説明

高温蒸気発生器用のハイブリッド水処理

【課題】コスト的、時間的に有利な高温蒸気発生器用のハイブリッド水処理を提供する。
【解決手段】蒸気発生システムは、酸化化学作用を有する水を発生させるように構成された酸素水処理(OWT)サブシステムと、酸化化学作用を有する前記水を酸化化学作用を有する蒸気に転換するように構成された蒸気発生サブシステムと、酸化化学作用を有する前記蒸気に脱酸素剤を添加して、より低い酸化又は還元化学作用を有する蒸気を発生させるように構成された温度低減器又は他の一つ又は注入装置と、より低い酸化又は還元化学作用を有する前記蒸気を凝縮して凝縮水とするように構成された凝縮器とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温蒸気発生器用のハイブリッド水処理に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気発生器技術において、一つの考慮すべき事項は、蒸気と接触する鋼配管もしくは他の鋼構成要素の腐食である。腐食の問題は、より高い蒸気温度で増長する。腐食を低減するための既知のアプローチは、酸素水処理(酸素処理)(OWT)である。例えば、J.B. Kitto及びS.C. Stultzが編集した蒸気:その発生及び使用、第41版(米国オハイオ州バーバートン所在のバブコック・アンド・ウィルコックス社、c(著作権)2005年)を参照のこと。該文献の本文は、本明細書にあたかもその全体が完全に記載されているように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
OWTプロセスについての問題はより高温で現れ、これは、蒸気酸化から過熱器及び再熱器ペンダントの内側面上において酸化物の成長を増長する。該酸化物が十分に厚くなると、該酸化物の外側層が冷却中に管内径(ID)面から大きな片で剥離する傾向にある。OWTは、酸化物剥離に対する臨界厚を低下する。該剥離物(exfoliant)は、管曲がり部内に蓄積し得、その後のボイラーの再始動中に蒸気流路を塞ぎ得る。この詰まり(pluggage)は、蒸気からの冷却効果を低減させ、過熱管破損を招き得る。
【0004】
OWTを使用する蒸気発生器における酸化物剥離の問題を管理する現在の方法は、次のものを含む。すなわち、(1)過熱器及び再熱器ペンダントを酸化により耐性がある合金にアップグレードすること;(2)ボイラーをより頻繁に運転停止し、その後、蒸気ブローで再始動前に管ループから剥離物を一掃すること;(3)管曲がり部の詰まりの量を判定するためにX線及び/又は磁石を用い、その後、剥離物を除くために実質的に塞がった管ループを切断すること;及び(4)管面の耐酸化性を高めるために管IDを処理すること、である。酸化物剥離問題に対処するため、時には、これら四つの解決策の二つ以上が共に用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これら四つの方法のいずれの実行も高コストであり、多大な時間がかかる。方法(2)及び(3)は、管ループに蓄積した酸化物剥離物の物理的除去に焦点が当てられ、他方、方法(1)及び(4)は、過度の酸化に対抗するために管面の化学的性質をアップグレードする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面において、開示した方法は、鋼管類を含む蒸気発生器を使用して、水相及び蒸気相を含む蒸気の発生(生成)を実行する工程と、前記水相に酸素水処理(酸素処理)を適用し、水を酸化化学作用に転換する工程と、蒸気をより低い酸化化学作用又は還元化学作用に転換する還元水処理を前記蒸気相に適用する工程とを含む。
【0007】
本開示の別の側面において、開示した装置は、発生した蒸気を移送するように配置された蒸気側鋼管類を含む蒸気発生器と、脱酸素添加剤を更に含む水及び蒸気の少なくとも一方を蒸気側鋼管類内に注入するように構成された温度低減器又は他の注入器とを備える。
【0008】
