説明

高所配管勾配測定装置

【課題】 高所配管の勾配の測定を容易・安全に行うことができ、測定データの管理をも行うことのできる高所配管勾配測定装置を提供すること。
【解決手段】 支持棒の先端の勾配センサーの測定面を高所配管に接触させることにより高所配管の勾配を測定する高所配管勾配測定装置であって、勾配センサーにて測定された勾配データを取り込み可能な勾配データ管理装置を設け、該勾配データ管理装置は、勾配の正常範囲データを記憶する記憶手段と、上記勾配センサーで測定された勾配データが上記正常範囲データ内に入っているか否かを判定する判定手段と、上記勾配データと上記判定結果とを、勾配の測定地点を特定するデータと共に表示する表示手段と、上記勾配データと上記判定結果とを、勾配の測定地点を特定するデータと共に記憶する記憶手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井等の高所に配置された排水配管等の配管の勾配を容易に測定でき、測定した勾配データを管理し得る高所配管勾配測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、天井に設置された排水配管の勾配を測定する装置としては、延長バーの先端部に勾配センサーを具備するV型ゲージを設け、上記V型ゲージを配管に接触させることにより、上記勾配センサーにて配管の勾配を測定する装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−46547号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1の勾配測定装置は、測定した勾配は、表示部に表示されるだけであるため、測定した勾配データは別途手作業等で記録しなければならない。
【0005】
しかしながら、配管の勾配測定の測定箇所数は、現場によっては1000箇所以上に達する場合があり、このような膨大な計測地点の勾配測定を行うに際し、測定データを手作業で記録し、かつ測定した全ての勾配が正常範囲内にあるか否かを判断する必要があるため、測定した勾配データを管理するには非常に多くの労力を必要としていた。
【0006】
そこで、高所の配管の測定作業を、脚立等を使用せずに効率的かつ安全に行うことができると共に、測定データの管理を容易に行うことができる高所配管勾配測定装置が望まれていた。
【0007】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、天井等の排水配管等の高所の配管の勾配の測定を容易かつ安全に行うことができると共に、測定データの管理をも行うことのできる高所配管勾配測定装置を提供することを目的とする。
また、本発明は、高所の配管の勾配の測定ができ、測定データの管理をも行うことのでき、しかも装置全体がコンパクトで持ち運び可能な高所配管勾配測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため本発明は、
第1に、測定面を配管に接触させて該配管の中心軸線と上記測定面を平行とすることにより上記配管の勾配を測定し得る勾配センサーと、上記勾配センサーを先端部に支持する勾配センサー支持体であって、上記勾配センサーを固定するベース部と、該ベース部に接続された支持棒とから構成され、上記支持棒の先端の上記勾配センサーの上記測定面を高所の配管に接触させることにより高所配管の勾配を測定する高所配管勾配測定装置であって、上記勾配センサーに接続され、上記勾配センサーにて測定された勾配データを取り込み可能な勾配データ管理装置を設け、上記勾配データ管理装置は、予め定められた勾配の正常範囲データを記憶する記憶手段と、上記勾配センサーで測定された勾配データが上記正常範囲データ内に入っているか否かを判定する判定手段と、上記勾配データと上記判定手段による判定結果とを、勾配の測定地点を特定するデータと共に表示する表示手段と、上記勾配データと上記判定結果とを、勾配の測定地点を特定するデータと共に記憶する記憶手段とを具備していることを特徴とする高所配管勾配測定装置により構成される。
【0009】
上記勾配の測定地点を特定するデータは、例えば勾配データ毎の通し番号データとすることができる。従って、支持棒を把持してその先端の勾配センサーの測定面を高所の配管に接触させることにより上記配管の勾配を測定することができる。そして測定した勾配データは勾配センサーから勾配データ管理装置に取り込まれ、当該管理装置において、当該勾配データが正常範囲に入っているか否か判定され、勾配データと判定結果とが、測定地点を特定するデータと共に表示され、かつ勾配データと判定結果とを測定地点を特定するデータと共に内部に記憶することができる。よって、例えば多数の高所配管の勾配を安全かつ効率的に測定することができ、さらに、その測定した勾配データを測定地点毎に効率的に管理することができる。
