説明

高圧処理米の製造方法と高圧処理米

【課題】白米や玄米の栄養成分を損なうことなく、海藻類(主に寒天)、食物繊維、カルシウム等のミネラル成分を容易に摂取できることを目的とする。
【解決手段】白米又は玄米を990mpa以下の静水圧を負荷させて水に溶かした寒天を加圧室内に入れ、前記加圧室の圧力を内部変質に要する時間加えた高圧処理米の製造方法とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧処理米の製造方法と高圧処理米に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、海藻類等の栄養分を摂取するためには、これらの粉末を炊飯時に釜に投入して食するか、海藻そのものを食する以外にはない。しかし1日の必要摂取量を取るためには毎食大量の海藻や溶液の濃度を上げるしかなく、味の劣化や手間が大変である。
【特許文献1】特公平06−007777号公報
【特許文献2】特許第2583808号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、白米や玄米の栄養成分を損なうことなく、海藻類(主に寒天)、食物繊維、カルシウム等のミネラル成分を容易に摂取できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、本発明は、上記の事情に鑑み、寒天を容易に摂取できるようにすべく、白米又は玄米を990mpa以下の静水圧を負荷させて水に溶かした寒天を加圧室内に入れ、前記加圧室の圧力を内部変質に要する時間加えた高圧処理米の製造方法とした。
【0005】
また、本発明は、海藻からの抽出成分を容易に摂取できるようにすべく、白米又は玄米を990mpa以下の静水圧を負荷させて水に溶かした海藻からの抽出成分を加圧室内に入れ、前記加圧室の圧力を内部変質に要する時間加えた高圧処理米の製造方法とした。
【0006】
さらに、本発明は、水溶性多糖類を容易に摂取できるようにすべく、白米又は玄米を990mpa以下の静水圧を負荷させて水に溶かした水溶性多糖類を加圧室内に入れ、前記加圧室の圧力を内部変質に要する時間加えた高圧処理米の製造方法とした。
【0007】
さらにまた、本発明は、血圧や血糖値の上昇を抑える成分を容易に摂取できるようにすべく、白米又は玄米を990mpa以下の静水圧を負荷させて水に溶かした血圧や血糖値の上昇を抑える物質とを加圧室に入れ、前記加圧室の圧力を内部変質に要する時間加えた高圧処理米の製造方法とした。
【0008】
さらにその上に、本発明は、ダイエット効果成分を容易に摂取できるようにすべく、白米又は玄米を990mpa以下の静水圧を負荷させて水に溶かしたダイエット効果成分を加圧室内に入れ、前記加圧室の圧力を内部変質に要する時間を加えた高圧処理米の製造方法とした。
【0009】
また、本発明は、海藻類や食物繊維等を容易に摂取できるように加工された高圧処理米である。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、白米又は玄米を990mpa以下の静水圧を負荷させて水に溶かした寒天を加圧室内に入れ、前記加圧室の圧力を内部変質に要する時間加えた高圧処理米の製造方法としたので、寒天が容易に摂取できる。
【0011】
また、本発明は、白米又は玄米を990mpa以下の静水圧を負荷させて水に溶かした海草からの抽出成分を加圧室内に入れ、前記加圧室の圧力を内部変質に要する時間加えた高圧処理米の製造方法としたので、海草からの抽出成分を容易に摂取できる。
【0012】
さらに、本発明は、白米又は玄米を990mpa以下の静水圧を負荷させて水に溶かした水溶性多糖類を加圧室内に入れ、前記加圧室の圧力を内部変質に要する時間加えた高圧処理米の製造方法としたので、水溶性多糖類を容易に摂取できる。
【0013】
さらにまた、本発明は、白米又は玄米を990mpa以下の静水圧を負荷させて水に溶かした血圧や血糖値の上昇を抑える物質とを加圧室に入れ、前記加圧室の圧力を内部変質に要する時間加えた高圧処理米の製造方法としたので、血圧や血糖値の上昇を抑える成分を容易に摂取できる。
【0014】
さらにその上に、本発明は、白米又は玄米を990mpa以下の静水圧を負荷させて水に溶かしたダイエット効果成分を加圧室内に入れ、前記加圧室の圧力を内部変質に要する時間を加えた高圧処理米の製造方法としたので、ダイエット効果成分を容易に摂取できる。
【0015】
また、本発明は、高圧処理米であるので、海藻類や食物繊維等を容易に摂取できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を添付する図面に示す具体的な実施例に基づいて、以下詳細に説明する。
【0017】
本発明は、本来、主食の白米及び玄米には含まれていない海藻類や寒天を、静水圧処理によって強化含有させ、別個の調理によって食されていた海藻類や寒天を主食によって充足させ、海藻類や寒天等の1日の必要摂取量を手間をかけず、自然に摂取できるようにしたものである。
【0018】
(1) 加圧の米粒は35%〜40%の水分を含有しているので、そのまま炊飯すれば熱伝導が良好なので芯のない美味しいご飯が完成する。
【0019】
(2) 水分が多いので、そのまま無菌パックの原料米用に好適であり、パック米の製造工程が簡略化してコスト低減につながる。
【0020】
(3) 乾燥して米粒本来の水分 (12.5%〜14%)程度に水分を抜けば、常温流通することが可能で、真空包装・脱酸素剤なしでも賞味期限は6ヵ月間有効である。
