説明

高圧噴射撹拌工法における地盤の切削状態モニタリング方法およびモニタリング装置

【課題】高圧噴射される固化材による原地盤の切削状態をリアルタイムで把握することにより、造成されつつある地盤改良体の径を容易に確認できる高圧噴射撹拌工法における地盤の切削状態モニタリング方法およびモニタリング装置を提供する。
【解決手段】注入管1の周囲に挿入される複数の建込み管5と、当該建込み管5内にそれぞれ設置され、注入管1先端の噴射ノズル1aから高圧噴射される固化材の建込み管5に当たる音をモニタリングする複数の集音器6と、噴射ノズル1aのステップアップに連動して集音器6をステップアップさせる巻上げ装置8と、集音器6によってモニタリングされた音のデータを集中管理する管理装置13と、モニタリングされた音のデータを記録する記録装置14とを備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧噴射撹拌工法で実施される地盤の切削状態モニタリング方法およびモニタリング装置に関し、高圧噴射される固化材と原土とを撹拌混合して地盤改良体を造成しながら、高圧噴射される固化材による原地盤の切削状態をリアルタイムで把握することにより、造成されつつある地盤改良体の径を判定することができる。
【背景技術】
【0002】
一般に、高圧噴射撹拌工法は、地中に挿入した注入管を介し、その先端の噴射ノズルから固化材を高圧噴射し、その強力なエネルギーによって原地盤を切削崩壊し、かつ固化材と原土とを強制的に撹拌混合して円柱状の改良体を造成する方法であり、仮設から本設工事まで多目的に利用可能な地盤改良工法として知られている。
【0003】
しかし、原土と固化材との撹拌混合が地中で行われ目視できないため、施工状況を確認する必要がある。従来、この種の確認は施工後に行うチェックボーリングや造成された地盤改良体の頭部を一部露出させる等の方法によって行っていた。
【0004】
また、例えば、特許文献1には、注入管の先端に吊したゾンデ内の電極群により、その周囲の地盤改良柱と土の比抵抗を測定し、その測定値に基づいて形成されつつある地盤改良体の出来上がり状況を推定する確認方法が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、酸化系カルシウムを主成分とするセメント系固化材を含むスラリーを地中に噴射撹拌して円柱状の地盤改良体を造成する高圧噴射撹拌工法において、酸化カルシウムの含有率が大きいほど造成される地盤改良体の径が小さいという関係を利用して、酸化カルシウムの含有率から地盤改良体の径を推定する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−18660号公報
【特許文献2】特開2007−182695号公報
【特許文献3】特開平08−41860号公報
【特許文献4】特開2009−102892号公報
【特許文献5】特開平7−180136号公報
【特許文献6】特開2002−206233号公報
【特許文献7】特開2009−102897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、チェックボーリングや地盤改良体の頭部を一部露出して地盤改良体の径を確認する方法は、いずれも地盤改良体を造成した後に行う方法であるため、たとえ未改良部分が確認されても、すぐには対応ができず、また改めて装置を据え付けて施工する必要がありきわめて効率のわるいものであった。
【0008】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、造成されつつある地盤改良体の径をリアルタイムで確認できる高圧噴射撹拌工法における地盤の切削状態モニタリング方法およびモニタリング装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の高圧噴射撹拌工法における地盤の切削状態モニタリング方法は、地中に挿入された注入管の噴射ノズルから高圧噴射される固化材による地盤の切削状態をモニタリングする方法において、前記注入管の噴射ノズルから高圧噴射される固化材によって、前記注入管の周囲地盤中に挿入された建込み管が発生させる振動を検知器によってモニタリングすることにより原地盤の切削状態を確認することを特徴とするものである。
【0010】
