説明

高圧絶縁体を製造する方法

【課題】高圧絶縁体の製造方法を提供する。
【解決手段】ガラスまたは磁器製のスカート(2)と金属キャップ(4)と金属ピン(6)とを含む高圧絶縁体(1)を製造する方法は、キャップ(4)およびピン(6)を封止用モルタルによって絶縁体(1)のスカート(2)にそれぞれ封止するステップを含む。封止用モルタルは、アルミン酸セメントを砂と混合して乾式混合物を形成し、得られた混合物を次に水と混合させることによって得られる。シリカフュームもセメントおよび砂と乾式混合され、混合物を水と混合する前に、カルボキシル官能基およびポリエーテル鎖を含む水溶性分散剤を含有する水溶液が水に添加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスまたは磁器製のスカートもしくは「shed」と金属キャップと金属ピンとを含む高圧絶縁体を製造する方法に関する。当該方法において、キャップおよびピンは、封止用モルタルによって絶縁体のスカートにそれぞれ封止され、封止用モルタルは、アルミン酸セメントを砂と混合して乾式混合物を形成し、得られた混合物を次に水と混合させることによって得られる。
【0002】
特に、本発明は、懸架および係留式絶縁体、より特定的には「キャップ・アンド・ピン("cap-and-pin")」絶縁体に関する。このような絶縁体は、強化ガラスまたは磁器などの誘電材料からなる絶縁スカートを含む。スカートの頂部は、結合材によって、またはアルミン酸セメントをベースとする封止用モルタルによって金属キャップに定着されており、同じ封止用モルタルによって、金属ピンがスカートに定着される。
【背景技術】
【0003】
組立てられると、このような懸架式絶縁体は、高圧および中圧電線の支持体として使用される一連の絶縁体を構成するように、ある絶縁体のピンを隣接する絶縁体のキャップに定着することによって、互いに定着されるように設計される。このような絶縁体は、極めて厳しい気候条件および機械的状態に供することができるが、スカートとピンとの間、およびスカートとキャップとの間に良好な封止が必要である。
【0004】
たとえば、仏国特許第2,031,985号は、ガラスまたは磁器からなる鐘状体および皿状体とともに、金属キャップおよび金属ピンを含む電気絶縁体を開示している。まず、ピンがセメントモルタルによって鐘状体内に封止され、次に、キャップが皿状体上に係合される。したがって、絶縁体を得るには、鐘状体と皿状体とをセメントモルタルで結合することがさらに必要である。
【0005】
従来から、封止用モルタルを調製するためには、砂とアルミン酸セメントとが混合される。得られた混合物を次に水と混合して、封止用モルタルを得る。封止用モルタルは、スカートの一方側をキャップ内に封止し、かつスカートの他方側をピン上に封止するように、スカートの両側に堆積される。
【0006】
セメントと砂とシリカフュームとが乾式混合され、得られた混合物が次に、混和剤が添加された水と混合されるモルタルを製造する方法が知られている。たとえば、米国特許出願第2007/0228612号においては、水分量を減少させるためにポリカルボン酸塩型の水還元剤が水に添加され、米国特許第5,466,289号においては、ビニル共重合体型の分散剤が添加される。あいにく、得られたモルタルはポルトランドセメントベースであり、電気絶縁体を封止するには不十分な量である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】仏国特許第2,031,985号
【特許文献2】米国特許出願第2007/0228612号
【特許文献3】米国特許第5,466,289号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、気孔率が極めて限定され、極めて高い機械的強度を呈する封止用モルタルが使用される上記の高圧絶縁体を製造する方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のため、本発明は、ガラスまたは磁器製のスカートと金属キャップと金属ピンとを含む高圧絶縁体を製造する方法を提供する。当該方法において、キャップおよびピンは、封止用モルタルによって絶縁体のスカートにそれぞれ封止される。封止用モルタルは、アルミン酸セメントを砂と混合して乾式混合物を形成し、得られた混合物を次に水と混合させることによって得られる。当該方法は、シリカフュームもセメントおよび砂と乾式混合されることと、混合物を水と混合する前に、カルボキシル官能基およびポリエーテル鎖を含む水溶性分散剤を含有する水溶液が水に添加されることとを特徴とする。
【0010】
上記シリカフュームによって、モルタルの稠密度を向上させることが有利に可能となり、カルボキシル官能基およびポリエーテル鎖を含む水溶性分散剤を含有する水溶液は「グルコース水溶液」とも称され、水の湿潤力を向上させることができ、したがって、モルタルに添加される水の量を減少させ、ゆえにモルタルの気孔率を低下させることができる。したがって、本発明の方法を使用することによって得られるモルタルの低い気孔率と稠密度の向上とによって、相補的な形で、モルタルの機械的強度の向上が生じる。
