説明

高所作業用補助具及びこの補助具を使用した高所作業方法

【課題】 高所作業、特に作業者の足場として利用される部位の裏側(裏面)に作業を行う場合であっても、物理的にも心理的にも安定的で且つ作業の効率性も高い新規な高所作業用補助具及びこの補助具を使用した高所作業方法を提供する。
【解決手段】 方形状に成形され作業者の荷重を支持する荷重支持用ネット2と、この荷重支持用ネット2の中央を囲むようにループ状に配置された複数の補強ロープ6,7と、上記荷重支持用ネット2の中央近傍から該荷重支持用ネット2の各角部方向に延在され、基端側及び中途部は上記補強ロープ6,7に固定又は係合されてなるとともに、それぞれの先端には高所作業現場における高所施設Aの任意位置に係止される係止用金具13が固定されてなる吊ロープ9・・・12と、を備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄塔等の上端側等の高所において、塗装作業等のメンテナンス作業や電気通信設備等の設置作業を行う際に使用される高所作業用補助具及びこの補助具を使用した高所作業方法に関し、特に、作業者の荷重を支持してその上で作業を行う高所作業用補助具及びこの補助具を使用した高所作業方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄塔等の上端側等の高所において作業する際に使用される高所作業用補助具としては、これまで安全ネット又は防護ネットと称されるものが幾つか提案されている。例えば、特開平10−82186号公報(特許文献1)には、工事作業者が作業中、万一、高所の作業現場から転落するという事故が起こっても事故による怪我等を未然に防止して工事を安全に施工し得る安全ネットが提案され、また、特開2009−112511号公報(特許文献2)では、高所作業時に墜落した作業員等をより確実に保護することができることを目的とした防護ネットが提案されている。これらの安全ネットや防護ネットは、労働安全衛生法の規定に基づくものであり、労働者の墜落による危険を防止するためのものであって、作業者が高所作業を行う際に作業者の荷重を常時支持するものではなく、あくまでも落下した際に支持するものである。したがって、例えば、鉄塔の先端側(高所)において作業をする場合には、安全帯の先端に固定された金具を鉄塔に固定したり連結したりして作業を行っているのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−82186号公報
【特許文献2】特開2009−112511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したように、安全帯を使用して行う高所作業は極めて安定性が悪い。特に、図9に示すような送電鉄塔Tに設けられた腕金(アーム)A等を塗装する場合のように、作業者の足場として利用する腕金(アーム)Aの裏側(下面)に塗料や防錆剤を塗布する作業を行う場合においては、安全帯だけでは物理的にも心理的にも不安定な状態となるばかりか、作業そのものも極めて効率性に欠け、作業工期が遅れる可能性も高い。
【0005】
そこで、本発明は、上述した高所作業を行う際の課題を解決するために提案されたものであって、高所作業、特に作業者の足場として利用される部位の裏側(裏面)に作業を行う場合であっても、物理的にも心理的にも安定的で且つ作業の効率性も高い新規な高所作業用補助具及びこの補助具を使用した高所作業方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために提案されたものであって、第1の発明(請求項1記載の発明)は、高所作業用補助具に係るものであって、方形状に成形され作業者の荷重を支持する荷重支持用ネットと、この荷重支持用ネットの中央を囲むようにループ状に固定された複数の補強ロープと、上記荷重支持用ネットの中央近傍から該荷重支持用ネットの各角部方向に延在され、基端側及び中途部は上記補強ロープに固定又は係合されてなるとともに、それぞれの先端には高所作業現場における高所施設の任意位置に係止される係止用金具が固定されてなる吊ロープとを備えてなることを特徴とするものである。
【0007】
この第1の発明に係る高所作業用補助具では、荷重支持用ネットの中央を囲むようにループ状に配置された複数の補強ロープが該荷重支持用ネットに固定され、これらの補強ロープと吊ロープとは、該吊ロープの基端側及び中途部において互いに固定されていることから、作業者の荷重を支持した際には、該荷重支持用ネット全体が大きく撓むことなく、上記複数の補強ロープの長さ方向や吊ロープの長さ方向へは撓まないことから、これら補強ロープや吊ロープの配置位置を足場として利用することができ、物理的にも心理的にも安定した作業環境を確保することができる。
