説明

高粘度シリコーン材料の連続的な製造法

【課題】高い流量で運転可能であり、そのうえ品質を改善することができる高粘度シリコーン材料の製造法を提供する。
【解決手段】25℃で測定して少なくとも500Pa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサン組成物(A)の連続的な製造法であり、その際、オルガノポリシロキサン(O)および充填剤(F)を、第一の方法工程において、それぞれ2個の軸平行な、同旋駆動可能または逆旋駆動可能な混練工具を有し、かつ該混練工具の軸に対して横方向に通過可能な開口部が互いに結合されている、一列に並んで配置された少なくとも2個の混練室を備えた混練カスケード中で混合し、かつ混練して粗製混合物を得、かつ該粗製混合物を第二の方法工程において、搬出スクリューを備えた連続的に駆動されるダブルトラフ混練機中で100℃〜250℃にて混練し、かつ脱ガスする方法によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一列に並んで配置された少なくとも2個の混練室を有する混練カスケードおよび連続的に駆動されるダブルトラフ混練機(Doppelmuldenkneter)中でオルガノポリシロキサン組成物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
EP570387Aの中では、HTVシリコーン材料の連続的な製造法が記載されており、その際、ポリシロキサン中への充填剤混入および脱ガスが一工程で往復振動式一軸混練機(Einwellenpilgerschrittkneter)中で行われる。とは言っても機械の分離が可能であるので、第一の混練機中で混合プロセスを行い、かつ第二の混練機中で脱ガスプロセスを行うことができる。高分子ポリオルガノシロキサンの相転移、乾燥摩擦および機械破壊に基づき貯蔵安定性は低下している。それにこの機械設計では満足させる流量を達成することはできない。
【0003】
方法の発展形態がEP1033389Aの中で記載される。なかでも該方法は貯蔵安定性の改善のために、相転移を防止し、ひいては、そのようにして製造されたHTV材料の締め付けおよび脆性傾向を和らげるゴム返送を拡張する。二段階の方法は、EP1033389Aの中で言及されない。該方法は、生成物返送によって技術的に非常にコストが掛かるので、経済的な運転様式が可能ではない。流量もこの方法の場合、満足のいくものではない。なぜなら生成物返送は装置の空時収率を強く低下させるからである。
【0004】
EP1110696Aは、HTVシリコーン材料の二段階の製造法を記載する。この際、第一の方法部において、並行する二軸押出機中で充填剤およびシリコーンポリマーおよびそれに疎水化のための負荷剤および可塑剤の混合が行われる。第二の方法部において、次いで混合物はコンパウンド化して仕上げられ、かつ往復振動式一軸混練機中で脱ガスされる。EP1110696Aの方法は、EP570387Aと比べて正に流量の方向および改善された充填剤分布の点で際立っている。とは言ってもEP570387Aは、二軸機が機械的な損耗および金属摩耗の点で問題となることを記載しており、製造されたHTV材料の不所望な灰色着色が結果として起こり得る。これは殊に非常に高充填の堅い混合物に当てはまる。
【0005】
EP807509Aは、特別な混練機カスケードの使用下での貯蔵安定性のオルガノポリシロキサン組成物の連続的な製造を記載する。目標とされるのは、付加架橋する液状ゴムのための基礎材料である。該材料の脱ガスは、脱ガス容器を用いてのみ行われ、特別に考案された機械を用いては行われない。EP807509Aによれば、混練カスケードの使用下でHTV材料を製造することも可能である。取り付けられていないか、もしくは適切でない脱ガス手段に基づき、この方法に従って作製されたHTVゴムは使用可能ではない。
【0006】
EP1468803Aは、混練カスケードが、それぞれ2個の軸平行な、同旋駆動可能または逆旋駆動可能な混練工具を有し、かつ混練工具の軸に対して横方向に通過可能な開口部が互いに結合されている、一列に並んで配置された少なくとも2個の混練室から成る方法を記載する。この混練カスケードから、すでに可塑性の粗製ゴムが往復振動式混練機中にポンプ供給され、そこで材料が混練され、かつ脱ガスされ得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】EP570387A
