説明

高比重薬剤を内包したリポソームの製造方法

【課題】高比重薬剤水溶液を内包するリポソームを大量に製造する際にも効率的に製造することができ、また、得られるリポソームの分散安定性が高いものとなる製造方法を提供する。
【解決手段】本発明による製造方法は、比重が1.1〜2.0の範囲にある水溶液と、あらかじめ水中で製造された空のリポソームとを混合して得られた液を、50〜100℃に加温し、かつ0.1〜50MPaで加圧混合することにより、当該リポソームに当該水溶液を
内包させる工程を経ることを特徴とする。上記水溶液としては、密度が1.3〜3.0g/cm3の範囲にある物質が溶解した水溶液、例えば、ヨード系X線造影剤用のヨード化合
物またはガドリニウム系MRI造影剤用のガドリニウム化合物が溶解した水溶液を用いることが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤類を含有するリポソームの製造方法に関する。より詳しくは、薬剤類を含有する比較的比重の大きな水溶液を内包するリポソームの効率的な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リポソームは、リン脂質あるいはその誘導体を膜成分として有し、必要に応じてステロール類や脂質等を加えて形成される単層または複数層の脂質二重膜からなる閉鎖小胞体である。このリポソームは、水溶性の薬剤を脂質二重膜で囲まれる内部の水相に、油溶性の薬剤類を二重膜の中に保持することができるため、本来不安定で失活しやすい薬効成分を安定的に内包させることが可能となる。また、リポソームの脂質膜は生体膜と類似の構造や機能を有するため、免疫系を刺激しにくく、低抗原性ゆえに素材としての安全性が高い。このようなことから、リポソームは診断薬、治療薬、化粧品などの様々な分野で応用開発が行われている。特に薬物送達システム(以下DDSと呼ぶ)として、リポソームの粒径、脂質膜の性質、特定細胞に対する標的性付与などの調整を通じて受動的または能動的なターゲティング機能を有する薬剤内包リポソームが盛んに研究されている。
【0003】
これらリポソームの製造法としては、バンガム法、逆相蒸発法、凍結融解法、機械的分散法、超臨界二酸化炭素法、押出法などの種々の方法が知られている。しかしながら、リポソームはリン脂質等の自己集積性を利用して形成させるために人為的な制御が効きにくく、比重の高い薬剤をリポソーム内に安定に内包することは特に難しい。また再現性も低いのが現状である。
【0004】
リポソームに内包させる高比重の薬剤類は種々あるが、特に有用な薬剤としてX線用ヨード系造影剤またはMRI用造影剤が検討されている。これらの造影剤を内包するリポソームの製造方法としては、通常バンガム法(特許文献1)や逆相蒸発法(特許文献2)などにより行われているが、内包率(=リポソーム内包薬剤質量/全薬剤質量)は理論値の半分程度である。一方、超臨界状態にある二酸化炭素に脂質成分(リン脂質等)を添加して溶解させ、続いてヨード系化合物の水溶液を添加して水相/二酸化炭素エマルジョンを形成させ、さらに水を連続的に添加させた後、系内を減圧して二酸化炭素を排出することにより、ヨード系化合物の水溶液を内包するリポソームの水系分散液を調製する方法が提案されている(特許文献3、4)。
【0005】
しかし、上述のような製造方法においても、水溶液の薬剤類の濃度が低く比重が比較的小さな場合には、リポソームへの内包率は非常に高いが、水溶液の比重が高くなるに連れて内包率が低くなる傾向にある。また、製造容器が大きくなるに連れて内包率が低下する傾向にあり、高比重薬剤を使用する場合には、内包率の低下は特に顕著になり、製造の際に有効利用されない脂質成分が圧倒的に高くなる。
【0006】
一方、上述の製造方法以外にも、例えば、薬剤類を内包しない空のリポソームを種々の方法で調製した後に、内包させようとする薬剤類と混合し、空のリポソームの内部にその薬剤類を入れるようにする製造方法もある。
【0007】
例えば、特許文献5にはリポソーム水性液を膜脂質転移温度Tcよりも高い温度でインキュベート、封入物質が経膜透過により浸透、充填前の小胞内部コア相中に含まれる液体相の重量オスモル濃度が200mOsm/kg以下で行う方法が記載されている。
【0008】
また、特許文献6には、空のリポソームを形成した後、これを糖溶液(好適には10w/
v%未満)および試薬(抗生物質等の医薬品)と混合することにより、試薬のリポソーム
内への取り込み率を従来よりも向上させる方法が記載されている。
【0009】
しかし、前述のような低比重薬剤において適用できる例はあるものの、そのままではX線用ヨード系造影剤またはMRI用造影剤などに対して適用することができなかった。このことは通常の製造方法と同様に比重の高い水溶液と空のリポソームとが、比重差のために分離して混合しないこと、および半透膜であるリポソームには高比重薬剤が浸透しにくいことに起因しているが分かった。
【特許文献1】特許第2619037号公報
【特許文献2】特許第3759765号公報