本発明は、地中に挿入された注入管の噴射ノズルから高圧噴射される固化材と原土とからなる地盤改良体を造成し、同時に噴射ノズルから高圧噴射される固化材による原地盤の切削状態をリアルタイムで確認できるようにしたものである。
【0011】
本発明によれば、注入管の噴射ノズルから高圧噴射される固化材が、注入管の周囲地盤中に挿入された建込み管に当たる等して発生する建込み管の振動を検知器によってリアルタイムでモニタリングし、これを切削エネルギーとして評価することにより原地盤の切削状態を確認することで、地盤改良体の造成と同時に造成されつつある地盤改良体の径をリアルタイムで容易に判定することができる。
【0012】
建込み管は、注入管の周囲地盤の複数地点に注入管先端の噴射ノズルからの距離(固化材の到達距離)を適宜変えて複数挿入し、また検知器は各建込み管内に設置することができる。
【0013】
なお、噴射ノズルから各建込み管までの距離は、原地盤のN値や粘性などの原地盤の性状により設定することができ、また、建込み管は先端が閉塞され、中に検知器を設置できる程度の径を有するものであればよく、ガス管などが適している。
【0014】
請求項2記載の高圧噴射撹拌工法における地盤の切削状態モニタリング方法は、請求項1記載の地盤の切削状態モニタリング方法において、注入管の噴射ノズルから高圧噴射される固化材の建込み管に当たる音を集音器によってモニタリングすることにより原地盤の切削状態を確認することを特徴とするものであり、特に音というきわめて単純明快な情報によって原地盤の切削状態を容易に確認することができる。
【0015】
請求項3記載の高圧噴射撹拌工法における地盤の切削状態モニタリング方法は、請求項2記載の地盤の切削状態モニタリング方法において、集音器はパッカーとパッカーに収納された集音マイクとから構成されていることを特徴とするものである。
【0016】
本発明によれば、集音器はパッカーを備えていることにより、パッカー内にエアホースを介し、パッカー内に地上からエアを封入して膨張させることにより、集音マイクを建込み管内の任意の位置に容易に固定することができる。
【0017】
また、集音マイクはパッカー内に密封された状態で収納されていることにより集音性が良く、固化材の建込み管にあたる音を鮮明にモニタリングすることができる。さらに、集音マイクに防水性能を付与することもできる。
【0018】
請求項4記載の高圧噴射撹拌工法における地盤の切削状態モニタリング方法は、請求項1〜3のいずれかひとつに記載の地盤の切削状態モニタリング方法において、建込み管内を水で充填することを特徴とするものである。
【0019】
本発明によれば、建込み管内の水によって建込み管の重量が増すことにより、縦孔内に建込み管を容易に建て込むことができる。
【0020】
また、集音マイクが収納されたパッカー内を除いて、建込み管の全体を水で充填することにより、集音範囲が集音マイクの周辺のみに限定されるため、建込み管の発する振動や音をより鮮明にモニタリングすることができ、また建込み管を介して地上から伝わる騒音を遮断することもできる。
【0021】
請求項5記載の高圧噴射撹拌工法における地盤の切削状態モニタリング装置は、地盤に挿入された注入管の噴射ノズルから高圧噴射される固化材による地盤の切削状態をモニタリングする地盤の切削状態モニタリング装置において、前記注入管の周囲の地盤中に挿入される複数の建込み管と、当該建込み管内にそれぞれ設置され、前記噴射ノズルから高圧噴射される固化材による建込み管の振動をモニタリングする複数の検知器とを備えて構成されてなることを特徴とするものである。
【0022】
検知器には、高圧噴射された固化材の建込み管に当たる音や振動をモニタリングする集音マイクや振動計を利用することができ、また集音マイクや振動計は防護カバーやゴムパッカー内に収納されているのが望ましい。
【0023】
特に、後者の検知器は、パッカー内にエアを封入して膨張させることにより、検知器を建込み管内の任意の位置に容易に固定することができる。さらに、集音マイクや振動計がパッカー内に密封された状態で収納されていることにより、固化材の建込み管にあたる音や振動を鮮明にモニタリングすることができる等のメリットがある。
【0024】
請求項6記載の高圧噴射撹拌工法における地盤の切削状態モニタリング装置は、請求項5記載の地盤の切削状態モニタリング装置において、噴射ノズルのステップアップに連動して検知器をステップアップさせる上昇装置と、前記検知器によってモニタリングされた情報を集中管理する管理装置と、モニタリングされた情報を記録する記録装置とを備えて構成されてなることを特徴とするものである。
