高熱伝導性部材及びその製造方法、並びにそれを用いた放熱システム
【課題】 本発明は、グラファイトが有する面方向の高熱伝導特性を維持しつつ、層方向の熱伝導性も改善した高熱伝導性部材を提供することを目的とする。
【解決手段】 この目的を達成する本発明に係るは、高熱伝導性部材主組成が炭素(C)からなる高熱伝導性部材であって、主面に対して平行な方向(面方向)にa−b軸が略配向したグラファイト構造体に、所定量の金属あるいは金属化合物粒子が分散されている。これにより、従来と比較して高い層方向熱伝導特性を有する。
【解決手段】 この目的を達成する本発明に係るは、高熱伝導性部材主組成が炭素(C)からなる高熱伝導性部材であって、主面に対して平行な方向(面方向)にa−b軸が略配向したグラファイト構造体に、所定量の金属あるいは金属化合物粒子が分散されている。これにより、従来と比較して高い層方向熱伝導特性を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主組成が炭素(C)からなる高熱伝導性部材、及びその製造方法に関する。具体的には、熱伝導度に異方性を有するグラファイト構造体からなる熱伝導性部材の特性を改善するもので、主面に平行な方向(面方向)の高い熱伝導性を維持しながら、主面に垂直な方向(層方向)も従来と比較して高い熱伝導度を有する高熱伝導性部材、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高性能化や小型化、高密度化に伴い、機器及びそれらを構成する電子デバイスより発生する熱をいかに放熱するかが課題となっている。とりわけ、コンピュータの心臓部であるCPUや半導体レーザに対する熱対策は急務な状況にある。
【0003】
冷却を効率的に行なうには、対流、輻射、伝導をうまく組み合わせることが重要であるが、前記電子部品等を冷却するには、主に熱伝導により熱を低温領域に導き、冷却することが有効である。
【0004】
従来、電子機器/部品の放熱方法としては、熱伝導性の高い金属、例えば銅(Cu)やアルミニウム(Al)からなる放熱体が良く用いられてきた。しかしながら、素子の微細化やさらなる発熱量の増加が進む中で、高熱伝導性部材として、より熱伝導性の高いものや、幾何学的形状の自由度が高いものが望まれている。
【0005】
その様な背景のもと、炭素(C)からなるグラファイトは、耐熱性や耐薬品性等の諸特性を有すると共に、高熱伝導性であることから、前述の放熱体に代わる材料として期待されている。
【0006】
グラファイトは、図3に示す様に炭素(C)原子5からなる六員環の平面構造(グラフェン構造)6が層状に積層した結晶構造を持つ。この結晶構造より、グラファイトの諸特性は、2つの方向、すなわちグラフェン構造6に対して垂直方向(c軸方向)と、グラフェン構造6に対して平行方向(a-b軸方向)で特徴付けられることが示唆される。例えば理想的なグラファイト結晶において、グラフェン構造6と垂直な面(c軸方向、以降、『層方向』と表記)の熱伝導率κ⊥は、10W/m・K以下と余り高くないが、グラフェン構造6と平行な面(a-b軸方向、以降、『面方向』と表記)の熱伝導度κ‖は、1000W/m・Kを越え、銅(κ(Cu)〜350-400W/m・K)の2倍以上、アルミニウム(κ(Al)〜200-250W/m・K)の4倍以上の熱伝導性を有することが報告されている。
【0007】
例えば、特許文献1〜6等には、シリコーン樹脂や高分子材料、あるいは金属、セラミック材料等に、グラファイト粉末等を分散させた熱伝導部材が報告されている。図9に、それら特許文献で開示されている、従来の熱伝導性部材(従来例1)の概略構成イメージ図を示す。すなわち従来例1では、マトリクス10中に高熱伝導材料であるグラファイト粉末11を分散/配合することで、マトリクス自体が有する熱伝導性を改善する。
【0008】
また特許文献7、8等には、グラファイト粒子を重合体結合材と共に圧縮成型した部材や、金属粉末と結晶性カーボン材を複合化したものをホットプレス加工した部材などが報告されている。図10に、それら文献で開示されている、従来熱伝導性部材(従来例2)の概略構成イメージ図を示す。すなわち従来例2では、熱伝導性の高いグラファイト粉末13を圧縮成型化することで、熱伝導性の高い熱伝導性部材12を構成する。
【0009】
さらに特許文献9等には、単結晶性のグラファイト単体からなる熱伝導部材が開示されている。図11に、その従来の熱伝導性部材(従来例3)の概略構成イメージ図を示す。すなわち従来例3では、熱伝導性の高いグラファイト材料が本来持つ熱伝導特性を最大限活かすことで、非常に高熱伝導性の熱伝導性部材を構成する。
【0010】
以上の様に、熱伝導物質として炭素材料を用いた熱伝導性部材は、従来の銅(Cu)やアルミニウム(Al)で構成された部材と比較して、熱伝導性などに優れた熱伝導性部材を形成し得るといった特徴を持つ。
【特許文献1】特開平01−040586号公報
【特許文献2】特開平09−102562号公報
【特許文献3】特開平09−283955号公報
【特許文献4】特開2002−299534号公報
【特許文献5】特開2002−363421号公報
【特許文献6】特開2003−105108号公報
【特許文献7】特開平10−168502号公報
【特許文献8】特開平11−001621号公報
【特許文献9】特開平07−109171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の従来例で示した熱伝導性部材は以下の様な課題があった。
【0012】
特許文献1〜6に示される従来例1の構成では、確かに高熱伝導性を有するグラファイト粉末11等をマトリクス10中に分散しているため、熱伝導性は改善されるが、母材を構成する樹脂や高分子材料、あるいは金属、セラミック材料からなるマトリクス自身の熱伝導性が低いため、トータルとして高い熱伝導性を得ることは困難であるという課題があった。すなわち、これまでの報告によると、概ね数10W/m・Kの熱伝導性部材が限界であり、今後必要とされる熱対策に使用するには不十分であるといった課題があった。さらに、低熱伝導性マトリクス中にグラファイト粉末を分散させて熱特性の改善を行なうことから、全体に対し比較的多いグラファイト粉末の混合が必須であり、そのため成型性に劣るといった課題があった。
【0013】
また特許文献7、8に示される従来例2の構成では、確かに高熱伝導性を有するグラファイト材料13を主成分として部材12が構成されているため、熱伝導性は改善されるが、粒子間同士の接触熱抵抗の影響や配向性が十分でないことから、本来グラファイトが有する高熱伝導性を、部材として安定に実現することが困難であるといった課題があった。また圧縮成型によってグラファイト材料の面内配向性を揃えるという構成であるため、層方向の熱伝導性を改善することは困難であるといった課題があった。さらに、従来例2では一般的に粉末体を成型する必要があることから、形状自由度や作製容易性の点で困難であるといった課題があった。
【0014】
また特許文献9に示された従来例3の構成では、熱伝導性が非常に高い単結晶状のグラファイトで構成されているため、非常に高い熱伝導性を有するが、前述のした様にグラファイトの結晶構造には著しい異方性があるため、層方向の熱伝導性は、面方向の数10分の一程度しか得られないといった課題があった。故に、部材面方向にのみ熱を伝達する目的で使用する分には、非常に高性能な熱伝導部材であるが、今後さらに機器/デバイスの高機能化/高密度が進展する流れにあって、層方向を含めた熱伝導特性の改善が必要であるといった課題があった。
【0015】
そこで前述の従来技術の課題を解決するために、本発明はグラファイトが有する面方向の高熱伝導性を維持しつつ、層方向の熱伝導性も改善する高熱伝導性部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この従来の課題を解決するために、本発明の高熱伝導性部材は、主組成が炭素(C)からなる高熱伝導性部材であって、主面に対して平行な方向(面方向)にa−b軸が略配向したグラファイト構造体に、金属粒子、あるいは金属化合物粒子から選ばれる少なくともひとつ、あるいは複数が所定量が分散されていることからなる。
【0017】
本構成により、母材となるグラファイト構造体が有する面方向の高熱伝導性を維持しつつ、グラファイト構造体内部に適宜分散/含有された金属あるいは金属化合物粒子が存在するので、層方向(厚さ方向)にもそれら粒子材料を介して効率的に熱が伝搬する。その結果、グラファイト構造体単独の場合と比較して、層方向熱伝導率κ⊥を向上させることが可能になる。
【0018】
本構成において、前述の金属粒子が、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、銀(Ag)から選ばれることより、熱伝導特性が大幅に改善されるので好ましい。とりわけ、W等の高融点金属、あるいはAg等を用いることが好適である。
【0019】
本構成において、前述の金属化合物粒子が、炭化珪素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化硼素(BN)、窒化珪素(SiN)、酸化アルミニウム(Al2O3)から選ばれることより、熱伝導特性が大幅に改善されるので好ましい。とりわけ、AlN、BN等を用いることが好適である。
【0020】
また本発明の構成において、前述の高熱伝導性部材の形状がフィルム状であることより、省スペース性や形状多様性が高まることから、熱伝導性部材として適用可能性(自由度)を広げることができるので好ましい。
【0021】
また本発明の構成において、前述のグラファイト構造体の内部に空孔領域を内包していることより、層方向への熱伝導を促進する金属あるいは金属化合物粒子を好適な形態で含有しやすくすると共に、得られる高熱伝導性部材として柔軟性及び圧縮性を与えることができるので好ましい。なお本明細における柔軟性とは、折り曲げ処理に対する耐屈曲性を示すものであり、本発明の構成の様に空孔を内包することで、耐屈曲回数を飛躍的に向上させることが可能になる。また圧縮性とは、圧縮処理に対する変形性を示すものであり、本発明の構成の様に空孔を内包することで、発熱源等との密着度が高まり、熱抵抗を抑えることが可能になる。
