説明

高純度シリコンの製造方法

【課題】 低品位の金属シリコンから冶金精錬法より太陽電池用高純度化シリコンを製造するに当たり、設備費用、エネルギーコストの低減及び原料シリコンの歩留り向上を図ると共に、品質が安定であり、かつ生産性の高い高純度シリコンの製造法を提供することを目的とする。
【解決手段】 金属シリコンを溶解する溶融炉において、溶融状態の金属溶融シリコンに不活性ガス、酸性性ガスや還元性ガスを処理ガスして吹き込むにあたり、微細な空孔構造を保有したセラミク分散板を通して微細な気泡として吹き込むことにより、不純物の気化・分離を促進させて金属シリコンの高純度化を効率的に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属シリコン原料から高純度シリコンを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽電池に用いられる金属シリコンの純度は、通常6N以上、望ましくは7N程度の高純度が要求されている。この高純度金属シリコンの製造に使用される原料用シリコンの純度は通常97〜99.9%程度である。このため、太陽電池に使用するには、原料用シリコンの不純物を除去して要求される純度まで精錬による高純度化が必要である。
【0003】
従来の、冶金的精錬方法による原料シリコンの高純度化の方法は、▲1▼真空溶融法によるP、Fe、Al、等の不純物の気化分離、▲2▼酸素・水蒸気添加溶融法によるB、C等の分離、▲3▼一法凝固法によるAl、Ti、Feの分離などによる不純物除去の高純度化法が提唱されている。またこれらの方法の組み合わせた高純度化法も提案されており、純度が6N以上の金属シリコンの製造が試みられている。
【0004】
【特許文献】 特開昭63−218506 特開平11−199217 特開平11−209119 特開2000−247623 特開2002− 29727
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、金属シリコンの高純度化に当たり、従来のシリコンの精製方法では、ホウ素、リン、鉄、チタンなどの不純物成分の除去が不十分であり、6〜7N以上の高純度化シリコンを安定して製造することが困難であった。特にホウ素、リンの不純物は太陽電池セルの発電特性に大きく影響するので、このホウ素、リンの不純物の気化分離が特に重要であるが、効率的な気化分離が難しく、気化分離の処理時間が長くなる問題を包含していた。このことから投入した原料シリコンの蒸発によるシリコン収率の低下およびまたエネルギー消費の増加が課題であった。本発明は、上記の問題点を解決し、安価かつ品質が安定した高純度シリコンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明は、金属シリコンの溶解・精錬において、溶融炉中の金属シリコンに不活性ガスの単独、または不活性ガスと酸化性ガスまたは還元性ガスとの混合ガスを処理ガスとして吹き込むにあたり、処理ガスを1mm以下の微細な気泡にして吹き込むことにより金属シリコンに含有する不純物を気化分離することを特徴とする金属シリコンの精錬方法であり、原料シリコンに含まれる不純物が微細な気泡と緊密に接触させることによりP、B、Fe、Al、Ti等の不純物の揮発分離が効率的に進み、金属シリコンの高純度化を容易に進行させることを見出した。
【0007】
本発明の第2発明は、金属シリコンの溶解・精錬において、溶融炉中の金属シリコンに不活性ガスの単独、または不活性ガスと酸化性ガスまたは還元性ガスとの混合ガスを処理ガスとして吹き込むにあたり、処理ガス導入管の放出先端部に1mm以下の微細な連結した空孔を保有したセラミック製分散板を用いることを特徴とする金属シリコンの精錬方法であり、ガス分散板の耐久性を大幅に向上させることを見出した。
【0008】
本発明の第3発明は、金属シリコンの溶解・精錬において、溶融炉中の金属シリコンに不活性ガスの単独、または不活性ガスと酸化性ガスまたは還元性ガスとの混合ガスを処理ガスとして吹き込むにあたり、処理ガス導入管の放出先端部に取り付けるセラミック製分散板がZrO2、Al2O3、CaOの3成分が95%以上から形成されていることを特徴とするの金属シリコンの精錬法であり、ガス分散板の耐久性を向上させるとともに溶融金属よる閉塞を減少させて、不純物の気化分離を長期間効率的にできることを見出した。
【発明の効果】
【0009】
従来は不活性ガス単独、または不活性ガスと酸化性ガスまたは還元性ガスとの混合ガスを処理ガスとして吹き込む場合、溶融金属シリコンの上面に吹き込む方式が採用されていた。この方式では、溶融金属シリコンと処理ガスとの接触が悪く、不純物の気化分離が非効率であった。本発明の微細気泡による処理ガスの送入方式では、溶融金属シリコンと処理ガスの接触が良好になることから、不純物の気化分離が効率的に進み、金属シリコンの純度向上が容易になった。また、処理時間が短縮できることより、金属シリコンの蒸発ロスの減少、および設備がコンパクト化が可能になった。これにより設備費用の低減及び電力消費量の削減が可能になった。さらに低品位の金属シリコン原料を用いることができるようになった。
【0010】
