説明

高純度を有する多糖ジアルデヒドを製造する方法

多糖の過ヨウ素酸による酸化によって生成した多糖ジアルデヒドを精製するために沈殿工程と分離工程の組み合わせを用いる多糖ジアルデヒドを製造する方法が開示されている。本方法は、単純であり、迅速であり、そして非常に低いレベルのヨウ素含有化学種を有する多糖ジアルデヒドを提供する。多糖ジアルデヒドは、医療用途のためのヒドロゲル接着剤を調製するために特に適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国仮特許出願第60/925,948号明細書(2007年4月20日出願)に基づく優先権を主張する。この特許出願の開示は、その内容全体をすべての目的のために本明細書に記載したものとして援用される。
【0002】
本発明は医療接着剤の分野に関する。より詳しくは、本発明は、医療用途のためのヒドロゲル接着剤の調製のために有用である高度に純粋な形態を取った多糖ジアルデヒドを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
組織接着剤は、内部外科手術手順における創傷縫合、補充または置換用の縫合剤またはとじ金、角膜への合成アンレーまたはインレーの接着、ドラッグデリバリー装置を含め、そして手術後の癒着を防ぐ癒着防止バリアとして潜在的な多くの医療用途を有する。従来の組織接着剤は広範囲の接着剤用途のために一般に適さない。例えば、シアノアクリレート系接着剤は局所創傷縫合のために用いられてきたが、毒性分解生成物の放出は、内部用途に関してシアノアクリレート系接着剤の使用を限定している。フィブリン系接着剤は緩慢なキュアリングであり、劣った機械的強度を有するとともにウィルス性感染症の危険を招く。更に、フィブリン系接着剤は下にある組織に共有結合しない。
【0004】
改善された接着特性および凝集特性を有するとともに無毒である幾つかのタイプのヒドロゲル組織接着剤が開発されてきた。これらのヒドロゲルは、求核性基を有する成分を第1の成分の求核性基と反応できる求電子性基を有する成分と反応させて、共有結合を経由して架橋網目を形成することにより一般に形成される。多糖ジアルデヒドは、ヒドロゲル接着剤が非常に生体適合性および生分解性であるので、これらのヒドロゲル接着剤を調製するために求電子性基を有する成分として用いられてきた(例えば、特許文献1および2を参照すること)。多糖ジアルデヒドは、典型的には、多糖の過ヨウ素酸による酸化によって形成される(非特許文献1および非特許文献2)。これらのヒドロゲル接着剤の医療用途に関しては、多糖ジアルデヒドの調製における未反応過ヨウ素酸およびヨウ素含有副生物の量は、毒性作用を防止するために低いレベルに減少させなければならない。結果として、多糖ジアルデヒドは、典型的には、ヨウ素含有化学種を除去するために大規模な透析によって精製される(特許文献1;特許文献2;特許文献3;および非特許文献3)。しかし、透析は、多くの日数を要する遅いプロセスであり、従って、多糖ジアルデヒドの大規模生産にはあまり適さない。あるいは、Seitzら(非特許文献4)によって記載された通り、ヨウ素酸は、デキストランの過ヨウ素酸による酸化によって調製されたデキストランジアルデヒドからイオン交換樹脂を用いて分離してもよい。
【0005】
従って、解決されるべき問題は、低いレベルのヨウ素含有化学種を有する生産物を提供し、単純で迅速である多糖ジアルデヒドを製造する方法を提供することである。
【0006】
出願人らは、多糖の過ヨウ素酸による酸化によって形成された多糖ジアルデヒドを精製するために沈殿工程と分離工程の組み合わせを含む多糖ジアルデヒドを製造する方法を発見することにより上述した問題に対処してきた。本方法は、非常に低いレベルのヨウ素含有化学種を有する多糖ジアルデヒドを提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】Kodokianらによる同時係属・共有米国特許出願公開第2006/0078536号明細書
【特許文献2】Goldmannによる米国特許出願公開第2005/0002893号明細書
【特許文献3】BondarevらによるSU第1541218号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Moら,J.Biomater.Sci.Polymer Edn.11:341−351,(2000年)
【非特許文献2】Halsallら,J.Chem.Soc.1947,1427−1432
【非特許文献3】Urazら,Carbohydrate Polymers 34:127−130(1997年)
【非特許文献4】Journal for Praktishe Chemie(Leipzig)311(1):141−146(1969年)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
単純であり、迅速であり、そして非常に低いレベルのヨウ素含有化学種を有する生産物を生成させる多糖ジアルデヒドを製造する方法が本明細書において開示される。
【0010】
従って、一実施形態において、本発明は、約10℃より高い温度で多糖を少なくとも1種の過ヨウ素酸塩と反応させて、多糖ジアルデヒドと、少なくとも1種のヨウ素酸塩の形態を取ったヨウ素酸と、任意に、少なくとも1種の未反応過ヨウ素酸塩の形態を取った過ヨウ素酸とを含む生成物を生成させることを含むプロセスによって前記多糖ジアルデヒドを製造する改善された方法であって、
a)ヨウ素酸の少なくとも一部を沈殿させることができる少なくとも1種のカチオンの源を前記生成物に添加し、それによって前記少なくとも1種のカチオンと前記ヨウ素酸とを含む沈殿物および多糖ジアルデヒドを含む上澄み流体を形成する工程と、
b)沈殿物の少なくとも1部を上澄み流体から分離する工程と、
c)少なくとも1種のヨウ化物塩を上澄み流体に添加し、それによって多糖ジアルデヒドと分子ヨウ素とを含む混合物を形成する工程と、
d)任意に、混合物を濾過して濾液を得る工程と、
e)多糖ジアルデヒドの少なくとも一部を(c)の混合物または(d)の濾液から分離させるのに十分な量で(c)の混合物または(d)の濾液に第1の有機溶媒を添加し、それによって多糖ジアルデヒドを含む第1の相および有機溶媒を含む第2の相を形成する工程と、
