高密度多波長光源
【課題】広帯域にわたって良好なSNRを得ることができる高密度多波長光源を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態による多波長光源は、スーパーコンティニウム(SC)光を発生させる複数のSC光発生手段と、発生されたSC光を多重する光多重手段とを備え、複数のSC光発生手段ごとにSC光の縦モードが所定の光周波数ずつ異なるように設定されている。また、本発明の他の実施形態による多波長光源は、所定の繰り返し周波数で光パルスを発生させる複数の光パルス発生手段であって、光パルスの繰り返し周波数に等しい周波数間隔の縦モードを有する光パルス発生手段と、発生された光パルスを多重する光多重手段と、多重された光パルスを非線形媒質に入射して、スーパーコンティニウム(SC)光を発生させるSC光発生手段とを備えている。上記の構成により、良好なSNRを維持したまま、広帯域・高密度の多波長光源を実現することができる。
【解決手段】本発明の一実施形態による多波長光源は、スーパーコンティニウム(SC)光を発生させる複数のSC光発生手段と、発生されたSC光を多重する光多重手段とを備え、複数のSC光発生手段ごとにSC光の縦モードが所定の光周波数ずつ異なるように設定されている。また、本発明の他の実施形態による多波長光源は、所定の繰り返し周波数で光パルスを発生させる複数の光パルス発生手段であって、光パルスの繰り返し周波数に等しい周波数間隔の縦モードを有する光パルス発生手段と、発生された光パルスを多重する光多重手段と、多重された光パルスを非線形媒質に入射して、スーパーコンティニウム(SC)光を発生させるSC光発生手段とを備えている。上記の構成により、良好なSNRを維持したまま、広帯域・高密度の多波長光源を実現することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多波長光源に関する。より詳しくは、本発明は、波長分割多重光伝送システムや光信号処理および光周波数基準などに利用することができる多波長光源に関する。
【背景技術】
【0002】
通信トラヒックの増大に伴い、光通信システムにおいて伝送容量を増大するために波長多重光伝送方式が用いられている。波長多重光伝送を行うためには、その波長数分の光源が必要となる。このため、光源の数だけ費用がかかり、またこれら光源の波長の正確な調整が必要となる。そこで、1つの光源から多波長光を一括して発生させる多波長光源が検討されている。
【0003】
多波長光源として、スーパーコンティニウム(SC)光発生技術を用いて多波長光を発生させる多波長光源が各種報告されている(たとえば、特許文献1および2)。図16に従来の多波長光源の構成例と、この多波長光源の各部の光スペクトルを示す。
【0004】
短パルス光源10は、多波長光の繰り返し周波数に等しい周波数間隔の縦モードで構成された光パルスを発生する。この光パルスを光増幅器20により増幅して強い強度で非線形光ファイバ30に入射させると、非線形光ファイバ30を伝搬中に、光スペクトル相互の非線形光学効果によって、もとの光パルスの光スペクトルの短波長側および長波長側に新たな光スペクトルが発生する。非線形光ファイバ30をさらに伝搬すると、その発生した光スペクトルのさらに短波長側および長波長側に新たな光スペクトルが発生する。これを繰り返すことにより、非線形光ファイバ30を伝搬するうちに、入射した光スペクトルは広帯域な光スペクトルになる(図16の光スペクトルを参照)。この技術をスーパーコンティニウム光発生技術という。このようなスーパーコンティニウム光の1つ1つの縦モードを光フィルタにより取り出すことによって、単一縦モードの連続光が得られ、波長多重伝送用の光源などとして使用される。
【0005】
【特許文献1】特開平8−29815号公報
【特許文献2】特願2005−201327号明細書
【非特許文献1】K. Mori, and K. Sato, “Supercontunuum Lightwave Generation Employing a Mode-Locked Laser Diode With Injection Locking for a Highly Coherent Optical Multicarrier Source,” IEEE Photon. Technol. Lett., vol.17, no.2, pp480-482, Feb. 2005.
【非特許文献2】Takara, H., Ohara, T., Yamamoto, T., Masuda, H., Abe. M., Takahashi, H., Morioka, T. “Field demonstration of over 1000-chanel DWDM transMission with supercontinuuM Multi-carrier source,” Electron. Lett., 2005, 41,(5).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スーパーコンティニウム光では、励起用の短パルス光源のエネルギーが発生する全ての縦モードに分配され、広帯域の波長多重光が得られる。したがって、高密度に波長多重された多くの多波長光を発生させようとすると、一波長あたりのエネルギーが減少し、信号対雑音比(SNR)が低くなるという問題があった。また、良好なSNRを得ようとすると、多波長光の波長帯域を狭くしなければならないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、広帯域にわたって良好なSNRを得ることができる高密度多波長光源を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、多波長光を発生する多波長光源であって、スーパーコンティニウム(SC)光を発生させる複数のSC光発生手段と、前記複数のSC光発生手段からのSC光を多重する光多重手段とを備え、前記複数のSC光発生手段からの出力光の縦モードの光周波数が前記複数のSC光発生手段毎に所定の周波数ずつ異なるように設定されたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、多波長光を発生する多波長光源であって、光パルスを発生させる複数の光パルス発生手段と、前記複数の光パルス発生手段からの光パルスを多重する光多重手段と、前記多重された光パルスを入射して、スーパーコンティニウム(SC)光を発生させる非線形光学媒質とを備え、前記複数の光パルス発生手段は、所定の繰り返し周波数で光パルスを発生し、前記光パルスは前記繰り返し周波数に等しい周波数間隔の縦モードを有し、前記複数の光パルス発生手段から出力される前記光パルスの縦モードの光周波数が前記複数の光パルス発生手段毎に所定の周波数ずつ異なるように設定されたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の多波長光源であって、連続光を発生させる光源と、前記光源からの連続光を周波数(2・N+1)・Δf(ここでNは自然数)で変調して、光周波数(2・N+1)・Δf間隔の複数の縦モードを有する変調光を出力する変調手段と、前記変調手段からの変調光を分波して2つの縦モードを出力する光分波手段とを備え、前記分波手段からの分波された2つの縦モードのそれぞれを種光として前記複数のSC光発生手段に供給するよう構成されたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の多波長光源であって、連続光を発生させる光源と、前記光源からの連続光を周波数(2・N+1)・Δf(ここでNは自然数)で変調して、光周波数(2・N+1)・Δf間隔の複数の縦モードを有する変調光を出力する変調手段と、前記変調手段からの変調光を分波して2つの縦モードを出力する光分波手段とを備え、前記分波手段からの分波された2つの縦モードのそれぞれを種光として前記複数の光パルス発生手段に供給するよう構成されたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載の多波長光源であって、前記光多重手段は、光偏波多重手段であることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1に、本発明の第1の実施形態に係る高密度多波長光源の基本構成を示す。この多波長光源100は、等しい周波数間隔の縦モードで構成されたスーパーコンティニウム光を発生するN個(Nは2以上の自然数)のスーパーコンティニウム(SC)光発生手段120−1〜Nと、これらN個のSC光発生手段からのSC光を多重する光多重手段140とから構成されている。ここで、それぞれのスーパーコンティニウム光発生手段は、図2(a)に示すように、縦モードの周波数間隔をN・Δfとして、それぞれのSC光発生手段の縦モード周波数がΔfずつ異なるように配置されている。そして、これらΔfずつ異なるSC光を光多重手段140により合波することで、図2(b)に示すように、広帯域にわたる高密度の多波長光を得ることができる。
【0015】
本実施形態によれば、SC光発生手段120−1〜Nは、最終的に発生させる高密度多波長光の縦モードの間隔ΔfのN倍の周波数間隔の縦モードを生成すればよい。周波数間隔がΔfの多波長光を発生されるには、周波数間隔Δfの1つのSC光発生手段から生成する場合より、周波数間隔N・ΔfのN個のSC光発生手段を用いる方が、1つのSC光発生手段で発生させる縦モードの数は1/Nでよいため、SNRの良好な広帯域な多波長光を容易に得ることができる。なお、スーパーコンティニウム光源はこれまでに様々な方法が考案されており、そのいずれも本発明に適用可能である。
【0016】
次に、本発明の第1の実施形態による高密度多波長光源の具体例について説明する。図3に、その構成を示す。この多波長光源100aは、等しい周波数間隔の縦モードで構成されたスーパーコンティニウム光を発生するN個(Nは2以上の自然数)のスーパーコンティニウム(SC)光発生手段120a−1〜Nと、これらN個のSC光発生手段から発生するスーパーコンティニウム光を多重する光合波器140とから構成されている。
