説明

高圧放電灯、画像投影装置

【課題】 点灯中に電極で最も高温となる電極先端部の不純物含有量を少なくしてランプの信頼性を高めた高圧放電灯を実現する。
【解決手段】 放電空間部15に電極16,17が対向配置されるとともに、0.2(mg/mm)以上の水銀、希ガス、ハロゲンが封入される。電極16,17の材料としてドープ材を添加していないタングステンWを使用し、電極16,17の先端にタングステンコイル18,19で数ターン巻回して径大化させ、その先端を加熱溶融して先端溶融部181,191を形成する。先端溶融部181,191のタングステンの不純物含有量を電極16,17の不純物含有量より低減させた。これにより、点灯中に電極で最も高温となる先端溶融部181,191の不純物含有量を少なくしたことで、ランプとしての信頼性を高めることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高効率、高出力、高い集光効率で、かつコンパクトな設計が要求される例えばLCDプロジェクタのような画像を投影する画像投影装置に使用される高圧放電灯およびこれを用いた画像投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、広く普及している投光照明および画像表示装置などの光源として、高圧放電灯が多く採用されている。特に点光源に近く、配光制御が容易なショートアークタイプの高圧放電灯であるキセノンランプ・メタルハライドランプ等は、液晶プロジェクタ用の光源として、多用されつつある。液晶パネルの小型軽量化に伴い光源も液晶パネルへ効率よく集光するために、アーク長を短くすることが一番効率の良い方法であるが、単にアーク長を短くするとランプ電圧が低下し、それに伴いランプ電流が増大して点灯装置を大型化させてしまう、という問題があった。
【0003】
そこで、従来から点灯中の圧力を上げてランプ電圧を低下させずにアーク長を短くして点灯装置を小型化するとともに、ランプの出力特性も向上させた小型軽量のランプが実現されている。(例えば、特許文献1)
【特許文献1】特開平6−52830号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の技術は、集光効率とともに光出力を向上させるためにはアーク長をできる限り短くし、点灯圧(発光金属蒸気圧)を高めてランプへの負荷を高める必要がある。これにより、電極への負荷も高くなり、ランプ電極材に含まれる不純物が電極から析出、飛び出すことで寿命や信頼性を悪化させる不具合が発生する。
【0005】
この発明の目的は、点灯中に電極で最も高温となる電極先端部の不純物含有量を少なくしてランプの信頼性を高めた高圧放電灯およびこれを用いた画像投影装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、この発明の高圧放電灯は、電極間距離2.0mm以下に一対の電極が対向配置されるとともに、0.2(mg/mm)以上の水銀、希ガス、ハロゲンが封入される放電空間部と、前記電極のそれぞれの一端に接合された金属箔と、前記金属箔の他端に電力導入線が結合され、前記金属箔部分で前記放電空間部の気密性を維持するように封着された封止部とを備えた、点灯圧が10MPa以上の高圧放電灯にあって、前記電極の材料はドープ材が無添加のタングステンとし、前記電極の先端部を根元より径大に形成し、前記電極の先端部は加熱溶融を施して先端溶融部とし、該先端溶融部のタングステンの不純物含有量を、前記電極のタングステン不純物含有量より低減したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、点灯中に電極で最も高温となる電極先端部の不純物含有量を少なくしたため、信頼性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の実施例について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0009】
図1は、この発明の高圧放電灯の一実施例について説明するための側面図である。図1において、11は透明な石英ガラス製のバルブであり、ほぼ楕円形状の発光管部12とその長手方向の両端部に発光管部12と同材料で形成されたバルブ11内を気密の封止部13,14からなる。発光管部12には、その長手方向にほぼ円柱状の放電空間部15が形成されており、この放電空間部15には封止部13,14の内部から延出された、例えばタングステン材で形成される電極16,17が約1.3mmの間隔をおいてその先端が対向するように配置されている。電極16,17の軸径はφ0.4mmで、その一端にφ0.2mmのタングステンコイル18,19が数ターン巻きつけてある。放電空間部15には、例えば水銀(Hg)とアルゴン(Ar)ガスとハロゲンを含む放電媒体が封入されている。Hg量はランプ電圧が70V以上となる所定量が封入されている。
【0010】
電極16,17のそれぞれ先端は、図2(A)にも示すようにプラズマ熱源により溶融して加工された先端溶融部181,191が施されている。電極16,17のタングステンに含まれる不純物量は8ppm以下で、溶融させることで不純物が飛ばされた先端溶融部181,191の不純物含有量は4ppm以下である。図2(B)は従来の電極部分について示している。
【0011】