【0010】
第2に、上記勾配センサーは上記勾配データ管理装置からのデータ取込指令に基づいて現在計測中の勾配データを上記勾配データ管理装置に送出するものであり、上記勾配データ管理装置は上記勾配データが入力する度に上記各勾配データに対応する番号を付与するものであり、当該番号を上記勾配の測定地点を特定するデータとするものであることを特徴とする上記第1記載の高所配管勾配測定装置により構成される。
【0011】
従って、測定地点を特定するデータを「番号」としたので、多数の測定地点の勾配データを効率的に管理することができる。
【0012】
第3に、上記支持棒の先端部に接続部材を固設し、当該接続部材に上記勾配センサーを支持する上記ベース部を接続する構成とし、上記ベース部と上記接続部材との間に弾性部材を介在させたものであることを特徴とする上記第1又は2記載の高所配管勾配測定装置により構成される。
【0013】
上記弾性部材は、例えばコイルバネ(15)等により構成することができる。このように構成すると、弾性部材の弾性により上記支持棒に対して上記ベース部を柔軟に回動させることができ、これにより勾配センサーの測定面を配管に確実に接触させることができる。
【0014】
第4に、上記支持棒の先端部に接続部材を固設し、当該接続部材に上記勾配センサーを支持する上記ベース部を接続する構成とし、上記接続部材と上記ベース部とをボルトによって所定間隔を隔てて接続すると共に、上記ボルトにコイルバネを挿着し、上記ベース部と上記接続部材は上記コイルバネの反発力により常時離間する方向に附勢されているものであることを特徴とする上記第1又は2記載の高所配管勾配測定装置により構成される。
【0015】
このように構成すると、勾配センサーの測定面を配管に接触させた状態で支持棒を配管の方向に押圧することにより、上記コイルバネの反発力により上記勾配センサーを配管に確実に接触させることができ、高所であっても正確な勾配を測定することができる。
【0016】
第5に、上記勾配データ管理装置は携帯可能なパーソナルコンピュータにより構成したものであることを特徴とする上記第1〜4の何れかに記載の高所配管勾配測定装置により構成される。
【0017】
このように構成すると、勾配センサー支持体と勾配データ管理装置全体を携帯可能なコンパクトな装置とすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上述のように、測定した高所配管の勾配データは勾配センサーから勾配データ管理装置に取り込まれ、当該管理装置において、当該勾配データが正常範囲に入っているか否か判定され、勾配データと判定結果とが、測定地点を特定するデータと共に表示され、かつ内部に記憶することができるので、多数の高所配管の勾配を安全かつ効率的に測定することができ、その測定した勾配データを測定地点毎に効率的に管理することができるという効果を有するものである。
【0019】
また、支持棒を含む勾配センサー支持体により、高所の配管の勾配を安全かつ確実に測定することができる。
【0020】
また、コイルバネ等の弾性部材により勾配センサーを配管に確実に接触させることができ、高所であっても正確な勾配を測定することができる。
【0021】
また、勾配センサー支持体と勾配データ管理装置全体を携帯可能なコンパクトな装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る高所配管勾配測定装置の勾配センサーとベース部近傍の斜視図である。
【図2】同上測定装置の勾配センサー近傍の側面図である。
【図3】同上測定装置の勾配センサー近傍の正面図である。
【図4】同上測定装置の勾配センサー筺体近傍の断面図である。
【図5】同上測定装置を配管に接触させた状態の勾配センサー近傍の正面図である。
【図6】同上測定装置を配管に接触させた状態の装置全体の正面図である。
【図7】同上測定装置の勾配センサーの構成ブロック図である。
【図8】同上測定装置のセンサー本体の概略図であり、(a)は非傾斜状態、(b)は傾斜状態を示す図である。
【図9】同上測定装置の勾配データ管理装置の構成ブロック図である。
【図10】同上測定装置の勾配センサーの動作手順を示すフローチャートである。