【0017】
SC光発生手段120a−1〜Nのそれぞれは、図3に示すように、単一縦モードで発振する光源121と、光源からの光を位相変調する光位相変調器122と、光位相変調器に変調信号を印加するRF発振器123と、位相変調された光信号に波長分散を与えて光パルス列に変換するための分散付与用光ファイバ124と、SC光を発生させる光ファイバ127とから構成されている。SC光発生用光ファイバ127への入力光強度が、SC光を発生させるのに不十分な場合は、図示したように、光パルス列を増幅する光増幅器125と、増幅された光パルス列をフィルタリングする光バンドパスフィルタ126をSC光発生用光ファイバ127の前段に挿入してもよい。また、波長分散付与用光ファイバ124に代えて、ファイバグレイティングや平面型光波回路を用いることもできる。
【0018】
SC光発生用光ファイバ127は、長手方向に波長分散が異常分散から正常分散に減少しており、入射する光パルスのピークパワーと、出力される拡大したスペクトル幅の関係が所望の非線形特性を有している。具体的には、SC光発生用光ファイバ127において光スペクトル拡大が起きる光パワーしきい値を、入射する光パルス列のピークパワーよりも低く、かつ光パルス列のすそのペデスタルのパワーよりも高くすることで、広帯域においてばらつきが少ないSNRの良好なスーパーコンティニウム光を発生させることができる(特許文献2参照)。
【0019】
なお、SC光発生手段120aとして、位相変調器122に代えて光強度変調器を使用することもできる。この場合、分散付与用光ファイバ124は不要となる。また、光位相変調器122と分散付与用光ファイバ124に代えて注入同期型モードロック半導体レーザを使用することも可能である。このような注入同期型モードロック半導体レーザを用いたSC光発生手段は、例えば非特許文献1に記載されている。
【0020】
本実施形態では、複数のスーパーコンティニウム光発生手段からの多波長光を光多重手段で合波し、正確に縦モード間隔Δfの高密度多波長光を得る必要がある。そのためには、合波する多波長光が正確にΔfずつずれた縦モードを有していなければならない。すなわち、複数のSC光発生手段によって生成される多波長光の縦モードの光周波数を同期させる必要がある。そこで、各SC光発生手段の光源121の光周波数を同期化するために光周波数同期化手段111を用いている。例えば、2つの光源の光をフォトダイオードで受光すると、2つの光源の光周波数の差に相当する周波数のビートが得られる。これがΔfになるように光源の発振周波数を制御することにより2つの光源からの光の周波数差を正確にΔfだけずれるように設定することができる。3つ以上の場合も上記の原理を用いてそれぞれの光周波数がΔfだけずれた複数の光源を得ることができる。
【0021】
(第2の実施形態)
次に、より簡単な構成で正確に光周波数がΔfずつ異なる光源を得るための構成について説明する。連続光を位相変調や強度変調などで変調すると、入力連続光の光周波数を中心としていくつかのサイドモードが立つ。この隣接するサイドモード間および中心モードと隣接するサイドモード間の周波数間隔は正確に変調周波数に等しい。これらの縦モードの間隔の確度は、変調に使用する電気のマイクロ波発振器の周波数確度によって決まるので、その確度を電気のマイクロ波発振器の周波数確度と同程度のKHzオーダーとすることができる。したがって、縦モード間隔の確度を、10−9以上にすることができる。
【0022】
このように、単一の縦モードを有する連続光を周波数Δfで位相変調または強度変調し、もとの連続光の縦モードを中心として光周波数間隔Δfの複数のサイドモードを得ることができる。少なくともN−1個のサイドモードが立つように変調指数を設定すれば、本発明に適用可能なN個の種光源を得ることができる。
【0023】
図4に、第2の実施形態として縦モードの光周波数が同期した2つのSC光源を得るための具体的な構成例を示す。この多波長光源100bは、単一縦モードからなる連続光を出力する光源110と、連続光を周波数(2・M+1)・Δfで変調し(ここで、Mは自然数)、入射した連続光の縦モードを中心としてその両側に変調周波数に等しい光周波数間隔の1つ以上のサイドモードを発生させる光変調手段112と、光周波数が(2・M+1)・Δfだけ異なる中心モードとサイドモードからなる光変調手段からの出力光を分波する光分波手段114と、分波された光を種光として光周波数2・Δf間隔のSC光を発生させるSC光発生手段120b−1および120b−2と、これらSC光発生手段からの多波長光を多重する光多重手段140とから構成されている。
【0024】
このように構成することで、変調手段112による種光の縦モードの間隔(2・M+1)・Δfの確度を、電気のマイクロ波発振器113の周波数確度であるKHzオーダーとすることができる。また、光源110として、±1MHz以下の出力周波数確度および安定度を持つ光周波数安定化光源が市販されているので、本構成により絶対光周波数確度±1MHz程度以下の2つの種光を得ることができる。これらを、光分波手段114を介してSC光発生手段120b−1、2に入力し、その出力のSC光を多重することにより、±1MHz程度以下の周波数確度を持つΔf間隔の多波長光を得ることができる。
【0025】
なお、本構成により、光変調手段112からの出力光の光周波数間隔が(2・M+1)・Δfとなるので、光周波数間隔Δfの出力光を分波する場合に比べて、光分波手段114に要求される分波特性を緩和することができる。特に、Mを大きくとると、光分波手段114としてより安価な光フィルタを用いることができる。
【0026】
(第3の実施形態)
図5に、本発明の第3の実施形態に係る高密度多波長光源の基本構成を示す。この多波長光源200は、等しい周波数間隔の縦モードで構成されたスーパーコンティニウム光を発生する2個のスーパーコンティニウム(SC)光発生手段220−1および220−2と、これらSC光発生手段から発生するSC光を偏波多重する光偏波多重手段240とから構成されている。ここで、それぞれのSC光発生手段220は、図6(a)に示すように、縦モードの周波数間隔を2・Δfとして、それぞれのSC光発生手段の縦モード周波数がΔfずつ異なるように配置されている。そして、これらΔfずつ異なるSC光を、それぞれの偏波方向が直交するように光偏波多重手段240により合波することで、図6(b)に示すように、広帯域にわたる高密度の多波長光を得ることができる。
【0027】
本実施形態によれば、SC光発生手段220は、最終的に発生させる高密度多波長光の縦モードの間隔Δfの2倍の周波数間隔の縦モードを生成すればよい。そのため、周波数間隔がΔfの縦モードを有するSC光に比べて、SNRの良好な広帯域のSC光を容易に発生させることができる。
【0028】
第1の実施形態では、合波する複数のSC光の偏波は同一のものもあり、直交するものもあるが、同一方向の偏波で合波されたSC光は(縦モードが近い場合は特に)互いに干渉を起こし、非線形光学効果等により雑音として重畳され、光信号の品質を劣化させる可能性がある。これに対して、本実施形態では、スーパーコンティニウム光が互いに直交する偏波で多重されるため、干渉を起こさず信号の品質劣化を最小限に抑えることができる。なお、スーパーコンティニウム光源はこれまでに様々な方法が考案されており、そのいずれも本発明に適用可能である。また、ここでは2つのSC光を多重する場合で説明したが、第一の実施例のようにN個のSC光を多重する場合にも、縦モード周波数がΔfずつずれたN個のSC光を交互に直交する偏波で多重することにより、雑音特性が改善する。
【0029】
次に、本発明の第3の実施形態による高密度多波長光源の具体例について説明する。図7に、その構成を示す。この多波長光源200aは、2つのSC光発生手段220a−1および220a−2と、これらSC光発生手段からのSC光を互いに直交する偏波で多重する光偏波合波器240とから構成されている。また、多波長光源200aは、2つのSC光発生手段に光周波数が(2・M+1)・Δfだけ異なり、同期した種光を提供するために、出力光周波数の安定した光周波数安定化光源210と、この光源からの連続光を位相変調する位相変調手段212と、光位相変調手段に周波数(2・M+1)・Δf(ここで、Mは自然数)の変調信号を印加するRF発振器213と、光位相変調手段からの中心モードとサイドモードからなる出力光を分波して光周波数が(2・M+1)・Δfだけ異なる種光をSC光発生手段に提供するAWG光フィルタ214とを備えている。なお、光周波数安定化光源210からの出力光の強度が十分でなければ、図に示したように光増幅器を追加してもよい。
【0030】
SC光発生手段220a−1および220a−2のそれぞれは、図7に示すように、AWG光フィルタ214からの種光を位相変調する光位相変調器222と、光位相変調器に変調周波数2・Δfの変調信号を印加するRF発振器223と、位相変調された光信号に波長分散を与えて光パルス列に変換するための分散付与用光ファイバ224と、SC光を発生させる光ファイバ227とから構成されている。SC光発生用光ファイバ227への入力光強度が、SC光を発生させるのに不十分な場合は、図示したように、光パルス列を増幅する光増幅器225と、増幅された光パルス列をフィルタリングし、光増幅器からのASE光からなる雑音成分を除去する光バンドパスフィルタ226をSC光発生用光ファイバ227の前段に挿入してもよい。
【0031】
なお、SC光発生手段220aとして、位相変調器222に代えて光強度変調器を使用することもできる。この場合、分散付与用光ファイバ224は不要となる。また、光位相変調器222と分散付与用光ファイバ224に代えて注入同期型モードロック半導体レーザを使用することも可能である。このような注入同期型モードロック半導体レーザを用いたSC光発生手段は、例えば非特許文献1に記載されている。
