説明

高周波溶着ブラシ単体及び、その製造方法と装置

【課題】超音波技術での溶着が困難と考えられた大型・長寸の溶着ブラシを高周波溶着により、製造する方法、装置と高周波溶着ブラシ単体を提供する。
【解決手段】高周波技術にて、束ねたブラシ毛(熱可塑性樹脂)の上下或いは断面方向、側面方向等の周囲を電極を兼ねる治具で押さえ、電極に高周波溶着機より発生する高周波を与える。すると、熱可塑性樹脂自体が発熱しブラシ毛の間で溶融が発生する。発振を止め熱可塑性樹脂が冷却・固着すると、軽重量・毛抜けが一切ない。リサイクル面でも優れた溶着ブラシが完成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高周波により製造される全ての溶着ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者は、以前 特願2004−140444(単体フリーガードブラシとその製造方法)、特願2004−52452(ディスク型片ボスブラシ単体及び360°対応直立円筒ブラシの製造方法)において超音波技術を使用したブラシを提案した。
【0003】
他にも超音波技術を使用した工業用ブラシ製造方法では、特開2002−300921(工業用ブラシ及びその製造方法)がある。
【0004】
溶着ブラシに関しては特開2000−83736(歯ブラシ及びその製造方法)がある。
【発明者が解決しようとする課題】
【0005】
超音波による溶着は、小型ブラシには最適であるが、大型・長寸の製品を製造することは困難である。
【0006】
超音波は条件出し(調整)が難しく、広範囲の溶着の場合、部分的に溶着強度が異なる。
【0007】
従来のブラシは金属等を使用し単体でないため、リサイクルが遅遅として進まなかった。
【0008】
金属等を使用したブラシは、取り付け部分形状に順応できない・腐食する・重い・毛が抜ける・厚い等の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
研究・実験の結果、ブラシ成分(熱可塑性樹脂)を高周波で溶着することが容易になった。
【0010】
超音波溶着に比べ、大型・長寸の製品に関しては、作業能率・外観において優れている。
【0011】
植毛強度に関しても毛抜けの心配は一切なく、ブラシ寸法精度にも問題はない。
【0012】
又、ブラシ成分が熱可塑性樹脂でない金属・人毛・動植物毛であっても、溶着媒体として熱可塑性樹脂を使用し、高周波溶着すれば、ブラシ毛の周囲に樹脂が含浸し、冷却すれば、硬化、固着する。上記の方法でブラシを製造すれば、軽重量で取り付け部分の形状に順応する、薄い製品が製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
【0014】
定寸法に切断した切断糸材群1(図1)を糸材群供給ホッパー2に投入する。糸材群供給ホッパー2は、溶着機本体5上を左右に自動又は手動により移動し、溶着台6に設置された溶着ゲージ8内に切断糸材群1を投入する。(図2)
【0015】
切断糸材群1を並べる工程は、糸材群供給ホッパー2を使用しなくとも、手作業でも可能である。
【0016】
溶着部分に厚みを持たせたい場合は溶着フィルム7を切断糸材群1に被せる方法(1枚のブラシ製造)か、中央部分上下に溶着フィルム7を置く方法(一度に2枚のブラシ製造)が考えられる。(図3、図6)
【0017】
切断糸材群1の投入が完了すると、糸材群揃えゲージ9が前進し切断糸材群1を溶着ゲージ8内にきれいにに揃え、固定する。
【0018】
次に糸材群押え板10が下降(数回上下運動をくり返し切断糸材群1を平均に揃え固定する。)
【0019】
押えが完了すると、高周波溶着機3の先端部分に装着した溶着ホーン4が下降し、切断糸材群1を高周波により溶着する。(図4・図5)この場合、高周波溶着はブラシ毛(熱可塑性樹脂)の上下或いは、断面方向と側面方向のどの面に対しても可能である。高周波溶着のメカニズムは電極を兼ねる治具に高周波溶着機より発生する高周波を与えると、熱可塑性樹脂自体が発熱しブラシ毛の間で溶融が発生する。発振を止めると熱可塑性樹脂が冷却し固着する。
【0020】
溶着ホーン4を切断糸材群1、中央部分に下降させ溶着作業を進めると、一回の作業で2枚の溶着ブラシ11を製造することが可能である。(図6)
【0021】
