説明

高圧用コネクタ

【課題】コネクタハウジングが高剛性材で形成されたものにあって、端子を確実に所望の係止力で係止できる高圧用コネクタを提供する。
【解決手段】高剛性材より形成され、両側が隔壁5,6で仕切られた端子収容部3と、一方の隔壁5側に設けられた係止突部7と、他方の隔壁6側に設けられ、端子収容部3の入口側から奥に向かうに従って徐々に突出する方向に傾斜するテーパ状リブ8とを有するコネクタハウジング2と、端子収容部3に収容された端子10とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、電気自動車のモータには、高電圧・高電流が供給される。このような電源供給経路の配線接続部には、高圧用コネクタが使用される。かかる高圧用コネクタは、従来より種々のものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6〜図8に高圧用コネクタの一従来例が示されている。以下、説明する。図6及び図7において、高圧用コネクタ100は、コネクタハウジング101と、コネクタハウジング101に装着される3つの端子110とを備えている。
【0004】
コネクタハウジング101は、並列配置された3つの端子収容部102を有する。各端子収容部102は、底面壁103と両側の隔壁104に囲まれている。両側の隔壁104には、一対の係止突部105が設けられている。各係止突部105は、端子収容部102側に突出し、その底面が係止面105aとされている。
【0005】
端子110は、方形プレート状である。端子110は、一対の係止突部105に係止されることによって端子収容部102内に装着されている。端子110の装着は、図8に示すように、端子110を端子収容部102の底面壁103とほぼ平行にして端子収容部102内に挿入する。すると、端子110の両端部が一対の係止突部105に干渉するが、その干渉抵抗に抗して押し込むことによってなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−327184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、高圧用コネクタ100に使用されるコネクタハウジング101は、高い耐熱性が要求される。高い耐熱性材料(例えばガラス強化樹脂)は、通常では高剛性であるため、かかる材料で形成されるコネクタハウジング101は、高剛性の構造体となる。従って、端子110を端子収容部102内に押し込む際に、端子110が係止突部105、特にその角部に大きな外力を作用させることになる。これにより、係止突部105の角部が図9に示すように削れてしまい、一対の係止突部105による係止力が低下したり、最悪の場合には係止できないという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、コネクタハウジングが高剛性材で形成されたものにあって、端子を確実に所望の係止力で係止できる高圧用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、高剛性材より形成され、両側が隔壁で仕切られた端子収容部と、一方の前記隔壁側に設けられた係止突部と、他方の前記隔壁側に設けられ、前記端子収容部の入口側から奥に向かうに従って徐々に突出する方向に傾斜するテーパ状リブとを有するコネクタハウジングと、前記端子収容部に収容された端子とを備えたことを特徴とする。
【0010】
前記コネクタハウジングは、一方の前記隔壁側に設けられたストレート状リブを有し、前記ストレート状リブの突出量は、係止突部の突出量以上の寸法に設定されている。
【0011】
前記コネクタハウジングは、一方の前記隔壁側に設けられ、前記係止突部より少なくとも大きく突出するストレート状リブを有することが好ましい。
【0012】
前記端子は、前記テーパ状リブが入り込む第1切欠部を有することが好ましい。
【0013】
前記端子は、前記ストレート状リブが入り込む第2切欠部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、端子収容部内に挿入した端子を斜めにして一方の端部を係止突部を越える位置まで進入させ、その後、端子の他方の端部をテーパ状リブをスライドさせて押し込むことによって装着することができる。従って、端子が係止突部に大きな外力を作用させることなく、端子を装着できる。以上より、コネクタハウジングが高剛性材で形成されたものにあって、係止突部を破損等させることなく端子を装着でき、その結果、端子を確実に所望の係止力で係止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態を示し、(a)は1個の端子が装着完了されたコネクタの正面図、(b)は(a)のA1−A1線断面図である。
【図2】本発明の一実施形態を示し、端子の斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態を示し、(a)は端子を挿入開始した状態のコネクタの正面図、(b)は(a)のA2−A2線断面図である。
