説明

高温流体用軸封装置

【課題】高温流体を扱う場合にもメカニカルシール構成部材の冷却を効果的に行うことができる高温流体用軸封装置を提供する。
【解決手段】シールケース2を、本体部2aと第1及び第2保持部2d,2eと第1及び第2仕切部2f,2hと回転軸1の外周面との間に微小な環状通路27を形成する通路形成部2gとOリング保持部2iとからなる金属製の円筒状一体構造物に構成して、第1及び第2Oリング2m,2nを介して機器ハウジング8に取り付ける。本体部2aとOリング保持部2iとの間に形成され且つ機器ハウジング8で閉塞された冷却室28には、機器ハウジング8の冷却液給排路80,81により冷却液82が給排される。メカニカルシール3の密封環31,32が配置されたシールケース内領域A1と機器ハウジング内領域Aである高温流体領域とは、冷却室28の内周側部分2bにより区画されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温蒸気,ボイラ水等の高温流体を扱う回転機器(例えば、原子力発電システム等において使用される蒸気圧縮機,コンプレッサ,ブロワ,ポンプ,攪拌機等)に使用される高温流体用軸封装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の軸封装置にあっては、シール手段として回転軸に固定した回転密封環とシールケースにOリングを介して軸線方向移動可能に保持させた静止密封環との対向端面たる密封端面の相対回転作用によりシール機能を発揮するメカニカルシールが使用されているが、メカニカルシール構成部材の熱損等を防止するために、一般に、シールケースに水冷ジャケットやフラッシング通路等を設けて、密封環等のメカニカルシール構成部材を冷却するように工夫している(例えば、特許文献1〜3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−349443号公報
【特許文献2】WO2008/132958公報
【特許文献3】WO2008/142945公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、シールケースと静止密封環との間に二次シールするための密封環用Oリングやシールケースとこれが取り付けられる回転機器のハウジングとの間に介在されるケース用Oリング等のように被密封流体である高温流体が直接に接触するメカニカルシール部材については、上記したような冷却手段によっては十分に冷却することができず、種々のトラブルが発生しているのが実情である。例えば、密封環用Oリングに高温流体が接触すると、それがフッ素樹脂等の耐熱性材で構成されているものであっても、当該Oリングが劣化して静止密封環の二次シール機能や追従性が低下して、メカニカルシール機能が低下,喪失する虞れがある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、高温流体を扱う回転機器においてもメカニカルシール構成部材の冷却を効果的に行うことができ、良好なメカニカルシール機能を発揮することができる高温流体用軸封装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1に、機器ハウジングに取り付けられたシールケース内に、これを洞貫する回転軸に固定した固定密封環とこれに対向してシールケースにOリングを介して軸線方向移動可能に内嵌保持された静止密封環との対向端面である密封端面の相対回転作用によりシール機能を発揮するように構成されたメカニカルシールを配置してある高温流体用軸封装置において、シールケースを、厚肉円筒体である本体部と、その端部の内周縁部から機器ハウジング領域方向に一体的に延びる薄肉円筒体である第1保持部と、その端部から径方向内方に一体的に延びる薄肉円環状板である第2保持部と、その内周端部から径方向内方に一体的に延びる薄肉円環状板である第1仕切部と、その内周端部から機器ハウジング領域方向に一体的に延びる薄肉円筒体であって回転軸の外周面との間に微小な環状通路を形成する通路形成部と、その端部から径方向外方に一体的に延びる薄肉円環状板である第2仕切部と、その外周端部から径方向外方に一体的に延びる薄肉円環状板であって外径が本体部と一致するOリング保持部とを具備する金属製構造物に構成して、Oリング保持部の内外周端部と機器ハウジングのシール部との間に第1及び第2Oリングを介在した状態で、機器ハウジングに取り付けてあり、その本体部とOリング保持部との間に形成される凹部を機器ハウジングに設けた給排路形成部で閉塞された冷却室として、この冷却室に当該給排路形成部に形成された冷却液給排路により冷却液を給排させるようにすると共に、当該冷却室の内周側部分であって両仕切部及び通路形成部で囲繞形成される冷却室部分により前記密封環が配置されたシールケース内領域と機器ハウジング内領域である高温流体領域とを区画するように構成してあることをしたことを特徴とする高温流体用軸封装置(以下「第1発明軸封装置」という)を提案する。
【0007】
また、本発明は、第2に、機器ハウジングに取り付けられたシールケース内に、これを洞貫する回転軸に固定した固定密封環とシールケースにOリングを介して軸線方向移動可能に内嵌保持された静止密封環との対向端面である密封端面の相対回転作用によりシール機能を発揮するメカニカルシールに構成された一次シール、二次シール及び三次シールを並列配置し、二次シールと三次シールとの間に形成されたシール空間に、機器ハウジング内領域の流体圧力より低圧の封水を循環供給するように構成された高温流体用軸封装置であって、
シールケースを、厚肉円筒体である本体部と、その端部の内周縁部から機器ハウジング領域方向に一体的に延びる薄肉円筒体である第1保持部と、その端部から径方向内方に一体的に延びる薄肉円環状板である第2保持部と、その内周端部から径方向内方に一体的に延びる薄肉円環状板である第1仕切部と、その内周端部から機器ハウジング領域方向に一体的に延びる薄肉円筒体であって回転軸の外周面との間に微小な環状通路を形成する通路形成部と、その端部から径方向外方に一体的に延びる薄肉円環状板である第2仕切部と、その外周端部から径方向外方に一体的に延びる薄肉円環状板であって外径が本体部と一致するOリング保持部とを具備する金属製構造物に構成して、Oリング保持部の内外周端部と機器ハウジングのシール部との間に第1及び第2Oリングを介在した状態で、機器ハウジングに取り付けてあり、その本体部とOリング保持部との間に形成される凹部を機器ハウジングに設けた給排路形成部で閉塞された冷却室として、この冷却室に当該給排路形成部に形成された冷却液給排路により冷却液を給排させるようにすると共に、当該冷却室の内周側部分であって両仕切部及び通路形成部で囲繞形成される冷却室部分により前記一次シールの密封環が配置されたシールケース内領域と機器ハウジング内領域である高温流体領域とを区画するように構成し、シール空間に封水を循環供給する給排水手段を、シールケースの本体部に形成された給水通路と、当該本体部に形成された排水通路と、当該本体部の内周面に形成されて給水通路に連通する環状の給水溝と、当該本体部の内周面に形成されて排水通路に連通する環状の排水溝と、これら給排水溝の開口部を閉塞シールすべく当該本体部の内周面に取り付けられたシャワーリングと、シャワーリングに形成されて周方向に等間隔を隔てて並列する複数個の貫通孔であって給水溝に連通する給水孔と、シャワーリングに形成されて周方向に等間隔を隔てて並列する複数個の貫通孔であって排水溝に連通する排水孔とを具備して、給水通路から給水溝に供給された封水を全給水孔からシール空間に供給すると共にシール空間内の封水を全排水孔から排水溝を経て排水通路へと排出することによって、シール空間における循環供給に伴う封水の脈動現象を抑制するように構成したことを特徴とする高温流体用軸封装置(以下「第2発明軸封装置」という)を提案する。