【0022】
また本発明の構成において、前述の高熱伝導性部材の密度が0.30g/cm3以上、2.00g/cm3以下の範囲に含まれることより、従来放熱材よりも軽くなるので好ましい。さらに好ましくは、前述の高熱伝導性部材の密度が0.60g/cm3以上、1.50g/cm3以下の範囲である。
【0023】
また本発明の構成において、グラファイト構造体に含まれる前述の金属あるいは金属化合物粒子の含有量が重量比で10ppm以上、10%以下の範囲から選ばれることより、層方向熱伝導性が顕著に改善されるので好ましい。さらに好ましくは、前述の金属あるいは金属化合物粒子の含有量が重量比で1000ppm以上、3%以下の範囲である。
【0024】
また本発明の構成において、グラファイト構造体に含まれる前述の金属あるいは金属化合物粒子のサイズが0.1μm以上、10μm以下の範囲から選ばれることより、母材となるグラファイト構造体の結晶性(配向性)を維持しつつ、層方向熱伝導性を高める金属あるいは金属化合物粒子を混合/分散することが容易となるので好ましい。さらに好ましくは、前述の炭素構造体のサイズが0.1μm以上、1μm以下の範囲である。
【0025】
また本発明の構成において、主面に対して平行な方向(面方向)の熱伝導率κ‖が、400W/m・K以上、1000W/m・K以下の範囲であり、かつ垂直な方向(層方向)の熱伝導率κ⊥が10W/m・K以上、100W/m・K以下の範囲であることより、従来放熱材では適用困難であった場合においても、使用可能となるので好ましい。さらに好ましくは、面方向熱伝導率κ‖が700W/m・K以上、1000W/m・K以下の範囲であり、かつ層方向熱伝導率κ⊥が50W/m・K以上、100W/m・K以下の範囲である。
【0026】
また本発明の高熱伝導性部材の製造方法は、第一の有機高分子膜を形成する溶液を準備する工程と、前述の第一の有機高分子膜を形成する溶液に金属粒子あるいは金属化合物粒子を所定量だけ混合し、分散する工程と、金属あるいは金属化合物粒子を含有した溶液より第一の有機高分子膜を形成する工程と、前述の第一の有機高分子膜を加熱脱水重合等の反応過程により、炭素前駆体となる第二の有機高分子膜にする工程と、前述の第二の有機高分子膜を所定の温度プロファイルに従って、所定雰囲気下で焼成する工程とからなる。
【0027】
本構成により、母材となるグラファイト構造体を容易にかつ配向性高く作製できると共に、層方向熱伝導性を改善する金属あるいは金属化合物粒子を所望な状態で含有させることが可能となる。
【0028】
また本発明の製造方法において、前述の金属粒子が、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、銀(Ag)から選ばれることより、熱伝導特性が大幅に改善されるので好ましい。とりわけ、W等の高融点金属、あるいはAg等を用いることが好適である。
【0029】
また本発明の製造方法において、前述の金属化合物粒子が、炭化珪素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化硼素(BN)、窒化珪素(SiN)、酸化アルミニウム(Al2O3)から選ばれることより、熱伝導特性が大幅に改善されるので好ましい。とりわけ、AlN、BN等を用いることが好適である。
【0030】
また本発明の製造方法において、前述の第一の有機高分子膜を形成する溶液がポリアミック酸溶液であることより、取り扱いが容易であると共に、配向性の高いグラファイト構造体の形成が可能となるので好ましい。
【0031】
また本発明の製造方法において、前述の第二の有機高分子膜がポリイミド(PI)であることより、取り扱いが容易であると共に、配向性の高いグラファイト構造体の形成が可能となるので好ましい。
【0032】
また本発明の製造方法において、前述の焼成工程の温度プロセスが1000℃から1400℃の温度範囲から選ばれる所定温度で予備焼成する工程と、2400℃から3000℃の温度範囲から選ばれる所定温度で本焼成する工程からなることより、第二の有機高分子膜より面内配向性の高いグラファイト構造体を形成することができるので好ましい。
【0033】
また本発明の放熱システムは、発熱源と放熱部材とを前述の記載の高熱伝導性部材を介して熱的に接続されている。
【0034】
本構成により、放熱システムの形状自由度が高く、放熱特性に優れた放熱システムを設計することが可能となる。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、本発明の高熱伝導性部材によれば、面方向熱伝導性の高いグラファイト構造体に、層方向熱伝導性を補う金属あるいは金属化合物粒子を分散する構造を適用したので、全体として高い熱伝導機能を有する高熱伝導性部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら、説明する。
【0037】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における高熱伝導性部材の概略図を示している。本高熱伝導性部材は基本的な構成要素として、主面に対して平行な方向(面方向)にa−b軸が略配向したグラファイト構造体1と、前述のグラファイト構造体1中に、ほぼ均一に分散配置された金属粒子(あるいは金属化合物粒子)3とからなる。
【0038】
このグラファイト構造体1は、前述のの様に炭素六員環構造からなるグラフェン層2が相関を持って層状に積層された構造からなる。本発明において好適なグラファイト構造体の仕様としては、このグラファイト構造体をX線回折法で評価した場合、結晶面の間隔dがd=0.335〜0.340nm(単結晶グラファイトの報告値:0.335nm)の範囲にあり、かつ(002)面及びその高次ピーク以外の回折ピークが観察されないものである。図4に、本発明で用いられるグラファイト構造体1の代表的なX線回折パターンを示す。また結晶性(配向性)においても、図4に示した26.5°付近の主ピークに対する半値幅で、1°以下のものが好ましく適用される。このような結晶性(配向性)を示すグラファイト構造体単独の面方向熱伝導率κ‖は、製法等にも依存するが概ね、400W/m・K以上であり、本発明においてもκ=400W/m・K以上のグラファイト構造体であれば好適である。
【0039】
前述のの様に本発明において母材に用いられるグラファイト構造体1は、面方向熱伝導率が高い単結晶性のグラファイトであれば、いかなるものでも使用できるが、中でも有機高分子フィルム(例えば、ポリイミド)を焼成処理によって熱分解することによりグラファイト化させる方法で得られる、単結晶に近い構造を持つ高配向性グラファイトが特性的にも、また製造面からも好適である。故に、以下に示す実施例では、この有機高分子フィルムを焼成処理したグラファイト構造体を用いた例を中心に説明する。
【0040】
本発明で適用される金属粒子(あるいは金属化合物粒子)3は、グラファイト構造体1を伝搬する熱を面方向のみならず、グラフェン層2間を熱的に接続し、層方向(厚さ方向)にも熱を伝搬させる機能を有する。故に、熱伝導性の高い金属材料(あるいは金属化合物材料)を用いることが好ましい。具体的には、金属あるいは金属化合物材料単体の熱伝導率κが、10W/m・k以上のものより適宜選択される。その代表的なものとして、金属材料ではタングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、銀(Ag)等を、金属化合物材料では炭化珪素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化硼素(BN)、窒化珪素(SiN)、酸化アルミニウム(Al2O3)等を挙げることができる。その形状は、グラファイト構造体1に分散が容易な粒子状、あるいは粉末状のものが選ばれる。
【0041】
さらに分散性を高める目的で、原料として用いる金属あるいは金属化合物材料を、予め粉砕処理し、サイズを小さくしておいても良い。その粉砕化処理方法としては、ボールミル、ジェットミル、高速回転ミル等いずれを用いても良いが、ジェットミル法で粉砕するのが容易である。その際、粒度計等を用いて粒径の均一性を高めても良い。
【0042】
また用いる粒子の粒径については、グラファイト構造体中に均一分散できる大きさならば特に差し支えなく、直径が0.1〜10μm程度の大きさものが好ましく用いられるが、有機高分子膜を焼成することによってグラファイト構造体を形成する方法を用いる場合などでは、グラファイト化を阻害することがない様、0.1〜1μm程度のものを用いることが好適である。
(実施の形態2)
上記の様な構成を作製する手段は幾つかあるが、作製容易性や得られる特性の観点から、有機高分子フィルムを焼成処理することによってグラファイト構造体を形成するのが、最良な方法である。そこで本実施の形態ではこの例について説明する。
【0043】
有機高分子フィルムを出発原料として、グラファイト構造体からなる高熱伝導性部材を得る方法は大きく、(1)金属あるいは金属化合物粒子が分散した有機高分子膜を得る工程と、(2)それを焼成処理して高分子膜をグラファイト化させる工程とからなる。
【0044】
まず工程(1)の金属あるいは金属化合物が含有した有機高分子膜の形成工程について説明する。金属あるいは金属化合物を含有した有機高分子膜(第二の有機高分子膜)は、溶媒で希釈した第一の有機高分子溶液に金属あるいは金属化合物粒子を所定量だけ混合/分散し、溶媒揮発させることで所定の形状に成型(第一の有機高分子膜)した後、加熱脱水重合反応等の反応過程を経ることで合成することができる。このとき必要に応じて触媒を用いることもある。上記手順で得られる第二の有機高分子膜は、用いる有機高分子材料によって、高分子の分子配列を配向させることも可能であり、この第二の有機高分子膜の配向度合いは、最終的に得られるグラファイト構造体の配向性にも影響を与える。
【0045】
より具体的な上記手順は、まず所定の配向性を持ち、かつ適宜混合した金属あるいは金属化合物が分散した第二の有機高分子膜が得られる様に、第一の有機高分子膜溶液の固体成分である原料及び溶媒の組成を決定し、その組成に調合した溶液に対して、必要に応じて触媒や粘度調整剤などを添加して撹拌し、注型/塗布などによって所望の使用形態にする。そして、その状態で溶媒揮発させることで、第一の有機高分子溶液を固体化(膜化)する。作製時の温度条件としては、通常の作業温度である室温近傍で行なえるが、必要に応じて溶媒の沸点以下の温度まで加熱することもある。
