説明

高圧放電ランプの封止方法

【課題】透光性セラミックス気密容器および電極マウントを、回転させることなくレーザ光を照射して封止する高圧放電ランプの封止方法を提供する。
【解決手段】高圧放電ランプの封止方法は、透光性セラミックス気密容器1の小径筒部1b内に、電極および外部リード線が接続された電極マウントMEを、外部リード線の基端部が外部へ露出するように小径筒部内に挿入し、小径筒部の端部にフリットガラスGを施与し、かつ封止する小径筒部が上になるように透光性セラミックス気密容器をほぼ垂直に支持する第1の工程と、小径筒部の軸方向に離間した位置からレーザ光をフリットガラスG、小径筒部1bおよび電極マウントMEに照射することによってガラスフリットを加熱溶融させ、溶融したガラスフリットが小径筒部および外部リード線の間の隙間に進入し固化して小径筒部および外部リード線を封止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性セラミックス放電容器を備えた高圧放電ランプの封止方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線ランプおよび反射鏡により赤外線を集光させ、赤外線が集光する領域に放電灯の封止部が位置するよう配置して放電灯を封止する方法は既知である(特許文献1参照。)。特許文献1によれば、透光性セラミックスからなる発光管の端面に封着リングを載置した封止部に赤外線を集光させると、封着リングを溶融し、固化して発光管と封止部材とが気密に封着する。
【0003】
ところで、高圧放電ランプ製造の所要時間を短縮するには、封止時間を短縮するのが効果的である。封止時間を短縮するには、封止部の温度上昇時間を短縮する必要がある。
【0004】
しかし、特許文献1に記載された従来技術では、赤外線の集光スポット径の縮小が困難である。集光スポット径が所望の程度まで縮小されていない状態で照射すると、封止時に封止予定部だけでなく発光管全体が加熱されてしまう。このような場合、発光管内に充填したイオン化媒体の温度が上昇するので、その蒸気圧が高くなる。したがって、2次側の封止において、発光管内の気密を確保する際には、イオン化媒体の蒸気圧の上昇により、小径筒部に挿入した電極マウントが押し出される虞がある。この傾向は、低ランプ電力の高圧放電ランプほど顕著である。
【0005】
上述の問題を解決する封止手段としてレーザを用いる技術が知られている(特許文献2参照。)。特許文献2においては、封止部材であるところの発光管および電極マウントの温度上昇を均一にするために、上記封止部材を回転させている。
【0006】
【特許文献1】特開平09−092156号公報
【特許文献2】特許第3461756号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高圧放電ランプの性能向上を図るためには、封止時における発光管周囲の雰囲気中の不純物を低減する必要がある。そうしないと、発光管周囲の雰囲気中の不純物までもが発光管内に封入されてしまう。
【0008】
ところが、特許文献2に記載された封止方法では、封止設備に回転機構が存在するために、雰囲気中の不純物濃度が増加しやすいという問題がある。また、気密に保たれた雰囲気中において封止部材を回転させるための機構が複雑になり、高圧放電ランプの製造コストの上昇要因になる。
【0009】
本発明は、透光性セラミックス気密容器を回転させることなくレーザ光を照射して封止する高圧放電ランプの封止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の高圧放電ランプの封止方法は、内部に放電空間が形成される包囲部および包囲部に連通して延在する小径筒部を備えた透光性セラミックス気密容器の小径筒部内に、電極および外部リード線が接続された電極マウントを、外部リード線の基端部が外部へ露出するように小径筒部内に挿入し、小径筒部の端部にフリットガラスを施与し、かつ封止する小径筒部が上になるように透光性セラミックス気密容器をほぼ垂直に支持する第1の工程と;小径筒部の軸方向に離間した位置からレーザ光をフリットガラス、小径筒部および電極マウントに照射することによってフリットガラスを加熱溶融させ、溶融したフリットガラスが小径筒部および外部リード線の間の隙間に進入し固化して小径筒部および外部リード線を封着することにより透光性セラミックス気密容器を封止する第2の工程と;具備していることを特徴としている。
【0011】
本発明においては、以下の構成であることを許容する。
【0012】
〔第1の工程について〕 第1の工程は、未封止の透光性セラミックス気密容器に電極マウントを挿入して所定位置に支持する工程である。
【0013】
(透光性セラミックス気密容器について) 本発明において、透光性セラミックス気密容器は、少なくとも一部が放電によって発生した所望波長域の可視光を外部に導出することが可能な透光性セラミックスにより形成されている。なお、透光性セラミックスとしては、透光性アルミナ、イットリウム−アルミニウム−ガーネット(YAG)、イットリウム酸化物(YOX)と、多結晶非酸化物、例えばアルミニウム窒化物(AlN)などの多結晶または単結晶のセラミックスなどを用いることができる。
【0014】
また、透光性セラミックス気密容器は、包囲部および小径筒部を備えている。包囲部は、内部が空洞で、そこに放電空間が形成される。包囲部は、その放電空間が適当な形状、例えば球状、楕円球状、ほぼ円柱状などの形状をなしている。放電空間の容積は、高圧放電ランプの定格ランプ電力、電極間距離などに応じてさまざまな値が選択され得る。例えば、液晶プロジェクタ用ランプの場合、1cc以下にすることができる。自動車前照灯用ランプの場合、0.1cc以下にすることができる。また、一般照明用ランプの場合、定格ランプ電力に応じて1cc以上および以下のいずれにすることもできる。