【0008】
第2発明軸封装置の好ましい実施の形態にあっては、給水孔が三次シールにおける回転密封環の外周面に対向して配置されると共に排水孔が三次シールにおける静止密封環の外周面に対向して配置されるか、或いは給水孔が三次シールにおける静止密封環の外周面に対向して配置されると共に排水孔が三次シールにおける回転密封環の外周面に対向して配置される。何れの場合においても、給水通路が、給水ラインに連通する環状の給水ヘッダ室と、給水ヘッダ室とシャワーリングで閉塞された給水溝内とを連通すべく周方向に等間隔を隔てて並列配置された複数の給水連絡通路とを具備するものであり、排水通路が、排水ラインに連通する環状の排水ヘッダ室と、排水ヘッダ室とシャワーリングで閉塞された排水溝内とを連通すべく周方向に等間隔を隔てて並列配置された複数の排水連絡通路とを具備するものであることが好ましい。このような複数の給排水連絡通路を設ける場合においては、回転軸の軸線を通過する断面において給水連絡通路と排水連絡通路とがX字状にクロスした形態で形成されていることが好ましい。
【0009】
また、第1発明軸封装置及び第2発明軸封装置にあっては、特に第2発明軸封装置にあっては、シールケース内の回転軸部分を軸本体とこれに嵌挿固定されるスリーブとで構成すると共に、前記給排路形成部がシールケースを囲繞する状態で内嵌する筒状体に構成し、回転密封環を含む回転側要素を取り付けたスリーブと静止密封環を含む静止側要素を取り付けたシールケースとを、着脱自在なセット爪により一体連結して、スリーブを回転軸に嵌挿固定させると共にシールケースを給排路形成部に嵌挿させた上、シールケースをその端部に取り付けた周方向に分割状の環状リングを給排路形成部の端部内周に形成した環状凹部に係合させることにより機器ハウジングに取り付けるように構成したカートリッジ構造のものとしておくことが好ましい。
【0010】
さらに、第1及び第2発明軸封装置にあっては、シールケースの本体部とOリング保持部との対向端面間に、その周方向に等間隔を隔てて並列する複数の金属製補強杆を溶着しておくことが好ましい。また、シールケースの第1保持部及びOリング保持部の内周面に多数の凸状フィンを一体形成してあることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
第1及び第2発明軸封装置にあっては、メカニカルシール(第2発明軸封装置にあっては一次シール)の密封環が配置されたシールケース内領域と機器ハウジング内領域である高温流体領域とが冷却室によって区画されており、この冷却室の外壁を構成するシールケース部分(第1及び第2保持部、第1及び第2仕切部、通路形成部並びにOリング保持部)が薄肉円筒体又は薄肉円環状板であるから、冷却室内の冷却液によってシールケース内領域に配置されるメカニカルシール構成部材が効果的に冷却される。しかも、冷却室の内周部分は回転軸に近接しており、シールケース内領域と機器ハウジング内領域とはシールケースの通路形成部と回転軸との対向周面間に形成される微小な環状通路を介して連通されているから、機器ハウジング内の高温流体は当該環状通路を通過する間に冷却室内の冷却液によって(更には当該環状通路を通過することによる圧力損失が生じることによって)効果的に冷却されることになり、シールケース内領域における流体温度は機器ハウジング内の温度に比して大幅に低下することになる。したがって、機器ハウジング内の流体が直接に接触するメカニカルシール部材(静止密封環とシールケースとの間に介在されるOリング等)についても、これが高温に晒されることがなく、熱劣化,熱損失するようなことがない。また、シールケースが、そのOリング保持部の内外周端部と機器ハウジングのシール部との間に第1及び第2Oリングを介在した状態で、機器ハウジングに取り付けられているから、仮に、当該保持部の内周端部側のOリング(第1Oリング)が高温流体に接触することにより劣化,熱損するようなことがあっても、当該第1Oリングから漏洩した高温流体は冷却室の薄肉外壁であるOリング保持部と機器ハウジングのシール部との間を通過して第2Oリングに到達する前に十分に冷却されることから、シールケースと機器ハウジングとの間は第2Oリングにより確実にシールされることになる。これらのことから、第1及び第2発明軸封装置によれば、高温流体を扱う回転機器においても極めて良好なメカニカルシール機能を発揮することができる。
【0012】
ところで、シールケース内に一対の端面接触形メカニカルシールを並列配置して、両メカニカルシール間に形成されるシール空間に、シールケースに形成した給排液路により、封液を循環供給するように構成されたダブルシール(例えば実開昭63−119969号公報を参照)は、シール空間に機器ハウジング内領域の流体圧力より高圧の封液を供給することにより、機器ハウジング内領域の流体が高圧流体である場合にもシール空間を介して良好にシールすることができるものであり、さらに端面接触形メカニカルシールにおける密封環の相対回転摺接部分を封液により潤滑すると共に当該相対回転摺接部分の発熱等を封液によるフラッシング作用により抑制して、回転軸が高速回転する場合にも良好なシール機能を発揮することができるものである。しかし、給液路及び排液路が夫々シールケース内周部の一箇所に開口されていることから、つまりシールケース内周部の一箇所に設けられた給液口から封液がシール空間に供給されると共にシール空間の封液がシール内周部の一箇所に設けられた排液口から排出されることから、回転軸が高速回転される場合には次のような問題が生じていた。すなわち、回転軸には端面接触形メカニカルシールの回転密封環等の回転側要素が取り付けられているが、このような回転側要素が高速回転することにより、回転側要素周辺の封液が回転側要素の回転によりポンピングされ或いは回転側要素の回転に伴って回転する連れ回り現象が生じることになるため、シール空間内の封液が一箇所の排液口へと流れ込む状況下においては、シール空間内の封液が激しく脈動することになる。そして、このような脈動が生じると、回転軸及びこれに取り付けられた回転側要素が振動し、更には回転機器全体が振動することになり、軸封装置によるシール機能が低下する等、大きなトラブルが生じる。このような脈動に起因するトラブルの発生は、特に回転軸の周速が20m/s以上である場合において顕著である。
【0013】
第2発明軸封装置は、このような問題を解決して高速回転機器用としても好適するものである。すなわち、第2発明軸封装置にあっては、シール空間への封水循環を周方向に等間隔を隔てて並列する複数の給排水孔によって行うことから、回転軸が高速回転することにより上記したポンピング現象や連れ回り現象が生じるような場合にも、シール空間において封水の脈動現象が発生するような虞れが殆どなく、脈動に起因する振動が生じず、高速回転条件下においても良好なシール機能を発揮させることができる。しかも、複数の排水孔から封水を噴出させることにより封水によるフラッシング作用をより効果的に行うことができ、上記した封水の脈動防止効果と相俟って、高速条件下におけるシール機能を更に良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明に係る高温流体用軸封装置の一例を示す縦断側面図である。
