説明

高温水用空冷式冷却器およびそれを用いた高温水用分析装置

【課題】冷却水ホースの折れ曲がりによる冷却水の漏水及び、冷却水不足による火傷を防止する。
【解決手段】従来の水冷式冷却器に替えてコイル状などの金属製チューブと空冷ファンとを含む空冷式冷却器を採用した高温水用空冷式冷却器およびそれを用いた高温水用分析装置を提供する。危険な高温水を簡易に安全に冷却することができ、しかも下流に自動分析機器を連結すれば、自動的に水質分析も行なえる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温水用空冷式冷却器およびそれを用いた高温水用分析装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、ボイラ水などの高温水を、冷却水を使用することなく、安全にサンプリングして冷却できる高温水用空冷式冷却器およびそれを用いた高温水用分析機器に関する。
【背景技術】
【0002】
産業界では多くの産業用ボイラが稼動している。これらのボイラを安全に、かつ安定して稼動させるためには、ボイラ水の水質を所定の範囲に保つことがJIS規格で定められている。このため、ボイラ水の水質を監視するため、ボイラからボイラ水を直接試料水としてサンプリングし、各種分析計で自動分析したり、手分析したりされている。
【0003】
サンプリングは、サンプリングポイントとしてのブロー管や試料採取用内管などから高温高圧状態のボイラ水を引き抜き、これを一定圧力・温度に減圧・冷却した後、所望する分析機器に供給される。分析項目としては、通常、pH、導電率、ヒドラジン、シリカ、塩化物イオンなどである。このようなボイラ水のサンプリングについては、JIS B 8224に規定されている。当該JISの図4.1によれば、ボイラからの試料水は採取後、水冷式冷却器に供給されて冷却される。
【非特許文献1】JIS B 8224 5頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような水冷式冷却器を使用すると、大量の冷却水を使用する必要があり、常設の熱交換器がない場合には、冷却水の取り回しが非常に長くなる、冷却水ホースの折れ曲がりによる冷却水の漏水、さらには冷却水不足による火傷の危険性がある、などの課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題を解決することを目的として開発されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一端には開口部が設けられ、他端には冷却ファンが設置された容器内に、高温水入口部と出口部とを有する金属製チューブが配設され、前記チューブ内の高温水が前記ファンにより供給されたガスにより所定温度まで冷却されるようになされた高温水用空冷式冷却器である。
【0007】
また、本発明は、流量調節弁を設けた高温水取出し口と、前記高温水空冷式冷却器の前記チューブの高温水入口部とが接続された高温水用空冷式冷却器である。
【0008】
さらに本発明は、前記高温水空冷式冷却器の前記チューブ出口と、水質分析機器とが接続された高温水用分析装置である。
【0009】
このような高温水の分析装置において、分析機器がpH、ORP(酸化還元電位)、電気伝導率、塩化物イオン、NaイオンおよびKイオンからなる群から選ばれた少なくとも1つを測定する装置である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の本発明によれば、ボイラ水などの高温水を安全に、しかも冷却水を必要とすることなく冷却することができる。従って、どのような工場であっても、冷却水の取り回しを必要とすることなく、また、排水の処分を考慮する必要もなく、高温水を適温まで冷却することができる。
【0011】
請求項2記載の本発明によれば、対象となる高温水の流量と前記冷却器との冷却温度のバランスが取れない場合、流量調節弁により、高温水量を適温まで冷却されるように調節することができる。
【0012】
請求項3記載の本発明によれば、前記高温水空冷式冷却器の前記チューブ出口と、分析機器とが直接接続されているため、冷却した高温水(試料水)の水質を自動または手動で分析することができる。
【0013】
そのような分析項目としては、pH、ORP、電気伝導率、Naイオン、Kイオン、または塩化物イオンなどをあげることができる。なお、必ずしも自動である必要はなく、手動で分析する場合には、前記に加えてヒドラジン、亜硫酸イオン、およびシリカ濃度なども分析項目としてあげることができる。
【0014】
このように、本発明によれば、人体への危険性が高い高温水を安全に取出し、冷却水を必要とすることなく高温水を適温まで冷却することができ、しかも、必要に応じて、pH、ORP、電気伝導率、塩化物イオン、Naイオン、Kイオンなどをそのまま自動分析することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の高温水用空冷式冷却器およびそれを用いた高温水用分析機器に関する実施の形態を、対象高温水としてボイラ水を例にして図1を用いて詳細に説明する。
【0016】
図1において、1はボイラ水取出し口、2は流量調節弁、5は上部が開口し、下部に冷却ファン4を配設されてなる容器、3は金属製チューブ、6は温度計、10は電極式電気伝導率計7を含む電気伝導率測定装置、11は電極式pH計8を含むpH測定装置、12は記録計、13は演算装置、9は排水槽を、それぞれ表わす。
