説明

高濃度酸素水の製造装置

【課題】 酸素ガスボンベが保有しているガス圧を利用し、可動部を有しないスタティックミキサーにより電気的動力を使用しないで原水と酸素ガスとを混合して容易に高濃度酸素水を製造する。
【解決手段】水タンク8に接続したガスパイプ9に、低圧ガス圧調整弁10とガス抜き弁11と連結部9aと第2連結部9bとスタティックミキサー16と蛇口15を設け、前記連結部9aと高圧ガス圧調整弁3とを低圧ガスホース6で連結すると共に、該高圧ガス圧調整弁3と酸素ボンベ1とを接続し、前記水タンク8と前記第2連結部9bを接続した水パイプ12にチェッキ弁13と水流調整弁14を設け、酸素ボンベ1からの酸素の一方はスタティックミキサー16に供給し、他方の酸素ガスは水タンク12内で水中に添加混入し、水パイプ12を通して該スタティックミキサー16で酸素ガスを攪拌混合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的動力を使用することなく酸素ガスを飲料水中に強制的に添加混入させる高濃度酸素水の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高濃度酸素水を製造する場合は、酸素ガスが自然に水中に溶け込んでいる酸素水とは別に、水中に酸素ガスを強制的に添加し、混合機により攪拌して溶解させることにより製造している。しかし、高濃度酸素水を製造する際には、原水の送水には電動ポンプ、原水と酸素ガスとの攪拌には混合機、あるいは原水に酸素ガスを添加するにはコンプレッサーなどを使用するのが一般的となっている。いずれの場合も、エネルギー源として電気的動力を使用する必要があるため、電気を使用できない場所では、酸素水を簡単に製造することができないという制約があった。
また、圧縮酸素ガスを封入した酸素ボンベを用いて、酸素ボンベからの吐出量を電位弁により調整しながら酸素を供給する装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−159715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の酸素供給装置では、エネルギー源として電気的動力、即ち商用電気やバッテリーを酸素水製造の現場において使う必要があるため、電気的動力を使用することができない野外などの場所では、酸素水を製造することができないという問題点を有していた。
【0004】
本発明は、電気的動力の代替エネルギー源として、酸素水の製造に必要な酸素ガスを充填した高圧酸素ガスボンベの圧力を利用するもので、高濃度酸素水を製造する現場において電気的動力を不要にして酸素水を製造する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために本発明は、密閉蓋8aを具えた水タンク8に接続したガスパイプ9に低圧ガス圧調整弁10とガス抜き弁11と連結部9aと第2連結部9bとスタティックミキサー16と蛇口15を設け、前記連結部9aと高圧ガス圧調整弁3とを低圧ガスホース6で連結すると共に、該高圧ガス圧調整弁3と酸素ボンベ1とを高圧ガスパイプ5で接続し、前記水タンク8と前記第2連結部9bを接続した水パイプ12に、チェッキ弁13と水流調整弁14を設けてなり、酸素ボンベ1からの圧力を有した酸素ガスの一方は、ガスパイプ9を介してスタティックミキサー16および閉弁している蛇口15側に供給され、他方の酸素ガスは前記ガス抜き弁11及び低圧ガス圧調整弁10を介して密閉した水タンク8内の水中に添加混入して加圧された酸素を混入した水が、前記水パイプ12を通って前記スタティックミキサー16を通過しながら酸素ガスを攪拌混合させることを特徴とする。また、前記高圧ガス圧調整弁3は、圧力調整ハンドル3cと酸素ボンベ1内の圧力を表示する高圧ゲージ3aと前記ガスパイプ9内の圧力を表示する1次低圧ゲージ3bとを有してなることを特徴とする。また、前記低圧ガス圧調整弁10は、前記低圧ガスホース6内の圧力を該ガス圧調整弁に設けたハンドル10aを操作することにより2次低圧ガスゲージ10bで設定圧以下に規制することを特徴とする。さらに、前記水タンク8は、一側に設けた水位レベル表示計19と該水タンク内の圧力を設定圧以下に規制する安全弁20を設けてある。
