説明

高湿度保冷庫

【課題】生花を含む植物、青果物、及びそれ以外の生鮮食料品のいずれか1又は2以上からなる保存物を、低温及び高湿度の状態で貯蔵すると共に、保存物から発生したエチレンガスを除去し、保存物の長期保存を可能にする高湿度保冷庫を提供する。
【解決手段】生花を含む植物、青果物、及びそれ以外の生鮮食料品のいずれか1又は2以上からなる保存物Aを貯蔵する密閉部屋11と、密閉部屋11に設けられ密閉部屋11内の温度を0℃を超え10℃以下に調整する保冷手段12と、密閉部屋11に設けられ密閉部屋11内の空気に水分を与えて相対湿度90%RH以上に加湿する加湿手段13とを有する高湿度保冷庫10であって、加湿手段13には、保存物から発生したエチレンガスの吸着及び分解のいずれか1又は2を行うエチレンガス除去材14が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生花を含む植物、青果物、及びそれ以外の生鮮食料品のいずれか1又は2以上からなる保存物を、低温及び高湿度の状態で貯蔵する高湿度保冷庫に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生花を含む植物、青果物(例えば、果物又は野菜)、又は生鮮食料品(例えば、魚又は肉類)のような保存物は、その鮮度を保持するため冷蔵庫で保存されている。
また、例えば、特許文献1には、保存物の一例である切り花の鮮度を保つため、切り花を入れる水槽を配置した貯蔵室と、水槽内の水を冷却及び循環させる冷却装置とを有し、水槽内の水を蒸発させることによって、貯蔵室内を高湿度に保つ高湿度保冷庫が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−196139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、保存物を冷蔵庫で貯蔵する場合、冷蔵庫内が低湿度となって保存物の鮮度が低下する。ここで、冷蔵庫内に水蒸気を放出する加湿器を配置することも考えられるが、この場合、加湿器から放出される水蒸気がすぐに水滴となり、冷蔵庫内の湿度を改善できなかった。
また、特許文献1の発明では、水槽内の水を蒸発させて貯蔵庫内を高湿度とするため、水を蒸発させて貯蔵室内を高湿度にするまでに長時間を要していた。なお、水槽内の水の冷却で、貯蔵室の室温を調整することは難しく、また室温を水温よりも低くすることができなかった。
更に、保存物の中でも特に青果物は、その熟成に伴ってエチレンガスを発生し、これが例えば、貯蔵されている他の青果物の熟成を促進させるため、その鮮度低下を抑制できず長期保存が難しかった。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、生花を含む植物、青果物、及びそれ以外の生鮮食料品のいずれか1又は2以上からなる保存物を、低温及び高湿度の状態で貯蔵すると共に、保存物から発生したエチレンガスを除去し、保存物の長期保存を可能にする高湿度保冷庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る高湿度保冷庫は、生花を含む植物、青果物、及びそれ以外の生鮮食料品のいずれか1又は2以上からなる保存物を貯蔵する密閉部屋と、該密閉部屋に設けられ該密閉部屋内の温度を0℃を超え10℃以下に調整する保冷手段と、前記密閉部屋に設けられ該密閉部屋内の空気に水分を与えて相対湿度90%RH以上に加湿する加湿手段とを有する高湿度保冷庫であって、
前記加湿手段には、前記保存物から発生したエチレンガスの吸着及び分解のいずれか1又は2を行うエチレンガス除去材が設けられている。
【0007】
本発明に係る高湿度保冷庫において、前記エチレンガス除去材は、パラジウム及びパラジウム合金のいずれか1又は2を有することが好ましい。
