説明

高所設置装置用取付器具

【課題】アングル鉄塔等の高所に設置される装置を確実に且つずれなく取り付けることが可能であり、作業のために所定の取り付け位置から上下にずらしても高所設置装置の調整が簡易とした器具を提供する。
【解決手段】高所設置装置用器具1はポケットコンパス2が固定される固定用部材8とアングル鉄塔に取り付けるための取付機構25を有する本体部材9とから構成される。固定用部材は本体部材に対し揺動可能に連結され、本体部材は固定用部材と連結された本体部分18と取付機構25が設けられた本体部分19とから成る。本体部分と本体部分とは揺動可能に連結部20で連結され、取付機構は2つの装着用具26を有し、装着用具の一方又は双方は相互に遠近する方向に移動することが可能なように本体部分に装着することで、装着用具をアングル鉄塔のアングル材等に装着する。これにより、ポケットコンパスが固定でき、且つアングル鉄塔に取り付けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アングル鉄塔等のアングル材又は厚みの相対的に薄いプレート材を利用した構造物のうち高所となる場所にポケットコンパス等の高所設置装置を取り付けるための器具の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
送電線の延線工事のうち送電線を直接見通す直接法としては、等長法が主として用いられており、この等長法では、例えば特許文献1によれば、弛度計測径間の2つの鉄塔に対しその一方に弛度定規(バーテックス)を、もう一方に観測装置を取り付けて、観測装置から見た送電線の最下点を弛度定規と同じ高さに合わせる手法が採られている。
【0003】
そして、上記等長法で用いられる観測装置のみならずこの特許文献1に示される架空線弛度監視方法で用いられる遠隔からの監視用の固体カメラでも、当該固定カメラを鉄塔に取り付けるためにマグネットが用いられるようになっている。
【0004】
その一方で、マグネット以外で、所定の機器を鉄塔等のアングル材又は厚みの相対的に薄いプレート材を利用した構造物に取り付けるための装置としては、例えば特許文献2に示される送電鉄塔用機材取付け金具等が既に公知となっている。また、架台を対象物に固定するための装置としては、例えば特許文献3に示される架台用固定補助具等が既に公知となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】

【特許文献1】特開2000−324639号公報
【特許文献2】実開平5−78133号公報
【特許文献3】特開2000−120936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に示される固定カメラ等の高所設置装置用取付器具のようにマグネットで鉄塔に取り付けたのでは、鉄塔の高所での作業中に当該作業で発生した鉄塔の振動或いはこの高所設置装置用取付器具の周囲に配置されたロープや作業員のヘルメットのツバ部分等が不用意に触れることにより、所望の位置から高所設置装置用取付器具がずれてしまうことがある。この場合には、高所設置装置用取付器具の取り付け位置を再調整しなければならず、しかもこの再調整の作業は高所で行うこととなるので作業員に大きな負担をかけるという不具合を有していた。そして、高所設置装置用取付器具が上記の要因で落下した場合には、高所設置装置用取付器具が破損するのみならず構造物の下方に居る者に対しても非常に危険である。
【0007】
また、電線の弛度を観測する際に例えば1時間乃至は2時間経過すると温度の変化により電線の弛度が変わってくるため高所設置装置による観測位置を上下方向に沿って変位させる必要があるが、上記特許文献1に示されるような高所設置装置用取付器具の構造では、高所設置装置による観測位置の変位後に水平方向となっているか等の微調整を行う必要があり、観測作業が煩雑化するという不都合を有していた。
【0008】
そして、特許文献2に示される送電鉄塔用機材取付け金具や特許文献3に示される架台用固定補助具では、所定の取り付け位置から緩めた状態として上下方向にずらして再度において取り付けるにあたり、高所設置装置の水平方向等の調整が容易とは言えず、高所設置装置を用いての電線の弛度観測作業に充分に対応しているとは言えないものである。
【0009】