【0025】
管理装置は、検知器においてモニタリングされた振動や音のデータを集中管理すると共にこれらを衝撃の強さに変換し、さらに数値化することができる。
【0026】
また、記録装置にはデータロガーやペンレコーダー等を利用することができ、いずれもモニタリングされた振動や音のデータをチャート紙などの記録紙に経時的に記録することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明は、地中に挿入された注入管の噴射ノズルから高圧噴射される固化材が、注入管の周囲の地盤内に挿入された建込み管に当たる等して発生する建込み管の振動または音を建込み管内に設置された検知器によってモニタリングすることにより、原地盤の切削状態をリアルタイムで把握し、評価することができる。
【0028】
また、これにより地盤改良体を造成しながら同時に、造成されつつある地盤改良体の径を容易に把握することができるため、これまでのような施工後のチェックボーリングや地盤改良体の頭部を一部露出して地盤改良体の径を確認する等の作業を改めて行う必要はない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明を示す概要図である。
【図2】地盤中に設置された建込み管を示す縦断面図である。
【図3】建込み管内に設置された集音器を示し、(a)はパッカーとパッカー内に収納された集音マイクとからなる集音器を示す断面図、(b)は防護カバーと防護カバー内に収納された集音マイクとからなる集音器を示す断面図である。
【図4】モニタリング装置の要部を示す概要図である。
【図5】モニタリングの実施方法を示すフローチャートである。
【図6】地盤中における固化材の噴射時間と固化材が建込み管に当たる音の音量レベルとの関係を示すグラフである。
【図7】図6におけるグラフ線形の評価点と掘り出した地盤改良体出来形(建込み管位置と杭造成端の関係)を示すグラフである。
【図8】各深度における測点ごとの音量レベルの振れ幅を示すグラフである。
【図9】音量レベルの振れ幅と掘り出した地盤改良体出来形との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1〜図4は、本発明の一実施形態を示し、図において、符号1は地盤中に挿入される注入管、2はスイベル3を介して注入管1を吊って地盤面上に鉛直に建て付けるクレーンである。
【0031】
注入管1の先端には側方に固化材を高圧噴射するための噴射ノズル1aと下方に削孔水を放水するための放水口(図省略)がそれぞれ設けられている。なお、固化材と削孔水は、共に地上から注入管1を介して供給される。
【0032】
そして、符号4は、注入管1を地盤中に挿入すると共に、注入管1を介して地盤中に原土と固化材とからなる円柱状の地盤改良体イを造成するための施工機である。
【0033】
このような構成において、注入管1先端の放水口から削孔水を放水しながら、施工機4によって注入管1を回転させながら地盤中に挿入することができる。
【0034】
また、注入管1先端の噴射ノズル1aから側方に固化材を高圧噴射し、その強力なエネルギーによって原地盤を切削崩壊しつつ、注入管1を回転することにより、固化材と原土とを強制的に撹拌混合して地盤改良体イを造成することができる。さらに、注入管1を徐々に引き上げることにより地盤改良体イを円柱状に造成することができる。
【0035】
符号5は、造成される地盤改良体イの計画径内に挿入される建込み管、6は建込み管5内に吊りケーブル7を介して垂設される集音器、8は建込み管5内で吊りケーブル7を介して集音器6を注入管1の下降および上昇に連動して下降および上昇させる巻き上げ装置である。
【0036】
建込み管5は、注入管1周囲の複数地点の地盤中に地盤改良体イの造成に先立って地盤改良体イの計画深度まで挿入される。建込み管5の挿入地点や注入管1からの距離(固化材の到達距離)等は原地盤のN値や粘性などの地盤性状に応じて適切に設定される。
【0037】
また、建込み管5はボーリング等によって予め削孔された縦孔9内に挿入され、建込み管5と縦孔9間の間隙にはシール材10が注入される。シール材10には縦孔9内で固化する低強度の固化材が用いられ、シール材10が縦孔9内で固化することにより建込み管5は縦孔9内に固定される。
【0038】