【0006】
酸素ボンベ1内のガス圧は、本装置で常用する圧力である0.2Mpa以上確保されていることが必要であり、高圧ガス圧調整弁3を開いて前記常用圧より低い圧力に調整してガスパイプ9を介して一方に送られ、密閉した水タンク8内に供給すれば、加圧された酸素ガスは水中に添加混入すると共に、撹拌混合させる為の運転のエネルギーとなり、水タンクの底部に接続した水パイプ12から該水タンク外に流出する。この場合、ガスパイプ9内の圧力は1次的に、1次低圧ゲージ3bで確認でき、さらに、2次的には、2次低圧ゲージ10bで確認できる。さらに3次的には、水タンク8に設けた安全弁20が作動するため、圧力機器として極めて安全である。
【0007】
酸素ガスの他方は、ガスパイプ9を通ってスタティックミキサー16に供給されており、蛇口15を開くと前記水パイプ12を介して水タンク8から流出する酸素を添加混入した水に、該ミキサーによってさらに酸素ガスを撹拌混入させて蛇口15から流出するもので、可動部分を有しないスタティックミキサーによって効率よく酸素ガスを混入させる作用を有し、高濃度の酸素水を得ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、酸素ガスボンベが保有しているガス圧を利用して、原水の送水、原水への酸素ガスの添加ならびに可動部を有しないスタティックミキサーによる原水と酸素ガスとの混合など、酸素水を製造する時点では電気又は電気的動力を一切使用しないため、電気設備を必要としない野外などの場所においても容易に高濃度酸素水を製造できる。また、携帯可能サイズに構成すれば手軽に運搬することができ、しかも電気設備の無い場所でも高濃度酸素水を製造できるので極めて利便性が高い利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の構成を添付した図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る実施形態を示したもので、酸素ボンベ1に装着してある開閉可能な元栓2と高圧ゲージ3aおよび一次低圧ゲージ3bと共に圧力調整ハンドル3cとを備えた高圧ガス圧調整弁3とを高圧ガスパイプ5で接続してある。さらに、該高圧ガス圧調整弁3と、後記する密閉式の水タンク8に連結したガスパイプ9の略中間部分に設けた連結部9aとを低圧ガスホース6で連結してある。
【0010】
この密閉式の水タンク8の頂部には着脱可能なネジ式の密閉蓋8aを取り付けてあり、該水タンク8の上部一側には一端を接続させたガスパイプまたはガスホース9に、低圧ガス圧調整弁10とガス抜き弁11と前記連結部9aをそれぞれ接続してある。この低圧ガス圧調整弁10は、流量調整用のハンドル10aと水タンク8およびガスパイプ9内の圧力確認用の2次低圧ガスゲージ10bを設けてある。低圧ガスホース6内の1次的な圧力確認は、1次低圧ガスゲージ3bで行う。さらに、該水タンク8の底部に接続した水パイプ12は、前記ガスパイプ9の先端側に設けた第2連結部9bに接続し、この水パイプ12にはチェッキ弁13と水流調整弁14を接続してある。そして、該ガスパイプ9の先端にハンドル操作により開閉可能な蛇口15と、該ガスパイプ9の第2連結部9bとの間には可動部を有しないスタティックミキサー16を接続してある。
【0011】
図中、17は前記蛇口15から流出する高濃度酸素水を収容或いは充填するためのコップ、ペットポトル等の容器又は密閉可能な容器である。さらにまた、水タンク8の一側には水位レベル指示計19を装着してあり、該指示計19に安全弁20を装着してある。この安全弁20は水タンク8に直接設けてもよい。
【0012】