【図2】図2は、図1の要部を拡大して示す詳細図である。
【図3】図3は、図1のIII −III 線に沿う縦断正面図である。
【図4】図4は、図1のIV−IV線に沿う縦断正面図である。
【図5】図5は、図1のV−V線に沿う縦断正面図である。
【図6】図6は、図1のVI−VI線に沿う縦断正面図である。
【図7】図7は、当該高温流体用軸封装置の変形例を示す縦断側面図である。
【図8】図8は、当該高温流体用軸封装置の他の変形例を示す縦断側面図である。
【図9】図9は、当該高温流体用軸封装置についての実験結果を示したもので、回転軸の回転数とその振幅との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明に係る高温流体用軸封装置の一例を示す縦断側面図であり、図2はその要部の拡大図であり、図3は図1のIII −III線に沿う縦断正面図であり、図4は図1のIV−IV線に沿う縦断正面図であり、図5は図1のV−V線に沿う縦断正面図であり、図6は図1のVI−VI線に沿う縦断正面図である。
【0016】
図1に示す高温流体用軸封装置は、高温流体(例えば、高圧の高温ガス)を扱う回転機器であって、特に回転軸1が高速回転(例えば、回転軸1の周速:20m/s以上)する回転機器(例えば、原子力発電システム等において使用される蒸気圧縮機等)に使用される高PV値対応の第2発明軸封装置であり、回転軸1とこれを囲繞するシールケース2との対向周面間に一次シールたる第1メカニカルシール3と二次シールたる第2メカニカルシール4と三次シールたる第3メカニカルシール5とを軸線方向に並列配置し、第1メカニカルシール3と第2メカニカルシール4との間に形成されるシール空間(以下「第1シール空間」という)C及び第2メカニカルシール4と第3メカニカルシール5との間に形成されるシール空間(以下「第2シール空間」という)Dを介して、シールケース2が取り付けられる当該回転機器のハウジング(機器ハウジング)8内の領域(機器ハウジング内領域)である機内領域Aと機外領域である大気領域Bとの間をシールするように構成されている。すなわち、第1メカニカルシール3は、機内領域Aと第1シール空間Cとの間をシールする一次シールであり、第2メカニカルシール4は第1シール空間Cと第2シール空間Dとの間をシールする二次シールであり、第3メカニカルシール5は第2シール空間Dと大気領域Bとの間をシールする三次シールである。なお、以下の説明における圧力はゲージ圧力である。
【0017】
回転軸1は、図1に示す如く、機器ハウジング8の端部であるシール部8aから機外方向に突出してシールケース2を同心状に貫通するものであるが、シールケース2内の回転軸部分においては、軸本体1aに円筒状のスリーブ11,12,13,14を嵌挿させた積層構造に構成されている。スリーブ12,13,14は、長尺スリーブ11に外嵌されている。また、機器ハウジング8aのシール部8aには、その内周部から突出する環状突起8bが設けられていると共に、その外周部から連なって回転軸1の軸線方向(以下、単に「軸線方向」という)に突出する給排路形成部8cが設けられている。給排路形成部8cは、後述するシールケース2より若干長尺な筒状体であり、シールケース2を囲繞する状態で内嵌しうる円形内周面を有するものである。
【0018】
シールケース2は、図1に示す如く、厚肉円筒体である本体部2a,2b,2cと、その端部の内周縁部から機器ハウジング領域A方向に一体的に延びる薄肉円筒体である第1保持部2dと、その端部から径方向内方に一体的に延びる薄肉円環状板である第2保持部2eと、その内周端部から径方向内方に一体的に延びる薄肉円環状板である第1仕切部2fと、その内周端部から機器ハウジング領域A方向に一体的に延びる薄肉円筒体である通路形成部2gと、その端部から径方向外方に一体的に延びる薄肉円環状板である第2仕切部2hと、その外周端部から径方向外方に一体的に延びる薄肉円環状板であって外径が本体部と一致するOリング保持部2iとを具備する金属製構造物に構成してある。
【0019】
本体部は、図1に示す如く、軸線方向に3つの部分に分割された外径一定の金属製円筒構造物であり、第1保持部2dを一体連結する第1本体部2aと、これに適当数のボルト2jにより連結された第2本体部2bと、これに適当数のボルトのボルト2kにより連結された第3本体部2cとからなる。第1本体部2aは、第1保持部2d、第2保持部2e、第1仕切部2f、通路形成部2g、第2仕切部2h及びOリング保持部2iと一体成形されたものである。
【0020】
第1保持部2d、第2保持部2e、第1仕切部2f、通路形成部2g、第2仕切部2h及びOリング保持部2iは、本体部2a,2b,2cの肉厚(径方向の厚み)に比して薄肉のものに構成されている。通路形成部2gは、回転軸1つまり軸本体1aの外周面に近接して軸線方向に延びるものであり、軸本体1aとの対向周面間に微小な環状通路27を形成する。Oリング保持部2iは、その内外周端部に形成したOリング溝に第1Oリング2m及び第2Oリング2nを係合させるOリング溝を形成したものであり、外径を本体部2a,2b,2cと一致させてある。第1本体部2aとOリング保持部2cとの対向周面間には、その周方向に等間隔を隔てて並列する複数の金属製補強杆(例えば、金属丸棒)2pを溶着してあり、これによって、第1保持部2d、第2保持部2e、第1仕切部2f、通路形成部2g、第2仕切部2h及びOリング保持部2iで構成される薄肉構造物を補強して、それが変形しないように図っている。
【0021】
シールケース2は、図1に示す如く、Oリング保持部2iを機器ハウジング8のシール部8aとの間に第1及び第2Oリング2m,2nを介在した状態で、機器ハウジング8に取り付けられている。すなわち、シールケース2は、Oリング保持部2iを機器ハウジング8のシール部8a、環状突起8b及び給排路形成部8cで形成される環状凹部に嵌合させた状態で、つまりシール部8aとの間をOリング保持部2iの内周側の第1Oリング2m及びその外周側の第2Oリング2nでシールさせた状態で、給排路形成部8cに内嵌させた上、その端部(第3本体部2cの端部)にボルト2qにより取り付けた環状リング2rを給排路形成部8cの端部内周に形成した環状凹部8dに係合させることにより、機器ハウジング8に取り付けられている。なお、環状リング2rは周方向に複数部分に分割されたものであり、各分割部分を環状凹部8dに係合させた上で第3本体部2cに取り付けることにより円環状体となるものである。
【0022】
シールケース2には、その本体部(第1本体部2a)とOリング保持部2jとの間に環状凹部が形成されるが、この環状凹部は、シールケース2を機器ハウジング8に取り付けることにより、給排路形成部8cで閉塞された冷却室28に構成される。冷却室28の内周側部分であって両仕切部2f,2h及び通路形成部2gで囲繞形成される冷却室部分28aは、被密封流体領域をメカニカルシール3の密封環31,32が配置されたシールケース内領域A1と高温流体領域である機内領域Aとを区画しており、両領域A,A1は微小な環状通路27のみを介して連通されている。冷却室28には、給排路形成部8cに形成された冷却液給排路80,81により冷却液82が給排されるようになっている。すなわち、冷却液供給路80から冷却室28に供給された冷却液82により、冷却室28の外壁を構成する金属製薄肉部(第1保持部2d、第2保持部2e、第1仕切部2f、通路形成部2g、第2仕切部2h及びOリング保持部2i)が冷却されて、当該金属製薄肉部に接触する部材及び流体との熱交換(冷却)が行われるようになっているのであり、冷却液82は冷却液排出路81から冷却液供給路80へと循環されるようになっている。第1保持部2d及びOリング保持部2iの内周面には、図1に示す如く、多数の凸状フィン2s,2tが一体形成されていて、両部2d,2iに接触する部材及び流体の冷却をより効果的に行いうるように工夫されている。なお、冷却液82としては水等が使用され、その循環経路には必要に応じて熱交換器等の冷却機器が配設される。