【特許文献2】EP1033389A
【特許文献3】EP1110696A
【特許文献4】EP807509A
【特許文献5】EP1468803A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記方法は、全ての生成物について平均値を出した1500kg/hより大きい流量を可能としない技術的限界に達しているという欠点を有する。様々な限定要因が存在している。一方では充填剤装入が限定され、かつ他方では滞留時間が限定される。なぜなら流量が上昇すると、不可避的に平均滞留時間が短くなり、これは品質にマイナスの影響を及ぼすからである。過酸化物架橋に際しての黄化、押出に際しての発泡形成といった特性ならびに貯蔵安定性のマイナスの影響が特に明らかとなる。EP1468803Aの中で記載される方法の場合、緩衝装置が含まれていないため、故障した場合、即座に逆流が発生し、かつ装置が停止されなければならないか、または粗製ゴムが排出されなければならず、それから再び他の装置中で後処理されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の対象は、25℃で測定して少なくとも500Pa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサン組成物(A)の連続的な製造法であり、その際、オルガノポリシロキサン(O)および充填剤(F)を、第一の方法工程において、それぞれ2個の軸平行な、同旋駆動可能または逆旋駆動可能な混練工具を有し、かつ該混練工具の軸に対して横方向に通過可能な開口部が互いに結合されている、一列に並んで配置された少なくとも2個の混練室、その際、第一の混練室は供給開口部を有し、かつ最後の混練室は搬出開口部を有する、を備えた混練カスケード中で混合し、かつ混練して粗製混合物を得、かつ該粗製混合物を第二の方法工程において、搬出スクリューを備えた連続的に駆動されるダブルトラフ混練機中で100℃〜250℃にて混練し、かつ脱ガスする。
【0010】
本発明による方法では、EP1468803Aの方法と比べて2倍〜3倍高い流量で運転可能である。そのうえ品質を改善することができる。さらに本方法は、ダブルトラフ混練機の良好な緩衝作用に基づき、冷却浴、ストレーナおよびパッキング領域中で小さな故障が生じた場合も装置全体を停止する必要がないという方法技術的な利点を有する。
【0011】
本発明による方法では、混練カスケードの全ての混練室を別個に駆動することができ、ひいては混合−、圧縮−および混練処理の強さの制御を室固有に非常に正確に定めることができる。
【0012】
このように混合−、圧縮および混練処理に対して正確に影響を及ぼすことは、例えばEP1110696Aの中で記載されるような2本ロール混練機では可能でない。ゴム材料は遅くとも混練カスケードの最後の室内で、完成したゴムのように完全に均質であり、加えてこれは個々の混練室の駆動により再現可能に効果的に混練される。
【0013】
本発明により使用される混練カスケードは混練機であり、かつ混練処理の強さおよび滞留時間の制御を可能にする。なぜなら、個々の混練室内での混練工具の回転数および回転方向を互いに無関係に任意に調整可能だからである。
【0014】
混練カスケード中には自由ガス空間が存在しないので、保護ガスを省いてよい。好ましくは、充填剤を添加するための供給ホッパ内で窒素により不活性化される。
【0015】
混練カスケードからの生成物搬出は問題とはならない。なぜなら、完全した組成物は混練工具によって簡単に搬出開口部に搬送することができるからである。最後の混練室は、好ましくは生成物搬出のためのポンプ羽根を有する。
【0016】
混練カスケードは、好ましくは最大10個の混練室から成り、好ましくは最大6個の室で十分である。その際、最後の室は、好ましくは生成物搬出のためのポンプ羽根を有する。好ましくは、第一の室内にオルガノポリシロキサン(O)および構造改善剤(S)が計量供給される。それに例えば1つ以上の混練カスケードの室内に充填剤(F)が計量供給され得る。好ましくは、全てのオルガノポリシロキサン(O)が第一の室内に計量供給される。
【0017】