本開示の別の側面において、開示した蒸気発生方法は、酸化化学作用を有する水を発生するために水を酸化で処理する工程と、酸化化学作用を有する前記水を、酸化化学作用を有する蒸気に転換する工程と、前記転換工程後、酸化化学作用を有する前記蒸気に脱酸素剤を添加して、より低い酸化又は還元化学作用を有する蒸気を作り出す工程とを含む。
【0009】
本開示の別の側面において、開示した蒸気発生システムは、酸化化学作用を有する水を発生させるように構成された酸素水処理(酸素処理)(OWT)サブシステムと、酸化化学作用を有する前記水を酸化化学作用を有する蒸気に転換するように構成された蒸気発生サブシステムと、より低い酸化又は還元化学作用を有する蒸気を発生されるため、酸化化学作用を有する前記蒸気に脱酸素剤を添加するように構成された注入器とを備える。
【0010】
本発明は、種々の構成要素及び構成要素の構成、及び種々のプロセス操作及びプロセス操作の構成における形態を採り得る。図面は、好ましい実施形態を例示するためだけのものであり、本発明を限定するように解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、ここに開示した水処理を用いる例示的な蒸気発生器水/蒸気循環システムを図式的に示す。
【図2】図2は、ここに開示した蒸気発生器水/蒸気循環システムのための水処理方法を図式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1を参照して、自然循環ドラム型蒸気発生器のための例示的な水/蒸気循環システム8が示される。循環システム8において、給水(供給水)は、エコノマイザー10の入口ヘッダーAに入り、煙道ガスの下方への流れとは反対方向に上方へと通過する。該水はヘッダーBに集められ、ヘッダーBも随意的に煙道ガス流中に配置される。該水は、次いで、エコノマイザー10のヘッダーBを蒸気ドラム20に接続する管類もしくは配管を通って流れる。該例示的な構成において、垂直管類14がヘッダーBから対流路16(対流路16の左側壁及び下方部分を表す破線によって図1に概略的に示される)を通って、蒸気発生器の上部に配置される一つ以上のエコノマイザー出口ヘッダーCへと垂直に走る。この構成において、ヘッダーBとC間の垂直管14は、例示される水平一次過熱器18及び/又は再熱器(図示せず)等の追加の構成要素のための水冷式サポートとしての役割を適切に果たすことができる。出口ヘッダーCからの水は、入口Dにて蒸気ドラム20内に移送される。地点A、B、C及びDを含む通路に沿う流体回路は、適切に水を搬送する。
【0013】
蒸気ドラム20において、上記水は、降下管入口にて降下管22に入る前に蒸気−水分離器から排出された水と混合する。降下管22は、蒸気ドラム20から出る。降下管22の出口Eは、供給チューブすなわち供給管26に水を分配する分配マニホルド24を備える。供給管26は、配管(例えば、水管壁、又は、炉30内又はその周囲に配置される別の一つ又は複数の流体導管28等)の入口Fへと水を移送する。概略的な図1において、炉30の左側は、一つ又は複数の流体導管28を概略的に示すように描かれ、他方、炉30の右側は、破線32を用いて概略的に描かれることに留意されたい。実際は、一つ又は複数の流体導管28は、一般に、炉30の周りに完全に配置されるか、そうでなければ、炉30の周囲を実質的に取り囲む。付加的にもしくは代替的に、一つ又は複数の流体導管28の一部又は全部が、炉30の周りでほぼ上方へと通るように企図される。例えば、一つの選択肢において、一つ又は複数の流体導管28は、炉30の周りで上方に延びる螺旋巻き管を含む。
【0014】
炉30は、適切な熱源を使用する。例えば、石炭を燃料とする蒸気発生器の場合は石炭燃焼、ガス燃焼蒸気発生器の場合は天然ガス、又は、油を燃料とする蒸気発生器の場合は燃料油等である。より一般的には、炉30は、一つ又は複数の流体導管28内の流体のエンタルピーを高めるために熱を発生させることができる任意の可燃性材料の燃焼によって加熱され得る。
【0015】
