説明

高温ガス炉用被覆燃料粒子製造装置用ガス導入ノズル

【課題】 従来よりも反応容器内への被覆原料ガスの供給が安定且つ均一で、高品質の被覆燃料粒子が製造できる高温ガス炉用被覆燃料粒子製造装置用ガス導入ノズルの提供。
【解決手段】 二酸化ウラン燃料粒子を収容した反応容器内に被覆原料ガスを噴出供給して燃料粒子を流動させながら加熱による熱分解反応によって燃料粒子の表面を被覆原料分子の蒸着層で被覆するガス導入ノズルにおいて、反応容器の底部に嵌合されて容器底面中央部の少なくとも一部を構成する皿状ノズル本体と、該本体を貫通して容器底面上に開口するガス導入経路と、前記反応容器底部に嵌合状態にあるノズル本体の裏面側で反応容器外の被覆原料ガス供給源から反応容器まで延びるガス供給配管の端部に連通してガス導入経路へ被覆原料ガスを供給する円筒状のガス流入口とを備え、ガス導入経路は一つのガス流入口から複数に分岐して容器底面上の予め定められた分散位置に開口するものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高温ガス炉の装荷燃料を構成する被覆燃料粒子の製造装置に関するものであり、詳しくは、被覆層形成のための流動床からなる反応容器へガスを導入するためのノズルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高温ガス炉は、燃料を含む炉心構造を熱容量が大きく高温健全性の良好な黒鉛で形成し、ヘリウム等の高温下でも化学的反応の起こらないガス冷却材を用いることにより、固有の安全性が高く、高い出口温度のヘリウムガスを取り出すことの可能な原子炉であり、得られる約900℃の高温熱は、発電はもちろんのこと水素製造や化学プラント等幅広い分野での熱利用を可能にするものである。
【0003】
このような高温ガス炉の燃料は、通常、ウランを含む溶液を出発原料として製造した二酸化ウランをセラミックス状に焼結した直径約350〜650μmの燃料粒子を基本構造とし、この燃料粒子の外表面に複数の被覆層を形成してなる被覆燃料粒子を用いたものである。
【0004】
高温ガス炉では、例えば、第1被覆層として密度約1g/cmの低密度熱分解炭素層を形成し、第2被覆層として密度約1.8g/cmの高密度熱分解炭素層を形成し、さらに第3被覆層として密度約3.2g/cm炭化珪素(SiC)層を、また第4被覆層として密度約1.8g/cmの高密度熱分解炭素層を形成した計4層の被覆を施されたものが一般的となっている。
【0005】
第1被覆層は、ガス状の核分裂生成物のガス留めとしての機能及び燃料粒子の変形を吸収する緩衝部としての機能を併せ持つものである。また第2被覆層はガス状核分裂生成物の保持機能を有し、第3被覆層は固体状核分裂生成物の保持機能を有すると共に、被覆層の主要な強度部材である。第4被覆層は、第2被覆層と同様のガス状核分裂生成物の保持機能と共に第3被覆層の保護層としての機能も持っている。
【0006】
上記のような被覆燃料粒子の一般的なものは直径約500〜1000μmである。被覆燃料子は黒鉛母材中に分散させ一定形状の燃料コンパクトの形に成型加工され、さらに黒鉛でできた筒にコンパクトを一定数量入れ、上下に栓をした燃料棒の形にされる。最終的に燃料棒は、六角柱型黒鉛ブロックの複数の挿入口に入れられ、この六角柱型黒鉛ブロックを多数個、ハニカム配列に複数段重ねて炉心を構成している。
【0007】
一般的な被覆燃料粒子となる被覆前の燃料粒子は次のような工程で製造されており、大量形成が可能な方法として振動滴下によるゲル状の粒子を得る外部ゲル化法が多く用いられている。即ち、まず酸化ウランの粉末を硝酸に溶かし硝酸ウラニル原液とし、この硝酸ウラニル原液に純水、添加剤を加え撹拌することにより滴下原液とする。添加剤は、滴下された硝酸ウラニルの液滴が落下中に自身の表面張力により真球状になるようにする増粘剤であると同時にアンモニウムとの接触により原液をゲル化せしめるために添加されるものであり、例えばポリビニルアルコール樹脂、アルカリ条件下でゲル化する性質を持つ樹脂、ポリエチレングリコール、メトローズなどを挙げることができる。
【0008】
以上のように調製された滴下原液は所定の温度に冷却され粘度を調整した後、細径の滴下ノズルを振動させることによりアンモニア水溶液中に滴下される。アンモニア水溶液中へ液滴となって入った原液は、硝酸ウラニルがアンモニアと十分に反応させられると同時に前記添加剤がゲル化され、重ウラン酸アンモニウム(ADU)を含むゲル状の粒子となる。得られたADUゲル粒子は、大気中で焙焼され、水分および添加剤が除去されて三酸化ウラン粒子となり、さらに還元・焼結されることにより高密度のセラミックス状二酸化ウランからなる球状の燃料粒子となる。
