は高圧が印加されしかも高い温度に発熱する巻線3や4に接触しているボビン2に近接しているため、絶縁性能の高いしかも湿度や温度環境や寿命の長い安定した材料が望ましい例えばボビン2に使用する樹脂の材料とは違うアラミド紙や高耐圧性能の絶縁テープを使っている。
【0050】
すなわち材料が異なることにより熱変化したときの温度膨張係数や熱伝導度が違うので
熱応力による急な熱変化での材料の熱疲労のリスクを減らすことができるからである。どちらかの絶縁性能が劣化により大きく悪くなってももう一方の材料で守ることができるからである。
【0051】
一方では絶縁物6とボビン2の材料を同じにして熱変化したときの温度膨張係数の違いによる影響を減らすこともできる。両材料を同じにするか異なるものにするかは使用目的や構造によって最適な選択をする。
【0052】
図5において、Uコア1の全周を覆っている絶縁物6には途中の位置にスリット40があり、ボビン2からUコア1のスリット40までの距離(図では距離b)はボビン2にクラックが発生しても高圧巻線4からUコア1に高圧放電しない距離32以上(図では距離a)とし、高圧巻線4から一次巻線3までの距離30(図では距離c+距離d)または31(図では距離e)の経路以下としている。すなわち、a<b<c+d、および、a<b<eである。
【0053】
これはあくまで万が一の場合であるが、ボビン2のクラックが頻発し一次側(巻線)と高圧側(巻線)が短絡し、使用者が高圧感電することを、高圧側からUコア1(アース電位)の距離間隔をコントロールすることにより絶対阻止することを目的にしている。感電の安全確保を昇圧トランス18からの発煙・発火に優先している。その理由は、高周波加熱装置使用時は使用者が必ず近傍におり発煙・発火に気づき拡大被害にならない為である。
【0054】
また一方従来の構造である図8のUコア1と対向するIコア39のギャップ精度、すなわち、両コア間の隙間距離は、インダクタンスなど昇圧トランス18の特性を左右する重要なファクターであるが、従来はボビン2の一部から延長した突起樹脂部分でギャップスペーサ38を形成し、Uコア1、Iコア39間のギャップ距離を確定させている。
【0055】
しかしながら、ボビン2から延長し形成したギャップスペーサ38は樹脂の流れが疎になりやすく、その厚みばらつきは大きく結果としてトランスの特性のばらつきに大きい影響を与えるという課題があった。
【0056】
そのため、本発明の昇圧トランスの構造である図1、2では、ボビン2の成形とは独立した絶縁物6でコアを覆い、対向するUコア1とIコア39のギャップをあらかじめ一定の厚みにする構造なので、Uコア1、Iコア39間のギャップばらつきを一定にし、昇圧トランス18の特性を安定化させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、電子レンジ等のように、食品を加熱する高周波加熱装置に適用されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施の形態に係るトランスUコアとIコアの組み合わせ構造図
【図2】全周を絶縁物で覆ったUコア1とIコア39をトランスボビン2に挿入した時の構造図
【図3】本発明になる昇圧トランスの主な構成要素の位置関係図
【図4】本発明の実施に係る昇圧トランスの構造図(クラック部分の拡大図含む)
【図5】コア全周を覆った絶縁物に設けたスリット位置の構成説明図
【図6】従来および本発明実施の高周波加熱装置の制御部分の回路構成図
【図7】従来の昇圧トランスの主構成要素の位置関係図
【図8】従来の昇圧トランスの構造図(クラック部分の拡大図含む)
【符号の説明】
【0059】
1 Uコア
2 ボビン
3 一次巻線
4 高圧巻線
5 ヒータ巻線
6 キャップ状の絶縁物(形状例1)
7 ボビンクラック部
8 高周波加熱装置
9 インバータユニット基板
10 マグネトロン
11 商用電源
13 ダイオードブリッジ
14 チョークコイル
15 平滑コンデンサ
16 共振コンデンサ
17 パワートランジスタ(IGBT)
18 昇圧トランス
19 倍電圧全波整流回路
27 コントロール基板(高周波加熱装置制御部基板)
29 インバータ制御回路
33 加熱室
35 被加熱物
38 ボビンから延長した突起樹脂部分でギャップスペーサ
39 Iコア
40 (放電用)スリット
44 Iコアのボビン本体に挿入する時のボビンに当っている面
45 Uコアのボビン本体に挿入する時のボビンに当っている面
46 高さが低いIコア
47 高さが低いUコア
48 高さが高いIコア
49 高さが高いUコア
50 Iコアのボビン本体に挿入する時のボビン2に当っている面
51 Uコアのボビン本体に挿入する時のボビン2に当っている面
52 両コアの対向している面のギャップg
55 コアを覆う絶縁物
101 整流フィルター部
102 インバータ部
121 マグネトロンカソード(ヒータ)
191、192 高圧ダイオード
193、194 高圧コンデンサ
197 コアアース板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源を整流するとともに、高周波化するインバータ部と、前記インバータ部により出力される高周波電力を昇圧する昇圧トランスと、前記昇圧トランスの出力を高圧直流電圧に変換する高圧ダイオードを含む高圧回路と、前記高圧直流電圧を受けてマイクロ波を放射するマグネトロンとを有し、前記昇圧トランスはアース電位に接続されたUコアと該Uコアに対面しているIコアを中心とした同心円上にボビンを隔てて外側にインバータ部側の一次巻線と昇圧側の高圧巻線が平行に周回されており、前記UコアおよびIコアは全周を絶縁物で覆ってから前記昇圧トランス本体に挿入した高周波加熱装置。
【請求項2】
前記UコアとIコアの対向する面の絶縁物の厚みは一定にした上で前記昇圧トランス本体に挿入した請求項1に記載の高周波加熱装置。
【請求項3】
前記Uコアを覆う絶縁物には高圧側巻線側の対向する部分について、前記高圧側巻線から前記一次側巻線間距離の最小値よりも高圧側巻線からの距離が近い位置にスリット部を設け、前記Uコアと高圧巻線間にあり絶縁の役割を担う前記ボビンが破壊し、絶縁性能が低下した場合に通常使用電圧では前記高圧巻線と前記コア間の高圧スパークを防止する構造とするとともに、異常電圧が発生した場合でも高圧側巻線から必ずUコアのスリット部にスパークし、一次巻線側にはスパークしない請求項1または2に記載の高周波加熱装置。
【請求項4】
前記キャップ状の絶縁物の材料は、前記ボビンの材料と同じ材料の樹脂を使用する構成にした請求項1〜3のいずれか1項に記載の高周波加熱装置。
【請求項5】
前記キャップ状の絶縁物の材料は、前記ボビンの材料と異なる材料の樹脂を使用する構成にした請求項1〜3のいずれか1項に記載の高周波加熱装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate