説明

高所作業用足場構造体

【課題】 安全かつ簡易に組み立てることができる高所作業用足場構造体を提供する。
【解決手段】 一対の支持部材30と、該支持部材30に搭載される作業台20とを備える高所作業用足場構造体100である。支持部材30は、間隔を隔てて平行に配置された一対の管状縦部材31と、管状縦部材31の間に配置された複数の横桟32を備えている。作業台20は、天板21と、開閉ハッチ22と、天板支持体23と、横桟32に係止されるアーム24を備えており、アーム24を支持部材30の任意の横桟32に搭載することにより取り付ける。支持部材30を縮めた状態で2つ並べ、高さが低い状態にて先に作業台20を所望の横桟32に載せておき、その後、作業台20を横桟32に載せ置いたまま両側の支持部材30を順々に伸長させてゆくことにより、作業台20を所望の高さまで持ち上げることにより高所作業用足場構造体100を組み上げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高所作業に用いられる足場構造体に関する。特に、組立・分解が容易であり、作業員の昇降が容易である高所作業用足場構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な高所作業現場において、作業に先立って高所作業用足場を築く必要があり、また、作業終了後に高所作業用足場を撤去する必要がある。この高所作業用足場の組立・分解は大変な労力と時間を要するものであり作業全体の中で大きな負担となっている。
ここで、たとえ高所作業そのものが簡単で時間のかからないものであってもこの高所作業用足場の組立・分解の労力と時間が多大な負担となっている場合もある。例えば、最近の住宅は、住居者の開放感ニーズに応じて、吹き抜けを備えることがある。吹き抜けの存在により空間に広がりが生まれ、さらに吹き抜けに大きな窓がはめられることで太陽の光が広く屋内に差し込むため、部屋が明るくなる。しかし、このような吹き抜けは天井が高く、窓や窓の桟の掃除をする場合、脚立等では手が届かない場合が多い。また吹き抜け天井の電球の交換や照明器具の掃除も困難である。このような場合にも、高所作業用足場を組んで作業を行う必要がある。
【0003】
従来技術において、高所作業用足場として、一般には、図6のように組まれた足場1がある。図6に示すように、足場1は、作業台2と作業台2を支持する支持部材3により組み立てられ、筋交い6、水平筋交い7により補強された構造となっている。構造は単純であるが、各々の部材を組み上げて行かねばならず、結構な労力と時間を要するものとなっている。
【0004】
従来技術において、高所作業用足場1の組立・分解に要する労力と時間を低減することを図ったものとして特許文献1に開示された高所作業用足場が知られている。特許文献1に開示された高所作業用足場は、支持部材の脚を頂部枠体のレールに沿って移動させる方式で伸縮させることにより足場台の組み立て・折り畳みが行えるようにしたものであり、組立・折り畳みの作業工程の容易化を図ったものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−90337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6に示すような一般的な足場は、構造は単純であるが、一つ一つの部材を組み上げて行かねばならず、結構な労力と時間を要するものとなっている。作業に際して作業員は作業台2に昇降する際に支持部材3の外壁側から昇降する構造となっているため、作業員の荷重によって足場1全体が傾かないように保持部材5による補強が必要とされる。このように、足場1本体の組立・分解および保持部材5の組立・分解には労力と時間を要するものとなっている。さらに、作業員が支持部材3の外壁側から昇降する際の重心の安定を図るために足場1全体を重い部材で形成する必要がある。
一般には、このような従来の高所作業用足場の組立・分解には2人以上の作業員が協働しながら行う必要があり、作業コストも大きなものとなっている。
【0007】