【0032】
以上のように、SC光発生手段の縦モードの周波数間隔を2・Δfとし、互いの縦モード周波数がΔfだけ異なるように設定し、各SC光発生手段からのスーパーコンティニウム光を偏波多重することにより、周波数間隔Δfの縦モードを有するSNRの良い高密度のスーパーコンティニウム光を得ることができる。
【0033】
次に、本実施形態における実験の結果について説明する。なお、スーパーコンティニウム光源はこれまでに様々な方法が考案されており、そのいずれも本発明に適用可能であるが、今回の実験では非特許文献2に示されている方法を用いた。
【0034】
図8に実験結果を示す。図8(a)は、従来の構成により、単一のスーパーコンティニウム光源を用いて、2.5GHz間隔の多波長光を発生させた場合の光スペクトルを示している。図8(b)は、本発明の構成により、5GHz間隔の多波長光からなる2系統のスーパーコンティニウム光源を用いて、2.5GHz間隔の多波長光を発生させた場合の光スペクトルを示し、図8(c)は、発生させた多波長光のうち1605nmの波長の光周波数安定性を示している。
【0035】
図8(b)および(c)に示す多波長光は、本発明の構成により、2系統のスーパーコンティニウム光のそれぞれの中心の縦モードが2.5GHzずれるようにし、さらにそれぞれの偏光方向が直交するように合波して得られた。
【0036】
図8(a)からわかるように、従来の単一のスーパーコンティニウム光源を用いた場合は、およそ1510nmから1605nmまでにわたって約4800波長の波長多重光が得られている。図8(a)からはこれより外側の波長域までSC光のスペクトルの広がりが観測されているが、良好な縦モードは観測できなかった。これは、この波長域のSC光のSNRが低いためと思われる。
【0037】
これに対して、本発明による2系統のスーパーコンティニウム光源を用いた場合は図9(b)に示すように1460nmから1640nmまで縦モードが発生していることを確認できた。使用した測定器の測定範囲が1640nmまでであるためそれ以上の波長で縦モードがどの程度出ているかは確認できなかったが、5GHz間隔のスーパーコンティニウム光源からは1660nm以上まで縦モードが出ているので、ほぼその程度まで縦モードがでていると推察され、10,000波近い多波長光が発生していると思われる。
【0038】
以上のように1系統のスーパーコンティニウム光源をもちいた場合に比べて、2系統のスーパーコンティニウム光の偏波を直交させて合波した場合は、波長多重光の発生する帯域を倍程度に広げることができることがわかる。
【0039】
さらに発生した多波長光から1波長を取り出し、光周波数安定性を測定した。測定には確度±30MHzの波長計を使用した。図8(c)から、測定に使用した波長計の確度である±30MHz以下の安定性を示していることがわかる。
【0040】
以上のように、本発明によれば簡単な構成で、広い波長域にわたってSNRの良好な多波長光を得ることができ、また、各縦モードの周波数安定性も良いことがわかる。
【0041】
(第4の実施形態)
図9に、本発明の第4の実施形態に係る高密度多波長光源の基本構成を示す。この多波長光源は、周波数間隔N・Δfの縦モードで構成される繰り返し光パルスを発生するN個(Nは2以上の自然数)の短パルス光発生手段320−1〜Nと、これらN個の短パルス光発生手段からの光パルスを多重する光多重手段340と、多重された光パルスのスペクトル幅を拡大する非線形光学媒質350とから構成されている。ここで、それぞれの短パルス光発生手段320は、図10(a)に示すように、光パルスの縦モードが互いにΔfずつ異なるように配置されている。これらΔfずつ異なる光パルスを光多重手段340により合波することで、図10(b)に示すように、高密度の縦モードからなる短パルス光を得る。そして、図10(c)に示すように、これらΔfずつ異なる光パルスが非線形光学媒質350に入射することにより、広帯域にわたる光周波数間隔Δfの高密度多波長光を得ることができる。
【0042】
次に、本発明の第4の実施形態による高密度多波長光源の具体例について説明する。図11に、その構成を示す。この多波長光源300aは、等しい周波数間隔の縦モードで構成された光パルスを発生するN個(Nは2以上の自然数)の短パルス光発生手段320a−1〜Nと、これらN個の短パルス光発生手段から発生する光パルスを多重する光合波器340と、多重された光パルスのスペクトル幅を拡大する非線形光学媒質350とから構成されている。
【0043】
短パルス光発生手段320a−1〜Nのそれぞれは、図11に示すように、単一縦モードで発振する光源321と、光源からの光を位相変調する光位相変調器322と、光位相変調器に変調信号を印加するRF発振器323と、位相変調された光信号に波長分散を与えて光パルス列に変換するための分散付与用光ファイバ324とから構成されている。短パルス光発生手段の出力光強度が、SC光を発生させるのに不十分な場合は、図示したように、光パルス列を増幅する光増幅器325と、増幅された光パルス列をフィルタリングする光バンドパスフィルタ326を分散付与用光ファイバ324の出力に追加してもよい。また、波長分散付与用光ファイバ324に代えて、ファイバグレイティングや平面型光波回路を用いることもできる。さらに、短パルス光発生手段320aとして、位相変調器322に代えて光強度変調器を使用することもできる。この場合、分散付与用光ファイバ324は不要となる。また、光位相変調器322と分散付与用光ファイバ324に代えて注入同期型モードロック半導体レーザを使用することも可能である。
【0044】
SC光発生用光ファイバ350は、長手方向に波長分散が異常分散から正常分散に減少しており、入射する光パルスのピークパワーと、出力される拡大したスペクトル幅の関係が所望の非線形特性を有している。具体的には、SC光発生用光ファイバ350において光スペクトル拡大が起きる光パワーしきい値を、入射する光パルス列のピークパワーよりも低く、かつ光パルス列のすそのペデスタルのパワーよりも高くすることで、広帯域においてばらつきが少ない高SNRのスーパーコンティニウム光を発生させることができる(特許文献2参照)。
【0045】
本実施形態では、複数の短パルス光発生手段からの光パルスを光多重手段で合波し、正確に縦モード間隔Δfの光パルスを得る必要がある。そのためには、合波する光パルスが正確にΔfずつずれた縦モードを有していなければならない。すなわち、複数の光パルス信号発生手段によって生成される光パルスの縦モードの光周波数を同期させる必要がある。そこで、各短パルス光発生手段の光源321の光周波数を同期化するために光周波数同期化手段311を用いている。例えば、2つの光源の光をフォトダイオードで受光すると、2つの光源の光周波数の差に相当する周波数のビートが得られる。これがΔfになるように光源の発振周波数を制御することにより2つの光源からの光の周波数差を正確にΔfだけずれるように設定することができる。3つ以上の場合も上記の原理を用いてそれぞれの光周波数がΔfだけずれた複数の光源を得ることができる。
【0046】
(第5の実施形態)
次に、図4の第2の実施形態と同様の原理により、縦モードの光周波数が同期した2つの光源を得るための構成例について説明する。図12に、縦モードの光周波数が同期した2つの短パルス光源を得るための具体的な構成例を示す。この多波長光源300bは、単一縦モードからなる連続光を出力する光源310と、この連続光を周波数(2・M+1)・Δfで変調し(ここで、Mは自然数)、入射した縦モードを中心としてその両側に変調周波数に等しい光周波数間隔の1つ以上のサイドモードを発生させる光変調手段312と、光周波数が(2・M+1)・Δfだけ異なる中心モードとサイドモードからなる光変調手段からの出力光を分波する光分波手段314と、分波された光を種光として光周波数2・Δf間隔の縦モードを有する光パルスを発生させる短パルス光発生手段320b−1および320b−2と、これら短パルス光発生手段からの光パルスを多重する光多重手段340と、多重された光パルスのスペクトル幅を拡大する非線形光学媒質350とから構成されている。
【0047】
このように構成することで、変調手段312による種光の縦モードの間隔(2・M+1)・Δfを、電気のマイクロ波発振器313の周波数確度であるKHzオーダーとすることができる。また、光源310として、±1MHz以下の出力周波数確度および安定度を持つ光周波数安定化光源が市販されているので、本構成により絶対光周波数確度±1MHz程度以下の2つの種光を得ることができる。これらを、光分波手段314を介して短パルス光発生手段320b−1、2に入力し、その出力の光パルスを多重することにより、±1MHz程度以下の周波数確度を持つΔf間隔の光パルスを得ることができる。
【0048】
なお、本構成により、光変調手段312からの出力光の光周波数間隔が(2・M+1)・Δfとなるので、光分波手段314に要求される分波特性を緩和することができる。特に、Mを大きくとると、光分波手段314としてより安価な光フィルタを用いることができる。
【0049】
本実施形態によれば、SC光を発生させる種光となる短パルス光としてN個の短パルス光発生手段を用いるため、1個の短パルス光発生手段を用いてSC光を発生させる場合に比べてSNRの良好な短パルス光を容易に発生させることができ、これによりSNRの良好な広帯域のスーパーコンティニウム光を発生させることができる。
【0050】
(第6の実施形態)