【図11】同上測定装置の勾配センサーの動作手順を示すフローチャートである。
【図12】同上測定装置の勾配データ管理装置の動作手順を示すフローチャートである。
【図13】同上測定装置の勾配データ管理装置の表示画面を示す図である。
【図14】同上測定装置の勾配センサーの機能ブロック図である。
【図15】同上測定装置の勾配データ管理装置の機能ブロック図である。
【図16】(a)は同上測定装置の絶対水平ゼロセットを行う状況の説明図、(b)は勾配の概念説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る高所配管勾配測定装置を詳細に説明する。
【0024】
図1は本発明に係る高所配管勾配測定装置1を示す図であり、同装置1は、略直方体形状の勾配センサー2と、該勾配センサー2を取付固定する勾配センサー支持体3’と、勾配データ管理装置6(図6参照)から構成されている。
【0025】
上記勾配センサー支持体3’は、上記勾配センサー2を固定する勾配センサー取付用のベース部3と、当該ベース部3をその先端部を以って支持する支持棒4とから構成されており、図3に示すように絶対水平ゼロセットされた勾配センサー2を上記ベース部3に固定し、勾配センサー2の測定面2aを排水配管5に下から当接することで(図5参照)、当該センサー2によって上記配管5の勾配を測定し、測定した勾配データは表示部18に表示されると共に、上記センサー2から勾配データ管理装置6に送出され当該管理装置6内に記憶されるものである(図6参照)。
【0026】
上記勾配センサー取付用の上記ベース部3は、長方形状の金属製の板からなる底板7aと、該底板7aの両側端から直立する一対の金属製の対向側板7b,7bとから構成され、全体が上面開口の略「コ」字状をなしている。上記対向側板7b,7bの対向面内側は上部から下方に「U」字状に切欠7b’,7b’が形成されており、これら切欠7b’の両側の板面に各々衝撃吸収用の弾性体8,8が対向して接着されている。また、上記底板7a上には衝撃吸収用の弾性板9が上記底板7aの両端部及び中央部の3箇所に接着されている。そして、上記底板7a及び対向側板7b,7bで囲まれる取付空間10内に上記勾配センサー2を嵌合固定し得るように構成されている(図3参照)。
【0027】
上記底板7a及び上記対向側板7b,7bの長手方向の両縁部には、板面より内側方向に直角に起こされた起立短縁7’が形成されており、上記起立短縁7’,7’間の間隔は上記勾配センサーの厚みより若干広く形成されている。また、上記底板7aの長手方向の幅は上記勾配センサー2の長手方向の一辺の長さより若干長く形成されている。よって、上記勾配センサー2を上記空間10内に収納すると、勾配センサー2の底面2bが上記底板7aの上記弾性板9上に載置されると共に、勾配センサー2の両側面2c,2cに上記対向側板7b,7bの上記弾性体8,8が接触し、かつ上記各起立短縁7’が上記勾配センサー2の前後板面2d,2dの周縁部を支持することで、当該勾配センサー2は上記空間10内に固定的に収納される(図3参照)。尚、図3に示すように、上記勾配センサー2と上記ベース部3の上記底板7aとを締結用の帯状部材58にて巻回固定することが好ましい。
【0028】
上記支持棒4は長さが2m〜4m(配管5の高さによって伸縮自在とすることもできる)、直径25mmの断面円径の金属製パイプであり、先端部4aに接続部材11及び弾性部材12(コイルバネ15、ボルトB2、ナットN)を介在させて上記勾配センサー取付用のベース部3が取り付けられている。
【0029】
上記接続部材11は、長方形板状の金属製の固定板13と、該固定板13の中央部下面側から下方に一対に設けられた金属製の平行垂直板14,14とから構成されており、上記平行垂直板14,14間に上記支持棒4の先端部4aを挿通し、上記垂直板14,14の外側から、上記先端部4aに貫設された横方向貫通孔4b,4b(図3)にボルトB1,B1を挿通し、当該ボルトB1,B1の他端をナットN,Nにて締結することによって、上記接続部材11は上記支持棒4の先端部4aに固定されている。この接続部材11の上記支持棒4へのかかる固定状態においては、上記固定板13は上記支持棒4に対して直交した状態となっている。
【0030】
そして、上記勾配センサー取付用のベース部3の上記底板7aに4箇所の貫通孔16を設け、上記底板7aの上面から下方向けてボルトB2(4本)を上記貫通孔16に挿通し、上記底板7aの下面側に貫通した各ボルトB2にコイルバネ15(4個)を各々挿通し、かつ上記固定板13に設けた4箇所の貫通孔17に上記各ボルトB2の下端を挿通し、上記各コイルバネ15を圧縮した状態で、上記固定板13の下面から上記各ボルトB2にナットNをねじ込むことで、上記固定板13上に上記勾配センサー取付用のベース部3を取り付ける。