本発明に係る高湿度保冷庫において、前記加湿手段は、水分を吸収可能な吸湿材と、該吸湿材の上方に配置され該吸湿材に散水する散水部と、該散水部から散水された水を回収し貯留する貯留槽と、該貯留槽で回収した水を前記散水部へ送るポンプとを有し、しかも前記散水部と前記貯留槽との間に前記エチレンガス除去材を配置することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
請求項1〜3記載の高湿度保冷庫は、保冷手段及び加湿手段によって、保存物表面からの水分の蒸発を抑制、更には防止でき、保存物の保存期間を従来よりも長くできる。
また、加湿手段には、エチレンガス除去材が設けられているので、加湿するために集められた空気からエチレンガスを効率よく除去できる。これにより、密閉部屋内に存在するエチレンガスの除去効率を高めることができ、エチレンガスによる保存物の鮮度低下を抑制、更には防止して、保存物の保存期間を更に長くできる。
【0009】
特に、請求項2記載の高湿度保冷庫は、エチレンガス除去材にパラジウム及びパラジウム合金のいずれか1又は2を使用するので、触媒機能が発揮され、密閉部屋内に存在するエチレンガスの除去効率を更に高めることができる。
請求項3記載の高湿度保冷庫は、散水部と貯留槽との間にエチレンガス除去材が配置されているので、散水部から散水され、空気の加湿の際に使用される水に付着したエチレンガスを除去できる。これにより、貯留槽で回収された清浄な水を、ポンプにより再度散水部へ送って空気の加湿のために循環使用できるので、エチレンガスの残存量が少ない加湿された空気を密閉部屋内に流すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の第1の実施の形態に係る高湿度保冷庫の説明図、図2は本発明の第2の実施の形態に係る高湿度保冷庫の説明図である。
【0011】
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係る高湿度保冷庫10は、生花を含む植物、青果物(例えば、果物又は野菜)、及びそれ以外の生鮮食料品(例えば、魚又は肉類)のいずれか1又は2以上からなる保存物を貯蔵する密閉部屋11と、密閉部屋11に設けられ密閉部屋11内の温度を調整する保冷手段12と、密閉部屋11に設けられ密閉部屋11内の空気に水分を与えて加湿する加湿手段13とを有するものであり、加湿手段13には、保存物から発生したエチレンガスの吸着及び分解のいずれか1又は2を行うエチレンガス除去材14が設けられている。なお、本実施の形態では、保存物としてユリの切り花Aを保存している。以下、詳しく説明する。
【0012】
密閉部屋11は、それぞれステンレス板15の外側に断熱材16が貼られた側壁部17、天井部18、及び床部19で構成されている。
密閉部屋11の側壁部17の一部には、保存物の搬入及び搬出を行う扉20が設けられている。また、床部19の下面4隅には、それぞれ脚部21が設けられ、密閉部屋11を設置面から隙間をあけて支持している。この密閉部屋11内は、側壁部17の一面側と間隔を有して平行に設けられ、上部と下部に開口を有する仕切板22により、保存物を貯蔵すると共に低温の空気を製造する保存チャンバー23と、保存チャンバー23に供給する高湿度の空気を製造する加湿チャンバー24とに仕切られている。
【0013】
保存チャンバー23の天井部18には、1台又は複数台の保冷手段12が取付けられている。
保冷手段12は、密閉部屋11内の空気を吸引して吹き出すことにより、保存チャンバー23と加湿チャンバー24との間で空気を循環させる図示しないファン(空気循環手段の一例)と、このファンによって流れ込んだ空気を所定温度に冷却するための図示しない熱交換機とを有している。これにより、密閉部屋11内の温度を所定温度範囲に調整できる。
なお、保冷手段12の設置位置は、本実施の形態では、保存チャンバー23の天井部18で、仕切板22の上部開口近傍としたが、密閉部屋11内の空気を冷却し循環させることができれば、これに限定されるものではない。
