説明

高温性能を目的としたフルオロシリコーンエラストマー

安定剤を含有するフルオロシリコーンエラストマーベース組成物が開示され、高温性能が改良された硬化フルオロシリコーンエラストマーを提供する。安定剤は、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化鉄および任意に酸化亜鉛を含む。安定剤は、Oリング、コネクターおよび自動車ホース構成のための硬化フルオロシリコーンエラストマーの製造に特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、合衆国特許出願番号60/933921(2007年6月8日出願)および合衆国特許出願番号61/038120(2008年3月20日出願)の優先権を請求する。
【0002】
この開示は、高温性能が改良された硬化フルオロシリコーンエラストマーを提供する、安定剤を含有するフルオロシリコーンエラストマーベース組成物に関する。安定剤は、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化鉄および任意に酸化亜鉛を含む。安定剤は、Oリング、コネクター、および自動車ホース構成のための硬化フルオロシリコーンエラストマーの製造に特に有用である。
【背景技術】
【0003】
フルオロシリコーンゴムを利用する自動車用途では性能の改良を実証するために絶え間ない努力を必要とする。技術動向は耐熱性および耐化学薬品暴露性の両方をいつも増大させる要求になる。例えば、西ヨーロッパではガソリン車を犠牲にしてターボディーゼル乗用車の著しい成長を示し続けている。米国では、同じような成長が小型トラック市場で経験されている。ホース、特にターボディーゼルエンジンホースの使用温度は増大しつつある。同様に耐燃料性および耐油性の改良も求められている。典型的には、自動車用途に使用されるホースは、シリコーンゴム(米国材料試験協会(ASTM)によりVMQエラストマーと分類される)で封止された繊維補強材を含み、内面にフルオロエラストマー(FVMQ)でライニングした多層構造を有する。一般的に、フルオロシリコーンエラストマー(FVMQ)の熱安定性はシリコーンエラストマー(非フルオロ含有シリコーンエラストマーまたはVMQのようなゴムである)よりも少ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車用途に使用されている、ならびに特にOリング、コネクターにおよびホース構成に使用されるフルオロシリコーンエラストマーの熱安定性を改良することが必要とされている。熱安定剤、例えばセリウム水和物または水酸化セリウムなどはシリコーンエラストマー処方に耐熱性を与えることは知られているが、より高温での耐熱性を改良することが必要とされている。さらに、車の実用温度でそのようなフルオロシリコーンエラストマーの耐油性を改良することが必要とされている。双方の改良は、フルオロシリコーンエラストマーの特定の性能基準、例えば引張り強さおよび伸びを保持しながら、求められる。
【0005】
本発明者らは、シリコーンエラストマーベース組成物に添加されたとき、従来の熱安定剤を用いた同種のシリコーンエラストマーと対比して改良された熱劣化特性を硬化シリコーンエラストマーに与える安定剤を見出した。シリコーンエラストマーがフルオロシリコーンエラストマーベースである場合、その安定剤組成物はフルオロシリコーンエラストマーの改良された耐熱劣化性および耐油性を与える。改良されたフルオロシリコーンエラストマーは特に種々の自動車用途、例えばOリング、コネクターまたはシリコーンゴムベースのターボチャージャーホース用の内面ライナーに有用である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
A)70から95重量%のフルオロシリコーンエラストマーベース、
B)B1)カーボンブラック、
2)炭酸カルシウム、
3)酸化鉄、および
4)任意に、酸化亜鉛
を含む1.5〜40重量%の安定剤であって、安定剤100重量部中に使用される成分B1、B2、B3および任意のB4の量は2〜50重量部まで変化する安定剤、および
C)0.1〜3重量%の硬化剤
を含み、ただし、成分A)、B)およびC)の重量%は合計して100重量%となる硬化性フルオロシリコーンエラストマー組成物に関する。
【0007】
一つの実施態様では、前記フルオロシリコーンエラストマーベースが;
1)パーフルオロアルキルポリジオルガノポリシロキサン、
2)補強性充填剤、
3)任意の非フッ素化ポリジオルガノポリシロキサン
4)水酸化セリウムまたはセリウム水和物、および
5)任意の接着促進剤
を含む。
【0008】
本開示は、硬化フルオロシリコーンエラストマー組成物、その製造方法、および硬化フルオロシリコーンエラストマーから製造された製品にも関する。
【0009】
本開示は、さらに、硬化フルオロシリコーンエラストマーの熱安定性を改良する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[フルオロシリコーンエラストマーベース]
本開示における成分A)はフルオロシリコーンエラストマーベースである。本明細書で用いられる「フルオロシリコーンエラストマーベース」は、後に硬化または加硫されるとフルオロシリコーンエラストマーまたはゴムとなるシリコーン組成物である。シリコーンは、(R3SiO0.5)、(R2SiO)、(RSiO1.5)、または(SiO2)シロキシ単位(式中、Rは任意の一価有機基でよい)から独立して選択されるシロキサン単位を含有するオルガノポリシロキサンをさす。これらのシロキシ単位は種々の方法で組み合わせられて環状、直鎖状または分岐状構造を形成する。本明細書で用いられるフルオロシリコーンは、Rfと表示されるパーフルオロアルキル基のような少なくとも1個のR置換基がフッ素原子を有するオルガノポリシロキサンをさしている。