f)第1の相の少なくとも一部を第2の相から分離して、分離された多糖ジアルデヒドを提供する工程と、
g)分離された多糖ジアルデヒドを硬化させるのに十分な量の第2の有機溶媒に分離された多糖ジアルデヒドを接触させ、それによって硬化させた多糖ジアルデヒドを形成する工程と、
h)硬化させた多糖ジアルデヒドを微粉砕して粒状多糖ジアルデヒドを形成する工程と、
i)少なくとも一部のヨウ素含有化学種を粒状多糖ジアルデヒドから除去するのに十分な時間にわたり約10℃未満の温度で粒状多糖ジアルデヒドを冷水性液に接触させ、それによって精製多糖ジアルデヒドを形成する工程と、
j)精製多糖ジアルデヒドの少なくとも一部を冷水性液から回収する工程と
を含む方法を提供する。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、約10℃より高い温度で多糖を少なくとも1種の過ヨウ素酸塩と反応させて、多糖ジアルデヒドと、少なくとも1種のヨウ素酸塩の形態を取ったヨウ素酸と、任意に、少なくとも1種の未反応過ヨウ素酸塩の形態を取った過ヨウ素酸とを含む生成物を生成させることを含むプロセスによって前記多糖ジアルデヒドを製造する改善された方法であって、
a)約5℃未満の結晶化温度に前記生成物を冷却し、少なくとも1種の過ヨウ素酸塩を含む沈殿物および多糖ジアルデヒドを含む第1の上澄み流体を形成するのに十分な時間にわたり結晶化温度で前記生成物を維持する工程と、
b)沈殿物の少なくとも一部を第1の上澄み流体から分離する工程と、
c)ヨウ素酸の少なくとも一部を沈殿させることができる少なくとも1種のカチオンの源を第1の上澄み流体に添加し、それによって少なくとも1種のカチオンとヨウ素酸とを含む第2の沈殿物および多糖ジアルデヒドを含む第2の上澄み流体を形成する工程と、
d)第2の沈殿物の少なくとも一部を第2の上澄み流体から分離する工程と、
e)少なくとも1種のヨウ化物塩を第2の上澄み流体に添加し、それによって多糖ジアルデヒドと分子ヨウ素とを含む混合物を形成する工程と、
f)任意に、混合物を濾過して濾液を得る工程と、
g)多糖ジアルデヒドの少なくとも一部を(e)の混合物または(f)の濾液から分離させるのに十分な量で(e)の混合物または(f)の濾液に第1の有機溶媒を添加し、それによって多糖ジアルデヒドを含む第1の相および有機溶媒を含む第2の相を形成する工程と、
h)第1の相の少なくとも一部を第2の相から分離して、分離された多糖ジアルデヒドを提供する工程と、
i)分離された多糖ジアルデヒドを硬化させるのに十分な量の第2の有機溶媒に分離された多糖ジアルデヒドを接触させ、それによって硬化させた多糖ジアルデヒドを形成する工程と、
j)硬化させた多糖ジアルデヒドを微粉砕して粒状多糖ジアルデヒドを形成する工程と、
k)少なくとも一部のヨウ素含有化学種を粒状多糖ジアルデヒドから除去するのに十分な時間にわたり約10℃未満の温度で粒状多糖ジアルデヒドを冷水性液に接触させ、それによって精製多糖ジアルデヒドを形成する工程と、
l)精製多糖ジアルデヒドの少なくとも一部を冷水性液から回収する工程と
を含む方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
多糖の過ヨウ素酸による酸化によって生成した多糖ジアルデヒドを精製するために沈殿工程と分離工程の組み合わせを用いる多糖ジアルデヒドを製造する方法が本明細書において開示されている。本方法は、単純であり、迅速であり、そして非常に低いレベルのヨウ素含有化学種、詳しくは、0.03重量%未満の元素ヨウ素を有する多糖ジアルデヒドを提供する。低いレベルのヨウ素含有化学種は、創傷密封、腸吻合および血管吻合術などの内部外科手術手順における縫合糸またはステープルの補充または交換、組織補修、眼科手順、ドラッグデリバリーおよび接着防止用途を含むが、それらに限定されない医療用途および獣医療用途のためのヒドロゲル接着剤を調製するために多糖ジアルデヒドを特に有用にする。更に、得られた多糖ジアルデヒド生産物は、透析およびその後の凍結乾燥によって精製される多糖ジアルデヒドより高いかさ密度を有する。より高いかさ密度は、多糖ジアルデヒドの輸送および貯蔵を容易にする。
【0013】
以下の定義は本明細書で用いられ、請求の範囲および明細書の解釈のために参照されるべきである。
【0014】
「多糖ジアルデヒド」および「酸化多糖」という用語は、アルデヒド基を分子に導入するために過ヨウ素酸と反応させた多糖を意味するために本明細書において同義的に用いられる。
【0015】
「水分散性マルチアームポリエーテルアミン」という用語は、分岐(「アーム」)の少なくとも3本が水溶性であるか、または水に分散され得る第一級アミン基を末端として、水溶液または水分散液中の第2の反応物と反応できるコロイド懸濁液を形成する分岐ポリエーテルを意味する。
【0016】
「ポリエーテル」という用語は、反復単位[−O−R]−(式中、Rは炭素原子数2〜5のヒドロカルビレン基である)を有するポリマーを意味する。
【0017】
「組織」という用語は、ヒトまたは動物中のあらゆる組織、生組織と死滅組織の両方を意味する。
【0018】
「ヒドロゲル」という用語は、共有架橋または非共有架橋によって結合された高分子の三次元網目からなり、実質的な量の水を吸収して弾性ゲルを形成することができる水膨潤性高分子マトリックスを意味する。
【0019】
医療用途はヒトおよび動物に関する医療用途を意味する。
【0020】
本明細書において開示された方法において、多糖は過ヨウ素酸を用いて酸化されて、多糖ジアルデヒドを生成させる。その後、多糖ジアルデヒドは、以下に記載された通り一連の沈殿工程および分離工程を用いて過剰の過ヨウ素酸およびヨウ素含有副生物から分離される。
【0021】