特許文献1の発明に係る折り畳み式足場台は、図6に示すような一般的な足場に比べて組立・分解作業が比較的少なくて済み、労力と時間の低減を図ることができるものとなっている。しかし、一人の作業員で左右の支持部材の脚を左右同時均等に頂部枠体のレールに沿って移動させることは難しいため、一人の作業員で組立を行う場合は、左右の支部部材の脚を各々伸ばした後に作業台を取り付けざるを得ない。一人の作業員によって作業台を高所に取り付ける作業は難しくかつ落下の危険もある。2人の作業員であれば、2人が協働して左右の支持部材の脚を左右同時均等に頂部枠体のレールに沿って移動させることができるので、作業台を低所で取り付けたまま左右の支持部材の脚を伸ばして行くことができるが、やはり2人の作業員が必要となるために、依然作業コストは大きなものであった。
【0008】
本発明は、安全かつ容易に組立・分解することができる高所作業用足場構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明にかかる高所作業用足場構造体は、以下の構成を備える。なお、以下に記載の構成要素は、可能な限り任意の組み合わせが可能であり、本発明の態様または技術的特徴は以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0010】
本発明の高所作業用足場構造体は、間隔を隔てて平行に配置された一対の支持部材と、前記支持部材に搭載される作業台とを備える高所作業用足場構造体であって、前記支持部材は、伸縮可能で高さが可変である管状縦部材と前記管状縦部材の間に配置された複数の横桟を備え、前記作業台は、天板と前記天板を前記横桟に係止するためのアーム部材を備え、前記作業台を一対の前記支持部材の任意の高さの前記横桟の間に掛け渡した状態で高さが可変である高所作業用足場構造体である。
支持部材が伸縮可能となる構造の例としては、例えば、支持部材が、前記横残一段分の高さの基本部材を摺動可能に縦方向に複数個連結した構造であり、前記基本部材が、中空の一対の支柱部材と、双方の前記支柱部材の上端部間に設けられた横桟部とからなり、順次前記支柱部材の太さを異ならせて形成し、前記支柱部材の最も太い基本部材の前記支柱部材に、順次前記支柱部材の細い前記基本部材を摺動可能に上方から嵌入させ、前記各基本部材の横桟部が順次当接した短縮状態と前記各基本部材の横桟部が適当に離れ前記支柱部材が嵌合している伸長状態とに変更可能に形成し、前記基本部材の前記横桟部に前記伸長状態を保持する伸長係止手段を設けたものがある。
【0011】
上記構成により、本発明の高所作業用足場構造体では組立・分解の作業が容易になる。例えば、支持部材を縮めた状態で2つ並べ、高さが低い状態にて先に作業台を所望の横桟に載せておく。その後、作業台を横桟に載せ置いたまま両側の支持部材を順々に伸長させてゆくことにより、作業台を所望の高さまで持ち上げることにより高所作業用足場構造体を組み上げる。この作業であれば1人の作業員であっても容易に組立・分解の作業を行うことができる。
【0012】
ここで、上記構成において、アーム部材が横桟方向に摺動伸縮する摺動機構を備えることが好ましい。アーム部材が横桟方向に摺動伸縮する摺動機構を備えることにより、組立または分解の過程において、支持部材の一方が短縮状態と伸長状態のいずれかに変化して作業台のアーム部材が係止している横残間の距離が変化しても摺動機構の伸縮により追随可能となる。
つまり、1人の作業者のみで支持部材を左右交互に伸縮させてゆき、作業台を係止させている横桟の左右の高さが異なり斜めになったとしても、アーム部材が動的に長さを伸縮させて対応できるため、作業台を低所で載せ置いてその後徐々に支持部材を左右交互に伸ばして上昇させることができる。また分解時は逆に作業台を載せ置いた状態のまま徐々に支持部材を左右交互に縮めて下降させることができる。このように1人の作業員のみでも容易に組立・分解させることができるため、作業コストを低減することができる。
【0013】
ここで、上記構成において、前記作業台の天板の一部にハッチを設けることが好ましい。
開閉ハッチは開状態にて作業員が天板を通過する開口となり、閉状態で作業台の一部となる。このようにハッチを設けることにより、作業員が昇降する際に、頭上の天板があっても開閉ハッチを介して通過することができるため、作業員は天板の開閉ハッチに向かって支持部材の内側から横桟を使って昇降、つまり、足場の中側から昇降することができ、重心が偏ることなく安全に昇降できる。また、作業員の昇降時において重心の偏りがないため、各部材を軽量化することができる。
【0014】