繰り返すが、水は、降下管22を通って炉30の底部の分配マニホルド24へと下方に流れ、ここで、マニホルド24及び供給管26が、下方の炉仕切壁ヘッダー又は一つ又は複数の流体導管28の他の入口Fへと循環水を転送及び分配する。該水は、炉壁を通って一つ又は複数の流体導管28を通り上昇し、一つ又は複数の流体導管28の出口ヘッダーGに存在する臨界未満の圧力のドラム型ボイラー又は蒸気発生器において、該水は二相(水/蒸気)混合物へと転換される。該二相水/蒸気混合物は、出口ヘッダーGから上昇管34を通って搬送され、蒸気ドラム20内に放出され、ここで、蒸気−水分離器が作動して二相混合物の蒸気成分と水成分を分離する。この分離は、実質的に蒸気の無い水を降下管入口接続部Dへと戻す。
【0016】
蒸気ドラム20の一次蒸気分離装置を出る蒸気の残留水分は、二次蒸気分離器(細部は図示されない)において除去され、乾燥蒸気は、複数のドラム出口接続部Hを通って過熱器18に放出される。複数のドラム出口接続部Hは、図1において、例示的なヘッダーI及び例示的なヘッダーJに対する例示的な接続部を含む。蒸気ドラム20の出口接続部Hの下流の蒸気回路構成は、対流路包囲体16を冷却し、過熱された蒸気状態を発生させる。蒸気ドラム20の出口Hからの蒸気は、複数の接続部を通って、屋根管を提供するヘッダーIへと送られ、また別に、ペンダント(吊り下げ物)対流路40(過熱器/再熱器垂直管が上方のサポートから吊り下げられているので、このように名付けられる)の膜パネルを提供するヘッダーJへと送られる。蒸気は、これらの膜パネルを通って出口ヘッダーKへと流れる。これら出口ヘッダーK及び屋根管出口ヘッダーLからの蒸気は、次いで、対流路包囲体16(これは、時には水平対流路16と称される。その理由は、過熱器18、エコノマイザー10、及び再熱器(図示せず)の管がこの燃料ガス降下管において水平であるためである。)に対して冷却を与える。蒸気は、管42を通って下方に流れ、対流路包囲体16に対して冷却を与え、エコノマイザーバンク10のすぐ上流(煙道ガス流の方向に対して)の出口ヘッダーMに集められる。
【0017】
蒸気流は、一次過熱器18に入り、一次過熱器18を通って上昇し、出口ヘッダーN及び接続配管44を通って排出され、接続配管44は過熱された蒸気を移送する。スプレー温度低減器50が配管44に含まれる。温度低減器は、水又は低温蒸気を過熱された蒸気流に付加することにより、過熱された蒸気を制御可能に冷却する装置である。過熱された蒸気は、温度低減器50を介して制御された温度低下を経た後、入口ヘッダーPに入り、概略的に52で表される二次過熱器内に送られる。過熱された蒸気は、二次過熱器区域52を通って出口ヘッダーQへと流れる。図1には一つの温度低減器50及び一つの二次過熱器区域52が例示されるが、所望の上昇し制御された温度で過熱された蒸気を供給するため、随意的に二つ以上の二次過熱区域が設けられ、また、随意的に二つ以上の温度低減器が設けられ、例えば、温度低減器が各過熱区域間にある。最終出口ヘッダーQは、過熱された蒸気を吐出口Rへと搬送する。吐出口Rに送られた過熱蒸気は、一つ又は複数の蒸気ライン54へと送られ、蒸気ライン54は、該ボイラー又は蒸気発生器包囲体(図示せず)の外部を通り、適切な負荷(例えば、電力を発生させるのに使用される蒸気発生器の場合に適切に用いられるような制御弁56を有する例示されたタービン等)と接続する。
【0018】
上記負荷の下流で、蒸気は該蒸気発生器に戻る。凝縮器60は、蒸気を水へと凝縮するため、いかなる残りの過度の熱をも除去する。該水は供給水を形成し、底部ヘッダーA内に入り、これにより、水/蒸気循環システム8の閉循環ループが完結する。流体の何からかの喪失を補償するため、補給水供給部62が設けられる。別の実施形態において、蒸気発生器は、完全に開放する流体サイクルで作動する。完全に開放する流体サイクルでは、凝縮器60の出力が蒸気発生器に戻されず、その代わりに、供給水が外部水供給部により全体的に与えられる。
【0019】