【0014】
ここで、密閉部屋11内の温度範囲について説明する。
保存物が生花のように生きている植物の場合、保存する植物によって適温は異なるが、密閉部屋11内の温度が0℃以下で植物に含まれる水が凍ってしまい、12℃を超えると生理活性を十分に抑えることができず、成長が促進されて植物が老化してしまう。
また、保存物が青果物及びそれ以外の生鮮食料品の場合、密閉部屋11内の温度が0℃以下で保存物に含まれる水が凍ってしまい、12℃を超えると保存物に付着した細菌が増殖し易くなる。
従って、植物の生理活性を確実に抑えるため、また付着した細菌の増殖を確実に抑えるために、密閉部屋11内の温度を、0℃を超え10℃以下、好ましくは0℃を超え5℃以下の低温の状態にする。
【0015】
加湿チャンバー24の上部には、保存チャンバー23の保冷手段12を通過した空気を、加湿手段13へ供給する1又は複数の吸引ファン25が設けられている。
加湿手段13は、水分を吸収可能な複数枚のタオル(吸湿材の一例)26と、タオル26の上方に配置されタオル26に散水する散水用配管(散水部の一例)27と、散水用配管27から散水された水を回収し貯留する貯留槽28と、貯留槽28で回収した水を散水用配管27へ送るポンプ29を有している。
散水用配管27には、その長手方向に渡って、供給された水を散水する複数の小孔30が形成されている。なお、散水用配管の代わりに散水ノズルを使用してもよい。
【0016】
タオル26は、加湿チャンバー24の上側に水平に、僅かな隙間を開けて設けられた複数の支持棒31に、それぞれ吊り下げ状態で取付けられている。なお、タオルの代わりに、例えば、吸水性を有する他の布地、スポンジ、又はガラス繊維を使用することもできる。
これにより、散水用配管27の小孔30から散水された水を、各タオル26が吸水できると共に、隣り合うタオル26の間を吸引ファン25で送られた空気が加湿されながら下方へ流れるようになっている。
【0017】
ここで、加湿された空気の相対湿度(RH:relative humidity)の範囲について説明する。
相対湿度が90%RH未満では、保存物の水分の蒸散が起こり易くなり、その鮮度が低下する。
一方、上限値については規定していないが、相対湿度は高い程、保存物の水分の蒸散が起こりにくくなり、保存物の鮮度を維持できる。従って、保存物の鮮度を保持するためには、加湿された空気の相対湿度を90%RH以上100%RH以下、好ましくは95%RH以上100%RH以下とする。
【0018】
貯留槽28は、タオル26の下方に間隔を開けて設けられており、密閉部屋11内の温度低下に伴って凍結する恐れがあるため、貯留槽28内の水を加熱する図示しない加熱手段(例えば、ヒータ)が設けられている。
また、ポンプ29は、散水用配管27と貯留槽28とを接続する送液用配管32に取付けられ、使用にあっては、ポンプ29を作動させ、貯留槽28に貯留された水を散水用配管27へ送ることで、水の循環使用が可能になっている。
このタオル26と貯留槽28との間には、エチレンガス除去材14が配置されている。このエチレンガス除去材14は、貯留槽28の上端部に設けられ多数の孔が形成された支持板33に固定されている。
【0019】
エチレンガス除去材14は、板状(例えば、厚みが3cm以上10cm以下程度)のアルミナ成形体の表面に、エチレンガスを分解する触媒機能を備えたパラジウムを塗布し、例えば、800℃程度で焼成したものである。なお、アルミナ粉体とパラジウム粉末を混練した後に成形し焼成して、アルミナ成形体の表面及び内部にパラジウムを分散させることもできる。
また、パラジウムを塗布する成形体としては、これに限定されるものではなく、その形状を、例えば、円盤状又はハニカム状(蜂の巣状)にしてもよく、またその材質を、他のセラミック材質、金属(例えば、異臭を分解する効果を備えた銅、銅合金、マンガン、又はマンガン合金)、及び活性炭のいずれか1又は2以上で構成してもよい。