なお、前記支持部材が脚高さ調整機構を備えたものであることが好ましい。
上記構成により、設置場所に段差があったとしても、脚高さ調整機構により当該段差を吸収させることができ、作業台を略水平に保つことができる。
【0015】
さらに、上記構成において、高所作業用足場構造体を隣接させて複数台並べた状態において支持部材同士または作業台同士を相互に連結する連結部材を備えることが好ましい。
このように連結部材を用いて高所作業用足場構造体を横方向に並べた状態や縦方向に並べた状態で安定して組み上げることができ、作業台スペースを横方向または縦方向に増加させることができる。例えば、作業の範囲の長さが広い壁面設備に対する作業や、作業範囲の面積が広い天井設備に対する作業などに対する作業効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の高所作業用足場構造体によれば、組立・分解の作業が容易であり、1人の作業員であっても容易に組立・分解の作業を行うことができる。例えば、支持部材を縮めた状態で2つ並べ、高さが低い状態にて先に作業台を所望の横桟に載せておき、その後、作業台を横桟に載せ置いたまま両側の支持部材を順々に伸長させてゆくことにより、作業台を所望の高さまで持ち上げることにより高所作業用足場構造体を組み上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例1に係る高所作業用足場構造体100を模式的に示す斜視図である。
【図2】支持部材30の短縮状態、伸長途中状態、伸長状態を簡単に示す図である。
【図3】作業台20の全体を示す上面図、ハッチ22の閉状態を示す斜視図、ハッチ22の開状態を示す斜視図である。
【図4】高所作業用足場構造体100が組み立てられる状態を模式的に示す図であり、(a)は上から2段目の横桟に作業台を戴置した状態、(b)は一方の支持部材を一段伸張した状態、(c)はもう一方の支持部材を一段伸張した状態を示す図である。
【図5】高所作業用足場構造体100への作業者Hの昇状態を示す図であり、(a)は地面から作業者Hが昇り始める状態を示す斜視図、(b)は作業者Hがハッチを開いて足場に昇る直前状態を示す斜視図である。
【図6】従来の足場1を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。各図において、同一部分には同一番号を付し、重複する説明は省略する。また、図面は、本発明を理解するために誇張して表現している場合もあり、必ずしも縮尺どおり精緻に表したものではないことに留意されたい。なお、本発明は下記に示される実施の形態に限られるものではない。
【実施例1】
【0019】
実施例1にかかる本発明の高所作業用足場構造体100の構成例について説明する。
図1は、本発明の実施例1に係る高所作業用足場構造体100を模式的に示す斜視図である。図1に示すように、高所作業用足場構造体100は、一対の支持部材30と、支持部材30に搭載される作業台20などの部材により組み立てられている。なお、ここでは、補強部材として筋交い60や水平筋交い61等の補強部材を備えた構成例となっている。
【0020】
まず、支持部材30について説明する。
支持部材30は、伸縮可能で高さが可変である管状縦部材31と、管状縦部材31の間に設けられた複数の横桟32とを備えたものとなっている。他方の支持部材も同様に、伸縮可能で高さが可変である管状縦部材31と、管状縦部材31の間に設けられた複数の横桟32とを備えたものとなっている。
【0021】
管状縦部材31は全体の骨組みにおける柱のような働きをするものである。なお、作業現場への運び込みや撤去の際には管状縦部材31を短く縮小させた状態としておく。
管状縦部材31の素材としては、全体の重量を軽量化するために必要な構造的強度を確保せしめた上でアルミ材などを用いることが好ましい。
【0022】
次に、横桟32は、一対の管状縦部材31の間に渡された踏み桟であり、作業者が足を掛けて昇降する部材である。横桟32の幅としては、この例では後述する作業台の幅に対応する幅となっている。作業台の幅は作業性を考慮した大きさが必要であり、それに対応した横桟32の幅となる。
横桟32の高さ方向の間隔は作業者が安全に足を運ぶできることができる距離とすることが好ましい。横桟32の段数としては特に限定されず、作業員が登る高さに応じて段数を確保する必要がある。
