説明

高周波用給電線及び高周波用給電線の製造方法

【課題】外筒部に対する内筒部の位置決め精度が高くとれ、また成形性の歩留まりの良い高周波用給電線及び高周波用給電線の製造方法を提供する。
【解決手段】高周波用給電線1は、内筒部2aと、内筒部2aに対して4つの連結部2cにより長手方向の全長に亘って一体連結された同心の外筒部2bとからなる2重筒状の導体部2を有する。4つの連結部2cは円周方向に所定間隔で配置される。内筒部2aと外筒部2bの間に4つの連結部2cを設けることで、従来のような内筒部200aと外筒部200bの間に1つの連結部200cしかない高周波用給電線100と比べて内筒部2aの位置決め精度を高くとることができ、高周波抵抗を低くできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波電流を流す高周波用給電線及び高周波用給電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行式ホイストや搬送台車などの移動体と、この移動体に電力を供給する給電装置とを備えるトロリーシステムがある。給電装置は、移動体を走行させるレールに沿って配索した給電線と移動体に設けた受電子との間で電力の受け渡しをするようになっており、受電子で受け取った電力を移動体に供給するようになっている。給電線としては、例えば特許文献1に記載されているものが用いられている。
【0003】
図9は特許文献1に記載されている高周波用給電線の外観を示す斜視図、図10は図9の高周波用給電線の銅の押し出し加工よる別の導体を用いた例の縦断面図である。図9及び図10に示すように、高周波用給電線100は、内筒部200aと、内筒部200aに対して連結部200cにより長手方向の全長に亘って一体連結された同心の外筒部200bとからなる2重筒状の導体200を導体部位として用いた導体部を絶縁物300に埋設したものであって、各筒部200a、200bの空間部400a、400bには絶縁物300を配さない構成としている。
【0004】
図9において、導体200は、例えば1枚の銅板材を曲げ加工して形成したものである。つまり、板材の中央部を断面円環状に曲げ加工して内筒部200aを形成し、この内筒部200aを形作る円環状部位の両端から密接並行するように図において下方に延ばした2枚の板片部位の所定位置から内筒部200aを囲むように円弧状に折り曲げてその両端を突き合わせ、該突き合わせ部位を溶接することで内筒部200aに対して同心の断面円環状の外筒部200bを形成している。そして、上述の密接並行する2枚の板片部位が両筒部200a、200bを連結する連結部200cを構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−117746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1で開示された高周波用給電線においては、以下に示す課題がある。
(1)内筒部と外筒部とを連結する連結部が1箇所にしかないため、内筒部の位置決めが不安定で交流抵抗が増大しやすい。因みに、高周波抵抗は内筒部と外筒部が同心円状にあるときが最も低い値となる。
(2)内筒部、外筒部及び連結部を1枚の銅板材で形成するには、技術的に高いレベルが要求され、コストが高くつく。
(3)銅はアルミに比べて硬く、押出しでは成形性が悪く(すなわち、歩留まりが悪く)、コストが高くつく。
【0007】
本発明は係る事情に鑑みてなされたものであり、外筒部に対する内筒部の位置決め精度が高くとれ、また成形性の歩留まりの良い高周波用給電線及び高周波用給電線の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の高周波用給電線は、外筒部と内筒部の間に複数の連結部を設けた導体部を有する。
【0009】
上記構成によれば、内筒部と外筒部の間に複数の連結部を有するので、内筒部の位置決め精度を高くとることができ、高周波抵抗を低くできる。
【0010】
上記構成において、前記内筒部の前記複数の連結部として凸状連結部を設けて、それらを前記外筒部の内壁に接触させるようにするのが望ましい。このようにすることで、内筒部と外筒部のそれぞれを別個に作製することになるので、成形性の歩留まりが良くなり、コストダウンが図れる。
【0011】