なお、この場合の建込み管5は先端が閉塞されており、管内に集音器6を収納できる程度の径(50〜100mm程度)を有するガス管などが用いられている。また、シール材10には低強度のセメントベントナイト等が用いられる。
【0039】
集音器6は、ゴムパッカー6aとゴムパッカー6a内に収納された集音マイク6bとから構成されている。ゴムパッカー6aはエアホース11を介して地上から封入されるエアによって建込み管5内で膨張および収縮し、ゴムパッカー6aが膨張して建込み管5の内壁に密着することにより、集音器6は建込み管5内の任意の位置に固定することができる。
【0040】
集音マイク6bは、噴射ノズル1aから高圧噴射された固化材が建込み管5に当たる音をリアルタイムでモニタリングすることができ、また、巻き上げ装置8によってゴムパッカー6aと共に建込み管5内を上昇および下降することができる。
【0041】
なお、ゴムパッカー6aを膨張させてゴムパッカー6a内を中空にし、さらに建込み管5内に水を充填して集音範囲を集音マイク6bの周辺のみに限定することにより、固化材が建込み管5に当たる音をより鮮明にモニタリングすることができる。また、建込み管5を介して地上から伝わる騒音を遮断することができ、さらに集音マイク6bに防水性能を付与することもできる。
【0042】
符号12は、各地点A,B,C,Dの建込み管5内に垂設された集音器6によってモニタリングされた固化材の建込み管5に当たる音(以下「音のデータ」)を集中的に管理する管理装置であり、また、符号13は管理装置12で管理された音のデータを衝撃の強さに変換し、さらに数値化して記録保存する記録装置である。なお、各集音器6によってモニタリングされた音のデータは、電信ケーブル(図省略)を介して管理装置12に送信される。
【0043】
このような構成において、次に、図4と図5に図示するフローチャートに基づいて施工方法を説明する。
【0044】
(1) 最初に、造成される地盤改良体イの計画範囲の複数地点A,B,C,Dに縦孔9を削孔する。そして、各縦孔9内に建込み管5を建て込み、各建込み管5と縦孔9との間にシール材10を充填する。
【0045】
縦孔9の削孔にはボーリングを利用することができる。また、各縦孔9内に建て込まれた建込み管5は、シール材10が固化することで固定することができる。さらに、建込み管5の挿入地点A,B,C,Dは原地盤のN値や粘性などの原地盤の地盤性状により適切に決定することができる。
【0046】
なお、縦孔9内に建込み管5を建て込む際に、予め建込み管5内に水を注入し、管全体の重量を増やして建込み管5の受ける浮力より大きくすることにより、建込み管5を縦孔9内にスムーズに建て込むことができる。
【0047】
(2) 次に、地盤改良体イの造成位置の中心に施工機4を据え付け、施工機4に注入管1をクレーン2により吊って建て付ける。そして、注入管1の先端から削孔水を放水し、施工機4によって注入管1を回転させながら地盤中の計画深度まで挿入する。
【0048】
(3) 次に、各地点A,B,C,Dに巻き上げ装置8を据え付け、各巻き上げ装置8から水を注入した建込み管5内に集音器6を吊りケーブル7を介して垂設する。
【0049】
集音器6は、注入管1先端の噴射ノズル1aと同じ深さ(ステージ)に垂設する。そして、集音器6のパッカー6a内に地上からエアホース11を介してエアを封入することによりパッカー6aを膨張させて固定する。
【0050】
(4) 次に、注入管1を介し、噴射ノズル1aから固化材を高圧噴射し、その強力なエネルギーによって原地盤を切削崩壊しながら、施工機4によって注入管1を一定速度で回転させることにより原土と固化材とを強制的に撹拌混合して地盤改良体イを造成する。
【0051】
この間、注入管1先端の噴射ノズル1aから高圧噴射された固化材が各地点A,B,C,Dに到達していれば、各地点の地盤は切削崩壊されており、また各地点に挿入された建込み管5に固化材が当たり、各地点の建込み管5に固化材の当たる音が発生する。
【0052】
各地点の音は、各建込み管5内に垂設された集音器6の集音マイク6bによってモニタリングされ、モニタリングされた音のデータは電信ケーブル(図省略)を介して地上の管理装置12に送信される。
【0053】
そして、管理装置12において集中管理されると共に衝撃の強さに変換され、かつ数値化されて記録装置13において記録される。記録された音のデータは、ペンレコーダーにチャートとして出力される。なお、ここで計測されるデータは、経過時間、深度、ステップ信号、各地点における音のデータである。