【0021】
(4) 海藻類や寒天には、水溶性多糖類(食物繊維)が多く含まれており、特に寒天は100g中74.1gもの食物繊維が含まれている。
【0022】
他にもカルシウム及びミネラルが含まれ、ノンカロリーと併せて理想的な食品であり、毎食摂取することが難しいこれらの栄養成分を、日々健康のために「主食の米を食すれば足りる」という課題を達成するものである。
【0023】
上記のように、本発明による利用用途は、加工分野のみならず一般消費者の健康維持に貢献するものである。
【0024】
本発明は、白米や玄米を高温に曝すことなく、熱変性させずに、海藻類、寒天、白米や玄米の栄養成分を損なうことのない静水圧の圧力変性の効果をもって、白米や玄米の米粒内に水溶性多糖類(食物繊維)、カルシウム等のミネラルを含有した米粒の製造を達成することである。
「加工例1」
図1の加圧装置10の加圧室1内に水を満たし、米粒は別の容器2に海藻類の溶液と共に収容し、この容器2を加圧室1に入れ、ピストン3により適宜加圧して本発明の目的を達成することができる。
「加工例2」
加圧室1に海藻類の溶液と米粒を直接収容し、ピストン3により適宜圧力を加えると、本発明の目的を達成することができる。
【0025】
上記により、機能性を高めた白米や玄米を得ることができ、本発明の目的を達成することができる。
【0026】
元来、米には含まれていない栄養分を強化、含有させ、三度の主食で食物繊維、カルシウム等ミネラルを併せて簡便に必ず摂取することができ、安全な食品である。
「試験例」
次に、本発明に係る高圧処理米について、栄養成分(食物繊維、カルシウム)が増量している観点から行った試験について説明する。
【0027】
検査は、厚生労働大臣登録検査機関 三重県四日市市赤堀2丁目3番29号 財団法人食品分析開発センターSUNATECが行った。
「浸漬処理」
玄米や白米の米粒を水に浸漬した結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
「高圧処理」
高圧で処理した玄米や白米の米粒の結果を表2に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
高圧処理してない浸漬処理の玄米や白米の米粒と、高圧処理した玄米や白米の米粒との栄養成分の比較を行う。
【0032】
浸漬処理において、玄米の食物繊維は加工前で3.0g/100g、浸漬処理後は2.9g/100g、カルシウムは加工前で9mg/100g、浸漬処理後は13mg/100でほとんど増量していない。
【0033】
これに対し、高圧処理すると、浸漬処理に比して、食物繊維は5.0g/100g増量し、カルシウムは36mg/100gと増量している。
【0034】
浸漬処理において、白米の食物繊維は、加工前で0.5g/100g、浸漬処理後は0.6mg/100g、カルシウムは加工前で5mg/100gで、浸漬処理後は7mg/100gで殆ど増量していない。
【0035】
これに対し、高圧処理すると、浸漬処理に比して、食物繊維は1.0g/100gと増量し、カルシウムは9mg/100gと増量している。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、玄米や白米に高圧処理や浸漬処理を行って、海藻類等の栄養分を豊富に含有させるようにしたものであるが、玄米や白米に限らず、麦などの他の穀物にも利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は高圧処理米の製造に使用される高圧処理装置の概略図である。
【符号の説明】
【0038】
1…加圧室
2…容器
3…ピストン
10…加圧装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白米又は玄米を990mpa以下の静水圧を負荷させて水に溶かした寒天を加圧室内に入れ、前記加圧室の圧力を内部変質に要する時間加えた高圧処理米の製造方法。
【請求項2】
白米又は玄米を990mpa以下の静水圧を負荷させて水に溶かした海草からの抽出成分を加圧室内に入れ、前記加圧室の圧力を内部変質に要する時間加えた高圧処理米の製造方法。
【請求項3】
白米又は玄米を990mpa以下の静水圧を負荷させて水に溶かした水溶性多糖類を加圧室内に入れ、前記加圧室の圧力を内部変質に要する時間加えた高圧処理米の製造方法。
【請求項4】
白米又は玄米を990mpa以下の静水圧を負荷させて水に溶かした血圧や血糖値の上昇を抑える物質とを加圧室に入れ、前記加圧室の圧力を内部変質に要する時間加えた高圧処理米の製造方法。
【請求項5】
白米又は玄米を990mpa以下の静水圧を負荷させて水に溶かしたダイエット効果成分を加圧室内に入れ、前記加圧室の圧力を内部変質に要する時間を加えた高圧処理米の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜請求項5に記載された高圧処理米。

【図1】
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【公開番号】特開2009−106183(P2009−106183A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281091(P2007−281091)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(591052859)
【Fターム(参考)】