【0023】
第1メカニカルシール3は、図1に示す如く、シールケース2に軸線方向に移動可能に保持された静止密封環(以下「第1静止密封環」という)31と、これに対向して回転軸1に固定された回転密封環(以下「第1回転密封環」という)32と、第1静止密封環31を第1回転密封環32へと押圧附勢するスプリング部材33とからなり、両密封環31,32の対向端面たる密封端面31a,32aの相対回転摺接作用により、当該相対回転摺接部分の内周側領域である機内領域A(より正確には、上記したシールケース内領域A1)とその外周側領域である第1シール空間Cとの間をシールする端面接触形メカニカルシールである。
【0024】
第3メカニカルシール5は、図1に示す如く、シールケース2に軸線方向に移動可能に保持された静止密封環(以下「第3静止密封環」という)51と、これに対向して回転軸1に固定された回転密封環(以下「第3回転密封環」という)52と、第3静止密封環51を第3回転密封環52へと押圧附勢するスプリング部材53とからなり、両密封環51,52の対向端面たる密封端面51a,52aの相対回転摺接作用により、当該相対回転摺接部分の内周側領域である大気領域Bとその外周側領域である第2シール空間Dとの間をシールする端面接触形メカニカルシールである。
【0025】
第2メカニカルシール4は、図1に示す如く、上記両メカニカルシール3,5間に配置されており、シールケース2に軸線方向に移動可能に保持された静止密封環(以下「第2静止密封環」という)41と、これに対向して回転軸1に固定された回転密封環(以下「第2回転密封環」という)42と、第2静止密封環41を第2回転密封環42へと押圧附勢するスプリング部材43とからなり、両密封環41,42の対向端面たる密封端面41a,42aの相対回転摺接作用により、当該相対回転摺接部分の外周側領域である第1シール空間Cとその内周側領域である第2シール空間Dとの間をシールする端面接触形メカニカルシールである。
【0026】
第1メカニカルシール3と第2メカニカルシール4とは軸線方向における密封環配置を逆とするダブルシールを構成しており、第2メカニカルシール4と第3メカニカルシール5とは軸線方向における密封環配置を同一とするタンデムシール(タンデムダブルシール)を構成している。第1及び第2回転密封環32,42は、基端面が対向する状態でスリーブ11,12及び保持環15を介して回転軸1に固定されている。第1及び第2静止密封環31,41は、先端面(密封端面)31a,41aが回転密封環32,42を挟んで対向する状態で、夫々、Oリング34,44を介してシールケース2に軸線方向移動可能に嵌合保持されている。第3メカニカルシール5の密封環51,52は、第2メカニカルシール4より大気領域B側において、第2メカニカルシール4の密封環41,42と向きを同一とする状態で配置(タンデム配置)されており、第3回転密封環52はスリーブ11,13及び保持環16を介して回転軸1に固定されており、第3静止密封環51はOリング54を介してシールケース2に軸線方向移動可能に嵌合保持されている。
【0027】
各静止密封環31,41,51は、図1及び図2に示す如く、シールケース2の内周部に形成されたスプリングリテーナ部にOリング34,44,54を介して軸線方向に移動可能に嵌合保持された円環状体であり、その先端面は軸線に直交する平滑環状面である密封端面31a,41a,51aに形成されている。各静止密封環31,41,51は、これに突設したドライブピン31b,41b,51bをスプリングリテーナ部に形成した係合孔に係合させることにより、所定範囲での軸線移動を許容する状態でシールケース2に対する相対回転が阻止されている。なお、各静止密封環31,41,51における密封端面31a,41a,51aが形成されている部分(密封端面形成部分)はカーボンで構成されている。
【0028】
各回転密封環32,42,52は、図1及び図2に示す如く、回転軸1つまり軸体1aにスリーブ11,12,13,14及び保持環15,16を介して固定された円環状体であり、その先端面は軸線に直交する平滑環状面である密封端面32a,42a,52aに形成されている。第1及び第2回転密封環32,42の外周面(密封端面32a,42aが形成される先端部を除く外周面部分)は保持環15の外周面で被覆されており、両回転密封環32,42とシールケース2の内周部分(後述するシャワーリング67)との対向周面間に凹凸のない封水流路(軸線方向に平行する円筒状流路)C1が形成されている。第3回転密封環52の外周面(密封端面52aが形成される先端部を除く外周面部分)及び背面(基端面)は保持環16で被覆されており、第3回転密封環52とシールケース2の内周部分(後述するシャワーリング77)との対向周面間に凹凸のない封水流路(軸線方向に平行する円筒状流路)D1が形成されている。なお、各回転密封環32,42,52における密封端面32a,42a,52aが形成されている部分(密封端面形成部分)は静止密封環31,41,51の密封端面形成部分より硬質のセラミックス(炭化珪素等)等で構成されている。
【0029】
各スプリング部材33,43,53は、図1に示す如く、静止密封環31,41,51と前記スプリングリテーナ部との間に周方向に所定間隔を隔てて装填された複数のコイルスプリングで構成されており、静止密封環31,41,51を回転密封環32,42,52へと押圧接触させるべく附勢するものである。
【0030】
高温流体用軸封装置は、図1に示す如く、回転側要素(スリーブ12,13,14及び回転密封環32,42,52等)を取り付けた長尺スリーブ11と静止側要素(静止密封環31,41,51等)を取り付けたシールケース2とを、着脱自在なセット爪9により一体連結して、長尺スリーブ11を軸体1aに嵌挿固定させると共にシールケース2を給排路形成部8cに嵌挿させた上、シールケース2を、環状リング2rを給排路形成部8cの環状凹部8dに係合させると共にシールケース2(第3本体部2c)に取り付けることにより、機器ハウジング8に取り付けるように構成したカートリッジ構造のものである。すなわち、回転側要素を取り付けた長尺スリーブ11と静止側要素を取り付けたシールケース2とをセット爪9により一体化させた形態(当該高温流体用軸封装置に組み立てた形態)のまま、軸体1aに挿通させた上、軸体1aに形成したネジ部1bにスリング兼用のストッパリング17を螺合させると共にこのストッパリング17をセットスクリュー17aにより軸体1に固定することによって、当該高温流体用軸封装置を機器ハウジング8に装着するようになっている。そして、セット爪9を取り外した上で、当該高温流体用軸封装置の運転が開始される。また、メンテナンス作業等においては、上記と逆の作業手順により当該高温流体用軸封装置を機器ハウジング8から取り外すことができる。このようなカートリッジ構造としておくことにより、軸装置の組立及び機器ハウジング8への脱着作業を正確且つ容易に行うことができる。かかる点は、特に、複数のメカニカルシール3,4,5を有する上記高温流体用軸封装置のように複雑な構造をなすものにおいては、極めて有利な利点である。