図13に、本発明の第6の実施形態に係る高密度多波長光源の基本構成を示す。この多波長光源400は、周波数間隔2・Δfの縦モードから構成される繰り返し光パルスを発生する短パルス光発生手段420−1および420−2と、これらの短パルス光発生手段からの光パルスを光偏波多重する光偏波多重手段440と、多重された光パルスのスペクトル幅を拡大する非線形光学媒質450とから構成されている。ここで、それぞれの短パルス光発生手段420は、図14(a)に示すように、光パルスの縦モードが互いにΔfずつ異なるように配置されている。これらΔfずつ異なる光パルスを光多重手段440により合波することで、図14(b)に示すように、高密度の縦モードからなる短パルス光を得る。そして、図14(c)に示すように、これらΔfずつ異なる光パルスが非線形光学媒質450に入射することにより、広帯域にわたる光周波数間隔Δfの高密度多波長光を得ることができる。
【0051】
第4の実施形態では、合波する複数の繰り返し光パルスの偏波は同一のものもあり、直交するものもあるが、同一方向の偏波で合波された繰り返し光パルスは(縦モードが近い場合は特に)互いに干渉を起こし、非線形光学効果等により雑音として重畳され、光信号の品質を劣化させる可能性がある。これに対して、本実施形態では、光パルスが互いに直交する偏波で多重されるため、干渉を起こさず信号の品質劣化も最小限に抑えることができる。また、ここでは2つの短パルス光を多重する場合で説明したが、第四の実施例のようにN個の短パルス光を多重する場合にも、縦モード周波数がΔfずつずれたN個の短パルス光を交互に直交する偏波で多重することにより、雑音特性が改善する。
【0052】
次に、本発明の第6の実施形態による高密度多波長光源の具体例について説明する。図15に、その構成を示す。この多波長光源400aは、2つの短パルス光発生手段420a−1および420a−2と、これら短パルス光発生手段からの光パルスを互いに直交する偏波で多重する光偏波合波器440と、多重された光パルスのスペクトル幅を拡大する非線形光学媒質450とから構成されている。また、多波長光源400aは、2つの短パルス光発生手段に光周波数が(2・M+1)・Δfだけ異なり、同期した種光を提供するために、出力光周波数の安定した光周波数安定化光源410と、この光源からの連続光を位相変調する位相変調手段412と、光位相変調手段に周波数(2・M+1)・Δf(ここで、Mは自然数)の変調信号を印加するRF発振器413と、光位相変調手段からの中心モードとサイドモードからなる出力光を分波して光周波数が(2・M+1)・Δfだけ異なる種光をSC光発生手段に提供するAWG光フィルタ414とを備えている。なお、光周波数安定化光源410からの出力光の強度が十分でなければ、図に示したように光増幅器を追加してもよい。
【0053】
短パルス光発生手段420a−1および420a−2のそれぞれは、図15に示すように、AWG光フィルタ414からの種光を位相変調する光位相変調器422と、光位相変調器に変調周波数2・Δfの変調信号を印加するRF発振器423と、位相変調された光信号に波長分散を与えて光パルス列に変換するための分散付与用光ファイバ424とから構成されている。短パルス光発生手段の出力光強度が、SC光を発生させるのに不十分な場合は、図示したように、光パルス列を増幅する光増幅器425と、増幅された光パルス列をフィルタリングする光バンドパスフィルタ426を分散付与用光ファイバ424の出力に追加してもよい。また、波長分散付与用光ファイバ424に代えて、ファイバグレイティングや平面型光波回路を用いることもできる。さらに、短パルス光発生手段420aとして、位相変調器422に代えて光強度変調器を使用することもできる。この場合、分散付与用光ファイバ424は不要となる。また、光位相変調器422と分散付与用光ファイバ424に代えて注入同期型モードロック半導体レーザを使用することも可能である。
【0054】
以上のように、短パルス光発生手段の縦モードの周波数間隔を2・Δfとし、互いの縦モード周波数がΔfだけ異なるように設定し、各短パルス光発生手段からの光パルスを偏波多重し、SC発生用光ファイバに入射することにより、周波数間隔Δfの縦モードを有するSNRの良い高密度のスーパーコンティニウム光を得ることができる。
【0055】
以上、本発明について、いくつかの実施形態について具体的に説明したが、本発明の原理を適用できる多くの実施可能な形態に鑑みて、ここに記載した実施形態は、単に例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。ここに例示した実施形態は、本発明の趣旨から逸脱することなくその構成と詳細を変更することができる。さらに、説明のための構成要素および手順は、本発明の趣旨から逸脱することなく変更、補足、またはその順序を変えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る高密度多波長光源の基本構成を示す図である。
【図2】図1の各部の光スペクトルを示す図であり、図2(a)はスーパーコンティニウム光発生手段の出力光スペクトルを示し、図2(b)は光多重手段の出力光スペクトルを示している。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る高密度多波長光源の具体例を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る高密度多波長光源の具体例を示す図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る高密度多波長光源の基本構成を示す図である。
【図6】図5の各部の光スペクトルを示す図であり、図6(a)はスーパーコンティニウム光発生手段の出力光スペクトルを示し、図6(b)は光偏波多重手段の出力光スペクトルを示している。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る高密度多波長光源の具体例を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る高密度多波長光源の実験結果を示す図であり、図8(a)は従来のスーパーコンティニウム光発生手段による光スペクトルの結果を示し、図8(b)は本発明の第3の実施形態に係る高密度多波長光源による光スペクトルの結果を示し、図8(c)は本発明の第3の実施形態に係る高密度多波長光源の光周波数安定性の結果を示している。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る高密度多波長光源の基本構成を示す図である。
【図10】図9の各部の光スペクトルを示す図であり、図10(a)は短パルス光源の出力光スペクトルを示し、図10(b)は光多重手段の出力光スペクトルを示している。
【図11】本発明の第4の実施形態に係る高密度多波長光源の具体例を示す図である。
【図12】本発明の第4の実施形態に係る高密度多波長光源の別の具体例を示す図である。
【図13】本発明の第6の実施形態に係る高密度多波長光源の基本構成を示す図である。
【図14】図13の各部の光スペクトルを示す図であり、図14(a)は短パルス光源の出力光スペクトルを示し、図14(b)は光偏波多重手段の出力光スペクトルを示し、図14(c)は非線形光学媒質の出力光スペクトルを示している。
【図15】本発明の第6の実施形態に係る高密度多波長光源の具体例を示す図である。
【図16】従来の多波長光源の基本構成を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
100,200,300,400 多波長光源
124,224,324 分散付与用光ファイバ
125,225,325 光増幅器
127,227 SC光発生用光ファイバ
350,450 非線形光学媒質
【技術分野】
【0001】
本発明は、多波長光源に関する。より詳しくは、本発明は、波長分割多重光伝送システムや光信号処理および光周波数基準などに利用することができる多波長光源に関する。
【背景技術】
【0002】
通信トラヒックの増大に伴い、光通信システムにおいて伝送容量を増大するために波長多重光伝送方式が用いられている。波長多重光伝送を行うためには、その波長数分の光源が必要となる。このため、光源の数だけ費用がかかり、またこれら光源の波長の正確な調整が必要となる。そこで、1つの光源から多波長光を一括して発生させる多波長光源が検討されている。
【0003】
多波長光源として、スーパーコンティニウム(SC)光発生技術を用いて多波長光を発生させる多波長光源が各種報告されている(たとえば、特許文献1および2)。図16に従来の多波長光源の構成例と、この多波長光源の各部の光スペクトルを示す。
【0004】
短パルス光源10は、多波長光の繰り返し周波数に等しい周波数間隔の縦モードで構成された光パルスを発生する。この光パルスを光増幅器20により増幅して強い強度で非線形光ファイバ30に入射させると、非線形光ファイバ30を伝搬中に、光スペクトル相互の非線形光学効果によって、もとの光パルスの光スペクトルの短波長側および長波長側に新たな光スペクトルが発生する。非線形光ファイバ30をさらに伝搬すると、その発生した光スペクトルのさらに短波長側および長波長側に新たな光スペクトルが発生する。これを繰り返すことにより、非線形光ファイバ30を伝搬するうちに、入射した光スペクトルは広帯域な光スペクトルになる(図16の光スペクトルを参照)。この技術をスーパーコンティニウム光発生技術という。このようなスーパーコンティニウム光の1つ1つの縦モードを光フィルタにより取り出すことによって、単一縦モードの連続光が得られ、波長多重伝送用の光源などとして使用される。
【0005】
【特許文献1】特開平8−29815号公報
【特許文献2】特願2005−201327号明細書
【非特許文献1】K. Mori, and K. Sato, “Supercontunuum Lightwave Generation Employing a Mode-Locked Laser Diode With Injection Locking for a Highly Coherent Optical Multicarrier Source,” IEEE Photon. Technol. Lett., vol.17, no.2, pp480-482, Feb. 2005.
