説明

高圧放電灯

【課題】高圧放電灯においては、管球の頭部側にも高電圧が印加されているので、車体、特にフードとの間で放電を発生する可能性が高く、フードの小型化が困難であり、それによりヘッドライト全体が大型化する問題点を生じていた。
【解決手段】高圧放電灯1の発光管2と外管4との間に誘電体バリヤ放電が可能なガス5を封入し始動電圧を低減させ、更に、発光管2と外管4との間に金属導体6を挿入すると始動電圧など特性が安定化するので、リード線を金属導体6と兼用することができるものとなる。よって、外管4の外部には高圧部分が露出することがなくなり、高圧放電灯の小型化が可能となり、ハロゲン電球を使用したヘッドライトとのハウジングの共有化などが可能となり課題が解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯に関するものであり、詳細には、始動電圧を低下させ、例えば車両用灯具の光源としての用途に適すると共に、加えて小型化を可能として、従来この種の目的に採用されていたハロゲン電球などとの代替を容易として、互換性も高めるものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の高圧放電灯90としては、同じ出願人による図5に示す構成のものがあり、この高圧放電灯90は、両端に放電電極91aが突出して設けられた放電空間91bの内部には希ガスが封止された発光管91と、前記発光管91の外側を覆う外管92とで構成され、前記発光管91と外管92との間の空間95には誘電体バリア放電が可能なガス93が封止されている。
【0003】
前記した誘電体バリア放電が可能なガス93としては、Ne、Ar、Kr、Xe、F、Cl、Br、I、Nなどから選択された一種類のガス、或いは、複数種の混合ガスである。
【0004】
上記の構成とした、従来例の高圧放電灯90の起動(点灯)時の動作を説明すると、まず、発光管91の両端から放電空間91bに向けて突出させられた放電電極91aに起動パルスが印加されるが、前記放電電極91aに給電するための電流供給導体94a、94bから、前記電流供給導体94a、94bを保持する石英ガラスなどの誘電体を介して、空間95にも電界が印加される。
【0005】
そして、前記したように空間95には、誘電体バリア放電の発生に適するガス93が封入されており、発光管91の放電開始電圧よりも、誘電体バリア放電の開始電圧が低ければ、放電空間91b内の放電よりも先に、誘電体バリア放電が発光管91と空間95との間で、例えば数KVの低電圧で開始される。
【0006】
誘電体バリア放電が開始されると、上記空間95に封入されたガスに応じる波長の光が、前記発光管91内の放電電極91aに達し光電効果により電子が発生され、電子なだれが発生して、前記放電空間91bの内部に放電路が開かれる。よって、通常は20KV程度が必要とされる高圧放電灯90の始動が、およそ数KVで行えるものとなる。なお、図中に符号96で示すものは他方の放電電極を電源に接続するためのリード線であり、符号97はリード線を保護するためのセラミック管であり、符号98はソケットであり、符号99は配光形成手段の一部として外管92の表面に塗布される黒色不透明塗料などによる遮光カバーである。
【特許文献1】特開2002−304968号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記に説明した従来の高圧放電灯90においては、第一には、形状がダブルエンド型と称されているように、外管92の先端からも高電圧が印加されるリード線96が設けられる形状とされているので、例えば、高圧放電灯90からの直射光を遮蔽するフード(図示せず)などを取付けるときにも、フード、および、車体との間に放電を生じないよう充分な間隔を設けなければ成らず、例えば、従来はハロゲン電球を光源としていたヘッドライトを放電灯の光源に改装することが容易に行うことができない場合があった。
【0008】
また、上記のように取付時に大きさの問題を生じると共に、従来の高圧放電灯90においては、例えば、発光管91と外管92との間に封止されたガスにリークを生じるなどして、突発的に始動電圧が高くなり、定格点灯となるまでに時間を要したり、極端な場合には不点灯となるという問題点を生じるものとなっていた。また、放電灯ではリークには至らなくとも外管内に導線があることにより、始動電圧を低く抑えることができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記した従来の課題を解決するための具体的な手段として、内部に少なくとも一種類の希ガスが封入された放電空間を有する発光管と、前記発光管の前記放電空間内に対向して突出する一対の放電電極を備え、前記放電電極に電流を供給する電流供給導体は前記発光管から延在する封止部で気密に封着され、前記発光管を外囲する外管を備えた高圧放電灯であって、前記外管は前記封止部または当該封止部外方において気密に封着され、前記発光管と前記外管とで囲われる空間には誘電体バリヤ放電が可能なガスが充填され、且つ、前記空間の前記発光管に沿っては、少なくとも一方の封止部から前記放電空間に到る金属導体が配置されていることを特徴とする高圧放電灯を提供することで課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、前記発光管と前記外管とで囲われる空間に、誘電体バリヤ放電が可能なガスを充填し、加えて、前記空間内に少なくとも一方のシール部から前記放電空間に到る金属導体を配置し、更に、前記金属導体を他方の放電電極へ給電するリード線を兼ねるものとしたことで、放電管外部に高圧部分が露出しないものとして、車体との離間距離を少なくても良いものとし、ヘッドライトの小型化に優れた効果を奏するものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