【0031】
第1シール空間Cには第1給排水手段により機内領域Aの流体圧力より高圧の封水6が循環供給されると共に、第2シール空間Dには、第2給排水手段により、第2メカニカルシール(二次シールにおける被密封流体領域側メカニカルシール)4における密封端面41a,42aの外径側領域である第1シール空間(二次シールによってシールされる被密封流体領域)Cより低圧であり且つ第3メカニカルシール(二次シールにおける大気領域側メカニカルシール)5における密封端面51a,52aの内径側領域である大気領域Bより高圧である封水7が循環供給されていて、各シール空間C,Dを所定圧(機内領域Aの圧力<第1シール空間C,機外領域Bの圧力(大気圧)<第2シール空間Dの圧力<第1シール空間Cの圧力)に保持すると共に封水6,7によるフラッシング効果が発揮されるように工夫してある。なお、各回転密封環32,42,52の密封端面32a,42a,52aの外周縁部には、図2〜図6に示す如く、相手密封端面(静止密封環31,41,51の密封端面)31a,41a,51aの外周縁部に若干食い込む凹部(ハイドロカット)32b,42b,52bが形成されていて、封水6,7を密封端面31a,32a、41a,42a及び51a,52a間に積極的に導入させることにより当該密封端面間の潤滑を効果的に行いうるように工夫してある。
【0032】
第1給排水手段は、図1及び図2に示す如く、シールケース2及び機器ハウジング8の給排路形成部8cに形成されて給水ライン61に接続された給水通路62と、シールケース2及び機器ハウジング8の給排路形成部8cに形成されて排水ライン63に接続された排水通路64と、シールケース2の内周面に形成されて給水通路62に連通する環状の給水溝65と、シールケース2の内周面に形成されて排水通路64に連通する環状の排水溝66と、これら給排水溝65,66の開口部を閉塞シールすべくシールケース2の内周面に取り付けられたシャワーリング67と、シャワーリング67に形成されて周方向に等間隔を隔てて並列する複数個の貫通孔であって給水溝65に連通する給水孔68と、シャワーリング67に形成されて周方向に等間隔を隔てて並列する複数個の貫通孔であって排水溝66に連通する排水孔69とを具備して、給水通路62から給水溝65に供給された封水6を全給水孔68から第1シール空間Cに供給すると共に第1シール空間C内の封水6を全排水孔69から排水溝66を経て排水通路64へと排出するように構成されている。給水孔69は、図1〜図3に示す如く、第2メカニカルシール4における静止密封環(第2静止密封環)41の外周面であって密封端面41aに対向して開口する形態でシャワーリング67に穿設されている。排水孔67は、図1、図2及び図4に示す如く、第1メカニカルシール3における静止密封環(第2静止密封環)31の外周面であって密封端面31aに対向して開口する形態でシャワーリング67に穿設されている。なお、シャワーリング67には、給水孔68から大気領域B側へと離間する位置に配して、第1シール空間Cと給水溝65内とを連通する適当数の空気抜き孔67aが穿設されている。
【0033】
給排水ライン61,63はプランジャポンプ等を具備する封水供給装置に接続されていて、これらと給排水通路62,64、給排水溝65,66、給排水孔68,69及び第1シール空間Cとで封水6の循環ラインが構成されている。すなわち、給水孔群68から一定圧の封水6を一定流量で第1シール空間Cに供給すると共にこの供給量と同一量の封水6を第1シール空間Cから排水孔群69へと排出させることにより、一定圧の封水6を第1シール空間Cに循環供給させるようになっている。したがって、第1シール空間Cは封水6によって常時充満され、一定圧に保持される。封水6の圧力及び循環量は、第1シール空間Cが機内領域Aより若干(0.5MPaG程度)高くなるように設定される。例えば、機内領域Aの流体が7.2MPaGの高圧蒸気である場合においては、封水6の圧力を7.7MPaGとし且つ封水6の給排量(循環量)を96L/minとして、第1シール空間Cを機内領域Aより0.5MPaG高圧となるように保持させるようにする。
【0034】
第1及び第2メカニカルシール3,4における相対回転摺接部分31a,32a及び41a,42aは、第1シール空間Cに給排される封水6によってフラッシングされるが、かかる封水6によるフラッシング機能をより効果的に発揮させるべく、シャワーリング67の内周部には、図2に示す如く、第1メカニカルシール3の相対回転摺接部分31a,32aに対向する位置及び第2メカニカルシール4の相対回転摺接部分41a,42aに対向する位置に夫々配して環状の第1及び第2誘導突起21,22が設けられていて、給水孔68から排水孔69への封水流動経路の途中において封水6が第1及び第2メカニカルシール3,4の相対回転摺接部分31a,32a及び41a,42aに向かうべく誘導されるように工夫してある。すなわち、給水孔68から封水流路C1へと流動する封水6は、この間において第2誘導突起22により第2メカニカルシール4の相対回転摺接部分41a,42aに向かうように誘導される反転流6aとなる。さらに、封水流路C1から排水孔69へと流動する封水6は、この間において第1誘導突起21により第1メカニカルシール3の相対回転摺接部分31a,32aに向かうように誘導される反転流6bとなる。したがって、かかる反転流6a,6bによって、相対回転摺接部分31a,32a及び41a,42aの周辺においても封水6が停滞することなく流動され、相対回転摺接部分31a,32a及び41a,42aを含む密封環31,32及び41,42に対するフラッシング効果が良好に発揮されることになる。
【0035】
第2給排水手段は、図1及び図2に示す如く、シールケース2及び機器ハウジング8の給排路形成部8cに形成されて給水ライン71に接続された給水通路72と、シールケース2及び機器ハウジング8の給排路形成部8cに形成されて排水ライン73に接続された排水通路74と、シールケース2の内周面に形成されて給水通路72に連通する環状の給水溝75と、シールケース2の内周面に形成されて排水通路74に連通する環状の排水溝76と、これら給排水溝75,76の開口部を閉塞シールすべくシールケース2の内周面に取り付けられたシャワーリング77と、シャワーリング77に形成されて周方向に等間隔を隔てて並列する複数個の貫通孔であって給水溝75に連通する給水孔78と、シャワーリング77に形成されて周方向に等間隔を隔てて並列する複数個の貫通孔であって排水溝76に連通する排水孔79とを具備して、給水通路72から給水溝75に供給された封水7を全給水孔78から第2シール空間Dに供給すると共に第2シール空間D内の封水7を全排水孔79から排水溝76を経て排水通路74へと排出するように構成されている。給水孔78は、図1、図2及び図5に示す如く、第3メカニカルシール5における回転密封環(第3回転密封環)52の外周面であってこれを覆っている保持環16の大径部と小径部との境界部分つまり封水流路D1の機内領域A側の端部に対向して開口する形態でシャワーリング67に穿設されている。排水孔79は、図1、図2及び図6に示す如く、第3メカニカルシール5における静止密封環(第3静止密封環)51の外周面であって密封端面51aに対向して開口する形態でシャワーリング67に穿設されている。