【0011】
一つの実施態様では、成分A)が;
1)パーフルオロアルキルポリジオルガノポリシロキサン、
2)補強性充填剤、
3)任意の非フッ素化ポリジオルガノポリシロキサン
4)水酸化セリウムまたはセリウム水和物、および
5)任意の接着促進剤
を含むフルオロシリコーンエラストマーベースであり得る。各成分については下記に詳述される。
【0012】
フルオロシリコーンエラストマーベースは当該技術分野において知られており、パーフルオロアルキルポリジオルガノシロキサン(A1)、補強性充填剤(A2)および任意に非フッ素化ポリジオルガノシロキサン(A3)を含む。典型的には、A1中、少なくとも90モルパーセントの、パーフルオロアルキル含有ポリオルガノシロキサン繰り返し単位が式RfCH2CH2(CH3)SiO2/2で記載され、10モルパーセントまでの繰り返し単位が式R12SiOで記載される。Rfは1〜10個の炭素原子を含有するパーフルオロアルキル基であり、各R1はメチル、フェニルおよびビニルから独立して選ばれる。パーフルオロアルキル基は典型的にCF3、C25、C37、C49、C715およびC1021である。パーフルオロアルキル含有ポリジオルガノシロキサンの末端基はヒドロキシルまたはトリオルガノシリル、例えばトリメチルシリルまたはジメチルビニルシリルである。繰り返し単位および/または末端基の選択は、フルオロシリコーンエラストマーベースと硬化フルオロシリコーンエラストマーに変化させるための所望の硬化反応によって決まる。例えば、エラストマーベースが、オルガノ水素シロキサン−付加反応触媒の組合せまたはビニル特定触媒で硬化されるときは、末端基またはポリジオルガノシロキサン繰り返し単位はアルケニル基、例えばビニル基等を含むことになる。パーフルオロアルキル含有ポリジオルガノシロキサンは、典型的に液状フルオロシリコーンエラストマーベースに関して1000Pa・s以上の粘度を有し、あるいは高コンシステンシーフルオロシリコーンエラストマーベースに関してガム状稠度を有するように、10,000Pa・sを超える粘度を有する。本方法および組成物に有用なパーフルオロアルキル含有ポリジオルガノシロキサンは市販されている。本発明で有用な一つのパーフルオロアルキル含有ポリジオルガノシロキサンは米国特許第3,179,619号に記載されている。これらポリジオルガノシロキサンの他の製造方法は米国特許第3,002,951号に記載されている。後者の米国特許は、環状シロキサントリマーからケイ素原子結合パーフルオロアルキル基を有する高分子量パーフルオロアルキル含有ポリジオルガノシロキサンの製造方法を教示する。この後者の米国特許に使用される環状シロキサントリマーは米国特許第2,979,519号に示されている。パーフルオロアルキル含有ポリジオルガノシロキサンの別の製造方法は米国特許第3,274,153号、米国特許第3,294,740号および米国特許第3,373,138号で公開されている。
【0013】
パーフルオロアルキル含有ポリジオルガノシロキサンはホモポリマーもしくはコポリマーの単一型でもよく、または種々のホモポリマー、コポリマーもしくはホモポリマーとコポリマーとの混合物でもよい。典型的には、パーフルオロアルキル含有ポリジオルガノシロキサンは、ヒドロキシル末端封鎖またはビニル末端封鎖ポリメチル−(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン(ここで、繰り返し単位の少なくとも99モルパーセントはメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシロキシである)である。
【0014】
硬化性フルオロシリコーンエラストマー組成物中のパーフルオロアルキル含有ポリジオルガノシロキサンの量は、変わり得るが、典型的には、組成物の50〜95重量パーセント、あるいは60〜90重量パーセント、あるいは70〜85重量パーセントまでである。
【0015】
本フルオロシリコーンエラストマーベースの補強性充填剤は典型的にはシリカである。多くの形状のシリカが市販されており、例えばヒュームドシリカ、沈殿シリカ、シリカエーロゲル、シリカキセロゲルなどがある。典型的には、補強性シリカ充填剤は少なくとも100m2/gの表面積、あるいは少なくとも200m2/gの表面積を有する。補強性シリカ充填剤は、他のエラストマー特性に悪い影響を与えることなく所望の補強を与える任意の量で添加することができる。通常、パーフルオロアルキル含有ポリジオルガノシロキサン100部あたり補強性シリカ充填剤5〜100部の量が有用である。従って、硬化性フルオロシリコーンエラストマー組成物は2.5〜47.5重量パーセントの補強性充填剤を含み得る。
【0016】
典型的には、補強性シリカ充填剤は抗クレープ剤で処理される。この薬剤は、補強性シリカ充填剤をパーフルオロアルキル含有ポリジオルガノシロキサンに添加する前にシリカを処理するために添加しても、またはパーフルオロアルキル含有ポリジオルガノシロキサンが補強性シリカ充填剤と混合されている間に補強性シリカ充填剤をその場で処理するために添加されてもよい。抗クレープ剤の例として、以下のものおよびそれらの混合物:シラン、例えばトリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシランおよび3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン;シラザン、例えばテトラメチルジビニルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、およびテトラメチルジ(3,3,3−トリフルオロプロピル)ジシラザン;環状シロキサン、例えば環状ジオルガノシロキサン;ならびに低分子量ポリジオルガノシロキサン、例えばヒドロキシル末端封鎖ポリジメチルシロキサン、ヒドロキシル末端封鎖ポリメチルビニルシロキサン、ヒドロキシル末端封鎖ポリメチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン、ならびにこれらシラン、シラザンまたはシロキサンのコポリマーが挙げられる。好ましい抗クレープ剤は低分子量ポリジオルガノシロキサンおよびシラザンである。抗クレープ剤はクレープ硬化を減じ、かつエラストマーの特性に悪い影響を与えない任意の量で添加することができる。典型的な量はフルオロシリコーンエラストマーベースの0.1〜15重量パーセントの範囲である。