横桟32の素材としては、全体の重量を軽量化するために必要な構造的強度を確保せしめた上でアルミ材などを用いることが好ましい。
【0023】
次に、支持部材30の伸縮機能について図2を参照しつつ詳述する。
図2は、支持部材30のみを取り出して示した図である。図2(a)は短縮状態、図2(b)は伸長途中状態の一例を示す図、図2(c)は伸長状態を示す図である。
なお、支持部材30の基本部材の段数、横桟32の段数などは一例であり、特に限定されないことは言うまでもない。
【0024】
この構成例では、支持部材30は、複数の基本部材30a、30b、30c、30d、30e、30f、30g、30hから構成された例となっている。
【0025】
図2に示すとおり、支持部材30の基本部材30a、30b、30c、30d、30e、30f、30g、30hは、間隔を隔てて平行に配置され両側で対をなす管状縦部材31a、31b、31c、31d、31e、31f、31g、31hと、その双方の管状縦部材の上端間に設けられた横桟32a、32b、32c、32d、32e、32f、32g、32hを備えた構造となっている。
【0026】
この構成例では、複数の基本部材30a、30b、30c、30d、30e、30f、30g、30hは、管状縦部材の太さを順次異ならせて形成し、管状縦部材の最も太い基本部材30hの双方に、順次管状縦部材の細くなった基本部材30g、30f、30e、30d、30b、30c、30aを摺動可能に上方から嵌入させ、横桟が順次上下に当接するものとなっている。基本部材30a、30b、30c、30d、30e、30f、30gを順次上方に摺動することにより、支持部材30は伸縮し、作業に必要な高さを得ることができるものとなっている。
【0027】
図2(b)に示す支持部材30の伸長の途中状態の例では、上段から順に、上にある基本部材30a、30b、30c、30dがそれぞれ直下段の基本部材30b、30c、30d、30eに対して上方向に摺動して所定距離となったところで各々係止固定した状態となっている。
【0028】
係止手段は、各基本部材の伸張状態を保持するものであり、解除操作手段は、係止手段の作用状態を解除するものである。
係止手段は、基本部材の管状縦部材31の摺動をとめて固定できるストッパーであれば特に限定されないが、例えば、基本部材30a、30b、30c、30d、30e、30f、30gの各横桟の内部に設けられている。この構成例では、係止手段は、例えば、小円柱状の突出部材(図示せず)が横桟32の内部において略水平に仕込まれており、コイルばねからなる付勢手段(図示せず)により外側、つまり、管状縦部材31方向に突出できるように付勢されたものとなっている。この小円柱状の突出部材を直上の基本部材の管状縦部材31に突きたてることにより、直上の基本部材30を固定する。
【0029】
一方、各々の管状縦部材31には、上端の横桟32の高さから所定距離下方の位置に小孔(図示せず)が設けられている。管状縦部材31が摺動して直下の基本部材に対して上方へ移動する際、直下の基本部材の係止手段は、移動中は管状縦部材31の壁面が当接して押さえられており、コイルばねの付勢によっても突出できない状態であるが、管状縦部材31が摺動しつつ上昇して小孔が小円柱状の突出部材の真横に到達すると、コイルばねの付勢により小円柱状の突出部材が小孔内に突き刺さり、管状縦部材31が固定される仕組みとなっている。
【0030】
解除操作手段は、上記係止手段を解除するものであり、係止手段に対応した解除手段であれば特に限定されない。上記例の係止手段に対応した解除操作手段は、突出部材を外部から操作できるように突出部材に設けてある操作つまみを、横桟32に形成された長孔から突出させた構成である。この操作つまみを付勢手段に抗して操作して突出部材を内側に後退させることにより、小孔に突き刺さっている小円柱状の突出部材を引き抜き、管状縦部材31を再び摺動自在の状態に戻す。
このように、支持部材30は、横残32一段分の高さの基本部材を複数個連結し、それぞれを縦方向に摺動可能な構造とすることにより、伸縮機能を備えたものとなっている。
【0031】
なお、図1に示す構成例において、支持部材30は、下端部に脚高さ調整機構50を備えうる。例えば、床面に当接される座板にネジ部が設けられて上下方向に調整可能な機構などがある。このような高さ調整機構50により、床面に凹凸がある場合や、階段等においても本発明の高所作業用足場構造体100の設置が可能になる。