【特許文献3】特開2005−145845号公報
【特許文献4】特開2005−225791号公報
【特許文献5】特許第3241720号公報
【特許文献6】特表2003−513003号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、例えば造影剤のような比重の高い水溶液を大量に製造する際にも高い内包率でもって内包するリポソームを効率的に製造することができ、また、得られるリポソームの分散安定性も高いものとなる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、前述のような薬剤の内包率に関する問題を解明するために高比重の水溶液を用いたリポソーム作製を行い、その観察を行なった結果、リポソームの材料であるリン脂質の密度が低いこと、かつ高比重の水溶液との比重差が大きいために相分離を起こしやすいことが分かった。また、高比重の水溶液では、リン脂質がリポソームに集積していく際に、集積が阻害される傾向も見られる。これらの影響は容量が大きくなるほど、阻害要因として大きくなる現象が見られた。
【0012】
そして、空のリポソームと薬剤類の溶解した高比重の水溶液とを、所定の温度・圧力条件下で混合することにより、水溶液がリポソームに内包されやすくなることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
本発明によるリポソームの製造方法は、比重が1.1〜2.0の範囲にある水溶液と、あらかじめ水中で製造された空のリポソームとを混合して得られた混合液を、50〜100℃に加温し、かつ0.1〜50MPaで加圧混合することにより、当該リポソームに当該水
溶液を内包させる工程を経ることを特徴とする。
【0014】
上記水溶液としては、密度が1.3〜3.0g/cm3の範囲にある物質が溶解した水溶
液、例えば、ヨード系X線造影剤用のヨード化合物またはガドリニウム系MRI造影剤用のガドリニウム化合物が溶解した水溶液を用いることが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製造方法によれば、整粒等が容易であり、低コストで製造できる空のリポソームを使用して、薬剤類を内包したリポソームを製造できるようになる。これにより、例えばリポソームの脂質膜原料と薬剤類とを同時に混合して内包させるような方法と比較して、薬剤類を内包したリポソームの製造効率が向上する。また、本発明の製造方法により得られたリポソームは、室温条件下および加熱条件下での安定性にも優れており、各種の用途に有用である。また、製造容器の容量が大きくなっても内包率の低下等の影響を受けにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明における「空のリポソーム」とは、内部に薬剤類を実質的に含有していないリポソームをいう(水は含有していてもしていなくてもよい)。ここで「薬剤類」とは、後述するような造影剤や抗がん物質等、従来のリポソームで用いられているものと同様の薬剤および製薬助剤の総称である。また「高比重薬剤」とは、比重が1.1〜2.0の範囲にある前記薬剤を溶解した水溶液のことをいい、このような高比重薬剤を内包したリポソームを「高比重薬剤内包リポソーム」とよぶ。
【0017】
高比重薬剤内包リポソームの製造原料
<高比重薬剤>
本発明の製造方法は、比重が比較的高い水溶液、より具体的には、比重が1.1〜2.0、好ましくは1.1〜1.5の範囲にある水溶液を適用の対象とすることができる。
【0018】
比重が上記範囲にある水溶液の溶質、すなわち高比重薬剤としては、リポソームの用途に応じた薬剤類を適宜選択することが可能であり、特に限定されるものではないが、例えば、密度が1.3〜3.0g/cm3の範囲にある、好ましくは1.3〜1.6g/cm3の範囲にある物質を対象とすることができる。そのような溶質を用いた水溶液の代表的なものとしては、ヨード化合物が溶解したヨード系X線造影剤、ガドリニウム化合物などの造影剤が溶解したガドリニウム系MRI造影剤などが挙げられる。
【0019】
また、その他の含有元素としては、長周期表の第4周期以降の元素を有する種々の化合物を用いることができる。例えば、プラチナを含有する抗腫瘍剤であるシスプラチン、胃潰瘍治療剤に使われている亜鉛含有剤などを挙げることができる。
【0020】
本発明で用いることのできるヨード系X線造影剤用のヨード化合物としては、例えば、イオメプロール、イオパミドール、イオヘキソール、イオペントール、イオプロミド、イオキシラン、イオシミド、イオベンゾール、イオトロラン、イオジキサノール、イオデシモル、イオタスル、メトリザミド、1,3-ビス-(N-3,5-ビス-(2,3-ジヒドロキシプロピル
アミノカルボニル)-2,4,6-トリヨウドフェニル)-N-ヒドロキシアセチル-アミノ)-プロパンなどの非イオン性ヨード化合物が挙げられ、なかでも、高度に親水性であり、かつ高濃度でも浸透圧が高くならない点から、イオヘキソール、イオメプロール、イオパミドール、イオトロラン、イオジキサノールが好適である。これらの非イオン性ヨード化合物は、いずれも密度が1.3〜3.0g/cm3の範囲にある物質である。