図1の水/蒸気循環システム8は、簡易化した説明例である。該例示的な水/蒸気循システム8は、過熱器18、52を含む自然循環臨界未満蒸気発生器である。しかしながら、開示された水処理技術は、貫流超臨界圧蒸気発生器システムにも適用可能である。例示的システム8は自然循環を使用するが、適切なポンピングを介する補助循環又は強制循環蒸気発生器システムも企図される。図1の蒸気発生器は単なる説明例であり、別の型式の蒸気発生器に代えることができる。蒸気発生のための熱源は、多種多様であり得、例えば、石炭、ガス、油、又は他の可燃性燃料の燃焼による。多数の付加的な構成要素又は他の構成要素が特定の用途に対し必要に応じて付加され得、及び/又は、記載した構成要素が異なる構成で配置され得る。例えば、図1に例示した蒸気発生器は再熱器を含まないが、本開示の概念は、再熱器の一つ又は複数の段階を含む蒸気発生器にも適用される。そのような用途において、スプレー温度低減器が、再加熱蒸気温度制御を提供するため、そのような再熱器の入口に一般に設けられるであろう。開示した水処理技術を利用することができる種々の蒸気発生器及び蒸気発生システムは、例えば、J.B. Kitto及びS.C. Stultzが編集した蒸気:その発生及び使用、第41版(米国オハイオ州バーバートン所在のバブコック・アンド・ウィルコックス社、c(著作権)2005年)に記載される。該文献の本文は、本明細書にあたかもその全体が完全に記載されているように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
図1の水/蒸気循環システム8は、酸素水処理(酸素処理)(OWT)サブシステム70を更に含む。このサブシステムは、鋼管類もしくは、水又は蒸気と接触する他の鋼に腐食からの保護を与える。OWTプロセスは、不純物が存在しない状態で、酸素が、酸素が無い状態で生じる酸化鉄よりも溶けにくい保護酸化鉄を生成するという所見に基づく。OWTサブシステム70は、給水中に制御された酸素濃度を確立する。保護酸化鉄の効率的な形成のため、供水は高純度であるべきである。例えば、いくつかの実施形態において、OWT処理にかけられる給水は、25Cで0.15μS/cm未満のカチオン導電率を有する。OWTサブシステム70は、低濃度の酸素を給水に加える。いくつかの実施形態において、目標酸素濃度は、約0.040ppmから0.150ppmの範囲であるが、より高い又は低い酸素濃度も企図される。給水pHは、OWTを伴わないで作動する類似のボイラーと比較して低下され得る。OWTプロセスの更なる説明のために、例えば、J.B. Kitto及びS.C. Stultzが編集した蒸気:その発生及び使用、第41版(米国オハイオ州バーバートン所在のバブコック・アンド・ウィルコックス社、c(著作権)2005年)を参照されたい。該文献の本文は、本明細書にあたかもその全体が完全に記載されているように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0021】
いかなる特定の操作理論にも限定されることなく、次の点が考えられる。すなわち、(i)OWTサブシステム70によって提供されるOWTが、冷却中に、加熱器要素18、52、いずれかの再熱器その他のID表面に形成される酸化物における圧縮応力を高める点;及び(ii)これらの高まった圧縮応力が、外側酸化物層をより大きい片でより容易に剥離させる点である。これらの剥片は、管曲がり部を塞いでおり、ボイラーの再始動中に過熱破損を引き起こす傾向にある。上記付加的応力は、マグネタイト層(しばしば表面酸化物の外側層とも称される)及びスピネル層(しばしば表面酸化物の内側層とも称される)上でのヘマタイト相の形成によって生じると考えられる。ヘマタイトは、下にある酸化物並びに鋼基体と比べて低い熱膨張率を有する。従って、冷却中、ヘマタイトは、鋼上の酸化物に大きい圧縮応力を作り出し、外側酸化物層(ヘマタイトを含む)を、内側酸化物層からより大きい片で強制的に剥離させる。より高温で稼働する蒸気発生器において、より高い蒸気温度が、蒸気酸化からの、過熱器及び再熱器ペンダントの内側面における酸化物の成長を増長し、また、全体的な加熱/冷却温度の揺れを増加させ、そのため、より大きい平均片寸法でのより急速な剥離をもたらす。OWTからの、剥離に対する酸化物の臨界厚は、全揮発性処理(AVT)等のいくつかの他の耐食性処理プロセスからの臨界厚によりも著しく薄いことが分かった。その結果、OWTを使用する既存の蒸気発生器では、OWTによって得られる利益である供水配管における腐食の低減及び炉壁管類における堆積の低減は、OWTにより引き起こされる、高温過熱器及び再熱器管区域において酸化物の剥離及び詰まりが増長するという問題点を犠牲にしている。
【0022】