【0008】
なお、上記荷重支持用ネットの中央を囲むように配置された補強ロープは、複数配置されていればその数は限定されないとともに、個々の補強ロープ全体の形状に関しても、荷重支持用ネットの中央を囲む形状であれば、例えば方形状であっても円形状であっても多角形状であっても良い。
【0009】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)は、前記各吊ロープは、保護用管体に挿通されてなることを特徴とするものである。
【0010】
この第2の発明に係る高所作業用補助具では、前記各吊ロープは、保護用管体に挿通されてなることから、高所作業現場における高所施設との摺接により上記吊ロープの中途部が摩耗したり切断されたりしてしまう危険性を有効に防止することができる。
【0011】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)は、上記第1又は第2の発明の何れかにおいて、前記荷重支持用ネットの各辺には、先端が高所作業現場における高所施設の任意位置に固定される補助ロープの基端側が固定されてなることを特徴とするものである。
【0012】
この第3の発明に係る高所作業用補助具では、先端が高所作業現場における高所施設の任意位置に固定される補助ロープの基端が上記荷重支持用ネットの各辺に固定されていることから、より安定的に高所施設に設置することができる。
【0013】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)は、上記第1,第2,第3の発明の何れかにおいて、前記荷重支持用ネットの上部には、可撓性を有する捕捉シート又は該荷重支持用ネットの網目よりも細かい網目を備えた捕捉用ネットが配置されてなり、この捕捉シート又は捕捉ネットには、先端が高所作業現場における高所施設の任意位置に固定される補助ロープの基端が固定されてなることを特徴とするものである。
【0014】
この第4の発明に係る高所作業用補助具では、前記荷重支持用ネットの上部には、可撓性を有する捕捉シート又は上記捕捉用ネットが配置されてなることから、高所作業に使用される工具や部品は勿論、例えば、上記捕捉シートや網目が1mm以下の捕捉ネットを用いた場合には、鉄塔等の高所施設から剥離した塗料や新たに塗布する塗料等が落下したり下方に飛散したりする事態を有効に回避することができ、また、風の影響により高所作業用補助具全体が揺れる危険性を防止することができる。またさらに、この捕捉シート又は上記捕捉ネットには、上記先端が高所作業現場における高所施設の任意位置に結ばれ又は固定される補助ロープの基端が固定されてなることから、さらに一層安定した設置状態を確保することができる。
【0015】
また、第5の発明(請求項5記載の発明)は、前記第4の発明に係る高所作業用補助具を使用した高所作業方法に係るものであって、前記請求項1記載の高所作業用補助具を構成する吊ロープの先端に固定された係止用金具の全てを高所作業現場における高所施設の任意位置に係止する第1の荷重支持用ネット係止工程と、この第1の荷重支持用ネット係止工程の後に、前記請求項3記載の補助ロープの先端を高所作業現場における高所施設の任意位置に固定する第1の補助ロープ締結工程と、この第1の補助ロープ締結工程の後に、前記請求項4記載の捕捉シート又は上記捕捉ネットに基端側が固定された補助ロープの先端を高所作業現場における高所施設の任意位置に結ぶ第2の補助ロープ締結工程と、を有し、上記捕捉シート又は上記捕捉ネット上に移動した後に、高所作業現場における高所施設の裏面に塗料を塗布し又は剥離させる等のメンテナンス作業を行うことを特徴とする高所作業方法。
【0016】
この第5の発明に係る高所作業方法によれば、物理的にも心理的にも安定的で且つ作業の効率性も高い高所作業を行うことができ、また、鉄塔等の高所施設から剥離した塗料や新たに塗布する塗料等が落下したり下方に飛散したりする事態を有効に回避することができる。
【発明の効果】
【0017】