【0015】
小径筒部は、包囲部に連通して延在している。一般的には、包囲部の管軸方向の両端から一対の小径筒部が形成される。しかし、所望により単一の小径筒部を備えた構造であってもよい。
【0016】
また、小径筒部は、その端部部分で外部リード線と一緒に封着されて透光性セラミックス気密容器の封止部を形成することで気密な発光管を形成するのに寄与する。すなわち、封止部は、包囲部を封止するとともに、電極の軸部がここに支持され、かつ外部リード線を経由して点灯回路から電極へ電流を気密に導入するのに寄与する手段となる。なお、小径筒部の「小径」とは、小径筒部の内径が包囲部の内径より小さいことを示している。この意味において、小径筒部は、必ずしも細長く形成されていることを要しない。
【0017】
さらに、小径筒部は、所望によりその内部に挿通された電極軸部との間において、キャピラリーと称されるわずかな間隙を形成するための手段として機能するように形成することができる。しかし、所望によりキャピラリーが形成されない構造にすることができる。この場合、小径筒部の長さをキャピラリーを形成する場合に比較して短縮することが可能になる。
【0018】
(電極マウントについて) 電極マウントは、封止に先立って予め電極および外部リード線が直接または間接的に直列に接続された構体である。そして、透光性セラミックス気密容器の小径筒部内の所定位置に挿入された状態で透光性セラミックス気密容器が封止される。
【0019】
電極は、透光性セラミックス気密容器内に封装されて放電空間に離間して臨むように配設される。そして、一般的には一対の電極が用いられる。このような場合、一対の電極の間に形成される電極間距離は、液晶プロジェクタなどの場合、好適には2mm以下であり、0.5mmのものであってもよい。前照灯用としては中心値で4.2mmが規格化されている。一般照明用ランプの場合、小形で電極間距離の小さいものでは6mm以下、中形ないし大形では6mm以上に設定することができる。
【0020】
また、電極の構成材料としては、耐火性で、導電性の金属、例えば純タングステン(W)、ドープ剤(例えばスカンジウム(Sc)、アルミニウム(Al)、カリウム(K)およびケイ素(Si)などのグループから選択された一種または複数種)を含有するドープドタングステン、酸化トリウムを含有するトリエーテッドタングステン、レニウム(Re)またはタングステン−レニウム(W−Re)合金などを用いて形成することができる。そして、単一種の上記金属材料で電極を形成してもよいし、複数種の上記金属材料を用いてもよい。
【0021】
さらに、小形の高圧放電ランプの場合、直棒状の線材や先端部に径大部を形成した線材を電極として用いることができる。中形ないし大形の高圧放電ランプに用いる電極の場合、電極軸の先端部に電極構成材製のコイルを巻回したりすることができる。なお、一対の電極は、交流で作動する場合、同一構造とするが、直流で作動する場合、一般に陽極は温度上昇が激しいから、陰極より放熱面積の大きい、したがって主部が太いものを用いることができる。
【0022】
外部リード線は、高圧放電ランプの封止に際してその基端部が小径筒部から外部へ露出するように電極マウントが透光性セラミックス気密容器の小径筒部の内部に挿入される。そして、高圧放電ランプの電極へ電流を供給する際の受電端として機能し、電極を支持する手段として機能し、かつ透光性セラミックス気密容器を封止する際の封着の協働部材として機能する。
【0023】
また、外部リード線は、上記の各機能を首尾よく担当するために、導電性にして熱膨張率が透光性セラミックス気密容器の小径筒部の構成材料および電極のそれに接近している耐火性の材料を用いて形成するのが望ましい。しかし、小径筒部の構成材料と電極の熱膨張率の間には無視できない程度の差があるのが一般的であるから、それらの間の熱膨張率差を緩和させるために、所望により中間の熱膨張率を有する一種または複数種の中間部材を介在させて外部リード線を構成することができる。例えば、小径筒部との間で封止を行う部位と電極に接続する部位とで異なる材質の部材を用いることができる。また、これらの部材間に、それらの熱膨張率に対して中間の熱膨張率を有する部材を介在させることもできる。
【0024】
さらに、外部リード線の構成材料として、例えばニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、白金(Pt)およびモリブデン(Mo)などの金属やこれらの導電性金属とセラミックスを混合して焼結したサーメットなどを用いることができる。
【0025】
一方、電極マウントは、封止に先立ち透光性セラミックス気密容器の小径筒部内に所定の位置まで挿入される。これを容易、かつ確実にするために、所望により外部リード線の小径筒部の端面に対向する位置の側面に突起を形成して、当該突起が小径筒部の端面に係止するように構成することができる。
【0026】
(フリットガラスについて) フリットガラスは、透光性セラミックス気密容器の小径筒部と電極マウントとの間を封着する封着材である。封止に際してフリットガラスが所定の位置に載置されるように予め所望形状に成形することができる。例えば、リング状に成形して、小径筒部から外部へ突出して露出する外部リード線に挿通した状態で小径筒部の端面に載置させることができる。
【0027】
また、フリットガラスは、セラミックス封止用コンパウンドであり、例えばSiO−Al−Dyを主成分とする組成のものなどを用いることができる。
【0028】
さらに、フリットガラスは、加熱により溶融して小径筒部と外部リード線との間の隙間に進入して固化することにより、小径筒部と外部リード線との間を封着することによって透光性セラミックス気密容器を封止する。
【0029】