本明細書中に開示したように、OWTによって引き起こされる酸化物の剥離及び詰まりの問題が増長するというこの欠点を低減もしくは除去するため、蒸気相で追加の水処理プロセスを使用することが本明細書中に開示される。該開示されたアプローチは、OWTサブシステム70によりOWTを給水に(もしくは、より一般的に水相に)適用して水に酸化化学作用を与える。酸化化学作用を伴う水は、これも酸化化学作用を有する蒸気(及び随意的に過熱された蒸気)に転換される。しかしながら、蒸気相のある時点で、ヒドラジン及び/又はカルボヒドラジド等の脱酸素剤が蒸気回路に導入される。脱酸素剤は、酸化化学作用又は還元化学作用が低い蒸気を作り出すため、OWT処理により、蒸気中に存在する酸素を除去する。
【0023】
引き続き図1を参照して、適切な実施形態において、脱酸素剤は、一つ又は複数の温度低減器を介して導入される。例示的な実施形態において、スプレー温度低減器50は、脱酸素剤を含む水又は蒸気を供給する源72を用いて温度調整を実行する。スプレー温度低減器50は、次いで、蒸気が入口ヘッダーPに入って二次過熱器52に供給される前に、蒸気に脱酸素剤を導入する。複数の温度低減器を有する複数の過熱要素及び/又は再熱要素を含むより複雑な蒸気回路において、一つ、二つ又はそれ以上の温度低減器が、脱酸素添加剤を含む温度調整水もしくは温度調整蒸気を搬送するように変更され得る。
【0024】
有利には、温度低減器50は、水を蒸気回路に注入するように構成された既存のシステム構成要素である。そのため、脱酸素剤を導入する変更は、温度低減器50内に供給される温度調整水の調整のみを必要とする。しかしながら、付加的にもしくは代替的に、別の一つ又は複数の注入装置(随意的に、脱酸素剤を導入するという単一目的のために設けられた専用の注入装置を含み得る)により脱酸素剤を蒸気回路に導入することも企図される。
【0025】
脱酸素剤の付加は、脱酸素剤注入点から下流に蒸気を作り出し、該蒸気は、酸化化学作用が、又は還元化学作用さえも低下している。いかなる特定の操作理論にも限定されることなく、より低い酸化又は還元蒸気状態は、酸化物表面上でのヘマタイト相の形成を抑え、そのため、ボイラーサイクリング及び停止からの応力増強を低減する。酸化物におけるこれらの残留応力を低下することは、外側酸化物層が冷却中に剥離する傾向を抑制し、剥離に関連する詰まりを低減もしくは除去する。このより低い酸化又は還元化学作用は、蒸気回路における脱酸素剤の注入点から下流のすべての地点で存在する。従って、説明例において、二次過熱器52を通って流れる蒸気は、より低い酸化又は還元化学作用を有し、そのため、過剰な酸化物剥離及びフレーキングをもたらす可能性は低く、これは、下流(蒸気流の方向に対する)のタービン56及び再熱器(図示せず)にとっても有利である。
【0026】
脱酸素剤は、実質的に、蒸気から酸素を取り除くと共に、該脱酸素剤が注入される高温蒸気環境と適合するどのような添加剤であってもよい。いくつかの実施形態において、脱酸素剤はヒドラジンを含む。いくつかの実施形態において、脱酸素剤はカルボヒドラジドを含む。いくつかの実施形態において、脱酸素剤は、ヒドラジンベースの脱酸素剤を含む。いくつかの実施形態において、脱酸素剤は、ヒドラジドベースの脱酸素剤を含む。ヒドラジン及び/もしくは別のヒドラジンベースの脱酸素剤、と/又は、カルボヒドラジド及び/もしくは別のヒドラジンベースの脱酸素剤との種々の組合せも企図される。脱酸素添加剤の濃度は、酸化又は還元化学作用の望ましい低下を与えるのに十分なものであるべきである。例えば、OWT後、水(及びそれゆえに転換された蒸気)は、約0.100ppmの酸素濃度を有し、そのため、脱酸素添加剤は、この酸素の実質的すべてを取り除くのに十分なものであるべき、例えば約0.100(x)ppmの濃度を有するべきある。ここで、xは、添加脱酸素剤による不完全な除去を吸収する乗法(倍数)因子である。いくつかの特定ケースにおいて、x=1が適当であり得る。
【0027】
