説明

高流動性酸化チタン、その製造方法および上記高流動性酸化チタンを外添剤として添加した静電潜像現像用トナー

【課題】 流動性が良好で、かつ帯電性能の環境変動が小さく、鮮鋭性の高い画動が安定して得られる静電潜像現像用トナーを得るのに適した高流動性酸化チタンを提供し、また、その高流動性酸化チタンを外添剤として添加することによって上記特性を有する静電潜像現像用トナーを提供する。
【解決手段】 有機物で疎水化処理した平均一次粒子径が5〜100nmの酸化チタンに、気相法で製造された平均一次粒子径が5〜40nmのシリカを、酸化チタンに対してシリカが0.5〜20質量%の割合で、乾式混合処理して高流動性酸化チタンを構成し、その高流動性酸化チタンを外添剤として添加して静電潜像現像用トナーを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高流動性酸化チタン、その製造方法および上記高流動性酸化チタンを外添剤として添加した静電潜像現像用トナーに関するものであり、上記高流動性酸化チタンは、複写機やプリンターなどの複写画像を形成するための静電潜像現像用トナーの外添剤として有用であって、該高流動性酸化チタンを外添剤として添加することにより、流動性が良好で、帯電性能の環境変動が小さく、鮮鋭性の高い画像が安定して得られる静電潜像現像用トナーを提供することができる。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やプリンターなどにより得られる静電画像の高精細、高画質化への要求が市場で高まっており、トナーの小粒径化が進んでいる。しかしながら、トナーを小粒径化すると、トナーの帯電量が増加して、トナー同士の付着が強くなり流動性が低下するという問題があった。また、トナーの結着樹脂としてポリエステル系樹脂を用いることにより高画質化を達成しようとすることも行われているが、ポリエステル系樹脂を用いると湿度の影響を受けやすくなって、低湿度下においては帯電量が高くなりすぎ、画像濃度が低下して、画像欠限が生じやすくなり、逆に、高湿度下においては帯電量が不足し、現像性が悪化して、鮮鋭性の高い画像が得られなくなるという問題があった。
【0003】
また、従来より静電潜像現像に用いられるトナーに対して、流動性付与や帯電性付与、あるいはクリーニング性向上などの目的で、シリカや酸化チタンなどの無機酸化物粉体を外添することが提案されている(例えば、特許文献1〜6)。
【0004】
これらの提案のように、トナーに無機酸化物粉体を外添することにより、ある程度の効果は得られるが、シリカは、流動性が優れているものの、帯電性能の環境安定性が充分でないという問題があり、また、酸化チタンは、帯電性能の環境安定性に優れているものの、流動性が充分ではないという問題を有している。従って、シリカ、酸化チタンなど、数種類の外添剤を併用して調整しているのが現状である。
【0005】
また、近年カラー化に伴い、帯電性能の環境安定性に優れた酸化チタンを外添剤としてトナーに添加するケースが増加しているが、前述したように酸化チタンは流動性が充分でないため、シリカに近い流動性を有した酸化チタンの出現が待たれている。
【特許文献1】特開昭62−113158号公報
【特許文献2】特開昭64−62667号公報
【特許文献3】特開2000−128534号公報
【特許文献4】特許第3018858号公報
【特許文献5】特許第3038912号公報
【特許文献6】特許第3168347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決し、流動性が良好で、かつ帯電性能の環境変動が小さく、鮮鋭性の高い画動が安定して得られる静電潜像現像用トナーを得るのに適した高流動性酸化チタンを提供し、また、その高流動性酸化チタンを外添剤として添加することによって上記特性を有する静電潜像現像用トナーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため種々研究を重ねた結果、特定粒子径の酸化チタンを有機物で疎水化処理し、その疎水化処理した酸化チタンに、気相法で製造された特定粒子径のシリカを、酸化チタンに対してシリカが0.5〜20質量%の割合(すなわち、酸化チタン100質量部に対してシリカ0.5〜20質量部)で、乾式混合処理することによって、静電潜像現像用トナーの外添剤として用いたときに、流動性が良好で、帯電性能の環境変動が小さく、鮮鋭性の高い静電潜像現像用