説明

高圧放電ランプ、高圧放電ランプ点灯装置および照明装置

【課題】
透光性気密容器の点灯中の温度差を低減させることにより、透光性気密容器の温度不均一による破裂を防止して、実用寿命を確保した水平点灯される高圧放電ランプ、これを用いた高圧放電ランプ点灯装置および照明装置を提供する。
【解決手段】
高圧放電ランプは、水平点灯されるものであり、透光性多結晶アルミナセラミックスからなり、水平方向両側の主要部の肉厚が鉛直方向上部の肉厚に比較して薄くなっていて当該部分の直線透過率が20%を超えているとともに内部に放電空間1cが形成される包囲部1aおよび包囲部に連通する小径筒部1bを備えた透光性気密容器1と、透光性気密容器の小径筒部の内部に挿入して封着された電流導入導体3と、電流導入導体の先端側に接続して透光性気密容器内に封装された電極2と、透光性気密容器内に封入されたイオン化媒体とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性多結晶アルミナセラミックスからなる透光性気密容器を備えた水平点灯される高圧放電ランプ、これを用いた高圧放電ランプ点灯装置および照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車前照灯用の高圧放電ランプは、水平点灯で使用される。従来のこの種の高圧放電ランプは、透光性気密容器が石英ガラス製である(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
一方、主として一般照明用の高圧放電ランプでは、石英ガラス製の透光性気密容器に替えて透光性セラミックスからなる透光性気密容器を用いた高圧放電ランプも使用に供されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
自動車前照灯用の高圧放電ランプの場合、厳格な配光制御が必要であり、一般照明用の高圧放電ランプに採用されている透光性セラミックスは、全透過率こそ高いものの直線透過率が低いので、集光性能を高めることができないために、透光性セラミックスが用いられていない。
【0005】
近時、透光性多結晶アルミナセラミックスの直線透過率を高める開発が行われている(例えば、非特許文献1参照。)。非特許文献1は、直線透過率の高い多結晶アルミナセラミックスを得る技術を開示しているものの、高圧放電ランプの透光性気密容器の構成については言及していない。
【0006】
そこで、自動車前照灯用などの水平点灯される高圧放電ランプの透光性多結晶アルミナセラミックスを透光性気密容器の材料として採用することにより、耐熱温度が石英ガラスより高くなるために高発光効率のものを得ることが可能になる。なお、この場合、直線透過率は、20%を超えていれば実用可能である。
【0007】
【特許文献1】特公平06−030239号公報
【特許文献2】特開昭62−066556号公報
【非特許文献1】K. Morinaga, T. Torikai, K. Nakagawa, and S. Fujino, “lochFabricationof fine αloch-alumina powders by thermal decomposition of ammonium aluminium carbonatehydro-oxide (AACH)” lochActa materialia, 48, p4375-4741(2000)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、透光性多結晶アルミナセラミックスからなる透光性気密容器の場合、当該容器の点灯中の温度分布が不均一であると、点灯中に当該容器が破裂しやすいという問題がある。特に水平点灯の場合、放電アークが上方に湾曲するために、透光性気密容器の上部の温度が高くなる。このため、透光性気密容器の上部の温度が耐久上限温度より若干低くなるように設計することが高発光効率、高演色、かつ長寿命を達成するために必要である。透光性気密容器の上部の温度は、他の条件が同じであれば、外径が大きくなるにしたがい低下する傾向があるので、ある程度外径を大きくすれば、上部の温度を耐久上限温度より若干低くすることが可能である。
【0009】
一方、放電アークの湾曲が大きいと、所要の配光制御が困難になるので、湾曲量を一定以下に抑制するために、透光性気密容器の内径を一定以下に維持する必要がある。
【0010】
そこで、透光性気密容器の肉厚を大きくすれば、以上の二要件を満足させることができる。
【0011】
ところが、透光性多結晶アルミナセラミックスを用いた透光性気密容器を備えた水平点灯される高圧放電ランプでは、透光性気密容器の肉厚を小さくすると直線透過率が顕著に高くなり、透明性が増すため、可能な限り肉厚を小さくすることが要求される。
【0012】
したがって、以上の各要求ないし必要性は互いに矛盾する関係にあるために、従来技術では全てを満足させることができないという問題がある。
【0013】
そこで、本発明者は、実用寿命を確保すると同時に十分な透明性を得るための検討を行った結果、透光性セラミックス放電容器における上部および両側面部の肉厚を変化させることで、点灯中の透光性気密容器の温度分布が均一なり、透光性気密容器の破裂を防止できるとともに、さらに所望の透明性を得ることが可能になることを見出し、本発明をなすに至った。
【0014】
また、水平点灯において、点灯中最も温度差が大きくなる包囲部の上部と下部の温度差を低減すると、点灯中の透光性気密容器の温度分布が均一なり、透光性気密容器の破裂を防止できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0015】
本発明は、透光性気密容器の点灯中の温度差を低減させることにより、透光性気密容器の温度不均一による破裂を防止して、実用寿命を確保した水平点灯される高圧放電ランプ、これを用いた高圧放電ランプ点灯装置および照明装置を提供することを主な目的とする。
【0016】
また、本発明は、加えて十分な透明性を得た水平点灯される高圧放電ランプ、これを用いた高圧放電ランプ点灯装置および照明装置を提供することを他の目的とする。
【0017】