【非特許文献2】Takara, H., Ohara, T., Yamamoto, T., Masuda, H., Abe. M., Takahashi, H., Morioka, T. “Field demonstration of over 1000-chanel DWDM transMission with supercontinuuM Multi-carrier source,” Electron. Lett., 2005, 41,(5).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スーパーコンティニウム光では、励起用の短パルス光源のエネルギーが発生する全ての縦モードに分配され、広帯域の波長多重光が得られる。したがって、高密度に波長多重された多くの多波長光を発生させようとすると、一波長あたりのエネルギーが減少し、信号対雑音比(SNR)が低くなるという問題があった。また、良好なSNRを得ようとすると、多波長光の波長帯域を狭くしなければならないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、広帯域にわたって良好なSNRを得ることができる高密度多波長光源を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、多波長光を発生する多波長光源であって、スーパーコンティニウム(SC)光を発生させる複数のSC光発生手段と、前記複数のSC光発生手段からのSC光を多重する光多重手段とを備え、前記複数のSC光発生手段からの出力光の縦モードの光周波数が前記複数のSC光発生手段毎に所定の周波数ずつ異なるように設定されたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、多波長光を発生する多波長光源であって、光パルスを発生させる複数の光パルス発生手段と、前記複数の光パルス発生手段からの光パルスを多重する光多重手段と、前記多重された光パルスを入射して、スーパーコンティニウム(SC)光を発生させる非線形光学媒質とを備え、前記複数の光パルス発生手段は、所定の繰り返し周波数で光パルスを発生し、前記光パルスは前記繰り返し周波数に等しい周波数間隔の縦モードを有し、前記複数の光パルス発生手段から出力される前記光パルスの縦モードの光周波数が前記複数の光パルス発生手段毎に所定の周波数ずつ異なるように設定されたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の多波長光源であって、連続光を発生させる光源と、前記光源からの連続光を周波数(2・N+1)・Δf(ここでNは自然数)で変調して、光周波数(2・N+1)・Δf間隔の複数の縦モードを有する変調光を出力する変調手段と、前記変調手段からの変調光を分波して2つの縦モードを出力する光分波手段とを備え、前記分波手段からの分波された2つの縦モードのそれぞれを種光として前記複数のSC光発生手段に供給するよう構成されたことを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の多波長光源であって、連続光を発生させる光源と、前記光源からの連続光を周波数(2・N+1)・Δf(ここでNは自然数)で変調して、光周波数(2・N+1)・Δf間隔の複数の縦モードを有する変調光を出力する変調手段と、前記変調手段からの変調光を分波して2つの縦モードを出力する光分波手段とを備え、前記分波手段からの分波された2つの縦モードのそれぞれを種光として前記複数の光パルス発生手段に供給するよう構成されたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載の多波長光源であって、前記光多重手段は、光偏波多重手段であることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1に、本発明の第1の実施形態に係る高密度多波長光源の基本構成を示す。この多波長光源100は、等しい周波数間隔の縦モードで構成されたスーパーコンティニウム光を発生するN個(Nは2以上の自然数)のスーパーコンティニウム(SC)光発生手段120−1〜Nと、これらN個のSC光発生手段からのSC光を多重する光多重手段140とから構成されている。ここで、それぞれのスーパーコンティニウム光発生手段は、図2(a)に示すように、縦モードの周波数間隔をN・Δfとして、それぞれのSC光発生手段の縦モード周波数がΔfずつ異なるように配置されている。そして、これらΔfずつ異なるSC光を光多重手段140により合波することで、図2(b)に示すように、広帯域にわたる高密度の多波長光を得ることができる。
【0015】
本実施形態によれば、SC光発生手段120−1〜Nは、最終的に発生させる高密度多波長光の縦モードの間隔ΔfのN倍の周波数間隔の縦モードを生成すればよい。周波数間隔がΔfの多波長光を発生されるには、周波数間隔Δfの1つのSC光発生手段から生成する場合より、周波数間隔N・ΔfのN個のSC光発生手段を用いる方が、1つのSC光発生手段で発生させる縦モードの数は1/Nでよいため、SNRの良好な広帯域な多波長光を容易に得ることができる。なお、スーパーコンティニウム光源はこれまでに様々な方法が考案されており、そのいずれも本発明に適用可能である。
【0016】
次に、本発明の第1の実施形態による高密度多波長光源の具体例について説明する。図3に、その構成を示す。この多波長光源100aは、等しい周波数間隔の縦モードで構成されたスーパーコンティニウム光を発生するN個(Nは2以上の自然数)のスーパーコンティニウム(SC)光発生手段120a−1〜Nと、これらN個のSC光発生手段から発生するスーパーコンティニウム光を多重する光合波器140とから構成されている。
【0017】
SC光発生手段120a−1〜Nのそれぞれは、図3に示すように、単一縦モードで発振する光源121と、光源からの光を位相変調する光位相変調器122と、光位相変調器に変調信号を印加するRF発振器123と、位相変調された光信号に波長分散を与えて光パルス列に変換するための分散付与用光ファイバ124と、SC光を発生させる光ファイバ127とから構成されている。SC光発生用光ファイバ127への入力光強度が、SC光を発生させるのに不十分な場合は、図示したように、光パルス列を増幅する光増幅器125と、増幅された光パルス列をフィルタリングする光バンドパスフィルタ126をSC光発生用光ファイバ127の前段に挿入してもよい。また、波長分散付与用光ファイバ124に代えて、ファイバグレイティングや平面型光波回路を用いることもできる。
【0018】
SC光発生用光ファイバ127は、長手方向に波長分散が異常分散から正常分散に減少しており、入射する光パルスのピークパワーと、出力される拡大したスペクトル幅の関係が所望の非線形特性を有している。具体的には、SC光発生用光ファイバ127において光スペクトル拡大が起きる光パワーしきい値を、入射する光パルス列のピークパワーよりも低く、かつ光パルス列のすそのペデスタルのパワーよりも高くすることで、広帯域においてばらつきが少ないSNRの良好なスーパーコンティニウム光を発生させることができる(特許文献2参照)。
【0019】
なお、SC光発生手段120aとして、位相変調器122に代えて光強度変調器を使用することもできる。この場合、分散付与用光ファイバ124は不要となる。また、光位相変調器122と分散付与用光ファイバ124に代えて注入同期型モードロック半導体レーザを使用することも可能である。このような注入同期型モードロック半導体レーザを用いたSC光発生手段は、例えば非特許文献1に記載されている。
【0020】
本実施形態では、複数のスーパーコンティニウム光発生手段からの多波長光を光多重手段で合波し、正確に縦モード間隔Δfの高密度多波長光を得る必要がある。そのためには、合波する多波長光が正確にΔfずつずれた縦モードを有していなければならない。すなわち、複数のSC光発生手段によって生成される多波長光の縦モードの光周波数を同期させる必要がある。そこで、各SC光発生手段の光源121の光周波数を同期化するために光周波数同期化手段111を用いている。例えば、2つの光源の光をフォトダイオードで受光すると、2つの光源の光周波数の差に相当する周波数のビートが得られる。これがΔfになるように光源の発振周波数を制御することにより2つの光源からの光の周波数差を正確にΔfだけずれるように設定することができる。3つ以上の場合も上記の原理を用いてそれぞれの光周波数がΔfだけずれた複数の光源を得ることができる。
【0021】
(第2の実施形態)
次に、より簡単な構成で正確に光周波数がΔfずつ異なる光源を得るための構成について説明する。連続光を位相変調や強度変調などで変調すると、入力連続光の光周波数を中心としていくつかのサイドモードが立つ。この隣接するサイドモード間および中心モードと隣接するサイドモード間の周波数間隔は正確に変調周波数に等しい。これらの縦モードの間隔の確度は、変調に使用する電気のマイクロ波発振器の周波数確度によって決まるので、その確度を電気のマイクロ波発振器の周波数確度と同程度のKHzオーダーとすることができる。したがって、縦モード間隔の確度を、10−9以上にすることができる。
【0022】
このように、単一の縦モードを有する連続光を周波数Δfで位相変調または強度変調し、もとの連続光の縦モードを中心として光周波数間隔Δfの複数のサイドモードを得ることができる。少なくともN−1個のサイドモードが立つように変調指数を設定すれば、本発明に適用可能なN個の種光源を得ることができる。
【0023】