次に、本装置の作用について説明すると、本装置の運転前の準備として高圧ガス圧調整弁3と低圧ガス圧調整弁10と蛇口15とガス抜き弁11などのバルブ類を全て閉弁状態とする。そして、密閉式の水タンク8の頂部に設けたネジ式の密閉蓋8aを開いて水タンク8の内部に原水となる適当量の飲料用の水を充填する。この場合、水タンク8の一側に水位レベル指示計19を設けてあるため、水タンク8内に収容する水道水の水位を外部から確認できる。さらに、低圧ガス調整弁10の故障および圧力調整の誤りなどにより該水タンク8内が高圧となった場合には、該水タンクの破裂破損を防ぐため、水タンク8に直接または前記水位レベル指示計19に設けた安全弁20が作動して、該水タンク8の内圧を設定値まで下げる作用を有している。
【0013】
所定量の水を水タンク8内に収容し、ついで、密閉蓋8aを閉じて水タンク8を密閉させた後、運転する場合の常用圧力より高圧酸素ガスが充填されている酸素ボンベ1から酸素ガスをガスパイプ9に供給するため前記元栓2を回動して開いて酸素ガスを高圧ガスパイプ5に供給する。この場合、酸素ボンベ内のガス圧が、本装置で常用する圧力である、例えば、略0.2Mpa以上に確保されていることを高圧ゲージ3aで確認する。この常用圧力は、必要に応じて調整することができる。
【0014】
さらに、高圧ガス圧調整弁3に設けてある圧力調整ハンドル3cを徐々に開くと、酸素ボンベ1からの酸素ガスは、該高圧ガス圧調整弁を介して低圧ガスホース6、連結部9aを経由してガスパイプ9に供給される。そして、酸素ガスの一方は、ガス抜き弁11を開くことにより該ガス抜き弁11を通過して低圧ガス圧調整弁10に到達する。この時の圧力は、1次低圧ガスゲージ3bで確認することができる。この場合、該調整弁10は閉弁している。
【0015】
次に、閉弁状態にある低圧ガス圧調整弁10のハンドル10aを回動操作して徐々に開き、水タンク8および低圧ガスホース6内の圧力を表示する2次低圧ガスゲージ10bの数値を確認しながら前記したガス設定圧より低圧、たとえば0.1Mpa程度に調整された酸素ガスは、前記ガスパイプ9の一方の端部から水タンク8内に供給され、酸素水製造のための運転、即ち水の中に圧力を有したガスを混入し、かつ、この水タンク8は密閉されているから添加混合に必要な加圧状態となり、水タンク8内の水中に水流を発生させながら攪拌混合する。そして、酸素ガスが混合した水は、該水タンク8の底部位に連結した水パイプ12から水タンクの外部に流出する。この水パイプ12と水タンク8とは常に連通している。
【0016】
他方、低圧ガスホース6を介して酸素ボンベ1から供給された酸素ガスは、同時に連結部9a、ガスパイプ9、第2連結部9b及びスタティックミキサー16を経由して閉弁している蛇口15に到達してガス流は停止する。
【0017】
ついで、蛇口15を開くと、加圧状態となっている水タンク8からの酸素水は、水パイプ12、チェッキ弁13およびスタティックミキサー16を経由して供給され、蛇口15から外部に流出する。この時、水タンク8の底部に連結した水パイプ12内の圧より高い加圧状態となっているガスパイプ9内の酸素ガスも、該水パイプ9内にチェッキ弁13を設けてあるため、該水パイプ12内の酸素ガスは水タンク8には流入することなく、スタティックミキサー16に流入した後に、開いた蛇口15を通して外部に流出する。
【0018】
この場合、ガスパイプ9内の酸素ガスは水タンク8内には流入せず、酸素ガスと水と共に酸素ガスによるある流速を有してスタティックミキサー16を通過する際に、該ミキサー16による混合撹拌作用によって酸素ガスが微細化されて、瞬時に水中に溶解された後、高濃度酸素水となって蛇口15から外部に流出することとなる。
【0019】
所要量の高濃度酸素水を、コップなどの容器17内に収容又は充填させた後、蛇口15を締め付けて高濃度酸素水の流出を停止すれば、酸素水の製造作業は終了する。再度、高濃度酸素水を製造する場合は、上記の手順を再現すればよい。
【0020】
さらに、用途によって酸素水の酸素溶解濃度を変更する場合には、水流調整弁14を適宜調整すればよい。さらにまた、酸素水量の増減調整をしたい場合は、高圧ガス圧調整弁3あるいは低圧ガス圧調整弁10を適宜調整することにより容易に濃度変更を行うことができる。
【0021】