【0032】
次に、作業台20を説明する。
作業台20は、天板21と、天板の一部に設けられた開閉可能な開閉ハッチ22と、天板21および開閉ハッチ22を支える天板支持体23と、横桟に係止されるアーム24を備えた構造となっている。
図3(a)は作業台20の全体を示す上面図であり、図3(b)はハッチ22の閉状態を示す斜視図、図3(c)はハッチ22の開状態を示す斜視図である。
【0033】
天板21は作業員の踏み板となるものであり、作業員の体重をしっかり支える例えばステンレス鋼板などの素材で構成されている。なお、一部に開口が設けられており、その開口の上面に対して開閉ハッチ22が開閉可能に設けられている。
【0034】
開閉ハッチ22は、天板の一部に設けられた開口を覆うように設けられた部材であり、蝶番などにより開閉可能な構造となっている。なお、図3(b)に示されるとおり、閉状態においては天板支持体23により戴置され、係止されるようになっている。
開閉ハッチ22は、後述するように、開状態では作業員が天板を通過する開口を提供することができ、閉状態では開口を覆って作業床の一部となり、天板21と一体になり、作業員が作業床の一部として踏みしめることができるものとなる。
開閉ハッチ22は閉状態では開口を覆って作業床の一部となるので、開閉ハッチ22の素材は天板と同じ素材、例えば、ステンレス鋼板などの素材で構成されることが好ましい。
【0035】
開閉ハッチ22を開状態にするには、後述するように、支持部材30をよじ昇ってきた作業者が作業台20の底面から開閉ハッチ22を押し上げればよい。図3(c)は、開閉ハッチ22の開状態を示す。図3(c)に構造例では、開閉ハッチ22は、作業台20の幅方向に開閉し、開閉方向の一端に蝶番(図に示されない)を備えた構造となっている。なお、この構成例では、開閉ハッチ22は開閉レバー25を備えたものとなっている。開閉レバー25は、中間部にあるつまみをつまんで下げれば閉じる役割を果たすとともに、開閉ハッチ22が作業台20から落下することを防ぐ。
【0036】
天板支持体23は、天板21の下側に位置して天板21を支える部材である。この構成例では天板21に対する枠体として下方から天板21を支えるものとなっている。天板支持体23も天板を支える構造強度が必要であるので、例えば、ステンレス材などの素材が好ましい。
【0037】
アーム24は、一対の支持部材30の任意の横桟32に橋渡しされるように掛けられ、作業台20全体を一対の支持部材30の任意の横桟32に対して係止する部材である。図3(a)に示されるとおり、アーム24が横桟32を把持することにより、作業台20は支持部材30に搭載される。この構成例では、アーム24の先端部分には、横桟32の上面から側面に対応するフック状の嵌合形状が設けられており、横桟32の上面から側面にしっかりと嵌ることにより係止することができ、作業台20を安定した状態で横桟32間を橋渡しするように取り付けが可能となっている。アーム24も天板を支える構造強度が必要であるので、例えば、ステンレス材などの素材が好ましい。
【0038】
次に、作業台20のアーム24の伸縮機能の工夫について述べる。
上記したように、支持部材30を伸長させて組立て、縮小して畳むことが可能であるが、本発明に係る高所作業用足場構造体100では、作業台20の組み上げ方に工夫が施されている。作業台20の支持部材30の横桟32への取り付け作業が、作業員が地上にいる状態で行うことができれば非常に楽である。逆に、支持部材30を所定の伸長状態に伸ばし切ってから作業員が作業台20を持ち上げて支持部材30の横桟32へ取り付けることとなると非常に不便であり、かつ危険な作業となってしまう。そこで、作業員が地上にいる状態にて、支持部材30の横桟32へ作業台20の取り付け作業を行い、作業台20を支持部材30の横桟32へ取り付けた状態で支持部材30を伸長して作業台20を高く持ち上げることを可能とした。
ここで、本発明の高所作業用足場構造体100では、かつ、作業台20を支持部材30の横桟32へ取り付けた状態で容易に支持部材30を伸長して行くことができるよう作業台のアーム24が伸縮するよう工夫している。
【0039】