図4に、第2の実施形態として縦モードの光周波数が同期した2つのSC光源を得るための具体的な構成例を示す。この多波長光源100bは、単一縦モードからなる連続光を出力する光源110と、連続光を周波数(2・M+1)・Δfで変調し(ここで、Mは自然数)、入射した連続光の縦モードを中心としてその両側に変調周波数に等しい光周波数間隔の1つ以上のサイドモードを発生させる光変調手段112と、光周波数が(2・M+1)・Δfだけ異なる中心モードとサイドモードからなる光変調手段からの出力光を分波する光分波手段114と、分波された光を種光として光周波数2・Δf間隔のSC光を発生させるSC光発生手段120b−1および120b−2と、これらSC光発生手段からの多波長光を多重する光多重手段140とから構成されている。
【0024】
このように構成することで、変調手段112による種光の縦モードの間隔(2・M+1)・Δfの確度を、電気のマイクロ波発振器113の周波数確度であるKHzオーダーとすることができる。また、光源110として、±1MHz以下の出力周波数確度および安定度を持つ光周波数安定化光源が市販されているので、本構成により絶対光周波数確度±1MHz程度以下の2つの種光を得ることができる。これらを、光分波手段114を介してSC光発生手段120b−1、2に入力し、その出力のSC光を多重することにより、±1MHz程度以下の周波数確度を持つΔf間隔の多波長光を得ることができる。
【0025】
なお、本構成により、光変調手段112からの出力光の光周波数間隔が(2・M+1)・Δfとなるので、光周波数間隔Δfの出力光を分波する場合に比べて、光分波手段114に要求される分波特性を緩和することができる。特に、Mを大きくとると、光分波手段114としてより安価な光フィルタを用いることができる。
【0026】
(第3の実施形態)
図5に、本発明の第3の実施形態に係る高密度多波長光源の基本構成を示す。この多波長光源200は、等しい周波数間隔の縦モードで構成されたスーパーコンティニウム光を発生する2個のスーパーコンティニウム(SC)光発生手段220−1および220−2と、これらSC光発生手段から発生するSC光を偏波多重する光偏波多重手段240とから構成されている。ここで、それぞれのSC光発生手段220は、図6(a)に示すように、縦モードの周波数間隔を2・Δfとして、それぞれのSC光発生手段の縦モード周波数がΔfずつ異なるように配置されている。そして、これらΔfずつ異なるSC光を、それぞれの偏波方向が直交するように光偏波多重手段240により合波することで、図6(b)に示すように、広帯域にわたる高密度の多波長光を得ることができる。
【0027】
本実施形態によれば、SC光発生手段220は、最終的に発生させる高密度多波長光の縦モードの間隔Δfの2倍の周波数間隔の縦モードを生成すればよい。そのため、周波数間隔がΔfの縦モードを有するSC光に比べて、SNRの良好な広帯域のSC光を容易に発生させることができる。
【0028】
第1の実施形態では、合波する複数のSC光の偏波は同一のものもあり、直交するものもあるが、同一方向の偏波で合波されたSC光は(縦モードが近い場合は特に)互いに干渉を起こし、非線形光学効果等により雑音として重畳され、光信号の品質を劣化させる可能性がある。これに対して、本実施形態では、スーパーコンティニウム光が互いに直交する偏波で多重されるため、干渉を起こさず信号の品質劣化を最小限に抑えることができる。なお、スーパーコンティニウム光源はこれまでに様々な方法が考案されており、そのいずれも本発明に適用可能である。また、ここでは2つのSC光を多重する場合で説明したが、第一の実施例のようにN個のSC光を多重する場合にも、縦モード周波数がΔfずつずれたN個のSC光を交互に直交する偏波で多重することにより、雑音特性が改善する。
【0029】
次に、本発明の第3の実施形態による高密度多波長光源の具体例について説明する。図7に、その構成を示す。この多波長光源200aは、2つのSC光発生手段220a−1および220a−2と、これらSC光発生手段からのSC光を互いに直交する偏波で多重する光偏波合波器240とから構成されている。また、多波長光源200aは、2つのSC光発生手段に光周波数が(2・M+1)・Δfだけ異なり、同期した種光を提供するために、出力光周波数の安定した光周波数安定化光源210と、この光源からの連続光を位相変調する位相変調手段212と、光位相変調手段に周波数(2・M+1)・Δf(ここで、Mは自然数)の変調信号を印加するRF発振器213と、光位相変調手段からの中心モードとサイドモードからなる出力光を分波して光周波数が(2・M+1)・Δfだけ異なる種光をSC光発生手段に提供するAWG光フィルタ214とを備えている。なお、光周波数安定化光源210からの出力光の強度が十分でなければ、図に示したように光増幅器を追加してもよい。
【0030】
SC光発生手段220a−1および220a−2のそれぞれは、図7に示すように、AWG光フィルタ214からの種光を位相変調する光位相変調器222と、光位相変調器に変調周波数2・Δfの変調信号を印加するRF発振器223と、位相変調された光信号に波長分散を与えて光パルス列に変換するための分散付与用光ファイバ224と、SC光を発生させる光ファイバ227とから構成されている。SC光発生用光ファイバ227への入力光強度が、SC光を発生させるのに不十分な場合は、図示したように、光パルス列を増幅する光増幅器225と、増幅された光パルス列をフィルタリングし、光増幅器からのASE光からなる雑音成分を除去する光バンドパスフィルタ226をSC光発生用光ファイバ227の前段に挿入してもよい。
【0031】
なお、SC光発生手段220aとして、位相変調器222に代えて光強度変調器を使用することもできる。この場合、分散付与用光ファイバ224は不要となる。また、光位相変調器222と分散付与用光ファイバ224に代えて注入同期型モードロック半導体レーザを使用することも可能である。このような注入同期型モードロック半導体レーザを用いたSC光発生手段は、例えば非特許文献1に記載されている。
【0032】
以上のように、SC光発生手段の縦モードの周波数間隔を2・Δfとし、互いの縦モード周波数がΔfだけ異なるように設定し、各SC光発生手段からのスーパーコンティニウム光を偏波多重することにより、周波数間隔Δfの縦モードを有するSNRの良い高密度のスーパーコンティニウム光を得ることができる。
【0033】
次に、本実施形態における実験の結果について説明する。なお、スーパーコンティニウム光源はこれまでに様々な方法が考案されており、そのいずれも本発明に適用可能であるが、今回の実験では非特許文献2に示されている方法を用いた。
【0034】
図8に実験結果を示す。図8(a)は、従来の構成により、単一のスーパーコンティニウム光源を用いて、2.5GHz間隔の多波長光を発生させた場合の光スペクトルを示している。図8(b)は、本発明の構成により、5GHz間隔の多波長光からなる2系統のスーパーコンティニウム光源を用いて、2.5GHz間隔の多波長光を発生させた場合の光スペクトルを示し、図8(c)は、発生させた多波長光のうち1605nmの波長の光周波数安定性を示している。
【0035】
図8(b)および(c)に示す多波長光は、本発明の構成により、2系統のスーパーコンティニウム光のそれぞれの中心の縦モードが2.5GHzずれるようにし、さらにそれぞれの偏光方向が直交するように合波して得られた。
【0036】
図8(a)からわかるように、従来の単一のスーパーコンティニウム光源を用いた場合は、およそ1510nmから1605nmまでにわたって約4800波長の波長多重光が得られている。図8(a)からはこれより外側の波長域までSC光のスペクトルの広がりが観測されているが、良好な縦モードは観測できなかった。これは、この波長域のSC光のSNRが低いためと思われる。
【0037】
これに対して、本発明による2系統のスーパーコンティニウム光源を用いた場合は図9(b)に示すように1460nmから1640nmまで縦モードが発生していることを確認できた。使用した測定器の測定範囲が1640nmまでであるためそれ以上の波長で縦モードがどの程度出ているかは確認できなかったが、5GHz間隔のスーパーコンティニウム光源からは1660nm以上まで縦モードが出ているので、ほぼその程度まで縦モードがでていると推察され、10,000波近い多波長光が発生していると思われる。
【0038】
以上のように1系統のスーパーコンティニウム光源をもちいた場合に比べて、2系統のスーパーコンティニウム光の偏波を直交させて合波した場合は、波長多重光の発生する帯域を倍程度に広げることができることがわかる。
【0039】
さらに発生した多波長光から1波長を取り出し、光周波数安定性を測定した。測定には確度±30MHzの波長計を使用した。図8(c)から、測定に使用した波長計の確度である±30MHz以下の安定性を示していることがわかる。
【0040】
以上のように、本発明によれば簡単な構成で、広い波長域にわたってSNRの良好な多波長光を得ることができ、また、各縦モードの周波数安定性も良いことがわかる。
【0041】
(第4の実施形態)
図9に、本発明の第4の実施形態に係る高密度多波長光源の基本構成を示す。この多波長光源は、周波数間隔N・Δfの縦モードで構成される繰り返し光パルスを発生するN個(Nは2以上の自然数)の短パルス光発生手段320−1〜Nと、これらN個の短パルス光発生手段からの光パルスを多重する光多重手段340と、多重された光パルスのスペクトル幅を拡大する非線形光学媒質350とから構成されている。ここで、それぞれの短パルス光発生手段320は、図10(a)に示すように、光パルスの縦モードが互いにΔfずつ異なるように配置されている。これらΔfずつ異なる光パルスを光多重手段340により合波することで、図10(b)に示すように、高密度の縦モードからなる短パルス光を得る。そして、図10(c)に示すように、これらΔfずつ異なる光パルスが非線形光学媒質350に入射することにより、広帯域にわたる光周波数間隔Δfの高密度多波長光を得ることができる。