オルガノポリシロキサン(O)の一部を、例えばオルガノポリシロキサン組成物(A)の粘度を低下させるために後方の室内に計量供給することも可能である。全ての室内に必要とされる充填剤(F)が計量供給され得、好ましくは最後の室内と第一の室内には充填剤(F)は計量供給されない。その際、必要とされる全体の充填剤量を、例えば第一の室の1個/2個/3個または4個のみに添加することが可能である。有利には、充填剤(F)は室2および3に計量供給される。しかしながら、全ての室にわたって充填剤を分布させることも可能である。構造改善剤(S)が使用される場合、これらは好ましくは第一の複数の室内に、殊に第一の単数の室内で計量供給される。好ましくは、最後の室内に構造改善剤(S)は計量供給されない。
【0018】
好ましくは、混練カスケードは少なくとも3個の、殊に少なくとも5個の混練室を有する。
【0019】
個々の混練室または全ての混練室の間には、スクリーン、バッフル板(Stauscheiben)またはスライダが、オルガノポリシロキサン組成物(A)を滞留させるために取り付けられていてよい。これらの部材は、それらの位置およびそれらによって解放可能な通路に関して調節可能である。それによって滞留時間は個々の室内で影響を及ぼされ得る。
【0020】
好ましくは、混練工具は、混練ブレード、ローラまたは多角形板である。
【0021】
好ましくは、混練機中には第一の混練室の供給開口部以外に、個々の混練室内に通じるか、または2個の混練室の間に配置されている別の供給開口部が存在している。好ましくは、どの混練室も供給開口部を有する。殊に、第一の2個、3個または4個の混練室の供給開口部は固体の供給のために適しており、かつ他の供給開口部は液体の計量供給のために予定されている。
【0022】
好ましくは、どの混練室も別々に制御可能に駆動され得、それぞれ好ましくはトルク測定部を有する。トルクは室内での混合物の粘度の基準である。
【0023】
好ましくは、混練室は加熱可能および/または冷却可能であり、殊に個別的に種々の温度で駆動可能である。混練に際して、好ましくは冷却によって部分的に排出される摩擦熱が、組成物の過熱を防止するために発生する。
【0024】
好ましくは、混練工具は移動可能に支承されている。次いで支承面のケーシング−遮断壁には、混練工具の駆動軸用の開口部が備え付けられている。好ましくは、混練室のケーシングは工具軸に対して横方向に延びる分離箇所を有するので、支承部とは逆向きのケーシング部分は駆動軸の軸方向で該分離箇所および混練工具と隔たって移動可能である。このように形成された混練機は特に洗浄し易い。
【0025】
そのような混練機はEP807509Aの中で記載されている。
【0026】
混練室内での材料温度は、本発明による方法の場合、高くとも280℃、好ましくは高くとも240℃である。
【0027】
最後の混練室の通過後、ゴムは、有利には短い柔軟性の中間部分を介して直接的にダブルトラフ混練機にポンプ供給される。しかし、接合エレメントとして搬送道具も利用してよい。ダブルトラフ混練機には、好ましくは2個のシグマ型混練ブレードおよび搬出スクリューが備え付けられている。混練ブレードは、好ましくは、それぞれ別々に駆動され得、かつ好ましくは加熱−冷却可能である。回転数は、好ましくは無段階で別々に全てのブレードに対して調節することができる。好ましくは、回転方向の変更が可能である。
【0028】
ダブルトラフ混練機の充填度は、好ましくは40〜60%で一定に保たれ、すなわち搬出スクリューは、搬入量および搬出量が平衡となるように制御される。混練機に後接続されたユニット中で小さな故障が生じた場合、残りの混練機容量がバッファーとして利用され得、これは全体のプロセスを非常に頑強なものにし、規格外製品の割合を最小にする。
【0029】
混練機は、好ましくは1〜150mbar(絶対)の低い負圧で駆動される。生成物温度は一定に保たれ、かつ、好ましくは生成物に応じて、少なくとも100℃、殊に少なくとも130℃、好ましくは高くとも250℃、殊に高くとも220℃である。
【0030】
混練ブレード以外に、好ましくはトラフにも生成物の温度を制御できるように二重壁が備え付けられている。
【0031】
混練機中での生成物の平均滞留時間は、幅広い範囲にわたって変化させることができる。有利なのは、少なくとも5分間、殊に少なくとも30分間、好ましくはせいぜい5時間、殊にせいぜい3時間である。
【0032】
混練機中での狭い滞留時間分布を達成できるように、混練機中の入口開口部および出口開口部は最大間隔に保たれている。ブレードの幾何学的形状は、生成物が可能な限り出口開口部から遠く離れて保たれるように選択されている。
【0033】
オルガノポリシロキサン組成物(A)は、製造に際して生成物の中間貯蔵なしに2つの方法工程を進む。