【0017】
ボイラ装置(図示せず)には、通常サンプリングポイントとしてブロー管や試料採取用内管が設けられている。本発明では、このようなポイントから高温水であるボイラ水を採取する。採取頻度は分析が必要の都度とする。採取量も、分析に必要な量とする。
【0018】
採取されたボイラ水はボイラ水取出し口1を経由して流量調節弁2により、冷却後の高温水の温度が所望の温度となるように流量を調整して容器5内の金属製チューブ3の高温水入口部に送られる。なお、図示していないが、ボイラ水の水質(特に懸濁物質)に応じて、ボイラ取出し口1に簡単なフィルターを設けてもよい。
【0019】
容器5は金属製でも合成樹脂製でもよい。
【0020】
金属製チューブ3は腐食による閉塞を避ける意味ではSUS製が好ましいが、銅、真鍮など、他の材質を用いることもできる。このチューブはガス、例えば空気との熱交換率を上げるために、単管式のコイル状とすることが好ましいが、その他にジグザグ状、矩形状としてもよい。また、高温水入口部にヘッダーを設け、それを複数の直管状チューブに分流する方式としてもよい。
【0021】
単管式コイルの場合のチューブ径はボイラ水中に含まれる可能性のある鉄スラッジによる閉塞が発生せず、かつ高温水を十分冷却するためのチューブ中での滞留時間を確保するために、例えば、圧力0.7MPa程度のボイラでは内径0.8〜4mm、望ましくは内径1.0〜2.0mm程度とする。
【0022】
同様に、チューブ長さはボイラ圧力に応じて変化するが、通常1〜20m、望ましくは5〜10m程度とする。
【0023】
このような金属製チューブの外側はストレートでもよいが、フィンなどの凸状突起物を設けたものであってもよい。後者のチューブにおいては熱交換率が向上して好ましい。
【0024】
空冷ファンとしては、風量が0.1〜2m3/m程度のものが適当で、例えばDCファン(山洋電気株式会社製品)などが例示される。
【0025】
冷却に使用するガスは通常空気を使用するが、場合によっては、窒素ガスなどの不活性ガスを使用してもよい。
【0026】
なお、出口から排出される冷却された高温水(試料水)の温度を電極式温度計6で測定し、その値に基づいて、演算装置13を介して流量調節弁2を調節して高温水の供給量や空冷ファン4の風量を演算装置13によって算出してそれぞれ調節信号を出力し、高温水を所望の温度にすることができる。通常、このような温度は分析機器に影響を与えることが少ない温度である40℃以下、好ましくは30℃以下に設定する。
【0027】
本発明では、このように冷却された高温水(試料水)を一旦水槽に受けて、それを別所にある自動分析機器に供給したり、そのまま手動分析を行なってもよいが、図1の実施例では、さらに冷却された試料水を電極式電気伝導率計7を含む電気伝導率計10と電極式pH計8を含むpH計11に供給してそれぞれの水質を測定する。測定後の試料水は排水槽9に貯蔵する。一方、水質分析により得られたデータは記録計12に記録するとともに、演算装置13に送って演算させ、上記の制御信号を送る。
【0028】
このように接続することにより、危険性を伴う高温水の分析を、簡易に安全に行なうことができる。
【0029】
なお、分析を終えた後の試料水は排水槽に受けるように説明したが、試料水の量によっては、排水槽を設けずに、直接補給水槽などに返送することができる。
【実施例】
【0030】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0031】
図1に示した装置を用いて試験を行なった。対象ボイラは小型特殊ボイラ、容器は合成樹脂製、金属製チューブはSUS製とし、内径1.0mm、長さ5mのものを使用した。
【0032】
空冷ファン(DCファン)は風量が0.5m3/mとなるように運転し、流量調節弁は全開、外気温25℃の条件で運転した結果、サンプル温度は40℃となった。その後、pH計と電気伝導率計に通液してpHと電気伝導率とが計器に影響を与えることなく、簡単に測定された。
【0033】
このように、簡易に、かつ安全に高温水を冷却して分析することができた。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施例に係る装置を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に開口部が設けられ、他端に冷却ファンが設置された容器内に、高温水入口部と出口部とを有する金属製チューブが配設され、前記チューブ内の高温水が前記ファンにより供給されたガスにより所定温度まで冷却されるようになされたことを特徴とする高温水用空冷式冷却器。
【請求項2】
流量調節弁を設けた高温水取出し口と、前記高温水空冷式冷却器の前記チューブの高温水入口部とが接続されてなることを特徴とする請求項1記載の高温水用空冷式冷却器。
【請求項3】
前記高温水空冷式冷却器の前記チューブ出口と、水質分析機器とが接続されてなることを特徴とする請求項2記載の高温水用分析装置。
【請求項4】
分析機器がpH、ORP、電気伝導率、塩化物イオン、NaイオンおよびKイオンからなる群から選ばれた少なくとも1つを測定する装置であることを特徴とする請求項3記載の高温水用分析装置。

【図1】
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