【0046】
さらに得られた第一の有機高分子膜を加熱脱水重合等の反応過程により炭素前駆体となる第二の有機高分子膜に変化させる。一般的には、窒素雰囲気中や真空雰囲気での加熱処理や、化学的な反応で脱水重合させるが、形成する有機高分子によってその最適手法は異なる。作製容易性の観点から、100〜400℃程度の温度範囲で加熱する方法で、前述の反応過程を実施できるものが好適である。またその配向性を制御するために延伸処理を同時に行なっても良い。
【0047】
本発明において適用な可能な有機高分子材料としては、焼成処理によって高配向性グラファイト構造体が形成できれば良く、例えばポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンテレフタルアミド(PPTA)、ポリフェニレンオキササジアゾール(POD)、ポリベンゾチアゾール(PBT)、ポリベンゾビスチアゾール(PBBO)、ポリフェニレンベンゾイミダゾール(PBI)、ポリフェニレンベンゾビスイミダゾール(PPBI)、ポリチアゾール(PT)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)などを挙げることができる。
【0048】
また溶媒としては、第一の有機高分子材料が溶解すれば良く、ジメチルアセトアミドやN-メチルピロリドンなどの一般的な有機溶媒を、単独あるいは混合して用いることができる。また粘度調整剤としては、エチレングリコール等を用いることができるが、これらに限られるものではない。また形成される有機高分子膜の帯電性を緩和するために、リン酸水素カルシウム等のフィラーを適宜混入しても良い。
【0049】
次に工程(2)の有機高分子膜から配向性グラファイトを得る工程について記す。この工程は、基本的には前述の特許文献9(特開平07-109171号公報『グラファイト熱伝導体及びそれを用いたコールドプレート』)に記載された高分子膜(東レデュポン社製カプトン)を焼成する方法とほぼ同様である。
【0050】
まず前述の工程で作製された炭素前駆体となる第二の有機高分子膜を予備焼成し、有機高分子中に含まれる炭素(C)以外の成分(酸素(O)、窒素(N)、水素(H)など)を除去する。その処理温度及び処理時間は、焼成処理する試料の形状やサイズにも依存するが、アルゴン(Ar)あるいは窒素(N2)雰囲気中、またはその混合雰囲気で概ね、1000〜1200℃で、0.5〜5時間である。またその昇温速度としては、1〜15℃/minの範囲、とりわけ3〜10℃/minの範囲で加熱することが好ましい。また予備焼成処理後の降温速度としては、5〜20℃/minの範囲、とりわけ5〜10℃/minの範囲で冷却することが好ましい。
【0051】
以上の条件により、本焼成処理後に得られるグラファイト構造体の面方向熱伝導率と配向度を高めることができる。
【0052】
予備焼成された高分子フィルムは、本格的に配向性グラファイトとするために、2400〜3000℃の温度範囲から選ばれる所定温度で本焼成される。その際、一端所定の加熱温度に保持する中間処理(概ね2000〜2400℃)を行なうことで、得られるグラファイト構造体の配向度を高めることができる。具体的には室温から所定の中間温度まで5〜10℃/minの昇温速度で加熱し、1時間程度保持した後、再度昇温し、本焼成する。本焼成条件は、2400〜3000℃の温度範囲で、0.5〜10時間程度加熱する。本焼成処理後の冷却は、降温速度として5〜20℃/minの範囲、とりわけ5〜10℃/minの範囲で冷却することが好ましい。
【0053】
以上の様な工程で、本発明の面方向熱伝導性の高い高配向性のグラファイト構造体を形成することができ、さらにその構造に分散されている金属あるいは金属化合物粒子の作用により、層方向熱伝導性も改善される。記載した以上の工程で、有機高分子膜がグラファイト構造体に変化する様子を示した反応模式図を図5に示す。
【0054】
さらに、この方法で得られるグラファイト構造体において、焼成条件(主に昇温速度)を調整することや、前述のフィラーを適宜混合して焼成処理することで、グラフェン層構造を二次元的に配向させつつ、構造体内部に微細な空孔を多数内包した構造を作製することができる。その空孔領域のため、形成されるグラファイト構造体の密度は、本来のグラファイトの値(〜2.26g/cm3)よりも十分に小さくすることができる(0.30〜2.00g/cm3)。このような空孔4を内包したグラファイト構造体からなる部材の模式図を図2に示す。
【0055】
このような構造とすることで、得られるグラファイト構造体1は柔軟性を持ち、屈曲させても切断等が起こりにくく、圧縮に対しても適度に変形する構造となる。この特性は、熱伝導性部材として使用する際の設計自由度を高めると共に、発熱源との熱接触抵抗を低減する効果を持つ。
【実施例1】
【0056】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0057】
(実施例1)
金属粒子材料としてタングステン(W)粒子を、そしてそのW粒子を混合/分散する有機高分子材料としてポリイミド(PI)を採用し、それを焼成処理することでグラファイト構造体を作製した例について記載する。図6に、その主な工程図を示す。
【0058】
まずポリイミドの前駆体有機高分子溶液(第一の有機高分子溶液)としてポリアミック酸溶液を作製した。その手順は、窒素(N2)ガスが充填されたドライボックス内で、ビス(4-アミノフェニル)エーテル 5.00g、及びジメチルアセトアミド 250mlを丸底フラスコに加えて攪拌し、溶解させた。
【0059】
さらにこの溶液に、ピロメリット酸無水物 5.45gを混入し、約3時間攪拌することで、第一の有機高分子であるポリアミック酸溶液を合成した。
【0060】
合成したポリアミック酸溶液に、ジェットミル等で粉砕化したW粒子(サイズ:〜1μm)を重量比で1%混合し、ボールミルを12時間行なうことで均一に分散させた。
【0061】
このようにして作製したW含有ポリアミック酸溶液を、スライドガラスに塗布して、W含有ポリアミック酸薄膜(厚さ:〜150μm)を形成した。この膜を、窒素雰囲気中で1時間余乾燥してから、真空オーブン中で室温下2時間、減圧乾燥した後、100℃に加熱し1時間熱処理した。その結果、濃灰色の膜が得られた。
【0062】
さらに得られた膜を、ガラスチューブオーブン中に設置し、真空に減圧した後300℃で1時間熱処理してW含有ポリイミド膜を形成した。
【0063】
得られたポリイミド膜をスライドガラスからはがして、マイクロメータで厚さを測定したところ、約15μmであった。
【0064】
以上の工程で得られた炭素前駆体有機高分子膜(第2の有機高分子膜)を電気炉に入れて焼成処理を行なった。図7(a)に本実施例で採用した予備焼成の温度プロファイルを示す。
【0065】
まず予備焼成として、Ar雰囲気中で室温から1200℃までを3℃/minの昇温速度で昇温して、予備焼成温度1200℃で3時間保持した。昇温速度については、焼成処理する有機高分子膜の種類や形状を勘案して決めればよいが、一般的に1℃/min以上15℃/min以下の範囲が良く、本実施例では3℃/minを採用した。焼成処理後、5℃/minの降温速度で室温まで冷却した。一般的に、冷却する際の降温速度に関しては、昇温速度ほど厳密に制御する必要はないが、1℃/min以上10℃/min以下が好ましく、本実施例では5℃/minを採用した。
【0066】
この予備焼成工程では、有機高分子膜が熱分解して窒素、酸素、水素が抜けることにより、重量比で出発原料の50〜60%となり、W粒子が分散した炭素化フィルムに変化する。この予備焼成処理は、分散させたW粒子には何ら影響を与えない。
【0067】
上記条件で予備焼成を行なった後、さらに試料を超高温炉に移し替えて本焼成を行なった。その温度プロファイルを図7(b)に示す。本実施例では、1000℃までは昇温速度10℃/minで行ない、その後5℃/minとして中間処理温度である2200℃で1時間の中間保持を設けた。さらに、本焼成温度2700℃までは5℃/minの昇温速度とし、2700℃での保持時間を3時間とした。本焼成温度保持後の冷却は、2200℃までは降温速度は5℃/minとし、その後1300℃までは10℃/min、室温までは20℃/minとした。
【0068】
このようにして得られたグラファイト構造体の膜厚は、約30μmであり、走査電子顕微鏡(SEM)で得られた構造体断面を観察すると、グラフェン構造が層状に積層されたグラファイト構造をもっていることが確認できた。さらに面方向に配向したグラフェン構造を横切る様に、事前に混合/分散させていたW粒子が配置されていることも観察された。
【0069】
またX線回折により形成されたグラファイト構造体の結晶構造を評価した結果、図5と同等のグラファイト(002)及びその高次ピークが観察された。これより、Wを含んでいる場合でも、十分に面方向配向性が高いグラファイト構造が得られていることがわかった。
【0070】
上記の工程で得られたW含有グラファイト構造体の熱伝導特性を評価した。その結果、面方向熱伝導率κ‖は、W粒子を含まない場合の値である、900〜980W/m・Kと同様であったが、層方向(厚さ方向)熱伝導率κ⊥は、従来のほぼ5〜10倍である、25〜40W/m・Kが得られた。
【0071】
従って、配向性の高いグラファイト構造体にW粒子を混合/分散することで、層方向にも熱伝導性が高いグラファイト構造体が得られることを確認した。
【0072】
(実施例2)
前述の実施例1と同様の工程で、グラファイト構造体からなる高熱伝導性部材を作製する際、混合/分散するW粒子の濃度を変えた場合の結果について記す。
【0073】
第一の有機高分子溶液であるポリアミック酸に、W粒子を10ppm〜10重量%の範囲で変化させて、グラファイト構造体からなる高熱伝導性部材を形成した。
【0074】
得られた試料の熱伝導性特性を評価した結果、面方向熱伝導率κ‖は前述の実施例1と同様に、800〜980W/m・Kを示すと共に、層方向熱伝導率κ⊥は、10〜50W/m・Kの値が得られた。
【0075】
