説明

高圧ポンプ・プランジャ・シリンダ装置

ハウジング(1)内にポンプシリンダ(3)が設けられ、該ポンプシリンダ(3)内をプランジャ(2)が往復運動し、該プランジャ(2)の片側端面即ちプランジャ頭部部位がプランジャシリンダ(3)内において吸込み・吐出し行程容積を変化させるために、前記プランジャ(2)の反対側端面が制御駆動装置(4)に作用的に接続され、搬送流入口(9)からポンプシリンダ(3)に吸い込まれた流体の圧力が、プランジャ(2)の押上げによって高められ、これにより、前記流体が搬送弁(8)によって他の供給要素に送られる、高圧ポンプ・プランジャ・シリンダ装置において、ポンプシリンダ(3)内を案内されるポンププランジャ(2)の偏心による摩耗発生の危険を防止するために、ポンププランジャ(2)の頭部部位に、円形底面(D)と円形上面(d)を有する円錐台の形をした心出し円錐体(20)が成形され、心出し円錐体(20)の最大半径縮小値[D−d]/2とプランジャ(2)の軸部直径(D)との比が約1:200で、心出し円錐体(20)の軸長(l)とプランジャ軸部(2)の全軸長(L)との比(l:L)が約1:6.6であるように設計されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング内にポンプシリンダが設けられ、該ポンプシリンダ内をプランジャが往復運動し、該プランジャの片側端面即ちプランジャ頭部部位がポンプシリンダ内において吸込み・吐出し行程容積を変化させるために、前記プランジャの反対側端面が制御駆動装置に作用的に接続され、搬送流入口からポンプシリンダに吸い込まれた流体の圧力が、プランジャの押上げによって高められ、これにより、前記流体が搬送弁によって他の供給要素に送られる高圧ポンプ・プランジャ・シリンダ装置、特に内燃機関のコモンレール式燃料噴射装置の噴射ポンプに関する。
【0002】
即ち、例えば噴射ポンプの形をした高圧ポンプ・プランジャ・シリンダ装置は、噴射管と噴射弁も含む噴射装置の一部である。
【0003】
噴射ポンプは、燃料の高圧搬送、噴射量の配量、適切な瞬間ないし所定の噴射規則に応じた燃料噴射のような複数の目的を果たさねばならない。通常の噴射ポンプの場合、エンジンで駆動されるカム軸が、場合によってはローラ付きタペットによりプランジャを押し上げる。4サイクルエンジンの場合の往復回数はクランクシャフト回転数の半分であり、2サイクルエンジンの場合の往復回数はクランクシャフト回転数と同じであり、プランジャは一定した行程を実施する。
【0004】
通常の噴射ポンプの場合、噴射量の配量は、公知のように、プランジャをその長手軸線を中心として回転することにより行われ、搬送量および搬送終了は傾斜制御縁で決定される。この傾斜制御縁が吸込み孔を滑走するや否や、プランジャで排除された燃料が吸込み室に逆流する。
【0005】
ポンプ要素、即ち、プランジャと噴射シリンダは、最高精度で製造され、互いにぴったり合わされている。
【0006】
特に本発明は、内燃機関のコモンレール式燃料噴射装置における噴射ポンプに関する。この装置では上述の制御縁は不要である。
【0007】
例えば、独国特許第19919430号明細書にそのような噴射ポンプが記載されている。
【0008】
噴射ポンプに導入される燃料の配量は、公知のように例えば電磁作動式配量弁により行われる。配量された燃料は、それからプランジャポンプの吸込み室あるいはポンプ作動室に導かれ、そこから内燃機関の運転中、高圧で蓄圧管(コモンレール)に搬送される。
【0009】
吸込み行程中の蓄圧管(コモンレール)における圧力降下を防止するために、ポンプ作動室の出口に逆止め弁が設けられている。吐出し行程中における低圧系統への逆流を防止するために、ポンプの搬送入口にも逆止め弁が配置されている。
【0010】
かかる高圧ポンプは例えば独国特許出願公開第10157135号明細書における燃料供給装置でも利用されている。
【0011】
かかる高圧ポンプ・プランジャ・シリンダ装置の場合、最終的には不可避の僅かな製造公差のために、ポンプシリンダにおいてプランジャの偏心が生じ、その結果、プランジャ円周にわたって隙間幅が異なってしまうために、プランジャ円周にわたる圧力分布が一様でなくなる。このために生ずるプランジャの片寄った押し付けが接触面に摩耗を生じさせる。