【0020】
そして、成形体に付着させるものとしては、パラジウムの他にパラジウム合金(例えば、Pd−Rh又はPd−Ir)を使用してもよく、またこれらを組み合わせて使用してもよい。
更に、パラジウム及びパラジウム合金のいずれか1又は2に、例えば、金属酸化物(酸化チタン又は酸化アルミニウム)及び金属触媒(白金のような白金族)のいずれか1又は2を組み合わせて使用することもでき、また金属酸化物及び金属触媒のいずれか1又は2のみを使用することもできる。
これにより、加湿チャンバー24内で加湿された空気を、エチレンガス除去材14に衝突させ、エチレンガスの吸着及び分解のいずれか1又は2を行った後、仕切板22の下側で貯留槽28の近傍に形成された開口部34を介して、保存チャンバー23内へ流することができる。
【0021】
密閉部屋11内には、保存チャンバー23内の温度及び湿度を測定する温度計35と湿度計36が設けられ、貯留槽28内には水温計37が取付けられている。
また、温度計35の測定値を0℃を超え10℃以下で、湿度計36の測定値を90%RH以上となるように制御する図示しない制御装置が組み込まれた制御盤38が、密閉部屋11の側壁部17の外側に取付けられている。この制御盤38の制御装置は、保冷手段12、吸引ファン25、及びポンプ29とそれぞれ接続されており、保冷手段12の熱交換機を作動させて保存チャンバー23内の温度を制御し、吸引ファン25の回転数を制御して保存チャンバー23から加湿チャンバー24へ導入する空気の量を変え、更に、ポンプ29から散水用配管27への水の供給量を制御することにより、温度計35及び湿度計36の測定値が所定値となるようにしている。なお、制御盤38には、温度計35、湿度計36、及び水温計37の測定値を表示可能な図示しない表示手段が設けられている。
【0022】
更に、密閉部屋11内には、必要に応じて以下の装置を設置してもよい。
保存物が切り花Aのように光合成を行う植物である場合には、通常、昼には光合成を、夜には水の吸収を行っている。ここで、密閉部屋11の保存チャンバー23内の天井部18に、波長が400〜700nmの可視光線を照射可能な図示しない蛍光灯を設置すると共に、図示しないタイマーによりその照射時間を制御することで、可視光線を照射して光合成を行う時間(即ち、昼)と、可視光線を照射せず水の吸収を行う時間(即ち、夜)を、保存チャンバー23内に創ることができる。
これは、夜間に電灯などの人工光の照射のもとで栽培する電照栽培と同じであり、これにより、昼夜の長さを変えて、着花又は開花の時期を人工的に制御することができる。
【0023】
そして、密閉部屋11の保存チャンバー23及び扉20の内側面に、二酸化チタンの粉末を塗布すると共に、保存チャンバー23内の天井部18に波長380〜400nmの近紫外線を含む波長320〜400nmの紫外線を照射する図示しない近紫外線ランプを取付けてもよい。
紫外線ランプから照射される近紫外線が二酸化チタンに当たると、強い酸化力を持った正孔と還元力を持った電子とが生成する。この正孔はヒドロキシラジカル(・OH)を、電子はスーパーオキサイドアニオン(O2-)等の活性酸素種を生成する。
これらによって、密閉部屋11内の例えば、脱臭、滅菌、防汚、防かび、及び有機化合物の分解のいずれか1又は2以上を行うことができる。
【0024】
なお、密閉部屋11内の空気は、保冷手段12のファン及び吸引ファン25によって循環しているので、保存チャンバー23の内側面に接触し易く、前記した効果が向上する。
ここで、保存物が生花を含む植物又は青果物である場合、前記した生成した活性酸素種が、この保存物が生成する例えばエチレンガスのような有害物質を分解して、鮮度を保つことができる。
また、保存物が生鮮食料品の場合、生成した活性酸素種が、生鮮食料品に付着している例えば、コリ−エロゲネス群細菌、プロテウス、枯草菌群、クロストリディウム、プソイドモナス、及びセルロース分解細菌のいずれか1又は2以上の腐敗菌を死滅させて、鮮度を保つことができる。