支持部材30は、短縮状態から、基本部材30a、30b、30c、30d、30e、30f、30gを順次上方に伸張することができるが、この動きに追随できるように、作業台20のアーム24は摺動機構を備えている。例えば、天板支持体23とアーム24との間にガイドレールのような摺動機構を設ければよい。
【0040】
高所作業用足場構造体100の組み立てを図4を参照しつつ説明する。
図4は本発明の高所作業用足場構造体100が組み立てられる状態の一部を模式的に示す図であり、図4(a)は上から2段目の横桟に作業台を戴置した状態を示す図であり、図4(b)は一方の支持部材を一段伸張した状態を示し、図4(c)はもう一方の支持部材を一段伸張した状態を示す図である。
【0041】
まず、図4(a)に示すように、作業員が地上にいる状態で、作業台20を横桟32に戴置する。なお、この例では作業台20を載せおく横桟32は上から2段目としているが、他の段であっても良い。
【0042】
次に、図4(b)に示すように、一方の基本部材31bを上方に引き延ばす。そうすると、作業台20を載せ置いた横桟32の高さが左右で異なるものとなり、作業台20が斜めになりつつ、かつ、横桟32間の距離が変動することとなる。もし、作業台20のアーム24に伸縮機能がなければ、このように、作業台20を載せ置いた横桟32の高さが左右で異なることは許容できず、左右それぞれの基本部材31bを同時に上げざるを得ず、作業員が左右1人ずつ計2人必要となってしまう。しかし、この構成例では、作業台20のアーム24が摺動機構により図面右上方向に摺動することにより伸縮して横桟32間の距離の変動に追随することができる仕組みとなっている。
【0043】
次に、図4(c)に示すように、他方の支持部材30の基本部材31bを上方に引き延ばす。そうすると、作業台20を載せ置いた横桟32の高さが左右で同じになり、作業台20が略水平になり、かつ、横桟32間の距離が元に戻ることとなる。この結果、作業台20は床面に略平行に一段高くなる。この作業を他の基本部材についても繰り返し、左右の基本部材31gをそれぞれ交互に上方に引き上げてゆけば、作業台20が所定の作業位置にまで到達することができる。
このように、支持部材30を伸長させ、作業台20を所定の高さまで組み上げた後、筋交い60や水平筋交い61等の補強部材を取り付けて高所作業用足場構造体100を完成させる。
【0044】
なお、補強部材である筋交い60は、支持部材30間に渡されるものであり、筋交い60を設ける位置などは構造強度を確保できるものであれば特に限定されないが、図1の構成例では、支持部材30間に斜めに渡されている。補強部材である水平筋交い61も支持部材30間に渡されるものであり、水平筋交い61を設ける位置などは構造強度を確保できるものであれば特に限定されないが、図1の構成例では、支持部材30間に略水平に渡されている。
【0045】
なお、筋交い60や水平筋交い61を設ける箇所は、作業員が高所作業用足場構造体100の内側へ出入し、くぐりやすいような箇所に適宜設ければよい。
筋交い60、水平筋交い61の素材は特に限定されないが、この例ではアルミなどのパイプ材となっている。全体の重量を軽量化するために必要な構造的強度を確保せしめるように太さや肉厚径を決めることが好ましい。
【0046】
次に、高所作業用足場構造体100での作業員の昇降動作について説明する。
図5は、高所作業用足場構造体100への作業者Hの昇状態を示す図であり、図5(a)は地面から作業者Hが昇り始める状態を示す斜視図、図5(b)は作業者Hがハッチ22を開いて作業台20に昇る直前状態を示す斜視図である。
【0047】
図5(a)に示すとおり、本発明に係る高所作業用足場構造体100は、支持部材30の外面側から横桟32を登って行くではなく、支持部材30の内側から横桟32をよじ昇ることができる。そして、作業台20の底面まで到達すると、図5(b)に示すように、頭上にある開閉ハッチ22を開いて作業台20に上がる構造になっている。このように、本発明に係る高所作業用足場構造体100では作業台20に開閉ハッチ22を設けておくことにより、外面側から登る必要はなく、図5(b)に示すように支持部材30の内側から横桟32をよじ昇ることができ、重心が安定しやすい。
したがって、作業者Hは安全に作業台20に到達することが可能である。
【0048】