第1の発明(請求項1記載の発明)に係る高所作業用補助具では、荷重支持用ネットの中央を囲むようにループ状に配置された複数の補強ロープが固定され、これらの補強ロープと吊ロープとは、該吊ロープの基端側及び中途部において互いに固定されていることから、作業者の荷重を支持した際には、該荷重支持用ネット全体が大きく下方に撓むことなく、上記複数の補強ロープの長さ方向や吊ロープの長さ方向へは大きく撓まないことから、これら補強ロープや吊ロープの配置位置を足場として利用することができ、安定した作業環境が確保することができる。
【0018】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)高所作業用補助具では、前記各吊ロープは、保護用管体に挿通されてなることから、高所作業現場における高所施設との摺接により上記吊ロープの中途部が摩耗し切断されてしまう危険性を有効に防止することができる。
【0019】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)に係る高所作業用補助具では、先端が高所作業現場における高所施設の任意位置に固定される補助ロープの基端が上記荷重支持用ネットの各辺に固定されていることから、より安定的に高所施設に設置することができる。
【0020】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)に係る高所作業用補助具では、前記荷重支持用ネットの上部には、可撓性を有する捕捉シート又は上記捕捉用ネットが配置されてなることから、高所作業に使用される工具や部品は勿論、例えば、上記捕捉シートや網目が1mm以下の捕捉ネットを用いた場合には、鉄塔等の高所施設から剥離した塗料や新たに塗布する塗料等が落下したり下方に飛散したりする事態を有効に回避することができる。またさらに、この捕捉シート又は上記捕捉ネットには、上記先端が高所作業現場における高所施設の任意位置に結ばれ又は固定される補助ロープの基端が固定されてなることから、さらに一層安定した設置状態を確保することができる。
【0021】
また、第5の発明(請求項5記載の発明)に係る高所作業方法によれば、物理的にも心理的にも安定的で且つ作業の効率性も高い高所作業を行うことができ、また、鉄塔等の高所施設から剥離した塗料や新たに塗布する塗料等が落下したり下方に飛散したりする事態を有効に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態に係る高所作業用補助具を構成する荷重支持用ネットと飛散防止ネットとを分離して示す側面図である。
【図2】図1に示す荷重支持用ネットの平面図である。
【図3】図1に示す荷重支持用ネット中央部付近を拡大して示す平面図である。
【図4】吊ロープの先端側を拡大して示す斜視図である。
【図5】飛散防止用ネットの平面図である。
【図6】図5に示す飛散防止用ネットの側面図である。
【図7】吊ロープにより高所作業用補助具を送電鉄塔の腕金に吊り下げた状態を示す側面図である。
【図8】補助ロープにより飛散防止用ネットを送電鉄塔の腕金に取り付けた状態を示す側面図である。
【図9】腕金が形成された送電鉄塔を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る高所作業用補助具を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0024】
この実施の形態に係る高所作業用補助具1は、高圧電線が支持された大型鉄塔の先端側に固定された腕金(アーム)の下面に塗装作業を行う際に使用されるものであって、図1に示すように、荷重支持用ネット2と、飛散防止用ネット3とを備えている。なお、この飛散防止用ネット3は、本発明を構成する捕捉用ネットである。
【0025】
上記荷重支持用ネット2は、図2に示すように、長方形状に成形されたネット本体5と、このネット本体5に固定(縫着)された第1ないし第3の補強ロープ6,7,8と、基端が上記第1の補強ロープ6に固定され、上記荷重支持用ネット2の角部方向に延在されてなる第1ないし第4の吊ロープ9・・・12とを有している。上記ネット本体5は、長辺が約2.5〜3.5m、短辺が2〜3mの長さとされ、多数の網目が形成されてなるものである。また、上記第1の補強ロープ6は、上記ネット本体5の中央の周囲を囲むように、方形状に配置されてなるものであり、該ネット本体5に形成された網目に挿通され、ネット本体5を縫っている。また、上記第2の補強ロープ7は、上記第2の補強ロープ6の周囲を囲むように、長方形状に配置されてなり、第1の補強ロープ6と同じように、ネット本体5に形成された網目に挿通され、ネット本体5を縫っている。また、上記ネット本体5の周囲には、第3の補強ロープ8が上記第2の補強ロープ7を囲むように配置されている。