さらに、本発明は、加えて透光性気密容器の上部の保温効果が低減し、かつ下部の保温効果を増大して点灯中の透光性気密容器の温度分布を均一にした水平点灯される高圧放電ランプ、これを用いた高圧放電ランプ点灯装置および照明装置を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
第1の発明の高圧放電ランプは、水平点灯されるものであり、透光性多結晶アルミナセラミックスからなり、水平方向両側の主要部の肉厚が鉛直方向上部の肉厚に比較して薄くなっていて当該部分の直線透過率が20%を超えているとともに内部に放電空間が形成される包囲部および包囲部に連通する小径筒部を備えた透光性気密容器と;透光性気密容器の小径筒部の内部に挿入して封着された電流導入導体と;電流導入導体の先端側に接続して透光性気密容器内に封装された電極と;透光性気密容器内に封入されたイオン化媒体と;を具備していることを特徴としている。
【0019】
第2の発明の高圧放電ランプは、水平点灯されるものであり、透光性多結晶アルミナセラミックスからなり、主要部の直線透過率が20%を超えているとともに内部に放電空間が形成される包囲部および包囲部に連通する小径筒部を備えた透光性気密容器と、透光性気密容器の小径筒部の内部に挿入して封着された電流導入導体、電流導入導体の先端側に接続して透光性気密容器内に封装された電極および透光性気密容器内に封入されたイオン化媒体を備えた発光管と;発光管を内部に収納するとともに、管軸が発光管の管軸に対して平行で、かつ上方に位置する外管と;を具備していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
第1の発明によれば、透光性気密容器が透光性多結晶アルミナセラミックスを用いて形成され、包囲部の主要部の直線透過率が20%超であるとともに、包囲部の主要部における水平方向両側の肉厚が上部の主要部における肉厚に比較して薄くなっていることにより、鉛直方向上部の肉厚を相対的に大きくして温度上昇を抑えることができる。また、配光制御に対する寄与度が大きい水平方向両側部の肉厚を相対的に小さくしたので、直線透過率を高くしやすくなる。その結果、透光性気密容器の温度分布不均一による破裂を防止して、実用寿命を確保するとともに十分な透明性を得た水平点灯される高圧放電ランプ、これを用いた高圧放電ランプ点灯装置および照明装置を提供することができる。
【0021】
第2の発明によれば、透光性気密容器が透光性多結晶アルミナセラミックスを用いて形成され、包囲部の主要部の直線透過率が20%超である透光性気密容器を備えた発光管と、発光管を内部に収納するとともに、管軸が発光管の管軸に対して平行で、かつ上方に位置する外管とを具備していることにより、一方で外管内面と発光管上部との間の距離が大きくなるから、外管内面からの反射熱による発光管上部の保温効果が低減する。他方で外管内面と発光管下部との間の距離が相対的に小さくなるから、外管内面からの反射熱による発光管下部の保温効果が増大する。その結果、透光性気密容器の上下部間の温度差が小さくなるので、温度分布の不均一による破裂を防止して、実用寿命を確保するとともに、構造が簡単な水平点灯される高圧放電ランプ、これを用いた高圧放電ランプ点灯装置および照明装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0023】
図1および図2は、第1の発明の高圧放電ランプを実施するための第1の形態を示し、図1は正面断面図、図2は透光性気密容器の拡大横端面図である。
【0024】
本形態において、高圧放電ランプは、透光性気密容器1、一対の電極2、2、電流導入導体3、3、シール部4およびイオン化媒体とを備えている。
【0025】
最初に透光性気密容器1について説明する。
【0026】
透光性気密容器1は、透光性多結晶アルミナセラミックスからなるとともに、本形態においては一体に成形して形成されている。そして、包囲部1aおよび一対の小径筒部1b、1bを有している。
【0027】
包囲部1aは、その内部に放電空間1cを包囲する中空の部分であり、自動車前照灯用などの高圧放電ランプなどの場合には、上記放電空間1cが好ましくは概ね円柱状をなしていて、少なくとも管軸方向に直線状をなしている直線部1a1で、かつ少なくとも主要部において、水平点灯姿勢での水平方向両側部(以下、便宜上「両側部」という。)の肉厚が鉛直方向上部(以下、便宜上「上部」という。)の肉厚に比較して小さくなっている。両側部の肉厚を上部の肉厚より小さくするための具体的構成は、本発明において特段限定されないが、本形態においては図2に示すように上部1aTが肉厚で、両側部1aSおよび鉛直方向下部(以下、便宜上「下部」という。)1aBが相対的に肉薄で、かつ同一肉厚になっている。
【0028】
ところで、上部1aTおよび両側部1aBの効果的な肉厚は、次のとおりである。すなわち、上部の肉厚をtyとし、両側部の肉厚をtxとしたとき、比tx/ty(%)が数式:25≦tx/ty≦90を満足する範囲である。比tx/tyが25%以上になると、透光性気密容器の耐圧が顕著に高くなり、しかも両側部の直線透過率を十分に高い値を維持することができる。また、90%以下であれば、両側部の直線透過率を高くする効果を得ることができる。なお、比tx/ty(%)が下限値未満になると、両側部の直線透過率の向上するものの、透光性気密容器の耐圧が顕著に低下して破裂しやすくなる。また、上限値を超えると、両側部の直線透過率の向上が得にくくなる。
【0029】
上記において、放電空間1cが好ましくは概ね円柱状をなしているとは、円柱状、楕円柱状ならびに円柱および楕円の一部(特に上部が効果的である。)をカットしたような異形などを含む意味である。
【0030】
包囲部1aの内部に形成される放電空間1cの容積は、高圧放電ランプの定格ランプ電力、電極間距離などに応じてさまざまな値が選択され得る。
【0031】
また、透光性気密容器1の外部形状は、円柱形状、楕円形状および円または楕円の一部(特に両側部が効果的である。)をカットしたような異形であることを許容する。
【0032】
次に、水平方向両側部の主要部における直線透過率について説明する。
【0033】