【0034】
その時に良好に混練され、かつ脱ガスされたオルガノポリシロキサン組成物(A)のさらなる後処理は問題を起こさないが、それは本発明の対象ではない。
【0035】
オルガノポリシロキサン組成物(A)の充填剤含量は、5〜80質量%、好ましくは10〜50質量%である。特に有利には、20〜40質量%の充填剤含量を有するオルガノポリシロキサン組成物(A)が製造される。
【0036】
充填剤(F)として、通常はシリコーン材料中で使用される全ての充填剤が考慮に入れられ、その際、種々の充填剤の混合物も使用してよい。適した充填剤(F)は、例えばケイ酸、石英粉末、カーボンブラック、金属酸化物、金属炭酸塩、金属硫酸塩、金属ケイ酸塩、金属窒化物、ケイ藻土、粘土、白亜、雲母、金属粉末、活性炭、有機プラスチックの粉末等である。充填剤含有のオルガノポリシロキサン組成物(A)の粘度が充填剤含量に基づき、連続的な様式でこの充填剤含有シリコーン材料中に混入されるオルガノポリシロキサン(O)の粘度より明らかに高いことが重要である。有利なのは補強充填剤(F)、つまり、少なくとも50m2/g、好ましくは50〜500m2/gのBET比表面積を有する充填剤、例えば分解法により製造されたケイ酸、構造の維持下で脱水されたケイ酸ヒドロゲル、つまり、いわゆるアエロジル、沈降シリカのその他の種類ならびにカーボンブラックである。熱分解法により製造された特に有利なケイ酸、沈降ケイ酸およびカーボンブラックは、例えばその分散性を改善するために、場合により表面処理に供されている。酸化物補強充填剤(F)は、好ましくは疎水化によって得られる少なくとも0.5の炭素含量で前もって疎水化されていてよい。前もって疎水化されたおよび前もって疎水化されなかった酸化物補強充填剤(F)の混合物も使用してよい。
【0037】
殊に純粋な形で室温にて固体のMwxyz−シリコーン樹脂タイプのシリコーン樹脂も含まれていてよい。
【0038】
オルガノポリシロキサン組成物(A)の基礎を成しているオルガノポリシロキサン(O)は、種々のオルガノポリシロキサン(O)の一つまたは混合物であってよい。根本的に、HTV−、LSR−、RTV−1およびRTV−2−材料の製造に際して、当業者によく公知の、十分に記載された全てのオルガノポリシロキサン(O)を使用することができる。これには、直鎖状、分枝鎖状、環状または樹脂様のオルガノポリシロキサンが含まれ、それらは場合により、たいてい架橋性のために官能基を有していてよい。好ましくは、直鎖状オルガノポリシロキサン(O)、例えば50〜9000の重合度を有するポリジメチルシロキサンが使用される。オルガノポリシロキサン(O)の有利なオルガノ基は、メチル、フェニル、ビニルおよびトリフルオロプロピルであり、特に有利なのはメチル基である。ポリオルガノシロキサン中に有利には存在する官能基は、−SiOH、SiOR、Si−ビニルおよび−SiHであり、特に有利なのはビニル基である。特に有利なオルガノポリシロキサン(O)は、通常、熱硬化性HTVシリコーン材料の製造のために使用される、25℃で測定して200〜900daNmの、殊に400〜700daNmのブラベンダー値を有するオルガノポリシロキサン(O)である。
【0039】
オルガノポリシロキサン(O)の組成物は、好ましくは平均的な一般式(1)
1a2bSiO(4-a-b)/2 (1)、
[式中、
基R1は、−H、−OH、−OR、その際、RはC1〜C10−炭化水素基を表す、ならびに場合によりハロゲン置換基またはシアノ置換基、場合により2価の有機基によりケイ素に結合し、少なくとも1つの脂肪族炭素−炭素多重結合を含むC1〜C10−炭化水素基から選択される、同じまたは異なる1価のSi結合基であり、
基R2は、同じまたは異なる1価のSi結合した、場合によりハロゲン置換またはシアノ置換された、脂肪族炭素−炭素多重結合を含まないC1〜C10−炭化水素基であり、
aは、0〜1の負でない数であり、かつ
bは、1〜2.1の負でない数である]
に相当する。
【0040】
1は、好ましくは、SiH官能性架橋剤または過酸化物と反応し得るアルケニル基である。通常、炭素原子2〜6個を有するアルケニル基、例えばビニル、アリル、メタリル、1−プロペニル、5−ヘキセニル、エチニル、ブタジエニル、ヘキサジエニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、好ましくはビニルおよびアリルが使用される。
【0041】