【0012】
上述の高圧ポンプ・プランジャ・シリンダ装置の場合、プランジャに既に先導斜面も設けられているが、もっとも、その先導斜面は明確に寸法づけされていない。ここでは、ポンププランジャの頭部部位が、長さ約25mm当たり最大30μmの円錐率(テーパ)にされている。この頭部テーパは、ポンププランジャの頭部部位がポンプシリンダを滑走することを防止するが、この処置では上述の偏心に対して効果的な対策は達成されない。
【0013】
本発明の課題は、ポンプシリンダ内を案内されるプランジャの偏心による摩耗の恐れが排除される高圧ポンプ・プランジャ・シリンダ装置、特に内燃機関のコモンレール式燃料噴射装置の噴射ポンプを提供することにある。
【0014】
この課題は請求項1に記載の特徴によって解決される。
【0015】
ポンププランジャの頭部部位に心出し円錐体が成形され、心出し円錐体の最大半径縮小値[D−d]/2とプランジャの軸部直径Dとの比が約1:200で、心出し円錐体の軸長(l)とプランジャの(心出し円錐体含む)全軸長(L)との比(l:L)が約1:6.6であるように設計されていることによって、ポンププランジャは吐出し行程中にその中心軸線に心出しされ、これにより、ポンプシリンダにおける滑走(当たり)が防止される。圧力発生時における漏れは、ポンププランジャとポンプシリンダとの間に一様に導かれ、これにより、(燃料の圧縮時に生ずる「液圧」熱による)温度がポンププランジャの円周にわたり一様に分布される。これにより、ポンププランジャが偏って加熱されることはなく、従って、温度作用による変形は生じない。
【0016】
即ち、ポンププランジャ周囲における一様な漏れによって、ポンプシリンダ内におけるプランジャの片寄った当たりが防止されるか、あるいは、少なくとも押圧力が減少される。また、プランジャの同心調整に応じて、漏れ流がプランジャの案内面の長手方向に減少し、これにより、装置の液圧的効率が改善されるという利点が生ずる。さらに、漏れにおける流体が接触面をぬらし、これにより、潤滑効果が得られ、即ち、ポンププランジャの往復運動によって、ポンププランジャを浮遊させる潤滑隙間がポンププランジャに沿って形成されるという利点が生ずる。
【0017】
以下図を参照して本発明の実施例を説明する。
【0018】
ハウジング1内にポンプシリンダ3が形成され、このポンプシリンダ3内にプランジャ2が案内されている。プランジャはエンジンで駆動されるカム軸4によって搬送方向に動かされ、プランジャ復帰ばね5によって戻される。プランジャ2の行程は一定し、プランジャ2はカム軸4の回転ごとに全行程を移動し、吸込み行程と吐出し行程を実施する。
【0019】
ポンプシリンダ3、即ち、吸込み室ないし作動室6は、吐出通路7を介して、燃料噴射装置のコモンレール(図示せず)に接続されている。吐出通路7における逆止め弁8は、燃料がコモンレールから噴射ポンプに逆流することを防止する。
【0020】
プランジャ2は、吸込み行程中、燃料を低圧室から燃料入口9を介してポンプシリンダ3ないし作動室6に吸い込む。
【0021】
吐出し行程中、作動室6内に圧力が形成され、この圧力は逆止め弁8を開け、ポンプシリンダ3からコモンレール(図示せず)への燃料の搬送を可能にする。
【0022】
プランジャ2の吐出し行程中における作動室6内ないし吐出通路7内の圧力低下を防止するために、作動室6の搬送入口に、即ち、低圧室からの燃料入口9にも、逆止め弁10が設けられている。
【0023】
また、低圧室から燃料を配量するために、燃料入口9に電磁作動式配量弁11が配置されている。
【0024】
ポンププランジャ2の頭部部位に、明確に寸法づけられた(破線で図示の)心出し円錐体20が成形されている。
【0025】