このようなことから太陽光発電に求められている高純度シリコンを安価に安定して製造することが可能になる。本発明は、クリーンエネルギーである太陽光発電の発展に寄与することができ、また昨今、世界的な課題になっているエネルギー資源の節減にも貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
高純度シリコンの製造方法としては、四塩化ケイ素からトリクロロシランを中間体として製造する気相法、高純度のシリカを出発原料として製造する化学方法、金属シリコンを溶融して冶金法で精錬する冶金精錬法等が提唱されているが、本発明は、冶金精錬法に係わるものである。
【0012】
冶金精錬法では、原料の金属シリコンを溶融精錬を行う前に、予め粉砕して酸浸出処理を行い、予めFe、Ti、Alなどの不純物を除去しておくことが好ましい。酸浸出処理をした金属シリコンは、溶融炉室1の電磁誘導加熱炉2の容器4に供給にされ、不活性ガスを送入しながら電磁誘導コイル3で加熱を行い、さらにプラズマトーチ6を点火して加熱を行いながら、不活性ガス、酸化性ガスや還元性ガス等を処理ガスとして溶融金属シリコンの上面に吹き付けることによって不純物の気化分離を進め、金属シリコンの高純度化が行われている。
【0013】
しかしながら溶融金属シリコンと処理ガスとの接触が悪いことから不純物の気化が不十分となり、高品位のシリコンが得られ難く、不純物の気化処理の時間が長くなり、また同時に金属シリコンの蒸発を招き、原料損失及びエネルギー損失が多大になる課題を有していた。
【0014】
本発明は、このような課題を解決するため、処理ガスと溶融金属シリコンとの接触性を向上させ、不純物の気化分離を効率的に行わせるものである。このため処理ガスを溶融金属シリコンの中に導入を行うものであり、溶融炉2の容器4の底部または処理ガス導入管7を経由して処理ガスの吹き込みを行い、溶融金属シリコンとの接触性を向上させるものである。
【0015】
また、本発明では、処理ガスを溶融金属中に吹き込むにあたり、気泡の粒径を1mm以下、望ましくは0.1mmにすることにより、金属シリコンに含有する不純物を極めて効率的に気化・分離が進行することを見出した。
【0016】
処理ガスの微細な気泡の形成は、溶融炉2の底部、また処理ガス導入管7の吹き出し口に、開孔径が1mm以下、望ましくは0.1mm以下の微細な連結した空孔を保有するセラミック製分散板8を設置することにより達成される。この分散板8には金属製、セラミック製があるが、耐熱性、耐摩耗性の面からセラミック製が望ましい。
【0017】
しかしながら、分散板は高温ガスとの接触による摩耗・損傷が激しいことと、また金属シリコンによる閉塞等の問題があり、長期に安定して微細な気泡を形成することは極めて難しい課題であった。
【0018】
このため、分散板の組成がAl2O3、ZrO2、CaOの3成分を主体としてから形成されるセラミックを用いることで解決することを見出した。セラミック製分散板8の組成としては、Al2O3が80%以上、Zr02が1%以上、CaOが1%以上でAl2O3、ZrO2、CaOの3成分の合計量が95以上、特に99%以上が望ましい。不純物となるSiO2の含有量は1%以下とし、1750〜1850℃での温度で焼結させたものが好ましい。
【0019】
分散板の形状としては、円板状、球状、半球状、円筒状などがあり、適用する溶融金属シリコンの容器4に応じてそれぞれの形状の分散板8を採用することになるが、表面積が大きく、取り付けとメンテナンスが比較的容易な半球状が好ましい。
【実施例】
【0020】
以下本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0021】
本実施例に用いる金属シリコン原料としては、純度98.0%のものを100メッシュ(目開き:0.59mm)99%以上程度の粒度に粉砕し、粉砕した金属シリコンを水でスラー状にして硫酸で酸浸出処理した後、水洗し、乾燥した。
【0022】
この酸浸出処理した粉状の金属シリコンを図1に示す溶融炉室1の電磁誘導加熱炉2の容器4に供給し、不活性ガスを送入しながら電磁誘導コイル3で加熱を行い、さらにプラズマトーチ6を点火して加熱を行い、金属シリコンを不活性雰囲気中で溶融させた。溶融金属シリコン5の表面部にプラズマトーチ6のガスを吹きつけ、溶融状態の金属シリコン5を30分間1600℃に保持した。その後プラズマトーチ6を停止し、誘導加熱方式で1600℃に保持しつつ、溶融炉室1のガスを除去して真空度を10−3torrに保持して真空処理を2時間実施し、Pを始めとする不純物の除去を行った。
【0023】
次いで、溶融炉室1に不活性ガスを送入し、プラズマトーチ6を点火し、溶融金属シリコン5の温度を1640℃に保持しつつ、プラマストーチ6のノズルよりアルゴンと酸素と水蒸気との混合ガスを処理ガスとして送入すると同時に、処理ガスを導入管7を経由して目開き0.1mmのセラミック分散板8を通して溶融状態の溶融金属シリコン5の底部に吹き込み、酸化処理を3時間実施し、ホウ素を始めとする不純物の除去を行った。
【0024】