封止部13,14は、圧潰して形成されており、その内部にはモリブデン(Mo)製の金属箔20,21が封着されている。金属箔20,21の厚さは非常に薄く、例えば主封着部の箔厚は0.020mm、箔幅は2mm、長さは17mm程度である。この金属箔20,21のそれぞれの一端は、電極16,17にそれぞれ溶接されており、他端は例えばニッケル製のワイヤ22,23がそれぞれ接続されており、ワイヤ22,23はランプ外の点灯装置24から電力の供給を受けるための導入線である。
【0012】
このような高圧放電灯は、ランプ電力100W〜150Wで点灯し、光出力は55lm〜60lm/Wのランプ効率を有し、例えばプロジェクタ用光源などにおいてはスクリーンに到達する光量が10lm/Wを超えるような効率が得られる。点灯中の動作圧力が15MPaを超えるように設計されている。
【0013】
図2(A)で構成される電極を使用した高圧放電灯をサンプルAとし、図2(B)で構成される不純物含有量がおよそ20ppmの電極を使用した高圧放電灯をサンプルBとし、2時間点灯し、30分消灯することを繰り返す点灯試験をする寿命評価を行った。その結果を図3に示す。
【0014】
すなわち、サンプルAとBの点灯試験をする寿命評価を行った。その結果、照度が50%に低下あるいは不点灯となる不良率がサンプルBでは2000時間で12%発生するのに対して、サンプルAでは4000時間経過後でもサンプルBよりも低い5%であった。
【0015】
このように、根元より径大に形成した電極の先端部は加熱溶融を施して先端溶融部が形成された電極のタングステンの不純物含有量を、電極16,17の材料であるタングステンの不純物含有量より少なくしたため、信頼性を高めることが可能となる。
【0016】
図4は、図1に構成の高圧放電灯が液晶プロジェクタに搭載された場合の、この発明の画像撮影装置について説明するための説明図である。
図4において、41は液晶プロジェクタであり、この液晶プロジェクタ41は本体42を有し、本体42の前面側には投影開口43が形成される。また、本体42内には光源44が配設され、この光源44は高圧放電灯45と高圧放電灯45に光学的に対向した反射手段としてのリフレクタ56にて形成される。そして、光源44の照射方向の前方には、表示手段としての液晶パネル47が配設され、この液晶パネル47の前方の投影開口43に対応して投影手段としての投影レンズ48が配設されている。投影開口43の前方には、スクリーン49が配設される。
【0017】
さらに、高圧放電灯45には点灯回路50が接続され液晶パネル47には液晶駆動回路51が接続され、点灯回路50および液晶駆動回路51は商用交流電源52が接続される。点灯回路50は高圧放電灯45を直流で点灯するもであっても、交流で点灯するものであっても構わない。
【0018】
上記した構成の画像撮影装置は、まず、点灯回路50で光源44の高圧放電灯45を点灯させる。高圧放電灯45からの光は、直接あるいはリフレクタ46で反射されて液晶パネル47方向に照射される。液晶パネル47は、液晶駆動回路51で表示が変化して、光源44からの光を透過して投影レンズ48で投影させてスクリーン49に映像を映し出す。
【0019】
このように、この発明の画像撮影装置は、この発明の高圧放電灯を光源のランプとしたことにより、ランプの信頼性が向上し、延いては液晶撮影装置全体の信頼性の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の一実施例について説明するための側面図。
【図2】(A)は図1の電極、(B)は従来の電極について説明するための拡大側面図。
【図3】この発明の効果について説明するための説明図。
【図4】この発明の画像撮影装置に関する一実施例について説明するための説明図。
【符号の説明】
【0021】
11 バルブ
12 発光管部
13,14
15 放電空間部
16,17 電極
18,19 タングステンコイル
181,191 先端溶融部
20,21 金属箔
22,23 導入線
41 液晶プロジェクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極間距離2.0mm以下に一対の電極が対向配置されるとともに、0.2(mg/mm)以上の水銀、希ガス、ハロゲンが封入される放電空間部と、前記電極のそれぞれの一端に接合された金属箔と、前記金属箔の他端に電力導入線が結合され、前記金属箔部分で前記放電空間部の気密性を維持するように封着された封止部とを備えた、点灯圧が10MPa以上の高圧放電灯において、
前記電極の材料はドープ材が無添加のタングステンとし、前記電極の先端部を根元より径大に形成し、前記電極の先端部は加熱溶融を施して先端溶融部とし、該先端溶融部のタングステンの不純物含有量を、前記電極のタングステン不純物含有量より低減したことを特徴とする高圧放電灯。
【請求項2】
前記電極のタングステンの不純物含有量は、15ppm以下であることを特徴とする請求項1記載の高圧放電灯。
【請求項3】
前記電極先端溶融部のタングステンの不純物含有量は、5ppm以下であることを特徴とする請求項1記載の高圧放電灯。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの高圧放電灯と、
前記高圧放電灯を光源とし、該光源から放射される光に基づき画像を投影する画像投影装置本体と、を具備したことを特徴とする画像投影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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