心出し円錐体20は、カム軸4の方向に見て、ポンププランジャ2の頭部部位における最小直径dの第1環状縁で始まり、プランジャ2の軸部直径Dまで徐々に太くなっている。従って、心出し円錐体20は、底面(直径D)と上面(直径d)が円形をした円錐台となっている。これにより、心出し円錐体20の円錐率は[D−d]/2である。円錐率[D−d]/2とプランジャ直径Dとの比は約1:200にされている。心出し円錐体20の長さlとプランジャ全長L(心出し円錐体20を含むプランジャ2の軸長)との比(l:L)は、約1:6.6に寸法づけられている。
【0026】
特に有利に、心出し円錐体20に別の心出し截頭円錐体30の形をした先導斜面30が付けられている。この場合、意図したプランジャ2の自動調心作用を得るために、先導斜面30と心出し円錐体20は1μmの最大公差で互いに同軸的にされている。
【0027】
心出し円錐体20は有利に先導円錐体30で支援され、一方では、ポンプシリンダ3内におけるプランジャ2の軸部円周にわたって液圧を平衡させ、他方では、これにより、偏心時に高圧状態で環状室に侵入する漏れ燃料によるプランジャ2の片側当たりを防止する。
【0028】
心出し円錐体は、圧力で付勢されるすべてのプランジャにおいて、プランジャを心出しするために利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】ポンププランジャが本発明に基づいて形成されたコモンレール式燃料噴射装置の噴射ポンプの概略図。
【符号の説明】
【0030】
1 ハウジング
2 プランジャ
3 ポンプシリンダ
4 カム軸
8 逆止め弁
9 燃料入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(1)内にポンプシリンダ(3)が設けられ、該ポンプシリンダ(3)内をプランジャ(2)が往復運動し、該プランジャ(2)の片側端面即ちプランジャ頭部部位がポンプシリンダ(3)内において吸込み・吐出し行程容積を変化させるために、前記プランジャ(2)の反対側端面が制御駆動装置(4)に作用的に接続され、これにより、搬送流入口(9)からポンプシリンダ(3)に吸い込まれた流体の圧力が、プランジャ(2)の押上げによって高められ、前記流体が搬送弁(8)によって他の供給要素に送られる高圧ポンプ・プランジャ・シリンダ装置において、ポンププランジャ(2)の頭部部位に、円形底面(D)と円形上面(d)を有する円錐台の形をした心出し円錐体(20)が成形され、心出し円錐体(20)の最大半径縮小値[D−d]/2とプランジャ(2)の軸部直径(D)との比が約1:200であり、心出し円錐体(20)の軸長(l)とプランジャ(2)の全軸長(L)との比(l:L)が約1:6.6であるように設計されていることを特徴とする高圧ポンプ・プランジャ・シリンダ装置。
【請求項2】
心出し円錐体(20)に別の心出し円錐体の形をした先導斜面(30)が付けられ、心出し円錐体(20)と先導斜面(30)の同軸率が約1μmの最大公差を有することを特徴とする請求項1に記載の高圧ポンプ・プランジャ・シリンダ装置。
【請求項3】
内燃機関のコモンレール式燃料噴射装置の噴射ポンプとして形成され、ポンププランジャ(2)が、一方では、エンジンで駆動されるカム軸(4)によって搬送方向に動かされ、プランジャ復帰ばね(5)によって戻され、流体、燃料特にディーゼル燃料が、別の供給要素としてのコモンレールに送られることを特徴とする請求項1又は2に記載の高圧ポンプ・プランジャ・シリンダ装置。

【図1】
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【公表番号】特表2007−529672(P2007−529672A)
【公表日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−503259(P2007−503259)
【出願日】平成17年3月12日(2005.3.12)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002660
【国際公開番号】WO2005/093249
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(390041520)エムアーエヌ ディーゼル エスエー (59)
【Fターム(参考)】