2枚の溶着ブラシ11の中央部分を切断し、溶着ブラシ12が完成する。(図7)この切断方法は刃物等による方法と、電極に刃を設けてブラシを溶着し且つ、同時に溶断する方法がある。電極自体は直接熱を発生しないので、ブラシ毛は付着しない。
【0022】
他にも、高周波溶着機3の溶着ホーン4を円形溶着ホーン13のようにすれば、溶着円筒型ブラシ14や溶着円盤型ブラシ15も容易に製造することができる(図8・図9・図10)
【0023】
他にも溶着ホーン4の形状を変えることにより、色々な形状の溶着ブラシを製造することが容易である。
【0024】
溶着ホーン4の材質も熱可塑性樹脂に関しては、黄銅・アルミニウム等がベストであり、加工性が高く安価な材料であるため、コスト的にも大量生産が可能と考えられる。
【発明の効果】
【0025】
超音波溶着では困難と考えられた、大型・長寸のブラシ製品を容易に製造することが可能となった。
【0026】
超音波溶着と比較すると、条件出しが簡単であり、外観的にも仕上がりが美しい。
【0027】
植毛強度に関しては、ブラシ毛自体を溶着するため、従来の金属等で押さえつけるブラシ(チャンネルブラシ・ネジリブラシ・ホイールブラシ・植込みブラシ等)とは違い、毛抜けの心配は一切なく、引張強度に関してもその値はブラシ毛の引張強度に均しい。
【0028】
金属等を使用しないため、腐食の心配がなく軽重量であり、どのような取り付け部分の形状にも順応する。又、ブラシ毛素材だけで製造するため、薄い製品も製造可能で、リサイクル面に関しても分別回収が容易である。
【0029】
又、上記の特徴から熱可塑性樹脂に静電気防止、防臭、抗菌効果の高い松鉱石(学名=石英安山岩ガラス状斑岩)をブレンドし、溶着ブラシを製造すれば、ブラシ使用に消極的であった、医療・食品・電子関連産業等のニーズに適合した製品となり、シェア拡大は明白である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 切断糸材群斜視図
【図2】 糸材群供給ホッパー正面図
【図3】 溶着フィルム装着斜視図
【図4】 溶着装置平面図
【図5】 溶着装置正面図
【図6】 溶着終了ブラシ斜視図
【図7】 溶着ブラシ完成斜視図
【図8】 円形溶着ホーン斜視図
【図9】 溶着円筒型ブラシ斜視図
【図10】 溶着円盤型ブラシ斜視図
【符号の説明】
1 切断糸材群
2 糸材群供給ホッパー
3 高周波溶着機
4 溶着ホーン(電極を兼ねる治具)
5 溶着機本体
6 溶着台
7 溶着フィルム
8 溶着ゲージ
9 糸材群揃えゲージ
10 糸材群押え板
11 2枚の溶着ブラシ(中央押え溶着ブラシ)
12 溶着ブラシ
13 円形溶着ホーン
14 溶着円筒型ブラシ
15 溶着円盤型ブラシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
束ねたブラシ毛(熱可塑性樹脂)の上下或いは、断面方向、側面方向の周囲を電極を兼ねる治具で押え、電極に高周波溶着機より発生する高周波を与えると、ブラシ毛(熱可塑性樹脂)自体が発熱しブラシ毛相互間で溶融が発生する。この発振を止め、熱可塑性樹脂を冷却し、固着製造した高周波溶着ブラシ単体。
【請求項2】
請求項1の高周波溶着ブラシ単体であって、その溶着面全体、又は一部分を熱可塑性樹脂で補強し、高周波溶着機より発生する高周波により溶着製造された高周波溶着ブラシ単体。
【請求項3】
束ねたブラシ毛が金属・人毛・動植物毛等、熱可塑性でない成分のものであって、その溶着媒体とし熱可塑性樹脂を使用し高周波溶着機より発生する高周波により溶着製造された高周波溶着ブラシ単体。
【請求項4】
請求項1・2・3のブラシにあって、ブラシを構成する全ての素材がブラシ毛材に用いられる素材と同質素材及び同等化学構造に属するブラシ。
【請求項5】
ブラシ毛を溶融固着成形する加工手段として高周波技術を用いることを特徴とした、請求項1・2・3・4に記載したブラシの製造方法と装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−116268(P2006−116268A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336636(P2004−336636)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(504217144)株式会社樋口製作所 (9)
【出願人】(504078187)
【Fターム(参考)】