【0025】
更に、保存チャンバー23内の天井部18に、波長280〜320nmの中間紫外線を照射する図示しない中間紫外線ランプを取付け、近紫外線ランプと中間紫外線ランプとによって波長300〜400nmの紫外線を含む光を照射してもよい。
生きている植物は、紫外線によって、ビタミンE、ビタミンC、カロテン、アントシアニン、及びリコペンのいずれか1又は2以上の抗酸化物質を生成する。これらの抗酸化物質は、例えば、葉、花、及び実のいずれか1又は2以上の色となる物質であり、紫外線照射によって抗酸化物質を生成させることにより、その色を綺麗にすることができる。
なお、以上の装置を設置した場合、制御盤38の制御装置には、蛍光灯、近紫外線ランプ、及び中間紫外線ランプの照射時間をそれぞれ制御する図示しないタイマーを組み込み、制御盤38には、例えば、近紫外線ランプ、中間紫外線ランプ、及び蛍光灯の照射状況を表示可能な図示しない表示手段を設けるのが好ましい。
【0026】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る高湿度保冷庫10を使用した鮮度の保持方法について説明する。
密閉部屋11の扉20を開け、水の入っている花瓶39に入れたユリの切り花Aを密閉部屋11の保存チャンバー23内に搬入する。保冷手段12のファン及び吸引ファン25を駆動して、保存チャンバー23内の高温で低湿度の空気α(20℃よりも高く、90%RHよりも低い、例えば、25℃、50%RH)を、保冷手段12の熱交換機を介して加湿チャンバー24に導入する。
なお、空気αの温度及び湿度は、それぞれ温度計35と湿度計36によって測定されている。
【0027】
保存チャンバー23では、保冷手段12によって空気αが冷却され、密閉部屋11内の温度が調整される。
また、加湿チャンバー24では、散水用配管27の小孔30から散水された水が、保冷手段12によって冷却され加湿チャンバー24内へ送り込まれた空気βとタオル26に接触しながら落下して貯留槽28に貯留される。
一方、保冷手段12によって冷やされて低温(例えば、10℃)となった空気βは、加湿チャンバー24で散水された水及び水分を吸収したタオル26と接触し加湿されて高湿度(例えば、55%RH)となり、更にエチレンガス除去材14でエチレンガスの吸着及び分解のいずれか1又は2が行われ、エチレンガスが除去された空気γとなる。
【0028】
この空気γは、開口部34を通過して再び保存チャンバー23に戻り、保存チャンバー23内の空気αと混ざり、その温度が上がり、湿度が下がる。更に、この混合した空気は、再び保冷手段12を介し、加湿チャンバー24の加湿手段13に導入されることで、徐々に低温で高湿度の空気となる。
そして、温度計35と湿度計36での測定値、つまり、保存チャンバー23内の温度が0℃を超え10℃以下で、相対湿度が90〜100%RH(例えば、3℃、98%RH)となるまで、以上の作業を繰り返し行う。なお、切り花Aは、保存チャンバー23内が低温で高湿度、例えば、3℃、98%RHとなった後に搬入してもよい。
【0029】
また、密閉部屋11の保存チャンバー23内の空気が、目的とする低温で高湿度(例えば、3℃で98%RH)の状態となった場合には、保冷手段12の設定温度を調整して、保存チャンバー23内の空気の温度が0℃以下にならないようにする。また、加湿手段13の貯留槽28内の水が凍らないように、水温計37の測定値が0℃となった場合には、制御盤38内の制御装置が加熱手段を作動させて貯留槽28内の水を加熱する。加熱された水は、ポンプ29によって、貯留槽28から散水用配管27に供給される。
これにより、ユリの切り花Aは、低温状態で生理活性が抑えられ、また、高湿度状態で呼吸と水の蒸散が抑制されるので、鮮度を保持できる。
なお、高湿度保冷庫10でいちごを保存した場合、二週間後も新鮮な状態を維持できることを確認できた。一方、従来使用されている冷蔵庫では、2日程度で傷みが発生した。なお、いちじくについても同様の結果が得られた。