また、ポケットコンパス等の高所設置装置を取り付けた後に高所設置装置を使用しようとした場合に、アングル材又は厚みの相対的に薄いプレート材を利用した構造物に装着された腕金の主柱部材等の障害物が測定箇所と重なる場合には、特許文献2に示される送電鉄塔用機材取付け金具や特許文献3に示される架台用固定補助具では、障害物を避けるように高所設置装置の付け替えを行う必要がある。
【0010】
そこで、本発明は、アングル鉄塔と称される種類の鉄塔の塔上等、アングル材又は厚みの相対的に薄いプレート材を利用した構造物上の高所に設置される装置を確実に且つずれなく取り付けることが可能であると共に取り付け後でも高所設置装置の向きや高さを可変可能であり、しかも、観測作業のために所定の取り付け位置から上下方向に変位させても高所設置装置の調整が簡易な器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る高所設置装置用取付器具は、アングル材又は厚みの相対的に薄いプレート材を利用した構造物に設置される高所設置装置が取り付けられるものであって、前記高所設置装置が固定される固定用部材と、前記構造物に取り付けるための取付機構を有する本体部材とから少なくとも構成されていると共に、前記固定用部材は、前記本体部材に対し当該固定用部材の先端が上方を向いた位置から側方を向いた位置までの範囲で自在に変位できるように連結され、前記本体部材は、前記固定用部材に連結された第1の本体部分と、前記取付機構が設けられた第2の本体部分とから成り、前記第1の本体部分と前記第2の本体部分とは連結部で連結され、前記第1の本体部分は前記連結部を基点として前記第2の本体部材から延びる軸線に対し左右方向の両方に向けて自在に揺動可能となっており、前記取付機構は、2つの装着用具を有し、これらの装着用具の一方又は双方は相互に遠近する方向に移動することが可能であると共にこれらの装着用具をそれぞれ前記構造物の取り付け部位に装着することにより前記本体部材が前記構造物に取り付けられることを特徴としている(請求項1)。
【0012】
これにより、この高所設置装置用取付器具によれば本体部材に有する取付機構の複数の装着用具を利用して構造物の取り付け部位に対して確実且つ強固に高所設置装置用取付器具を取り付けることができ、構造物の振動や作業員の接触等によっても構造物への取り付け位置にずれが生じない。また、高所設置装置用取付器具を構成する固定用部材が本体部材に対し略水平になった状態から起立した状態まで可動することができると共に、本体部材も第1の本体部分が第2の本体部分に対して左右方向に首振り的に可動することができるので、これらの動作の組み合わせにより固定用部材に固定された高所設置装置の向きを相対的に見て自在に可変することができる。
【0013】
そして、この発明に係る高所設置装置用取付器具にあって、前記固定用部材は、2つの開口部を有する貫通孔を備えた筒状体と、この筒状体の貫通孔に対しその軸方向に沿ってスライド可能に挿通されていると共にスライド方向の寸法が前記筒状体の貫通孔の軸方向に沿った寸法よりも大きくなっており、その軸方向の一方側には前記高所設置装置を固定するための固定部を有するスライド体と、このスライド体が前記筒状体に対し所定の位置にある状態を保持する保持機構とを少なくとも備えている(請求項2)。これにより、固定用部材を構成するスライド体が同じく固定用部材を構成する筒状体に対し貫通孔の軸方向にスライドすることができるので、この動作も加味することで、固定用部材に固定された高所設置装置の向きをより一層自在に可変することができる。また、温度の変化により電線が変わってきて、高所設置装置による観測位置を上下方向に沿って変位させる必要があっても、スライド体を上下動させればよく高所設置装置用取付器具全体の付け替えを必要としない。
【0014】
また、この発明に係る高所設置装置用取付器具は、前記固定用部材を構成する筒状体とスライド体とに前記高所設置装置の調整を補助するための補助手段が形成されている(請求項3)。具体的には、筒状体には補助手段として例えば水平計測器が取り付けられ、スライド体には補助手段として例えば目盛りが設けられている。これにより、スライド体をスライドさせる際の微妙な設定について目盛りを参照しながら正確に行うことができる。また、高所設置装置用取付器具全体を付け替える必要や位置をずらす必要が生じても、水平計測器により高所設置装置用取付器具の位置や向き等の調整を簡易に行うことが可能である。
【0015】