溶融した金属シリコンを凝固精錬室に移送し、上部をプラズマトーチで加熱しながら、一方向疑固させた。プラズマトーチを止め、溶融金属シリコンを徐々に凝固させて、200mmφ×300mmLのインゴットを得た。冷却したインゴットは上部50mmを切り捨て、高純度シリコンのインゴットを得た。このインゴットについて不純物含有量の測定を行った。
【実施例2】
【0025】
原料の金属シリコンは、実施例1と同じ方法で酸浸出処理した金属シリコンを出発原料とした。この酸浸出処理した粉状の金属シリコンを図2に示す溶融炉室1の電磁誘導加熱炉2の容器4に供給し、不活性ガスを送入しながら電磁誘導コイル3で加熱を行い、さらにプラズマトーチ6を点火して加熱を行い、金属シリコンを不活性雰囲気中で溶融させた。溶融金属シリコン5の表面部にプラズマトーチ6のガスを吹きつけ、溶融金属シリコン5を30分間1600℃に保持した。その後プラズマトーチ6を停止し、誘導加熱方式で1600℃に保持しつつ、溶融炉室1のガスを除去して真空度を10−3torrに保持して真空処理を2時間実施した。
【0026】
次いで、溶融炉室1に不活性ガスを送入し、プラズマトーチ6を点火し、溶融金属シリコン5の温度を1640℃に保持しつつ、プラマストーチ6のノズルよりアルゴンと酸素と水蒸気との混合ガスを処理ガスとして送入すると同時に、容器4の底部に設置されている目開き0.1mmのセラミック分散板8を通して溶融金属シリコン5に処理ガスを吹き込み、酸化処理を3時間実施した。
【0027】
このように処理した溶融金属シリコンは、実施例1と同じように一方向凝固法で冷却してシリコンのインゴットを得て不純物含有量の測定に供した。
【比較例】
【0028】
原料の金属シリコンは、実施例1と同じ方法で酸浸出処理した金属シリコンを出発原料とした。この酸浸出処理した粉状の金属シリコンを図1に示す溶融炉室1の電磁誘導加熱炉2の容器4に供給し、不活性ガスを送入しながら電磁誘導コイル3で加熱を行い、さらにプラズマトーチ6を点火して加熱を行い、金属シリコンを不活性雰囲気中で溶融させた。溶融金属シリコン5の表面部にプラズマトーチ6のガスを吹きつけ、溶融金属シリコン5を30分間1600℃に保持した。その後プラズマトーチ6を停止し、誘導加熱方式で1600℃に保持しつつ、溶融炉室1のガスを除去して真空度を10−3torrに保持して真空処理を2時間実施した。
【0029】
次いで、1融炉室内1に不活性ガスを送入し、プラズマトーチ6を点火し、溶融金属シリコン5の温度を1600℃に保持しつつ、プラマストーチ6からアルゴンと酸素と水蒸気の混合ガスを処理ガスとして送入して酸化処理を3時間実施した。処理ガスの吹き込みは上面からのみで、ガス分散板8を通して溶融金属シリコン5の内部への導入は行わなかった。
【0030】
このように処理した溶融金属シリコンは、実施例1と同じように一方向凝固法で冷却してシリコンのインゴットを得て不純物含有量の測定に供した。
【0031】
上記の実施例、比較例で得られたインゴットの不純物含有量の測定結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】 実施例1における高純度シリコン製造装置の概略図を示す。
【図2】 実施例2における高純度シリコン製造装置の概略図を示す。
【符号の説明】
【0034】
1 溶融炉室
2 電磁誘導方式溶融炉
3 加熱コイル
4 容器
5 溶融金属シリコン
6 プラズマトーチ
7 処理ガス導入管
8 ガス分散板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属シリコンの溶解・精錬において、溶融炉中の金属シリコンに不活性ガスの単独、または不活性ガスと酸化性ガスまたは還元性ガスとの混合ガスを処理ガスとして吹き込むにあたり、処理ガスを1mm以下の微細な気泡にして吹き込むことにより金属シリコンに含有する不純物を気化分離することを特徴とする金属シリコンの精錬方法。
【請求項2】
金属シリコンの溶解・精錬において、溶融炉中の金属シリコンに不活性ガスの単独、または不活性ガスと酸化性ガスまたは還元性ガスとの混合ガスを処理ガスとして吹き込むにあたり、処理ガス導入管の放出先端部に開孔径が1mm以下の微細な連結した空孔を保有するセラミック製分散板を用いることを特徴とする請求項1の金属シリコンの精錬方法。
【請求項3】
金属シリコンの溶解・精錬において、溶融炉中の金属シリコンに不活性ガスの単独、または不活性ガスと酸化性ガスまたは還元性ガスとの混合ガスを処理ガスとして吹き込むにあたり、処理ガス導入管の放出先端部に取り付けるセラミック製分散板がZrO2、Al2O3、CaOの3成分が95%以上から形成されていることを特徴とする請求項1、2の金属シリコンの精錬方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−208929(P2010−208929A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−91541(P2009−91541)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(508305225)
【出願人】(508181504)株式会社サンエイジ (9)
【Fターム(参考)】