また、出願人が所有する特許第3688806号のある特定のスタティックミキサーを、本装置のミキサーに使用した場合、例えば、夏場の関東地区の通常の水道水と酸素ガスとの酸素溶存水の製造実験では、原水である水道水の自然溶存酸素濃度は7ppmであった。之に対し、該水製造装置ではワンパス処置において、原水中へ酸素を混入させる処理を行った後の溶存酸素濃度は37〜40ppmの高濃度の酸素水を得ることが出来た。尚、この実験では、酸素ガス溶存率を高めるため電気式クーラーを使用して水温を20℃に冷却制御して溶存酸素濃度計によって酸素濃度を測定した。
【0022】
本発明に係る製造装置で製造された高濃度酸素水を、例えば、競走馬に飲ませると競走馬はなかなかばてない、或いは疲労回復が早いなどの効果があることが判明した。現在のところ、しっかりとした科学的データはないが、人間、特にスポーツ選手などにその効果を着目して高濃度酸素水の飲用が始まっている。
【0023】
また、普通の水に含まれる酸素は5〜7ppm程度であるが、高濃度酸素水は例えば酸素濃度が50ppmの中に、腹を上に向けて見せているほどに弱った、たとえば川魚の養殖岩魚を入れたところ、即座にすいすいと泳ぎだす回復ぶりを示した。また、早朝に養殖岩魚を10匹程を高濃度酸素水(50ppm程度の酸素濃度に混合させた水)を容器にいれて運搬したところ夕方まですべて元気に生きていることをこの実験で確認した。従来は、通常の沢水を入れた容器の中に岩魚などを収容した場合には、数時間ももたないといわれていた。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る高濃度酸素水の製造装置を示した配管図である。
【符号の説明】
【0025】
1 酸素ボンベ
2 元栓
3 高圧ガス圧調整弁
3a 高圧ガスゲージ
3b 1次低圧ガスゲージ
3c 圧力調整ハンドル
5 高圧ガスパイプ
6 低圧ガスホース
8 水タンク
8a 密閉蓋
9 ガスパイプ
9a 連結部
9b 第2連結部
10 低圧ガス圧調整弁
10a ハンドル
10b 2次低圧ガスゲージ
11 ガス抜き弁
13 チェッキ弁
14 水流調整弁
15 蛇口
16 スタティックミキサー
19 水位レベル指示計
20 安全弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉蓋(8a)を具えた水タンク(8)に接続したガスパイプ(9)に、低圧ガス圧調整弁(10)とガス抜き弁(11)と連結部(9a)と第2連結部(9b)とスタティックミキサー(16)と蛇口(15)を設け、
前記連結部(9a)と高圧ガス圧調整弁(3)とを低圧ガスホース(6)で連結すると共に、該高圧ガス圧調整弁(3)と酸素ボンベ(1)とを高圧ガスパイプ(5)で接続し、
前記水タンク(8)と前記第2連結部(9b)を接続した水パイプ(12)に、チェッキ弁(13)と水流調整弁(14)を設けてなり、
酸素ボンベ(1)からの圧力を有した酸素ガスの一方は、ガスパイプ(9)を介してスタティックミキサー(16)および閉弁している蛇口(15)側に供給され、他方の酸素ガスは前記ガス抜き弁(11)及び低圧ガス圧調整弁(10)を介して密閉した水タンク(8)内の水中に添加混入して加圧された酸素を混入した水が、前記水パイプ(12)を通って前記スタティックミキサー(16)を通過しながら酸素ガスを攪拌混合させることを特徴とする高濃度酸素水の製造装置。
【請求項2】
前記高圧ガス圧調整弁(3)は、圧力調整ハンドル(3c)と酸素ボンベ(1)内の圧力を表示する高圧ゲージ(3a)と前記ガスパイプ(9)内の圧力を表示する1次低圧ゲージ(3b)とを有してなることを特徴とする請求項1記載の高濃度酸素水の製造装置。
【請求項3】
前記低圧ガス圧調整弁(10)は、前記低圧ガスホース(6)内の圧力を該ガス圧調整弁に設けたハンドル(10a)を操作することにより2次低圧ガスゲージ(10b)で設定圧以下に規制するようにしてなることを特徴とする請求項1記載の高濃度酸素水の製造装置。
【請求項4】
前記水タンク(8)は、一側に設けた水位レベル表示計(19)と該水タンク内の圧力を設定圧以下に規制する安全弁(20)を設けてなることを特徴とする請求項1記載の高濃度酸素水の製造装置。

【図1】
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