【0021】
また、本発明で用いることのできるガドリニウム系MRI造影剤用のガドリニウム化合物としては、ガドリニウムとキレート化剤(NTA, EDTA, HEDTA, DTPA, DTPA-BMA, BOPTA,
TTHA, NOTA, DOTA, DO3A, HP-DO3A, EOB-DTPA, TETA, HAM, DPDP, ポルフィリン等)と
からなる錯体が挙げられる。例えば、Gd-DOTA(ガドテル酸メグルミン)、Gd-DTPA(ガドペンテト酸メグルミン)、Gd-BOPTAなどは、本発明で用いることのできる好適なガドリニウム系MRI造影剤である。これらのガドリニウム化合物も同様に、密度が1.3〜3.0g/cm3の範囲にある物質である。
【0022】
本発明で用いることのできる代表的な薬剤(X線造影剤・MRI造影剤)の密度、およびその溶液の25℃における比重を下記表に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
本発明では、上述の造影剤以外にも、抗がん性物質、抗真菌性物質、抗酸化性物質、抗菌性物質、抗炎症性物質、血行促進性物質、美白物質、肌荒れ防止物質、老化防止物質、発毛促進性物質、保湿性物質、ホルモン剤、ビタミン類、色素、タンパク質などの水溶性物質を溶解させ、比重を1.1〜2.0の範囲に調整した水溶液を用いることもできる。上記抗がん性物質としては、例えば、アドリアマイシン、ビラルビシン、ビンクリスチン、タキソール、シスプラチン、マイトマイシン、5−フルオロウラシルが挙げられる。
【0025】
さらに、必要に応じて、pH緩衝剤、キレート化剤、抗酸化剤、浸透圧調節剤、安定化剤、粘度調節剤、保存剤、無機塩類、さらには血管拡張剤、凝固抑制剤などの薬理的活性物質などの添加剤を上記水溶液に配合してもよく、本発明においては、添加剤を加えた後の比重が1.1〜2.0の範囲に調整した水溶液を用いることができる。
【0026】
以上のような薬剤類を含有する水溶液は、公知の手法を適宜利用して調製すればよい。通常は、蒸留水、局方注射用水、純水、あるいは生理食塩水、各種緩衝液、塩類などを含む水溶液などの水性媒体に、用途に応じた薬剤類を添加し、混合して調製する。また、薬剤類を含有するあらかじめ調製済みの商品等を用いてもよい。
【0027】
<空のリポソーム>
・脂質膜成分
本発明におけるリポソーム膜の脂質成分は特に限定されるものではなく、公知の様々な態様の配合組成を適用することができる。一般的には、リン脂質を主体として構成され、その他、糖脂質や、リポソームの膜安定化剤として作用するステロール類などが含まれてもよい。リポソームを構成する脂質膜の組成は、膜の強度やリポソームの生体内での挙動などに影響を与えるので、用途に応じて好適な組み合わせ、混合比を選択すればよい。
【0028】
上記リン脂質は、卵白、大豆もしくはその他の動植物に由来するもの(レシチン等)であっても、合成または半合成により得られたもの(リン脂質の部分的もしくは完全な水素添加物、またはポリエチレングリコールやアミノグリカン類を導入したリン脂質誘導体等)であってもよい。例えば、ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストリルホスファチジルコリン(DMPC)、ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)等の中性のグリセロリン脂質;ホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、ホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルグリセロール(DSPG)、ホスファチジルイノシトール、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)、ジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI)、ホスファチジン酸、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)等の負に荷電したグリセロリン脂質;ホスファチジルエタノールアミン、その他スフィンゴミエリン等のスフィンゴリン脂質などを用いることができる。
【0029】
これらのリン脂質は、通常は単独で使用されるが、2種以上を併用してもよく、ホスファチジルコリンを主体とすることが好ましい。なお、2種以上の荷電リン脂質を使用する場合には、負電荷のリン脂質同士または正電荷のリン脂質同士で使用することが、リポソームの凝集防止の観点から望ましい。また、中性リン脂質と荷電リン脂質を併用する場合、これらの質量比は、通常200:1〜3:1、好ましくは100:1〜4:1、より好ましくは40:1〜5:1である。
【0030】