(実施例3)
前述の実施例1と同様の工程で、炭素前駆体であるW含有ポリイミド膜を作製する際、ポリイミド膜厚が約50μmとなる様にポリアミック酸溶液の濃度を調整し、第二の有機高分子であるポリイミド膜を作製した。
【0076】
この試料を前述の実施例と同様の温度プロファイルで焼成処理を行なうと、得られるグラファイト構造体の内部には、多数の微細な空孔領域が存在していることが確認された。その起因については定かではないが、本焼成プログラムでは炭素前駆体であるポリイミド膜の膜厚を厚くすると、空孔領域の存在する疎なグラファイト構造体になることがわかった。
【0077】
この試料の熱伝導性特性を評価した結果、面方向熱伝導率κ‖は、600〜750W/m・Kと減少したが、層方向熱伝導率κ⊥は、25〜40W/m・Kの値を維持した。これは空孔領域を内包することによって、面方向の熱伝導性が若干低減するが、W粒子による層方向への寄与は十分なされている結果であると考えられる。
【0078】
さらに、本実施例で作製したグラファイト構造体は、内部に微細な空孔領域が多数存在していることから、その結果として屈曲性や圧縮性に富んだ高熱伝導性部材となった。
【0079】
(実施例4)
前述の実施例1では、含有材料としてW粒子を用いて高熱伝導性部材を作製したが、本実施例では窒化アルミニウム(AlN)粒子をグラファイト構造体に添加した場合の結果について記す。
【0080】
本実施例では、前述の実施例と同様の方法で平均粒径が1μmのAlN粒子をポリアミック酸に混合し、ポリイミド化した後、焼成処理してグラファイト構造体を作製した。 得られた試料の熱伝導性特性を評価した結果、面方向熱伝導率κ‖(800〜900W/m・K)、及び層方向熱伝導率κ⊥(〜50W/m・K)と、いずれもほぼ同様の値が得られた。
【0081】
また混合するAlN粒子の平均粒径を0.1〜10μmの範囲で変化させた場合においても、同様の高熱伝導性部材を得ることができた。
【0082】
(実施例5)
前述の実施例1で用いた炭素前駆体有機高分子材料はポリイミドであったが、それ以外の有機高分子材料でも、上記と同様の製法で金属あるいは金属化合物含有グラファイト構造体を作製することが可能であることを確認した。それぞれの前駆体溶液に金属あるいは金属化合物粒子を混合して膜化し、加熱脱水重合反応等により得られた膜を、所定の温度プロファイルで焼成処理することで、高熱伝導性部材を作製できた。具体的にはポリイミド以外に、ポリフェニレンテレフタルアミド(PPTA)、ポリフェニレンオキササジアゾ(POD)、ポリベンゾチアゾール(PBT)、ポリベンゾビスチアゾール(PBBO)、ポリフェニレンベンゾイミダゾール(PBI)、ポリフェニレンベンゾビスイミダゾール(PPBI)、ポリチアゾール(PT)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)などの有機高分子で、金属あるいは金属化合物含有グラファイト構造体が得られた。
【0083】
(実施例6)
前述の実施例1、4で用いた金属あるいは金属化合物材料はW及びAlN粒子であったが、それ以外の金属あるいは金属化合物材料でも、上記と同様の製法で金属あるいは金属化合物含有グラファイト構造体を作製することが可能であることを確認した。具体的にはタンタル(Ta)やモリブデン(Mo)など高融点金属粒子や、窒化硼素(BN)や酸化アルミニウムなどのセラミック系金属化合物粒子を用いて、高熱伝導性部材(金属あるいは金属化合物含有グラファイト構造体)を得ることができた。
【0084】
(実施例7)
前述の実施例で得られたグラファイト構造体からなる高熱伝導性部材を用いて放熱システムを試作し、その熱抵抗を測定した。図8(a)は、発熱体7と放熱部材9の間に、本発明の高熱伝導性部材8を密着させて放熱を行なう構成である。比較として、銅板や高配向性グラファイトシートを適用した場合も評価した。測定は一定加圧下(10N/cm2)のもとで行なった。
【0085】
その結果、銅板の場合の熱抵抗は、1.0℃/Wであり、高配向性グラファイトシートでは、0.4℃/W程度であったのに対し、本発明の高熱伝導性部材を用いた場合は、0.3℃/Wと熱抵抗特性が改善されることが確認された。
【0086】
また図8(b)や、図8(c)のような他構成においても、同様に放熱特性の改善が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の高熱伝導性部材は、CPUやレーザに代表される各種電子機器/デバイスなどの熱対策が必要な部分に用いられる放熱システム材料として有用であるのみならず、様々な形態に加工可能なことより、均熱性が必要とされる応用、例えば基板ステージやマスクステージなど多岐にわたる応用に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の高熱伝導性部材の概略図
【図2】本発明の高熱伝導性部材の概略図
【図3】グラファイトの結晶構造を示す図
【図4】配向性グラファイト構造体の代表的なX線回折パターンを示す図
【図5】有機高分子膜から配向性グラファイト構造体への過程を示す模式図
【図6】実施例1における高熱伝導性部材の作製工程図
【図7】実施例1における焼成工程の温度プログラムの例を示す図
【図8】本発明の高熱伝導性部材を用いた放熱システムの概略図
【図9】従来の熱伝導性部材の概略図(従来例)
【図10】従来の熱伝導性部材の概略図(従来例)
【図11】従来の熱伝導性部材の概略図(従来例)
【符号の説明】
【0089】
1 グラファイト構造体
2 グラフェン構造
3 金属(金属化合物)粒子
4 空孔領域
5 炭素原子
6 グラフェン構造
7 発熱体
8 高熱伝導性部材
9 放熱部材
10 マトリクス
11 グラファイト粉末
12 グラファイト圧縮成型体
13 グラファイト粉末
14 高配向性グラファイトシート
15 グラフェン構造
【技術分野】
【0001】
本発明は、主組成が炭素(C)からなる高熱伝導性部材、及びその製造方法に関する。具体的には、熱伝導度に異方性を有するグラファイト構造体からなる熱伝導性部材の特性を改善するもので、主面に平行な方向(面方向)の高い熱伝導性を維持しながら、主面に垂直な方向(層方向)も従来と比較して高い熱伝導度を有する高熱伝導性部材、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高性能化や小型化、高密度化に伴い、機器及びそれらを構成する電子デバイスより発生する熱をいかに放熱するかが課題となっている。とりわけ、コンピュータの心臓部であるCPUや半導体レーザに対する熱対策は急務な状況にある。
【0003】
冷却を効率的に行なうには、対流、輻射、伝導をうまく組み合わせることが重要であるが、前記電子部品等を冷却するには、主に熱伝導により熱を低温領域に導き、冷却することが有効である。
【0004】
従来、電子機器/部品の放熱方法としては、熱伝導性の高い金属、例えば銅(Cu)やアルミニウム(Al)からなる放熱体が良く用いられてきた。しかしながら、素子の微細化やさらなる発熱量の増加が進む中で、高熱伝導性部材として、より熱伝導性の高いものや、幾何学的形状の自由度が高いものが望まれている。
【0005】
その様な背景のもと、炭素(C)からなるグラファイトは、耐熱性や耐薬品性等の諸特性を有すると共に、高熱伝導性であることから、前述の放熱体に代わる材料として期待されている。
【0006】
グラファイトは、図3に示す様に炭素(C)原子5からなる六員環の平面構造(グラフェン構造)6が層状に積層した結晶構造を持つ。この結晶構造より、グラファイトの諸特性は、2つの方向、すなわちグラフェン構造6に対して垂直方向(c軸方向)と、グラフェン構造6に対して平行方向(a-b軸方向)で特徴付けられることが示唆される。例えば理想的なグラファイト結晶において、グラフェン構造6と垂直な面(c軸方向、以降、『層方向』と表記)の熱伝導率κ⊥は、10W/m・K以下と余り高くないが、グラフェン構造6と平行な面(a-b軸方向、以降、『面方向』と表記)の熱伝導度κ‖は、1000W/m・Kを越え、銅(κ(Cu)〜350-400W/m・K)の2倍以上、アルミニウム(κ(Al)〜200-250W/m・K)の4倍以上の熱伝導性を有することが報告されている。
【0007】
例えば、特許文献1〜6等には、シリコーン樹脂や高分子材料、あるいは金属、セラミック材料等に、グラファイト粉末等を分散させた熱伝導部材が報告されている。図9に、それら特許文献で開示されている、従来の熱伝導性部材(従来例1)の概略構成イメージ図を示す。すなわち従来例1では、マトリクス10中に高熱伝導材料であるグラファイト粉末11を分散/配合することで、マトリクス自体が有する熱伝導性を改善する。
【0008】
また特許文献7、8等には、グラファイト粒子を重合体結合材と共に圧縮成型した部材や、金属粉末と結晶性カーボン材を複合化したものをホットプレス加工した部材などが報告されている。図10に、それら文献で開示されている、従来熱伝導性部材(従来例2)の概略構成イメージ図を示す。すなわち従来例2では、熱伝導性の高いグラファイト粉末13を圧縮成型化することで、熱伝導性の高い熱伝導性部材12を構成する。
【0009】
さらに特許文献9等には、単結晶性のグラファイト単体からなる熱伝導部材が開示されている。図11に、その従来の熱伝導性部材(従来例3)の概略構成イメージ図を示す。すなわち従来例3では、熱伝導性の高いグラファイト材料が本来持つ熱伝導特性を最大限活かすことで、非常に高熱伝導性の熱伝導性部材を構成する。
【0010】
以上の様に、熱伝導物質として炭素材料を用いた熱伝導性部材は、従来の銅(Cu)やアルミニウム(Al)で構成された部材と比較して、熱伝導性などに優れた熱伝導性部材を形成し得るといった特徴を持つ。
【特許文献1】特開平01−040586号公報
【特許文献2】特開平09−102562号公報
【特許文献3】特開平09−283955号公報
【特許文献4】特開2002−299534号公報
【特許文献5】特開2002−363421号公報
【特許文献6】特開2003−105108号公報
【特許文献7】特開平10−168502号公報
【特許文献8】特開平11−001621号公報