【0011】
封止用モルタルを調製するために、多くの試験が行われてきた。これらの試験によって、他の組成の封止用モルタルに対して極めて良好な機械的強度、極めて良好な稠密度、および極めて低い気孔率を有する封止用モルタルが得られてきた。特に、同様の組成であるがシリカフュームまたは水溶液は含まない状態で試験が行われているが、これらの試験は十分な結果をもたらしていない。
【0012】
本発明の高圧絶縁体を製造する方法は、以下の特徴を有し得る。
・アルミン酸セメントの質量は、砂およびセメントの混合物の全質量に対しておよそ50%〜80%の範囲を占め、砂の質量は、砂およびセメントの混合物の全質量に対しておよそ20%〜50%の範囲を占め、シリカフュームの質量は、モルタル中のセメントのみの質量に対しておよそ2%〜10%の範囲を占め、水の質量は、モルタル中のセメントのみの質量に対しておよそ17%〜27%の範囲を占め、水溶液の質量は、モルタル中のセメントのみの質量に対しておよそ0.2%〜0.5%の範囲を占める。
・モルタル中のセメントのみの質量に対して、シリカフュームの質量は好ましくは約6%を占め、水の質量は好ましくは約22%を占め、水溶液の質量は、好ましくは約0.25%を占める。
・セメントは、30%〜75%の範囲のアルミナ成分を含有する。
・砂は、およそ200マイクロメートル(μm)〜300μmの範囲の値を中心とする粒径を有する。
【0013】
本発明は、ガラスまたは磁器製のスカートと金属キャップと金属ピンとを含む高圧絶縁体も提供し、当該絶縁体において、キャップおよびピンは、上記の方法を用いて調製された封止用モルタルによって、絶縁体のスカートにそれぞれ封止される。
【0014】
本発明の非限定的な例を示す添付の図面を参照して、本発明を以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】高圧絶縁体の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、ガラスまたは磁器製のスカート2、モルタル5によってスカート2の頂部3に接続された金属キャップ4、キャップ4のモルタルと同じモルタル5によってスカート2の頂部3内部においてスカート2の空洞7内に接続された金属ピン6を含む高圧絶縁体1を示す。
【0017】
本発明のモルタル5を調製するには、まずアルミン酸セメントと砂とミクロンレベルのシリカフュームとの乾式混合物が、1分〜10分の範囲の時間、規格ミキサ(たとえば、規格NF EN 196−1に準拠したミキサ)において調製される。この乾式混合物において、セメントは、砂とセメントとの混合物の全質量のおよそ50%〜80%の範囲を占め、砂は、砂とセメントとの混合物の全質量のおよそ20%〜50%の範囲を占め、シリカフュームまたはマイクロシリカの質量は、セメントのみの質量のおよそ2%〜10%の範囲、好ましくは約6%を占める。好ましくは、セメントは、「高アルミナ質セメント」または「CIMENT FONDU(登録商標)」としても知られる、およそ30%〜75%の範囲のアルミナ成分を有するアルミン酸セメントの中から選択される。砂は、好ましくは、およそ200μm〜300μmの範囲の値を中心とする制御された粒径の細砂である。シリカフュームはセメントの粒子および砂粒よりもはるかに寸法が小さいため、シリカフュームは、砂粒同士の間隙を公知の方法で充填するセメントと同様に、セメントの粒子と砂粒との間に間隙があれば充填することができ、それによってモルタルの稠密度を向上させることができる。
【0018】
次いで、グルコース水溶液を含む水が乾式混合物に添加され、1分〜15分の範囲の時間、混合が再び行われる。好ましくは、グルコース水溶液は、カルボキシル官能基およびポリエーテル鎖を含む水溶性分散剤を乾式抽出物の約30%含有する水溶液である。このような溶液は、たとえば仏国特許第2,776,285号に記載されている。本発明の方法では、グルコース水溶液は可塑剤として機能し、水の湿潤力を向上させることができる。このように、モルタルに添加される水の量を減少させ、したがってモルタルの気孔率を低下させ、それによってモルタルの機械的強度を向上させることができる。
【0019】
好ましくは、セメントの質量に対する水の質量の比率は、およそ17%〜27%の範囲にあり、好ましくは約22%である。グルコース水溶液は、セメントのみの質量のおよそ0.2%〜0.5%の範囲、好ましくは約0.25%の割合で水に添加される。
【0020】
ミキサの流出口において湿ったモルタルペーストが得られ、絶縁体1のスカート2に供給される前に計量される。モルタルの量は、絶縁体の寸法に正確に依存して計量される。
【0021】