糖脂質としては、例えば、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド硫酸エステル等のグリセロ脂質;ガラクトシルセラミド、ガラクトシルセラミド硫酸エステル、ラクトシルセラミド、ガングリオシドG7、ガングリオシドG6、ガングリオシドG4等のスフィンゴ糖脂質が挙げられる。
【0031】
また、ステロール類としては、例えば、コレステロール、ジヒドロコレステロール、コレステロールエステル、フィトステロール、シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、コレスタノール、ラノステロール、さらに、1−O−ステロールグルコシド、1−O−ステロールマルトシド、1−O−ステロールガラクトシドといったステロール誘導体が挙げられ、特にコレステロールが好ましい。ステロール類の使用量は、リン脂質に対して通常は5〜150質量%、好ましくは20〜100質量%、より好ましくは30〜80質量%の割合である。
【0032】
・調製方法
本発明で用いる空のリポソームの製造方法は特に限定されるものではなく、公知の各種の製造方法により得られたリポソームを対象とすることができる。製造方法によって得られるリポソームの形態や特性の傾向は相違するため、所望の形態や特性を有するリポソームが得られる製造方法を適宜選択すればよい。
【0033】
例えば、バンガム法や逆相蒸発法は、有害な溶剤を使用し粒径も単分散性が低いが装置的には容易な製造方法であり、押出法と組み合わせると粒径も改善される。機械的分散法は一枚膜にはなりにくいが高濃度で製造できる可能性がある、また、超臨界二酸化炭素法は、単層の脂質膜を持ち一枚膜で高内包率のリポソームを作製するのに優れている。いずれの方法においても薬剤類を含まない水中で製造すれば、本発明で用いる空のリポソームが得られる。
【0034】
上述のような工程の後、さらに、リポソームの粒径分布を所望の範囲内に揃え、不純物の除去、滅菌等を行うための濾過工程などを必要に応じて設けてもよい。
例えば、孔径0.1〜0.4μmのポリカーボネート膜またはセルロース膜をフィルターとして装着した静圧式押出し装置に通すことにより、中心粒径が100〜300nm程度であるリポソームが効率よく調製される。このようなサイズのリポソームは、毛細血管を閉塞するおそれがほとんどないと同時に、がん組織近辺の血管にできる間隙を通過できるといった利点を有する。上記の静圧式押出し装置としては、例えば、日油リポソーム社製「エクストルーダー」、野村マイクロサイエンス社製「リポナイザー」などが挙げられる。
【0035】
高比重薬剤内包リポソームの製造工程
本発明の製造方法では、比重が所定の範囲にある水溶液と、あらかじめ水中で製造された空のリポソームとを混合して得られた混合液を用いる。この混合液の調製方法は、特に限定されるものではないが、本発明における一般的な態様としては、空のリポソームをあらかじめ製造しておき、薬剤類を溶解させて比重が所定の範囲にある水溶液を調製した後に、この水溶液に空のリポソームを添加して混合することにより混合液を調製する方法が挙げられる。
【0036】
また、上記のような態様において、あらかじめ水中で製造した空のリポソームは、その後一旦乾燥させ、乾燥した状態で水溶液に添加するようにしてもよい。乾燥した状態の空のリポソームは商品として販売されており(例えば、日本油脂社製「COATSOME EL Series」)、そのような商品を本発明において使用することもできる。
【0037】
続いて、本発明の製造方法では、上述のようにして調整した空のリポソームと比重が所定の範囲にある水溶液との混合液に、所定の温度および圧力を加え、当該リポソームに当該水溶液を内包させる工程を行う。
【0038】
この工程における温度条件は50〜100℃、好ましくは50〜80℃、より好ましくは55〜65℃である。また、加圧条件は0.1〜50MPa、好ましくは1〜15MPa、
より好ましくは5〜15MPaである。加える圧力が高いほど内包に要する時間は短くてよい。
【0039】
この工程では、例えば、CO、Nなどの気体で加圧しながら加温し、釜内で撹拌するといった手法を用いればよく、低圧であれば、オートクレーブを100℃以下で0.1
MPa以上に加圧して十分な時間混合できる条件、例えば攪拌機構を付けて薬剤を内包化し、連続して100℃以上の滅菌を行うこともできる。また、高圧の場合は超臨界二酸化炭素法の装置を用いることができる。空のリポソームを壊さない条件の範囲で超高圧乳化装置(例えば、ナノマイザー、マイクロフルイタイザー、マントンゴーリンホモジナイザー、OHL式装置等)を用いることも可能である。また、十分な滞留時間で高圧をかけつつ限外濾過することにより、本工程と同時にリポソームを整粒することも可能である。その他、上記の温度および圧力を加えることができるのであれば、各種の公知の手法、装置等を用いることもできる。尚、エクストルーダを使用する整粒操作も、膜通過のために窒素を使用した加圧と相転移温度以上の条件で行うが、容器の一部を開放で行うため瞬時に圧