本発明において有用な多糖には、デキストラン、澱粉、セルロース、ヘミセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、硫酸コンドロイチン、硫酸デキストランおよびヒアルロン酸が挙げられるが、それらに限定されない。これらの多糖は、Sigma Chemical Co.(St Louis,MO)などの供給業者から市販されている。一実施形態において、多糖はデキストランである。典型的には、多糖は様々な分子量の分布を有する不均一混合物であり、平均分子量、例えば当該技術分野で公知の重量平均分子量(Mw)または数平均分子量(Mn)によって特徴付けられる。好適な多糖は、約1,000〜約1,000,000ダルトン、好ましくは約3,000〜約250,000ダルトンの重量平均分子量を有する。一実施形態において、多糖は約8,500〜11,500ダルトンの重量平均分子量を有するデキストランである。別の実施形態において、多糖は約60,000〜90,000ダルトンの重量平均分子量を有するデキストランである。
【0022】
当該技術分野で公知の好適ないずれかの過ヨウ素酸塩、例えば、過ヨウ素酸ナトリウムまたは過ヨウ素酸カリウムを用いて水溶液中で過ヨウ素酸と反応することにより多糖は酸化されてアルデヒド基を導入する(例えば、Moら,J.Biomater.Sci.Polymer Edn.11:341−351,(2000年);Halsallら,J.Chem.Soc.1947,1427−1432;Kodokianら,前掲;Goldmann,前掲)。多糖は様々な量の過ヨウ素酸と反応させて、様々な酸化度、従って、様々なジアルデヒド含有率を有する多糖を得てもよい。詳しくは、多糖は約10℃より高い温度で少なくとも1種の過ヨウ素酸塩と反応して、多糖ジアルデヒドと、少なくとも1種のヨウ素酸塩の形態を取ったヨウ素酸とを含む生成物を生成させる。更に、過剰の過ヨウ素酸が反応において用いられる場合、生産物は少なくとも1種の未反応過ヨウ素酸塩の形態を取った過ヨウ素酸も含有する。酸化反応のために用いられる温度は、典型的には約11℃〜約70℃、好ましくは約20℃〜約60℃である。酸化反応が溶液の温度を上昇させる発熱プロセスであることは注意すべきである。結果として、溶液は所望の温度を達成するために冷却する必要がある場合がある。反応のために必要とされる時間は温度および多糖の濃度ならびに用いられる過ヨウ素酸を含む多くの要素に応じて異なる。典型的な反応時間は約30分〜約6時間の範囲である。一実施形態において、デキストラン水溶液は、約20℃〜約30℃の温度で約3.5〜約5時間にわたり過ヨウ素酸ナトリウムの水溶液と反応させる。
【0023】
一実施形態において、酸化反応の生成物は、約5℃未満、好ましくは約2℃〜約−8℃の結晶化温度に冷却され、少なくとも1種の過ヨウ素酸塩を含む沈殿物および多糖ジアルデヒドを含む第1の上澄み流体を形成するのに十分な時間にわたり結晶化温度で維持される。必要とされる時間は用いられる特定の条件(例えば、生成物の体積および温度)に応じて異なるが、典型的には約5分〜約60分である。
【0024】
好ましくは、時間は生成物全体が凍結するほど十分長くない。この冷却は2つの別個の工程において行ってもよく、ここで、反応生成物は1つの結晶化温度、詳しくは約5℃未満に典型的には約5分〜約40分の時間にわたり急速に冷却されて沈殿物を形成する。その後、反応混合物は、過ヨウ素酸塩を結晶化させるのに十分な時間、典型的には約20分〜約55分、好ましくは約30分にわたり第1の結晶化温度とは異なる第2の結晶化温度、詳しくは約5℃未満で維持される。冷却工程は任意であるが、酸化反応において過剰の過ヨウ素酸を用いる時に特に有益である。その後、沈殿物の少なくとも一部を、当該技術分野で公知の方法を用いて、例えば、第1の上澄み流体を濾過するか、デカントするか、遠心分離するか、またはサイホンして第1の上澄み流体から分離する。理想的には、沈殿物の実質的にすべてを第1の上澄み流体から分離する。
【0025】
次に、ヨウ素酸の少なくとも一部を沈殿させることができる少なくとも1種のカチオンの源を第1の上澄み流体に添加することによりヨウ素酸を不溶性塩として沈殿させ、それによってカチオンとヨウ素酸とを含む第2の沈殿物および多糖ジアルデヒドを含む第2の上澄み流体を形成する。理想的には、カチオンはヨウ素酸の実質的にすべてを沈殿させることができる。カチオン源は、水溶液中で低い溶解度を有するヨウ素酸により塩を形成するカチオンを含む少なくとも1種の可溶性塩である。好適なカチオンには、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Mn2+、Cu2+、Zn2+、Pb2+、Ag、Cd2+およびHg2+が挙げられるが、それらに限定されない。多糖ジアルデヒドを医療用途のために用いる場合、毒性が低いカチオン、例えば、Ca2+、Mn2+、Zn2+またはCu2+が好ましい。好適な可溶性塩には、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、臭化カルシウム、塩化ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、塩化バリウム、酢酸バリウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、塩化第二銅、酢酸第二銅、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、硝酸銀、塩化カドミウム、酢酸カドミウム、塩化鉛、酢酸鉛、塩化水銀および酢酸水銀が挙げられるが、それらに限定されない。医療用途に用いられる多糖ジアルデヒドの調製のために好ましい可溶性塩には、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、臭化カルシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、および塩化第二銅、酢酸第二銅が挙げられる。一実施形態において、塩は塩化カルシウムである。この工程は、典型的には、少なくとも約30分にわたり室温(例えば、20℃〜25℃)で行われる。その後、第2の沈殿物の少なくとも一部を、当該技術分野で公知の方法を用いて、例えば、第2の上澄み流体を濾過するか、デカントするか、遠心分離するか、またはサイホンして第2の上澄み流体から分離する。理想的には、第2の沈殿物の実質的にすべてを第2の上澄み流体から分離する。
【0026】