(透光性セラミックス気密容器の支持について) 第1の工程において、透光性セラミックス気密容器は、封止しようとする小径筒部を上にしてほぼ垂直に支持される。なお、ほぼ垂直に支持するとは、垂直に支持するのが望ましいが、封着の信頼性に影響しない程度であれば多少傾斜しても許容されるという意味である。透光性セラミックス気密容器を所定の位置に支持するための具体的な手段は特段限定されない。例えば、透光性セラミックス気密容器を収納する凹部を形成した透光性セラミックス気密容器支持台を用いたり、小径筒部をチャックするチャック機構を用いたりすることができる。
【0030】
〔第2の工程について〕 第2の工程は、レーザ光をフリットガラス、小径筒部および電極マウントに照射することによってフリットガラスを加熱溶融させて透光性セラミックス気密容器を封止する工程である。この工程においては、所望により保温筒を併用することができる。
【0031】
(レーザ光について) レーザビームすなわちレーザ光は、上記のようにフリットガラスを加熱溶融するとともに、小径筒部と外部リード線の封止予定部を加熱するための手段である。本発明においては、小径筒部からそのほぼ軸方向に適当な距離離間した位置からレーザ光を照射して上記の各部材を加熱するのが特徴的構成である。なお、透光性セラミックス気密容器の管軸とレーザ光の光軸との間の不一致、すなわちずれの許容される程度は、透光性セラミックス気密容器の小径筒部の端面におけるレーザ光の照射径の範囲内までである。
【0032】
また、レーザ光は、透光性セラミックス気密容器の構成材料に対して50%以上の全透過率の発振波長を有するのが好ましい。この条件を満足するレーザとしては、例えば発振波長1.064μmのYAGレーザなどがある。しかし、発振波長10.6μmのCOレーザを用いれば封止予定部の表面を中心とする加熱を行うことができる。
【0033】
そうして、透光性セラミックス気密容器の構成材料に対して50%以上の全透過率の発振波長を有するレーザ光を照射することにより、被封着予定部の全体をその内部まで加熱することができる。このため、小径筒部の内部に位置する外部リード線をも良好に加熱することができる。
【0034】
また、レーザ光は、フリットガラスの載置位置に対してデフォーカスされている態様において照射されるように構成されているのが好ましい。この態様において、フォーカス位置は、フリットガラスの載置位置の前後いずれにあってもよい。しかし、好ましくは上記態様に加えてレーザ光のフォーカス位置が、フリットガラスの載置位置より背後側すなわち透光性セラミックス気密容器の包囲部側に存在する態様であるのがよい。
【0035】
そうして、レーザ光を、上記のようにデフォーカスした態様において照射することにより、被照射部におけるビーム断面積が大きくなって、被封着予定部の全体を均一に照射することができる。
【0036】
(レーザ照射ユニットについて) レーザ照射ユニットは、レーザ光を被封着予定部に向けて発射する手段であり、少なくともレーザ光発生部およびレーザヘッドを含んでいる。そして、レーザヘッドから被封着予定部に向けて出射するレーザ光を所望の位置にフォーカスすなわち合焦させることができる。また、レーザヘッドは、レンズ、反射鏡などの光学制御手段を備えているが、所望により照射対象を観察するためのCCDカメラなどを具備していることができる。
【0037】
また、レーザ照射ユニットは、そのレーザ発生部とレーザヘッドとを離間した状態に分けて構成することができる。この場合、レーザ発生部は、例えばYAGレーザ発振装置を内蔵し、発生したレーザ光を光ファイバなどの伝送手段を介してレーザヘッドに伝送する。レーザヘッドは、被封着予定部に向けてレーザ光を出射しやすくするために容易に移動させることができるように構成されている。
【0038】
(保温筒の使用について) 所望により、封止に際して小径筒部の被封着予定部近傍の周囲に保温筒を配置してレーザ光を照射する態様を採用することができる。保温筒は、レーザ光のエネルギーを吸収する赤外線吸収性物質からなり、封止の際の所要部位すなわち透光性セラミックス気密容器の小径筒部の端部近傍を、あるいは加えてその内部に挿入されている外部リード線およびフリットガラスも、均一な温度分布に加熱するように配設される。
【0039】
したがって、保温筒は、小径筒部の外周を包囲する筒体を構成している。また、保温筒は、上記のように被封着予定部を均一に加熱するための手段であるから、間接的な加熱を行う加熱筒であるともいえる。
【0040】
また、保温筒は、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、二オブ(Nb)、イリジウム(Ir)、アルミニウム(Al)およびシリコン(Si)などの金属を適宜選択的に用いて形成するのが好ましい。これらの金属は、透光性セラミックス気密容器の管軸方向から照射されたレーザビームを吸収して温度上昇しやすい。
【0041】
そうして、保温筒を上記位置に配置することにより、被封着部材の小径筒部の封止予定部を、あるいはこれに加えてフリットガラスおよび外部リード線も、封着する際の所要部位を均一に加熱するように作用する。このため、溶融したフリットガラスの透光性セラミックス気密容器の小径筒部内への流れ込みが迅速に行われ、良好な封止を短時間で形成するのに貢献する。このため、透光性セラミックス気密容器をレーザ照射ユニットに対して回転させなくても軸周り方向および軸方向に沿ったそれぞれの温度分布の均整度が向上する。特にレーザとして透光性セラミックスに対する透過率が高いYAGレーザを用いる場合には、保温筒の配設が効果的である。
【0042】
また、所望により保温筒に末広がりのテーパー部を形成することができる。これにより、透光性セラミックス気密容器の包囲部側に接近するにしたがい保温筒の部分の熱容量が増加していくので、小径筒部の軸方向における温度の均整度が一層向上する。
【0043】