本発明において、包囲部1aは、その主要部の直線透過率が20%超、好適には30%超、より一層好適には50%超である。なお、上記主要部は、間軸方向において放電により発生する光の導出に対して配光上影響の大きい重要な部分であり、主として後述する一対の電極2、2間に対向する部位である。
【0034】
また、両側部は、管軸周りにおいて配光制御に対する寄与度が大きいので重要である。すなわち、自動車前照灯では配光パターンのカットラインや中心最高照度部などを設計する際に、最も有効に使われる高圧放電ランプの放射光の方向は、水平方向付近(水平±10°)ないし俯角20°前後の範囲が重要である。このため、包囲部1aの上部1aTの肉厚が大きくて直線透過率が低下しても両側部1aSの肉厚が小さくて直線透過率が向上すれば、総合的には光束の利用効率が向上するとともに、配光制御が容易になる。
【0035】
そうして、直線透過率が上記の範囲内であれば、反射鏡などの光学系との組み合せにおいて配光制御が容易になるため、自動車前照灯用などの用途に適した高圧放電ランプを得ることができる。
【0036】
しかしながら、直線透過率が20%以下であると、見かけ上放電アークが太くなりすぎて配光制御が困難になり、所望の配光パターンを得ることができない。したがって、自動車前照灯などに組み込んで所定の規格を満足するように配光を厳格に制御することが要求される場合に、それが困難になる。加えて、直線透過率が30%超であれば見かけ上の放電アークがさらに細くなって配光制御がさらに容易になり、50%超であればなお一層配光制御が容易になる。なお、本発明において、直線透過率は高い方が好ましいので、その上限はない。
【0037】
直線透過率の高い包囲部1aを形成する手段は既知である。したがって、既知の手段を用いれば、上記のように直線透過率が高い包囲部1aを実現することができる。そのために、本発明においては、直線透過率の高い包囲部1aを形成する手段は特段限定されない。
【0038】
なお、直線透過率の高い包囲部1aを形成する手段の一例を列挙すれば、次のとおりである。
(1)透光性多結晶アルミナセラミックスの材料であるアルミナ微粒子の平均粒径をサブミクロンのオーダー、例えば平均粒径0.1〜6μmの高直線透過率アルミナ微粒子を用いて透光性気密容器1を成形する。
(2)透光性多結晶アルミナセラミックスの成形後に透光性気密容器1の所望部分の表面、例えば内面、外面または内面および外面を研磨する。
(3)包囲部1aには高直線透過率アルミナ微粒子を用いるとともに小径筒部1bには一般的な平均粒径が高直線透過率アルミナ微粒子のそれより1桁以上大きなアルミナ微粒子を用いて一体に成形する。
(4)上記(1)ないし(3)の各手段を適宜組み合わせる。
【0039】
高直線透過率アルミナ微粒子を用いて形成された透光性セラミックスは、従来一般に用いられている透光性セラミックスに比べて機械的強度が高いので、前者のセラミックスを用いて形成されている包囲部1aは、後者のセラミックスを用いて形成されている小径筒部の肉厚に比較して肉厚を小さくしても所要の機械的強度を保有させることができることが分かった。
【0040】
上記の理由から、透光性気密容器1における包囲部1aの両側部1aSの主要部と好ましくは下部1aBにおける肉厚は、0.2〜0.75mmの範囲内で、かつ実質的一定に形成することができる。上記の範囲内であれば、点灯時における包囲部1aに耐圧の問題がないとともに、肉厚が小さい分に応じて包囲部1aの直線透過率を本発明所定の範囲内に収めるのが容易に容易になる。しかしながら、上記肉厚が0.2mm未満になると耐圧が低下しすぎるし、また0.75mmを超えると直線透過率を前記範囲内に収めるのが困難になる。包囲部1aの上記肉厚は、好適には0.3〜0.6mmである。この範囲内であれば、直線透過率および耐圧がともになお一層好ましくなる。なお、包囲部の管軸方向のサイズは、後述する小径筒部が接合する部分までであり、当該部分は曲率が大きく変化する部位である。
【0041】
また、包囲部1aの上記所定部分の肉厚がほぼ一定であれば、肉厚の不均一によって高圧放電ランプの配光パターンが不所望な劣化や配光設計の困難化を生じることがない。なお、包囲部1aの効果的には両側部1aSの肉厚を一定にするのは、一対の電極2、2間に対向した領域すなわち主要部についてだけでよく、残余の領域は肉厚が多少異なっていてもよいし、肉厚が多少不均一であってもよい。残余の領域は、配光に対する影響が少ないからである。しかし、極端に肉厚が不均一であると、透光性気密容器1の温度分布が不均一になり、許容範囲から逸脱しやすいので、好ましくない。
【0042】
包囲部1aの上部1aTの肉厚は、両側部1aSの肉厚より大きければよく、特段限定されない。例えば、0.22〜3mm程度にすることができる。
【0043】
包囲部1aの下部1aBの肉厚は、本発明において特段限定されない。例えば、両側部1aSの肉厚と同等またはそれ以上にすることができる。しかし、下部1aBの肉厚をなるべく小さくすることで下部1aBの温度低下を抑制することができるので、包囲部1aの上下部間の温度差を低減するのに効果的である。
【0044】
本発明において、包囲部1aの実効的な内径は特段限定されない。なお、自動車前照灯用などの高圧放電ランプの場合、放電空間1cがほぼ円柱状をなしていて、包囲部1aの主要部が円筒状をなし、かつ、内径が好適には2.1〜3.7mmまたは4.5mm、好適には2.4〜3.4mmの範囲内であることにより最適となる。このようなサイズが最適なのは、以下の理由による。
【0045】
すなわち、本発明の場合は、透光性気密容器が石英ガラスからなる場合とは異なり、材料の屈折率および肉厚が相違するために、仮に同一形状の放電アークが生起したとしても、見かけ上のアーク湾曲量が多結晶アルミナセラミックスと石英ガラスとでは異なって見えるためである。しかし、内径が2.1mm未満になると、放電アークの高熱によって包囲部の内面が、セラミックスの昇華により白濁したり、クラックが発生したりしやすくなる。また、3.7mmまたは4.5mmを超えると、透光性気密容器1の内部に形成される最冷部の温度が低下しすぎる。
【0046】