【0042】
次に、本発明の第4の実施形態による高密度多波長光源の具体例について説明する。図11に、その構成を示す。この多波長光源300aは、等しい周波数間隔の縦モードで構成された光パルスを発生するN個(Nは2以上の自然数)の短パルス光発生手段320a−1〜Nと、これらN個の短パルス光発生手段から発生する光パルスを多重する光合波器340と、多重された光パルスのスペクトル幅を拡大する非線形光学媒質350とから構成されている。
【0043】
短パルス光発生手段320a−1〜Nのそれぞれは、図11に示すように、単一縦モードで発振する光源321と、光源からの光を位相変調する光位相変調器322と、光位相変調器に変調信号を印加するRF発振器323と、位相変調された光信号に波長分散を与えて光パルス列に変換するための分散付与用光ファイバ324とから構成されている。短パルス光発生手段の出力光強度が、SC光を発生させるのに不十分な場合は、図示したように、光パルス列を増幅する光増幅器325と、増幅された光パルス列をフィルタリングする光バンドパスフィルタ326を分散付与用光ファイバ324の出力に追加してもよい。また、波長分散付与用光ファイバ324に代えて、ファイバグレイティングや平面型光波回路を用いることもできる。さらに、短パルス光発生手段320aとして、位相変調器322に代えて光強度変調器を使用することもできる。この場合、分散付与用光ファイバ324は不要となる。また、光位相変調器322と分散付与用光ファイバ324に代えて注入同期型モードロック半導体レーザを使用することも可能である。
【0044】
SC光発生用光ファイバ350は、長手方向に波長分散が異常分散から正常分散に減少しており、入射する光パルスのピークパワーと、出力される拡大したスペクトル幅の関係が所望の非線形特性を有している。具体的には、SC光発生用光ファイバ350において光スペクトル拡大が起きる光パワーしきい値を、入射する光パルス列のピークパワーよりも低く、かつ光パルス列のすそのペデスタルのパワーよりも高くすることで、広帯域においてばらつきが少ない高SNRのスーパーコンティニウム光を発生させることができる(特許文献2参照)。
【0045】
本実施形態では、複数の短パルス光発生手段からの光パルスを光多重手段で合波し、正確に縦モード間隔Δfの光パルスを得る必要がある。そのためには、合波する光パルスが正確にΔfずつずれた縦モードを有していなければならない。すなわち、複数の光パルス信号発生手段によって生成される光パルスの縦モードの光周波数を同期させる必要がある。そこで、各短パルス光発生手段の光源321の光周波数を同期化するために光周波数同期化手段311を用いている。例えば、2つの光源の光をフォトダイオードで受光すると、2つの光源の光周波数の差に相当する周波数のビートが得られる。これがΔfになるように光源の発振周波数を制御することにより2つの光源からの光の周波数差を正確にΔfだけずれるように設定することができる。3つ以上の場合も上記の原理を用いてそれぞれの光周波数がΔfだけずれた複数の光源を得ることができる。
【0046】
(第5の実施形態)
次に、図4の第2の実施形態と同様の原理により、縦モードの光周波数が同期した2つの光源を得るための構成例について説明する。図12に、縦モードの光周波数が同期した2つの短パルス光源を得るための具体的な構成例を示す。この多波長光源300bは、単一縦モードからなる連続光を出力する光源310と、この連続光を周波数(2・M+1)・Δfで変調し(ここで、Mは自然数)、入射した縦モードを中心としてその両側に変調周波数に等しい光周波数間隔の1つ以上のサイドモードを発生させる光変調手段312と、光周波数が(2・M+1)・Δfだけ異なる中心モードとサイドモードからなる光変調手段からの出力光を分波する光分波手段314と、分波された光を種光として光周波数2・Δf間隔の縦モードを有する光パルスを発生させる短パルス光発生手段320b−1および320b−2と、これら短パルス光発生手段からの光パルスを多重する光多重手段340と、多重された光パルスのスペクトル幅を拡大する非線形光学媒質350とから構成されている。
【0047】
このように構成することで、変調手段312による種光の縦モードの間隔(2・M+1)・Δfを、電気のマイクロ波発振器313の周波数確度であるKHzオーダーとすることができる。また、光源310として、±1MHz以下の出力周波数確度および安定度を持つ光周波数安定化光源が市販されているので、本構成により絶対光周波数確度±1MHz程度以下の2つの種光を得ることができる。これらを、光分波手段314を介して短パルス光発生手段320b−1、2に入力し、その出力の光パルスを多重することにより、±1MHz程度以下の周波数確度を持つΔf間隔の光パルスを得ることができる。
【0048】
なお、本構成により、光変調手段312からの出力光の光周波数間隔が(2・M+1)・Δfとなるので、光分波手段314に要求される分波特性を緩和することができる。特に、Mを大きくとると、光分波手段314としてより安価な光フィルタを用いることができる。
【0049】
本実施形態によれば、SC光を発生させる種光となる短パルス光としてN個の短パルス光発生手段を用いるため、1個の短パルス光発生手段を用いてSC光を発生させる場合に比べてSNRの良好な短パルス光を容易に発生させることができ、これによりSNRの良好な広帯域のスーパーコンティニウム光を発生させることができる。
【0050】
(第6の実施形態)
図13に、本発明の第6の実施形態に係る高密度多波長光源の基本構成を示す。この多波長光源400は、周波数間隔2・Δfの縦モードから構成される繰り返し光パルスを発生する短パルス光発生手段420−1および420−2と、これらの短パルス光発生手段からの光パルスを光偏波多重する光偏波多重手段440と、多重された光パルスのスペクトル幅を拡大する非線形光学媒質450とから構成されている。ここで、それぞれの短パルス光発生手段420は、図14(a)に示すように、光パルスの縦モードが互いにΔfずつ異なるように配置されている。これらΔfずつ異なる光パルスを光多重手段440により合波することで、図14(b)に示すように、高密度の縦モードからなる短パルス光を得る。そして、図14(c)に示すように、これらΔfずつ異なる光パルスが非線形光学媒質450に入射することにより、広帯域にわたる光周波数間隔Δfの高密度多波長光を得ることができる。
【0051】
第4の実施形態では、合波する複数の繰り返し光パルスの偏波は同一のものもあり、直交するものもあるが、同一方向の偏波で合波された繰り返し光パルスは(縦モードが近い場合は特に)互いに干渉を起こし、非線形光学効果等により雑音として重畳され、光信号の品質を劣化させる可能性がある。これに対して、本実施形態では、光パルスが互いに直交する偏波で多重されるため、干渉を起こさず信号の品質劣化も最小限に抑えることができる。また、ここでは2つの短パルス光を多重する場合で説明したが、第四の実施例のようにN個の短パルス光を多重する場合にも、縦モード周波数がΔfずつずれたN個の短パルス光を交互に直交する偏波で多重することにより、雑音特性が改善する。
【0052】
次に、本発明の第6の実施形態による高密度多波長光源の具体例について説明する。図15に、その構成を示す。この多波長光源400aは、2つの短パルス光発生手段420a−1および420a−2と、これら短パルス光発生手段からの光パルスを互いに直交する偏波で多重する光偏波合波器440と、多重された光パルスのスペクトル幅を拡大する非線形光学媒質450とから構成されている。また、多波長光源400aは、2つの短パルス光発生手段に光周波数が(2・M+1)・Δfだけ異なり、同期した種光を提供するために、出力光周波数の安定した光周波数安定化光源410と、この光源からの連続光を位相変調する位相変調手段412と、光位相変調手段に周波数(2・M+1)・Δf(ここで、Mは自然数)の変調信号を印加するRF発振器413と、光位相変調手段からの中心モードとサイドモードからなる出力光を分波して光周波数が(2・M+1)・Δfだけ異なる種光をSC光発生手段に提供するAWG光フィルタ414とを備えている。なお、光周波数安定化光源410からの出力光の強度が十分でなければ、図に示したように光増幅器を追加してもよい。
【0053】
短パルス光発生手段420a−1および420a−2のそれぞれは、図15に示すように、AWG光フィルタ414からの種光を位相変調する光位相変調器422と、光位相変調器に変調周波数2・Δfの変調信号を印加するRF発振器423と、位相変調された光信号に波長分散を与えて光パルス列に変換するための分散付与用光ファイバ424とから構成されている。短パルス光発生手段の出力光強度が、SC光を発生させるのに不十分な場合は、図示したように、光パルス列を増幅する光増幅器425と、増幅された光パルス列をフィルタリングする光バンドパスフィルタ426を分散付与用光ファイバ424の出力に追加してもよい。また、波長分散付与用光ファイバ424に代えて、ファイバグレイティングや平面型光波回路を用いることもできる。さらに、短パルス光発生手段420aとして、位相変調器422に代えて光強度変調器を使用することもできる。この場合、分散付与用光ファイバ424は不要となる。また、光位相変調器422と分散付与用光ファイバ424に代えて注入同期型モードロック半導体レーザを使用することも可能である。
【0054】