さらに、この発明に係る高所設置装置用取付器具にあって、前記取付機構は、前記本体部材の面のうち前記構造物と対峙する側面からこの側面と同じ方向に延びる側面にかけて貫通すると共にこれらの側面の長手方向に沿って延びるように開口した貫通孔を形成し、この貫通孔に前記装着用具を前記貫通孔の長手方向に沿ってスライド自在に係合させると共に、前記装着用具に前記構造物の取り付け部位の端部を挟む挟持装置と前記構造物の取付部位の端部若しくは角部の面に接して保持する保持用突起部とを設けた構成となっている(請求項4)。これにより、取付機構を構成する装着用具の挟持装置と保持用突起部との使い分けで、構造物に対してその取付部位を選ばずに取り付けることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、この発明によれば、高所設置装置用取付器具のうちの本体部材が有する取付機構の複数の装着用具を利用して構造物の取り付け部位に対して確実且つ強固に高所設置装置用取付器具を取り付けることができ、構造物の振動や作業員のヘルメットのツバ等の接触等によっても構造物に取り付けた位置からずれないため、高所設置装置用取付器具の無用な付け直し作業を回避することが可能となり、作業員の不要な作業をなくすことができるので、送電線の弛度観測作業の効率化が図られる。
【0017】
また、この発明によれば、高所設置装置用取付器具を構成する固定用部材が本体部材に対し略水平になった状態から起立した状態まで可動することができると共に、本体部材も第1の本体部分が第2の本体部分に対して左右方向に首振り的に可動することができるので、これらの固定用部材の本体部材への動作と本体部材の第1及び第2の本体部分との動作の組み合わせにより固定用部材に固定された高所設置装置の向きを相対的に見て自在に可変することができる。このため、高所設置装置用取付器具を構造物に取り付けて電線の弛度の観測をしようとした場合にその観測を妨げる障害物があっても、高所設置装置用器具を付け替えることなく、その障害物を回避して観測を行うことが可能である。
【0018】
特に請求項2に記載の発明によれば、温度の変化により電線の弛度が変わってきて、高所設置装置による観測位置を構造物の上下方向に沿っていずれかに変位させる必要があっても、スライド体を筒状体に対し上下方向に沿ってスライドさせた後、固定部でその位置を固定すれば良く、高所設置装置用取付器具全体の付け替えを必要としないので、作業員の作業数を削減することができることから電線の弛度観測作業の効率化が図られる。また、スライド体の筒状体に対するスライドの動作を固定用部材の本体部材への揺動の動作と本体部材の第1及び第2の本体部分との揺動の動作に対して更に付加することにより、高所設置装置用取付器具を構造物に取り付けて電線の弛度の観測をしようとした場合にその観測を妨げる障害物があっても、高所設置装置用器具を付け替えることなく、その障害物を回避して観測を行うことがより一層可能となる。
【0019】
特に請求項3に記載の発明によれば、スライド体をスライドさせる際の微妙な設定について目盛り等の補助手段を参照しながら正確に行うことができる。また、高所設置装置用取付器具全体を付け替える必要や位置をずらす必要が生じても、水平計測器等の補助手段により高所設置装置用取付器具の調整を簡易に行うことが可能であるので、電線の弛度の観測作業全体の能率を向上させることが可能である。
【0020】
特に請求項4に記載の発明によれば、取付機構を構成する装着用具の挟持装置と保持用突起部との使い分けで、構造物に対してその取り付け部位を選ばずに取り付けることができるので、高所設置装置用器具の設置場所の自由度が向上し、高所設置装置用器具の設置作業の効率化・迅速化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、アングル鉄塔間での送電線の弛度を測定する手法に関する説明をするための説明図である。
【図2】図2は、本願の発明に係る高所設置装置用取付器具の全体構成を示す説明図である。
【図3】図3は、同上の高所設置装置用取付器具の固定用部材についての本体部材に対する可動性を説明するための説明図である。
【図4】図4は、同上の高所設置装置用取付器具の本体部材のうちの第1の本体部分についての本体部材の第2の本体部分に対する可動性を説明するための説明図である。
【図5】図5は、同上の高所設置装置用取付器具の取付機構を構成する装着用具が相互に遠近する方向に可動する可動性を説明するための説明図である。