【図4】本発明の一実施形態を示し、図3の状態より端子を少し挿入した状態のコネクタの断面図である。
【図5】本発明の一実施形態を示し、端子の一方の端部が係止突部を越える位置まで挿入した状態のコネクタの断面図である。
【図6】従来例のコネクタの斜視図である。
【図7】図6のB−B線断面図である。
【図8】端子の装着開始状態を示す断面図である。
【図9】係止突部の角部が削れた状態を示す図8のC部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1〜図5は本発明の一実施形態を示す。図1(a)、(b)に示すように、高圧用コネクタ1は、コネクタハウジング2と、このコネクタハウジング2に装着された3個の端子10とを備えている。尚、図1(a)は、1個の端子10が装着された状態を示す。
【0018】
コネクタハウジング2は、耐熱性が高い材料(例えばガラス強化樹脂)より形成されている。これにより、コネクタハウジング2は、高剛性材より高剛性の構造体として形成されている。コネクタハウジング2は、並設された3つの端子収容部3を有する。各端子収容部3は、底面壁4と、この底面壁4より突出された両側の隔壁5,6で囲まれている。各端子収容部3の底面壁4には、電線挿入穴4aと共にボルト進入穴4bがそれぞれ形成されている。各端子収容部3の底面壁4にはボルト進入穴4bを囲むようにナット圧入用の凹部4cが形成されている。
【0019】
各端子収容部3の一方の隔壁5には、係止突部7が突設されている。係止突部7は、端子収容部3の入口側の面がテーパ面7aとされている。係止突部7は、端子収容部3の奥側の面が垂直な係止面7bとされている。係止面7bと底面壁4の間の寸法は、端子10の肉厚と同一若しくは少しだけ大きな寸法に設定されている。つまり、端子10の端部を挿入できる寸法に設定されている。
【0020】
各端子収容部3の両側の隔壁5,6には、テーパ状リブ8とストレート状リブ9が互いに対応する位置に突設されている。テーパ状リブ8は、他方の隔壁6に設けられている。テーパ状リブ8は、端子収容部3の入口側から奥に向かうに従って徐々に端子収容部3内に突出する方向に傾斜している。ストレート状リブ9は、一方の隔壁5、つまり、係止突部7と同じ側に設けられている。ストレート状リブ9は、端子収容部3の入口側から奥に向かって同じ寸法だけ突出している。ストレート状リブ9の突出量d1は、係止突部7の突出量d2以上の寸法に設定されている。
【0021】
端子10は、図2に詳しく示すように、導体の金属材(バスバー)より形成されている。端子10は、相手端子接触部11と、相手端子接触部11にほぼ直角方向に折曲された電線加締め部12とから構成されている。相手端子接触部11は、方形状であり、端子収容部3の幅寸法より少し狭い幅に設定されている。相手端子接触部11には、ボルト貫通穴11aが形成されている。相手端子接触部11の両側には、第1切欠部13と第2切欠部14が互いに対応する位置に形成されている。第1切欠部13は、テーパ状リブ8が隙間なく入り込む幅に設定されている。第2切欠部14は、ストレート状リブ9が隙間なく入り込む幅に設定されている。
【0022】
電線加締め部12には、電線Wの端部が加締めによって接続される。
【0023】
次に、端子10の端子収容部3内への装着作業を説明する。端子10の第1切欠部13と第2切欠部14を端子収容部3のテーパ状リブ8とストレート状リブ9に位置合わせし、端子10を底面壁4にほぼ平行にして端子収容部3に挿入する。すると、図3(a)、(b)に示すように、端子10の第2切欠部14がストレート状リブ9に近接対向する位置となり、且つ、端子10の第1切欠部13にテーパ状リブ8が入り込む。これにより、端子10は、その他方側がテーパ状リブ8によって位置決めされた状態となる。
【0024】
次に、図4に示すように、端子10を底面壁4にほぼ平行な状態で端子収容部3内に挿入する。すると、端子10の第1切欠部13にテーパ状リブ8が入り込んでいるため、テーパ状リブ8の傾斜面にガイドされつつ端子10が挿入される。この挿入過程では、端子10は端子収容部3の一方側に水平変移しつつ挿入され、端子10の第2切欠部14にストレート状リブ9が少し入り込む。これにより、端子10は、テーパ状リブ8とストレート状リブ9によって両端側が位置決めされた状態となる。又、前記挿入によって端子10は、その他方の端面が係止突部7にほとんど接触する位置となる。
【0025】
端子10の他方の端面が係止突部7にほとんど接触する位置となると、図5に示すように、端子10の他方側のみを端子収容部3内に挿入する。つまり、斜め挿入する。この斜め挿入によって端子10の他方の端面は係止突部7に大きな外力を作用させることなく挿入可能である。そして、端子10の他方側の端部が係止突部7を越えると、端子10の一方側を奥に挿入する。すると、テーパ状リブ8の傾斜面にガイドされつつ挿入されるため、端子10の第2切欠部14にストレート状リブ9が徐々に深く入り込み、且つ、端子10の一方側の端部が係止突部7の係止面7bと底面壁4の間に徐々に入り込む。図1(b)に示すように、端子10が底面壁4にほぼ平行となる位置まで挿入すれば、端子10の一方側の端部が係止突部7の係止面7bと底面壁4の間に十分に入り込み、これで完了する。