この第3の補強ロープ8も、上記第1及び第2の補強ロープ6,7と同じように、ネット本体5に形成された網目に挿通され、ネット本体5を縫っている。なお、この高所作業用補助具1では、本発明を構成する補強ロープとして、3つの(第1ないし第3の)補強ロープ6,7,8を構成要素としたが、本発明では、さらに多くの補強ロープを配置したものであっても良い。なお、この高所作業用補助具1を構成する荷重支持用ネット2では、上記補強ロープ6,7,8以外に、上記ネット本体5の左側の短辺に平行な平行ロープ15が配置されている。この平行ロープ15は、両端が上記第3の補強ロープ8に固定されており、中途部は上記ネット本体5の網目を縫っている。
【0026】
また、上記第1ないし第4の吊ロープ9・・・12は、図3に示すように、それぞれ基端には、ループ9a・・・12aが形成され、上述した第1の補強ロープ6は、これらのループ9a・・・12aに挿通(係合)されている。また、上記第1ないし第4の吊ロープ9・・・12の基端側中途部は、上記第2の補強ロープ7に縫合(固定)されているとともに、上記第3の補強ロープ8にも縫合(固定)され、この第3の補強ロープ8の固定位置からさらに延長され、図2に示すように、それぞれの先端には係止用金具としてのUクレビス13が固定されている。なお、これらのUクレビス13は、図4に示すように、U字状に成形された金具本体13aと、この金具本体13aの両端に形成され中心には円形状の開口(符号は省略する。)が開設された一方及び他方の円盤部13b,13cと、上記開口に挿通されたボルト13dと、このボルト13dに螺着されたナット13eとから構成されている。そして、上記第1ないし第4の吊ロープ9・・・12の基端側から上記第3の補強ロープ8に縫合された部位までは、上記ネット本体5の各網目に交互に挿通されて(ネット本体5を縫って)いる。さらに、上記第1ないし第4の吊ロープ9・・・12であって、図2に示すように、上記ネット本体5を縫っていない部位(中途部から先端側までの間)は、それぞれ本発明を構成する保護用管体としてのゴム管14に挿通されている。すなわち、上記第1ないし第4の吊ロープ9・・・12には、それぞれゴム管14が配置されており、これらのゴム管14により上記第1ないし第4の吊ロープ9・・・12が鉄塔や後述する腕金(アーム)との摺接やそれによる摩耗により切断されることが防止されている。
【0027】
また、上記ネット本体5には、第1ないし第8の補助ロープ17・・・24の基端が固定されている。これら第1ないし第8の補助ロープ17・・・24は、後述するように、先端側が鉄塔又は腕金(アーム)に固定されるものであって、上記第1ないし第3の補助ロープ17・・・19は、それぞれ上記ネット本体5の左側短辺に均等な間隔で基端が固定され、第4ないし第6の補助ロープ20・・・22は、それぞれ上記ネット本体5の左側短辺に均等な間隔で基端が固定されている。また、上記第7の補助ロープ23と第8の補助ロープ24は、それぞれ上記ネット本体5の長辺の中央に基端が固定されている。
【0028】
そして、上述した構成に係る荷重支持用ネット2のネット本体5上には、本発明を構成する捕捉用ネットとしての飛散防止用ネット3が配置(縫着)されている。この飛散防止用ネット3は、約1mmの網目が多数形成されてなるものであり、図5に示すように、正方形状に成形され、一辺の長さは上記ネット本体5の長辺の長さよりも長尺とされている。そして、上記飛散防止用ネット3の外周には、端部が折り返しされた折返部(符号は省略する。)が形成され、この折返部であって、該飛散防止用ネット3の各角部と、各角部との間にはそれぞれ開口が形成されたリング状金具(ハトメ)26が固定されている。これらのリング状金具26は、この飛散用防止ネット3を鉄塔の腕金(アーム)に先端側を固定する(縛る)補助ロープ32の基端が固定される部位である(図1参照)。
【0029】
また、この飛散防止用ネット3の上面であって、該飛散防止用ネット3の中央を挟んだ左右両側には、一方の中間帯体30と、この一方の中間帯体30に並行な他方の中間帯体31の下端側が固定(縫着)されている。なお、これら一方及び他方の中間帯体30,31は、上記飛散防止用ネット3の長辺と平行とされている。そして、これら一方及び他方の中間帯体30,31には、図6に示すように、それぞれ開口が形成された5つのリング状金具(ハトメ)27が固定されている。これらのリング状金具27は、この飛散用防止ネット3を鉄塔の腕金(アーム)に先端側を固定する(縛る)補助ロープ33の基端が固定される部位である(図1参照)。