また、上記構成において、前記外筒部の内壁に前記凸状連結部が係合する誘い込み溝を設けるのが望ましい。このようにすることで、内筒部の位置決め精度を更に高くとることができる。すなわち、外筒部の内壁の加工精度によっては内筒部が外筒部に対して周方向に回転した際に内筒部の位置にずれが生ずる場合があるが、外筒部に対して内筒部の位置を固定することで内筒部の外筒部に対する位置ずれを防止できる。勿論、位置ずれの原因として、外筒部の内壁の加工精度の他に凸状連結部の先端の加工精度もあることは言うまでもない。
【0012】
また、上記構成において、前記凸状連結部を前記外筒部の内壁に圧着させるのが望ましい。このようにすることで、内筒部の位置決め精度を更に高くとることができる。
【0013】
本発明の高周波用給電線の製造方法は、外壁に複数の凸状連結部を有する内筒部を設ける工程と、前記凸状連結部が内壁に収まる外筒部を前記内筒部に挿入する工程と、前記外筒部を絞ることで前記凸状連結部が前記外筒部の内壁に接触した導体部を有する高周波用給電線を得る工程と、を備えた。
【0014】
上記方法によれば、内筒部と外筒部が内筒部の外壁に設けた複数の凸状連結部によって連結するので、内筒部の位置決め精度を高くとることができ、高周波抵抗を低くできる。また、内筒部と外筒部のそれぞれを別個に作製することになるので、従来のような内筒部と外筒部を1枚の銅板材で一体形成する場合と比較して成形性の歩留まりが良くなり、コストダウンが図れる。
【0015】
上記方法において、前記凸状連結部の数を3個以上とするのが望ましい。このようにすることで、内筒部の位置決め精度を高くとることができる。
【0016】
また、上記方法において、前記凸状連結部が係合する誘い込み溝を前記外筒部の内壁に設けるのが望ましい。このようにすることで、内筒部の位置決め精度を更に高くとることができる。
【0017】
また、上記方法において、前記外筒部を絞ることで前記凸状連結部を前記外筒部の内壁に圧着させるのが望ましい。このようにすることで、内筒部の外筒部に対する位置ずれを防止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、外筒部に対する内筒部の位置決め精度が高くとれ、また成形性の歩留まりの良い高周波用給電線を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1に係る高周波用給電線の導体部の概観を示す斜視図
【図2】図1の高周波用給電線の応用例であり、連結部を2つ有する高周波用給電線の導体部の概観を示す斜視図
【図3】図1の高周波用給電線の応用例であり、連結部を3つ有する高周波用給電線の導体部の概観を示す斜視図
【図4】本発明の実施の形態2に係る高周波用給電線の導体部の概観を示す斜視図
【図5】本発明の実施の形態3に係る高周波用給電線の導体部の概観を示す斜視図
【図6】本発明の実施の形態4に係る高周波用給電線の導体部の概観を示す斜視図
【図7】図6の高周波用給電線を製造するための工法を概略的に示す斜視図
【図8】図5の高周波用給電線を製造するための工法を概略的に示す斜視図
【図9】従来の高周波用給電線の外観を示す斜視図
【図10】図9の高周波用給電線の銅の押し出し加工による別の導体を用いた例の縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る高周波用給電線の導体部の概観を示す斜視図である。同図において、本実施の形態の高周波用給電線1は、内筒部2aと、内筒部2aに対して4つの連結部2cにより長手方向の全長に亘って一体連結された同心の外筒部2bとを備える2重筒状の導体部2を有するものである。導体部2は、前述した図9又は図10に示す従来の高周波給電線100と同様に絶縁物300に埋設して使用される。図1では絶縁物300の図示を省略している。内筒部2aと外筒部2bを連結する4つの連結部2cは、円周方向に所定間隔(例えば90度間隔)で配置される。
【0022】
このように本実施の形態の高周波用給電線1は、内筒部2aと外筒部2bの間に4つの連結部2cを設けた導体部2を有するので、従来のような内筒部200aと外筒部200bの間に1つの連結部200cしかない高周波用給電線100と比べて内筒部2aの位置決め精度を高くとることができ、高周波抵抗を低くできる。
【0023】