【0009】
この燃料粒子を用いた被覆燃料粒子の製造は、流動床からなる反応装置を用いて行われている。例えば、燃料粒子を流動床の反応容器内に投入し、ガス導入管を介して反応容器の底部に設けられたガス導入ノズルから被覆原料ガスを噴出させて燃料粒子を流動させながら被覆原料ガスの熱分解により、原料分子を燃料粒子の表面に蒸着させることによって被覆層を形成する方法が挙げられる(例えば、特許文献1参照。)。
【0010】
例えば、第1被覆層の低密度炭素層の場合は約1400℃でアセチレン(C)を熱分解して被覆を施し、第2および第4被覆層の高密度熱分解炭素層の場合は約1400℃でプロピレン(C)を熱分解して行う。第3被覆層のSiC層の場合は約1600℃でメチルトリクロロシラン(CHSiCl)を熱分解して被覆する。
【0011】
【特許文献1】特開平5−273374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記の如き従来の反応装置においては、被覆原料ガスは一つのガス流入口からガス導入ノズル内に入り、その一つのノズル開口から反応容器内に導入されるが、ガス導入ノズルは、断面ラッパ形状をしているため、被覆原料ガスの噴出は外周方向ほど弱くなって反応容器内への被覆原料ガスの供給が不安定、不均一となり、燃料粒子の流動および被覆層の形成を均一に行うことが困難となり、結果として均一な被覆燃料粒子が得られないという恐れがあった。また、第3被覆層の形成においてはガス導入口にSiCの堆積物が徐々に成長するため、被覆反応時間が長くなるほどその堆積物が増大してノズル開口が閉塞していき、長時間に亘る被覆反応が不可能であり、第3被覆層の厚さを25μm以上に形成することが難しかった。
【0013】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、従来よりも反応容器内への被覆原料ガスの供給が安定且つ均一で、高品質の被覆燃料粒子が製造できる高温ガス炉用被覆燃料粒子の製造装置用ガス導入ノズルを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係る高温ガス炉用被覆燃料粒子製造装置用ガス導入ノズルは、二酸化ウラン燃料粒子を収容した反応容器内に被覆原料ガスを噴出供給して燃料粒子を流動させながら加熱することにより被覆原料ガスの熱分解反応よって燃料粒子の表面を被覆原料分子の蒸着層で被覆する高温ガス炉用被覆燃料粒子製造装置用ガス導入ノズルにおいて、
前記反応容器の底部に嵌合されて容器底面中央部の少なくとも一部を構成する皿状ノズル本体と、該皿状ノズル本体を貫通して容器底面上に開口するガス導入経路と、前記反応容器底部に嵌合状態にあるノズル本体の裏面側で反応容器外の被覆原料ガス供給源から反応容器まで延びるガス供給配管の端部に連通して前記ガス導入経路へ被覆原料ガスを供給する円筒状のガス流入口と、を備え、
前記ガス導入経路は、一つのガス流入口から複数に分岐して容器底面上の予め定められた分散位置に開口するものである。
【0015】
また、請求項2に記載の発明に係る高温ガス炉用被覆燃料粒子製造装置用ガス導入ノズルは、請求項1に記載の高温ガス炉用被覆燃料粒子製造装置用ガス導入ノズルにおいて、前記複数のガス導入経路の開口は、それぞれ反応容器底面の中心軸位置とその複数段の同心円周上に等角度間隔で配置されているものである。
【0016】
また、請求項3に記載の発明に係る高温ガス炉用被覆燃料粒子製造装置用ガス導入ノズルは、請求項2に記載の高温ガス炉用被覆燃料粒子製造装置用ガス導入ノズルにおいて、前記複数のガス導入経路の開口は、同一円周上の開口は互いに同じ開口面積を有し、外周に位置する開口の開口面積が内周に位置する開口の開口面積より大きいことを特徴とするものである。
【0017】