【特許文献9】特開平07−109171号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の従来例で示した熱伝導性部材は以下の様な課題があった。
【0012】
特許文献1〜6に示される従来例1の構成では、確かに高熱伝導性を有するグラファイト粉末11等をマトリクス10中に分散しているため、熱伝導性は改善されるが、母材を構成する樹脂や高分子材料、あるいは金属、セラミック材料からなるマトリクス自身の熱伝導性が低いため、トータルとして高い熱伝導性を得ることは困難であるという課題があった。すなわち、これまでの報告によると、概ね数10W/m・Kの熱伝導性部材が限界であり、今後必要とされる熱対策に使用するには不十分であるといった課題があった。さらに、低熱伝導性マトリクス中にグラファイト粉末を分散させて熱特性の改善を行なうことから、全体に対し比較的多いグラファイト粉末の混合が必須であり、そのため成型性に劣るといった課題があった。
【0013】
また特許文献7、8に示される従来例2の構成では、確かに高熱伝導性を有するグラファイト材料13を主成分として部材12が構成されているため、熱伝導性は改善されるが、粒子間同士の接触熱抵抗の影響や配向性が十分でないことから、本来グラファイトが有する高熱伝導性を、部材として安定に実現することが困難であるといった課題があった。また圧縮成型によってグラファイト材料の面内配向性を揃えるという構成であるため、層方向の熱伝導性を改善することは困難であるといった課題があった。さらに、従来例2では一般的に粉末体を成型する必要があることから、形状自由度や作製容易性の点で困難であるといった課題があった。
【0014】
また特許文献9に示された従来例3の構成では、熱伝導性が非常に高い単結晶状のグラファイトで構成されているため、非常に高い熱伝導性を有するが、前述のした様にグラファイトの結晶構造には著しい異方性があるため、層方向の熱伝導性は、面方向の数10分の一程度しか得られないといった課題があった。故に、部材面方向にのみ熱を伝達する目的で使用する分には、非常に高性能な熱伝導部材であるが、今後さらに機器/デバイスの高機能化/高密度が進展する流れにあって、層方向を含めた熱伝導特性の改善が必要であるといった課題があった。
【0015】
そこで前述の従来技術の課題を解決するために、本発明はグラファイトが有する面方向の高熱伝導性を維持しつつ、層方向の熱伝導性も改善する高熱伝導性部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この従来の課題を解決するために、本発明の高熱伝導性部材は、主組成が炭素(C)からなる高熱伝導性部材であって、主面に対して平行な方向(面方向)にa−b軸が略配向したグラファイト構造体に、金属粒子、あるいは金属化合物粒子から選ばれる少なくともひとつ、あるいは複数が所定量が分散されていることからなる。
【0017】
本構成により、母材となるグラファイト構造体が有する面方向の高熱伝導性を維持しつつ、グラファイト構造体内部に適宜分散/含有された金属あるいは金属化合物粒子が存在するので、層方向(厚さ方向)にもそれら粒子材料を介して効率的に熱が伝搬する。その結果、グラファイト構造体単独の場合と比較して、層方向熱伝導率κ⊥を向上させることが可能になる。
【0018】
本構成において、前述の金属粒子が、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、銀(Ag)から選ばれることより、熱伝導特性が大幅に改善されるので好ましい。とりわけ、W等の高融点金属、あるいはAg等を用いることが好適である。
【0019】
本構成において、前述の金属化合物粒子が、炭化珪素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化硼素(BN)、窒化珪素(SiN)、酸化アルミニウム(Al2O3)から選ばれることより、熱伝導特性が大幅に改善されるので好ましい。とりわけ、AlN、BN等を用いることが好適である。
【0020】
また本発明の構成において、前述の高熱伝導性部材の形状がフィルム状であることより、省スペース性や形状多様性が高まることから、熱伝導性部材として適用可能性(自由度)を広げることができるので好ましい。
【0021】
また本発明の構成において、前述のグラファイト構造体の内部に空孔領域を内包していることより、層方向への熱伝導を促進する金属あるいは金属化合物粒子を好適な形態で含有しやすくすると共に、得られる高熱伝導性部材として柔軟性及び圧縮性を与えることができるので好ましい。なお本明細における柔軟性とは、折り曲げ処理に対する耐屈曲性を示すものであり、本発明の構成の様に空孔を内包することで、耐屈曲回数を飛躍的に向上させることが可能になる。また圧縮性とは、圧縮処理に対する変形性を示すものであり、本発明の構成の様に空孔を内包することで、発熱源等との密着度が高まり、熱抵抗を抑えることが可能になる。
【0022】
また本発明の構成において、前述の高熱伝導性部材の密度が0.30g/cm3以上、2.00g/cm3以下の範囲に含まれることより、従来放熱材よりも軽くなるので好ましい。さらに好ましくは、前述の高熱伝導性部材の密度が0.60g/cm3以上、1.50g/cm3以下の範囲である。
【0023】
また本発明の構成において、グラファイト構造体に含まれる前述の金属あるいは金属化合物粒子の含有量が重量比で10ppm以上、10%以下の範囲から選ばれることより、層方向熱伝導性が顕著に改善されるので好ましい。さらに好ましくは、前述の金属あるいは金属化合物粒子の含有量が重量比で1000ppm以上、3%以下の範囲である。
【0024】
また本発明の構成において、グラファイト構造体に含まれる前述の金属あるいは金属化合物粒子のサイズが0.1μm以上、10μm以下の範囲から選ばれることより、母材となるグラファイト構造体の結晶性(配向性)を維持しつつ、層方向熱伝導性を高める金属あるいは金属化合物粒子を混合/分散することが容易となるので好ましい。さらに好ましくは、前述の炭素構造体のサイズが0.1μm以上、1μm以下の範囲である。
【0025】
また本発明の構成において、主面に対して平行な方向(面方向)の熱伝導率κ‖が、400W/m・K以上、1000W/m・K以下の範囲であり、かつ垂直な方向(層方向)の熱伝導率κ⊥が10W/m・K以上、100W/m・K以下の範囲であることより、従来放熱材では適用困難であった場合においても、使用可能となるので好ましい。さらに好ましくは、面方向熱伝導率κ‖が700W/m・K以上、1000W/m・K以下の範囲であり、かつ層方向熱伝導率κ⊥が50W/m・K以上、100W/m・K以下の範囲である。
【0026】
また本発明の高熱伝導性部材の製造方法は、第一の有機高分子膜を形成する溶液を準備する工程と、前述の第一の有機高分子膜を形成する溶液に金属粒子あるいは金属化合物粒子を所定量だけ混合し、分散する工程と、金属あるいは金属化合物粒子を含有した溶液より第一の有機高分子膜を形成する工程と、前述の第一の有機高分子膜を加熱脱水重合等の反応過程により、炭素前駆体となる第二の有機高分子膜にする工程と、前述の第二の有機高分子膜を所定の温度プロファイルに従って、所定雰囲気下で焼成する工程とからなる。
【0027】
本構成により、母材となるグラファイト構造体を容易にかつ配向性高く作製できると共に、層方向熱伝導性を改善する金属あるいは金属化合物粒子を所望な状態で含有させることが可能となる。
【0028】
また本発明の製造方法において、前述の金属粒子が、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、銀(Ag)から選ばれることより、熱伝導特性が大幅に改善されるので好ましい。とりわけ、W等の高融点金属、あるいはAg等を用いることが好適である。
【0029】
また本発明の製造方法において、前述の金属化合物粒子が、炭化珪素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化硼素(BN)、窒化珪素(SiN)、酸化アルミニウム(Al2O3)から選ばれることより、熱伝導特性が大幅に改善されるので好ましい。とりわけ、AlN、BN等を用いることが好適である。
【0030】
また本発明の製造方法において、前述の第一の有機高分子膜を形成する溶液がポリアミック酸溶液であることより、取り扱いが容易であると共に、配向性の高いグラファイト構造体の形成が可能となるので好ましい。
【0031】
また本発明の製造方法において、前述の第二の有機高分子膜がポリイミド(PI)であることより、取り扱いが容易であると共に、配向性の高いグラファイト構造体の形成が可能となるので好ましい。
【0032】
また本発明の製造方法において、前述の焼成工程の温度プロセスが1000℃から1400℃の温度範囲から選ばれる所定温度で予備焼成する工程と、2400℃から3000℃の温度範囲から選ばれる所定温度で本焼成する工程からなることより、第二の有機高分子膜より面内配向性の高いグラファイト構造体を形成することができるので好ましい。
【0033】
また本発明の放熱システムは、発熱源と放熱部材とを前述の記載の高熱伝導性部材を介して熱的に接続されている。
【0034】
本構成により、放熱システムの形状自由度が高く、放熱特性に優れた放熱システムを設計することが可能となる。
【発明の効果】
【0035】
以上説明したように、本発明の高熱伝導性部材によれば、面方向熱伝導性の高いグラファイト構造体に、層方向熱伝導性を補う金属あるいは金属化合物粒子を分散する構造を適用したので、全体として高い熱伝導機能を有する高熱伝導性部材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら、説明する。
【0037】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における高熱伝導性部材の概略図を示している。本高熱伝導性部材は基本的な構成要素として、主面に対して平行な方向(面方向)にa−b軸が略配向したグラファイト構造体1と、前述のグラファイト構造体1中に、ほぼ均一に分散配置された金属粒子(あるいは金属化合物粒子)3とからなる。
【0038】