【図6】図6は、同上の高所設置装置用取付器具の取付機構を構成する装着用具が自転可能であることを説明するための説明図である。
【図7】図7は、同上の高所設置装置用取付器具をアングル鉄塔間の角部のうちアングル鉄塔の構成部材が重複した部位に取り付けた状態を説明するための説明図である。
【図8】図8は、同上の高所設置装置用取付器具をアングル鉄塔間の角部のうちアングル鉄塔の構成部材が重複していない部位に取り付けた状態を説明するための説明図である。
【図9】図9は、同上の高所設置装置用取付器具に高所設置装置を固定した状態を説明するための説明図である。
【図10】図10は、同上の高所設置装置が固定された高所設置装置用取付器具を鉄塔に取り付ける位置を複数において例示するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の実施形態の一例を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1から図10において、この発明に係る高所設置装置用取付器具1、ポケットコンパス2、及びポケットコンパス2が固定された状態での高所設置装置用取付器具1のアングル鉄塔3への取り付け状態が示されている。
【0024】
まずポケットコンパス2について説明すると、ポケットコンパス2は、図1に示されるように、複数のアングル鉄塔3のうち隣接するアングル鉄塔3の一方を定規側のアングル鉄塔3aに設定し、他方を観測側のアングル鉄塔3bに設定して、これらのアングル鉄塔3aとアングル鉄塔3bとの間に側方から見て波状に渡らせた送電線4に対し、アングル鉄塔3aとアングル鉄塔3bとを上下で平行且つ直線状に結ぶ上側基準線Aと下側基準線Bとの間における当該送電線4の弛度を、観測側のアングル鉄塔3bに登った作業員がこの観測側のアングル鉄塔3b側から定規側のアングル鉄塔3a側を観測することで視認し、この観測結果に基づいて他の作業員に指示を出して適宜な送電線4の緊設作業を行うためのものである。
【0025】
そして、ポケットコンパス2は、この実施例では、図2に示されるように、スコープ部5と、このスコープ部5の上下角の角度を調節する角度調節機構6と、台座7とで基本的に構成されている。尚、スコープ部5には図示しないがレンズに縦横に延びる十字が描かれており、このスコープ部5のレンズに描かれた十字の中心に送電線4の弛度が来るようにすれば電線の緊設が適切に行われようになっている。また、台座7には図示しないが後述する固定用部材8の固定部12が挿入可能な挿入穴が角度調節機構6側とは反対側に形成されている。
【0026】
高所設置装置用取付器具1は、ポケットコンパス2を固定すると共に当該ポケットコンパス2をアングル鉄塔3に取り付けるための架台として機能するもので、図2及び図3に示されるように、固定用部材8と、本体部材9とで基本的に構成されている。
【0027】
このうち、固定用部材8は、図8に示されるように2つの開口部を有する貫通孔10aを備えた筒状体10と、この筒状体10の貫通孔に対しその軸方向に沿ってスライド可能に挿通されていると共にスライド方向の寸法が筒状体10の貫通孔の軸方向に沿った寸法よりも大きくなっており、その軸方向の一方側には前記高所設置装置を固定するための固定部12を有するスライド体11と、このスライド体11が筒状体10に対し所定の位置にある状態を保持する保持機構13とを備えている。
【0028】
筒状体10は、円筒状のもので、その側方外面には図2から図5に示されるように水平計測器14が取り付けられており、ポケットコンパス2の台座7が水平状態か知ることができるようになっている。また、スライド体11は、円柱状のもので、その外径寸法は筒状体10の貫通孔10aの内径寸法と略同じかそれよりも小さくなっており、スライド体11が筒状体10の貫通孔10a内を円滑に且つガタつきなくスライドできるように数値が設定されている。そして、スライド体11の側面には目盛り15が付けられており、スライド体11の筒状体10からの上側又は下側への突出量をこの目盛り15を見ることで判ることができるようになっている。保持機構13は、それ自体は公知の構造であり、例えば筒状体10の上方から見て右回りにかかる保持機構13を構成する環状部16を回すことで、スライド体11に対して締め付けが行われ、反対に筒状体10の上方から見て左回りに環状部16を回すことで、スライド体11に対する締め付けを緩めることができるものである。
【0029】