次に、一対の小径筒部1b、1bは、包囲部1aの管軸方向の両端に接続している。小径筒部1bの内径は、包囲部1aの内径より明らかに小さくて、例えばその1/10以下である。そして、透光性気密容器1が封止されない状態において、小径筒部1aの内部には管軸方向に延在する細長い貫通孔を有していて、その一端が包囲部1aの放電空間1cに連通し、他端が外部へ開口している。
【0047】
また、一対の小径筒部1b、1bは、その直線透過率が包囲部1aにおける直線透過率より低い。小径筒部1bの直線透過率は直接配光に影響することが少ないので、包囲部1aの直線透過率より低くてもよい。
【0048】
そうして、直線透過率が相対的に低ければ、例えば包囲部1aの表面、例えば外面を研磨して直線透過率を高める場合であっても、小径筒部1bの表面、例えば外面は研磨しなくてよくなったり、通常用いられる平均粒径が前述のように大きい透光性セラミックス粒子を用いて小径筒部1bを形成したりすることができる。そのため、高圧放電ランプの製造が容易で、しかも安価になる。
【0049】
透光性気密容器1の包囲部1aおよび一対の小径筒部1b、1bは連続して一体化している。このため、透光性気密容器1には熱的および光学的な不連続部分が形成されていない。この構成における最も典型的な構造によれば、透光性気密容器1の包囲部1aおよび一対の小径筒部1b、1bは一体成形により形成されている。また、異なる構造によれば、透光性気密容器1を形成する前の段階において、包囲部1aおよび一対の小径筒部1b、1bの全体またはそれらの部分がそれぞれ別の部材としてセラミックス微粒子材料を圧縮成形するか、または仮焼結して用意され、次にそれぞれの部材を焼結型内にて透光性気密容器の形になるように組み込んで本焼結することで、隣接する別部材間のアルミナ粒子が直接結合して熱的および光学的な不連続部分の存在しない透光性気密容器1を得る。なお、いわゆる焼き嵌め構造の透光性気密容器では、熱的および光学的な不連続部分が形成されているので好ましくないが、所望によりこの構成を採用することができる。
【0050】
次に、一対の電極2、2について説明する。
【0051】
一対の電極2、2は、透光性気密容器1に封装されてその内部の放電空間1cに離間して臨むように配設される。一対の電極2、2間に形成される電極間距離は、一般的には5mm以下が好適であり、自動車前照灯用の高圧放電ランプの場合には、中心値で4.2mmが規格化されている。
【0052】
また、電極2の構成材としては、耐火性があって、導電性の金属、例えば純タングステン(W)、ドープ剤(例えばスカンジウム(Sc)、アルミニウム(Al)、カリウム(K)およびケイ素(Si)などのグループから選択された一種または複数種)を含有するドープドタングステン、酸化トリウムを含有するトリエーテッドタングステン、レニウム(Re)またはタングステン−レニウム(W−Re)合金などを用いて形成することができる。
【0053】
さらに、小形の高圧放電ランプの場合、直棒状の線材や先端部に径大部を形成した線材を電極として用いることができる。中形ないし大形の電極の場合、電極軸の先端部に電極構成材製の電極コイルを巻回したりすることができる。なお、一対の電極2、2は、交流で作動する場合に同一構造とする。しかし、直流で作動する場合には、一般に陽極は温度上昇が激しいから、陰極より放熱面積の大きい、したがって主部が太いものを用いることができる。
【0054】
また、一対の電極2、2は、その中間部および基端が透光性気密容器1の小径筒部1b、1b内に挿入しているが、所望により小径筒部1bの内面との間にキャピラリーと称されるわずかな隙間を形成するように構成することができる。なお、一対の電極2、2の基端は、後述する電流導入導体3の先端に接続して支持される。
【0055】
次に、電流導入導体3について説明する。
【0056】
電流導入導体3は、電極2に給電するための機能、小径筒部1bおよび後述するシール材4と協働して透光性気密容器1を封止する機能および電極2を支持する機能を有する部材である。そして、その基端部が小径筒部1bの端部から外部に露出して図示しない点灯回路に接続し、先端部が電極2の基端に接続する。電流導入導体3の先端部は、透光性気密容器1の小径筒部1bの内部に挿入され、さらに小径筒部1bの内部において電極2の基端に接続している。
【0057】
また、電流導入導体3の小径筒部1b内に挿入される部分の直径を、電極2の少なくとも基端部、好ましくは電極軸の直径より大きくすることができる。これにより、電極2または電極軸2aの直径を導入導体3の直径に影響されることなく最適なサイズに設定することができるとともに、イオン化媒体の滞留に伴う侵食が低減する。
【0058】
さらに、電流導入導体3は、その全体を封着性導電部材により形成してもよいし、また封着性導電部材および耐ハロゲン性導電部材の直列接続構体により形成することができる。電流導入導体3の全体を封着性導電部材により形成する場合には、当然ながら封着性導電部材が上記3機能を奏するように配慮して構成される。これに対して、電流導入導体3が封着性導電部材および耐ハロゲン性導電部材の直列接続構体により形成される場合には、封着性導電部材が小径筒部および後述するシール部4と協働して透光性気密容器1を封止する機能を担当し、耐ハロゲン性導電部材が電極を支持する機能を担当し、さらに両部材はともに電極に給電する機能を担当する。
【0059】
封着性導電部材としては、電極の熱膨張係数に近い熱膨張係数を有する導電性部材を用いるのがよい。例えば、透光性セラミックスの種類に応じてニオブ(Nb)、タンタル(Ta)および白金(Pt)などを用いることができる。なお、透光性気密容器1が透光性多結晶アルミナセラミックスからなる場合にはニオブやサーメットが好適である。
【0060】
耐ハロゲン性導電部材としては、電極からの伝熱に耐える耐火性と電極構成物質の接近した熱膨張係数を有している部材を用いるのがよい。例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)およびサーメットなどから選択することができる。なお、サーメットは、セラミックス粒子と耐火性の導電性金属(例えば、MoやW)粉末の混合体を焼成して形成される。
【0061】