【0054】
(5) こうして、最初のステージにおける地盤改良体イの造成が完了したら、施工機4を作動させて注入管1を第二、第三ステージ、……へと段階的にステップアップさせる。そして、各ステージにおいて(4)の工程を行うことにより、地盤改良体イを円柱状に造成することができる。
【0055】
また、その間、各ステージにおいて、各地点A,B,C,Dの建込み管5に固化材の当たる音を集音マイク6bによってモニタリングすることができ、かつ数値化して記録装置13において記録することができる。
【0056】
(6) 次に、最初のステージから数ステージまでの地盤改良が完了したら、エアパッカー6a内のエアを抜いて集音器6の固定を解放する。
【0057】
そして、巻き上げ装置8を作動させて集音器6を次のステージまで上昇させ、その位置でエアパッカー6aを再度膨張させて集音器6を注入管5内に再び固定する。なお、集音器6の上昇は、注入管1のステップアップ信号を受信し、これに連動して巻上げ装置8が作動することによりなされる。
【0058】
(7) そして、再度、(5)で説明したように、注入管1先端の噴射ノズル1aから固化材を高圧噴射しながら、かつ注入管1を回転させながら注入管1を段階的にステップアップさせることにより、地盤改良体イを円柱状に造成することができる。
【0059】
また、その間、各ステージにおいて、各地点A,B,C,Dの建込み管5に固化材の当たる音が集音マイク6bによってモニタリングすることができ、かつ数値化して記録装置13において記録することができる。
以上、(4)〜(7)の工程を最初の計画深度から地表まで連続して行うことにより、柱状の地盤改良体イを造成することができる。また、各地点A,B,C,Dの地盤改良体イの各ステージにおける杭径を判定することができる。
【0060】
なお、パッカー6aの大きさ(長さ)にもよるが、パッカー6aの長さが200mm程度の場合、パッカー6aを膨張させて集音器6を建込み管5内に固定した状態で、高圧噴射ノズル1aの1ステップを25mm程度として注入管1をステップアップさせるのが望ましい(図3参照)。また、集音器6は、注入管1の4ステップアップごとに100mm〜200mm程度上昇させるのがよい。
【0061】
以上の工程を連続して行うことにより、噴射ノズル1aから高圧噴射される固化材と原土とからなる地盤改良体イを造成しながら、同時に造成されつつある地盤改良体イの各地点A,B,C,Dの各ステージにおける建込み管5の発する音をリアルタイムでモニタリングし、記録することができる。そして、その結果から造成されつつある地盤改良体イの径を施工段階においてリアルタイムで容易に判定することができる。
【0062】
なお、図3(b)は集音器の変形例を示し、図示する集音器6は製作が容易で簡単に使用できるものであり、筒状の防護カバー6cと防護カバー6c内に収納された集音マイク6bとから構成されている。
【0063】
防護カバー6cは単に集音マイク6bを保護するのみでゴムパッカーのような膨張機能はなく、鋼管または硬質樹脂管などの筒体から形成され、その上下両端部は密閉されている。
【0064】
このように構成された集音器6は建込み管5内に吊りケーブル7を介して垂設され、注入管1の下降および上昇に連動して下降および上昇するようになっている。その他の構成および使用方法は図3(a)に図示する集音器と同じである。
【0065】
次に、本発明の地盤の切削状態モニタリング方法による杭径の判定方法について、地盤改良体イ,ロ,ハを造成する場合を例に具体的に説明する。
【0066】
図6は、改良体の造成中における固化材の噴射時間と固化材が建込み管5に当たる音の音量レベルとの関係を示すグラフである。また、図7は、図6におけるグラフ線形の評価点と掘り出した改良体の出来形(建込み管位置と造成端の関係)を示すグラフである。
【0067】
さらに、図8は、特に改良体イの造成中における各深度における測点ごとの音量レベルの振れ幅(=最大値−最小値)を示すグラフである。そして、図9は、音量レベルの振れ幅と掘り出した地盤改良体出来形との関係を示すグラフである。
【0068】
(1) 最初に、図6のグラフから固化材(噴射流)が建込み管5に当たった時間をグラフ線形で確認する。建込み管5に固化材(噴射流)が到達している場合は、一定間隔で山形のグラフ線形が確認でき、噴射エネルギーは山の大きさに比例している。
【0069】