これに対し、本体部材9は、図2及び図3に示されるように、相対的に厚みが相対的に薄い板状の本体部分18と、同じく相対的に厚みが相対的に薄い板状の本体部分19とを有して構成されるもので、本体部分18は固定用部材8と固定用部材8の側面から延びる突起片20と回転軸21を介して連結されている。そして、この回転軸21は、頭部21aを所定方向に回転することで、本体部材9の本体部分18と突起片20との接面の強度を調整することが可能となっている。
【0030】
これにより、固定用部材8は、回転軸21の頭部21aを緩めたときには、本体部材9の長手方向に延びる直線状の基準線を想定した場合に、筒状体10及びスライド体11について、少なくとも図4の実線で示されるように本体部材9の長手方向に延びる基準線に沿った状態から図4の2点鎖線で示されるように本体部材9の長手方向に延びる基準線とは交差する状態までの範囲で、本体部材9に対し回転することができる、そして、この固定用部材8の回転範囲内のうちの選択した位置で回転軸21の頭部21aを締め付けることにより、固定用部材8は本体部材9に対し本体部材9の長手方向に沿った基準線に対して自由な角度で固定することができる。
【0031】
また、本体部材9は、本体部分18と本体部分19とは図2及び図3(a)に示されるように、ヒンジ状の連結部22により連結されている。そして、この連結部22には締緩調整具23が設けられており、この締緩調整具23を所定方向に回すことにより本体部分18と本体部分19との間の可動性をON状態にしたり、OFF状態にしたり調節することができる。
【0032】
これにより、本体部分18は、締緩調整具23を緩めたときには、本体部分19の長手方向に延びる直線状の基準線を想定した場合に、図5の実線に示されるように、本体部分19の長手方向に延びる基準線上にある状態から図5の2点鎖線に示されるように本体部分19の長手方向に延びる基準線に対し図上の右側に傾斜した状態まで、或いは図示しないが本体部分19の長手方向に延びる基準線に対し図上の左側に傾斜した状態まで、連結部20を基点として左右両側に向けて回転することができる。そして、この第1の本体部分19の回転範囲内のうちの選択した位置で締緩調整具23を締め付けることにより、本体部分18は本体部分19に対し本体部分19の長手方向に沿った基準線に対して自由な角度で固定することができる。
【0033】
そして、本体部材9の本体部分19は、高所設置装置用取付器具1をアングル鉄塔3に取り付けるための取付機構25を有している。この取付機構25は、2つの(但し、3以上でも良い。)の装着用具26と、これらの装着用具26が係合可能な貫通孔40とを有して構成されている。
【0034】
各装着用具26は、本体部分19の貫通孔40の開口端から外部に突出した保持用突起部27を有している。この保持用突起部27は、切欠溝30、31が形成されている。この切欠溝30、31は、図8に示されるようなアングル鉄塔3の主柱部を構成する断面が略L字のアングル材28、29が重なった角部と係合するのに適するように、切欠溝30の図7(a)で示される切り欠き角度R1は約45度となっており、切欠溝31の図7(b)で示される切り欠き角度R2は約90度となっている。更に、保持用突起部27は、切欠溝30、31を構成する2つの面のうち少なくとも本体部分19側の面若しくは両方の面が平らでなく鋸歯状になっており、これにより、アングル鉄塔3を構成するアングル材28、29等が滑るのを防止している。
【0035】
そして、保持用突起部27の切欠溝30を形成する部位のうち本体部分19側となる延長部位は、この本体部分19に沿って延びていると共に、切欠溝30と切欠溝31との境界に位置する頂部と切欠溝31のうち本体部分19とは反対側に位置する頂部とを結ぶ直線は保持用突起部27の切欠溝30を形成する延長部位の延びる方向に沿った直線と略直角に交差し、且つ保持用突起部27の切欠溝30を形成する延長部位は前記2つの頂部を結ぶ直線よりも外側に突出している。これにより、アングル鉄塔3の主柱部を構成する断面が略L字のアングル材28に対し、図9に示されるように、アングル材28の一面が2つの頂部に接し、アングル材28の他面が延長部位に接するようにすることができる。
【0036】