つぎに、本発明を図に示す実施形態に基づいて詳細に説明する。図1に示すものは、本発明に係る高圧放電灯1の第一実施例であり、この高圧放電灯1は内部に少なくとも一種類の希ガスが封入された放電空間2aを有する発光管2と、前記発光管2の放電空間2a内に対向して突出する一対の放電電極31、32を備えるものである点は従来例のものと同様である。
【実施例1】
【0012】
また、前記放電電極31、32には電流供給導体3aが接続され、前記発光管2から延在させた封止部2bにより、前記放電空間2aは外部との封止が行われている。尚、前記放電電極31、32の夫々に接続された前記電流供給導体3aは、外部からの給電のために、前記放電電極31、32に接続された反対側の端部が適宜な長さだけ前記封止部2bから突出させられている。
【0013】
そして、上記した発光管2、および、封止部2bは、従来例と同様に外管4により覆われるものとなるが、本発明においては、前記発光管2と外管4との空間に誘電体バリヤ放電が可能なガス5が封入される点は従来例と同様であるが、加えて、同じ発光管2と外管4との空間には、少なくとも一方の封止部2bから放電空間2aに到る金属導体6が設けられている。
【0014】
そして、この第一実施例では、前記金属導体6は、一方の端部は前記放電電極32が接続されている電流供給導体3aに接続されており、他方の端部は、発光管2(または封止部2b)と外管4とが封着された部分を通過してソケット9の給電端子(図示せず)の前記放電電極31が接続されているのとは別の給電端子に接続されている。即ち、この第一実施例の金属導体6は従来例のリード線の作用を奏しているものとなっている。
【0015】
このようにすることで、従来は外管4の外部に露出していたリード線、および、セラミックパイプが外部に露出することがなくなり、前記セラミックパイプは使用する必要もなくなる。よって、従来の放電管の如くに、フード、ハウジング(図示せず)など車体部品との間での放電は生じることはないものとなる。また、上記したように外部にリード線、セラミックパイプが露出していないので、高圧放電灯1の交換時にも、不適切な取り扱いなどにより破損を生じることも防止できるものとなる。
【0016】
よって、例えば、現在、光源としてハロゲン電球などを採用していた車種を、形状に大きな変更を生じることなく、放電灯(HID)のヘッドライトに変換することが容易となり、例えば、同一車種でグレードによりハロゲン電球を光源とするヘッドランプと、放電灯を光源とするヘッドランプとを使い分けている場合にも、ヘッドライトハウジングなどに大きな変更を行うことなく使い分けができるものとなる。
【0017】
尚、この第一実施例のように、発光管2と外管4との間に前記金属導体6が設けられたときにも、発光管2と外管4との間に誘電体バリヤ放電が可能なガス5を封入したときの作用は失われることはなく、低電圧での始動が可能であることは、発明者の試作、実験により確認されている。
【0018】
ここで、発明者の更なる検証の結果では、前記金属導体6を設けることで、上記とは別の作用、即ち、この種の高圧放電灯1に突発的に生じる始動電圧の上昇、および、外管4にクラックなどを生じて、前記誘電体バリヤ放電が可能なガス5にリークを生じたときにも、始動電圧が大きく上昇することがない作用が得られることが明らかとなった。よって、リード線7、および、セラミックパイプ8を有する従来の高圧放電灯との形状の互換性を残し、上記した別の作用の利用を図るものが、以下に示す第二実施例、第三実施例である。
【実施例2】
【0019】
図2に示すものは本発明に係る高圧放電灯1の第二実施例であり、この第二実施例においては、発光管2(または、封止部2b)と外管4とを溶着し封止するときに、両者の溶着が行われる両端間に渡るように、例えば、線状とした金属導体6を挟み込んでおき、前記発光管2、外管4、金属導体6の三者が一体化するように溶着する。この場合、前記金属導体6の溶着が行われる部分には、石英ガラスなどと溶着性の良い部材が使用されることが好ましい。尚、前記金属導体6の固定は何れか一方の側のみでも良い。
【実施例3】
【0020】
図3に示すものは本発明に係る高圧放電灯1の第三実施例であり、この第三実施例は、組立を更に簡便化したものであり、前の第二実施例においては、石英ガラスと金属との溶着を行っていたが、この第三実施例では、例えば線状とした金属導体6を一方の前記封止部2bの部分に巻き付けた後に、発光管2の部分は下方を直線で通過し、反対側の封止部2bの部分で再度巻付けを行い固定する。尚、上記のように前記金属導体6の固定は何れか一方の側のみでも良い。
【0021】