電流導入導体3に予め電極2を接続して電極2を支持し、透光性気密容器1に対する組立を容易にするために、例えば両者を突合せ溶接により一体化して電極マウントを構成することができる。また、電流導入導体3を封着性導電部材および耐ハロゲン性導電部材により形成する場合にもこれらを突合せ溶接して一体化することができる。
【0062】
次に、シール部4について説明する。
【0063】
シール部4は、高融点フリットガラス加熱溶融体や小径筒部の透光性多結晶アルミナセラミックスと電流導入導体の固溶体などからなり、透光性気密容器1の小径筒部1bの内面と導入導体3との間を気密に封止する。この封止により電流導入導体3を小径筒部1bに封着し、その結果電流導入導体3の先端部側に支持された電極2を包囲部1aの内部に臨むように封装することができる。
【0064】
高融点フリットガラスを用いてシール部4を形成して透光性気密容器1を封止するには、一般的な方法として採用されているように、小径筒部1bの端部において、電流導入導体3の周囲にシール部4用の高融点フリットガラスのペレットを施与して、加熱溶融させることができる。そうすると、高温で溶融した高融点フリットガラスが小径筒部1bの内面と電流導入導体3との間に形成されるわずかな隙間に進入して固化するので、封止部4が形成される。なお、シール部4は、電流導入導体3の封止に機能する部位を被覆するので、電流導入導体3がニオブのように耐ハロゲンに劣る物質で構成されていても問題ない。
【0065】
なお、高融点フリットガラスを用いてシール部4を形成する場合、溶解した当初の段階では非晶質であるが、加熱時間が長くなると、結晶化が生じる。本発明者の調査によれば、高融点フリットガラスを用いてシール部4を形成した高圧放電ランプにおいて、シール部4の結晶化の進行度合いがランプ寿命に大きく影響する。高融点フリットガラスの結晶化は、主に結晶の核となりやすい小径筒部1bの内部に露出している内表面から進行する。そして、結晶化部分は、熱履歴が加わることにより、粒界破断が生じやすい。粒界破断が進むと、リークパスが形成されて透光性気密容器1内のハロゲン化物による侵食が進み、遂にはリーク発生に至る。
【0066】
そこで、シール部4の結晶化の抑制法を下記に示す。なお、以下の抑制法は、単独または併用することができる。
【0067】
1.シール部4の形成時間を短縮する。具体的には、シール部形成中の雰囲気圧力を透光性気密容器1の内部より高くして溶融した高融点フリットガラスの小径筒部1bの内部への流れ込みを促進する。
【0068】
2.シール部形成時の熱源としてレーザーを用いる。
【0069】
これに対して、シール部4が小径筒部の透光性多結晶アルミナセラミックスと電流導入導体3の固溶体からなる場合には、して加熱溶融して封止するには、外部から電極マウントを小径筒部内に挿入し、電流導入導体3に対向する小径筒部の外部から封止予定部をレーザー照射すると、最初に電流導入導体3が加熱されて温度上昇する。その際の熱が内部側から小径筒部1bに伝導し、小径筒部1bが電流導入導体3とともに温度上昇して溶融する。この溶融により、透光性多結晶アルミナセラミックスと電流導入導体3の金属やサーメットなどとの固溶体が形成され、小径筒部1bに直接封着してシール部4が形成される。
【0070】
次に、イオン化媒体について説明する。
【0071】
イオン化媒体は、少なくとも始動ガスおよび発光に寄与するイオン化媒体を含んでいる。なお、発光に寄与する媒体は、所望により始動ガスがこれを兼ねていていもよい。また、好ましくはランプ電圧形成用のイオン化媒体を含んでいる。
【0072】
始動ガスは、緩衝ガスとしても作用し、キセノン(Xe)、アルゴン(Ar)およびネオン(Ne)などのグループの一種を単独で、または複数種を混合して封入することができる。希ガスの封入圧力は、高圧放電ランプの用途に応じて適宜設定することができる。
【0073】
希ガスの中でもキセノンは、その原子量が他の希ガスより大きいため、熱伝導率が相対的に小さいので、これを0.6気圧以上、好適には5気圧以上封入することにより、点灯直後のランプ電圧形成に寄与するとともに、ハロゲン化物の蒸気圧が低い段階で白色の可視光放射を行って光束立ち上がりに寄与するので、前照灯用の高圧放電ランプの場合に効果的である。この場合、キセノンの好ましい封入圧は、6気圧以上、より好適には8〜16気圧の範囲である。このため、点灯直後からの光束立ち上がりおよび光色立ち上がりに寄与して点灯直後から自動車前照灯用のHID光源としての白色発光の規格を満足することができる。
【0074】
発光に寄与する媒体は、発光金属のハロゲン化物を主体とする他、所望により発光金属をそのまま封入することも許容される。発光金属は、本発明において、特段限定されないが、一好適例としてツリウム(Tm)ハロゲン化物を主体として封入することができる。
【0075】
ツリウムハロゲン化物は、水銀フリーランプとして好適な発光金属のハロゲン化物であり、放電により主として可視光を放射する。また、ツリウムハロゲン化物は、透光性気密容器1内に封入されるイオン化媒体中最大封入比率、好適にはこの条件に加えて40〜90質量%で封入することができる。そして、ツリウムハロゲン化物は、後述するランプ電圧形成用のイオン化媒体であるところの蒸気圧が高くて、可視光発光の少ない金属のハロゲン化物との共存下において、それ自体電極2、2間の電位傾度、したがってランプ電圧を高くする作用を有している。
【0076】
また、ツリウムハロゲン化物は、その蒸気圧が低いが、ツリウムの発光のピークが視感度曲線のピークに一致するので、発光効率を向上させるのに極めて効果的な発光金属である。ツリウムの発光強度は、高圧放電ランプの点灯中の動作温度に大きく依存しており、その最冷部温度が約800℃となる条件下で効率が最大になる。透光性気密容器1が透光性セラミックスからなる場合、最冷部温度が約800℃となる条件下での動作に全く問題がなく、しかも耐薬品性が強いので、本発明の場合、ツリウムハロゲン化物の封入は、ランプ寿命および光束維持率に悪影響を与えない。すなわち、ツリウムハロゲン化物は、透光性セラミックスからなる気密容器を用いる高圧放電ランプに好適な発光金属ハロゲン化物である。
【0077】
上記以外に封入することが許容されるその他の発光金属のハロゲン化物としては以下がある。
【0078】