その後、少なくとも1種のヨウ化物塩を第2の上澄み流体に添加し、それによって多糖ジアルデヒドと分子ヨウ素とを含む混合物を形成する。ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化カルシウムまたはヨウ化アンモニウムに限定されないが、それらを含むいかなる好適なヨウ化物塩も用いてよい。一実施形態において、ヨウ化物塩はヨウ化カリウムである。この工程は、典型的には、少なくとも約30分にわたり室温(例えば、20℃〜25℃)で行われる。混合物は任意に濾過されてヨウ素を除去し、そして多糖ジアルデヒドを含む濾液を得る。あるいは、ヨウ素を放置して昇華させることによりヨウ素を除去してもよい。
【0027】
次に、第1の有機溶媒は、多糖ジアルデヒドの少なくとも一部を混合物または濾液から分離させるのに十分な量で混合物または濾液のいずれかに添加され、それによって多糖を含む第1の相および有機溶媒を含む第2の相を形成する。理想的には、多糖ジアルデヒドの実質的にすべてを混合物または濾液から分離する。好適な第1の有機溶媒には、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン(THF)、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールが挙げられるが、それらに限定されない。一実施形態において、第1の有機溶媒はアセトンである。第1の有機溶媒の量は条件に応じて異なり、最適な量は、当業者による通常の実験を用いて容易に決定することが可能である。典型的には、用いられる第1の有機溶媒の量は反応混合物または濾液の質量の約3倍である。この工程は、典型的には、少なくとも約30分にわたり室温(例えば、20℃〜25℃)で行われる。第1の相の少なくとも一部は、当該技術分野で公知の方法(例えば、濾過、デカント、遠心分離またはサイホン)を用いて第2の相から分離して、分離された多糖ジアルデヒドを提供する。理想的には、第1の相の実質的にすべてを第2の相から分離する。
【0028】
その後、分離された多糖ジアルデヒドは、分離された多糖ジアルデヒドを硬化させるのに十分な量の第2の有機溶媒に接触させ、それによって硬化させた多糖ジアルデヒドを形成する。好適な第2の有機溶媒には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールおよびアセトニトリルが挙げられるが、それらに限定されない。一実施形態において、第2の有機溶媒はメタノールである。第2の有機溶媒の量は条件に応じて異なり、最適な量は、当業者による通常の実験を用いて容易に決定することが可能である。典型的には、用いられる第2の有機溶媒の量は、上述した第1の有機溶媒の体積の約25%〜約100%である。
【0029】
硬化させた多糖ジアルデヒドは微粉砕されて、粒状多糖ジアルデヒドを形成する。微粉砕は粒状多糖を粉末に変え、当該技術分野で公知の方法、例えば、摩砕、粉砕または乳鉢と乳棒による破砕を用いて行うことが可能である。任意に、粒状多糖ジアルデヒドは、例えば、熱、真空、熱と真空の組み合わせ、または粒状多糖ジアルデヒド上に乾燥空気または窒素などの乾燥不活性ガスのストリームを流すことを用いる好適ないずれかの方法を用いて乾燥させてもよい。
【0030】
その後、粒状多糖ジアルデヒドは、ヨウ素含有化学種の少なくとも一部を粒状多糖ジアルデヒドから除去するのに十分な時間にわたり約10℃未満、好ましくは約−15℃〜約5℃の温度で冷水性液に接触させ、それによって精製多糖ジアルデヒドを形成する。理想的には、ヨウ素含有化学種の実質的にすべてを粒状多糖から除去する。冷水性液は純水であってもよく、または水と、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールなどの水溶性有機溶媒の混合物を含んでもよい。水と水混和性有機溶媒の混合物を用いる場合、混合物は、水混和性有機溶媒約50体積%以下、好ましくは約5体積%〜約50体積%を含有する。一実施形態において、冷水性液は約0℃〜約5℃の温度の純水である。別の実施形態において、冷水性液は約−15℃〜約5℃の温度で水と30〜40体積%のメタノールを含む混合物である。接触の時間は、冷水性液への溶解に起因する多糖ジアルデヒドの損失を最少にしつつ多糖ジアルデヒドの純度を最高にするために最適化される必要がある。冷水性液中の多糖ジアルデヒドの溶解度および溶解の速度は、多糖ジアルデヒドの分子量および酸化度などの幾つかの要素に応じて異なる。典型的には、接触時間は、約30秒〜約4時間、好ましくは約10分〜約60分である。その後、精製多糖ジアルデヒドの少なくとも一部は、濾過、デカント、遠心分離またはサイホンなどを用いて冷水性液から回収される。理想的には、精製多糖ジアルデヒドの実質的にすべてを冷水性液から回収する。任意に、冷水性液との接触は1回以上繰り返してもよい。
【0031】
任意に、精製多糖ジアルデヒドは、例えば、熱、真空、熱と真空の組み合わせ、または精製多糖ジアルデヒド上に乾燥空気または窒素などの乾燥不活性ガスのストリームを流すことを用いる好適ないずれかの方法を用いて乾燥させてもよい。一実施形態において、精製多糖ジアルデヒドは、20℃で約16〜24時間にわたり真空炉内で乾燥させる。
【0032】
別の実施形態において、酸化反応の生成物は、約5℃未満の温度に冷却されない。すなわち、任意の第1の工程は省略され、ヨウ素酸の少なくとも一部を沈殿させることができる少なくとも1種のカチオンの源を添加することを含む工程から本方法は上述したように続く。理想的には、カチオンはヨウ素酸の実質的にすべてを沈殿させることができる。詳しくは、少なくとも1種のカチオンの源は、酸化反応の生成物に添加され、それによってカチオンとヨウ素酸とを含む沈殿物および上澄み流体を形成する。その後、沈殿物の少なくとも一部は、上述した方法を用いて上澄み流体から分離される。理想的には、沈殿物の実質的にすべては、上澄み流体から分離される。次に、少なくとも1種のヨウ化物塩を上澄み流体に添加し、それによって多糖ジアルデヒドと分子ヨウ素とを含む混合物を形成する。混合物は、任意に濾過されて濾液を得る。第1の有機溶媒は、多糖ジアルデヒドの少なくとも一部を混合物または濾液から分離させるのに十分な量で混合物または濾液に添加され、それによって多糖ジアルデヒドを含む第1の相および有機溶媒を含む第2の相を形成する。理想的には、多糖ジアルデヒドの実質的にすべてを混合物または濾液から分離する。