【0030】
以下、上述した本実施の形態に係る高所作業用補助具1を使用して行われる高所作業方法、とりわけ図9に示す送電鉄塔Tの上端側に水平に固定された腕金(アーム)Aの下面への塗装方法について、順を追って説明する。
【0031】
先ず、作業者(二人)が高所作業用補助具1を携えながら上記送電鉄塔Tに登り、塗装作業を予定している上記腕金(アーム)A上において、上記高所作業用補助具1を該腕金(アーム)Aに取り付ける。なお、高所作業用補助具1は、ネット本体1と飛散用防止ネット3との端部側から丸めるとともに、上記第1ないし第4の吊ロープ9・・・12の何れかにより縛るなどしてコンパクト化し、それを携えて塗料を塗布すべき腕金(アーム)Aまで搬入する。また、こうした作業を行うに先立ち、予め上記送電鉄塔Tに支持されている図示しない送電線は停電状態としておく。そして、上記高所作業用補助具1が、上記腕金(アーム)A上にまで搬入されると、次いで、該高所作業用補助具1を二人で広げる。この高所作業用補助具1の広げ方は、腕金(アーム)A上において、送電鉄塔T方向に上記ネット本体5の長さが向くようにする。次いで、上記腕金(アーム)Aの先端側の適当な箇所に、第3の吊ロープ11の先端側を一重(又は二重)に巻回し、上記Uクレビス13を構成するボルト13dからナット13eを取り除き、該ボルト13dを一方の円盤部13b又は他方の円盤部13cから引き抜き、その上で金具本体13a内に第3の吊ロープ11の中途部を挿通させる。また、第4の吊ロープ12も、上記ネット本体5が幅方向に広がるように、上記第3の吊ロープ11が固定された部位から離間した位置にて、上記腕金(アーム)Aの所定位置に上記Uクレビス13を利用して固定する。また、こうした要領と同じ要領で、上記第1及び第2の吊ロープ9,10も上記Uクレビス13を利用して上記腕金(アーム)Aに固定する。こうした作業により、塗装を行う腕金(アーム)Aの下側に、荷重支持用ネット2が固定される(図7参照)が、この吊り下げ位置は、作業者が後述する飛散防止用ネット3上において、膝をついた状態で作業ができる程度の位置(腕金(アーム)Aの下面から約90cm程度)とする。
【0032】
そして、このように上記腕金(アーム)Aに対して上記第1ないし第4の吊ロープ9・・・12の固定作業が終了すると、次いで、支持されたネット本体5の安定性や方向性などを考慮しながら、上記第1ないし第8の補助ロープ17・・・24の全て又は何れかの先端を上記腕金(アーム)Aに固定する。
【0033】
上記作業工程により、荷重支持用ネット2を固定する作業が終了する。こうした作業が終了すると、次いで、上記飛散防止用ネット3に形成された各リング状金具(ハトメ)26,27に、補助ロープ32,33をそれぞれ挿通し、上記第1ないし第8の補助ロープ17・・・24の固定作業と同じように、該補助ロープ32,33の先端を腕金(A)に固定する(図8参照)。なお、腕金(アーム)Aに対するこうした補助ロープ32,33の固定作業は、風向や風速を考慮しながら、飛散防止用ネット3の周囲が塗装作業を行う腕金(アーム)Aの下面の周囲が覆われるように行う。
【0034】
以上の作業により上記高所作業用補助具1が腕金(アーム)Aに固定されると、次いで、作業者は、図示しない安全帯を装備したうで、該腕金(アーム)A上から上記飛散防止用ネット3上に移動し、先ず、腕金(アーム)Aの下面の錆を落とし(ケレン作業を行い)、塗装作業を行う。
【0035】
この際、上記高所作業用補助具1は、上記第1ないし第4の吊ロープ9・・・12ばかりではなく、上記ネット本体5に基端が固定された第1ないし第8の補助ロープ17・・・24、さらには、上記飛散防止用ネット3に基端が固定された補助ロープ32,33により腕金(アーム)Aに固定されることから、極めて物理的にも作業者の心理的にも安定性が良好となり、且つ、腕金(アーム)Aの下面に行われる塗装作業(高所作業)も効率性が高いものとなり工期も短縮化される。しかも、上記荷重支持用ネット2を構成するネット本体5には、上記第1及び第2の補強ロープ6,7がネット本体5の中央を囲むように配置・固定されてなるとともに、これら第1及び第2の補強ロープ6,7は、上記第1ないし第4の吊ロープ9・・・12の中途部と固定されていることから、作業者により行われる塗装作業(高所作業)は極めて安定性の高いものなる。特に、この実施の形態に係る高所作業用補助具1では、上記平行ロープ15が荷重支持用ネット2を構成するネット本体5に配置されてなることから、腕金(アーム)Aに吊り下げた該高所作業用補助具1(飛散防止用ネット3)上に移動する場合や、該高所作業用補助具1(飛散防止用ネット3)上から腕金(アーム)A上に移動する場合においては、作業者の足場として機能することから、こうした移動も安全に行うことが可能となる。