あるいは、所望により保温筒の胴部の下部すなわち包囲部側の部分に小径筒部の軸から離間する方向へ突出するフランジ状の突起部を備えることができる。突起部は、胴部の全周にわたって形成してもよいし、部分的に形成してもよい。
【0044】
そうして、保温筒に突起部を形成することにより、保温筒の包囲部側の部分におけるレーザ光からの受熱量が増加するので、小径筒部の長さ方向における温度の均整度が一層向上する。
【0045】
〔その他の手段について〕 本発明においては、以上説明した手段に加えて以下の手段の一つまたは複数を所望により選択的に採用することができる。これにより、透光性セラミックス気密容器を備えた高圧放電ランプの封止を良好にしたり、作業性が向上したりする。
【0046】
1.(遮熱板について) 遮熱板は、封止時に小径筒部に装着されてレーザ光の照射エネルギーが透光性セラミックス気密容器の包囲部側へ到達して内部が温度過昇となるのを抑制する手段である。
【0047】
すなわち、透光性セラミックス気密容器の2次側封止の際に、レーザ光の照射エネルギーが透光性セラミックス気密容器の包囲部に到達すると、包囲部の内部に導入されているイオン化媒体の圧力が許容範囲を超えて増大しやすくなる。その結果、イオン化媒体の封入量が減少して、設計のとおりの電気特性および発光特性を有する高圧放電ランプを製造するのが困難になる。
【0048】
本態様においては、透光性セラミックス気密容器の2次側封止の際に、予め遮熱板を小径筒部に装着してから封止作業を行う。遮熱板は、耐火性物質、例えばタングステンなどの金属板からなり、中央に透孔が形成されている。そして、透孔を透光性セラミックス気密容器の封止しようとする小径筒部に嵌めて装着する。この際に遮熱板は、例えば包囲部の肩の部分で支持させることができる。
【0049】
そうして、本態様において、遮熱板は、レーザ光が包囲部側へ照射されるのを阻止するので、上述の不都合の発生が抑制され、設計のとおりのイオン化媒体が封入された高圧放電ランプを得ることができる。また、遮熱板は、前記保温筒を用いないで透光性セラミックス気密容器を封止する場合に特に有用である。
【0050】
2.(封着チャンバーについて) 封着チャンバーは、透光性セラミックス気密容器の封止の際に当該チャンバー内を所定の雰囲気に維持して、その内部に少なくとも封止予定部を収納しながら封止工程を実施できるようにするための手段である。透光性セラミックス気密容器の全体を封着チャンバー内に収納するように構成してもよいし、あるいは封止予定部のみを収納するように構成することもできる。また、封着チャンバーは、気密室、レーザ光の透過窓、排気機能およびガス導入機能を備えている。
【0051】
気密室は、透光性セラミックス気密容器の少なくとも封止予定部を内部に収納し、その内部を外気に対して気密を維持できる容器である。
【0052】
レーザ光の透過窓は、気密室の一部をなしていて、かつレーザ光を透過する機能を有している。したがって、透過窓は、少なくとも気密室の内部に収納されている透光性セラミックス気密容器の小径筒部の軸方向に正対する位置に配置されている。波長1.064μmのYAGレーザを用いて封止する場合には、石英ガラスを用いて透過窓を形成することができる。石英ガラスは、上記レーザ光に対して90%以上の透過率を有している。
【0053】
また、透過窓は、平板状をなしていてレーザ光が光学的に変化することなく透過できる態様において配設される。しかし、所望により透過窓にレンズ機能を付与することができる。そうすれば、レーザ光の焦点距離を封止のために所要の位置に移動させることができる。
【0054】
排気機能は、封着チャンバーの内部を排気する手段であり、後述するガス導入を行う前に予め排気機能を作用させる。
【0055】
ガス導入機能は、封着チャンバー内に所望のガスを導入する手段であり、一般的には透光性セラミックス気密容器内に封入しようとする希ガスを導入する。
【0056】
3.(グローブボックスについて) グローブボックスすなわちドライボックスは、封着チャンバー内に透光性セラミックス気密容器を大気中から出し入れするのにこれを用いることができる。この目的のために、封着チャンバーをグローブボックスに隣接して封着チャンバーを配置したり、グローブボックス内に封着チャンバーを配設したりすることができる。
【0057】
〔高圧放電ランプの構成例について〕 本発明により封止して製作される高圧放電ランプの構成例について説明する。なお、本発明に直接関係する構成部分については既に述べたので、その他の構成部分について一構成例を以下説明する。
【0058】
(イオン化媒体について) イオン化媒体は、第1および第2のハロゲン化物および希ガスを含んで構成することができる。しかし、所望により第2のハロゲン化物に代えて水銀を含んでいてもよい。
【0059】
第1のハロゲン化物は、少なくとも主成分としてツリウム(Tm)ハロゲン化物を含み、アルカリ金属ハロゲン化物を所定量以下とするのがよい。また、第1のハロゲン化物は、主として可視光の発光に寄与する金属のハロゲン化物により構成される。
【0060】
ツリウム(Tm)ハロゲン化物は、透光性セラミックス気密容器内に封入されている全ての金属ハロゲン化物に対して最大封入比率として封入されているものとする。また、ツリウムハロゲン化物は、後述する第2のハロゲン化物との共存下において、それ自体電極間の電位傾度、したがってランプ電圧を高くする作用を有していて、水銀フリーランプとして好適な発光金属のハロゲン化物である。ツリウムハロゲン化物のハロゲンとしては、適度の反応性を有していることからヨウ素が好適であるが、所望により臭素および塩素のいずれかでもよく、またヨウ素、臭素および塩素のうち所望の二種以上を用いてもよい。さらに、ツリウムは、その発光のピークが視感度曲線のピークに一致するので、発光効率を向上させるのに極めて効果的な発光金属である。
【0061】