【0017】
成分A3)は任意の非フッ素化ポリジオルガノシロキサンである。典型的には、任意の非フッ素化ポリジオルガノシロキサンはポリジオルガノシロキサンガムまたはポリマーである(ここで、ケイ素原子に結合した全有機置換基の少なくとも50パーセントはメチル基である)。ポリジオルガノシロキサンの他の有機置換基はビニルまたはフェニル基でもよい。存在する場合、ビニル基はケイ素結合置換基の全数の2.5パーセント以下で含むべきである。成分(A3)の例として、ジメチルビニルシロキシ末端ジメチルポリシロキサン、メチルビニルシロキサンとジメチルシロキサンとのジメチルビニルシロキシ末端コポリマー、メチルビニルシロキサンとジメチルシロキサンとのシラノール末端コポリマー、メチルフェニルシロキサンとジメチルシロキサンとのジメチルビニルシロキシ末端コポリマー、メチルフェニルシロキサンとメチルビニルシロキサンとジメチルシロキサンとのジメチルビニルシロキシ末端コポリマー、ジフェニルシロキサンとジメチルシロキサンとのジメチルビニルシロキシ末端コポリマー、ジフェニルシロキサンとメチルビニルシロキサンとジメチルシロキサンとのジメチルビニルシロキシ末端コポリマーを挙げることができる。
【0018】
ポリジオルガノシロキサンガムまたはポリマーの選択は、フルオロシリコーンエラストマーベースの稠度によって決定される。典型的にはポリジオルガノシロキサンポリマーは、フルオロシリコーンエラストマーベースの液体形態に添加されるが、高コンシステンシーフルオロシリコーンベース形態はポリジオルガノシロキサンガムまたはポリマーの両方に利用することができる。典型的には、ポリジオルガノシロキサンガムはウィリアム可塑度計で測定して少なくとも100mm/100の可塑度を有し、あるいはガムは125〜185mm/100の範囲内の可塑度を有する。
【0019】
成分A4)は水酸化セリウムまたはセリウム水和物である。熱安定性のためにシリコーンエラストマー組成物への水酸化セリウムまたはセリウム水和物の添加は公知である。しかし、そのような組成物は、典型的に200℃までの熱安定性に限られていた。本安定剤組成物(成分B)は、水酸化セリウムまたはセリウム水和物のような従来の熱安定剤と一緒に使われると、典型的に200℃を超えて熱安定性を与える。成分A4として有用な水酸化セリウムまたはセリウム水和物は式Ce(OH)4・xH2O(CAS登録番号12014−56−1)を有するセリウム化合物がある。水酸化セリウムまたはセリウム水和物の量は変わり得るが、典型的には、シリコーンエラストマー組成物の0.1〜10重量%までの間である。最も均一かつ最適に混合することを確実にするために、典型的に水酸化セリウムまたはセリウム水和物成分の「マスターバッチ」が成分A4と一部のフルオロシリコーンベースまたは非フッ素化ポリジオルガノシロキサン(A1またはA3)成分と混合して調製される。マスターバッチ化された水酸化セリウムまたはセリウム水和物成分はその後フルオロシリコーンエラストマー組成物に加えることができる。そのようなマスターバッチ化された組成物は市販されかつ本組成物に有用なものとして、SILASTIC(登録商標)HT−1改質剤(ダウコーニングコーポレーション、米国ミシガン州ミッドランド)がある。
【0020】
成分A5)は任意の接着促進剤である。それが用いられる場合、接着促進剤はシリコーン組成物に添加され、フルオロシリコーンエラストマーと、ホース組立品のような製品中の他のゴムまたはエラストマーとの接着性を改良する。あるいは、接着促進剤は製品中の他の組成物または成分に添加することができる。例えば、多層ホース構造体では、接着促進剤は、開示された硬化フルオロシリコーンエラストマー組成物に接触するシリコーンゴム成分に添加することもできる。接着促進剤は、一般式(Me3SiO)(MeHSiO)x(RfCH2CH2(Me)SiO)y(SiMe3)(式中、xおよびyは1〜200、あるいは5〜100、あるいは10〜50であり得、Meはメチルであり、かつRfは上記に定義されているように1〜10個の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基である)を有するフルオロ変性オルガノ水素ポリシロキサンから選ぶことができる。成分A5として好適な市販のフルオロ変性オルガノ水素ポリシロキサンには、SYL−OFF(登録商標)Q2−7560架橋剤およびSYL−OFF(登録商標)SL−7561架橋剤(ダウコーニングコーポレーション、米国ミシガン州ミッドランド)が挙げられる。組成物中の接着促進剤の量は変わり得るが、典型的に全体の0〜10重量パーセント、あるいは0.5〜5重量パーセントである。
【0021】
フルオロシリコーンエラストマーベースは、二酸化チタン、石英、酸化マグネシウム、グラファイト、ガラス繊維およびガラスミクロスフェアのような増量充填剤も含むことができる。フルオロシリコーンエラストマーベースは、顔料、着色剤、難燃付与剤、追加の熱安定性添加剤、圧縮永久ひずみ改良添加剤およびゴム分野で一般に使用される他の添加剤も含むことができる。