【0030】
次に、図2を参照しながら本発明の第2の実施の形態に係る高湿度保冷庫50について説明するが、前記した本発明の第1の実施の形態に係る高湿度保冷庫10と同一部材には同一番号を付し、詳しい説明を省略する。
高湿度保冷庫50は、前記保存物を貯蔵する密閉部屋11と、密閉部屋11に設けられ密閉部屋11内の温度を調整する保冷手段51と、密閉部屋11に設けられ密閉部屋11内の空気に水分を与えて加湿する加湿手段52とを有し、加湿手段52に、保存物から発生したエチレンガスの吸着及び分解のいずれか1又は2を行うエチレンガス除去材14が設けられたものである。
この密閉部屋11内は、上部及び下部が開口された仕切板22によって、保存物を貯蔵する保存チャンバー53と、保存チャンバー53に供給する低温で高湿度の空気を製造する冷却加湿チャンバー54とに仕切られている。
【0031】
冷却加湿チャンバー54の高さ方向中央部には、例えば、金属繊維(例えば、アルミニウムの繊維)で形成された不織布が周囲に被覆された冷媒用配管55が配置されている。この冷媒用配管55は、複数のストレート管56をそれぞれエルボー管で接続して、1本の連続する管としたものである。なお、密閉部屋11外には、冷媒用配管55に送り用配管57及び戻し用配管58を介して冷媒(例えば、アンモニア)を供給する冷凍機59が配置されている。この冷媒は、冷凍機59によって−5℃〜−30℃、例えば、−20℃に冷却され、冷媒用配管55の上部から供給されている。
以上に示した冷媒用配管55、送り用配管57、戻し用配管58、及び冷凍機59が、保冷手段51を構成している。
【0032】
加湿手段52は、冷媒用配管55の上方に配置され冷媒用配管55に散水する散水用配管27と、散水用配管27から小孔30を介して散水された水を回収し貯留する貯留槽28と、貯留槽28で回収した水を散水用配管27へ送るポンプ29を有している。
この貯留槽28の上端部には、多数の孔が形成された支持板33が取付けられ、これにエチレンガス除去材14が配置されている。
また、貯留槽28内には、貯留槽28内の水を加熱する加熱用配管60が設けられ、加熱用配管60には、冷凍機59から発生する加熱されたガス(例えば、冷媒を冷却した空気)が、ガス用配管61、62を介して供給され、貯留槽28内の水が凍るのを防止している。
制御盤38の制御装置は、貯留槽28内の水が凍らないように、水温計37の測定値が0℃になった場合に、冷凍機59のガス用配管61、62から加熱用配管60に加熱されたガスが供給されるように制御している。
【0033】
なお、冷却加湿チャンバー54では、冷凍機59から送り用配管57及び戻し用配管58を介して、冷媒用配管55に冷媒が供給され、冷媒用配管55の外側表面の温度が、例えば−5〜3℃となる。また、散水用配管27の小孔30から散水された水は、冷媒用配管55、また、冷媒用配管55によって冷却された空気と接触して、冷却されながら落下して貯留槽28に貯留される。
これにより、保存チャンバー53内の空気xは、冷媒用配管55及び冷媒用配管55で冷やされた空気に接触して冷却されると共に、散水された水と接触して加湿された後、エチレンガス除去材14でエチレンガスの吸着及び分解のいずれか1又は2が行われ、低温(例えば、20℃)で高湿度(例えば、55%RH)のエチレンガスが除去された空気yとなる。なお、散水する水量が少ない場合には、冷媒用配管55の表面に氷も生成するが、暖かい空気xによって、氷は溶けて水になるので問題はない。
【0034】
空気yは、開口部34を通過して再び保存チャンバー53に戻り、保存チャンバー53内の空気xと混ざり、その温度が上がり、湿度が下がる。更に、この混合した空気は、再び冷却加湿チャンバー54に導入され、加湿手段52と保冷手段51により、徐々に低温で高湿度の空気となる。