【0036】
また、この高所作業用補助具1は、上述した飛散防止用ネット3を構成要素とし、この飛散防止用ネット3の寸法は、前述したように、正方形状に成形され、一辺の長さは上記ネット本体5の長辺の長さよりも長尺とされていることから、作業者の荷重により中央およびその周囲が下方に窪んだ場合であっても、該飛散防止用ネット3は上記補助ロープ30により腕金(アーム)Aに固定されていることと相俟って、(網の目が粗い)ネット本体5の上部に必ず位置することとなる。したがって、腕金(アーム)Aから飛散した錆や塗料が飛散し落下する危険性を有効に防止できるとともに、ネット本体5に塗料が付着する可能性も低減することができる。
【0037】
なお、上述した実施の形態に係る高所作業用補助具1では、第1ないし第4の吊ロープ9・・・12の先端には、本発明を構成する係止用金具としてのUクレビス13を固定したが、この発明を構成する係止用金具は、こうしたUクレビス13ばかりではなく、少なくとも腕金(アーム)A等の高所作業を行う施設において、第1ないし第4の吊ロープ9・・・12を安全に係合させ又は固定できるものであれば、例えば逆止止めを備えたC字状のフック等のように他の構成からなるものであっても良い。
【符号の説明】
【0038】
1 高所作業用補助具
2 荷重支持用ネット
3 飛散防止用ネット
5 ネット本体
6,7,8 第1ないし第3の補強ロープ
9・・・12 第1ないし第4の吊ロープ
13 Uクレビス
14 ゴム管
17・・・24 第1ないし第8の補助ロープ
32,33 補助ロープ
T 送電鉄塔
A 腕金(アーム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方形状に成形され作業者の荷重を支持する荷重支持用ネットと、
この荷重支持用ネットの中央を囲むようにループ状に配置された複数の補強ロープと、
上記荷重支持用ネットの中央近傍から該荷重支持用ネットの各角部方向に延在され、基端側及び中途部は上記補強ロープに固定又は係合されてなるとともに、それぞれの先端には高所作業現場における高所施設の任意位置に係止される係止用金具が固定されてなる吊ロープと
を備えてなることを特徴とする高所作業用補助具。
【請求項2】
前記各補強ロープは、保護用管体に挿通されてなることを特徴とする請求項1記載の高所作業用補助具。
【請求項3】
前記荷重支持用ネットの各辺には、先端が高所作業現場における高所施設の任意位置に結ばれる補助ロープの基端が固定されてなることを特徴とする請求項1又は2記載の何れかの高所作業用補助具。
【請求項4】
前記荷重支持用ネットの上部には、可撓性を有する捕捉シート又は該荷重支持用ネットの網目よりも細かい網目を備えた捕捉用ネットが配置されてなり、この捕捉シート又は捕捉ネットには、先端が高所作業現場における高所施設の任意位置に結ばれ又は固定される補助ロープの基端が固定されてなることを特徴とする請求項1,2又は3記載の何れかの高所作業用補助具。
【請求項5】
前記請求項1記載の高所作業用補助具を構成する吊ロープの先端に固定された係止用金具の全てを高所作業現場における高所施設の任意位置に係止する第1の荷重支持用ネット係止工程と、
この第1の荷重支持用ネット係止工程の後に、前記請求項3記載の補助ロープの先端を高所作業現場における高所施設の任意位置に結ぶ第1の補助ロープ締結工程と、
この補助ロープ締結工程の後に、前記請求項4記載の捕捉シート又は上記捕捉ネットに基端側が固定された前記補助ロープの先端を高所作業現場における高所施設の任意位置に結ぶ第2の補助ロープ締結工程と、を有し、
上記捕捉シート又は上記捕捉ネット上に移動した後に、高所作業現場における高所施設の裏面に塗料を塗布し又は剥離させる等のメンテナンス作業を行うことを特徴とする高所作業方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−58320(P2011−58320A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211540(P2009−211540)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(000212739)株式会社シーテック (21)