1.(アルカリ金属) アルカリ金属を封入する場合には、透光性気密容器内に封入されている全ての金属ハロゲン化物に対して10質量%未満の範囲内で許容される。アルカリ金属の封入比率が10質量%以上になると、ランプ電圧が低下しやすくなるので、ランプ電圧の形成の観点からは好ましくない。しかしながら、アルカリ金属の封入比率が10質量%未満であれば、ランプ電圧の低下は最小限に抑制される一方、発光効率、ランプ寿命改善および光色調整、特に色偏差改善が可能になる。このような観点から、所要のランプ電圧を確保できる場合には、上記の範囲内であれば封入が許容される。なお、好ましくは2〜8質量%、より好ましくは3〜7質量%、なお一層好ましくは4〜6質量%である。また、アルカリ金属としては、主としてナトリウム(Na)、しかし所望によりまたは/およびセシウム(Cs)およびリチウム(Li)の少なくとも一方を選択的に封入することができる。
【0079】
ナトリウム(Na)は、主として発光効率向上に寄与する。セシウム(Cs)は、放電アーク温度の適正化による寿命特性の向上に寄与する。リチウム(Li)は、赤色演色性の改善に寄与する。
【0080】
2.(その他の希土類金属のハロゲン化物) ツリウムハロゲン化物に加えて以下の金属ハロゲン化物を主として発光金属のハロゲン化物として封入することができる。プラセオジム(Pr)、セリウム(Ce)、ホルミウム(Ho)、ネオジム(Nd)およびサマリウム(Sm)からなるグループの希土類金属の一種または複数種のハロゲン化物である。
【0081】
上記希土類金属は、ツリウムハロゲン化物に次いで発光金属として有用であり、所定量以下の封入比率で封入することが許容される。すなわち、上記希土類金属は、そのいずれも視感度特性曲線のピーク波長付近で無数の輝線スペクトルを有するため、発光効率向上に寄与することができる。
【0082】
また、上記希土類金属のハロゲン化物を添加する場合には、ツリウム(Tm)ハロゲン化物を含めて全イオン化媒体に対する封入比率が50質量%以上になるように構成するのが好ましい。
【0083】
3.(タリウムまたは/およびインジウムのハロゲン化物) タリウム(Tl)または/およびインジウム(In)のハロゲン化物は、所望の演色性および/または色温度などを得るなどの目的で副成分として選択的に封入することが許容される。また、インジウムは、ランプ電圧形成用のイオン化媒体としても効果的である。
【0084】
タリウム(Tl)ハロゲン化物は、波長535nmに輝線を有するタリウムの緑色成分を発光中に加えることができる。なお、一般的に採用し得るタリウムハロゲン化物の封入比率範囲は、封入される全ての金属ハロゲン化物に対して30質量%未満であるのが望ましい。タリウムハロゲン化物の封入比率範囲が30質量%以上になると、発光効率の低下が顕著になる。なお、好適には15質量%未満の範囲で封入するのがよい。
【0085】
また、インジウム(In)ハロゲン化物を添加することにより、ハロゲン化物の発光中に青色成分を増加させることができるとともに、ランプ電圧形成にも寄与する。
【0086】
以上説明した各発光金属ハロゲン化物のハロゲンとしては、適度の反応性を有していることからヨウ素が好適であるが、所望により臭素および塩素のいずれかでもよく、またヨウ素、臭素および塩素のうち所望の二種以上を用いてもよい。
【0087】
次に、ランプ電圧形成用のイオン化媒体は、水銀フリーの高圧放電ランプを得る場合には、前記のように蒸気圧が高くて、可視光発光の少ない金属のハロゲン化物を封入するのがよい。この場合、水銀(Hg)は、全く含まないのが環境負荷物質削減のために好ましいことであるが、不純物程度に含んでいても許容される。また、水銀入りの高圧放電ランプを得る場合には、水銀を封入する。
【0088】
また、水銀フリーの場合に、ランプ電圧形成用のイオン化媒体として封入するのが効果的な金属は、例えば次のとおりである。すなわち、亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、アンチモン(Sb)、ベリリウム(Be)、レニウム(Re)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)からなるグループから選択された一種または複数種の金属である。上記の各金属のハロゲン化物は、蒸気圧が高く、電子との衝突断面積が大きくて、しかもイオン化ポテンシャルが大きいため、前述の透光性気密容器1との組み合わせにおいて、水銀に代わるランプ電圧形成用のイオン化媒体として好適な物質である。
【実施例1】
【0089】
実施例1は、図1に示す高圧放電ランプについてのもので自動車前照灯用である。
【0090】
透光性気密容器 :一体成形、
包囲部:長さ8mm、その直線部長5.5mm、外径4.3mm、内径2.9mm、
上部の肉厚1.2mm、その他の肉厚0.55mm、tx/ty=0.46
(54%薄肉化した。)
両側部の直線透過率50%(上部は20%)、平均粒径0.9μm
小径筒部:内径0.7mm、肉厚0.5mm、長さ12mm、直線透過率20%
一対の電極 :電極間距離4.2mm
イオン化媒体 :TmI3−TlI−NaI−ZnI2=(50:20:20:10質量%):3mg、
Xe10気圧
配光特性 :規格を満足した。

[比較例1]
透光性気密容器 :一体成形、
包囲部:長さ8mm、その直線部長5.5mm、外径4.3mm、内径2.9mm、肉厚0.7mm、
直線透過率40%、平均粒径0.9μm
小径筒部:内径0.7mm、肉厚0.5mm、長さ12mm、直線透過率20%
その他の仕様は、実施例1と同じ。
【0091】
配光特性 :規格を満足した。

【実施例2】
【0092】
透光性気密容器 :一体成形、
包囲部:長さ8mm、その直線部長5.5mm、外径4.3mm、内径2.9mm、
上部の肉厚0.8mm、両側部の肉厚0.55mm、tx/ty=0.69
(31%薄肉化した。)
上記両側部の直線透過率20%(上部は10%)、平均粒径1.3μm
小径筒部:内径0.7mm、肉厚0.5mm、長さ12mm、直線透過率5%
入力電力 :30W
配光特性 :規格を満足した。
【0093】
その他の仕様は、実施例1と同じ。

【実施例3】
【0094】
透光性気密容器 :一体成形、
包囲部:長さ8mm、その直線部長5.5mm、外径4.3mm、内径2.9mm、