が下り、圧力で混合する状態にはならないので、そのような整粒工程単独では、本発明によるリポソームに水溶液を内包させる工程とはならない。
【0040】
空のリポソームへの薬剤内包工程では効率を上げるために加圧だけではなく更に別途混合することが好ましい。混合操作としては加圧下で機械的な攪拌を行うこと、加圧下で混合液をポンプで循環送液すること、加圧下で容器全体を揺すったり、シェークすることなど特に制限がなく、一般的な混合装置は全て利用できる。その他リポソームを壊さない範囲で、ホモジナイザー、ホモミキサー、ウルトラミキサーなどを用いてもよい。
好ましくは攪拌操作であり、プロペラや必要に応じて邪魔板を設けたりしてモーターで回転する。回転数としては、通常は10〜1000rpmであり、好ましくは100〜500rpmである。
【0041】
以上のようにして高比重薬剤内包リポソームを製造した後、さらにそれを凍結乾燥し、使用までの間の保管に適した態様にすることが望ましい。
凍結乾燥は、従来のリポソームを製造する場合と同様の手段や装置を用いて行うことができる。例えば、間接加熱凍結方法、冷媒直膨方法、熱媒循環方法、三重熱交換方法、重複冷凍方法などの手法に従い、適切な条件によって(例えば、−120〜−20℃の温度、1〜15Paの圧力下で、16〜26時間)行えばよい。
【0042】
高比重薬剤内包リポソームの使用方法
本発明により製造した高比重薬剤内包リポソームは、従来のリポソームと同様にして使用することができる。前述のようにして凍結乾燥したリポソームは、激しい攪拌や加熱などを行わなくても水性媒体に短時間で完全に分散させることができ、リポソーム含有製剤として好適に利用できる。
【0043】
リポソームを分散させる水性媒体としては、最終的に得られる製剤の態様に応じて所望の水性媒体を用いればよいが、リポソーム内外の浸透圧差によるリポソームの不安定化を抑制し、薬剤等の保持率をより一層向上させることが可能であることから、リポソームに内包した薬剤類を同程度の濃度で含む水性溶媒であることが望ましい。
【0044】
また、リポソーム含有製剤の浸透圧濃度、粘度、pHなどの性状は、人体に投与することなどを考慮して適宜調整すればよい。例えば、人体に投与する場合、浸透圧濃度は通常250〜500mosmol/L、好ましくは290〜350mosmol/Lである。37℃におけるリポソーム含有製剤の粘度は、通常20mPa・s以下、好ましくは18mPa・s以下である。室温でのpHは、通常6.5〜8.5、好ましくは6.8〜7.8程度であり、必要であれば各種の緩衝液を用いてもよい。
【0045】
さらに、リポソーム含有製剤中に含有される薬剤の量についても、用途などに応じて適切に設定すればよい。例えば、ヨード系X線造影剤として用いる場合には、通常想定される10〜300mLの投与量において100〜500mgI/mL、好ましくは150〜350mgI/mLとなるようにすればよい。
【実施例】
【0046】
[実施例1]
(空のリポソーム製造)
クロロホルムとメタノールと水の混合物(質量比100:20:0.1)60mlにジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)0.86g、およびコレステロール0.35gを混合し、加熱して溶解させた。この溶液をロータリーエバポレーター中に入れて完全に溶剤留去を行った。残渣を更に2時間真空乾燥し、脂質フィルム薄膜を形成した。純水100mlと前記脂質フィルム薄膜とを混合し、65℃においてボルテックスミキサーで
10分間攪拌し空のリポソームを製造した。
(整粒操作)
エクストルーダ(日油リポソーム社製)と、0.8μm、0.4μmおよび0.2μmの
3種類のポリカーボネートフィルター(アドバンテック社製)を用意した。リポソーム分散液をエクストルーダに入れて80℃においてN2ガス0.3MPaの圧力で、各フィルターについて10回ずつ加圧ろ過を行い、整粒したリポソーム分散液を得た。
(凍結乾燥)
分散液をレイタント社製凍結乾燥機「LFD-600DNCPS1」を用いて凍結乾燥し、粉末状リ
ポソームを作製した。
(高比重薬剤の内包)
イオヘキソールを65質量%含有する比重1.35の水溶液100mlと前記粉末状の空のリポソームとをステンレス製の特製オートクレーブに仕込み、撹拌機で200rpmで攪拌を開始した。オートクレーブ内を60℃に保ちながら液体二酸化炭素を導入した。オートクレーブ内の圧力を初期値の5MPaから気体圧縮装置を用いて13MPaにまで上げた
。この圧力、温度と攪拌条件で1時間接触操作を行った後、系内を減圧して二酸化炭素を排出した。再度前記と同じ整粒操作を行って、比重1.35のイオヘキソールを含有する薬剤内包リポソームを得た。光散乱粒径測定装置ゼータサイザー1000(マルバーン社製)で粒径測定を行ったところ、体積平均粒径は180nmであった。
(薬剤内包率の測定)
薬剤内包リポソームの分散液50μlを採取し1.8%生理食塩水950μlを加えて遠心分離(6,000rpm、20分)を行った。得られた上清および残渣(リポソーム)を完