【0022】
本開示で有用な、代表的なフルオロシリコーンエラストマーベースは米国特許第3,179,619号;米国特許第4,882,368号;米国特許第5,081,172号および米国特許第5,171,773号に教示されており、それら特許は全体として本明細書に援用される。
【0023】
あるいは、予め製造され市販されているフルオロシリコーンエラストマーベースを使用してもよい。そのようなフルオロシリコーンエラストマーベースの代表的な非限定例として、SILASTIC(登録商標)FL40−9201、FL30−9201、LS−2840、LS2380U、LS−2860、LS−2380およびLS5−2040(ダウコーニングコーポレーション、米国ミシガン州ミッドランド)が挙げられる。
【0024】
[安定剤]
本開示における成分B)は安定剤組成物である。本明細書で用いられる「安定剤」とは、硬化性シリコーンエラストマー組成物に、硬化シリコーンエラストマー組成物の熱安定性または耐油性のいずれかを改良する目的で添加される成分(B1、B2、B3、および任意にB4)のある組み合わせをさす。安定剤成分は:
1)カーボンブラック、
2)炭酸カルシウム、
3)酸化鉄、および
4)任意に、酸化亜鉛
を含む。各成分は下記に詳細に説明される。
【0025】
成分B1はカーボンブラックである。カーボンブラックの種類および源は変わり得る。本発明において成分(B1)として有用なカーボンブラックの代表的な非限定例は、この種の材料項目の概要、例えばChemical Economics Handbook−SRI International 2005,カーボンブラック731.3000Aに見ることができる。典型的には、カーボンブラックは、無定形で、少なくとも98%のカーボン含量、0.05マイクロメートルの平均粒子径、少なくとも44m2/gの比表面積を有する。本開示で成分B1として好適なカーボンブラックの代表的な非限定例として、SUPERJET(登録商標)カーボンブラック(LB−1011)(供給先:エレメンティス・ピグメント社、米国62208イリノイ州フェア−ビュー・ハイツ);SR511(供給先:シッド・リカードソン・カーボン社、米国44333オハイオ州アクロン、スイーツ420、ウエスト・マーケット・ストリート3560);およびN330、N550、N762、N990(デグッサ・エンジニア・カーボン社、米国ニュージャージー州パーシップパニィ)が挙げられる。
【0026】
成分B2)は炭酸カルシウムである。炭酸カルシウムの種類および源は変わり得る。本発明において成分(B2)として有用な炭酸カルシウムの代表的な非限定例は、この種の材料項目の概要、例えばChemical Economics Handbook−SRI International 2007,炭酸カルシウム724.6000Aに見ることができる。典型的には、炭酸カルシウムは99%より多いCaCO3であり、平均粒径が5〜6マイクロメートルである。本開示で成分B2として好適な炭酸カルシウムの代表的な非限定例として、OMYA BLP(登録商標)3(OMYA、フランス国オルゴン)が挙げられる。
【0027】
成分B3)は酸化鉄である。酸化鉄の種類および源は変わり得る。本発明において成分(B3)として有用な酸化鉄の代表的な非限定例は、この種の材料項目の概要、例えばChemical Economics Handbook−SRI International 2008,無機着色顔料575.3000Aに見ることができる。酸化鉄は、0.2マイクロメートルの平均粒子径を有し、少なくとも95%のFe23を含有する微粉化されたパウダーである。本開示で成分B3として好適な酸化鉄の代表的な非限定例として、Baryferrox(登録商標)130BM(ランセス・ドイツ(Lanxess Deutschland)社、ドイツ国レベルクセンD−51369)が挙げられる。
【0028】
成分B4)は酸化亜鉛である。酸化亜鉛の種類および源は変わり得る。本発明において成分(B4)として有用な酸化鉄の代表的な非限定例は、この種の材料項目の概要、例えばChemical Economics Handbook−SRI International 2007,無機亜鉛化学薬品798.1000Aに見ることができる。典型的には酸化亜鉛は少なくとも99%のZnOであり、0.1マイクロメートルの平均粒径および9.0m2/gの平均表面積を有する。本開示で成分B4として好適な酸化亜鉛の代表的な非限定例として、Kaddox911(ホースヘッド社、米国15061ペンシルベニア州モナカ)が挙げられる。
【0029】
安定剤B)に用いられる各成分の量は、以下;
1)カーボンブラック、2〜50部、あるいは10〜40部、あるいは25〜40部、あるいは30〜35部、
2)炭酸カルシウム、2〜50部、あるいは10〜40部、あるいは25〜40部、あるいは、30〜35部、
3)酸化鉄、2〜50部、あるいは10〜40部、あるいは25〜40部、あるいは30〜35部、
4)酸化亜鉛、0〜50部、あるいは1〜40部、あるいは1〜10部
のように変化し得る。ここで、部は安定剤100重量部中のB1、B2、B3およびB4各成分の量を重量で表している。
【0030】
硬化性フルオロシリコーンエラストマー組成物に用いられる安定剤の量(それは成分B1、B2、B3、およびB4の合計重量である)は全硬化性フルオロシリコーンエラストマー組成物の1.5〜40重量%、あるいは5〜30重量%、あるいは10〜20重量%まで変わり得る。
【0031】