トナーを提供することができる高流動性酸化チタンが得られることを見出し、それに基づいて本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、有機物で疎水化処理した平均一次粒子径が5〜100nmの酸化チタンに、気相法で製造された平均一次粒子径が5〜40nmのシリカを、酸化チタンに対してシリカが0.5〜20質量%の割合で、乾式混合処理したことを特徴とする高流動性酸化チタンと、その高流動性酸化チタンの製造方法に関するものであり、さらには、その高流動性酸化チタンを外添剤として添加したことを特徴とする静電潜像現像用トナーに関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複写機やプリンターなどの複写画像を形成するための静電潜像現像用トナーの外添剤として有用な高流動性酸化チタンを提供することができる。
そして、上記高流動性酸化チタンを外添剤として添加することにより、流動性が良好で、かつ帯電性能の環境変動が小さく、鮮鋭性の高い画像が安定して得られる静電潜像現像用トナーを提供することができる。
【0010】
本発明の高流動性酸化チタンは、その代表的用途が静電潜像現像用トナーの外添剤であるが、その高流動性を利用して、上記静電潜像現像用トナーの外添剤以外にも、粉体塗料、樹脂用添加剤、化粧料などに利用することができる。
【0011】
本発明の高流動性酸化チタンがその表現通り高流動性になる理由およびそれを外添剤として添加した静電潜像現像用トナーが、流動性が良好で、かつ帯電性能の環境変動が小さく、鮮鋭性の高い画像を安定して提供し得る理由は、以下の「発明を実施するための最良の形態」の項で本発明の高流動性酸化チタンを構成する材料などの説明と共に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の高流動性酸化チタンを構成する酸化チタンは、その平均一次粒子径が5〜100nmであることが必要であり、得られる高流動性酸化チタンを静電潜像現像用トナーの外添剤として用いる観点からは、5〜50nmであることがより好ましい。酸化チタンの平均粒子径が5nmより小さいものは製造自体が困難であり、100nmより大きいものは流動性の点で好ましくない。なお、本発明において、酸化チタンとは、二酸化チタン(TiO)をいい、その平均一次粒子径はBET比表面積測定値より求めた球換算相当径であり、また、後に詳述するシリカの平均一次粒子径も上記酸化チタンの場合と同様にBET比表面積測定値より求めた球換算相当径である。
【0013】
本発明においては、上記酸化チタンを有機物で疎水化処理しているが、上記の0.5〜100nmという平均一次粒子径は酸化チタンそのものの平均一次粒子径である。ただし、有機物による疎水化処理によって酸化チタンの表面に形成される被膜は、非常に薄いものであって、酸化チタンの粒子径にほとんど影響を与えず、酸化チタンの粒子径は有機物による疎水化処理の前後でほとんど変わらない。
【0014】
本発明においては、上記のように酸化チタンを有機物で疎水化処理しているが、これは、その疎水化処理によって、帯電性能の環境変動を小さくするためである。この疎水化処理にあたって用いる有機物は、疎水性を発現するものであれば特に限定されることなく各種のものを用い得るが、トナーにしたときの流動性、帯電性能の環境安定性を考慮すると、アルコキシシラン、シランカップリング剤、シラザン、シリコーンオイル、ステアリン酸金属塩などが好ましく、特にアルコキシシラン、シランカップリング剤、シラザン、シリコーンオイルなどの含ケイ素有機物が好ましく、とりわけ、アルコキシシラン、シランカップリング剤などが好ましい。上記アルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどが挙げられ、シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系シラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシ系シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのメタクリロキシ系シラン、3−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノ系シランなどが挙げられる。また、シラザンとしては、例えば、ヘキサメチルジシラザンなどが挙げられ、シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサンなどのストレートシリコーンオイルや、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルなどの変性シリコーンオイルなどが挙げられ、ステアリン酸金属塩としては、例えば、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどが挙げられる。そして、これらの有機物は、それぞれ単独で用いることもできるし、また、2種以上併用することもできる。