第1の相の少なくとも一部は、上述した方法を用いて第2の相から分離されて、分離された多糖ジアルデヒドを提供する。理想的には、第1の相の実質的にすべてを第2の相から分離する。その後、分離された多糖ジアルデヒドは、分離された多糖ジアルデヒドを硬化させるのに十分な量の第2の有機溶媒に接触させ、それによって硬化させた分離された多糖ジアルデヒドを形成する。硬化させた多糖ジアルデヒドは微粉砕されて、粒状多糖ジアルデヒドを形成する。任意に、粒状多糖ジアルデヒドは上述した通り乾燥させてもよい。その後、粒状多糖ジアルデヒドは、少なくとも一部のヨウ素含有化学種を粒状多糖ジアルデヒドから除去するのに十分な時間にわたり10℃未満の温度で冷水性液に接触させ、それによって精製多糖ジアルデヒドを形成する。理想的には、ヨウ素含有化学種の実質的にすべてを粒状多糖ジアルデヒドから除去する。冷水性液との接触は一回以上繰り返してもよい。その後、精製多糖ジアルデヒドの少なくとも一部は上述した通り回収される。理想的には、精製多糖ジアルデヒドの実質的にすべてを回収する。任意に、精製多糖ジアルデヒドを上述した通り乾燥させてもよい。
【0033】
精製多糖ジアルデヒド中に残るヨウ素含有化学種の量は、当該技術分野で公知の方法を用いて測定することが可能である。例えば、精製多糖ジアルデヒド中に残るあらゆる形態を取った元素ヨウ素の合計量は、X線蛍光分光法を用いて測定することが可能である。典型的には、本明細書において開示された方法によって産出された多糖ジアルデヒド中に残る元素ヨウ素の量は約0.03重量%未満である。
【0034】
精製多糖ジアルデヒドを回収し、任意に乾燥させた後、水性媒体中の精製多糖ジアルデヒドを3個以上のアミン基を有するポリアミンと反応させることにより医療用途のためのヒドロゲルを調製するために精製多糖ジアルデヒドを用いてもよい。例えば、精製多糖ジアルデヒドを水分散性マルチアームポリエーテルアミンと反応させて、Kodokianら(参照により本明細書において援用される同時係属・共有米国特許出願公開第2006/0078536号明細書)によって記載されたヒドロゲル組織を形成させてもよい。得られたヒドロゲルは、創傷密封、腸吻合および血管吻合術などの内部外科手術手順における縫合糸またはステープルの補充または交換、組織補修、眼科手順、ドラッグデリバリーおよび接着防止用途を含むが、それらに限定されない医療用途および獣医療用途のために用いてもよい。
【0035】
本発明を以下の実施例において更に定義する。これらの実施例は本発明の好ましい実施形態を示す一方、あくまでも例示として与えられていることが理解されるべきである。上記の議論およびこれらの実施例から、当業者は本発明の必須の特徴を確認することが可能であり、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに、本発明の種々の変更および修正を行って、種々の用途および条件に本発明を適応させることが可能である。
【0036】
用いられる略号の意味は次の通りである。「min」は分を意味する。「h」は時間を意味する。「sec」は秒を意味する。「d」は日数を意味する。「mL」はミリリットルを意味する。「L」はリットルを意味する。「μL」はマイクロリットルを意味する。「cm」はセンチメートルを意味する。「mm」はミリメートルを意味する。「μm」はマイクロメートルを意味する。「cm」は立方センチメートルを意味する。「mol」はモルを意味する。「mmol」はミリモルを意味する。「g」はグラムを意味する。「kg」はキログラムを意味する。「mg」はミリグラムを意味する。「meq」はミリ当量を意味する。「M」は重量平均分子量を意味する。「wt%」は重量%を意味する。「NMR」は核磁気共鳴分光分析法を意味する。
【実施例】
【0037】
実施例1
8,500〜11,500の平均分子量を有するデキストランジアルデヒドの調製
この実施例の目的は、8,500〜11,500ダルトンの平均分子量および0.03重量%未満の合計ヨウ素含有率を有するデキストランジアルデヒドを調製することであった。
【0038】
メカニカルスターラーおよび添加漏斗を備えた1Lのガラス反応器内に、37.5gの過ヨウ素酸ナトリウムおよび350mLの脱イオン水を添加した。すべての固体が溶解するまで反応器の内容物を攪拌した。反応器を20℃に冷却した。添加漏斗を用いて、300mLの脱イオン水に溶解させた37.5gのデキストラン(平均分子量8,500〜11,500、Sigma Chemical Co(St Louis,MO)、カタログ番号D9260)を含有する溶液を過ヨウ素酸溶液に添加した。添加を完了した後、反応器の内容物を20℃で5時間にわたり攪拌した。反応期間の終わりに、反応器の内容物をビーカーに移送し、過ヨウ素酸塩を含む沈殿物が生成するまでビーカーを氷/アセトン浴内で冷却した。その後、混合物を反応器に移送して戻し、2℃で30分にわたり攪拌した。その後、反応器の内容物を濾過し、17.13gの固体を産出した。濾液をビーカーに移送し、18.75gのCaCl・2HOを濾液に添加した。混合物を室温で30分にわたり攪拌し、ヨウ素酸カルシウムを含む沈殿物を形成させた。沈殿物を濾過し、21.45gの固体を産出した。濾液をビーカーに移送し、15.0gのヨウ化カリウムを濾液に添加した。混合物を室温で30分にわたり攪拌した。混合物を濾過したが、検出可能ないかなる量の固体も集められなかった。濾液をプラスチックの水差しに移送し、2Lのアセトンをゆっくり添加して、デキストランジアルデヒドを濾液から分離した。水差し内の内容物を30分にわたり攪拌し、その時間後に、アセトンを静かに注ぎ出して、沈殿した固体を集めた。固体をメタノール(1L)で洗浄し、ブレンダーに移送して、メタノールの存在下で高速で細断した。固体を濾過し、真空下で乾燥させた。次に、10gの固体を200mLの水および200cmの氷とブレンダー内で混合した。ブレンダーを1分にわたり攪拌し、その後、混合物を濾過して約8.51gの固体を集めた。生産物のジアルデヒド含有率は陽子NMRを用いて約51%であると測定した。
【0039】
X線蛍光分光法を用いて固体生産物を分析し、0.215重量%の塩素、0.017重量%のヨウ素、0.198重量%のカルシウム、0.0272重量%のナトリウムおよび0.237重量%のカリウムを含有することが見出され、総合的な純度は99.02重量%であることが見出された。