なお、内筒部2aと外筒部2bを連結する連結部2cは4つに限定されるものではなく少なくとも2つあればよい。図2に連結部2cを2つ有する高周波用給電線10の概観を示す。また図3に連結部2cを3つ有する高周波用給電線20の概観を示す。連結部2cは、図2に示す高周波用給電線10では180度間隔で配置されており、図3に示す高周波用給電線20では120度間隔で配置されている。
【0024】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に係る高周波用給電線の導体部の概観を示す斜視図である。同図において、本実施の形態の高周波用給電線30は、4つの連結部として凸状連結部31cを有する内筒部31aと、内筒部31aが内挿される外筒部31bとを備える2重筒状の導体部31を有するものである。内筒部31aの4つの凸状連結部31cは、内筒部31aの周方向に所定間隔(例えば90度間隔)で配置され、かつそれぞれが内筒部31aの長手方向の全長に亘って形成されている。また、4つの凸状連結部31cのそれぞれの先端が外筒部31bの内壁に接触する高さになっている。内筒部31aの4つの連結部として凸状連結部31cを設けて、それらを外筒部31bの内壁に接触させるようにすることで、内筒部31aと外筒部31bのそれぞれを別個に作製することになるので、成形性の歩留まりが良くなり、コストダウンが図れる。
【0025】
このように本実施の形態の高周波用給電線30は、内筒部31aに4つの連結部として凸状連結部31cを設けて、各凸状連結部31cを外筒部31bの内壁に接触させるように構成したので、内筒部31aと外筒部31bのそれぞれを別個に作製することになり、従来のような内筒部と外筒部を1枚の銅板材で一体形成する場合と比較して成形性の歩留まりが良くなり、コストダウンが図れる。
【0026】
なお、凸状連結部31cの数は4つに限定されるものではなく、前述した実施の形態1と同様に、少なくとも2つあればよい。
【0027】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3に係る高周波用給電線の導体部の概観を示す斜視図である。同図において、本実施の形態の高周波用給電線40は、4つの連結部として凸状連結部41cを有する内筒部41aと、内筒部41aが内挿される外筒部41bとを備える2重筒状の導体部41を有するものである。内筒部41aが4つの凸状連結部41cを有することは前述した実施の形態2の高周波用給電線30の内筒部31aと同様であるが、本実施の形態では外筒部41bの内壁に内筒部41aの凸状連結部41cが係合する誘い込み溝41dを有している点で違いがある。
【0028】
内筒部41aの凸状連結部41cは先端部分が円弧状に形成されており、外筒部41bの誘い込み溝41dも円弧状に形成されている。凸状連結部41cの先端部分に丸みを持たせ、誘い込み溝41dも円弧状にすることで、凸状連結部41cを誘い込み溝41dに簡単に係合させることができる。
【0029】
このように本実施の形態の高周波用給電線40は、外筒部41bの内壁に凸状連結部41cが係合する誘い込み溝41dを設けたので、内筒部41aの位置決め精度を更に高くとることができる。すなわち、外筒部41bの内壁の加工精度によっては内筒部41aが外筒部41bに対して円周方向に回転した際に、内筒部41aの位置にずれが生ずる場合があるが、外筒部41bに対して内筒部41aの位置を固定させることで、内筒部41aの外筒部41bに対する位置ずれを防止できる。勿論、位置ずれの原因として、外筒部41bの内壁の加工精度の他に、凸状連結部41cの先端部分の加工精度もあることは言うまでもない。
【0030】
なお、誘い込み溝41d及び凸状連結部41cそれぞれに丸みを持たせたが、丸みを持たせる以外に、例えば三角形状としてもよい。また、凸状連結部41cの数は4つに限定されるものではなく、前述した実施の形態1と同様に、少なくとも2つあればよい。
【0031】
(実施の形態4)
図6は、本発明の実施の形態4に係る高周波用給電線の導体部の概観を示す斜視図である。同図において、本実施の形態の高周波用給電線50は、前述した実施の形態2の高周波用給電線30と同様に、4つの連結部として凸状連結部51cを有する内筒部51aと、内筒部51aが内挿される外筒部51bとを備える2重筒状の導体部51を有するものであるが、凸状連結部51cを外筒部51bの内壁に圧着させている点に違いがある。凸状連結部51cを外筒部51bの内壁に圧着させることで、前述した実施の形態2の高周波用給電線30と同様に外筒部51bに内筒部51aを固定することができるので、内筒部51aの外筒部51bに対する位置ずれを防止できる。