低下した酸化又は還元化学作用を有する蒸気は、注入地点の下流(すなわち、例示実施形態におけるスプレー温度低減器50の下流)にて蒸気回路を通って流れ、最終的に水として凝縮器に集められる。いくつかの実施形態において、脱酸素剤は水よりも揮発性が高く、凝縮中気相のままである。これは、例えば、ヒドラジン又はカルボヒドラジドの場合である。そのため、より揮発性が高い脱酸素剤は、凝縮中、気相のままであり、該気相脱酸素剤を安全に封じ込め(収容、抑制)又は処理するための適切な洗浄機能(スクラバー)を有するベント74を介して該システムから排気される。いくつかの実施形態において、気相脱酸素剤を封じ込めるために活性炭に基づく洗浄が適切に使用される。凝縮水には、そのため、実質的に脱酸素剤が無く、また、OWTサブシステム70に入力され、ここで、上記サイクリングを完成するために既述したようにOWTを再度かけられる。
【0028】
脱酸素剤が凝縮器60で水と共に部分的に又は完全に凝縮する場合、OWTサブシステム70への入力前に凝縮した水から液相脱酸素剤を除去するため、適切な液相フィルタリングもしくは液相処理が使用される。
【0029】
凝縮した水が蒸気発生器に戻されない実施形態において、気相及び/又は液相脱酸素剤を封じ込め又は無害にするため、実質的にどのような適切な処分プロセスも使用可能である。
【0030】
脱酸素剤の添加を必要とする開示した水処理の部分は、従来のすべての揮発性処理(AVT)に対するいくつかの類似点を有する。例えば、J.B. Kitto及びS.C. Stultzが編集した蒸気:その発生及び使用、第41版(米国オハイオ州バーバートン所在のバブコック・アンド・ウィルコックス社、c(著作権)2005年)、第42章を参照のこと。該文献の本文は、本明細書にあたかもその全体が完全に記載されているように、参照により本明細書に組み込まれる。AVTにおいて、酸素は給水には全く付加されず、それと反対に、存在し得るいかなる残留酸素をも取り除くために給水に脱酸素剤が添加される。AVTの目標は、水及び蒸気回路の両方の全体から酸素を除去することである。OWTと比べると、AVTにおいて、マグネタイトの表面におけるヘマタイト相が実質的に少ないか又は存在さえせず、これは、結果として、冷却中の酸化物における残留応力の増大を遅くする。より遅い応力増大(蓄積)は、OWTと比べて、剥離の始まり前に外側酸化物層が実質的により厚く成長することを可能にする。加えて、より遅い応力増大は、各冷却イベント間に生じる酸化物剥離の量を低減し、そのため、管類を詰まらせる傾向がより低いより小さい剥片を作り出す。その結果、AVT水処理を使用する蒸気発生器は、一般に、OWTと比べて、酸化物剥離による過熱器及び再熱器の管類の詰まりが実質的に低減することになる。その一方、AVTは、OWTと比べて、給水配管における腐食及び路壁管類28における堆積を抑制する効率が実質的に低下する。
【0031】
本明細書中に開示した水処理は、水回路で実行されるOWTを使用する。これは、水回路に、及び蒸気回路のより低い温度部分に、腐食及び堆積の抑制に関するOWTの実質的利益を提供する。蒸気回路の高温部分52の上流にて蒸気回路に配置された説明例のスプレー温度低減器50又は他の一つ又は複数の注入装置を介して、蒸気相において脱酸素剤が後に添加される。添加された脱酸素剤は、OWTにより加えられた酸素を大部分又は完全に取り除くのに十分な濃度である。例えば、OWTのために酸素濃度が約0.040ppm〜0.150ppmの範囲にある場合、蒸気槽に注入された脱酸素剤の濃度は、この酸素のほとんど又は全部を取り除くのに十分である。これは、脱酸素剤の注入地点の下流に「AVTに似た」状態を作り出し、これは、酸化化学作用を有する蒸気を用いて稼働される際に酸化物剥離が最も生じやすい蒸気回路の高温部分における酸化物剥離に関連する詰まりを抑制する。
【0032】
図2を参照して、開示した水処理プロセスを含む例示的な蒸気発生プロセスが記載される。図2のプロセスは、鋼管類を含む実質的にどのような型式の蒸気発生器をも使用して有効に実行可能である。操作100において、OWTは、酸化化学作用102を有する水を発生させるように実行される。操作104において、この水は、酸化化学作用106を有する蒸気に転換される。
【0033】