【0015】
上記有機物の酸化チタンに対する処理量としては、5〜50質量%(酸化チタン100質量部に対して有機物5〜50質量部)が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。有機物による処理量が5質量%より少ない場合は、疎水性が充分に発現せず、そのため、流動性が悪く、かつ帯電性能の環境安定性が悪く、また、50質量%より多い場合には、酸化チタン粒子同士の凝集が強くなって、流動性が悪くなる傾向がある。
【0016】
上記有機物で酸化チタンを疎水化処理する方法としては、乾式法、湿式法のいずれの方法も採用することができるが、処理の均一性という点からは湿式法が好ましい。湿式法には水系で行う方法と非水系で行う方法とがあるが、水系では処理剤(疎水化処理のための有機物)の溶解性の点から使用できる処理剤が制限されるため、処理剤選択の自由度が高い非水系での処理がより好ましい。また、酸化チタンの凝集を解し、処理の均一性を高める点から、強力な分散をかけながら処理することが好ましい。
【0017】
本発明の流動性酸化チタンを構成するにあたって使用するシリカは、気相法で製造され、かつその平均一次粒子径が5〜40nmのものが必要であり、5〜30nmのものがより好ましい。本発明において、気相法や液相法で製造されたシリカのうち、特に気相法で製造されたシリカを用いるのは、気相法で製造されたシリカの方が液相法で製造されたシリカより流動性がよいからであり、液相法で製造されたシリカは、それ自体の流動性が不足していて、充分な流動性付与効果が得られない。また、本発明において、上記気相法で製造されたシリカのうち、特に平均一次粒子径が5〜40nmのものを用いるのは、シリカの平均一次粒子径が5nmより小さいものは製造困難であり、40nmより大きいものは流動性付与効果が小さいからである。
【0018】
本発明において用いるシリカとは二酸化ケイ素(SiO)のことであり、本発明の高流動性酸化チタンがその表現どおり高流動性になるのは、酸化チタンにこのシリカを混合していることによるものである。そして、このシリカの混合量としては、酸化チタンに対して0.5〜20質量%(酸化チタン100質量部に対してシリカ5〜20質量部)であることが必要であり、5〜15質量%であることがより好ましい。酸化チタンに対するシリカの混合量が0.5質量%より少ない場合は、流動性付与効果が充分に得られず、20質量%より多い場合は、流動性付与効果は得られるものの、帯電性能の環境安定性が悪くなり、帯電性能の環境変動が大きくなる。なお、上記シリカは、その表面を有機物で疎水化処理したものであってもよいし、また、未処理のものであってもよい。
【0019】
本発明において、疎水化処理した酸化チタンに対するシリカの混合処理は乾式で行うが、これは、シリカが有している粒子同士の緩やかに連なった状態を維持して、酸化チタンと混合することにより、酸化チタンに流動性を付与することができるという理由によるものである。そして、この乾式混合処理には、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、ニーダー、V型ブレンダーなどの汎用の混合装置が使用できるが、特にV型ブレンダーによる混合が流動性付与効果が一番大きく好ましい。この理由は、現在のところ、必ずしも明確ではないが、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー、ニーダーなどはV型ブレンダーより混合力が強く、そのため、粒子の造粒、合一、凝集などが発生しやすいが、V型ブレンダーによる場合は、上記のような粒子の造粒、合一、凝集などが生じにくいことによるものと考えられる。
【0020】