このグラファイト構造体1は、前述のの様に炭素六員環構造からなるグラフェン層2が相関を持って層状に積層された構造からなる。本発明において好適なグラファイト構造体の仕様としては、このグラファイト構造体をX線回折法で評価した場合、結晶面の間隔dがd=0.335〜0.340nm(単結晶グラファイトの報告値:0.335nm)の範囲にあり、かつ(002)面及びその高次ピーク以外の回折ピークが観察されないものである。図4に、本発明で用いられるグラファイト構造体1の代表的なX線回折パターンを示す。また結晶性(配向性)においても、図4に示した26.5°付近の主ピークに対する半値幅で、1°以下のものが好ましく適用される。このような結晶性(配向性)を示すグラファイト構造体単独の面方向熱伝導率κ‖は、製法等にも依存するが概ね、400W/m・K以上であり、本発明においてもκ=400W/m・K以上のグラファイト構造体であれば好適である。
【0039】
前述のの様に本発明において母材に用いられるグラファイト構造体1は、面方向熱伝導率が高い単結晶性のグラファイトであれば、いかなるものでも使用できるが、中でも有機高分子フィルム(例えば、ポリイミド)を焼成処理によって熱分解することによりグラファイト化させる方法で得られる、単結晶に近い構造を持つ高配向性グラファイトが特性的にも、また製造面からも好適である。故に、以下に示す実施例では、この有機高分子フィルムを焼成処理したグラファイト構造体を用いた例を中心に説明する。
【0040】
本発明で適用される金属粒子(あるいは金属化合物粒子)3は、グラファイト構造体1を伝搬する熱を面方向のみならず、グラフェン層2間を熱的に接続し、層方向(厚さ方向)にも熱を伝搬させる機能を有する。故に、熱伝導性の高い金属材料(あるいは金属化合物材料)を用いることが好ましい。具体的には、金属あるいは金属化合物材料単体の熱伝導率κが、10W/m・k以上のものより適宜選択される。その代表的なものとして、金属材料ではタングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、銀(Ag)等を、金属化合物材料では炭化珪素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化硼素(BN)、窒化珪素(SiN)、酸化アルミニウム(Al2O3)等を挙げることができる。その形状は、グラファイト構造体1に分散が容易な粒子状、あるいは粉末状のものが選ばれる。
【0041】
さらに分散性を高める目的で、原料として用いる金属あるいは金属化合物材料を、予め粉砕処理し、サイズを小さくしておいても良い。その粉砕化処理方法としては、ボールミル、ジェットミル、高速回転ミル等いずれを用いても良いが、ジェットミル法で粉砕するのが容易である。その際、粒度計等を用いて粒径の均一性を高めても良い。
【0042】
また用いる粒子の粒径については、グラファイト構造体中に均一分散できる大きさならば特に差し支えなく、直径が0.1〜10μm程度の大きさものが好ましく用いられるが、有機高分子膜を焼成することによってグラファイト構造体を形成する方法を用いる場合などでは、グラファイト化を阻害することがない様、0.1〜1μm程度のものを用いることが好適である。
(実施の形態2)
上記の様な構成を作製する手段は幾つかあるが、作製容易性や得られる特性の観点から、有機高分子フィルムを焼成処理することによってグラファイト構造体を形成するのが、最良な方法である。そこで本実施の形態ではこの例について説明する。
【0043】
有機高分子フィルムを出発原料として、グラファイト構造体からなる高熱伝導性部材を得る方法は大きく、(1)金属あるいは金属化合物粒子が分散した有機高分子膜を得る工程と、(2)それを焼成処理して高分子膜をグラファイト化させる工程とからなる。
【0044】
まず工程(1)の金属あるいは金属化合物が含有した有機高分子膜の形成工程について説明する。金属あるいは金属化合物を含有した有機高分子膜(第二の有機高分子膜)は、溶媒で希釈した第一の有機高分子溶液に金属あるいは金属化合物粒子を所定量だけ混合/分散し、溶媒揮発させることで所定の形状に成型(第一の有機高分子膜)した後、加熱脱水重合反応等の反応過程を経ることで合成することができる。このとき必要に応じて触媒を用いることもある。上記手順で得られる第二の有機高分子膜は、用いる有機高分子材料によって、高分子の分子配列を配向させることも可能であり、この第二の有機高分子膜の配向度合いは、最終的に得られるグラファイト構造体の配向性にも影響を与える。
【0045】
より具体的な上記手順は、まず所定の配向性を持ち、かつ適宜混合した金属あるいは金属化合物が分散した第二の有機高分子膜が得られる様に、第一の有機高分子膜溶液の固体成分である原料及び溶媒の組成を決定し、その組成に調合した溶液に対して、必要に応じて触媒や粘度調整剤などを添加して撹拌し、注型/塗布などによって所望の使用形態にする。そして、その状態で溶媒揮発させることで、第一の有機高分子溶液を固体化(膜化)する。作製時の温度条件としては、通常の作業温度である室温近傍で行なえるが、必要に応じて溶媒の沸点以下の温度まで加熱することもある。
【0046】
さらに得られた第一の有機高分子膜を加熱脱水重合等の反応過程により炭素前駆体となる第二の有機高分子膜に変化させる。一般的には、窒素雰囲気中や真空雰囲気での加熱処理や、化学的な反応で脱水重合させるが、形成する有機高分子によってその最適手法は異なる。作製容易性の観点から、100〜400℃程度の温度範囲で加熱する方法で、前述の反応過程を実施できるものが好適である。またその配向性を制御するために延伸処理を同時に行なっても良い。
【0047】
本発明において適用な可能な有機高分子材料としては、焼成処理によって高配向性グラファイト構造体が形成できれば良く、例えばポリイミド(PI)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンテレフタルアミド(PPTA)、ポリフェニレンオキササジアゾール(POD)、ポリベンゾチアゾール(PBT)、ポリベンゾビスチアゾール(PBBO)、ポリフェニレンベンゾイミダゾール(PBI)、ポリフェニレンベンゾビスイミダゾール(PPBI)、ポリチアゾール(PT)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)などを挙げることができる。
【0048】
また溶媒としては、第一の有機高分子材料が溶解すれば良く、ジメチルアセトアミドやN-メチルピロリドンなどの一般的な有機溶媒を、単独あるいは混合して用いることができる。また粘度調整剤としては、エチレングリコール等を用いることができるが、これらに限られるものではない。また形成される有機高分子膜の帯電性を緩和するために、リン酸水素カルシウム等のフィラーを適宜混入しても良い。
【0049】
次に工程(2)の有機高分子膜から配向性グラファイトを得る工程について記す。この工程は、基本的には前述の特許文献9(特開平07-109171号公報『グラファイト熱伝導体及びそれを用いたコールドプレート』)に記載された高分子膜(東レデュポン社製カプトン)を焼成する方法とほぼ同様である。
【0050】
まず前述の工程で作製された炭素前駆体となる第二の有機高分子膜を予備焼成し、有機高分子中に含まれる炭素(C)以外の成分(酸素(O)、窒素(N)、水素(H)など)を除去する。その処理温度及び処理時間は、焼成処理する試料の形状やサイズにも依存するが、アルゴン(Ar)あるいは窒素(N2)雰囲気中、またはその混合雰囲気で概ね、1000〜1200℃で、0.5〜5時間である。またその昇温速度としては、1〜15℃/minの範囲、とりわけ3〜10℃/minの範囲で加熱することが好ましい。また予備焼成処理後の降温速度としては、5〜20℃/minの範囲、とりわけ5〜10℃/minの範囲で冷却することが好ましい。
【0051】
以上の条件により、本焼成処理後に得られるグラファイト構造体の面方向熱伝導率と配向度を高めることができる。
【0052】
予備焼成された高分子フィルムは、本格的に配向性グラファイトとするために、2400〜3000℃の温度範囲から選ばれる所定温度で本焼成される。その際、一端所定の加熱温度に保持する中間処理(概ね2000〜2400℃)を行なうことで、得られるグラファイト構造体の配向度を高めることができる。具体的には室温から所定の中間温度まで5〜10℃/minの昇温速度で加熱し、1時間程度保持した後、再度昇温し、本焼成する。本焼成条件は、2400〜3000℃の温度範囲で、0.5〜10時間程度加熱する。本焼成処理後の冷却は、降温速度として5〜20℃/minの範囲、とりわけ5〜10℃/minの範囲で冷却することが好ましい。
【0053】
以上の様な工程で、本発明の面方向熱伝導性の高い高配向性のグラファイト構造体を形成することができ、さらにその構造に分散されている金属あるいは金属化合物粒子の作用により、層方向熱伝導性も改善される。記載した以上の工程で、有機高分子膜がグラファイト構造体に変化する様子を示した反応模式図を図5に示す。
【0054】
さらに、この方法で得られるグラファイト構造体において、焼成条件(主に昇温速度)を調整することや、前述のフィラーを適宜混合して焼成処理することで、グラフェン層構造を二次元的に配向させつつ、構造体内部に微細な空孔を多数内包した構造を作製することができる。その空孔領域のため、形成されるグラファイト構造体の密度は、本来のグラファイトの値(〜2.26g/cm3)よりも十分に小さくすることができる(0.30〜2.00g/cm3)。このような空孔4を内包したグラファイト構造体からなる部材の模式図を図2に示す。
【0055】
このような構造とすることで、得られるグラファイト構造体1は柔軟性を持ち、屈曲させても切断等が起こりにくく、圧縮に対しても適度に変形する構造となる。この特性は、熱伝導性部材として使用する際の設計自由度を高めると共に、発熱源との熱接触抵抗を低減する効果を持つ。
【実施例1】
【0056】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0057】
(実施例1)
金属粒子材料としてタングステン(W)粒子を、そしてそのW粒子を混合/分散する有機高分子材料としてポリイミド(PI)を採用し、それを焼成処理することでグラファイト構造体を作製した例について記載する。図6に、その主な工程図を示す。