【0040】
実施例2
60,000〜90,000の平均分子量を有するデキストランジアルデヒドの調製
この実施例の目的は、60,000〜90,000ダルトンの平均分子量および0.03重量%未満の合計ヨウ素含有率を有するデキストランジアルデヒドを調製することであった。
【0041】
デキストラン(Sigma Chemical Co(St Louis,MO)、カタログ番号D3759)が60,000〜90,000ダルトンの平均分子量を有していたことと、用いられた過ヨウ素酸ナトリウムの量が18.75gであったこととを除き、実施例1に記載された手順を用いた。
【0042】
生産物のジアルデヒド含有率は陽子NMRを用いて28%であると測定した。X線蛍光分光法を用いて固体生産物を分析し、0.225重量%の塩素、0.019重量%のヨウ素、0.0475重量%のカルシウムおよび0.185重量%のカリウムを含有することが見出され、総合的な純度は99.98重量%であることが見出された。
【0043】
実施例3
任意の初期冷却工程なしで60,000〜90,000の平均分子量および約27%の酸化度を有するデキストランジアルデヒドの調製
この実施例の目的は、60,000〜90,000ダルトンの平均分子量、約27%の酸化度および0.03重量%未満の合計ヨウ素含有率を有するデキストランジアルデヒドを調製することであった。精製プロセスは、少なくとも1種の過ヨウ素酸塩を含む沈殿物を形成するために約5℃未満の結晶化温度に任意に初期冷却することを含まなかった。
【0044】
メカニカルスターラー、添加漏斗、内部熱電対および窒素パージを備えた20Lの反応器に、1.00kgのデキストランおよび9.00Lの水を投入した。混合物を周囲温度で攪拌してデキストランを溶解させ、溶液を10〜15℃に冷却した。反応器の内容物の温度を25℃未満に維持しつつ9.00Lの水中の過ヨウ素酸ナトリウム500gの溶液を約1時間にわたり反応器に添加した。過ヨウ素酸ナトリウム溶液を添加した後、混合物を20〜25℃で4時間にわたり攪拌した。反応期間の終わりに、350gのCaCl・2HOを反応混合物に添加し、混合物を周囲温度で1時間にわたり攪拌し、ヨウ素酸カルシウムを含む沈殿物を形成させた。混合物を濾過して沈殿物を除去し、200gのヨウ化カリウムを濾液に添加した。ヨウ化カリウム含有濾液を周囲温度で30分にわたり攪拌し、その後、濾過し、第2の濾液を得た。メカニカルスターラーを備えた5ガロンのプラスチックバケツに9.0Lのアセトンを投入した。約3.0Lの第2の濾液を攪拌しつつ約15分にわたりアセトンに添加し、柔らかいゴム状の沈殿物を生成させた。上澄み液をデカントし、ゴム状沈殿物を集めた。第2の濾液の残りを同様に処理し、それをアセトンに分割して添加し、攪拌し、デカントして沈殿物を集めた。アセトンからの組み合わせ沈殿物を断片に分割し、大きなステンレススチールブレンダー内でメタノールで分割して洗浄した。沈殿したデキストランジアルデヒドを濾過によって集め、窒素シールしつつ真空下で乾燥させ、ハンマーミルで微細粉末に粉砕した。20Lの反応器に18.0Lの脱イオン水を投入し、約0℃に冷却した。ハンマーミルで粉砕したデキストランジアルデヒドを添加し、1時間にわたり激しく攪拌した。冷水中のデキストランジアルデヒドのスラリーを分割して排出し、濾過して固体を集めた。それを直ちにメタノールで洗浄して水を生産物から除去した。固体を窒素パージしつつ真空下で乾燥させて、789gの白色粒状デキストランジアルデヒドを得た。生産物のジアルデヒド含有率は陽子NMRを用いて27%であると測定した。
【0045】
X線蛍光分光法を用いて固体生産物を分析し、0.271重量%のナトリウム、0.0922重量%の塩素、0.0723重量%のカリウム、0.0327重量%のカルシウムおよび0.0068重量%のヨウ素を含有することが見出され、総合的な純度は99.2重量%であることが見出された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約10℃より高い温度で多糖を少なくとも1つの過ヨウ素酸塩と反応させて、多糖ジアルデヒドと、少なくとも1つのヨウ素酸塩の形態を取ったヨーデートと、場合により、少なくとも1つの未反応過ヨウ素酸塩の形態を取ったペルヨーデートとを含む生成物を生成させることを含むプロセスによって上記多糖ジアルデヒドを製造する方法において、
a)ヨーデートの少なくとも一部を沈殿させることができる少なくとも1つのカチオン源を上記生成物に添加し、それによって上記少なくとも1つのカチオンとヨーデートとを含む沈殿物、および多糖ジアルデヒドを含む上清流体を形成させる工程と、
b)沈殿物の少なくとも1部を上清流体から分離する工程と、
c)少なくとも1つのヨウ化物塩を上清流体に添加し、それによって多糖ジアルデヒドと分子状ヨウ素とを含む混合物を形成させる工程と、
d)場合により、混合物を濾過して濾液を得る工程と、
e)多糖ジアルデヒドの少なくとも一部を(c)の混合物または(d)の濾液から分離させるのに十分な量で(c)の混合物または(d)の濾液に第1の有機溶媒を添加し、それによって多糖ジアルデヒドを含む第1の相および有機溶媒を含む第2の相を形成させる工程と、
f)第1の相の少なくとも一部を第2の相から分離して、分離多糖ジアルデヒドを与える工程と、
g)分離多糖ジアルデヒドを硬化させるのに十分な量の第2の有機溶媒に分離多糖ジアルデヒドを接触させ、それによって硬化多糖ジアルデヒドを形成させる工程と、
h)硬化多糖ジアルデヒドを微粉砕して微粒子状多糖ジアルデヒドを形成する工程と、
i)少なくとも一部のヨウ素含有化学種を微粒子状多糖ジアルデヒドから除去するのに十分な時間約10℃未満の温度で微粒子状多糖ジアルデヒドを冷水性液に接触させ、それによって精製多糖ジアルデヒドを形成させる工程と、
j)精製多糖ジアルデヒドの少なくとも一部を冷水性液から回収する工程と
を含む方法。
【請求項2】
工程(j)後に精製多糖ジアルデヒドを乾燥させることを更に含む請求項1に記載の方法
【請求項3】
多糖が、デキストラン、澱粉、セルロース、ヘミセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸およびヒアルロン酸からなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