【0031】
これにより、図3に示すように、上記支持棒4の先端部4aに上記勾配センサー取付用のベース部3を固定することができる。このとき、上記ベース部3の底板7aと上記固定板13は互いに平行であり、かつ上記固定板13は上記支持棒4に対して直交状態となっている。さらに、上記固定板13と上記ベース部3の底板7aは、上記コイルバネ15の反発力により互いに離間する方向(逆方向)に付勢された状態となっており、かかる反発状態で上記固定板13に対して上記ベース部3は平行(水平)に支持されている。よって、固定板13はコイルバネ15を圧縮しながら上記ボルトB2に沿って底板7aの方向に摺動可能であり、かつ上記コイルバネ15の反発力により上記ボルトB2に沿って底板7aから離間する方向に摺動可能である。
【0032】
即ち、図5に示すように、上記勾配センサー2の上面の測定面2aを排水配管5の下面に当接した状態で、上記支持棒4を把持して上方に押圧すると、上記コイルバネ15が圧縮されて上記固定板13と上記底板7aとの間隔が縮小して行き、これにより上記コイルバネ15の反発力によって上記勾配センサー2の上面の測定面2aを上記配管5の下面に確実に接触し得るように構成されている。そして、かかる勾配センサー2の上記配管5への接触状態において、上記配管5の中心軸線C1と上記勾配センサー2の上記測定面2a,2aが平行となることで、上記勾配センサー2において、基準水平面G(図16参照)に対する上記配管5の勾配M(基準水平面Gに対する上記配管5の中心軸線C1の傾斜角度)を測定することができるように構成されている。
【0033】
また、上記勾配センサー取付用のベース部3は、図5に示すように、上記支持棒4の中心軸線C2に直交する回転中心軸線C3(紙面に対して垂直な線)を中心として、上記固定板13に対して回転方向(図5の矢印A,B方向)に若干回動傾斜し得るように構成されており、上記支持棒4の中心軸線C2に対して上記配管の中心軸線C1が直交しておらず、斜交している場合であっても、当該斜交角度を上記ベース部3の上記回動により吸収して、正確な勾配が測定できるように構成されている。
【0034】
次に、勾配センサー2の構造について図7、図8及び図14の機能ブロック図に基づいて説明する。
【0035】
勾配センサー2は図1、図2に示すように、幅方向に狭い略直方体形状の箱型の形状を成しており、当該センサー2の上面の測定面2aを配管5等の被測定物に接触させ、該被測定物の角度と上記測定面2aの角度を平行にすることによって、当該被測定物の基準水平面Gに対する勾配(例えば基準水平面Gに対する傾斜角度θ、又は1m当たりの基準水平面Gからの勾配M[mm/m]、図16(b)参照)を測定する機能を有するものである。尚、上記勾配センサー2の測定面2aと底面2bは平行なので、当該勾配センサー2をその底面2bを以って被測定物上に載置することでも、当該被測定物の勾配を測定することができる。
【0036】
この勾配センサー2は、図7に示すように、センサー本体2’(図8参照)を含むセンサー部2”(図14、勾配測定手段40)と、測定した勾配データ等を表示する表示部18(図14、表示手段41)と、各種操作を行う操作部19(電源ボタン60、絶対水平ゼロセットボタン61、モード設定ボタン62)(図14、入力手段42)と、図10及び図11に示す動作手順から構成される制御プログラム20が記憶されるメモリ20’と、測定した勾配データ等の各種データを記憶するメモリ21(図14、記憶手段43)と、上記制御プログラム20を実行するCPU22と、後述の勾配データ管理装置6からのデータ取込指令に基づいて測定した勾配データを上記管理装置6に出力するための入出力インターフェース23(図14、データ取込指令認識手段44、データ出力手段45)を具備している。
【0037】
上記センサー本体2’は図8(a)に示す構成を具備している。このセンサー本体2’は、密封されたケース24内に2枚の固定電極25a,25bが設けられ、上記固定電極25a,25b間に摩擦の極めて少ない状態で1g以下の軽量ディスク26が振り子構造により支持されている。このセンター本体2’は、上記勾配センサー2がその測定面2a又は底面2bを以って水平な面に載置された状態において、上記ディスク26が図8(a)の中立位置に位置するように、上記勾配センサー2内に固定されている。
【0038】