上部の肉厚0.8mm、両側部の肉厚0.48mm、tx/ty=0.6
(40%薄肉化した。)
両側部の直線透過率40%(上記上部は10%)、平均粒径1.3μm
小径筒部:内径0.7mm、肉厚0.5mm、長さ12mm、直線透過率5%
その他の仕様は、実施例1と同じ。

【実施例4】
【0095】
透光性気密容器 :一体成形、
包囲部:長さ8mm、その直線部長5.5mm、外径4.3mm、内径2.9mm、
上部の肉厚0.8mm、両側部の肉厚0.24mm、tx/ty=0.3
(70%薄肉化した。)
両側部の直線透過率60%(上部は10%)、平均粒径1.3μm
小径筒部:内径0.7mm、肉厚0.5mm、長さ12mm、直線透過率5%
その他の仕様は、実施例1と同じ。

図3は、透光性気密容器の包囲部の肉厚の比tx/tyと水平方向両側部の直線透過率および透光性気密容器の耐圧の関係を実験により求めたグラフである。図において、横軸はtx/ty(%)を、縦軸は左側が両側部の直線透過率を意味する側面透過率相対値(◆)、右側が透光性気密容器の耐圧を意味する100h破裂率%(■)を、それぞれ示す。
【0096】
図から理解できるように、比tx/tyが数式:25≦比tx/ty≦90を満足する範囲が好ましいことを示している。なお、40≦比tx/ty≦60を満足する範囲がより一層好ましい。
【0097】
図4は、第1の発明の高圧放電ランプを実施するためのその他の形態を示す概念的端面輪郭図である。なお、図2と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0098】
第2の形態は、図中の(a)に示すように、透光性気密容器1の包囲部1aの外面が円形で、内面が、長軸が水平方向に沿っている同心の楕円形である。
【0099】
第3の形態は、図中の(b)に示すように、透光性気密容器1の包囲部1aの外面が、長軸が鉛直方向に沿っている楕円形で、内面が同心の円形である。
【0100】
第4の形態は、図中の(c)に示すように、透光性気密容器1の包囲部1aの外面が、長軸が鉛直方向に沿っている楕円形で、内面が、長軸が水平方向に沿っている同心の楕円形である。
【0101】
第5の形態は、図中の(d)に示すように、透光性気密容器1の包囲部1aの外面および内面がそれぞれ同心の円形であるが、外面の両側面部が鉛直方向に沿ってカットされている。
【0102】
第6の形態は、図中の(e)に示すように、透光性気密容器1の包囲部1aの外面が、長軸が鉛直方向に沿っている楕円形で、内面が円形であるが、外面の楕円形に対して下方に偏心している。
【0103】
第7の形態は、図中の(f)に示すように、透光性気密容器1の包囲部1aの外面が、長軸が鉛直方向に沿っている楕円形で、内面が、長軸が水平方向に沿っている楕円形であるが、外面の楕円形に対して下方に偏心している。
【0104】
図5は、第1の発明の高圧放電ランプを実施するための第8の形態を示す正面断面図である。図において、図1と同一部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0105】
本形態は、図1に示す第1の形態の高圧放電ランプが発光管ITとなり、外管OTの内部に外気に対して気密に収納された構成である。なお、発光管ITと外管OTとは同心関係に配置されている。
【0106】
外管OTは、両端が封着金属箔5を気密に埋設して封止されている。封着金属箔5の両端には発光管ITから管軸方向の両側へ延在する一対の内部導入線6、6および外部導入線7、7がそれぞれ溶接されている。なお、内部導入線6は電流導入導体3に接続して、発光管ITを支持している。また、外管OTの材質としては、硬質ガラス、半硬質ガラスおよび石英ガラスなどが一般である。しかし、要すれば、発光管ITと同じ透光性セラミックス製の外管OTであってもよい。この場合、選択した材質に最適な封止構造を採用することができる。なお、図に示す外管OTは、硬質ガラスからなり、その両端部がピンチシールされていて、内部が気密に封止されている。上記ピンチシールの部分には、封着金属箔5が気密に埋設されていて、封着金属箔5の両端には発光管ITから管軸方向の両側へ延在する一対の内部導入線6、6および外部導入線7、7がそれぞれ溶接されている。なお、内部導入線6は電流導入導体3に接続している。
【0107】
外管OTの内面と、発光管ITの外面との径方向の距離Gを0.4〜3.5mm、好適には2.8mm以下に設定するのが好ましい。
【0108】
外管OT内の雰囲気としては、真空または不活性ガス、例えば窒素やアルゴンなどを封入することができる。
【0109】
また、外管OTには、常法にしたがって図示しない既知の各種口金を装着することが許容される。
【0110】
図6は、第2の発明の高圧放電ランプを実施するための一形態を示す横断面図である。図において、図5と同一部分については同一符号を付して説明を省略する。
【0111】
本形態は、発光管ITを外管OTの内部に収納するとともに、外管OTの管軸Xが発光管ITの管軸Xに対して平行で、かつ上方に偏心して配置されている。
【0112】
発光管ITは、透光性気密容器1の包囲部1aの肉厚が全周にわたり一定であることを許容するものである。
【0113】
そうして、第2の発明においては、外管OTと発光管ITが上述のように偏心していることにより、包囲部1aの上部1aTと外管OTの上部内面との間の距離が大きくなるから、外管OTの内面からの熱反射による包囲部の上部1aTへの保温効果が同心関係に配置される比較例と比較して低減する。反対に、包囲部1aの下部1aBと外管OTの下部内面との間の距離が小さくなるから、外管OTの内面からの熱反射による下部1aBへの保温効果が同心関係に配置される比較例と比較して増大する。その結果、包囲部の鉛直方向上部と同下部の温度差が小さくなり、温度分布が相対的に均一化するので、温度分布不均一に起因する破裂を防止することができる。
【実施例5】
【0114】
実施例5は、図6に示す高圧放電ランプについてのものである。
【0115】
[発光管]
透光性気密容器:包囲部の内径3.0mm、肉厚0.8mm
放電媒体 :TmI3−TlI−NaI−ZnI2=(50:20:20:10質量%):3mg、
Xe10気圧