アルケニル基R1によりポリマー鎖のケイ素に結合されていてよい有機2価基は、例えばオキシアルキレン単位、例えば一般式(2)
−(O)p[(CH2qO]r− (2)
[式中、
pは、0または1の値、殊に0の値を意味し、
qは、1〜4の値、殊に1または2の値を意味し、かつ
rは、1〜20の値、殊に1〜5値の値を意味する]の単位から成る。一般式(2)のオキシアルキレン単位は、左側でケイ素原子に結合されている。
【0042】
基R1は、ポリマー鎖の各々の位置で、殊に末端のケイ素原子に結合されていてよい。
【0043】
2は、好ましくは炭素原子1〜6個を有する。殊に有利なのは、メチルおよびフェニルである。
【0044】
一般式(1)のポリオルガノシロキサンの構造は、直鎖状、環状またはそれに分枝鎖状であってもよい。分枝鎖状のポリオルガノシロキサンをもたらす3官能性単位および/または4官能性単位の含量は、典型的には非常に僅かであり、すなわち、好ましくは最大でも20モル%、殊に最大でも0.1モル%である。
【0045】
特に有利なのは、その分子が一般式(3)
(ViMe2SiO1/2c(ViMeSiO)d(Me2SiO)e(Me3SiO1/2f (3)、
[式中、Viはビニル基を意味し、かつMeはメチル基を意味し、負でない整数c、d、eおよびfは以下の関係を満たす:c+d≧1、c+f=2、1000<(d+e)<9000、好ましくは3000<(d+e)<7000、および0<(d+1)/(d+e)<1、好ましくは0<(d+1)/(d+e)<0.1]に相当する、ビニル基を含有するポリジメチルシロキサンの使用である。
【0046】
オルガノポリシロキサン組成物(A)は、特別な特性の調整に用いられる添加剤(Z)、殊に加工助剤、例えば構造改善剤(S);分散助剤;疎水化剤、例えばシラザン、シラノール含有オリゴシロキサンおよび破壊試剤を含有してよい。
【0047】
特に有利な添加剤は、親水性充填剤(F)、例えば親水性の熱分解ケイ酸または沈降ケイ酸の混入に用いられる疎水化剤、例えばシラノール含有オリゴシロキサンならびにトリメチルシリル末端オリゴジメチルシロキサンである。
【0048】
構造改善剤(S)として有利なのは、25℃で測定して10〜200mPa.s、殊に20〜150mPa.sの粘度を有するオルガノポリシロキサンである。有利なのは、シラノール含有オリゴシロキサン、トリメチルシリル末端封鎖ジメチル(オリゴ−またはポリ)シロキサンである。好ましくは、オルガノポリシロキサンの基は構造改善剤(S)として、メチル基、フェニル基、ビニル基およびヒドロキシル基から選択される。
【0049】
本発明による方法に従って製造されたオルガノポリシロキサン組成物(A)は、25℃で測定して少なくとも500Pa.sの粘度を有する、より高粘性のシリコーン材料である。本発明による方法は、特に、25℃で測定して100〜1000daNmのブラベンダー塑性を有する、より高粘性のオルガノポリシロキサン組成物(A)、ならびにムーニー測定による100〜200ムーニー単位(ムーニー最終値、ML(1+4)、23℃、DIN53523)の粘度を有する、より高粘性のオルガノポリシロキサン組成物(A)の製造に適している。
【0050】
本発明による方法は、特に、高充填された、高粘性のオルガノポリシロキサン組成物(A)、高粘性のシリコーンペーストおよび高充填されたシリコーンマスターバッチの製造に適している。熱硬化性HTVオルガノポリシロキサン組成物(A1)は、架橋性HTV完成材料の製造に用いられるベース混合物であってもよい。
【0051】
上記式の全ての上記記号は、それらの意味を、それぞれ互いに無関係に有する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明による方法の実施態様を示す図
【実施例】
【0053】
以下の実施例では、それぞれ他に記載がない場合、全ての量および百分率記載は質量に対するものであり、かつ全ての圧力は0.10MPa(絶対)である。全ての粘度を25℃で測定した。
【0054】
以下の組成のシリコーンゴム材料を用いて、本発明による方法を具体的に説明する全ての実施例ならびに比較例を行った。
【0055】
HTV固体ポリマー:
25℃の温度および0.81 1/secの剪断速度で約20000Pa.sの粘度を有し、かつ1H−NMRスペクトルに従って以下の数平均組成:
Vi−Si(Me)2−[OSi(Me)2m−[OSiMeVi]n−OSi(Me)2−Vi