アルカリ金属は、透光性セラミックス気密容器内に封入されている全ての金属ハロゲン化物に対して10質量%未満(0%を含む。)の範囲内で封入することが許容される。アルカリ金属の封入比率が10質量%以上になると、ランプ電圧が低下しやすくなるので、ランプ電圧の形成の観点からは好ましくない。しかしながら、アルカリ金属の封入比率が10質量%未満であれば、ランプ電圧の低下は最小限に抑制される一方、発光効率、ランプ寿命改善および光色調整、特に色偏差改善が可能になる。このような観点から、所要のランプ電圧を確保できる場合には、上記の範囲内であれば封入が許容される。なお、好ましくは2〜8質量%、より好ましくは3〜7質量%、なお一層好ましくは4〜6質量%である。また、アルカリ金属としては、ナトリウム(Na)、セシウム(Cs)およびリチウム(Li)のグループの一種または複数種を選択的に封入することができる。
【0062】
また、第1のハロゲン化物は、所望により以下の金属ハロゲン化物を封入することができる。
(1)プラセオジム(Pr)、セリウム(Ce)およびサマリウム(Sm)からなる希土類金属の一種または複数種のハロゲン化物
上記希土類金属は、ツリウムハロゲン化物に次いで発光金属として有用であり、所定量以下の封入比率で封入することが許容される。すなわち、上記希土類金属は、そのいずれも視感度特性曲線のピーク波長付近で無数の輝線スペクトルを有するため、発光効率向上に寄与することができる。
(2)タリウム(Tl)または/およびインジウム(In)のハロゲン化物
上記ハロゲン化物は、所望の演色性および/または色温度などを得るなどの目的で副成分として選択的に封入することが許容される。
【0063】
(第2のハロゲン化物) 第2のハロゲン化物は、主としてランプ電圧を形成する金属ハロゲン化物により構成され、例えばマグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、アンチモン(Sb)、ベリリウム(Be)、レニウム(Re)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)からなるグループから選択された一種または複数種の金属のハロゲン化物を主体として用いることができる。
【0064】
また、第2のハロゲン化物は、その封入比率が透光性セラミックス気密容器内に封入されている全ての金属ハロゲン化物に対して5〜20質量%でなければならない。封入比率が5質量%未満になると、ランプ電圧の形成が不十分になる。また、20質量%を超えると、ランプ電圧の形成は問題がないが、発光効率の低下が顕著になる。
【0065】
希ガスは、主として緩衝ガスおよび始動ガスとして作用する。そして、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)およびクリプトン(Kr)などのグループの一種を単独で、または複数種を混合して封入することができる。希ガスの封入圧力は、メタルハライドランプの用途に応じて適宜設定することができる。
【0066】
希ガスの中でもキセノンは、その原子量が他の希ガスより大きいため、熱伝導率が相対的に小さいので、これを1気圧以上、好適には5気圧以上封入することにより、点灯直後のランプ電圧形成に寄与するとともに、ハロゲン化物の蒸気圧が低い段階で白色の可視光発光を行い、光束立ち上がりに寄与するので、前照灯用のメタルハライドランプの場合に効果的である。この場合、キセノンの好ましい封入圧は、6気圧以上、より好適には8〜16気圧の範囲である。このため、点灯直後からの光束立ち上がりと自動車前照灯用のHID光源としての白色発光の規格を満足することができる。
【0067】
本構成例において、水銀(Hg)は、全く含まないのが環境負荷物質削減のために好ましいことであるが、不純物程度に含んでいても許容される。
【0068】
本構成例においては、以下の構成を所望により選択的に付加することができる。
【0069】
1.(外管) 透光性セラミックス気密容器、一対の電極およびイオン化媒体を備えた構成部分を発光管として、外管の内部に配設することができる。外管は、任意所望の形状および大きさにすることができる。また、外管の内部を外部に対して気密にしてもよいし、外気に連通させてもよい。前者の場合、必要に応じてアルゴン、窒素などの不活性ガスを封入することができる。さらに、外管は、石英ガラス、硬質ガラスや軟質ガラスなどの透光性材料を用いて形成することができる。
【0070】
2.(反射ミラー) 透光性セラミックス気密容器を反射ミラー内の所定の位置に固定的に配設することができる。なお、反射ミラーには、ガラス基体の内面にダイクロイックミラーを形成した物を用いることができる。
【0071】
上記高圧放電ランプの構成例において、イオン化媒体は、透光性セラミックス気密容器に封入される全ての金属ハロゲン化物のうちで最大封入比率として封入されているツリウム(Tm)のハロゲン化物を含んでいることにより、メタルハライドランプの発光は、ツリウムの発光が支配的になる。ツリウムの発光は、視感度曲線のピーク波長の555nm付近で多くの輝線スペクトルを有しているので、全体として高い発光効率が得られる。
【0072】
また、ツリウムは、そのイオン化ポテンシャルがナトリウムなどアルカリ金属に比較して高く、ツリウムハロゲン化物の封入がランプ電圧低下要因にならないばかりでなく、驚くべきことに第2のハロゲン化物との共存下においては、封入量に比例してランプ電圧を高くする作用のあることを本発明者は見出した。ランプ電圧が高くなれば、所要のランプ電力を投入するに当たりランプ電流の増加を回避しやすくなるので、電極や透光性セラミックス気密容器の設計が容易になる。
【0073】