従って、上記勾配センサー2が傾斜して上記測定面2aが水平面から傾斜すると、図8(b)に示すように、上記測定面2aの傾斜に応じて上記ケース24内の上記軽量ディスク26が傾斜するので、上記センサー部2”(図14、データ変換手段46)がこのときの上記ディスク26と固定電極25a間の静電容量CAの変化、及び上記ディスク26と固定電極25b間の静電容量CBの変化を検出すると共に、これらの静電容量の変化を電気信号に変換して上記CPU22に送出するものである。上記センサー本体2’のケース24内は空気ダンパー24’で完全密封されており、温度変化の影響を極力受けない構造となっている。
【0039】
上記CPU22は上記制御プログラム20に基づいて、上記メモリ21に予め記憶している基準水平面G(通常は傾斜が0度の水平面)に対応する基準勾配データS(通常は勾配θ=0度又はM=0[mm/m])(図14)と上記センサー部2”からの電気信号(測定した値)を比較することで、勾配データ(基準水平面Gに対する傾斜角θ、或いは、基準水平面Gに対して1m当たりの勾配M[mm/m])を算出し、当該勾配データを上記表示部18に表示すると共にメモリ21に勾配データD(図14参照)として記憶する。また、上記CPU22(データ取込指令認識手段44)は上記制御プログラム20に基づいて、上記勾配データ管理装置6からの勾配データの取込指令があると、現在測定している勾配データを入出力インターフェース23に出力し、同データを上記勾配データ管理装置6に向けて送出するものである。
【0040】
上記勾配センサー2を使用するに際しては、予め絶対水平ゼロセットを行う必要がある。即ち、上記勾配センサー2を上記基準水平面G(図16(a))に設置し、当該基準水平面Gの勾配を測定し、当該基準水平面Gの勾配を基準勾配データSとして測定し、当該基準勾配データSをメモリ21に記憶しておく。よって、基準勾配データSを測定した後は、上記基準勾配データSとの差分データが勾配の測定データ(勾配データ)として出力(表示)されるように構成されている。尚、この絶対水平ゼロセットは、一度設定を行えば、その後は基本的に設定不用である。また、勾配センサー2の上記センサー部2”は、上記絶対水平ゼロセットを行った後は、電源オン状態においては、当該センサー2が置かれている位置における上記測定面2aの勾配データを数秒間隔で上記CPU22に常時送出しており、上記CPU22は上記データ取込指令があると、現在測定中の勾配データを上記入出力インターフェース23に出力し得るように構成されている。
【0041】
次に、上記勾配センサー2で測定した勾配データを管理する勾配データ管理装置6について図9及び図15の機能ブロック図に基づいて説明する。
【0042】
上記勾配データ管理装置6は図12に示す制御プログラム27が記憶されたいわゆるノート型のパーソナルコンピュータ(以下「パソコン」という)により構成されている。即ち、当該データ管理装置(パソコン)6は、上記勾配センサー2等の外部機器と接続するための複数のコネクタC(例えば、RS232CコネクタCa、USBコネクタCb、その他のデータ用コネクタCc等)を有しており、外部入出力インターフェース28(図15、データ取込手段50)を介して外部機器と各種データのやり取りを実行し得るように構成されている。具体的には上記何れかのコネクタCa〜Ccと上記勾配センサー2とがケーブルKにて接続されており(ここではUSBコネクタCbに上記ケーブルKが接続されているとする)、上記勾配センサー2で測定された勾配データは上記コネクタCbから外部入出力インターフェース28を介して当該管理装置6内に取り込み可能に構成されている。
【0043】
当該勾配データ管理装置6において、29はバスであり、当該バス29に入出力制御装置30、CPU31、制御プログラム27が記憶された内部メモリ32、ハードディスク等の外部メモリ33(図15、記憶手段51)が接続されている。上記制御プログラム27は図12に示す動作手順に従って勾配データ取り込み動作等を実行するものであり、上記CPU31は上記制御プログラム27に従って上記勾配センサー2から入力する勾配データの番号付動作(図15、番号付手段52)、判定動作(図15、判定手段53)、記憶動作(図15、記憶制御手段54)、表示動作(図15、表示制御手段55)等を実行する。上記入出力制御装置30にはディスプレイ35(図15、表示手段56)及びキーボード等の入力装置34(図15、入力手段57)が接続されている。
【0044】
また、上記外部メモリ33内には、上記判定動作を行うための予め設定された勾配の正常範囲データL(例えば、L=9[mm/m]〜10[mm/m])が記憶されている。