給水通路72は、図1、図2及び図5に示す如く、給水ライン71に連通する環状の給水ヘッダ室72aと、給水ヘッダ室72aとシャワーリング77で閉塞された給水溝75内とを連通すべく周方向に等間隔を隔てて並列配置された複数の給水連絡通路72bとを具備して、給水ライン71から給水ヘッダ室72aに供給された封水7を給水連絡通路群76から給水溝75に供給するようになっている。排水通路74は、図1、図2及び図6に示す如く、排水ライン73に連通する環状の排水ヘッダ室74aと、排水ヘッダ室74aとシャワーリング77で閉塞された排水溝76内とを連通すべく周方向に等間隔を隔てて並列配置された複数の排水連絡通路74bとを具備して、排水孔群79から排水溝76に流入した第2シール室D内の封水7を排水連絡通路群74bから排水ヘッダ室74aを介して排水ライン73に排水するようになっている。給水連絡通路72bと排水連絡通路74bとは、回転軸1の軸線に対して逆方向に傾斜する傾斜通路となっている。すなわち、図1及び図2に示す如く、給排水ヘッダ室72a,74aの軸線方向位置関係と給排水溝75,76の軸線方向位置関係とが逆になるようにして、回転軸1の軸線を通過する断面において給水連絡通路72bと排水連絡通路74bとがX字状にクロスした形態となるように工夫してある。各連絡通路72b,74bの上記軸線に対する傾斜角度は45度又は略45度に設定されている。給排水連絡通路72b,74b及び給排水孔78,79の数及び形状(断面積(水流方向に直交する断面の面積))は、全給排水連絡通路72b,74bの合計断面積が全給排水孔78,79の合計断面積と同一か又は全給排水孔78,79の合計断面積より若干大きくなる条件において、適宜に設定される。なお、シャワーリング77には、排水孔79から大気領域B側へと離間する位置に配して、第2シール空間Dと排水溝76内とを連通する適当数の空気抜き孔77aが穿設されている。
【0036】
給排水ライン71,73はプランジャポンプ等を具備する封水供給装置に接続されていて、これらと給排水通路72,74、給排水溝75,76、給排水孔78,79及び第2シール空間Dとで封水7の循環ラインが構成されている。すなわち、給水通路72から一定圧の封水7を一定流量で第2シール空間Dに供給すると共にこの供給量と同一量の封水7を第2シール空間Dから排水通路74へと排出させることにより、一定圧の封水7を第2シール空間Dに循環供給させるようになっている。したがって、第2シール空間Dは封水7によって常時充満され、一定圧に保持される。封水7の圧力及び循環量は、第2シール空間Dがこれに隣接する機内領域A側のシール空間つまり第1シール空間Cより低圧で且つ大気領域Bより高圧に保持されるように設定される。例えば、前記した如く機内領域Aの流体が7.2MPaGの高圧蒸気であり、封水6の圧力を7.7MPaGとし且つ封水6の給排量(循環量)を96L/minとした場合においては、封水7の圧力を3.5MPaGとし且つ封水7の給排量(循環量)を61L/minとする。
【0037】
第3メカニカルシール5における相対回転摺接部分51a,52aは、第2シール空間Dに給排される封水7によってフラッシングされるが、かかる封水7によるフラッシング機能をより効果的に発揮させるべく、シャワーリング77の内周部には、図2に示す如く、第3メカニカルシール5の相対回転摺接部分51a,52aに対向する位置に配して環状の第3誘導突起23が設けられている。したがって、封水7は給水孔78から封水流路D1を通過して排水孔79に向かうが、この間において、上記した第1シール空間Cにおける反転流6a,6bと同様の反転流7aが生じることになる。すなわち、第3メカニカルシール5の相対回転摺接部分51a,52aの周辺において、封水7は第3誘導突起23により当該相対回転摺接部分51a,52aへと向かうように誘導された反転流7aとなる。かかる反転流7aによって、相対回転摺接部分51a,52aの周辺においても封水7が停滞することなく流動され、相対回転摺接部分51a,52aを含む密封環51,52に対するフラッシング効果が良好に発揮されることになる。
【0038】
なお、この例では第2静止密封環42が軸線方向に長尺なものであるため、第2シール空間Dにおいては、当該密封環42と回転軸1(スリーブ12)との対向周面間に軸線方向に延びる長尺な円筒状領域D2が生じるが、この円筒状領域における回転軸1の回転に伴う封水7の連れ回り現象を可及的に防止すべく、当該対向周面を表面研磨(電解研磨,バフ研磨等)して封水7との摩擦係数が小さくなるように工夫すると共に当該対向周面の間隔(円筒状領域D2の径方向幅)を可能な範囲で最大限大きく設定してある。
【0039】
以上のように構成された高温流体用軸封装置にあっては、シールケース内領域A1と機内領域である高温流体領域Aとが冷却室28によって区画されており、この冷却室28の外壁を構成するシールケース部分(第1保持部2d、第2保持部2e、第1仕切部2f、通路形成部2g、第2仕切部2h及びOリング保持部2i)が薄肉円筒体又は薄肉円環状板であるから、冷却室28内の冷却液82によってシールケース内領域A1に配置されるメカニカルシール構成部材が効果的に冷却される。しかも、冷却室28の内周側部分は回転軸1(軸体1a)に近接しており、シールケース内領域A1と高温流体領域Aとはシールケース2の通路形成部2gと回転軸1との対向周面間に形成される微小な環状通路27を介して連通されているから、機器ハウジング8内の高温流体は当該環状通路27を通過する間に冷却室28内の冷却液82によって(更には当該環状通路27を通過することによる圧力損失が生じることによって)効果的に冷却されることになり、シールケース内領域A1における流体温度は機器ハウジング内の流体温度に比して大幅に低下することになる。したがって、機器ハウジング8内の高温流体が直接に接触するメカニカルシール部材(静止密封環31とシールケース2との間に介在されるOリング34等)についても、これが高温に晒されることがなく、熱劣化,熱損失するようなことがない。また、シールケース2が、そのOリング保持部2iの内外周端部と機器ハウジング8のシール部8aとの間に第1及び第2Oリング2m,2nを介在した状態で、機器ハウジング8に取り付けられているから、仮に、当該保持部3iの内周端部側のOリング(第1Oリング)2mが高温流体に接触することにより劣化,熱損するようなことがあっても、当該第1Oリング2mから漏洩した高温流体は冷却室28の薄肉外壁であるOリング保持部2iと機器ハウジング8のシール部8aとの間を通過して第2Oリング2nに到達する前に十分に冷却されることから、シールケース2と機器ハウジング8との間は第2Oリング2nにより確実にシールされることになる。このような冷却機能は、フィン2s,2tの存在によってより効果的に発揮されることになる。これらのことから、当該高温流体用軸封装置によれば、高温流体を扱う回転機器においても極めて良好なメカニカルシール機能を発揮することができる。
【0040】
また、上記した高温流体用軸封装置にあっては、機内領域Aと機外領域(大気領域)Bとの間を機外領域側へと段階的に減圧された封水充填空間である第1及び第2シール空間C,Dを介してシールするように構成されているから、機内領域Aの流体が高圧蒸気等の高圧流体である場合にも、機内領域Aを確実にシールすることができ、しかも回転軸1が高速回転される場合においても、タンデムシールである二次シールにおける封水循環に伴う封水7の脈動を可及的に防止することができ、回転軸1延いては回転機器の振動を大幅に低減することができる。
【0041】