安定剤の各成分を硬化性フルオロシリコーンエラストマー組成物にどのように加え、混合するかについての方法は変わり得る。例えば、成分B1〜B3および任意のB4の混合物を最初に作り、フルオロシリコーンエラストマーベース組成物に混ぜ合わせることができる。あるいは、各成分を個々に任意の順序で硬化性フルオロシリコーンエラストマー組成物に直接添加、混合することができる。最も均一かつ最適な混合を確実にするために、典型的に各安定剤成分の「マスターバッチ」が、個々の安定剤成分をフルオロシリコーンベース(A1またはA3)成分の一部と混ぜることにより製造される。マスターバッチ化された安定剤成分はその後フルオロシリコーンエラストマー組成物に加えることができる。マスターバッチ手法は、特にカーボンブラック、酸化鉄および酸化亜鉛の添加に有用である。特定の用途に必要とされる安定剤の量は、フルオロシリコーンゴムベース(A)の選択、安定剤組成物(B)の選択、熱安定性要求事項および硬化フルオロシリコーンエラストマーの製造に選択される方法に基づいて、ゴム業者により容易に決定される。熱安定剤組成物はフルオロシリコーンゴムベースの加工性に影響を与えるかもしれない。しかし、本安定剤に類似する添加成分について加工性に影響を与えるそのような要因を克服するための技術はよく知られている。そのような技術として、シリコーンエラストマーベース中の、それら成分の濃度、粒子形状、および表面活性を変えることが挙げられる。
【0032】
[C)硬化剤]
硬化剤は、安定剤を含有するフルオロシリコーンエラストマーベースに、硬化フルオロシリコーンエラストマーの形成をもたらすため添加される。好ましい硬化剤はシリコーン分野では硬化剤としてよく知られている有機過酸化物である。本発明の方法に従って使用可能で、好適な過酸化物の具体例として:2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン;ベンゾイルペルオキシド;ジクミルペルオキシド;t−ブチルペルオキシO−トルアート;環状ペルオキシケタール;t−ブチルヒドロペルオキシド;t−ブチルペルオキシピバラート;ラウロイルペルオキシド;t−アミルペルオキシ2−エチルヘキサノアート;ビニルトリス(t−ブチルペルオキシ)シラン;ジ−t−ブチルペルオキシド、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン;ジ−(2,4−ジクロロベンゾイル)ペルオキシド;2,2,4−トリメチルペンチル−2−ヒドロペルオキシド;2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキシン−3、t−ブチル−ペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノアート;クメンヒドロペルオキシド;t−ブチルペルオキシベンゾアート;およびジイソプロピルベンゼンモノヒドロペルオキシドが挙げられる。有機過酸化物の量は重要な意味を持つものではない。実用的な量は安定剤を含有するフルオロシリコーンエラストマーベースの0.1〜3重量%の範囲である。
【0033】
安定剤を含有するフルオロシリコーンエラストマーベースは、当技術分野で知られている他の硬化剤、例えばオルガノ水素ポリシロキサン/付加反応触媒の組合せによっても硬化可能である。この組み合わせのオルガノ水素ポリシロキサンは各1分子中に少なくとも2個のケイ素結合水素原子を含有しなければならない。オルガノ水素ポリシロキサンの例として、トリメチルシロキシ末端ジメチルシロキサンメチル水素シロキサンコポリマー、水素ジメチルシロキシ末端ジメチルシロキサンメチル水素シロキサンコポリマーおよび類似する化合物が挙げられる。分子構造は直鎖、分岐または環状でもよく、重合度(DP)は少なくとも2であるべきである。付加反応触媒の例として、白金および白金化合物触媒、例として白金黒、クロロ白金酸、四塩化白金、クロロ白金酸/オレフィン錯体、クロロ白金酸/メチルビニルシロキサン錯体および類似の化合物;または上記の白金もしくは白金化合物触媒を含有するミクロ粒子状熱可塑性物質触媒;ロジウム化合物およびコバルトカルボニルが挙げられる。
【0034】
一つの実施態様では、硬化性フルオロシリコーンエラストマー組成物は:
1)50〜90重量%のパーフルオロアルキルポリジオルガノポリシロキサン、
2)2.5〜47.5重量%の補強性充填剤、
3)0.1〜5重量%の非フッ素化ポリジオルガノポリシロキサン、
4)0.1〜10重量%の水酸化セリウムまたはセリウム水和物、および
1)1〜6重量%、あるいは2〜5重量%、あるいは3〜5重量%のカーボンブラック、
2)1〜6重量%、あるいは2〜5重量%、あるいは3〜5重量%の炭酸カルシウム、
3)1〜6重量%、あるいは2〜5重量%、あるいは3〜5重量%の酸化鉄、ならびに
C)0.1〜3重量%の硬化剤
を含む、ただしすべての成分の重量%は合計して100重量%である。各成分は上記されている。他の実施態様は、硬化性フルオロシリコーンエラストマー組成物が、上記したように、平均式
(Me3SiO)(MeHSiO)x(RfCH2CH2(Me)SiO)y(SiMe3
を有するフルオロ変性オルガノ水素ポリシロキサンから選ばれる接着促進剤をさらに含む。
【0035】
フルオロシリコーンエラストマーベースを硬化するための温度範囲は、室温またはそれ以上でもよい。好ましい温度範囲は50℃〜250℃である。温度範囲は用いた触媒を活性化するのに十分な温度範囲でなければならない。
【0036】
硬化フルオロシリコーンエラストマーは、上記詳述したフルオロシリコーン組成物を混合し、組成物を所望の形状に成形し、そして加硫して硬化フルオロシリコーンエラストマーを生じさせることにより製造することができる。
【0037】
フッ素化シリコーンエラストマー組成物は所望の形状に適する方法、例えば圧縮成形、射出成形、トランスファー成形、カレンダー加工および押出しによって形成することができる。
【0038】