【0045】
上記勾配データ管理装置6のディスプレイ35に表示される画面の一例を図13に示す。上記画面上には、測定場所を特定するための通し番号としての測定番号の表示欄「No」、勾配データの表示欄「傾斜(mm/m)」、判定結果を表示する表示欄「判定」があり、勾配データを取り込むための取込ボタン65、勾配データ等を記憶するための保存するための保存ボタン66、判定結果が「×」の場合にその勾配データを無効とするための無効ボタン68の他、データを消去するためのクリアボタン69、プログラムを終了するための終了ボタン67、さらに、設定された勾配の正常範囲70等が表示されるように構成されている。
【0046】
本発明は上述のように構成されているので、次に、本発明の高所配管勾配測定装置を用いて高所排水配管の勾配を測定する動作を説明する。
【0047】
まず、事前準備として勾配センサー2の絶対水平ゼロセットを行う(図10参照)。まず、上記勾配センサー取付用のベース部3に取り付け前の勾配センサー2単独を基準水平面G上に載置し(図16参照)、当該センサー2の操作部19の電源ボタン60(図14、入力手段42)をオンしてセンサー2の電源をオンする(図10P1)。すると、センサー2の電源供給手段47(図14)がセンサー2内の各部に電源を供給し、該センサー2が動作状態となる(図10P1)。
【0048】
その後、操作部19の絶対水平ゼロセットボタン61(入力手段42)から絶対水平ゼロセットモードを設定すると(図10P2)、CPU22はそのときの勾配センサー2の測定した勾配データ(センサー部2”が出力している勾配データ)を読み込んで勾配を測定し(図10P3)、その勾配データを基準勾配データSとしてメモリ21に記憶すると共に表示部18に表示する(図10P4)。これにより勾配センサー2の基準勾配データSが設定されたので、その後は、この基準勾配データSに対する勾配の測定が可能となる。尚、この基準勾配データSは勾配センサー2の電源をオフしても(図10P5)保持される。
【0049】
次に、上記勾配センサー2を勾配センサー取付用のベース部3に図3に示すように嵌合取着し、センサー2の中央の凹部2a’と上記底板7aとを帯状部材58で巻回締結して該勾配センサー2を上記ベース部3に固定する。
【0050】
尚、上記勾配データ管理装置6において、上記勾配の正常範囲データL(例えば9[mm/m]〜10[mm/m])は上記管理装置6の入力装置34から装置6内に予め入力されており、当該正常範囲データLは上記管理装置6の外部メモリ33(記憶手段51)内に記憶されているものとする。
【0051】
そして、上記勾配センサー2の入出力インターフェース23のコネクタ(例えば8ピンのコネクタ)と勾配データ管理装置6のUSBコネクタCbとをケーブルKで接続し、上記支持棒4の下端部を把持してその先端部4aの勾配センサー2を略垂直方向に上方に持ち上げ、図6に示すように、天井に配設された排水配管5の下面に上記センサー2の上面の測定面2aを接触させる。
【0052】
上記勾配センサー2の上記測定面2aが上記配管5の下面に接触したとき、さらに上記支持棒4を上方に若干持ち上げ、上記勾配センサー取付用のベース部3のコイルバネ15を圧縮することにより、上記コイルバネ15の反発力により上記勾配センサー2の上記測定面2aを上記配管5の下面に確実に接触させる。これにより上記勾配センサー2の上記側定面2aを上記配管5の中心軸線C1と正確に平行状態とすることができる。
【0053】
上記勾配センサー2はこの状態における勾配、即ち、配管5の勾配を測定する(図11P1,P2)。具体的には、上記勾配センサー2の測定面2aが上記配管2の下面に接触している状態において、CPU22(図14、データ変換手段46)はセンサー部2”(図14、勾配測定手段40)から入力する勾配に対応した電気信号を読み込んで、基準勾配データSと比較することで現在の配管5の傾斜角(勾配(傾斜)データ)を算出し(図11P2)、上記CPU22(図14、データ出力手段45)は算出した勾配データを表示部18(図14、表示手段41)に表示する(図11P3)。
【0054】
その後、操作者は、勾配データ管理装置6のディスプレイ35上の取込ボタン65(図13)を押圧(マウスポインタでクリック等)する(図12P1)。すると、上記管理装置6のCPU31(図15、データ取込手段50)は、上記勾配センサー2に対してデータの取込指令を送出する。
【0055】