多糖がデキストランである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)の少なくとも1つのカチオン源が、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Mn2+、Cu2+、Zn2+、Pb2+、Ag、Cd2+およびHg2+からなる群から選択されるカチオンを含む少なくとも1つの可溶性塩である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの可溶性塩が、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、臭化カルシウム、塩化ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、塩化バリウム、酢酸バリウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、塩化第二銅、酢酸第二銅、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、硝酸銀、塩化カドミウム、酢酸カドミウム、塩化鉛、酢酸鉛、塩化水銀および酢酸水銀からなる群から選択される請求項5に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの可溶性塩が塩化カルシウムである請求項5に記載の方法。
【請求項8】
(b)の分離が、濾過、デカント、遠心分離またはサイホンによる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
(c)の少なくとも1つのヨウ化物塩が、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化カルシウムおよびヨウ化アンモニウムからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項10】
(c)の少なくとも1つのヨウ化物塩がヨウ化カリウムである請求項1に記載の方法。
【請求項11】
(e)の第1の有機溶媒が、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
(e)の第1の有機溶媒がアセトンである請求項1に記載の方法。
【請求項13】
(f)の分離が、濾過、デカント、遠心分離またはサイホンによる請求項1に記載の方法。
【請求項14】
(g)の第2の有機溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールおよびアセトニトリルからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項15】
(g)の第2の有機溶媒がメタノールである請求項1に記載の方法。
【請求項16】
(h)の微粉砕が、摩砕、粉砕または破砕による請求項1に記載の方法。
【請求項17】
工程(i)を1回またはそれ以上繰り返す請求項1に記載の方法。
【請求項18】
(j)の回収が、濾過、デカント、遠心分離またはサイホンによる請求項1に記載の方法。
【請求項19】
(i)の冷水性液が約0℃〜約5℃の温度の純水である請求項1に記載の方法。
【請求項20】
(i)の冷水性液が、約−15℃〜約5℃の温度での、水と約5体積%〜約50体積%のメタノールとの混合物である請求項1に記載の方法。
【請求項21】
約10℃より高い温度で多糖を少なくとも1つの過ヨウ素酸塩と反応させて、多糖ジアルデヒドと、少なくとも1つのヨウ素酸塩の形態を取ったヨーデートと、場合により、少なくとも1つの未反応過ヨウ素酸塩の形態を取ったペルヨーデートとを含む生成物を生成させることを含むプロセスによって上記多糖ジアルデヒドを製造する方法において、
a)上記生成物を約5℃未満の結晶化温度に冷却し、少なくとも1つの過ヨウ素酸塩を含む沈殿物、および多糖ジアルデヒドを含む第1の上清流体を形成させるのに十分な時間その結晶化温度で上記生成物を維持する工程と、
b)沈殿物の少なくとも一部を第1の上清流体から分離する工程と、
c)ヨウ素酸の少なくとも一部を沈殿させることができる少なくとも1つのカチオン源を第1の上清流体に添加し、それによって上記少なくとも1つのカチオンとヨーデートとを含む第2の沈殿物、および多糖ジアルデヒドを含む第2の上清流体を形成させる工程と、
d)第2の沈殿物の少なくとも一部を第2の上清流体から分離する工程と、
e)少なくとも1つのヨウ化物塩を第2の上清流体に添加し、それによって多糖ジアルデヒドと分子状ヨウ素とを含む混合物を形成させる工程と、
f)場合により、混合物を濾過して濾液を得る工程と、
g)多糖ジアルデヒドの少なくとも一部を(e)の混合物または(f)の濾液から分離させるのに十分な量で(e)の混合物または(f)の濾液に第1の有機溶媒を添加し、それによって多糖ジアルデヒドを含む第1の相および有機溶媒を含む第2の相を形成させる工程と、
h)第1の相の少なくとも一部を第2の相から分離して、分離多糖ジアルデヒドを与える工程と、
i)分離多糖ジアルデヒドを硬化させるのに十分な量の第2の有機溶媒に分離多糖ジアルデヒドを接触させ、それによって硬化多糖ジアルデヒドを形成させる工程と、
j)硬化多糖ジアルデヒドを微粉砕して微粒子状多糖ジアルデヒドを形成する工程と、
k)少なくとも一部のヨウ素含有化学種を微粒子状多糖ジアルデヒドから除去するのに十分な時間約10℃未満の温度で微粒子状多糖ジアルデヒドを冷水性液に接触させ、それによって精製多糖ジアルデヒドを形成させる工程と、
l)精製多糖ジアルデヒドの少なくとも一部を冷水性液から回収する工程と
を含む方法。
【請求項22】
(a)の冷却が約2℃〜約−8℃の間の温度である請求項21に記載の方法。
【請求項23】
工程(i)後に精製多糖ジアルデヒドを乾燥させることを更に含む請求項21に記載の方法。
【請求項24】
多糖が、デキストラン、澱粉、セルロース、ヘミセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸およびヒアルロン酸からなる群から選択される請求項21に記載の方法。
【請求項25】