そして、温度計35と湿度計36での測定値、つまり、保存チャンバー53内の温度が0℃を超え10℃以下で、相対湿度が90〜100%RH(例えば、3℃、98%RH)となるまで、以上の作業を繰り返し行う。
なお、散水する水として、例えば、海水等の不凍液を使用してもよい。この場合、凝固点降下によって、0℃以下の低温の水を生成することができ、この0℃以下の水を冷媒用配管55に散水することにより、例えば0℃を超え3℃以下の低温の空気を製造することもできる。
【0035】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の高湿度保冷庫を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
また、前記実施の形態においては、加湿チャンバー又は冷却加湿チャンバーの上部に吸引ファンを設置して、保存チャンバーから空気を導入する場合について説明したが、加湿チャンバー又は冷却加湿チャンバーの下部、即ち仕切板の下側開口部近傍に吸引ファンを設置してもよい。この場合、保存チャンバーからの空気は、前記実施の形態とは逆方向、即ち、加湿手段を下方から上方へ向かって流れる。更に、加湿手段の下流側に排気ファンを設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る高湿度保冷庫の説明図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態に係る高湿度保冷庫の説明図である。
【符号の説明】
【0037】
10:高湿度保冷庫、11:密閉部屋、12:保冷手段、13:加湿手段、14:エチレンガス除去材、15:ステンレス板、16:断熱材、17:側壁部、18:天井部、19:床部、20:扉、21:脚部、22:仕切板、23:保存チャンバー、24:加湿チャンバー、25:吸引ファン、26:タオル(吸湿材)、27:散水用配管(散水部)、28:貯留槽、29:ポンプ、30:小孔、31:支持棒、32:送液用配管、33:支持板、34:開口部、35:温度計、36:湿度計、37:水温計、38:制御盤、39:花瓶、50:高湿度保冷庫、51:保冷手段、52:加湿手段、53:保存チャンバー、54:冷却加湿チャンバー、55:冷媒用配管、56:ストレート管、57:送り用配管、58:戻し用配管、59:冷凍機、60:加熱用配管、61、62:ガス用配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生花を含む植物、青果物、及びそれ以外の生鮮食料品のいずれか1又は2以上からなる保存物を貯蔵する密閉部屋と、該密閉部屋に設けられ該密閉部屋内の温度を0℃を超え10℃以下に調整する保冷手段と、前記密閉部屋に設けられ該密閉部屋内の空気に水分を与えて相対湿度90%RH以上に加湿する加湿手段とを有する高湿度保冷庫であって、
前記加湿手段には、前記保存物から発生したエチレンガスの吸着及び分解のいずれか1又は2を行うエチレンガス除去材が設けられていることを特徴とする高湿度保冷庫。
【請求項2】
請求項1記載の高湿度保冷庫において、前記エチレンガス除去材は、パラジウム及びパラジウム合金のいずれか1又は2を有することを特徴とする高湿度保冷庫。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項に記載の高湿度保冷庫において、前記加湿手段は、水分を吸収可能な吸湿材と、該吸湿材の上方に配置され該吸湿材に散水する散水部と、該散水部から散水された水を回収し貯留する貯留槽と、該貯留槽で回収した水を前記散水部へ送るポンプとを有し、しかも前記散水部と前記貯留槽との間に前記エチレンガス除去材を配置することを特徴とする高湿度保冷庫。

【図1】
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【図2】
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