すると、上記勾配センサー2のCPU22(図14、データ取込指令認識手段44)はこれを検出し(図11P4)、上記CPU22(図14、データ出力手段45)は現在測定している勾配データM1を入出力インターファース23を介して勾配データ管理装置6に送出する(図11P5)。
【0056】
すると、上記勾配データM1はケーブルKを介して勾配データ管理装置6に入力する(図12P2)。上記CPU31(図15、番号付手段52)は、取り込んだ勾配データM1に「勾配の測定地点を特定するデータ」として測定番号「1」を付与し(図12P3)、上記勾配データM1に対応付けて一時的に記憶する。次に上記CPU31(図15、判定手段53)は、上記取り込んだ勾配データM1が、正常の範囲内であるか否かの判定を行う(図12P4)。
【0057】
上記CPU31(判定手段53)は、外部メモリ33(図15、記憶手段51)に予め設定している勾配の正常範囲データL[mm/m]を読み出し、上記勾配データM1が上記正常範囲に入っているか否かの判定を行う(図12P5)。そして、上記勾配データM1が正常範囲に入っている場合は、「正常」と判断し(図12P6)、上記勾配データM1が正常範囲に入っていない場合は「異常」の判定を行う(図12P7)。
【0058】
引き続いて、上記CPU31(表示制御手段55)は、ディスプレイ35(図15、表示手段56)上に上記測定番号「1」、勾配(傾斜)データ「M1[mm/m]」を表示すると共に、判定結果が「正常」であれば、判定の表示欄に「○」を表示し、判定結果が「異常」であれば、判定の表示欄に「×」を表示する(図12P8、図13参照)。
【0059】
その後、操作者がディスプレイ35上の保存ボタン66を押すと(マウスポインタでクリック等すると)(図12P9)、上記CPU31(図15、記憶制御手段54)は上記測定番号(勾配の測定地点を特定するデータ)「1」、勾配(傾斜)データ「M1」、判定結果「○」又は「×」のデータを外部メモリ33(図15、記憶手段51)に保存する(図12P10、P11)。
【0060】
以上の操作によって、第1番目の測定箇所の配管の勾配データM1の測定が終了したので、次に、操作者は、2番目の勾配測定箇所の排水配管5の下方に移動し、当該排水配管5の近傍位置において、上記と同様に、支持棒4を把持して上記配管5の底面に向けて上記勾配センサー2を持ち上げ、上記配管5の底面に上記勾配センサー2の測定面2aを押し当てて、2番目の配管5の勾配を測定する(図12P13から図12P1)。以後は、上記と同様の手順で、複数箇所の排水配管の勾配を次々に測定していくことができる。
【0061】
即ち、上記2番目の配管5の底面に上記勾配センサー2の測定面2aを押し当てると、当該2番目の排水配管5の勾配データが測定されるので(図11P2,P3)、操作者は上記勾配データ管理装置6のデータ取込ボタン65を押圧すると(図12P2)、上記勾配センサー2から勾配データM2が管理装置6に送出される(図11P4,P5)。上記管理装置6は上記勾配データM2を受けると(図12P3)、当該勾配データM2に測定番号(勾配の測定地点を特定するデータ)「2」を付与すると共に(図12P3)、勾配が正常範囲内であるか否かの判定を行い(図12P4〜P7)、当該勾配データM2を測定番号と判定結果と共に表示し(図12P8)、操作者の上記保存ボタン66の押圧操作に基づいて、上記勾配データM2を上記測定番号「2」と判定結果「○」又は「×」と共に外部メモリ33に記憶する(図12P9〜P11)。
【0062】
このように、測定箇所を移動しながら複数の配管5の底面に勾配センサー2の測定面2aを順次押し当てるだけで、勾配を測定していくことができ、しかも、上記勾配データ管理装置6内において、各測定地点を特定するデータ1,2,3・・・と、各測定地点の勾配データM1,M2,M3・・・と、各測定地点の判定結果とを順次記憶していくことができ、勾配データの管理を極めて効率的に行うことができる。
【0063】
本発明は以上のように、測定した高所配管5の勾配データM1等は勾配センサー2から勾配データ管理装置6に取り込まれ、当該管理装置6において、当該勾配データが正常範囲に入っているか否か判定され、勾配データと判定結果とが、測定地点を特定するデータと共に表示され、かつ内部に記憶することができるので、例えば1000箇所以上の膨大な箇所の高所配管の勾配を安全かつ効率的に測定することができ、その測定した勾配データを測定地点毎に効率的に管理することができる。
【0064】
また、支持棒4を含む勾配センサー支持体3’により、高所の配管5の勾配を、脚立等を使用することなく安全かつ確実に測定することができる。