さらに、上記高圧放電ランプの構成例において、メタルハライドランプの定格ランプ電力は、広範囲の値の中から自由に設定することができ、例えば数kW以下の任意の値に設定することができる。用途においても多様であることを許容し、例えば自動車前照灯用、プロジェクション用、一般照明用などに適している。したがって、定格ランプ電力および用途に応じて適当な形状および大きさの透光性セラミックス気密容器、適当な値の電極間距離ならびに適当な値のイオン化媒体の封入量とすることができる。
【発明の効果】
【0074】
本発明によれば、透光性セラミックス気密容器の小径筒部の軸方向に沿ってレーザ光を照射して封止するので、高圧放電ランプの透光性セラミックス気密容器を封止するための封止装置の構造を簡単化することができるので、製造装置のコストダウンを図ることができる。
【0075】
また、透光性セラミックス気密容器およびレーザ照射ユニット間の相対的な回転機構が必須でなくなるので、回転機構を省略することにより、透光性セラミックス気密容器の内部を容易に真空にでき、その後イオン化媒体を封入することができる。これにより、封止雰囲気中に不純物が侵入するのを防止しやすくなる。その結果、透光性セラミックス気密容器の内部の不純物を低減でき、高圧放電ランプの電気特性の向上を図ることができる。
【0076】
さらに、透光性セラミックス気密容器の小径筒部における封止予定部近傍の周囲に保温筒を配設してレーザ光を照射することにより、小径筒部の封止予定部の加熱を良好に行えるので、封止を短時間に行うことができる。
【0077】
さらにまた、保温筒が透光性セラミックス気密容器の包囲部側に向かって径大になる円錐形であったり包囲部側に突起部を備えていたりすることにより、小径筒部の封止時における軸方向の温度分布が均一になり、より良好な封止を行うことができる。
【0078】
さらにまた、レーザ光がフリットガラスの載置位置に対してデフォーカスされていることにより、封止部の加熱が均一になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0079】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0080】
図1は、本発明の高圧放電ランプの封止方法を実施により得られる高圧放電ランプの一形態を示す正面図である。本形態の高圧放電ランプは、一般照明用として実施をすることができるメタルハライドランプであり、透光性セラミックス気密容器1、一対の電極2、2、一対の外部リード線4、4、一対のフリットガラス6、6およびイオン化媒体からなる。上記透光性セラミックス気密容器1、一対の電極2、2、一対の外部リード線4、4、一対の封止剤5、5および放電媒体は、一体化されて透光性セラミックス発光管ITを構成し、図示を省略している外管内に封装されて、使用に供される。
【0081】
透光性セラミックス気密容器1は、透光性アルミナセラミックスからなる透光性セラミックス製であり、包囲部1aおよび一対の小径筒状部1b、1bを備えていて、一体化構造に形成されている。包囲部1aは、俵形をなし、中間の円筒部1a1とその両端に連続する一対の半球部1a2、1a2からなる。小径筒状部1bは、細長いパイプ状をなしていて、先端が包囲部1aの半球部1a2の中央部に連通している。なお、図中の1点鎖線は管軸位置を示す中心軸線である。発光管ITの一例を示せば、透光性セラミックス気密容器1は、全長35mmで、包囲部1aの外径6mm、内径5mm、小径筒状部1bの外径1.7mm、内径0.7mmである。電極2は、軸部の外径0.3mm、外部リード線4の外径0.65mmである。
【0082】
電極2は、ドープドタングステンの棒状体からなり、先端が透光性セラミックス気密容器1の包囲部1aの内部に臨み、基端が外部リード線4の先端に突合せ溶接され、中間部が小径筒状部1bの内部に周囲に僅かな隙間であるキャピラリーを形成しながら挿通している。
【0083】
外部リード線4は、二オブの棒状体からなり、先端部が小径筒状部1bの端部内部に挿入し、基端部が外部へ導出されている。
【0084】
封止剤5は、フリットガラスすなわちセラミックスコンパウンドの溶融固化体からなり、小径筒状部1b内に進入して外部リード線4の先端部および電極2の基端部の一部を被覆している。
【0085】
イオン化媒体は、金属ハロゲン化物および希ガスからなる。
【0086】
金属ハロゲン化物は、第1のハロゲン化物、主としてランプ電圧を形成するのに寄与する第2のハロゲン化物および希ガスを含んでいる。
【0087】
第1のハロゲン化物は、主として所望の発光を行うのに寄与し、少なくともツリウム(Tm)ハロゲン化物を気密容器1内に封入される全ての金属ハロゲン化物に対して最大封入比率で含んでいるものとする。また、所望によりツリウム以外の希土類元素金属ハロゲン化物、タリウム(Tl)、インジウム(In)、および/またはアルカリ金属ハロゲン化物などが適量封入される。
【0088】
第2のハロゲン化物は、蒸気圧が相対的に大きくて、第1のハロゲン化物に比較して可視域に発光しにくい金属のハロゲン化物である。可視域に発光しにくいとは、ランプ全体の発光色に与える影響が僅かで、第1のハロゲン化物との共存下において、第2のハロゲン化物を構成する金属による可視光放射が少ないことを意味する。例えば、下記グループの中から選択された一種または複数種の金属のハロゲン化物からなる。また、第2のハロゲン化物は、例えばマグネシウム(Mg)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、クロム(Cr)、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、アルミニウム(Al)、アンチモン(Sb)、ビスマス(Bi)、ベリリウム(Be)、レニウム(Re)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)からなる。
【0089】