【0032】
ここで図7は、本実施の形態の高周波用給電線50を製造するための工法を概略的に示す斜視図である。同図において、外壁に4つの凸状連結部51cを有する内筒部51aを作製した後、更に内筒部51aの各凸状連結部51cが内壁に収まる外筒部51bを作製する。内筒部51aと外筒部51bを作製した後、外筒部51bを内筒部51aに挿入する。次いで、外筒部51bの直径よりも僅かに小さい内径を有するリング状の外筒部用ダイス60を用いて外筒部51bに通し、移動させながら外筒部51bを絞り込む。これにより、内筒部51aの各凸状連結部51cが外筒部51bの内壁に密着した導体部51が得られる。この導体部51を前述した絶縁物300(図9又は図10参照)に埋設することで、高周波用給電線50が得られる。
【0033】
このように本実施の形態の高周波用給電線50は、内筒部51aの凸状連結部51cを外筒部51bの内壁に圧着させるので、内筒部51aの位置決め精度を更に高くとることができる。
【0034】
なお、凸状連結部51cの数は4つに限定されるものではなく、前述した実施の形態1と同様に、少なくとも2つあればよい。
【0035】
また、前述した実施の形態3においても凸状連結部41cを外筒部41bの内壁に圧着させるようにしてもよい。図8は、実施の形態3の高周波用給電線40を製造するための工法を概略的に示す斜視図である。同図において、外壁に4つの凸状連結部41cを有する内筒部41aを作製した後、内筒部41aの各凸状連結部41cが内壁に収まる外筒部41bを作製する。ここで、内筒部41aの作製においては、各凸状連結部41cの先端部が円弧状になるように形成し、外筒部41bの作製においては、各誘い込み溝41dが円弧状になるように形成する。このようにして内筒部41aと外筒部41bを作製した後、外筒部41bを内筒部41aに挿入する。次いで、外筒部41bの直径よりも僅かに小さい内径を有するリング状の外筒部用ダイス70を用いて、それを外筒部41bに通し、移動させながら外筒部41bを絞り込む。これにより、各凸状連結部41cが外筒部41bの誘い込み溝41dに密着した導体部41が得られる。この導体部41を前述した絶縁物300(図9又は図10参照)に埋設することで、高周波用給電線40が得られる。
【符号の説明】
【0036】
1、10、20、30、40、50 高周波用給電線
2、31、41、51 導体部
2a、31a、41a、51a 内筒部
2b、31b、41b、51b 外筒部
2c、31c、41c、51c 連結部
41d 誘い込み溝
60、70 外筒部用ダイス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒部と内筒部の間に複数の連結部を設けた導体部を有する高周波用給電線。
【請求項2】
前記内筒部は前記複数の連結部として凸状連結部を有しており、前記凸状連結部が前記外筒部の内壁に接触している請求項1に記載の高周波用給電線。
【請求項3】
前記凸状連結部が係合する誘い込み溝を前記外筒部の内壁に設けた請求項2に記載の高周波用給電線。
【請求項4】
前記凸状連結部が前記外筒部の内壁に圧着している請求項2に記載の高周波用給電線。
【請求項5】
外壁に複数の凸状連結部を有する内筒部を設ける工程と、
前記凸状連結部が内壁に収まる外筒部を前記内筒部に挿入する工程と、
前記外筒部を絞ることで前記凸状連結部が前記外筒部の内壁に接触した導体部を有する高周波用給電線を得る工程と、
を備えた高周波用給電線の製造方法。
【請求項6】
前記凸状連結部の数は3個以上である請求項5に記載の高周波用給電線の製造方法。
【請求項7】
前記凸状連結部が係合する誘い込み溝を前記外筒部の内壁に設けた請求項5又は請求項6に記載の高周波用給電線の製造方法。
【請求項8】
前記外筒部を絞ることで前記凸状連結部を前記外筒部の内壁に圧着させる請求項5又は請求項6に記載の高周波用給電線の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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