さらに、本発明の高所作業用足場構造体100によれば、作業員が開閉ハッチ22を通過後、開閉ハッチ22を閉じれば天板支持体23に係止されて安定し、天板21と一体になって作業台20の一部となるため、作業足場を広く確保する事ができ、かつ、開口から落下するなどの事故も防ぐことができる。
【0049】
本発明の高所作業用足場構造体100の基本構成を示したが、高所作業用足場構造体100同士をさらに複数台並べて組み上げることも可能である。
例えば、高所作業用足場構造体100を隣接させて複数台並べた状態において支持部材30同士や作業台20同士を連結する連結部材(図示せず)を用いて、図1に示した高所作業用足場構造体100を横方向に2台以上並べて組み上げて作業台の横方向の長さを拡げたり、縦方向に2台以上並べて組み上げて作業台の縦方向の幅を拡げたりすることも可能である。
【0050】
以上、本発明に係る高所作業用高所作業用足場構造体における好ましい実施形態を図示して詳細に説明してきたが、本発明の技術的範囲を逸脱することなく種々の変更が可能であることは理解されるであろう。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の高所作業用足場構造体は、屋内工事用または屋外工事用の高所作業用足場として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0052】
20 作業台
21 天板
22 ハッチ
23 天板支持体
24 アーム
30 支持部材
31 基本部材
32 横桟
40 解除手段
41 解除つまみ
42 長孔
50 脚部
60 筋交い
61 水平筋交い
100 高所作業用足場構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を隔てて平行に配置された一対の支持部材と、前記支持部材に搭載される作業台とを備える高所作業用足場構造体であって、
前記支持部材は、伸縮可能で高さが可変である管状縦部材と前記管状縦部材の間に配置された複数の横桟を備え、
前記作業台は、天板と前記天板を前記横桟に係止するためのアーム部材を備え、
前記作業台を一対の前記支持部材の任意の高さの前記横桟の間に掛け渡した状態で高さが可変である高所作業用足場構造体。
【請求項2】
前記支持部材は、前記横残一段分の高さの基本部材を摺動可能に縦方向に複数個連結した構造であり、前記基本部材が、中空の一対の支柱部材と、双方の前記支柱部材の上端部間に設けられた横桟部とからなり、順次前記支柱部材の太さを異ならせて形成し、前記支柱部材の最も太い基本部材の前記支柱部材に、順次前記支柱部材の細い前記基本部材を摺動可能に上方から嵌入させ、前記各基本部材の横桟部が順次当接した短縮状態と前記各基本部材の横桟部が適当に離れ前記支柱部材が嵌合している伸長状態とに変更可能に形成し、前記基本部材の前記横桟部に前記伸長状態を保持する伸長係止手段を設けたものである請求項1に記載の高所作業用足場構造体。
【請求項3】
前記アーム部材が前記横桟方向に摺動伸縮する摺動機構を備え、組立または分解の過程において、前記支持部材の少なくとも一部が前記短縮状態と前記伸長状態のいずれかに変化して前記作業台の前記アーム部材が係止している前記横残間の距離の変化に対して前記摺動機構の伸縮により追随可能としたものである請求項1または2に記載の高所作業用足場構造体。
【請求項4】
前記作業台の天板の一部に設けられ、開状態で作業員が天板を通過する開口となり、閉状態で作業台の一部となる開閉ハッチを備えたことを特徴とする請求項1乃至3に記載の高所作業用足場構造体。
【請求項5】
前記支持部材が脚高さ調整機構を備えたものであることを特徴とする請求項1乃至4に記載の高所作業用足場構造体。
【請求項6】
隣接させて複数台並べた状態において、前記支持部材同士または前記作業台同士を連結する連結部材を備えたことを特徴とする請求項1乃至5に記載の高所作業用足場構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−241446(P2012−241446A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−113613(P2011−113613)
【出願日】平成23年5月20日(2011.5.20)
【出願人】(509292412)特殊梯子製作所有限会社 (3)
【出願人】(592230380)株式会社エバー商会 (9)
【Fターム(参考)】