所望の形状に形成後、形成されたフルオロシリコーンエラストマーは加硫され、組成物の硬化をもたらす。フルオロシリコーンエラストマー組成物が有機過酸化物加硫剤を含んでいるなら、組成物は有機過酸化物触媒を活性化するのに十分高い温度に加熱して加硫される。成形時は、温度は典型的に15分以下の時間で100℃〜180℃である。押出工程のように熱風中で硬化させる場合、空気温度は10〜60秒のように短い暴露時間で300℃のような高温でもよい。
【0039】
本開示の硬化フルオロシリコーンエラストマーは、燃料、オイルおよび高温での劣化に曝された後の物理特性の保持改良を示す。
【0040】
一つの実施態様では、硬化フルオロシリコーンエラストマー組成物は少なくとも7MPaの引張り強さおよび少なくとも200%の伸びを有する。
【0041】
一つの実施態様では、硬化フルオロシリコーンエラストマー組成物の引張り強さは、硬化フルオロシリコーンエラストマーの225℃で7日間の加熱劣化でも25パーセント超えて減少しない。
【0042】
一つの実施態様では、硬化フルオロシリコーンエラストマー組成物の引張り強さは、175℃で7日間の硬化フルオロシリコーンエラストマーのモーターオイルへの暴露でも15%を超えて減少しない。
【0043】
一つの実施態様では、硬化フルオロシリコーンエラストマーの伸びは、225℃で7日間の硬化フルオロシリコーンエラストマーの熱劣化でも25%を超えて減少しない。
【0044】
一つの実施態様では、硬化フルオロシリコーンエラストマーの伸びは、175℃で7日間の硬化フルオロシリコーンエラストマーのモーターオイルへの暴露でも25%を超えて減少しない。
【0045】
硬化エラストマー組成物は、種々の用途で、以下に限定されないが、自動車、船舶および航空機を含む運輸;化学および石油プラント;電気;電線およびケーブル;食品加工装置;原子力発電所;航空宇宙;医療用途;オイルおよびガス掘削産業ならびにその他用途が挙げられる応用分野での使用向けに、以下に限定されないが、Oリング、ガスケット、コネクター、シール、ライナー、ホース、チューブ、ダイヤフラム、ブーツ、弁、ベルト、ブランケット、コーティング、ロール、成形品、押出シート、チョーク、および押出品によって例示される各種の製品を作るために有用である。
【0046】
本発明のプロセスにしたがって製造される硬化フルオロシリコーンエラストマーは、高温燃料、高温オイルおよび高温への暴露後の物理特性の保持改善をします。フッ素化シリコーンエラストマーは例えばホース、ガスケット、ダイヤフラム、ベルト、コーティング、およびシールなど、自動車エンジンに見られるような燃料、潤滑油および高温に曝される用途に有用である。
【0047】
硬化フッ素化シリコーンエラストマーは、Oリング、コネクターならびに自動車およびトラックエンジンに用いるホース、特にターボディーゼルエンジンホースの製造に特に有用である。典型的には、ターボチャージャーホースはシリコーンゴム(VMQ)および補強繊維の層から、フルオロエラストマー(FVMQ)の内部ライナーとともに構成されている。本開示の硬化フルオロシリコーンエラストマー組成物は特にターボチャージャーホースの内面ライナーを構成する有用な材料である。
【実施例】
【0048】
これらの実施例は、本発明を当業者に例証することを意図しており、請求項に記載された発明の範囲を限定するように解釈してはならない。すべての測定および実験は別段の表示がない限り、23℃で行われた。
【0049】
【表1】

【0050】
[処方]
すべての試験処方は「ベースライン1」処方に基づき、それに含まれる成分の割合は一定に保たれた。したがって、試験処方では、四つの評価される添加剤のいずれかが、単品または任意の組合せで、このベースライン1に添加された。ベースライン1の処方は次の成分を含んでいた:
LS−2840 45部
LS−2380U 50
4−4736 5
HT−1 MB 1
Dicup 40C 1
【0051】
これは、「ベースライン1、1.72%CB、3.88%FeO3MB、1.81%CaCO3」中、処方のベースライン1の部は全処方の92.59%(上記に与えられた割合で)および組み合わされた添加剤7.41%を構成していることを意味する。
【0052】
[コンパウンディング]
すべての成分について、ツープレイス実験室用天秤(2 place laboratory balance)を用いて目標重量の2%以内になるように秤量された。実験用2本ロール混練機がすべての処方および製造されたマスターバッチを混ぜ合わせるために使用された。混練機は加熱されず、混合された材料の温度は常に50℃以下に保たれた。
【0053】
Kadox911、LB−1011、およびBLP3の粉末のマスターバッチが最初に二本ロール混練機(リライアブル社)を用いて混合された。これは、試験処方に導入する前に粉末の良好な分散を確実にするためであった。フルオロシリコーンゴム(LS−2840)が、マスターバッチのキャリアとして用いられた。それはすべての処方の主成分であったので、一つ以上のマスターバッチの一部として処方に導入された如何なるLS−2840も使途が説明されており、そして必要とされたストレートのLS−2840の量を効果的に減少させた。
【0054】
マスターバッチを混合するために、LS−2840が高速のロール上に帯状に巻き付けられ、添加剤が添加され、ゴム中に組み入れられるまで混合した。材料は切り剥がされ、巻き上げ、その後端を上に向けて混練機を通して、再度巻き付けられた。材料は、同様に9回以上、切り剥がされ、通されて、巻き付けられた。すべてのマスターバッチは、大気中からの水分を吸収できないことを確実にするためにシールされたプラスチック包装バッグ内に入れられた。
【0055】