【0026】
以上、説明したように、高圧用コネクタ1は、両側が隔壁5,6で仕切られた端子収容部3と、一方の隔壁5側に設けられた係止突部7と、他方の隔壁6側に設けられ、端子収容部3の入口側から奥に向かうに従って徐々に突出する方向に傾斜するテーパ状リブ8とを有するコネクタハウジング2と、端子収容部3に収容された端子10とを備えている。従って、上記した端子10の装着作業で説明したように、端子10が係止突部7に大きな外力を作用させることなく、端子10を装着できる。以上より、コネクタハウジング2が高剛性材で形成されたものにあって、係止突部7を破損等させることなく端子10を装着でき、その結果、端子10を確実に所望の係止力で係止できる。
【0027】
コネクタハウジング2は、一方の隔壁5側に設けられたストレート状リブ9を有し、ストレート状リブ9の突出量d1は、係止突部7の突出量d2以上の寸法に設定されている。従って、端子10が係止突部7に極力突き当たることなく装着でき、係止突部7を破損等させる可能性を低下させることができる。
【0028】
この実施形態では、端子10に第2切欠部14が設けられているため、ストレート状リブ9を端子収容部3の入口側から係止突部7を越えて底面壁4にまで達する長さに設定されているが、端子10に第2切欠部14を設けない場合には、ストレート状リブ9は端子収容部3の入口側から係止突部7の係止面7bの位置までの長さに設定される。
【0029】
端子10は、テーパ状リブ8が入り込む第1切欠部13を有するので、端子10の装着過程では、端子10の挿入位置の位置決めと共に、端子10を所定の軌跡で挿入するガイドとして機能するため、確実に、且つ、スムーズな装着作業ができる。端子10が第1切欠部13を有さない場合に較べて、端子収容部3内に収容された端子10と隔壁5,6との間隔を小さくできるため、端子収容部3のコンパクト化になる。又、端子10の装着完了後には、端子10の位置決め機能を果たす。
【0030】
端子10は、ストレート状リブ9が入り込む第2切欠部14を有するので、端子10の装着過程では、端子10の挿入位置の位置決めと共に、端子を所定の軌跡で挿入するガイドとして機能するため、確実に、且つ、スムーズな装着作業ができる。端子10が第1切欠部13を有さない場合に較べて、端子収容部3内に収容された端子10と隔壁5,6との間隔を小さくできるため、端子収容部3のコンパクト化になる。又、端子10の装着完了後には、端子10の位置決め機能を果たす。
【0031】
この実施形態では、端子10は、テーパ状リブ8とストレート状リブ9の双方を有するので、上記の相乗効果を期待できる。つまり、端子10の装着作業性の更なる向上、端子収容部3の更なるコンパクト化になり、装着完了後に端子10を更に確実な位置決めできる。
【符号の説明】
【0032】
1 高圧用コネクタ
2 コネクタハウジング
3 端子収容部
4 底面壁
5 一方の隔壁
6 他方の隔壁
7 係止突部
8 テーパ状リブ
9 ストレート状リブ
10 端子
13 第1切欠部
14 第2切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高剛性材より形成され、両側が隔壁で仕切られた端子収容部と、一方の前記隔壁側に設けられた係止突部と、他方の前記隔壁側に設けられ、前記端子収容部の入口側から奥に向かうに従って徐々に突出する方向に傾斜するテーパ状リブとを有するコネクタハウジングと、
前記端子収容部に収容された端子とを備えたことを特徴とする高圧用コネクタ。
【請求項2】
請求項1記載の高圧用コネクタであって、
前記コネクタハウジングは、一方の前記隔壁側に設けられたストレート状リブを有し、前記ストレート状リブの突出量は、係止突部の突出量以上の寸法に設定されていることを特徴とする高圧用コネクタ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の高圧用コネクタであって、
前記端子は、前記テーパ状リブが入り込む第1切欠部を有することを特徴とする高圧用コネクタ。
【請求項4】
請求項2又は請求項3記載の高圧用コネクタであって、
前記端子は、前記ストレート状リブが入り込む第2切欠部を有することを特徴とする高圧用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−109036(P2012−109036A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−254754(P2010−254754)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】