また、保持用突起部27は、切欠溝30、31が形成された側と反対側に挟持装置32を有している。この挟持装置32は、保持用突起部27から本体部分19と平行に延びる固定側挟持プレート33と、頭部34aを所定方向に回すことにより固定側挟持プレート33に対して遠近する方向に可動させることができる可動側挟持具34と、この可動側挟持具34が取り付けられる取付プレート35とで構成されている。これにより、図9に示されるように、アングル鉄塔3のアングル材28の端部等を挟持装置32の固定側挟持プレート33と可動側挟持具34とで挟持して固定することができる。
【0037】
更に、各装着用具26は、本体部分19の貫通孔40のうち保持用突起部27側とは反対側には、この装着用具26が貫通孔40の長手方向に沿って移動するのを規制するボルト等からなる固定具35が取り付けられていると共にこの固定具35と保持用突起部27との間には保持部材36が介在されている。そして、保持部材36の本体部分19には、例えば鋸歯状の凹凸が形成されていると共に、本体部分19にも例えば鋸歯状の凹凸部37が形成されており、このため、本体部分19の凹凸部37と装着用具26の保持部材36の凹凸が噛み合うので、装着用具26が不用意に貫通孔40の長手方向に滑るのを抑止することができる。
【0038】
これにより、装着用具26は、固定具35を緩めたときには、例えば図6の実線に示される位置から図6の2点鎖線で示される位置まで、装着用具26の一方又は双方を貫通孔40の長手方向に沿ってスライドさせることができるので、アングル鉄塔3の取り付け部位の形態や大きさに合致するように、装着用具26、26間の間隔を自由に調整することができる。また、装着用具26は、図7に示されるように固定具35の中心点を回転中心として自転させることができるので、装着用具26の向きも図7(a)に示される向きから180度反対の図7(b)に示される方向に向かせることも可能である。
【0039】
このような構成としたことから、高所設置装置用取付器具1は、図8に示されるように、図8に示されるようなアングル鉄塔3の主柱部を構成する断面が略L字のアングル材28、29が重なった角部においては、内側のアングル材29の側端には2つの装着用具26の保持用突起部27の各切欠溝31の内側面を当て、外側のアングル材28の側端には2つの装着用具26の保持用突起部27の各切欠溝31の内側面を当てようにして、アングル材28、29を両側から挟持することで、アングル鉄塔3に高所設置装置用取付器具1を固定することができる。
【0040】
また、図8に示されるように、図9に示されるようなアングル鉄塔3の主柱部を構成する断面が略L字のアングル材28が1枚の角部においては、アングル材28の角部近傍の一辺に対し装着用具26の保持用突起部27のうち本体部分19に沿って延びる部位の面を当て、アングル材28の角部近傍の他辺に対し切欠溝30、31の形成で生ずる2つの頂部を当てるようにすると共に、アングル材28の角部から離れた端部では挟持装置32の固定側挟持プレート33と可動側挟持具34とで挟持して、アングル材28、29を2点保持することで、アングル鉄塔3に高所設置装置用取付器具1を固定することができる。
【0041】
しかも、ポケットコンパス2が装着された状態でアングル鉄塔3に取り付けた後でも、高所設置装置用取付器具1を構成する固定用部材8を可動し、又は/及び本体部分18を本体部分19に対して左右に可動することにより、ポケットコンパス2のスコープ部5を覗いた際に障害物があっても、スコープ部5が狙う向きを調整することができる。そして、送電線4の弛度を観測中に温度の変化等で送電線4の弛度が変わってたとえば上方に観測位置を変更する必要性が生じても、固定用部材8のスライド体11を筒状体10の貫通孔10aの軸方向に沿ってスライドさせることで対応することができ、しかもスライド体11に目盛り15が付いているので、正確にスライドさせることができる。更には、高所設置装置用取付器具1についてずれ等が生じて付け直しや位置変更が生じても、筒状体10に水平計測器14が設けられているので、ポケットコンパス2が水平に設置されているかどうか等について容易に知ることができる。
【0042】
そして、高所設置装置用取付器具1のアングル鉄塔3への取り付け位置も、取付機構25を構成する複数の装着用具26についていずれも保持用突起部27を使う手法、装着用具26のうち一方では保持用突起部27を使い、他方では挟持装置32を使う手法、及び、複数の装着用具26についていずれも挟持装置32を使う手法を選択して採ることができるので、図10の左側に示されるようにアングル鉄塔3の主柱部のアングル材28等に取り付ける態様のみならず、アングル鉄塔3の略水平方向に延びる側柱部のアングル材41に取り付けたり、アングル鉄塔3の斜め方向に延びる側柱部のアングル材42、43に取り付けたりすることもできる。