希ガスは、例えばネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、キセノン(Xe)およびクリプトン(Kr)などから選択されている。
【0090】
図2は、本発明の高圧放電ランプの封止方法を実施するための一形態における封止の手順を示す工程図である。
【0091】
上記工程は、図において左端の工程(a)から右端の工程(e)に向けて進行し、(a)ないし(c)が本発明における第1の工程、(d)および(e)が同じく第2の工程に相当する。
【0092】
工程(a)は、未封止の透光性セラミックス気密容器1であり、図において上側に位置する小径筒状部1bの点線円で囲んだ部分を最初に封止する。
【0093】
工程(b)において、電極マウントMを小径筒状部1bから所定の位置まで挿入する。なお、電極マウントMは、電極2および外部リード線4を予め溶接してなり、外部リード線4の所定位置にはストッパーsを形成してある。すなわち、ストッパーsが小径筒状部1bの端面に当接した位置が所定の挿入位置となる。
【0094】
工程(c)において、電極マウントMの外部リード線4の上から予めリング状に成形したフリットガラス成形体Gを挿入して、上向きに延在する小径筒状部1bの端面に載置する。
【0095】
工程(d)において、フリットガラス成形体Gを含む封着予定部を例えばレーザビームなどのレーザ光を小径筒状部1bの軸方向から照射して加熱する。
【0096】
工程(e)において、フリットガラス成形体Gが溶融すると、フリットガラス6の一部が小径筒状部1bの端面から内部に進入し、外部リード線4の挿入部分を包囲して透光性セラミックス気密容器1を封止する。その後、冷却すれば透光性セラミックス発光管ITの一端側の封止が形成される。
【0097】
次に、図3ないし図5を参照して本発明の高圧放電ランプの封止方法を実施するのに好適な透光性セラミックス発光管ITの封止装置の構成例について説明する。なお、各図において、図1ないし図3におけるのと同一符号は同一部分であることを意味している。
【0098】
図3は、本発明の高圧放電ランプの封止方法を実施する際に用いるのに好適な透光性セラミックス発光管の封止装置における第1の形態を示す概念的正面図である。図において、11は封着チャンバー、12はドライボックス、13はレーザ発生部、14は光ファイバ、15はレーザヘッド、16は排気機能、17はガス導入機能、18は透光性セラミックス気密容器支持台、ITは透光性セラミックス発光管である。
【0099】
封着チャンバー11は、気密室11a、透過窓11b、排気機能16およびガス導入機能17を備えて構成されている。気密室11aは、その内部が外気に対して気密に構成されているとともに、透光性セラミックス気密容器支持台18に支持された被封着部材である未封止の透光性セラミックス発光管ITを、その管軸方向が垂直になるように内部に固定した状態にして収納している。
【0100】
透過窓11bは、レーザ光に対して透過性であって例えば石英ガラスからなる。そして、図において気密室11aの上面にその気密性を損なわないように配設されている。
【0101】
ドライボックスすなわちグローブボックス12は、その内部が外気に対して気密の状態下で透光性セラミックス発光管ITを封着チャンバー11に出し入れする装置である。そして、エレベーション機構12aを備えていて、後述する透光性セラミックス気密容器支持台18を封着チャンバー11に対して出し入れする。
【0102】
レーザ発生部13、光ファイバ14およびレーザヘッド15は、レーザ照射ユニットLUを構成している。
【0103】
排気機能16は、封着チャンバー11の一部を構成している機能であり、封着チャンバー11内を排気する。
【0104】
ガス導入機能17は、同様に封着チャンバー11の一部を構成している機能であり、封着チャンバー11内の排気後に透光性セラミックス1内に封入しようとする希ガスと同じ雰囲気にすることができる。
【0105】
透光性セラミックス気密容器支持台18は、そこに形成した凹部内に透光性セラミックス気密容器1の包囲部1aおよび封止しようとする小径筒部1bの反対側の小径筒部を収納することにより、透光性セラミックス気密容器1を垂直に固定して支持する手段である。
【0106】
そうして、レーザ発生部13内で発生したレーザ光は、光ファイバ14内をレーザヘッド15へ伝播する。レーザヘッド15に伝播したレーザ光は、レーザ光ヘッドの内部に配設された反射鏡により反射され、かつレンズを通過して集光されて被封着部材すなわち透光性セラミックス製気密容器1の小径筒部1bの主として端面側の部分、外部リード線およびフリットガラスに照射され、これらの部材を所要に加熱する。
【0107】
図4は、本発明の高圧放電ランプの封止方法を実施する際に用いるのに好適な透光性セラミックス発光管の封止装置における第2の形態を示す概念的正面図である。本形態において、封着チャンバー11は、その内部に2次元位置調節が可能なxy調節ステージ11cを備えている。また、透過窓1bは、集光レンズにより構成されている。さらに、封着チャンバー11とドライボックス12との間には、気密扉12bが配設されている。
【0108】
図5は、本発明の高圧放電ランプの封止方法を実施する際に用いるのに好適な透光性セラミックス発光管の封止装置における第3の形態を示す概念的正面図である。本形態において、封着チャンバー11は、透光性セラミックス気密容器1の封止部のみを局部的に包囲するとともに、封着チャンバー11、レーザヘッド15、排気機能16およびガス封入機能17をドライボックス12内に収納している。また、封着チャンバー11は、被封着部材としての小径筒部1bのみを気密に収納するように小形化されている。
【0109】
次に、図6ないし図9を参照して本発明の高圧放電ランプの封止方法を実施するための第2ないし第5の形態について説明する。なお、各図において、図2と同一部分については同一符号を付して説明は省略する。
【0110】