[式中、Meはメチル基を表し、かつViはビニル基を表し、n+mは約600であり、かつm/nは約3000である]を有する、HTV固体ポリマー100質量部
構造改善剤:
29Si−NMRスペクトルに従って以下の数平均組成:
HO−Si(Me)2−[OSi(Me)2m−OSi(Me)2−OH、
[式中、mは約14であり、かつ25℃の温度で測定された粘度が41mm2/sである]を有する、構造改善剤2−16.7質量部
ケイ酸:
Wacker HDK(R)T30の名称で得られる、BETにより測定された300m2/gの比表面積を有する熱分解法により製造されたケイ酸40〜50質量部
実施例1:本発明による方法
本方法を図1を手がかりにして記載する:
第一のステップにおいて、IKA Maschinenbau Janke & Kunkel GmbH & Co.KG(Staufen在)のConterna(R)混練カスケード()を使用した。混練カスケード()は体積10lにつき6個の室を有していた。全体の流量は約200kg/hであった。
【0056】
室1()内への供給部にポリマーを計量供給(120kg/h)し、さらに構造改善剤を計量供給(20kg/h)し、室2内への供給部()に充填剤を計量供給(60kg/h)した。従って全体の流量は200kg/hであった。室1〜4内の回転数は35rpmであった。室の個別運転の性能評価に基づいて、第2および第3の混練室内で材料の脆いコンシステンシーが存在することを確認することができた。第4の混練室内での性能評価は、より一様であり、かつ、より高く、ここでは均一に結合している材料が存在していた。室1〜4を35rpmで駆動させた。室5および6内では40rpmで後混練し、かつ同時に室6から生成物搬出を行った。6個の室は冷却せず、かつ加熱せず、温度は第1の室内で約45℃から第6の室内で約150℃に上昇した。
【0057】
室6から搬出された粗製ゴムを、径違いソケット()を介して連続的に(30kg/h)取り出し、かつ搬送道具として用いられるKrauss Maffei社のAZ−feederを介して連続的に、ランプ()、真空接続部()、ゲージガラス()および搬出スクリュー()を備えたシグマ混練機100l中に計量供給した。混練機()を約200℃に加熱し、かつ約100mbarの負圧に排気した。混練機()が半分充填された後、連続的に搬出スクリュー()を介して搬出した。搬出量は、混練機()の充填度がほぼ一定に保たれるように調節した。
【0058】
ゴムを、
a)−ジクミルペルオキシド(架橋剤1)0.7%を用いて165℃にて15分間または
b)−ジ(2,4−)ジクロロベンゾイル)ペルオキシド(50%)(架橋剤2)1.5%を用いて135℃にて10分間
加熱プレスにおいてプレート間で加硫した。加硫物を、引き続き空気循環庫内で200℃にて4h温度処理し、その後、これらの加硫物の外観、つまり変色の度合いを評価した。
【0059】
3つの異なる生成物1〜3を製造した。連続的な製造の安定から1h後に、それぞれ試料を取り出し、次いで試験を行った。
【0060】
【表1】

【0061】
【表2】

【0062】
B値が低くなればなるほど、それだけ一層、黄化も低くなる。色はL a bと称される3つの座標によって表すことができる。L軸は明度を表し、b軸は黄〜青を表し、かつa軸は赤〜緑を表す。
【0063】
EP1468803Aの方法に類似した本発明によらない比較例
実施例1のようにConterna(R)混練カスケード()から取り出された粗製混合物15kg/hを、中間貯蔵なしに型式LR 100/19Dの"Buss Compounding Systems AG"社の混練機に供給した。
【0064】
該混練機は以下の構造を有する5つの帯域(噴射部)に区分されていた:第一の帯域3D、第2〜第5の帯域それぞれ4D。全ての帯域はバッフルリングにより互いに切り離されていた。真空−液封式ポンプを用いて、帯域2〜5に100mbar(絶対)の高さで真空をかけた。個々の噴射部および混練機の回転軸の調節を、2の噴射部から出発して150rpmの軸回転数の場合に混練機に沿って約180〜200℃の生成物温度が生じるように選択した。混練カスケード()により製造された粗製混合物を、往復振動式混練機の帯域1に約150℃の生成物温度で計量供給した。帯域2〜5内で該混合物を集約的に混練し、かつ、その際、ゴム材料の揮発性成分を除去した。2〜5の噴射部に添加剤(Z)を導入してもよい。搬出スクリューを冷却することでゴムを搬出し、かつ生成物4〜6として試験した。