本発明においては、酸化チタンに対するシリカの混合処理を上記のように乾式で行うが、それとは別に、酸化チタンを有機物で疎水化処理する工程中でシリカを混合する方法もある。ただし、この場合は充分な流動性が得られない。これは、酸化チタンを有機物で疎水化する工程においては、強力な分散力がかかるため、前述したようなシリカの有する緩やかな粒子同士の連なった状態を維持することができないためであると考えられる。
【0021】
本発明の高流動性酸化チタンは、疎水化処理されているので、温度や湿度などの環境変化に対する安定性が高く、従って、帯電性能の環境安定性が優れている。また、シリカを混合しているので、従来の酸化チタンより流動性が高く、静電潜像現像用トナーに外添した際、該トナーの流動性を向上させる効果も大きい。従って、本発明の高流動性酸化チタンは静電潜像現像用トナーの外添剤として最適なものといえる。
【0022】
本発明の高流動性酸化チタンを外添剤とする静電潜像現像用トナーとしては、磁性一成分トナー、非磁性一成分トナー、2成分トナーなどのいずれのトナーにも使用でき、トナーの構成成分に関しては既知のものを任意に使用することができる。
【0023】
本発明の高流動性酸化チタンの静電潜像現像用トナーへの添加量は0.1〜3質量%(トナー樹脂100質量部に対して高流動性酸化チタン0.1〜3質量部)が好ましく、0.2〜2質量%が特に好ましい。本発明の高流動性酸化チタンの添加量が0.1質量%より少ない場合は、静電潜像現像用トナーの流動性が充分に向上せず、3質量%より多い場合は、トナーからの遊離粒子が増加する傾向がある。
【実施例】
【0024】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、以下に挙げる実施例は単に例示のために記すものであって、本発明の範囲がこれによって制限されるものではない。
【0025】
実施例1
平均一次粒子径15nmの酸化チタン(テイカ社製MT―150A)1000gをトルエン3000gに分散し、その酸化チタンに対し16質量%のイソブチルトリメトキシシランを添加した後、酸化チタン粒子が合一しないように強力な分散処理を行い、その後、乾燥、解砕して疎水性の酸化チタンを得た。
上記のようにして疎水化処理した酸化チタンに対して、平均一次粒子径7nmの気相法シリカ(アエロジル社製#300)を5質量%加え、V型ブレンダー(入江商会社製VK―5)にて20分間混合処理(回転数44rpm)を行い、高流動性酸化チタンを得た。なお、上記の気相法シリカとは気相法で製造されたシリカのことである。
【0026】
実施例2
酸化チタンの疎水化処理にあたり、イソブチルトリメトキシシランに代えてオクチルトリエトキシシランを用い、平均一次粒子径7μmの気相法シリカ(アエロジル社製♯300)に代えてジメチルジクロロシランで疎水化処理した平均一次粒子径12nmの気相法シリカ(アエロジル社製R974)を酸化チタンに対して1質量%混合した以外は、実施例1と同様にして高流動性酸化チタンを得た。
【0027】
実施例3
酸化チタンの疎水化処理にあたり、イソブチルトリメトキシシランに代えてアミノプロピルトリエトキシシランとオクチルトリエトキシシランをそれぞれ8質量%ずつ用い、酸化チタンに対する気相法シリカの混合量を5質量%から10質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして高流動性酸化チタンを得た。
【0028】
実施例4
平均一次粒子径15μmの酸化チタン(テイカ社製MT−150A)に代えて平均一次粒子径35nmの酸化チタン(テイカ社製MT―500B)を用い、その疎水化処理にあたり、イソブチルトリメトキシシランに代えてデシルトリメトキシシランを用い、その使用量を16質量%から8質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして高流動性酸化チタンを得た。
【0029】
実施例5
平均一次粒子径7μmの気相法シリカ(アエロジル社製♯300)に代えて平均一次粒子径30nmの気相法シリカ(アエロジル社製♯50)を用い、その酸化チタンに対する混合量を15質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして高流動性酸化チタンを得た。
【0030】
実施例6
酸化チタンの疎水化処理にあたり、イソブチルトリメトキシシランに代えて3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いた以外は、実施例1と同様にして高流動性酸化チタンを得た。