【0043】
最後に、高所設置装置用取付器具1の取付対象をアングル鉄塔として説明してきたが必ずしもこれに限定されず、アングル材又は厚みの相対的に薄いプレート材を利用した構造物であれば良い。
【符号の説明】
【0044】
1 高所設置装置用取付器具
2 ポケットコンパス(高所設置装置)
3 アングル鉄塔(アングル材又は厚みの相対的に薄いプレート材を利用した構造物)
3a 定規側アングル鉄塔
3b 観測側アングル鉄塔
4 送電線
8 固定用部材
9 本体部材
10 筒状体
10a 貫通孔
11 スライド体
12 固定部
13 保持機構
14 水平計測器(補助手段)
15 目盛り(補助手段)
18 本体部分(第1の本体部分)
19 本体部分(第2の本体部分)
20 突起片
21 回転軸
22 連結部
23 締緩調整具
25 取付機構
26 装着用具
27 保持用突起部
28 アングル材
29 アングル材
30 切欠溝
31 切欠溝
32 挟持装置
33 固定側挟持プレート
34 可動側挟持具
35 取付プレート
36 取付部材
37 凹凸部
40 貫通孔
41 アングル材
42 アングル材
43 アングル材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アングル材又は厚みの相対的に薄いプレート材を利用した構造物に設置される高所設置装置が取り付けられるものであって、
前記高所設置装置が固定される固定用部材と、前記構造物に取り付けるための取付機構を有する本体部材とから少なくとも構成されていると共に、
前記固定用部材は、前記本体部材に対し当該固定用部材の先端が上方を向いた位置から側方を向いた位置までの範囲で自在に変位できるように連結され、
前記本体部材は、前記固定用部材に連結された第1の本体部分と、前記取付機構が設けられた第2の本体部分とから成り、前記第1の本体部分と前記第2の本体部分とは連結部で連結され、前記第1の本体部分は前記連結部を基点として前記第2の本体部材から延びる軸線に対し左右方向の両方に向けて自在に揺動可能となっており、
前記取付機構は、2つの装着用具を有し、これらの装着用具の一方又は双方は相互に遠近する方向に移動することが可能であると共にこれらの装着用具をそれぞれ前記構造物の取り付け部位に装着することにより前記本体部材が前記構造物に取り付けられることを特徴とする高所設置装置用取付器具。
【請求項2】
前記固定用部材は、2つの開口部を有する貫通孔を備えた筒状体と、この筒状体の貫通孔に対しその軸方向に沿ってスライド可能に挿通されていると共にスライド方向の寸法が前記筒状体の貫通孔の軸方向に沿った寸法よりも大きくなっており、その軸方向の一方側には前記高所設置装置を固定するための固定部を有するスライド体と、このスライド体が前記筒状体に対し所定の位置にある状態を保持する保持機構とを少なくとも備えていることを特徴とする請求項1に記載の高所設置装置用取付器具。
【請求項3】
前記固定用部材を構成する筒状体とスライド体とに前記高所設置装置の調整を補助するための補助手段が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の高所設置装置用取付器具。
【請求項4】
前記取付機構は、前記本体部材の面のうち前記構造物と対峙する側面からこの側面と同じ方向に延びる側面にかけて貫通すると共にこれらの側面の長手方向に沿って延びるように開口した貫通孔を形成し、この貫通孔に前記装着用具を前記貫通孔の長手方向に沿ってスライド自在に係合させると共に、前記装着用具に前記構造物の取り付け部位の端部を挟む挟持装置と前記構造物の取付部位の端部若しくは角部の面に接して保持する保持用突起部とを設けた構成としたことを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3のいずれかに記載の高所設置装置用取付器具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−230553(P2010−230553A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79631(P2009−79631)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(591080678)株式会社中電工 (64)