【0058】
まずポリイミドの前駆体有機高分子溶液(第一の有機高分子溶液)としてポリアミック酸溶液を作製した。その手順は、窒素(N2)ガスが充填されたドライボックス内で、ビス(4-アミノフェニル)エーテル 5.00g、及びジメチルアセトアミド 250mlを丸底フラスコに加えて攪拌し、溶解させた。
【0059】
さらにこの溶液に、ピロメリット酸無水物 5.45gを混入し、約3時間攪拌することで、第一の有機高分子であるポリアミック酸溶液を合成した。
【0060】
合成したポリアミック酸溶液に、ジェットミル等で粉砕化したW粒子(サイズ:〜1μm)を重量比で1%混合し、ボールミルを12時間行なうことで均一に分散させた。
【0061】
このようにして作製したW含有ポリアミック酸溶液を、スライドガラスに塗布して、W含有ポリアミック酸薄膜(厚さ:〜150μm)を形成した。この膜を、窒素雰囲気中で1時間余乾燥してから、真空オーブン中で室温下2時間、減圧乾燥した後、100℃に加熱し1時間熱処理した。その結果、濃灰色の膜が得られた。
【0062】
さらに得られた膜を、ガラスチューブオーブン中に設置し、真空に減圧した後300℃で1時間熱処理してW含有ポリイミド膜を形成した。
【0063】
得られたポリイミド膜をスライドガラスからはがして、マイクロメータで厚さを測定したところ、約15μmであった。
【0064】
以上の工程で得られた炭素前駆体有機高分子膜(第2の有機高分子膜)を電気炉に入れて焼成処理を行なった。図7(a)に本実施例で採用した予備焼成の温度プロファイルを示す。
【0065】
まず予備焼成として、Ar雰囲気中で室温から1200℃までを3℃/minの昇温速度で昇温して、予備焼成温度1200℃で3時間保持した。昇温速度については、焼成処理する有機高分子膜の種類や形状を勘案して決めればよいが、一般的に1℃/min以上15℃/min以下の範囲が良く、本実施例では3℃/minを採用した。焼成処理後、5℃/minの降温速度で室温まで冷却した。一般的に、冷却する際の降温速度に関しては、昇温速度ほど厳密に制御する必要はないが、1℃/min以上10℃/min以下が好ましく、本実施例では5℃/minを採用した。
【0066】
この予備焼成工程では、有機高分子膜が熱分解して窒素、酸素、水素が抜けることにより、重量比で出発原料の50〜60%となり、W粒子が分散した炭素化フィルムに変化する。この予備焼成処理は、分散させたW粒子には何ら影響を与えない。
【0067】
上記条件で予備焼成を行なった後、さらに試料を超高温炉に移し替えて本焼成を行なった。その温度プロファイルを図7(b)に示す。本実施例では、1000℃までは昇温速度10℃/minで行ない、その後5℃/minとして中間処理温度である2200℃で1時間の中間保持を設けた。さらに、本焼成温度2700℃までは5℃/minの昇温速度とし、2700℃での保持時間を3時間とした。本焼成温度保持後の冷却は、2200℃までは降温速度は5℃/minとし、その後1300℃までは10℃/min、室温までは20℃/minとした。
【0068】
このようにして得られたグラファイト構造体の膜厚は、約30μmであり、走査電子顕微鏡(SEM)で得られた構造体断面を観察すると、グラフェン構造が層状に積層されたグラファイト構造をもっていることが確認できた。さらに面方向に配向したグラフェン構造を横切る様に、事前に混合/分散させていたW粒子が配置されていることも観察された。
【0069】
またX線回折により形成されたグラファイト構造体の結晶構造を評価した結果、図5と同等のグラファイト(002)及びその高次ピークが観察された。これより、Wを含んでいる場合でも、十分に面方向配向性が高いグラファイト構造が得られていることがわかった。
【0070】
上記の工程で得られたW含有グラファイト構造体の熱伝導特性を評価した。その結果、面方向熱伝導率κ‖は、W粒子を含まない場合の値である、900〜980W/m・Kと同様であったが、層方向(厚さ方向)熱伝導率κ⊥は、従来のほぼ5〜10倍である、25〜40W/m・Kが得られた。
【0071】
従って、配向性の高いグラファイト構造体にW粒子を混合/分散することで、層方向にも熱伝導性が高いグラファイト構造体が得られることを確認した。
【0072】
(実施例2)
前述の実施例1と同様の工程で、グラファイト構造体からなる高熱伝導性部材を作製する際、混合/分散するW粒子の濃度を変えた場合の結果について記す。
【0073】
第一の有機高分子溶液であるポリアミック酸に、W粒子を10ppm〜10重量%の範囲で変化させて、グラファイト構造体からなる高熱伝導性部材を形成した。
【0074】
得られた試料の熱伝導性特性を評価した結果、面方向熱伝導率κ‖は前述の実施例1と同様に、800〜980W/m・Kを示すと共に、層方向熱伝導率κ⊥は、10〜50W/m・Kの値が得られた。
【0075】
(実施例3)
前述の実施例1と同様の工程で、炭素前駆体であるW含有ポリイミド膜を作製する際、ポリイミド膜厚が約50μmとなる様にポリアミック酸溶液の濃度を調整し、第二の有機高分子であるポリイミド膜を作製した。
【0076】
この試料を前述の実施例と同様の温度プロファイルで焼成処理を行なうと、得られるグラファイト構造体の内部には、多数の微細な空孔領域が存在していることが確認された。その起因については定かではないが、本焼成プログラムでは炭素前駆体であるポリイミド膜の膜厚を厚くすると、空孔領域の存在する疎なグラファイト構造体になることがわかった。
【0077】
この試料の熱伝導性特性を評価した結果、面方向熱伝導率κ‖は、600〜750W/m・Kと減少したが、層方向熱伝導率κ⊥は、25〜40W/m・Kの値を維持した。これは空孔領域を内包することによって、面方向の熱伝導性が若干低減するが、W粒子による層方向への寄与は十分なされている結果であると考えられる。
【0078】
さらに、本実施例で作製したグラファイト構造体は、内部に微細な空孔領域が多数存在していることから、その結果として屈曲性や圧縮性に富んだ高熱伝導性部材となった。
【0079】
(実施例4)
前述の実施例1では、含有材料としてW粒子を用いて高熱伝導性部材を作製したが、本実施例では窒化アルミニウム(AlN)粒子をグラファイト構造体に添加した場合の結果について記す。
【0080】
本実施例では、前述の実施例と同様の方法で平均粒径が1μmのAlN粒子をポリアミック酸に混合し、ポリイミド化した後、焼成処理してグラファイト構造体を作製した。 得られた試料の熱伝導性特性を評価した結果、面方向熱伝導率κ‖(800〜900W/m・K)、及び層方向熱伝導率κ⊥(〜50W/m・K)と、いずれもほぼ同様の値が得られた。
【0081】
また混合するAlN粒子の平均粒径を0.1〜10μmの範囲で変化させた場合においても、同様の高熱伝導性部材を得ることができた。
【0082】
(実施例5)
前述の実施例1で用いた炭素前駆体有機高分子材料はポリイミドであったが、それ以外の有機高分子材料でも、上記と同様の製法で金属あるいは金属化合物含有グラファイト構造体を作製することが可能であることを確認した。それぞれの前駆体溶液に金属あるいは金属化合物粒子を混合して膜化し、加熱脱水重合反応等により得られた膜を、所定の温度プロファイルで焼成処理することで、高熱伝導性部材を作製できた。具体的にはポリイミド以外に、ポリフェニレンテレフタルアミド(PPTA)、ポリフェニレンオキササジアゾ(POD)、ポリベンゾチアゾール(PBT)、ポリベンゾビスチアゾール(PBBO)、ポリフェニレンベンゾイミダゾール(PBI)、ポリフェニレンベンゾビスイミダゾール(PPBI)、ポリチアゾール(PT)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)などの有機高分子で、金属あるいは金属化合物含有グラファイト構造体が得られた。
【0083】
(実施例6)
前述の実施例1、4で用いた金属あるいは金属化合物材料はW及びAlN粒子であったが、それ以外の金属あるいは金属化合物材料でも、上記と同様の製法で金属あるいは金属化合物含有グラファイト構造体を作製することが可能であることを確認した。具体的にはタンタル(Ta)やモリブデン(Mo)など高融点金属粒子や、窒化硼素(BN)や酸化アルミニウムなどのセラミック系金属化合物粒子を用いて、高熱伝導性部材(金属あるいは金属化合物含有グラファイト構造体)を得ることができた。
【0084】
(実施例7)
前述の実施例で得られたグラファイト構造体からなる高熱伝導性部材を用いて放熱システムを試作し、その熱抵抗を測定した。図8(a)は、発熱体7と放熱部材9の間に、本発明の高熱伝導性部材8を密着させて放熱を行なう構成である。比較として、銅板や高配向性グラファイトシートを適用した場合も評価した。測定は一定加圧下(10N/cm2)のもとで行なった。
【0085】
その結果、銅板の場合の熱抵抗は、1.0℃/Wであり、高配向性グラファイトシートでは、0.4℃/W程度であったのに対し、本発明の高熱伝導性部材を用いた場合は、0.3℃/Wと熱抵抗特性が改善されることが確認された。
【0086】
また図8(b)や、図8(c)のような他構成においても、同様に放熱特性の改善が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の高熱伝導性部材は、CPUやレーザに代表される各種電子機器/デバイスなどの熱対策が必要な部分に用いられる放熱システム材料として有用であるのみならず、様々な形態に加工可能なことより、均熱性が必要とされる応用、例えば基板ステージやマスクステージなど多岐にわたる応用に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の高熱伝導性部材の概略図
【図2】本発明の高熱伝導性部材の概略図
【図3】グラファイトの結晶構造を示す図
【図4】配向性グラファイト構造体の代表的なX線回折パターンを示す図
【図5】有機高分子膜から配向性グラファイト構造体への過程を示す模式図
【図6】実施例1における高熱伝導性部材の作製工程図
【図7】実施例1における焼成工程の温度プログラムの例を示す図
【図8】本発明の高熱伝導性部材を用いた放熱システムの概略図
【図9】従来の熱伝導性部材の概略図(従来例)
【図10】従来の熱伝導性部材の概略図(従来例)