操作110において蒸気は過熱され、操作112において、該過熱された蒸気は、温度を下げるために温度調整にかけられる。温度調整操作112において、望ましい管理温度でかつ酸化又は還元化学作用116が低下した過熱蒸気を形成するため、脱酸素剤114が付加される。
【0034】
随意的に、第2過熱操作120及び第2温度調整操作122を含む第2過熱段階が実行される。第2温度調整操作122はまた、随意的に、低下した化学作用126を有する最終作動蒸気を作り出すために脱酸素剤添加剤124(これは、一般に、脱酸素剤114と同じ添加剤であるか又は異なる添加剤であり得る。)を用いる。随意的に、第3又はそれ以上の過熱段階(図示せず)が実行される。代替的に又は付加的に、一つ又は複数の再加熱段階が実行され得る。脱酸素剤は、いかなる温度調整においても添加され得る。いくつかの実施形態において、例えば、酸化蒸気化学作用によって与えられる耐食性を、より低い酸化又は還元蒸気化学作用によって与えられる低下した剥離に対し交換するために、蒸気回路の中間段階で蒸気化学作用の程度が変化するような方法等で、有益な交換がなされ得る。
【0035】
最終動作蒸気126は、一つ又は複数の有益な動作130、一例として発電所のタービンを駆動するもの等において使用される。そのような操作は、蒸気の冷却を必要とするので、有益な操作130後の最終蒸気132は、蒸気もしくは過熱された蒸気132であり得る。いずれの場合でも、最終蒸気132は、凝縮操作140において凝縮され、凝縮水142を作り出す。凝縮水142は、随意的に、(図示したように)OWT操作100に戻される。凝縮操作140はまた、脱酸素剤を含むベント生成物144を作り出す。(これは、脱酸素剤揮発性物質が、蒸気が凝縮して水に戻った後、実質的に気相のままであるような点を想定する。)。ベント生成物144は、ベント生成物144を封じ込めるか又は安全にするため、例示されるような洗浄操作146又はいくつかの他の処理にかけられる。
【0036】
好ましい実施形態が例示され記述された。当然、上記詳細な説明を読み理解すると、他のものへの変更及び変形が生じるであろう。本発明は、そのようなすべての変更及び変形を、これらが特許請求の範囲又はその均等の範囲に入る限り、含むものと解釈されることが企図される。
【符号の説明】
【0037】
8 水/蒸気循環システム
10 エコノマイザー
16 対流路
18 過熱器
20 蒸気ドラム
24 分配マニホルド
30 炉
40 ペンダント対流路
50 スプレー温度低減器
52 二次過熱器
54 蒸気ライン
56 タービン
60 凝縮器
70 酸素水処理(OWT)サブシステム
72 脱酸素剤を含む水/蒸気減
74 洗浄機能を有するベント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管類を含む蒸気発生器を用いて、水相及び蒸気相を含む蒸気の発生を実行する工程と、
前記水相に酸素水処理を適用して水を酸化化学作用に転換する工程と、
蒸気をより低い酸化化学作用又は還元化学作用に転換する還元水処理を前記蒸気相に適用する工程とを含む方法。
【請求項2】
前記還元水処理を適用する工程は、脱酸素添加剤を含む水又は蒸気を用いて温度調整を実行することを含む請求項1の方法。
【請求項3】
前記蒸気発生を実行する工程は、蒸気相を過熱することを含み、前記温度調整は過熱された蒸気相に対して実行される請求項2の方法。
【請求項4】
前記還元水処理を適用する工程は、蒸気相に脱酸素剤を添加することを含む請求項1の方法。
【請求項5】
前記脱酸素剤は、ヒドラジン及びカルボヒドラジドの少なくとも一方を含む請求項4の方法。
【請求項6】
前記蒸気相における還元水処理は、蒸気を還元化学作用に転換する請求項1の方法。
【請求項7】
請求項1に記載される方法を実行するように構成された、鋼管類を含む蒸気発生器。
【請求項8】
発生した蒸気を移送するように配置された蒸気側鋼管類を含む蒸気発生器と、
前記蒸気側鋼管類内に、脱酸素添加剤を含む水及び蒸気の少なくとも一方を注入するように構成された温度低減器又は他の注入装置とを備える装置。
【請求項9】
蒸気発生方法であって、
水を酸素で処理して酸化化学作用を有する水を発生させる工程と、
酸化化学作用を有する前記水を酸化化学作用を有する蒸気に転換する工程と、