さらに、請求項4に記載の発明に係る高温ガス炉用被覆燃料粒子製造装置用ガス導入ノズルは、請求項1〜3いずれか1項に記載の高温ガス炉用被覆燃料粒子製造装置用ガス導入ノズルにおいて、前記皿状ノズル本体が、反応容器底面と連続する凹曲面を有するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明における高温ガス炉用被覆燃料粒子製造装置用ガス導入ノズルによれば、前記反応容器の底部に嵌合されて容器底面中央部の少なくとも一部を構成する皿状ノズル本体を貫通して容器底面上に開口するガス導入経路が一つの円筒状ガス流入口から複数に分岐してそれぞれ反応容器底面上の所定の分散位置に開口するものであり、この反応容器底面の中央部に分散された複数個の開口から被覆原料ガスが噴出されるため、断面ラッパ形状のガス導入経路を一つ備えた従来のガス導入ノズルに比べて、被覆原料ガスの反応容器内への供給は全体的に均一となるので、燃料粒子の流動だけでなく燃料粒子表面に形成される被覆層も均一となり、得られる被覆燃料粒子も高品質で均一なものになるという効果がある。
【0019】
特に、第3被覆層として、SiC層を形成する際に発生するSiCの堆積物も複数のガス導入経路の開口に分散されるため、各開口における堆積物の成長はその開口を塞ぐほど進行することもないため、被覆原料ガスの供給が妨げられる危険も回避できるので従来は困難であった長時間に亘る被覆反応による厚みの大きい第3被覆層の形成も可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、二酸化ウラン燃料粒子を収容した反応容器内に被覆原料ガスを噴出供給して燃料粒子を流動させながら加熱することにより被覆原料ガスの熱分解反応よって燃料粒子の表面を被覆原料分子の蒸着層で被覆する高温ガス炉用被覆燃料粒子製造装置用ガス導入ノズルが、反応容器の底部に嵌合されて容器底面中央部の少なくとも一部を構成する皿状ノズル本体を有するものであり、この皿状ノズル本体を貫通して容器底面上に開口するガス導入経路が、前記嵌合状態にあるノズル本体の裏面側で反応容器外の被覆原料ガス供給源から反応容器まで延びるガス供給配管の端部に連通する一つの円筒状ガス流入口から複数に分岐して容器底面上の予め定められた分散位置に開口するものである。
【0021】
従って、本発明のガス導入ノズルにおいては、反応容器底面の中央部に分散された複数個の開口から被覆原料ガスが噴出されるため、断面ラッパ形状のガス導入経路を一つ備えた従来のガス導入ノズルに比べて被覆原料ガスの反応容器内への供給は全体的に均一となるので、燃料粒子の流動だけでなく形成される被覆層も均一となり、品質が良好で均一な被覆燃料粒子を得ることができる。
【0022】
さらに、SiC層からなる第3被覆層の形成工程においては、被覆原料ガスの供給が複数のガス導入経路に分散されるため、発生するSiCの堆積物も複数の開口に分散されることになり、各開口における堆積物の成長はその開口を塞ぐほど進行することもなく、被覆原料ガスの供給が妨げられる恐れも回避できるので、SiC層被覆反応も長時間に亘って維持でき、例えば25μm以上という従来は困難であった厚みの大きい第3被覆層の形成も可能となる。
【0023】
また、複数のガス導入経路の開口位置は、反応容器内への被覆原料ガスの供給をより均一にするために、反応容器底面の皿状ノズル本体が占める中央部領域全域に亘ってできるだけ均等に分散することが望ましく、例えば、中心軸位置とその複数段の同心円周上に等角度間隔で配置する構成が最も簡便な設計でありながら均一な被覆原料ガスの供給が行える。
【0024】
また、被覆原料ガスの噴出供給は、通常、反応容器内で円筒状ガス流入口の中心軸位置から外周方向へ向かうほど弱くなっていくことから、複数のガス導入経路の開口も、同一円周上のものは互いに同じ開口面積を有し、外周に位置するものは内周に位置するものより開口面積を大きく設定することにより、外周側へのガス噴出供給を中心部領域と同程度として全体的により均一な被覆原料ガスの供給を可能とすることができる。
【0025】
なお、ガス導入経路のガス流入口からの分岐方向は、外側のものほど中心から外周方向へ放射状に延びるものとするのが好ましい。これは、外側のガス導入経路の開口から供給される被覆原料ガスの噴出が反応容器内の外周方向に向かうので、本来被覆原料ガスの供給が弱い外周側領域へ充分なガスが供給され、容器全体へのガス供給がより均一にできるためである。
【0026】
また、皿状ノズル本体は、燃料粒子が開口上に留まることなく転動し易いように凹曲面を有するものとするのが好ましいが、このとき、皿状ノズル本体の表面を含む反応容器底面の全体が同一の凹曲面となるように互いに連続する凹曲面とするのが最適である。
【0027】
なお、本発明のガス導入ノズルは、長期の使用においては閉塞や損傷等が生じることもあり、その場合、反応容器底部に着脱可能に取り付けられるものとすれば、ノズルのみを交換できる。このように着脱可能に取り付ける構成の場合、嵌合状態で供給される被覆原料ガスの漏れがないように密閉性が高い機構のものを採用する。