図6は、本発明の封止方法を実施するための第2の形態を示す概念的正面図である。本形態においては、透光性セラミックス気密容器1の小径筒状部1bにおける封止予定部21およびフリットガラス成形体G均一に加熱するために、筒状部1bの封止予定部21に隣接する部分を円筒状の吸熱部材すなわち保温筒22で包囲しながらでフォーカス状態のレーザ光23を照射して加熱する。
【0111】
保温筒22は、封止予定部21の加熱時にレーザ光照射を受けて吸熱するので、レーザ光が照射されない封止予定部21に隣接する筒状部1bの領域も一緒に加熱されて温度上昇する。その結果、フリットガラス成形体Gが溶融して筒状部1bの内部に進入しやすくなり、良好な封止部を形成することができる。
【0112】
なお、レーザ光23は、焦点P1に向かって収束する。そして、レーザ光23の焦点位置P1を図において上下方向へ可変にして、焦点距離d1を可調整とすることで、デフォーカス距離d2を変化させ、封止予定部21の加熱程度を可調整にしている。なお、図中、符号15はレーザヘッドである。
【0113】
図7は、本発明の封止方法を実施するための第3の形態を示す概念的正面図および平面図である。本形態においては、保温筒22は、切頭円錐形状をなしていることによりテーパー部が形成されていて、小径筒部の軸方向の温度分布を均一にする。また、保温筒22の下方に位置する透光性セラミックス気密容器1の部分に対する遮熱を容易、かつ確実にして、当該部分の不所望な温度上昇を防止する。
【0114】
図8は、本発明の封止方法を実施するための第4の形態を示す概念的正面図および平面図である。本形態においては、円筒状をなす保温筒22の下部の周囲に90°間隔の突起部pを有している。
【0115】
図9、本発明の封止方法を実施するための第5の形態を示す概念的一部断面正面図である。本形態において、保温筒22は、図6と同様に円筒形状をなしているが、透光性セラミックス気密容器1の包囲部1aと小径筒状部1bとの境界部に遮熱部材23を嵌合させて封止を行う。これにより、遮熱部材23の下方に位置する透光性セラミックス気密容器1の包囲部1aに対するレーザ光の照射を遮熱部材23により遮断するように構成している。なお、遮熱部材23は、遮熱性の材質のドーナッツ状をなした円盤からなり、中心部に筒状部1bに緩く挿入するための通孔23aを有している。
【0116】
このため、封止時に透光性セラミックス気密容器1の包囲部1aの不所望な加熱が行われなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】本発明の高圧放電ランプの封止方法を実施により得られる高圧放電ランプの一形態を示す正面図
【図2】本発明の高圧放電ランプの封止方法を実施するための第1の形態における封止の手順を示す工程図
【図3】本発明の高圧放電ランプの封止方法を実施する際に用いるのに好適な透光性セラミックス発光管の封止装置における第1の形態を示す概念的正面図
【図4】本発明の高圧放電ランプの封止方法を実施する際に用いるのに好適な透光性セラミックス発光管の封止装置における第2の形態を示す概念的正面図
【図5】本発明の高圧放電ランプの封止方法を実施する際に用いるのに好適な透光性セラミックス発光管の封止装置における第3の形態を示す概念的正面図
【図6】本発明の高圧放電ランプの封止方法を実施するための第2の形態を示す概念的正面図
【図7】本発明の高圧放電ランプの封止方法を実施するための第3の形態を示す概念的正面図および平面図
【図8】本発明の高圧放電ランプの封止方法を実施するための第4の形態を示す概念的正面図および平面図
【図9】本発明の高圧放電ランプの封止方法を実施するための第5の形態を示す概念的一部断面正面図
【符号の説明】
【0118】
1…透光性セラミックス気密容器、1a…包囲部、1b…小径筒部、1c…放電空間、2…電極、4…外部リード線、6…フリットガラス、G…フリットガラス成形体、IT…透光性セラミックス発光管、M…電極マウント、s…ストッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に放電空間が形成される包囲部および包囲部に連通して延在する小径筒部を備えた透光性セラミックス気密容器の小径筒部内に、電極および外部リード線が接続された電極マウントを、外部リード線の基端部が外部へ露出するように小径筒部内に挿入し、小径筒部の端部にフリットガラスを施与し、かつ封止する小径筒部が上になるように透光性セラミックス気密容器をほぼ垂直に支持する第1の工程と;
小径筒部の軸方向に離間した位置からレーザ光をフリットガラス、小径筒部および電極マウントに照射することによってフリットガラスを加熱溶融させ、溶融したフリットガラスが小径筒部および外部リード線の間の隙間に進入し固化して小径筒部および外部リード線を封着することにより透光性セラミックス気密容器を封止する第2の工程と;
具備していることを特徴とする高圧放電ランプの封止方法。
【請求項2】
レーザ光は、フリットガラスの載置位置に対してデフォーカスされていることを特徴とする請求項1または2記載の高圧放電ランプの封止方法。
【請求項3】
小径筒部の封止予定部近傍の周囲に保温筒を配置してレーザ光を照射することを特徴とする請求項1記載の高圧放電ランプの封止方法。
【請求項4】
保温筒は、胴部および胴部の下部形成された突起部を備えていることを特徴とする請求項3記載の高圧放電ランプの封止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−202728(P2006−202728A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−347073(P2005−347073)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】