図6では、A,B,C,Dの4点(図4参照)ともに約6秒の一定間隔で山形のグラフ線形が確認でき、特にA点では大きな山形が明確にあらわれている。これに対し、D点では山形は確認できるが山の大きさが他に比べて小さい。また、図7のグラフより、グラフ線形の評価が高いほど出来形が良いという相関があることがわかる。
【0070】
(2) 次に、ステップごとに音量レベルの振れ幅を算出して、振れ幅の値で評価する。
実施工における計測結果により、図6における最大値(山の頂点)と最小値の差を音量レベルの振れ幅として評価する。各深度における測点ごとの振れ幅をまとめると図8のようになる。
【0071】
振れ幅が大きいほど建込み管5に到達した固化材の噴射エネルギーは大きい。すなわち、確実な切削が出来ていると考えられる。掘り出した改良体イ,ロ,ハの出来形との関係を図9にそれぞれまとめた。これより、振れ幅と改良体の出来形には相関関係が認められる。
【0072】
音量レベルの振れ幅が200を超えた場合には、改良体の出来形は建込み管5の外側まで達している。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、注入管先端の噴射ノズルから高圧噴射される固化材と原土とからなる地盤改良体を造成しながら、同時に高圧噴射される固化材による原地盤の切削状態をリアルタイムで把握することができ、これにより造成されつつある地盤改良体の径を判定することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 注入管
1a 噴射ノズル
2 クレーン
3 スイベル
4 施工機
5 建込み管
6 集音器(検知器)
6a ゴムパッカー
6b 集音マイク
7 吊りケーブル
8 巻き上げ装置
9 縦孔
10 シール材
11 エアホース
12 管理装置
13 記録装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤中に挿入された注入管の噴射ノズルから高圧噴射される固化材による地盤の切削状態をモニタリングする地盤の切削状態モニタリング方法において、前記注入管の噴射ノズルから高圧噴射される固化材によって前記注入管の周囲の地盤に挿入された建込み管の発する振動を検知器によってモニタリングすることにより原地盤の切削状態を確認することを特徴とする高圧噴射撹拌工法における地盤の切削状態モニタリング方法。
【請求項2】
請求項1記載の高圧噴射撹拌工法における地盤の切削状態モニタリング方法において、注入管の噴射ノズルから高圧噴射される固化材の建込み管に当たる音を集音器によってモニタリングすることにより原地盤の切削状態を確認することを特徴とする高圧噴射撹拌工法における地盤の切削状態モニタリング方法。
【請求項3】
請求項2記載の高圧噴射撹拌工法における地盤の切削状態モニタリング方法において、集音器はパッカーとパッカーに収納された集音マイクとから構成されていることを特徴とする高圧噴射撹拌工法における地盤の切削状態モニタリング方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかひとつに記載の高圧噴射撹拌工法における地盤の切削状態モニタリング方法において、建込み管内に水を充填することを特徴とする高圧噴射撹拌工法における地盤の切削状態モニタリング方法。
【請求項5】
地盤に挿入された注入管の噴射ノズルから高圧噴射される固化材による地盤の切削状態をモニタリングする地盤の切削状態モニタリング装置において、前記注入管周囲の地盤中に挿入される複数の建込み管と、当該建込み管内にそれぞれ設置され、前記噴射ノズルから高圧噴射される固化材による建込み管の振動をモニタリングする複数の検知器とを備えて構成されてなることを特徴とする高圧噴射撹拌工法における地盤の切削状態モニタリング装置。
【請求項6】
請求項5記載の高圧噴射撹拌工法における地盤の切削状態モニタリング装置において、噴射ノズルのステップアップに連動して検知器をステップアップする上昇装置と、前記検知器によってモニタリングされた情報を集中管理する管理装置と、モニタリングされた情報を記録する記録装置とを備えて構成されてなることを特徴とする高圧噴射撹拌工法における地盤の切削状態モニタリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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