放電媒体 :
[外管] :硬質ガラスからなり、内径7mm、肉厚1.0mmであり、外管の管軸
より1.0mm下方に管軸を偏心させて発光管を支持している。
【0116】
入力電力 :30W

[比較例2]
発光管と外管が同心関係にある点を除けば実施例5と同じ仕様である。

図7は、実施例5と比較例2の高圧放電ランプについて点灯試験を行ったときの相対破裂発生時間を示すグラフである。図において、横軸は相対破裂発生時間を、縦軸は本数(P)を、それぞれ示す。また、図中、斜線のピッチの細かい棒グラフが実施例5、斜線のピッチの粗い棒グラフが比較例2のデータである。なお、点灯試験は、実施例5と比較例2のそれぞれについて10本を試験に供した。
【0117】
図から理解できるように、実施例5の方が比較例2より破裂までの点灯時間が総じて長く、したがって長寿命である。
【0118】
図8は、本発明の高圧放電ランプを点灯するための高圧放電ランプ点灯装置を示す回路図である。図において、高圧放電ランプ点灯装置は、直流電源DC、昇圧チョッパBUT、インバータFBIおよびイグナイタIGからなり、第1の発明の各形態および第2の発明の形態のいずれかの高圧放電ランプMHLを点灯する。
【0119】
直流電源DCは、電池電源、整流化直流電源などからなる。
【0120】
昇圧チョッパBUTは、直流電源DCから供給される直流電圧を所要の電圧まで昇圧し、かつ平滑化して後述するインバータFBIに入力電圧を供給する。
【0121】
インバータFBIは、フルブリッジ形インバータからなり、その出力端間に矩形波交流電圧を出力する。
【0122】
イグナイタIGは、高電圧パルスを発生して高圧放電ランプMHLを絶縁破壊して瞬時に始動させる。
【0123】
そうして、高圧放電ランプMHLが冷却状態のときには、その始動直後の数秒間定格ランプ電力の約2倍以上、例えば2.5倍程度で点灯し、その徐々に低減させて安定点灯時の定格ランプ電力に移行させるように制御される。
【0124】
始動器12Bは、高圧放電ランプ13の始動時に高電圧パルスを出力して高圧放電ランプ13に印加して、これを瞬時に始動させる。
【0125】
図9は、本発明の照明装置を実施するための一形態としての自動車前照灯を示す概念図である。図において、11は前照灯本体、12は高圧放電ランプ点灯装置、13は高圧放電ランプである。
【0126】
前照灯本体11は、容器状をなし、内部に反射鏡11a、前面にレンズ11bおよび図示を省略しているランプソケットなどを備えている。
【0127】
高圧放電ランプ点灯装置12は、図7に示す回路構成を備えていて、主点灯回路12Aおよび始動器12Bを具備している。
【0128】
高圧放電ランプ13は、上記ランプソケットに装着されて点灯する。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】第1の発明の高圧放電ランプを実施するための第1の形態を示す正面断面図
【図2】同じく透光性気密容器の拡大横端面図
【図3】透光性気密容器の包囲部の肉厚の比tx/tyと水平方向両側部の直線透過率の関係を実験により求めたグラフ
【図4】第1の発明の高圧放電ランプを実施するためのその他の形態を示す概念的端面輪郭図
【図5】第1の発明の高圧放電ランプを実施するための第8の形態を示す正面断面図
【図6】第2の発明の高圧放電ランプを実施するための一形態を示す横断面図
【図7】実施例5と比較例2の高圧放電ランプについて点灯試験を行ったときの相対破裂発生時間を示すグラフ
【図8】本発明の高圧放電ランプ点灯装置を実施するための一形態を示すブロック回路図
【図9】本発明の照明装置を実施するための一形態としての自動車前照灯を示す概念図
【符号の説明】
【0130】
1…透光性気密容器、1a…包囲部、1a1…直線部、1aB…鉛直方向下部、1aS…水平方向側部、1aT…鉛直方向上部、1b…小径筒部、1c…放電空間、2…電極、3…電流導入導体、4…シール部、IT…発光管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性多結晶アルミナセラミックスからなり、水平方向両側の主要部の肉厚が鉛直方向上部の肉厚に比較して薄くなっていて当該部分の直線透過率が20%を超えているとともに内部に放電空間が形成される包囲部および包囲部に連通する小径筒部を備えた透光性気密容器と;
透光性気密容器の小径筒部の内部に挿入して封着された電流導入導体と;
電流導入導体の先端側に接続して透光性気密容器内に封装された電極と;
透光性気密容器内に封入されたイオン化媒体と;
を具備していることを特徴とする水平点灯される高圧放電ランプ。
【請求項2】
透光性気密容器の包囲部は、その主要部において、鉛直方向上部の肉厚をtyとし、水平方向両側部の肉厚をtxとしたとき、比tx/ty(%)が数式:25≦tx/ty≦90を満足することを特徴とする請求項1または2記載の高圧放電ランプ。
【請求項3】
透光性多結晶アルミナセラミックスからなり、主要部の直線透過率が20%を超えているとともに内部に放電空間が形成される包囲部および包囲部に連通する小径筒部を備えた透光性気密容器と、透光性気密容器の小径筒部の内部に挿入して封着された電流導入導体、電流導入導体の先端側に接続して透光性気密容器内に封装された電極および透光性気密容器内に封入されたイオン化媒体を備えた発光管と;
発光管を内部に収納するとともに、管軸が発光管の管軸に対して平行で、かつ上方に位置する外管と;
を具備していることを特徴とする水平点灯される高圧放電ランプ。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一記載の高圧放電ランプと;
高圧放電ランプを点灯する点灯回路と;
を具備していることを特徴とする高圧放電ランプ点灯装置。
【請求項5】
照明装置本体と;
照明装置本体に水平点灯するように配設された請求項1ないし3のいずれか一記載の高圧放電ランプと;
高圧放電ランプを点灯する点灯回路と;
を具備していることを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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