すべての試験処方もまた実験用2本ロール混練機を用いて混ぜ合わせられた。すべての試験処方の二つの主成分、LS−2840およびLS−2380Uは投入され、高速ロールに巻き付けられた。その後、Dicup 40C過酸化物を除いた他のすべての成分が投入され、組み入れられるまで混合させられた。材料は、ロールから切り取られ、巻き上げられ、ロールに通されて、再度ロールの周りに巻き付けられた。材料は、その後同様に4から6回以上、切り剥がされ、通され、巻き付けられた。
【0056】
本材料はその後再度混練機に通され、巻き付けられた。その後に、過酸化物が添加され、組み入れられるまで混合させられた。材料は、ロールから切り取られ、巻き上げられ、ロールに通されて、再度ロールの周りに巻き付けられた。材料は、その後同様に9回以上、切り剥がされ、通され、巻き付けられた。その後、材料は広げられたニップ隙間を用いた混練機を通して、成形により適したおよそ0.100”厚の材料の連続シートを得た。
【0057】
[成形]
試験厚板に成形するために用いた装置は、二枚の12”×12”×0.040”のアルミニウム支持板、支持板両方ともPTFE繊維補強フィルムで覆われており、および12”×12”のスチールチェース(10”×10”×0.075”である空洞部を有する)から構成されていた。予め混練機からシート状にされた材料は、チェースに適切に充填量の重量を確かなものにするために秤量された。材料は最初にコールドプレスされた後、170℃に加熱されたプレスに2,100psiの圧力で10分間置かれた。
【0058】
10分の終了時、材料は直ちにチェースから取り外され、冷たいスチール製作業台の上で冷却された。冷却後、識別番号および成形条件を厚板上に書き、タルクの薄いコーティングがその表面に試験中に厚板同士または他の厚板との密着を防ぐためにまぶされた。
【0059】
[試験方法]
すべての材料は試験される前に熱風循環オーブン中で200℃の温度で4時間、後硬化された。
【0060】
<硬さ>
ASTM D2240に基づくダウコーニング社内試験法0099
【0061】
<引張り強さ、伸び、モジュラス>
ASTM D412に基づくダウコーニング社内試験法0137A
【0062】
<引裂き強さ>
ASTM D624に基づくダウコーニング社内試験法1313
【0063】
<熱劣化>
試験片が通常の試験用のように作製された。それらは厚さが測定され、予め加熱された熱風循環オーブンの中に所定の試験期間試験片の端でぶら下げられた。試験片は、各試験片のすべての側の周囲に良好な空気循環を確実にするために十分な間隔があけられた。その後、試験片は外されて、冷却され、特性計算のために劣化前の厚さを用いて16〜48時間内に引張りおよび引裂き試験法により試験された。
【0064】
<油劣化>
この試験の目的は、所定の期間加熱されたモーター油中に浸したときに、試験コンパウンドが受ける物理的劣化量を測定するためである。劣化後に試験された特性は引張り強さ、伸び、30%モジュラス、100%モジュラスおよび硬さであった。これら劣化後特性は上記の同じ試験方法を用いて測定され、劣化前の特性と比較して各変化の%を計算した。
【0065】
装置は、試験管ブロックヒーター、試験管および試験中に油蒸気の漏出を防ぐための水冷冷却器から構成されていた。合計3個の加熱ブロック、各ブロックは3本の試験管の収容数を有する、が使われ、よって9個の試験コンパウンドが一度に試験できた。限られた数(6)の熱電対が各試験管の実際の油温度を測定するのに使われた。これは、各加熱ブロックについて、3本の試験管のうちの二本について温度が測定できることを意味した。
【0066】
試験厚板が製造された。試験される各コンパウンドについて、3枚の引張り試験片が切り抜かれた。試験片はその後識別表示のために印/刻み目を付けられ、厚さが測られた。各試験片はまた体積膨潤の計算用に秤量された。すべての場合で、試験に使われた油は、試験前にガラス実験反応容器中150℃の温度で16時間予め劣化された。
【0067】
試験管は加熱されていない試験油(MA4、Total Oil Co.)で適当な量満たされた。各コンパウンドについて、3枚の試験片が、それぞれの全表面が油と完全に接触されるような方法でモノフィラメント釣り糸の短い長さでぶら下げられた。糸含有試験片が油で満たされた試験管に浸された。その際、冷却器が取り付けられたとき、試験片がしっかりと油中に吊り下げられるように、糸の尾部が試験管の外に残るようにされた。1本の糸だけが、試験中に異なるコンパウンド間で二次汚染が起きないことを確実にするために各試験管に入るようにされた。試験集合体は、予め指定された試験温度(175℃)に加熱された加熱ブロックに入れられた。劣化の間の油温度を監視するために、熱電対が冷却器と経由して、油中に装着された。
【0068】
設定期間(7日)後、試験片は外され、冷却され、その後それぞれの表面から少量のアセトンに浸したボロを用いて油をふき取った。その後に、試験片は膨潤量を測定するため秤量され、それぞれの硬さを測定された。試験片はその後劣化前の厚さを用いて、典型的な引張り試験で試験された。
【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
【表4】

【0072】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)70〜95重量%のフルオロシリコーンエラストマーベース、
B)B1)カーボンブラック、
2)炭酸カルシウム、
3)酸化鉄、
4)任意に、酸化亜鉛
を含む1.5〜40重量%の安定剤であって、安定剤100重量部中に使用される成分B1、B2、B3および任意のB4の量は、2〜50重量部まで変化する安定剤、および
C)0.1〜3重量%の硬化剤
を含み、ただし、成分A)、B)およびC)の重量%は合計して100重量%になる硬化性フルオロシリコーンエラストマー組成物。