以上のように、短パルス光発生手段の縦モードの周波数間隔を2・Δfとし、互いの縦モード周波数がΔfだけ異なるように設定し、各短パルス光発生手段からの光パルスを偏波多重し、SC発生用光ファイバに入射することにより、周波数間隔Δfの縦モードを有するSNRの良い高密度のスーパーコンティニウム光を得ることができる。
【0055】
以上、本発明について、いくつかの実施形態について具体的に説明したが、本発明の原理を適用できる多くの実施可能な形態に鑑みて、ここに記載した実施形態は、単に例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。ここに例示した実施形態は、本発明の趣旨から逸脱することなくその構成と詳細を変更することができる。さらに、説明のための構成要素および手順は、本発明の趣旨から逸脱することなく変更、補足、またはその順序を変えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る高密度多波長光源の基本構成を示す図である。
【図2】図1の各部の光スペクトルを示す図であり、図2(a)はスーパーコンティニウム光発生手段の出力光スペクトルを示し、図2(b)は光多重手段の出力光スペクトルを示している。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る高密度多波長光源の具体例を示す図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る高密度多波長光源の具体例を示す図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る高密度多波長光源の基本構成を示す図である。
【図6】図5の各部の光スペクトルを示す図であり、図6(a)はスーパーコンティニウム光発生手段の出力光スペクトルを示し、図6(b)は光偏波多重手段の出力光スペクトルを示している。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る高密度多波長光源の具体例を示す図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係る高密度多波長光源の実験結果を示す図であり、図8(a)は従来のスーパーコンティニウム光発生手段による光スペクトルの結果を示し、図8(b)は本発明の第3の実施形態に係る高密度多波長光源による光スペクトルの結果を示し、図8(c)は本発明の第3の実施形態に係る高密度多波長光源の光周波数安定性の結果を示している。
【図9】本発明の第4の実施形態に係る高密度多波長光源の基本構成を示す図である。
【図10】図9の各部の光スペクトルを示す図であり、図10(a)は短パルス光源の出力光スペクトルを示し、図10(b)は光多重手段の出力光スペクトルを示している。
【図11】本発明の第4の実施形態に係る高密度多波長光源の具体例を示す図である。
【図12】本発明の第4の実施形態に係る高密度多波長光源の別の具体例を示す図である。
【図13】本発明の第6の実施形態に係る高密度多波長光源の基本構成を示す図である。
【図14】図13の各部の光スペクトルを示す図であり、図14(a)は短パルス光源の出力光スペクトルを示し、図14(b)は光偏波多重手段の出力光スペクトルを示し、図14(c)は非線形光学媒質の出力光スペクトルを示している。
【図15】本発明の第6の実施形態に係る高密度多波長光源の具体例を示す図である。
【図16】従来の多波長光源の基本構成を示す図である。
【符号の説明】
【0057】
100,200,300,400 多波長光源
124,224,324 分散付与用光ファイバ
125,225,325 光増幅器
127,227 SC光発生用光ファイバ
350,450 非線形光学媒質
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多波長光を発生する多波長光源であって、
スーパーコンティニウム(SC)光を発生させる複数のSC光発生手段と、
前記複数のSC光発生手段からのSC光を多重する光多重手段と
を備え、
前記複数のSC光発生手段からの出力光の縦モードの光周波数が前記複数のSC光発生手段毎に所定の周波数ずつ異なるように設定されたことを特徴とする多波長光源。
【請求項2】
多波長光を発生する多波長光源であって、
光パルスを発生させる複数の光パルス発生手段と、
前記複数の光パルス発生手段からの光パルスを多重する光多重手段と、
前記多重された光パルスを入射して、スーパーコンティニウム(SC)光を発生させる非線形光学媒質と
を備え、
前記複数の光パルス発生手段は、所定の繰り返し周波数で光パルスを発生し、前記光パルスは前記繰り返し周波数に等しい周波数間隔の縦モードを有し、
前記複数の光パルス発生手段から出力される前記光パルスの縦モードの光周波数が前記複数の光パルス発生手段毎に所定の周波数ずつ異なるように設定されたことを特徴とする多波長光源。
【請求項3】
請求項1に記載の多波長光源であって、
連続光を発生させる光源と、
前記光源からの連続光を周波数(2・N+1)・Δf(ここでNは自然数)で変調して、光周波数(2・N+1)・Δf間隔の複数の縦モードを有する変調光を出力する変調手段と、
前記変調手段からの変調光を分波して2つの縦モードを出力する光分波手段と
を備え、
前記分波手段からの分波された2つの縦モードのそれぞれを種光として前記複数のSC光発生手段に供給するよう構成されたことを特徴とする多波長光源。
【請求項4】
請求項2に記載の多波長光源であって、
連続光を発生させる光源と、
前記光源からの連続光を周波数(2・N+1)・Δf(ここでNは自然数)で変調して、光周波数(2・N+1)・Δf間隔の複数の縦モードを有する変調光を出力する変調手段と、
前記変調手段からの変調光を分波して2つの縦モードを出力する光分波手段と
を備え、
前記分波手段からの分波された2つの縦モードのそれぞれを種光として前記複数の光パルス発生手段に供給するよう構成されたことを特徴とする多波長光源。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の多波長光源であって、
前記光多重手段は、光偏波多重手段であることを特徴とする多波長光源。
【請求項1】
多波長光を発生する多波長光源であって、
スーパーコンティニウム(SC)光を発生させる複数のSC光発生手段と、
前記複数のSC光発生手段からのSC光を多重する光多重手段と
を備え、
前記複数のSC光発生手段からの出力光の縦モードの光周波数が前記複数のSC光発生手段毎に所定の周波数ずつ異なるように設定されたことを特徴とする多波長光源。
【請求項2】
多波長光を発生する多波長光源であって、
光パルスを発生させる複数の光パルス発生手段と、
前記複数の光パルス発生手段からの光パルスを多重する光多重手段と、
前記多重された光パルスを入射して、スーパーコンティニウム(SC)光を発生させる非線形光学媒質と
を備え、
前記複数の光パルス発生手段は、所定の繰り返し周波数で光パルスを発生し、前記光パルスは前記繰り返し周波数に等しい周波数間隔の縦モードを有し、
前記複数の光パルス発生手段から出力される前記光パルスの縦モードの光周波数が前記複数の光パルス発生手段毎に所定の周波数ずつ異なるように設定されたことを特徴とする多波長光源。
【請求項3】
請求項1に記載の多波長光源であって、
連続光を発生させる光源と、
前記光源からの連続光を周波数(2・N+1)・Δf(ここでNは自然数)で変調して、光周波数(2・N+1)・Δf間隔の複数の縦モードを有する変調光を出力する変調手段と、
前記変調手段からの変調光を分波して2つの縦モードを出力する光分波手段と
を備え、
前記分波手段からの分波された2つの縦モードのそれぞれを種光として前記複数のSC光発生手段に供給するよう構成されたことを特徴とする多波長光源。
【請求項4】
請求項2に記載の多波長光源であって、
連続光を発生させる光源と、
前記光源からの連続光を周波数(2・N+1)・Δf(ここでNは自然数)で変調して、光周波数(2・N+1)・Δf間隔の複数の縦モードを有する変調光を出力する変調手段と、
前記変調手段からの変調光を分波して2つの縦モードを出力する光分波手段と
を備え、
前記分波手段からの分波された2つの縦モードのそれぞれを種光として前記複数の光パルス発生手段に供給するよう構成されたことを特徴とする多波長光源。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の多波長光源であって、
前記光多重手段は、光偏波多重手段であることを特徴とする多波長光源。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−298765(P2007−298765A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−126910(P2006−126910)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、独立行政法人情報通信研究機構「フォトニックネットワークに関する光アクセス網高速広帯域通信技術の研究開発」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、独立行政法人情報通信研究機構「フォトニックネットワークに関する光アクセス網高速広帯域通信技術の研究開発」委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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