【0031】
実施例7
酸化チタンの疎水化処理にあたり、イソブチルトリメトキシシランに代えてヘキサメチルジシラザンを用いた以外は、実施例1と同様にして高流動性酸化チタンを得た。
【0032】
実施例8
酸化チタンの疎水化処理にあたり、イソブチルトリメトキシシランに代えてジメチルポリシロキサンを用いた以外は、実施例1と同様にして高流動性酸化チタンを得た。
【0033】
実施例9
酸化チタンの疎水化処理にあたり、イソブチルトリメトキシシランに代えてステアリン酸アルミニウムを用いた以外は、実施例1と同様にして高流動性酸化チタンを得た。
【0034】
比較例1
シリカを添加しなかった以外は、実施例1と同様に行った。
【0035】
比較例2
平均一次粒子径15nmの酸化チタン(テイカ社製MT−150A)に代えて平均一次粒子径270nmの酸化チタン(テイカ社製JR)を用い、イソブチルトリメトキシシランの添加量を16質量%から3質量%に変更した以外は、実施例1と同様に行った。
【0036】
比較例3
平均一次粒子径7nmの気相法シリカ(アエロジル社製♯300)に代えて平均一次粒子径80nmの液相法シリカ(東ソー・シリカ社製)を用いた以外は、実施例1と同様に行った。
【0037】
比較例4
イソブチルトリメトキシシランによる酸化チタンの疎水化処理を行わず、未処理の親水性酸化チタン(テイカ社製MT―150A)をそのまま用いた以外は、実施例1と同様に行った。
【0038】
比較例5
気相法シリカの混合を酸化チタンの疎水化処理工程中で行う以外は、実施例1と同様に行った。
【0039】
比較例6
気相法シリカの混合量を5質量%から10質量%に変更した以外は、比較例5と同様に行った。
【0040】
試験例:
上記のようにして得られた実施例1〜9の高流動性酸化チタンおよび比較例1〜6の酸化チタンについて、疎水化度、流動性、ブローオフ帯電量を調べ、かつそれらを用いて擬似トナーを作製し、その流動性を調べた。その結果を表1に示す。
【0041】
上記疎水化度、流動性、ブローオフ帯電量の測定方法および擬似トナーの作製方法、その流動性の測定方法は以下に示す通りである。
【0042】
疎水化度:
粉体濡れ性試験機「WET―100P(レスカ社製)」を使用して、下記の方法で測定した。
250mlのトールビーカーに純水70mlを入れ、測定サンプル(測定試料)0.03gを水面上に浮かべる。スターラーにより300rpmで攪拌しながら、定量ポンプでメタノールを2.6ml/minで滴下し、この溶液の透過率を測定する。この溶液の透過率が最小となった時点のメタノール濃度を疎水化度の測定値とする。
【0043】
流動性:
粉粒体流動性測定装置「API エアロフロー(TSI Incorporated 社製)」を使用して下記の方法で測定した。
測定サンプルを60ml計量カップに計り取り、専用の円筒容器中に静かに入れる。上記円筒容器の回転速度を1/240rpmに調節(円筒容器の回転速度を240秒で一回転するように調節)し、480秒間測定を行った。
本装置は円筒容器中の粉体の雪崩現象の時間間隔および雪崩回数を透過光の強度より算出するようになっており、測定結果は平均雪崩時間間隔(秒)と雪崩回数(回)で表示され、平均雪崩時間間隔が短く、雪崩回数が多いサンプル程、流動性が良いと判断できる。表1には雪崩回数のみ表示する。
【0044】
ブローオフ帯電量:
ブローオフ粉体帯電量測定装置「TB―200(東芝ケミカル社製)」を使用して下記の方法で測定した。
測定サンプル0.4gとフェライト96gをポリプロピレン製の容器に計り取り、2軸のローター上で100rpmの回転速度で15分間回転させたのち、その混合物0.05gを500メッシュの金網上に計り取り、下記条件でブローオフ帯電量を測定する。
(窒素ブロー圧:0.5kg/cm、ブロー時間:20秒)
なお、測定サンプルはそれぞれ3水準の環境下(L/L、M/M、H/H)に12時間暴露後に測定した。
表1中のL/L、M/M、H/Hの温・湿度は、それぞれ次の通りである。
L/L:10℃、20% M/M:20℃、50% H/H:30℃、80%
【0045】
擬似トナーの作製:
スチレンアクリル系トナー樹脂「ハイマーSB305(三洋化成工業社製)」をジェット気流式の粉砕機で粉砕、分級してトナー樹脂を作製した。そのトナー樹脂100質量部に対し、実施例1〜9の高流動性酸化チタンおよび比較例1〜6の酸化チタンをそれぞれ別々に1質量%ずつ添加して擬似トナーを作製した。その擬似トナーの流動性を前記した実施例1〜9の高流動性酸化チタンなどの流動性の測定方法と同様の方法により測定した。