すなわち、第2シール空間D内の封水7をシールケース2の周方向に等間隔を隔てて並列する複数の給排水孔78,79から給排水させるため、第2シール空間D内に位置する回転密封環(第3回転密封環)52の回転によってその周辺の封水7にポンピング,連れ回り現象が生じている場合にも、冒頭で述べた従来のタンデムシールにおける如く一箇所から封水を給排させる場合に比して、封水7の脈動が防止され或いは振動を生じさせない程度にまで抑制される。また、全給排水孔78,79と給排水ライン71,73との間に、第1環状室(給排水溝75,76)と第2環状室(ヘッダ室72a,74a)と両環状室間を連結する複数の給排水連絡通路72b,74bとを介して、連結していることから、第2シール空間Dへの給排水経路において急激な圧力変動が生じず、これによって脈動の発生をより効果的に抑制することができる。このような効果を発揮させる上で、給排水連絡通路72b,74bを前記した如く45度前後の傾斜角度でX状にクロスさせておくことも有効となる。さらに、周方向に均等配置された複数の給水孔78から第2シール空間D内に位置する回転密封環(第3回転密封環)52の外周面に向けて放射状に給水させるようにしたことによって、当該回転密封環52の回転によるポンピング,連れ回り現象が、回転密封環外周の封水流路D1を給水孔79へと流動する封水7によって緩和されることになり、これによって脈動の発生が更に効果的に抑制されることになる。また、第2静止密封環42と回転軸1(スリーブ12)との対向周面間(円筒状領域D2)を、前記した如く、表面研磨により封水7との摩擦係数を低減し且つ最大限拡げるようにしておくことによっても、封水7の連れ回りによる脈動発生を有効に抑制することができる。
【0042】
また、封水6,7を周方向に均等配置された複数の給水孔68,78からシール空間C,Dに供給(噴出)させるようにしたことによって、実開昭63−119969号公報に開示されるような公知のタンデムシールにおける如くシールケース内周部の一箇所から封水を供給させる場合に比して、封水6,7によるフラッシング機能がより効果的に発揮され、更に誘導突起24,25,26による反転流6a,6b,7aを生じさせることにより、密封環の相対回転摺接部分31a,32a、41a,42a及び51a,52aに対するフラッシング機能が更に効果的に発揮されることになる。したがって、上記した高温流体用軸封装置によれば、高温条件に加えて高速,高圧の高PV値条件下においても、格別のトラブルを生じることなく、極めて良好なシール機能を発揮することができる。
【0043】
ところで、本発明の構成は上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の基本原理を逸脱しない範囲において、適宜に改良,変更することができる。
【0044】
例えば、上記した冷却室28を有するシールケース構造は、シールケース2内に一つの端面接触形メカニカルシール又は非接触形メカニカルシールを配置するようにしたシングルメカニカルシール構造の軸封装置、二つのメカニカルシールを並列配置するようにしたダブルシール構造又はタンデムシール構造の軸封装置や4つ以上のメカニカルシールを並列配置するようにした軸封装置にも、上記高温流体用軸封装置と同様に適用することができ、これと同様の作用効果を奏しうる。
【0045】
また、上記した高温流体用軸封装置にあっては、図7に示す如く、第2シール空間Dに開口する給排水口78,79の軸線方向位置関係を図1に示す高温流体用軸封装置(以下「第1実施例装置」という)とは逆にして、給水孔78が大気領域側メカニカルシール5における静止密封環(第3静止密封環)51の外周面に対向して配置されると共に、排水孔79が当該メカニカルシール5における回転密封環(第3回転密封環)52の外周面に対向して配置されるようにしておくことも可能である。すなわち、図7に示す高温流体用軸封装置(以下「第2実施例装置」という)では、第1実施例装置の給水孔及び給水溝を排水孔79及び排水溝76として使用すると共に第1実施例装置の排水孔及び排水溝を給水孔78及び給水溝75として使用し、さらに第1実施例装置の給水用ヘッダ室及び排水用ヘッダ室はそのまま給水用ヘッダ室72a及び排水用ヘッダ室74aとして使用し、給排水溝75,76と給排水用ヘッダ室72a,74aとを夫々クロスしない複数の給排水連絡通路72a,74aで接続してある。
【0046】
第2実施例装置は、第1実施例装置に比しては脈動防止効果が多少劣るものの、従来のタンデムシールに比しては大幅な脈抑制効果を発揮しうるものである。この点については、実験により確認された。すなわち、第1及び第2実施例装置と第2シール空間Dに開口する給排水孔を夫々一個とし且つ給排水孔を夫々給排水ラインに一本の給排水通路で連結した点を除いて第2実施例装置と同一構造をなく軸封装置(以下「比較例装置」という)とを使用して、同一条件下で回転軸1の回転数を変えながら、回転軸1の振幅を測定した。その結果は、図9に示す通りであった。すなわち、図9においては、回転軸1の回転数(r.p.m.)と振幅(μm p−p)との関係を、第1実施例装置については実線で、第2実施例装置については破線で、また比較例装置については鎖線で示してあるが、この実験結果からも、比較例装置では高速回転になるに従い振幅が増大して良好な運転が困難となるが、第1及び第2実施例装置では高速回転条件下でも回転軸1の振動が効果的に抑制されており、特に、第1実施例装置では回転軸1の振動が大幅に抑制されていることが理解される。
【0047】
また、第2シール空間Dにおける回転密封環52による封水7のポンピングないし連れ回り現象を抑制するために、第1又は第2実施例装置における当該回転密封環52の形状を工夫しておくことも有効と考えられる。例えば、図8は第1実施例装置において、回転密封環52の背面つまり保持環16の背面を機内領域A側へと漸次縮径する傾斜面16aに形成して、当該回転密封環52の回転に伴う封水7のポンピングないし連れ回り現象の発生を可及的に抑制しうるように工夫してある。
【0048】
また、本発明に係る高温流体用軸封装置は、上記した軸封装置における二次シールとして使用する他、それ単独のタンデムシールとして或いは3個以上のメカニカルシールが並列配置される軸封装置における一次シールとしても好適に使用することができることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0049】
1 回転軸
1a 軸体
2 シールケース
2a 第1本体部(本体部)
2b 第2本体部(本体部)
2c 第3本体部(本体部)
2d 第1保持部
2e 第2保持部
2f 第1仕切部
2g 通路形成部
2h 第2仕切部
2i Oリング保持部
2m 第1Oリング
2n 第2Oリング
2p 補強杆
2r 環状リング
2s フィン
2t フィン
3 第1メカニカルシール(一次シール)
4 第2メカニカルシール(二次シール)
5 第3メカニカルシール(三次シール)
6 封水
7 封水
8 機器ハウジング
8a シール部
8c 給排路形成部
8d 環状凹部
27 環状通路
28 冷却室
28a 冷却室部分
31 第1静止密封環(静止密封環)
31a 密封端面
32 第1回転密封環(回転密封環)
32a 密封端面
41 第2静止密封環
41a 密封端面
42 第2回転密封環
42a 密封端面
51 第3静止密封環
51a 密封端面
52 第3回転密封環
52a 密封端面
71 給水ライン
72 給水通路
72a ヘッダ室
72b 給水連絡通路
73 排水ライン
74 排水通路
74a ヘッダ室
74b 排水連絡通路
75 給水溝
76 排水溝