【0065】
また、コイルバネ(弾性部材)15の反発力により勾配センサー2を高所配管5に確実に接触させることができ、高所の配管5であっても正確な勾配を測定することができる。
【0066】
また、勾配データ管理装置6は携帯可能なパソコン等により構成することができるので、勾配センサー支持体3’と勾配データ管理装置6全体を携帯可能なコンパクトな装置とすることができ、持ち運びにも便宜な装置を実現したものである。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の高所配管勾配測定装置は、商業ビル等の天井面に設置される排水用の配管の勾配等、多数の配管の勾配を測定する必要がある場合に好適であり、その他、各種の高所配管の勾配測定に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0068】
1 高所配管勾配測定装置
2 勾配センサー
2a 測定面
3 ベース部
3’ 勾配センサー支持体
4 支持棒
4a 先端部
5 配管
6 勾配データ管理装置(パソコン)
11 接続部材
12 弾性部材
15 コイルバネ
33 外部メモリ
35 ディスプレイ
51 記憶手段
52 番号付手段
53 判定手段
56 表示手段
B2 ボルト
C1 中心軸線
D,M1,M2・・・ 勾配(傾斜)データ
L 正常範囲データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定面を配管に接触させて該配管の中心軸線と上記測定面を平行とすることにより上記配管の勾配を測定し得る勾配センサーと、上記勾配センサーを先端部に支持する勾配センサー支持体であって、上記勾配センサーを固定するベース部と、該ベース部に接続された支持棒とから構成され、上記支持棒の先端の上記勾配センサーの上記測定面を高所の配管に接触させることにより高所配管の勾配を測定する高所配管勾配測定装置であって、
上記勾配センサーに接続され、上記勾配センサーにて測定された勾配データを取り込み可能な勾配データ管理装置を設け、
上記勾配データ管理装置は、
予め定められた勾配の正常範囲データを記憶する記憶手段と、
上記勾配センサーで測定された勾配データが上記正常範囲データ内に入っているか否かを判定する判定手段と、
上記勾配データと上記判定手段による判定結果とを、勾配の測定地点を特定するデータと共に表示する表示手段と、
上記勾配データと上記判定結果とを、勾配の測定地点を特定するデータと共に記憶する記憶手段とを具備していることを特徴とする高所配管勾配測定装置。
【請求項2】
上記勾配センサーは上記勾配データ管理装置からのデータ取込指令に基づいて現在計測中の勾配データを上記勾配データ管理装置に送出するものであり、
上記勾配データ管理装置は上記勾配データが入力する度に上記各勾配データに対応する番号を付与するものであり、当該番号を上記勾配の測定地点を特定するデータとするものであることを特徴とする請求項1記載の高所配管勾配測定装置。
【請求項3】
上記支持棒の先端部に接続部材を固設し、当該接続部材に上記勾配センサーを支持する上記ベース部を接続する構成とし、
上記ベース部と上記接続部材との間に弾性部材を介在させたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の高所配管勾配測定装置。
【請求項4】
上記支持棒の先端部に接続部材を固設し、当該接続部材に上記勾配センサーを支持する上記ベース部を接続する構成とし、
上記接続部材と上記ベース部とをボルトによって所定間隔を隔てて接続すると共に、上記ボルトにコイルバネを挿着し、
上記ベース部と上記接続部材は上記コイルバネの反発力により常時離間する方向に附勢されているものであることを特徴とする請求項1又は2記載の高所配管勾配測定装置。
【請求項5】
上記勾配データ管理装置は携帯可能なパーソナルコンピュータにより構成したものであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の高所配管勾配測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−242348(P2012−242348A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115575(P2011−115575)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(591095823)株式会社九電工 (17)