前記転換後、酸化化学作用を有する前記蒸気に脱酸素剤を添加して、より低い酸化又は還元化学作用を有する蒸気を作り出す工程とを含む蒸気発生方法。
【請求項10】
前記より低い酸化又は還元化学作用を有する蒸気を水へと凝縮する工程と、
前記酸素処理工程、転換工程、添加工程及び凝縮工程を繰り返して、蒸気発生サイクルを形成する工程とを更に含む請求項9の蒸気発生方法。
【請求項11】
前記添加工程は、ヒドラジンベースの脱酸素剤を添加することを含む請求項9の蒸気発生方法。
【請求項12】
前記ヒドラジンベースの脱酸素剤はヒドラジンから成る請求項11の蒸気発生方法。
【請求項13】
前記添加工程は、ヒドラジドベースの脱酸素剤を添加することを含む請求項9の蒸気発生方法。
【請求項14】
前記ヒドラジドベースの脱酸素剤はカルボヒドラジドから成る請求項13の蒸気発生方法。
【請求項15】
前記添加工程は、ヒドラジンベースの脱酸素剤とヒドラジドベースの脱酸素剤の組合せから成る脱酸素剤を添加することを含む請求項9の蒸気発生方法。
【請求項16】
前記添加工程は、ヒドラジンとカルボヒドラジドの組合せから成る脱酸素剤を添加することを含む請求項9の蒸気発生方法。
【請求項17】
前記酸素処理工程は、水に対して酸素水処理(OWT)を実行することを含み、該水は、25Cで0.15μS/cm未満のカチオン導電率を有する請求項9の蒸気発生方法。
【請求項18】
前記添加工程は、脱酸素剤を含む水及び蒸気の少なくとも一方を用いて温度調整を実行することを含む請求項9の蒸気発生方法。
【請求項19】
(i)酸化化学作用を有する蒸気及び(ii)還元化学作用を有する蒸気の少なくとも一方に対して過熱操作を実行する工程を更に含む請求項9の蒸気発生方法。
【請求項20】
前記添加工程は前記過熱操作後に実行され、前記添加工程は、脱酸素剤を含む水及び蒸気の少なくとも一方を用いて温度調整を実行することを含む請求項19の蒸気発生方法。
【請求項21】
温度調整の実行後、少なくとも一つの付加的な過熱操作を実行する工程を更に含む請求項20の蒸気発生方法。
【請求項22】
前記過熱操作及び温度調整操作を少なくとも一回繰り返す工程を更に含む請求項20の蒸気発生方法。
【請求項23】
前記添加工程は、還元化学作用を有する蒸気を作り出す請求項9の蒸気発生方法。
【請求項24】
蒸気発生システムであって、
酸化化学作用を有する水を発生させるように構成された酸素水処理(OWT)サブシステムと、
酸化化学作用を有する前記水を酸化化学作用を有する蒸気に転換するように構成された蒸気発生サブシステムと、
酸化化学作用を有する前記蒸気に脱酸素剤を添加して、より低い酸化又は還元化学作用を有する蒸気を発生させるように構成された注入器と、
より低い酸化又は還元化学作用を有する前記蒸気を凝縮して凝縮水とするように構成された凝縮器とを備える蒸気発生システム。
【請求項25】
前記注入器は、還元化学作用を有する蒸気を発生させるために、酸化化学作用を有する前記蒸気に脱酸素剤を添加するように構成される請求項24の蒸気発生システム。
【請求項26】
前記注入器は温度低減器を含む請求項24の蒸気発生システム。
【請求項27】
前記凝縮器は、更に、前記凝縮水を前記OWTサブシステムに入力するように構成される請求項24の蒸気発生システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−196679(P2011−196679A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−59734(P2011−59734)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(509106500)バブコック・アンド・ウィルコックス・パワー・ジェネレイション・グループ・インコーポレイテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】BABCOCK & WILCOX POWER GENERATION GROUP,INC.
【住所又は居所原語表記】20 South Van Buren Avenue,Barberton,OH 44203,U.S.A.
【Fターム(参考)】