【0046】
なお、表1には高流動性酸化チタンの製造にあたって使用した酸化チタンやシリカの粒子径、酸化チタンに対するシリカの混合量を示しているが、その粒子径は平均一次粒子径をスペース上の関係で簡略化して表示したものであり、そのシリカの混合量を示す%はスペース上の関係で質量%を簡略化して表示したものである。
【0047】
【表1】

【0048】
表1に示すように、実施例1〜9の高流動性酸化チタンは、流動性評価の指標となる雪崩回数が70以上であって、比較例1〜6の酸化チタンに比べて、雪崩回数が多く、流動性が優れていた。また、擬似トナーを作製した場合も、実施例1〜9は、比較例1〜6に比べて、雪崩回数が多く、流動性が優れていた。このことから、実施例1〜9の高流動性酸化チタンは、静電潜像現像用トナーに外添剤として添加したときに、その流動性の向上に寄与することが明らかである。また、表1に示すように、実施例1〜9の高流動性酸化チタンは、ブローオフ帯電量でのL/L、M/M、H/H間の差が小さく、帯電性能の環境変動が小さいことを示していた。従って、実施例1〜9の高流動性酸化チタンは、静電潜像現像用トナーの外添剤として有用であると考えられる。なお、ブローオフ帯電量による帯電性能の環境安定性の判断は、L/Lのブローオフ帯電量値とH/Hのブローオフ帯電量値との差をM/Mのブローオフ帯電量値で割った値によって行われ、その値が小さい方が帯電性能の環境変動が小さく、帯電性能の環境安定性が優れていると判断される。
【0049】
また、表1に示す結果から明らかなように、シリカを混合しなかった比較例1、粒子径の大きい酸化チタンを用いた比較例2、粒子径の大きいシリカを用いた比較例3、疎水化処理をしていない比較例4、シリカの混合を酸化チタンの疎水化処理工程中で行った比較例5〜6は、いずれも流動性が悪く、また、比較例1、比較例2、比較例4は、ブローオフ帯電量の差が大きく、帯電性能の環境変動が大きいものと推定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物で疎水化処理した平均一次粒子径が5〜100nmの酸化チタンに、気相法で製造された平均一次粒子径が5〜40nmのシリカを、酸化チタンに対してシリカが0.5〜20質量%の割合で、乾式混合処理したことを特徴とする高流動性酸化チタン。
【請求項2】
前記有機物で疎水化処理した酸化チタンが、酸化チタンに対して5〜50質量%の有機物で疎水化処理されていることを特徴とする請求項1記載の高流動性酸化チタン。
【請求項3】
前記有機物が、含ケイ素有機物であることを特徴とする請求項1または2記載の高流動性酸化チタン。
【請求項4】
含ケイ素有機物が、アルコキシシラン、シランカップリング剤、シラザンおよびシリコーンオイルから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項3記載の高流動性酸化チタン。
【請求項5】
粉粒体流動性測定装置により1/240rpm、480秒間の条件下で測定した雪崩回数が、70以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高流動性酸化チタン。
【請求項6】
平均一次粒子径が5〜100nmの酸化チタンを非水系で有機物により疎水化処理を行う工程、疎水化処理した酸化チタンを解砕処理する工程、上記処理後の酸化チタンに、気相法で製造された平均一次粒子径が5〜40nmのシリカを、酸化チタンに対してシリカが0.5〜20質量%の割合で、乾式混合処理することを特徴とする高流動性酸化チタンの製造方法。
【請求項7】
V型ブレンダーにより乾式混合処理することを特徴とする請求項6記載の高流動性酸化チタンの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の高流動性酸化チタンを外添剤として添加したことを特徴とする静電潜像現像用トナー。

【公開番号】特開2006−195025(P2006−195025A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−4705(P2005−4705)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(000215800)テイカ株式会社 (108)
【Fターム(参考)】