多糖がデキストランである請求項21に記載の方法。
【請求項26】
(b)の分離が、濾過、デカント、遠心分離またはサイホンによる請求項21に記載の方法。
【請求項27】
工程(c)の少なくとも1つのカチオン源が、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Mn2+、Cu2+、Zn2+、Pb2+、Ag、Cd2+およびHg2+からなる群から選択されるカチオンを含む少なくとも1つの可溶性塩である請求項21に記載の方法。
【請求項28】
少なくとも1つの可溶性塩が、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、臭化カルシウム、塩化ストロンチウム、酢酸ストロンチウム、塩化バリウム、酢酸バリウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウム、塩化第二銅、酢酸第二銅、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、硝酸銀、塩化カドミウム、酢酸カドミウム、塩化鉛、酢酸鉛、塩化水銀および酢酸水銀からなる群から選択される請求項27に記載の方法。
【請求項29】
少なくとも1つの可溶性塩が塩化カルシウムである請求項27に記載の方法。
【請求項30】
(d)の分離が、濾過、デカント、遠心分離またはサイホンによる請求項21に記載の方法。
【請求項31】
(e)の少なくとも1つのヨウ化物塩が、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化カルシウムおよびヨウ化アンモニウムからなる群から選択される請求項21に記載の方法。
【請求項32】
(e)の少なくとも1つのヨウ化物塩がヨウ化カリウムである請求項21に記載の方法。
【請求項33】
(g)の第1の有機溶媒が、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノールおよびイソプロパノールからなる群から選択される請求項21に記載の方法。
【請求項34】
(g)の第1の有機溶媒がアセトンである請求項21に記載の方法。
【請求項35】
(h)の分離が、濾過、デカント、遠心分離またはサイホンによる請求項21に記載の方法。
【請求項36】
(i)の第2の有機溶媒が、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールおよびアセトニトリルからなる群から選択される請求項21に記載の方法。
【請求項37】
(i)の第2の有機溶媒がメタノールである請求項21に記載の方法。
【請求項38】
(j)の微粉砕が、摩砕、粉砕または破砕による請求項21に記載の方法。
【請求項39】
工程(k)を1回またはそれ以上繰り返す請求項21に記載の方法。
【請求項40】
(l)の回収が、濾過、デカント、遠心分離またはサイホンによる請求項21に記載の方法。
【請求項41】
(k)の冷水性液が約0℃〜約5℃の温度の純水である請求項21に記載の方法。
【請求項42】
(k)の冷水性液が、約−15℃〜約5℃の温度での、水と約5体積%〜約50体積%のメタノールとの混合物である請求項21に記載の方法。
【請求項43】
(a)の冷却後、生成物を(a)の結晶化温度とは異なる約5℃未満の第2の結晶化温度で維持して、沈殿物を結晶化させる請求項21に記載の方法。
【請求項44】
約20℃の温度でデキストランを過ヨウ素酸ナトリウムと反応させて、デキストランジアルデヒドと、少なくとも1つのヨウ素酸塩の形態を取ったヨーデートと、場合により、少なくとも1つの未反応過ヨウ素酸塩の形態を取ったペルヨーデートとを含む生成物を生成させることを含むプロセスによって上記デキストランジアルデヒドを製造する方法において、
a)上記生成物を約2℃〜−8℃の間の結晶化温度に冷却し、少なくとも1つの過ヨウ素酸塩を含む沈殿物、およびデキストランジアルデヒドを含む第1の上清流体を形成するのに十分な時間その結晶化温度で上記生成物を維持する工程と、
b)沈殿物の少なくとも一部を第1の上清流体から分離する工程と、
c)塩化カルシウムを第1の上清流体に添加し、それによってカルシウムとヨーデートとを含む第2の沈殿物、およびデキストランジアルデヒドを含む第2の上清流体を形成させる工程と、
d)第2の沈殿物の少なくとも一部を第2の上清流体から分離する工程と、
e)ヨウ化カリウムを第2の上清流体に添加し、それによってデキストランジアルデヒドと分子ヨウ素とを含む混合物を形成させる工程と、
f)場合により、混合物を濾過して濾液を得る工程と、
g)デキストランジアルデヒドの少なくとも一部を(e)の混合物または(f)の濾液から分離させるのに十分な量で(e)の混合物または(f)の濾液にアセトンを添加し、それによってデキストランジアルデヒドを含む第1の相およびアセトンを含む第2の相を形成させる工程と、
h)第1の相の少なくとも一部を第2の相から分離して、分離デキストランジアルデヒドを与える工程と、
i)分離デキストランジアルデヒドを硬化させるのに十分な量のメタノールに分離デキストランジアルデヒドを接触させ、それによって硬化デキストランジアルデヒドを形成させる工程と、
j)硬化多糖ジアルデヒドを摩砕して微粒子状多糖ジアルデヒドを形成する工程と、
k)少なくとも一部のヨウ素含有化学種を微粒子状デキストランジアルデヒドから除去するのに十分な時間約0℃〜約5℃の温度で微粒子状デキストランジアルデヒドを冷水に接触させ、それによって精製デキストランジアルデヒドを形成させる工程と、
l)精製デキストランジアルデヒドの少なくとも一部を冷水から回収する工程と、
m)精製デキストランアルデヒドを乾燥させる工程と
を含む方法。

【公表番号】特表2010−525140(P2010−525140A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506221(P2010−506221)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/005013
【国際公開番号】WO2008/133847
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】