【図11】従来の熱伝導性部材の概略図(従来例)
【符号の説明】
【0089】
1 グラファイト構造体
2 グラフェン構造
3 金属(金属化合物)粒子
4 空孔領域
5 炭素原子
6 グラフェン構造
7 発熱体
8 高熱伝導性部材
9 放熱部材
10 マトリクス
11 グラファイト粉末
12 グラファイト圧縮成型体
13 グラファイト粉末
14 高配向性グラファイトシート
15 グラフェン構造
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主組成が炭素(C)からなる高熱伝導性部材であって、
主面に対して平行な方向(面方向)にa−b軸が略配向したグラファイト構造体に、金属粒子、あるいは金属化合物粒子から選ばれる少なくともひとつ、あるいは複数が所定量分散されていることを特徴とする高熱伝導性部材。
【請求項2】
請求項1に記載の高熱伝導性部材であって、
前記金属粒子が、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、銀(Ag)から選ばれることを特徴とする高熱伝導性部材。
【請求項3】
請求項1に記載の高熱伝導性部材であって、
前記金属化合物粒子が、炭化珪素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化硼素(BN)、窒化珪素(SiN)、酸化アルミニウム(Al2O3)から選ばれることを特徴とする高熱伝導性部材。
【請求項4】
請求項1に記載の高熱伝導性部材であって、
前記高熱伝導性部材の形状が、フィルム状であることを特徴とする高熱伝導性部材。
【請求項5】
請求項1に記載の高熱伝導性部材であって、
前記グラファイト構造体の内部に、空孔領域を内包していることを特徴とする高熱伝導性部材。
【請求項6】
請求項1に記載の高熱伝導性部材において、
前記高熱伝導性部材の密度が、0.30g/cm3以上、2.00g/cm3以下の範囲に含まれることを特徴とする高熱伝導性部材。
【請求項7】
請求項1に記載の高熱伝導性部材であって、
前記金属粒子、あるいは金属化合物粒子の含有量が、重量比で10ppm以上、10%以下の範囲から選ばれることを特徴とする高熱伝導性部材。
【請求項8】
請求項1に記載の高熱伝導性部材であって、
前記金属粒子、あるいは金属化合物粒子のサイズが、0.1μm以上、10μm以下の範囲から選ばれることを特徴とする高熱伝導性部材。
【請求項9】
請求項1に記載の高熱伝導性部材において、
主面に対して平行な方向(面方向)の熱伝導率κ‖が、400W/m・k以上、1000W/m・K以下の範囲であり、かつ垂直な方向(層方向)の熱伝導率κ⊥が、10W/m・k以上、100W/m・k以下の範囲であることを特徴とする高熱伝導性部材。
【請求項10】
主成分が炭素(C)からなる高熱伝導性部材の製造方法であって、
第一の有機高分子膜を形成する溶液を準備する工程と、
前記第一の有機高分子膜を形成する溶液に、金属粒子、あるいは金属化合物粒子を所定量だけ混合し、分散する工程と、
前記金属粒子、あるいは金属化合物粒子を含有した溶液より、第一の有機高分子膜を形成する工程と、
前記第一の有機高分子膜を加熱脱水重合等の反応過程により、炭素前駆体となる第二の有機高分子膜にする工程と、
前記第二の有機高分子膜を所定の温度プロファイルに従って、所定雰囲気下で焼成する工程とからなる高熱伝導性部材の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の高熱伝導性部材の製造方法であって、
前記金属粒子が、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、銀(Ag)から選ばれることを特徴とする高熱伝導性部材の製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の高熱伝導性部材の製造方法であって、
前記金属化合物粒子が、炭化珪素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化硼素(BN)、窒化珪素(SiN)、酸化アルミニウム(Al2O3)から選ばれることを特徴とする高熱伝導性部材の製造方法。
【請求項13】
請求項10に記載の高熱伝導性部材の製造方法において、
前記第一の有機高分子膜を形成する溶液が、ポリアミック酸溶液であることを特徴とする高熱伝導性部材の製造方法。
【請求項14】
請求項10に記載の高熱伝導性部材の製造方法において、
前記第二の有機高分子膜が、ポリイミド(PI)であることを特徴とする高熱伝導性部材の製造方法。
【請求項15】
請求項10に記載の高熱伝導性部材の製造方法において、
前記焼成工程の温度プロセスが、1000℃から1400℃の温度範囲から選ばれる所定温度で予備焼成する工程と、
2400℃から3000℃の温度範囲から選ばれる所定温度で本焼成する工程からなる高熱伝導性部材の製造方法。
【請求項16】
発熱源と放熱部材とを請求項1から9のいずれかに記載の高熱伝導性部材を介して熱的に接続した放熱システム。
【請求項1】
主組成が炭素(C)からなる高熱伝導性部材であって、
主面に対して平行な方向(面方向)にa−b軸が略配向したグラファイト構造体に、金属粒子、あるいは金属化合物粒子から選ばれる少なくともひとつ、あるいは複数が所定量分散されていることを特徴とする高熱伝導性部材。
【請求項2】
請求項1に記載の高熱伝導性部材であって、
前記金属粒子が、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、銀(Ag)から選ばれることを特徴とする高熱伝導性部材。
【請求項3】
請求項1に記載の高熱伝導性部材であって、
前記金属化合物粒子が、炭化珪素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化硼素(BN)、窒化珪素(SiN)、酸化アルミニウム(Al2O3)から選ばれることを特徴とする高熱伝導性部材。
【請求項4】
請求項1に記載の高熱伝導性部材であって、
前記高熱伝導性部材の形状が、フィルム状であることを特徴とする高熱伝導性部材。
【請求項5】
請求項1に記載の高熱伝導性部材であって、
前記グラファイト構造体の内部に、空孔領域を内包していることを特徴とする高熱伝導性部材。
【請求項6】
請求項1に記載の高熱伝導性部材において、
前記高熱伝導性部材の密度が、0.30g/cm3以上、2.00g/cm3以下の範囲に含まれることを特徴とする高熱伝導性部材。
【請求項7】
請求項1に記載の高熱伝導性部材であって、
前記金属粒子、あるいは金属化合物粒子の含有量が、重量比で10ppm以上、10%以下の範囲から選ばれることを特徴とする高熱伝導性部材。
【請求項8】
請求項1に記載の高熱伝導性部材であって、
前記金属粒子、あるいは金属化合物粒子のサイズが、0.1μm以上、10μm以下の範囲から選ばれることを特徴とする高熱伝導性部材。
【請求項9】
請求項1に記載の高熱伝導性部材において、
主面に対して平行な方向(面方向)の熱伝導率κ‖が、400W/m・k以上、1000W/m・K以下の範囲であり、かつ垂直な方向(層方向)の熱伝導率κ⊥が、10W/m・k以上、100W/m・k以下の範囲であることを特徴とする高熱伝導性部材。
【請求項10】
主成分が炭素(C)からなる高熱伝導性部材の製造方法であって、
第一の有機高分子膜を形成する溶液を準備する工程と、
前記第一の有機高分子膜を形成する溶液に、金属粒子、あるいは金属化合物粒子を所定量だけ混合し、分散する工程と、
前記金属粒子、あるいは金属化合物粒子を含有した溶液より、第一の有機高分子膜を形成する工程と、
前記第一の有機高分子膜を加熱脱水重合等の反応過程により、炭素前駆体となる第二の有機高分子膜にする工程と、
前記第二の有機高分子膜を所定の温度プロファイルに従って、所定雰囲気下で焼成する工程とからなる高熱伝導性部材の製造方法。
【請求項11】
請求項10に記載の高熱伝導性部材の製造方法であって、
前記金属粒子が、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、銀(Ag)から選ばれることを特徴とする高熱伝導性部材の製造方法。
【請求項12】
請求項10に記載の高熱伝導性部材の製造方法であって、
前記金属化合物粒子が、炭化珪素(SiC)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化硼素(BN)、窒化珪素(SiN)、酸化アルミニウム(Al2O3)から選ばれることを特徴とする高熱伝導性部材の製造方法。
【請求項13】
請求項10に記載の高熱伝導性部材の製造方法において、
前記第一の有機高分子膜を形成する溶液が、ポリアミック酸溶液であることを特徴とする高熱伝導性部材の製造方法。
【請求項14】
請求項10に記載の高熱伝導性部材の製造方法において、
前記第二の有機高分子膜が、ポリイミド(PI)であることを特徴とする高熱伝導性部材の製造方法。
【請求項15】
請求項10に記載の高熱伝導性部材の製造方法において、
前記焼成工程の温度プロセスが、1000℃から1400℃の温度範囲から選ばれる所定温度で予備焼成する工程と、
2400℃から3000℃の温度範囲から選ばれる所定温度で本焼成する工程からなる高熱伝導性部材の製造方法。
【請求項16】
発熱源と放熱部材とを請求項1から9のいずれかに記載の高熱伝導性部材を介して熱的に接続した放熱システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2005−119887(P2005−119887A)
【公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−353442(P2003−353442)
【出願日】平成15年10月14日(2003.10.14)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年10月14日(2003.10.14)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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