このようにすることで、この第三実施例においては、発光管2(または、封止部2b)と外管4とを溶着、即ち、ガラス同士を溶着すればよいものとなり、作業が簡素化できると共に、リークの発生などに対する確実性も向上させることができるものとなる。
【実施例4】
【0022】
図4に示すものは、本発明に係る高圧放電灯1の第四実施例であり、従来例でも説明したように、車両用の光源として採用されるメタルハライド放電灯には、規定の配光特性が得られ易くするために、外管4に遮光カバー4aが設けられている。
【0023】
この場合、前記遮光カバー4aを例えば黒色に表面処理した金属で形成し、外管4内の所定位置に固定すれば、前記遮光カバー4aは、遮光カバー4aとしての本来の機能と、前記高圧放電灯1の始動電圧を低下させる金属導体6との双方の機能を兼ねるものとなり、しかも、前記遮光カバー4aは、発光管2に一層に接近して設けることが可能となるので、光のカットがシャープに行えるものとなり、配光特性の形状も正確となる。また、リード線7、セラミックパイプ8を不要とする利点も同時に得られるものとなることは云うまでもない。
【0024】
以上に説明したように、本発明により発光管2と外管4との間に誘電体バリヤ放電が可能なガス5を封止したことで高圧放電灯1の始動電圧を格段に低下させることを可能とし、さらに、金属導体6をリード線7と兼用させることで、高圧放電灯の小型化を可能とし、例えば、ハロゲンランプを光源とするヘッドライトとハウジングの共通化を可能とするものである(第一実施例)。
【0025】
また、金属導体6を加えたことにより、この種の高圧放電灯に生じていた始動電圧の突然の上昇による点灯不良、或いは、発光管2と外管4間の誘電体バリヤ放電が可能なガス5のリークによる始動電圧の上昇も防止し、この種の高圧放電灯を光源としたヘッドライトの特性の安定性を向上させるものである(第二実施例、第三実施例)。
【0026】
尚、上記に説明した何れの実施例も、発光管2と外管4との間、即ち、誘電体バリヤ放電が可能なガス5中に金属導体6を配置するものであるので、従来例で具体的に説明したガス5中で酸化を生じたり、或いは発光するときに生じる熱で溶融しない金属部材を選択する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る高圧放電灯の第一実施例を示す断面図である。
【図2】同じく本発明に係る高圧放電灯の第二実施例を示す断面図である。
【図3】同じく本発明に係る高圧放電灯の第三実施例を示す断面図である。
【図4】同じく本発明に係る高圧放電灯の第四実施例を示す断面図である。
【図5】従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0028】
1…高圧放電灯
2…発光管
2a…放電空間
2b…封止部
31、32…放電電極
3a…電流供給導体
4…外管
4a…遮光カバー
5…誘電体バリヤ放電が可能なガス
6…金属導体
7…リード線
8…セラミックパイプ
9…ソケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に少なくとも一種類の希ガスが封入された放電空間を有する発光管と、前記発光管の前記放電空間内に対向して突出する一対の放電電極を備え、前記放電電極に電流を供給する電流供給導体は前記発光管から延在する封止部で気密に封着され、前記発光管を外囲する外管を備えた高圧放電灯であって、前記外管は前記封止部または当該封止部外方において気密に封着され、前記発光管と前記外管とで囲われる空間には誘電体バリヤ放電が可能なガスが充填され、且つ、前記空間の前記発光管に沿っては、少なくとも一方の封止部から前記放電空間に到る金属導体が配置されていることを特徴とする高圧放電灯。
【請求項2】
前記金属導体は、一端が前記発光管の先端側のリード線に前記外管内で接続され、他端がリード線を介して、この高圧放電灯のソケット端子に前記外管内で接続され、前記発光管への給電線を兼ねると共に、前記外管外に露出する部分を生じていない構成とされていることを特徴とする請求項1記載の高圧放電灯。
【請求項3】
前記金属導体は、両端で溶着された前記発光管と前記外管との少なくとも一方の溶接部分に挟持されて保持されている金属の線状、または、板状部材であることを特徴とする請求項1記載の高圧放電灯。
【請求項4】
前記金属導体は、少なくとも一端が前記発光管の一方の放電電極の近傍に外側から巻き付け、溶着など適宜な手段で固定され、配置されていることを特徴とする請求項1記載の高圧放電灯。
【請求項5】
前記外管の内面には、当該の高圧放電灯を車両用灯具の光源として使用するときの配光を整えるための遮光カバーが設置され、前記金属導体の機能を兼ねる構成とされていることを特徴とする請求項1〜請求項4の何れかに記載の高圧放電灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−280634(P2007−280634A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−101899(P2006−101899)
【出願日】平成18年4月3日(2006.4.3)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】