【請求項2】
前記フルオロシリコーンエラストマーベースが;
1)パーフルオロアルキルポリジオルガノポリシロキサン、
2)補強性充填剤、
3)任意の非フッ素化ポリジオルガノポリシロキサン、
4)水酸化セリウムまたはセリウム水和物、および
5)任意の接着促進剤
を含む請求項1に記載の硬化性フルオロシリコーンエラストマー組成物。
【請求項3】
前記安定剤100部が、
10〜40部のB1)カーボンブラック、
10〜40部のB2)炭酸カルシウム、および
10〜40部のB3)酸化鉄
を含む請求項2に記載の硬化性フルオロシリコーンエラストマー組成物。
【請求項4】
1)50〜90重量%のパーフルオロアルキルポリジオルガノポリシロキサン、
2)2.5〜47.5重量%の補強性充填剤、
3)0.1〜5重量%の非フッ素化ポリジオルガノポリシロキサン、
4)0.1〜10重量%の水酸化セリウムまたはセリウム水和物、および
1)1〜6重量%のカーボンブラック、
2)1〜6重量%の炭酸カルシウム、
3)1〜6重量%の酸化鉄、および
C)0.1〜3重量%の硬化剤
を含み、ただし、すべての成分の重量%は合計して100重量%である請求項1に記載の硬化性フルオロシリコーンエラストマー組成物。
【請求項5】
平均式(Me3SiO)(MeHSiO)x(RfCH2CH2(Me)SiO)y(SiMe3)(式中、xおよびyは1から200までであり、Meはメチルであり、かつRfは1〜10個の炭素原子を含むパーフルオロアルキル基である)を有するフルオロ変性オルガノ水素ポリシロキサンから選ばれる接着促進剤をさらに含む請求項5に記載の硬化性フルオロシリコーンエラストマー組成物。
【請求項6】
i)請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物の混合物をある形状に成形すること、および
ii)形状化された混合物を加硫し、硬化フルオロシリコーンエラストマーを生成させること
を含む硬化フルオロシリコーンエラストマーの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法で製造された硬化フルオロシリコーンエラストマー。
【請求項8】
前記硬化フルオロシリコーンエラストマーが、少なくとも7MPaの引張り強さおよび少なくとも200%の伸びを有する請求項7に記載の硬化フルオロシリコーンエラストマー。
【請求項9】
前記硬化フルオロシリコーンエラストマーの引張り強さが、225℃で7日間の硬化フルオロシリコーンエラストマーの熱劣化で25%を超えて減少しない請求項7に記載の硬化フルオロシリコーンエラストマー。
【請求項10】
前記硬化フルオロシリコーンエラストマーの引張り強さが、175℃で7日間の硬化フルオロシリコーンエラストマーのモーターオイルへの暴露で15%を超えて減少しない請求項7に記載の硬化フルオロシリコーンエラストマー。
【請求項11】
前記硬化フルオロシリコーンエラストマーの伸びが、225℃で7日間の硬化フルオロシリコーンエラストマーの熱劣化で25%を超えて減少しない請求項7に記載の硬化フルオロシリコーンエラストマー。
【請求項12】
前記硬化フルオロシリコーンエラストマーの伸びが、175℃で7日間の硬化フルオロシリコーンエラストマーのモーターオイルへの暴露で25%を超えて減少しない請求項7に記載の硬化フルオロシリコーンエラストマー。
【請求項13】
前記硬化フルオロシリコーンエラストマーの引張り強さが、225℃で7日間の硬化フルオロシリコーンエラストマーの熱劣化で25%を超えて減少せず、
前記硬化フルオロシリコーンエラストマーの引張り強さが、175℃で7日間の硬化フルオロシリコーンエラストマーのモーターオイルへの暴露で25%を超えて減少せず、
前記硬化フルオロシリコーンエラストマーの伸びが、225℃で7日間の硬化フルオロシリコーンエラストマーの熱劣化で25%を超えて減少せず、かつ
前記硬化フルオロシリコーンエラストマーの伸びが、175℃で7日間の硬化フルオロシリコーンエラストマーのモーターオイルへの暴露で25%を超えて減少しない
請求項7に記載の硬化フルオロシリコーンエラストマー。
【請求項14】
請求項7〜13のいずれか一項に記載の硬化フルオロシリコーンエラストマーを含む製品。
【請求項15】
前記物品が、Oリング、ガスケット、シール、ライナー、ホース、ダイヤフラム、ブーツ、弁、ベルト、ブランケット、コーティング、ロール、成形品、押出シート、チョークおよび押出品から選択される請求項14に記載の製品。
【請求項16】
請求項7〜13のいずれか一項に記載の硬化フルオロシリコーンエラストマーを含む内部ライナーを備えたホース構造物。
【請求項17】
I)B1)カーボンブラック、
2)炭酸カルシウム、
3)酸化鉄、および
4)任意に、酸化亜鉛
を含む熱安定剤をフルオロシリコーンエラストマーベースおよび硬化剤と混合すること、
II)該熱安定剤を含有するフルオロシリコーンエラストマーベースを加硫すること
を含む硬化フルオロシリコーンエラストマーの熱安定性または耐熱性を改良する方法。

【公表番号】特表2010−529258(P2010−529258A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511345(P2010−511345)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【国際出願番号】PCT/US2008/066001
【国際公開番号】WO2008/154319
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(596012272)ダウ・コーニング・コーポレイション (347)
【Fターム(参考)】