本発明の絶縁体1を組立てるには、モルタルが上記のように調製され、まず、計量されたモルタル5がスカート2の頂部3の空洞7内に供給される。次いで、アセンブリに振動を加えながら、ピン6がモルタル5に挿入され、したがってピン6は、空洞7の端壁に当接するまでモルタルに進入する。新たに計量されたモルタル5がキャップ4内に堆積され、スカート2をキャップ4内の所定位置に容易に配置できるように同じく振動を加えながら、スカート2の頂部3がキャップ4に挿入される。先にキャップ4をスカート2上に配置し、次いでピン6をスカート2内に配置することも可能であると理解することができる。金属ピン6および金属キャップ4をスカート2に組立てる動作は同時であってもよい。
【0022】
最後に、スカート2とキャップ4とピン6とで構成されるアセンブリを、およそ60分〜120分の範囲の時間、水槽、好ましくはおよそ50°C〜70°Cの範囲の温度の温水槽に浸漬することによって、モルタルが硬化される。8時間〜24時間の範囲の時間、大気温度の水槽にモルタルを浸漬することも可能である。このようにして硬化すると、モルタルは、大気温度の周囲空気において冷却される。
【実施例】
【0023】
アルミン酸セメントをベースとし、かつ以下のプロトコルを用いて調製されたモルタルに対して、機械的強度試験を行った。
・セメントと砂と、該当する場合にはシリカとを1分間乾式混合し、
・混合水と、該当する場合にはグルコース溶液とを添加し、次いで4分間混合する。
【0024】
1時間(hr)30分(mins)間、55°Cの水中で硬化するようモルタルを処理し、次いで1時間20°Cの空気中で冷却した後で機械的強度試験を行った。規格NF EN 196−1衝撃テーブル上で製造された4センチメートル(cm)×4cm×16cmの寸法の試験片に対して、機械的強度を測定した。
【0025】
表1は、本発明の方法を用いて調製されたモルタルと、混和剤を含まない従来のモルタルと、他の試験用モルタルとに関する曲げ強度および圧縮強度の結果を示す。表1から分かるように、本発明の封止用モルタル(表1の2列目)の組成は、混和剤を含まない参照用組成(1列目)およびシリカフュームのみを含む組成(3列目)またはグルコース水溶液のみを含む組成(4列目)よりも、曲げおよび圧縮の両方において、はるかに良好な強度を示す。
【0026】
【表1】

【符号の説明】
【0027】
1 高圧絶縁体、2 スカート、3 頂部、4 金属キャップ、5 モルタル、6 金属ピン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスまたは磁器製のスカート(2)と金属キャップ(4)と金属ピン(6)とを含む高圧絶縁体(1)を製造する方法であって、前記方法において、キャップ(4)およびピン(6)は、封止用モルタルによって絶縁体(1)の前記スカート(2)にそれぞれ封止され、封止用モルタルは、アルミン酸セメントを砂と混合して乾式混合物を形成し、得られた混合物を次に水と混合させることによって得られ、前記方法は、シリカフュームもセメントおよび砂と乾式混合されることと、混合物を水と混合する前に、カルボキシル官能基およびポリエーテル鎖を含む水溶性分散剤を含有する水溶液が前記水に添加されることとを特徴とする、方法。
【請求項2】
アルミン酸セメントの質量は、砂およびセメントの混合物の全質量に対しておよそ50%〜80%の範囲を占め、砂の質量は、砂およびセメントの混合物の全質量に対しておよそ20%〜50%の範囲を占め、シリカフュームの質量は、モルタル中の前記セメントのみの質量に対しておよそ2%〜10%の範囲を占め、水の質量は、モルタル中の前記セメントのみの質量に対しておよそ17%〜27%の範囲を占め、前記水溶液の質量は、モルタル中の前記セメントのみの質量に対しておよそ0.2%〜0.5%の範囲を占める、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
モルタル中の前記セメントのみの質量に対して、シリカフュームの質量は好ましくは約6%を占め、水の質量は好ましくは約22%を占め、前記水溶液の質量は、好ましくは約0.25%を占める、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記セメントは、30%〜75%の範囲のアルミナ成分を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記砂は、およそ200μm〜300μmの範囲の値を中心とする粒径を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−208937(P2010−208937A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51762(P2010−51762)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(593078969)セデイベ・ソシエテ・ユロペエヌ・デイゾラトウール・アン・ベール・エ・コンポジツト (1)
【Fターム(参考)】