全に分離した後、各々アルコールを加えて溶解し20mlに仕上げた。波長240nmにおける吸光度を測定し、内包薬剤の吸光度と薬剤濃度の検量線に基づき、リポソーム内包薬剤質量および系内の全薬剤質量を計算して、以下の式で薬剤内包率を求めた。ここで、リポソーム内包薬剤質量は残渣から測定された薬剤質量、全薬剤量は上清と残渣から測定された薬剤質量の和とする。薬剤の内包率は13%であった。
【0047】
薬剤内包率(%)=リポソーム内包薬剤質量/全薬剤質量×100
以下の比較例、実施例において、空のリポソームを使用する場合は上記空のリポソームの処方を使用した。また整粒操作、粒径測定、薬剤内包率については全て上記と同じ方法、条件で行った。
【0048】
[実施例2]
実施例1の処方において、薬剤量の仕込みを全て1/10にして、かつ内包時の加圧圧力を30MPaにした以外は実施例1と全く同じ処方、条件で薬剤内包リポソームを製造した。
平均粒径180nm、薬剤内包率14%であった。
【0049】
[実施例3]
実施例1の処方において、空のリポソームのリン脂質をジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)0.8gおよびジステアロイルホスファチジルエタノールアミンPEG20
00修飾品(DSPE−PEG2000)0.06gに変更し、加圧圧力を5MPaにした以外は実施例1と全く同じ処方、条件で薬剤内包リポソームを製造した。平均粒径180nm、薬剤内包率12%であった。
【0050】
[実施例4]
実施例1の処方において、加圧圧力を20MPa、内包薬剤を濃度76%の同量のイオヘ
キソールに変更した以外は実施例1と全く同じ処方、条件で薬剤内包リポソームを製造した。平均粒径190nm、薬剤内包率11%であった。
【0051】
[実施例5]
実施例1の処方において、空のリポソームのリン脂質を水素添加大豆レシチン精製品(HSPC)0.86g、内包薬剤を同量のイソビストに変更し、加圧圧力を1MPa、温度を5
0℃にした以外は実施例1と全く同じ処方、条件で薬剤内包リポソームを製造した。平均粒径190nm、薬剤内包率11%であった。
【0052】
[実施例6]
実施例1の処方において、空のリポソームのリン脂質をジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)0.8gおよびジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)0.06gに変更し、内包薬剤を同量のイオトロランに変更し、加圧圧力を0.2MPa、温度を50
℃にした以外は実施例1と全く同じ処方、条件で薬剤内包リポソームを製造した。平均粒径190nm、薬剤内包率10%であった。
【0053】
[実施例7]
実施例1の処方において、空のリポソームのリン脂質をジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)0.8gおよびジデシルホスファチジルコリン(DDPC)0.06gに変更し、内包薬剤を同量のイオプロミドに変更し、加圧圧力を1MPa、温度を90℃にした以
外は実施例1と全く同じ処方、条件で薬剤内包リポソームを製造した。平均粒径190nm、薬剤内包率9%であった。
【0054】
[実施例8]
実施例1の処方において、空のリポソームのリン脂質を同量のジステアリルフォスファチジルコリン(DSPC)に変更し、内包薬剤を同量のイオメロンに変更し、加圧圧力を1MPaにした以外は実施例1と全く同じ処方、条件で薬剤内包リポソームを製造した。平均粒
径190nm、薬剤内包率11%であった。
【0055】
[実施例9]
実施例1の処方において、内包薬剤を同量のイオメロンに変更し、加圧圧力を1MPaに
した以外は実施例1と全く同じ処方、条件で薬剤内包リポソームを製造した。平均粒径190nm、薬剤内包率9%であった。
【0056】
[実施例10]
実施例1の処方において、空のリポソームのリン脂質を同量のジミリスチルフォスファチジルコリン(DMPC)に変更し、内包薬剤を同量のイオパミドールに変更し、加圧圧力を1MPaにした以外は実施例1と全く同じ処方、条件で薬剤内包リポソームを製造した。平
均粒径190nm、薬剤内包率13%であった。
【0057】
[実施例11]
実施例1の処方において、内包薬剤を同量のイオパミドールに変更し、加圧圧力を1MPaにした以外は実施例1と全く同じ処方、条件で薬剤内包リポソームを製造した。平均粒
径190nm、薬剤内包率10%であった。
【0058】
[実施例12]
実施例1の処方において、空のリポソームのリン脂質を同量のパルミチル-ミリスチル
フォスファチジルコリン(PMPC)に変更し、内包薬剤を同量のガドテリドールに変更し、加圧圧力を1MPa、温度を55℃にした以外は実施例1と全く同じ処方、条件で薬剤内包
リポソームを製造した。平均粒径190nm、薬剤内包率13%であった。
【0059】
[実施例13]