77 シャワーリング
78 給水孔
79 排水孔
80 冷却液供給路
81 冷却液排出路
82 冷却液
A 機内領域(機器ハウジング内領域)
A1 シールケース内領域
B 大気領域
C 第1シール空間(シール空間)
D 第2シール空間(シール空間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器ハウジングに取り付けられたシールケース内に、これを洞貫する回転軸に固定した固定密封環とこれに対向してシールケースにOリングを介して軸線方向移動可能に内嵌保持された静止密封環との対向端面である密封端面の相対回転作用によりシール機能を発揮するように構成されたメカニカルシールを配置してある高温流体用軸封装置において、
シールケースを、厚肉円筒体である本体部と、その端部の内周縁部から機器ハウジング領域方向に一体的に延びる薄肉円筒体である第1保持部と、その端部から径方向内方に一体的に延びる薄肉円環状板である第2保持部と、その内周端部から径方向内方に一体的に延びる薄肉円環状板である第1仕切部と、その内周端部から機器ハウジング領域方向に一体的に延びる薄肉円筒体であって回転軸の外周面との間に微小な環状通路を形成する通路形成部と、その端部から径方向外方に一体的に延びる薄肉円環状板である第2仕切部と、その外周端部から径方向外方に一体的に延びる薄肉円環状板であって外径が本体部と一致するOリング保持部とを具備する金属製構造物に構成して、Oリング保持部の内外周端部と機器ハウジングのシール部との間に第1及び第2Oリングを介在した状態で、機器ハウジングに取り付けてあり、その本体部とOリング保持部との間に形成される凹部を機器ハウジングに設けた給排路形成部で閉塞された冷却室として、この冷却室に当該給排路形成部に形成された冷却液給排路により冷却液を給排させるようにすると共に、当該冷却室の内周側部分であって両仕切部及び通路形成部で囲繞形成される冷却室部分により前記密封環が配置されたシールケース内領域と機器ハウジング内領域である高温流体領域とを区画するように構成してあることをしたことを特徴とする高温流体用軸封装置。
【請求項2】
機器ハウジングに取り付けられたシールケース内に、これを洞貫する回転軸に固定した固定密封環とシールケースにOリングを介して軸線方向移動可能に内嵌保持された静止密封環との対向端面である密封端面の相対回転作用によりシール機能を発揮するメカニカルシールに構成された一次シール、二次シール及び三次シールを並列配置し、二次シールと三次シールとの間に形成されたシール空間に、機器ハウジング内領域の流体圧力より低圧の封水を循環供給するように構成された高温流体用軸封装置であって、
シールケースを、厚肉円筒体である本体部と、その端部の内周縁部から機器ハウジング領域方向に一体的に延びる薄肉円筒体である第1保持部と、その端部から径方向内方に一体的に延びる薄肉円環状板である第2保持部と、その内周端部から径方向内方に一体的に延びる薄肉円環状板である第1仕切部と、その内周端部から機器ハウジング領域方向に一体的に延びる薄肉円筒体であって回転軸の外周面との間に微小な環状通路を形成する通路形成部と、その端部から径方向外方に一体的に延びる薄肉円環状板である第2仕切部と、その外周端部から径方向外方に一体的に延びる薄肉円環状板であって外径が本体部と一致するOリング保持部とを具備する金属製構造物に構成して、Oリング保持部の内外周端部と機器ハウジングのシール部との間に第1及び第2Oリングを介在した状態で、機器ハウジングに取り付けてあり、その本体部とOリング保持部との間に形成される凹部を機器ハウジングに設けた給排路形成部で閉塞された冷却室として、この冷却室に当該給排路形成部に形成された冷却液給排路により冷却液を給排させるようにすると共に、当該冷却室の内周側部分であって両仕切部及び通路形成部で囲繞形成される冷却室部分により前記一次シールの密封環が配置されたシールケース内領域と機器ハウジング内領域である高温流体領域とを区画するように構成し
シール空間に封水を循環供給する給排水手段を、シールケースの本体部に形成された給水通路と、当該本体部に形成された排水通路と、当該本体部の内周面に形成されて給水通路に連通する環状の給水溝と、当該本体部の内周面に形成されて排水通路に連通する環状の排水溝と、これら給排水溝の開口部を閉塞シールすべく当該本体部の内周面に取り付けられたシャワーリングと、シャワーリングに形成されて周方向に等間隔を隔てて並列する複数個の貫通孔であって給水溝に連通する給水孔と、シャワーリングに形成されて周方向に等間隔を隔てて並列する複数個の貫通孔であって排水溝に連通する排水孔とを具備して、給水通路から給水溝に供給された封水を全給水孔からシール空間に供給すると共にシール空間内の封水を全排水孔から排水溝を経て排水通路へと排出することによって、シール空間における循環供給に伴う封水の脈動現象を抑制するように構成したことを特徴とする高温流体用軸封装置。
【請求項3】
給水孔が三次シールにおける回転密封環の外周面に対向して配置されると共に、排水孔が三次シールにおける静止密封環の外周面に対向して配置されていることを特徴とする、請求項2に記載する高温流体用軸封装置。
【請求項4】
給水孔が三次シールにおける静止密封環の外周面に対向して配置されると共に、排水孔が三次シールにおける回転密封環の外周面に対向して配置されていることを特徴とする、請求項2に記載する高温流体用軸封装置。
【請求項5】
給水通路が、給水ラインに連通する環状の給水ヘッダ室と、給水ヘッダ室とシャワーリングで閉塞された給水溝内とを連通すべく周方向に等間隔を隔てて並列配置された複数の給水連絡通路とを具備するものであり、排水通路が、排水ラインに連通する環状の排水ヘッダ室と、排水ヘッダ室とシャワーリングで閉塞された排水溝内とを連通すべく周方向に等間隔を隔てて並列配置された複数の排水連絡通路とを具備するものであることを特徴とする、請求項2〜4の何れかに記載する高温流体用軸封装置。
【請求項6】
回転軸の軸線を通過する断面において給水連絡通路と排水連絡通路とがX字状にクロスした形態で形成されていることを特徴とする、請求項5に記載する高温流体用軸封装置。
【請求項7】
シールケース内の回転軸部分を軸本体とこれに嵌挿固定されるスリーブとで構成すると共に、前記給排路形成部がシールケースを囲繞する状態で内嵌する筒状体に構成し、回転密封環を含む回転側要素を取り付けたスリーブと静止密封環を含む静止側要素を取り付けたシールケースとを、着脱自在なセット爪により一体連結して、スリーブを回転軸に嵌挿固定させると共にシールケースを給排路形成部に嵌挿させた上、シールケースをその端部に取り付けた周方向に分割状の環状リングを給排路形成部の端部内周に形成した環状凹部に係合させることにより機器ハウジングに取り付けるように構成したカートリッジ構造のものであることを特徴とする、請求項1〜6に記載する高温流体用軸封装置。
【請求項8】
シールケースの本体部とOリング保持部との対向端面間に、その周方向に等間隔を隔てて並列する複数の金属製補強杆が溶着されていることを特徴とする、請求項1〜7の何れかに記載する高温流体用軸封装置。
【請求項9】
シールケースの第1保持部及びOリング保持部の内周面に多数の凸状フィンを一体形成してあることを特徴とする、請求項1〜8の何れかに記載する高温流体用軸封装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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