【0028】
例えば、円筒状のガス流入口を利用して、円筒状部の内周面に雌ねじ加工を施し、反応容器底部の被覆原料ガス供給配管端部との連結部の下流側に該雌ねじ加工と螺合する雄ねじ加工を形成しておき、両者の螺合で密閉性高いガス導入ノズルの取り付け状態を得ることができる。もちろん、ねじの螺合によるものに限らず、その他にも密閉性の高い嵌合状態が得られる着脱可能な取り付け機構なら広く採用可能であり、特に限定するものではない。
【実施例】
【0029】
本発明の一実施例による高温ガス炉用被覆燃料粒子製造装置用ガス導入ノズルを図1に示す。(a)は本ガス導入ノズルを上方から見た概略平面図、(b)は本ガス導入ノズルの概略側断面図である。本ガス導入ノズル1は、例えば図2に示すような高温ガス炉用被覆燃料粒子製造装置10の流動床からなる反応容器11の底部12にその容器底面の一部中央領域を構成して嵌合されるように着脱可能に取り付けられるものである。
【0030】
このガス導入ノズル1は、円形の皿状ノズル本体2とその裏面に装置外の被覆原料ガス供給源から延びるガス供給配管20の端部側と連通する円筒状のガス流入口3とから主に構成されるものであり、皿状ノズル本体2は、中心軸Aが反応容器11と同軸となるように容器底部12に嵌合され、その嵌合状態において、容器底面と連続する凹曲面を有している。従って、皿状ノズル本体2の表面を含む反応容器11の底面全体で椀状の凹曲面が形成されている。
【0031】
なお本実施例においては、装置10のガス供給配管20との連結配管13の容器側端部に円筒状ガス流入口3が嵌め込まれることによってガス導入ノズル1が容器底部12に取り付けられるものとした。この取り付け機構としては、例えば連結配管13の容器側端部外周に雄ねじ加工部14を設け、ガス流入口3の円筒内周面に連結配管13の雄ねじ加工部14に螺合する雌ねじ加工6を施し、両者を螺合させることによって密閉性の高い取り付け状態を得ることができる。
【0032】
この場合、両者の螺合を解除するだけでガス導入ノズル1を容器底部12から容易に取り外すことができるので、ガス導入ノズル1の閉塞や損傷の際にノズル1だけを簡便に交換することができる。
【0033】
また、皿状ノズル本体2には、図1に示すように、該本体を貫通する複数のガス導入経路(4a,4b,4c)が円筒状のガス流入口3の中心軸位置から外周方向へ放射状に分岐するように形成されており、容器底面上の所定分散位置で開口している。これらの開口は、中心軸A上と、複数段の同心円周上の配置で設けられている。
【0034】
本実施例では、中心軸A上に一つの開口5aと、内側の第1同心円周B上に互いに同じ形状サイズの4つの開口(5b)を、外側の第2同心円周C上に互いに同じ形状サイズの4つの開口(5c)をそれぞれの円周上で等角度間隔に配置する設計とし、反応容器底面の中央領域を構成する皿状ノズル本体2の表面上にこれらの開口(5a,5b,5c)を均一に分散させる構成とした。
【0035】
さらに、外側に配置される開口ほど内側のものより開口面積が大きくなる構成とした。従って、通常は反応容器内で円筒状ガス流入口の中心軸から外周方向へ向かうほど被覆原料ガスの供給が弱くなっていくが、本実施例のガス導入ノズル1では、外周へ位置するものほど開口面積を大きくしていくことによってガス噴出供給量を中心軸Aのガス噴出供給の強い開口5aと同程度にして反応容器11内への被覆原料ガスの供給を全体的により均一なものにできる。
【0036】
上記の如き構成を備えた構成のガス導入ノズル1において、外径100mm、厚さ30mmの皿状ノズル本体2に、内径26mm、外径40mm、高さ15mmの円筒状ガス流入口3から9本に分岐したガス導入経路(4a,4b,4c)が形成され、中心軸A位置に内径3mmの開口5aと直径12mmの第1の同心円周B上に内径3mmの4つの開口5bとを有すると共に直径40mmの第2の同心円周C上に内径4mmの4つの開口5cを有しているガス導入ノズル1を図2の反応容器11に取り付けて二酸化ウラン燃料粒子への被覆層形成反応を以下の通り行った。
【0037】
まず、反応容器11内に平均直径0.6mmの二酸化ウラン燃料粒子を約3.8kg投入し、容器内温度約1400℃にてアセチレンガスをガス導入ノズル1を介して容器内へ供給して低密度炭素層からなる第1被覆層を形成した後、約1400℃でプロピレンを供給して口密度熱分解炭素層からなる第2被覆層を形成した。次いで、約1600℃でメチルトリクロロシランを供給してSiC層からなる第3被覆層を形成し、最後に約1400℃でプロピレンを供給して高密度熱分解炭素層からなる第4被覆層を形成した。