実施例1の処方において、内包薬剤を同量のガドペンテト酸メグルミンに変更し、加圧ガスを窒素に変更した以外は実施例1と全く同じ処方、条件で薬剤内包リポソームを製造
した。平均粒径190nm、薬剤内包率10%であった。
【0060】
[実施例14]
実施例1の処方において、空のリポソームのリン脂質を同量の水素添加大豆レシチン精製品(HSPC)に変更し、内包薬剤として同量のイオパミドールに変更し、加圧ガスを窒素に変更し、温度を70℃にした以外は実施例1と全く同じ処方、条件で薬剤内包リポソームを製造した。平均粒径190nm、薬剤内包率11%であった。
【0061】
[実施例15]
実施例1の処方において、空のリポソームのリン脂質を同量のステアリル-パルミチル
フォスファチジルコリン(SPPC)に変更し、加圧ガスを窒素に変更し、加圧圧力を5MPa
、温度を80℃にした以外は実施例1と全く同じ処方、条件で薬剤内包リポソームを製造した。平均粒径190nm、薬剤内包率9%であった。
【0062】
[実施例16]
実施例1の処方において、空のリポソームのリン脂質をジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)0.76gおよびジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)0.1gに変更し、加圧ガスを窒素に変更し、加圧圧力を1MPaにした以外は実施例1と全く同じ
処方、条件で薬剤内包リポソームを製造した。平均粒径190nm、薬剤内包率8%であった。
【0063】
[実施例17]
実施例1の処方において、加圧ガスを酸素に変更し、加圧圧力を2MPaにした以外は実
施例1と全く同じ処方、条件で薬剤内包リポソームを製造した。平均粒径190nm、薬剤内包率9%であった。
【0064】
[実施例18]
実施例1の処方において、空のリポソームのリン脂質を同量の大豆レシチン「LP-White」(辻製油製)に変更し、加圧ガスを酸素に変更し、加圧圧力を5MPaにした以外は実施
例1と全く同じ処方、条件で薬剤内包リポソームを製造した。平均粒径190nm、薬剤内包率10%であった。
【0065】
[実施例19]
実施例1の処方において、加圧ガスを酸素に変更し、加圧圧力を1MPaにした以外は実
施例1と全く同じ処方、条件で薬剤内包リポソームを製造した。平均粒径190nm、薬剤内包率9%であった。
【0066】
[実施例20]
実施例1の処方において、空のリポソームのリン脂質を同量の卵黄レシチンに変更し、内包薬剤として同量のイオパミドールに変更し、加圧ガスを酸素に変更し、加圧圧力を0.3MPaにした以外は実施例1と全く同じ処方、条件で薬剤内包リポソームを製造した。
平均粒径190nm、薬剤内包率9%であった。
【0067】
[比較例1]
実施例1で作製した空のリポソームを用いて、加圧をしない以外は実施例1と全く同じ処方、条件で薬剤内包リポソームを製造した。平均粒径190nm、薬剤内包率4%であった。
【0068】
[比較例2]
実施例1で作製した空のリポソームを用いて、薬剤内包工程で加温せずに室温で行った
以外は実施例1と全く同じ処方、条件で薬剤内包リポソームを製造した。平均粒径190nm、薬剤内包率3%であった。
【0069】
[比較例3]
実施例1で作製した空のリポソームを用いて、温度と圧力をかけないで高圧蒸気滅菌器STH307FA(アドバンテック社製)で121℃、60分の条件で滅菌を行った。尚上記
滅菌工程においては0.1MPa弱の圧力が掛かっている事を確認した。それ以外は実施例
1と全く同じ処方、条件で薬剤内包リポソームを製造した。平均粒径200nm、薬剤内包率4%であった。
【0070】
[比較例4]
(バンガム法によるリポソーム製造)
クロロホルムとメタノールと水の混合物(質量比100:20:0.1)60mlにジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)0.86g、およびコレステロール0.35gとを混合し、加熱して溶解させた。この溶液をロータリーエバポレーター中に入れて完
全に溶剤留去を行った。残渣を更に2時間真空乾燥し、脂質フィルム薄膜を形成した。つづいて、イオヘキソールを65質量%含有する水溶液100mlと前記脂質フィルム薄膜とを混合し、65℃においてボルテックスミキサーで10分間攪拌しリポソームを製造し、更に整粒操作を行ったが0.4μmのフィルターまでしかできなかった。平均粒径35
0nm、内包率2%であった。
(状態観察)
リポソーム製造工程において攪拌を止めるとリン脂質がイオヘキソール液の上に分離した。また整粒操作時もリン脂質の塊が多く濾過され、また内包率が低いことからリポソームがほとんど形成されていないことが示唆された。
【0071】
[比較例5]
(超臨界二酸化炭素法による少量のリポソーム製造)
ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)0.046gと、コレステロール0.022gの混合物をエタノール1.4gに溶解した溶液をステンレス製の特製オートクレーブに仕込み、オートクレーブ内を60℃に加熱後に液体二酸化炭素を導入した。オートクレーブ内の圧力を初期値の5MPaから気体圧縮装置を用いて13MPaにまで上げて、二酸化炭素を超臨界状態にし、撹拌しながら、さらにイオヘキソール65%を含む水溶液5gを定量ポンプで連続的に注入した。注入終了後、系内を減圧して二酸化炭素を排出し、薬剤内包リポソームの分散液を得た。最後に高圧蒸気滅菌器STH307FA(アドバンテック社
製)で121℃、30分の条件で滅菌とエタノール除去を行った。平均粒径160nm、内包率9%であった。
【0072】
[比較例6]
(超臨界二酸化炭素法による多量のリポソーム製造)
ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)0.46gと、コレステロール0.22gの混合物をエタノール10gに溶解した溶液をステンレス製の特製オートクレーブに仕込み、オートクレーブ内を60℃に加熱後に液体二酸化炭素を導入した。オートクレーブ内の圧力を初期値の5MPaから気体圧縮装置を用いて13MPaにまで上げて、二酸化炭素を超
臨界状態にし、撹拌しながら、さらにイオヘキソール65%を含む水溶液50gを定量ポンプで連続的に注入した。注入終了後、系内を減圧して二酸化炭素を排出し、薬剤内包リポソームの分散液を得た。最後に高圧蒸気滅菌器STH307FA(アドバンテック社製)で
121℃、30分の条件で滅菌とエタノール除去を行った。平均粒径170nm、内包率7%であった。
(安定性の評価)
実施例1〜20、および比較例1〜6のサンプルをキャップ付きのサンプル瓶に入れ、
40℃で保存して経時での安定性を測定し、薬剤内包リポソームが高比重薬剤から分離するかどうかを観察して下記の基準に基づき評価した。結果を表1にまとめた。
○:2週間保存後も分離しない。
△:1〜2週間で分離する。
×:1週間以内で分離する。
【0073】
【表2】

【0074】
比較例1〜3は空のリポソームを用いて薬剤を内包させる方法を用いているが、比較例1では加圧されていないため高比重薬剤とリポソームが分離しリポソーム内部への薬剤浸透が起こらない。比較例2では加圧されて薬剤とリポソームの接触は起こりやすいものの
温度が不足しているためリポソームの外壁が強固で薬剤は内部に浸透できない。範囲外の加圧と温度を用いたオートクレーブでも同様である。すなわち比較例1〜3においては、温度と圧力が本発明の要件を欠く範囲であるため内包率は向上せず、また得られたリポソームの安定性も低い。
【0075】
比較例4に挙げたバンガム法では、リン脂質フィルム薄膜が高比重薬剤と大部分分離しリポソーム形成が阻害されており内包率、安定性共に低いことが分かる。比較例5および6の超臨界二酸化炭素法においては、製造量が少ない場合、非常に優れた内包率を示すものの、溶解剤の種類、リン脂質の処方によっては量が多くなると内包率、安定性共に大幅に劣化するため、性能を保ったまま製造量を増やすためには何らかの別の施策が必要となる。
【0076】
一方、本発明の空のリポソームに高比重薬剤を混合し、50℃〜100℃の温度範囲で、0.1〜50MPaに加圧することで高比重薬剤であっても内包率が高く、安定な高比重薬剤内包リ
ポソームが得られることが分かる。
【0077】
加圧ガスの種類としては、水溶液に吸収されやすい二酸化炭素の方が酸素、窒素ガスよりもより良い結果を示した。また本発明においては特定の薬剤に限らず、多くの高比重薬剤、例えばX線造影剤やMRI造影剤において良好な結果を示していることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
比重が1.1〜2.0の範囲にある水溶液と、あらかじめ水中で製造された空のリポソームとを混合して得られた液を、50〜100℃に加温し、かつ0.1〜50MPaで加圧混
合することにより、当該リポソームに当該水溶液を内包させる工程を経ることを特徴とする、高比重薬剤を内包したリポソームの製造方法。
【請求項2】
前記水溶液が、密度が1.3〜3.0g/cm3の範囲にある物質を溶解した水溶液であ
ることを特徴とする、請求項1に記載の高比重薬剤を内包したリポソームの製造方法。
【請求項3】
前記水溶液が、ヨード系X線造影剤用のヨード化合物またはガドリニウム系MRI造影剤用のガドリニウム化合物が溶解した水溶液であることを特徴とする、請求項1に記載の高比重薬剤を内包したリポソームの製造方法。
【請求項4】
前記空のリポソームが、水中での製造後に一旦乾燥され、乾燥した状態で前記水溶液に添加されたものであることを特徴とする、請求項1に記載の高比重薬剤を内包したリポソームの製造方法。

【公開番号】特開2008−120721(P2008−120721A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305595(P2006−305595)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】