【0065】
【表3】

【0066】
要約:本発明により製造された生成物1〜3は、EP1468803Aに従って製造された生成物4〜6に比べて、軽度に改善された圧縮永久歪み、いくらか少ない黄化および変わらない機械的特性を示す。
【符号の説明】
【0067】
1 室1、 2 供給部、 3 混練カスケード、 4 混練機、 5 搬出スクリュー、 6 ランプ、 7 真空接続部、 8 ゲージガラス、 9 径違いソケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃で測定して少なくとも500Pa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサン組成物(A)の連続的な製造法であって、その際、オルガノポリシロキサン(O)および充填剤(F)を、第一の方法工程において、それぞれ2個の軸平行な、同旋駆動可能または逆旋駆動可能な混練工具を含み、かつ前記混練工具の軸に対して横方向に通過可能な開口部が互いに結合されている、一列に並んで配置された少なくとも2個の混練室を備えた混練カスケード中で混合し、かつ混練して粗製混合物を得、その際、第一の混練室は供給開口部を有し、かつ最後の混練室は搬出開口部を有し、かつ前記粗製混合物を、第二の方法工程において、搬出スクリューを備えた連続的に駆動されるダブルトラフ混練機中で100℃〜250℃にて混練し、かつ脱ガスする、25℃で測定して少なくとも500Pa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサン組成物(A)の連続的な製造法。
【請求項2】
前記混練カスケードが3個〜10個の混練室から成る、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ダブルトラフ混練機中でのオルガノポリシロキサン組成物(A)の平均滞留時間が30分〜3時間である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記ダブルトラフ混練機の充填度を40〜60%にて一定に保つ、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記オルガノポリシロキサン組成物(A)の充填剤含量が5〜80質量%である、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記充填剤(F)として少なくとも50m2/gのBET比表面積を有するケイ酸を使用する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記オルガノポリシロキサン(O)として、分子が一般式(3)
(ViMe2SiO1/2c(ViMeSiO)d(Me2SiO)e(Me3SiO1/2f (3)、
[式中、Viはビニル基を意味し、かつMeはメチル基を意味し、負でない整数c、d、eおよびfは以下の関係を満たす:c+d≧1、c+f=2、1000<(d+e)<9000、好ましくは3000<(d+e)<7000、および0<(d+1)/(d+e)<1、好ましくは0<(d+1)/(d+e)<0.1]に相当するポリジメチルシロキサンを使用する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記構造改善剤(S)として、25℃で測定して10〜200mPa・sの粘度を有するオルガノポリシロキサンを添加する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−138397(P2010−138397A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280076(P2009−280076)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(390008969)ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト (417)
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
【住所又は居所原語表記】Hanns−Seidel−Platz 4, D−81737 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】