【0038】
得られた4層の被覆燃料粒子の平均直径は0.93mmであり、各層の厚さは、第1被覆層が0.06mm、第2被覆層が0.03mm、第3被覆層が0.03mm、第4被覆層が0.045mmでそれぞれ非常に均一であった。また、従来のガス導入ノズルにおいて厚さ0.025mmの第3被覆層を形成した場合にはその開口にSiC堆積物が幅約10mmにまで成長して殆ど開口を塞いでしまっていたのに対して、本実施例のガス導入ノズル1によれば、上記のように厚さ0.03mmの第3被覆層を形成した後であっても、ガス導入ノズル1のガス導入経路の各開口5の堆積物の大きさは幅約2mm程度に抑制でき、開口は閉塞されることなく、次に続く被覆層形成反応に支障は生じ無かった。
【0039】
以上の実施例においては、中心軸A位置と2段の同心円周上の4カ所ずつに開口(5a、5b、5c)が位置するように9つのガス導入経路(4a,4b,4c)を設けた場合を示したが、本発明のガス導入ノズルは、この構成に限らず、3段以上の同心円周上にそれぞれ開口するもの、また各円周上に4つ以上開口するガス導入経路を形成するなど、実際の反応容器のサイズやガス供給量に応じてガス導入ノズル毎にガス導入経路の数、開口位置などを適宜選択すれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の一実施例による高温ガス炉用被覆燃料粒子製造装置用ガス導入ノズルの概略構成図であり、(a)は概略平面図、(b)は概略側断面図である。
【図2】本実施例のガス導入ノズルが取り付けられる高温ガス炉用被覆燃料粒子製造装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0041】
1:ガス導入ノズル
2:皿状ノズル本体
3:ガス流入口
4a,4b,4c:ガス導入経路
5,5a,5b,5c:開口
6;雌ねじ加工
10:高温ガス炉用被覆燃料粒子製造装置
11:反応容器
12:容器底部
13:連結配管
14:雄ねじ加工部
20:ガス供給配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化ウラン燃料粒子を収容した反応容器内に被覆原料ガスを噴出供給して燃料粒子を流動させながら加熱することにより被覆原料ガスの熱分解反応によって燃料粒子の表面を被覆原料分子の蒸着層で被覆する高温ガス炉用被覆燃料粒子製造装置用ガス導入ノズルにおいて、
前記反応容器の底部に嵌合されて容器底面中央部の少なくとも一部を構成する皿状ノズル本体と、該皿状ノズル本体を貫通して容器底面上に開口するガス導入経路と、前記反応容器底部に嵌合状態にあるノズル本体の裏面側で反応容器外の被覆原料ガス供給源から反応容器まで延びるガス供給配管の端部に連通して前記ガス導入経路へ被覆原料ガスを供給する円筒状のガス流入口と、を備え、
前記ガス導入経路は、一つのガス流入口から複数に分岐して容器底面上の予め定められた分散位置に開口することを特徴とする高温ガス炉用被覆燃料粒子製造装置用ガス導入ノズル。
【請求項2】
前記複数のガス導入経路の開口は、それぞれ反応容器底面の中心軸位置とその複数段の同心円周上に等角度間隔で配置されていることを特徴とする請求項1に記載の高温ガス炉用被覆燃料粒子製造装置用ガス導入ノズル。
【請求項3】
前記複数のガス導入経路の開口は、同一円周上の開口は互いに同じ開口面積を有し、外周に位置する開口の開口面積が内周に位置する開口の開口面積より大きいことを特徴とする請求項2に記載の高温ガス炉用被覆燃料粒子製造装置用ガス導入ノズル。
【請求項4】
前記皿状ノズル本体が、反応容器底面と連続する凹曲面を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高温ガス炉用被覆燃料粒子製造装置用ガス導入ノズル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−64439(P2006−64439A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244804(P2004−244804)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000165697)原子燃料工業株式会社 (278)
【Fターム(参考)】