説明

高純度ジアシル誘導体

【課題】 塩素イオンの含有量が1ppm以下である高純度ジアシル誘導体を提供する。
【解決手段】
一般式(1)で表されるジアシル誘導体を主成分とし塩素イオンの含有量が1ppm以下である高純度ジアシル誘導体。


(式中、Aは、単結合、CH2、SO2、酸素原子、硫黄原子、C(CH32、C(CF32またはフルオレン構造の残基を表し、R1、R2は炭素数1〜3の1価の有機基を、R3は水素原子またはメチル基を表し、ZはCHまたは窒素原子を表し、m、nおよびpは0〜2の整数を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度ジアシル誘導体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、耐熱性、高強度のポリマーとして全芳香環ポリアミド、アラミドが知られている。全芳香環ポリアミドの製造方法として、一般的にはジカルボン酸の塩化物とジアミンを重合する脱塩酸反応を用いる方法が知られている。しかしながら、ジカルボン酸の塩化物を用いて、全芳香環ポリアミドを製造する場合、得られるポリマーに塩素イオンが混入し、電子部品の腐食の原因となることがある。このため、ジカルボン酸の塩化物から製造した全芳香環ポリアミドは、半導体素子の保護膜、再配線膜、ディスプレーの絶縁膜など電気絶縁性が要求される用途には適用できない。
【0003】
そこで、全芳香環ポリアミドの製造方法として、ジカルボン酸の活性エステルを用いる方法が考案された。例えば、特許文献1では、縮合剤としてカルボジイミド化合物を用いて、ジカルボン酸とヒドロキシベンゾトリアゾールを反応させて活性エステルを得る方法が報告されている。しかしながら、この方法では得られた活性エステルに、カルボジイミドが反応してできたウレア化合物が付着し、高純度の活性エステルを得ることができない。
【0004】
一方、全芳香環ポリアミドの製造方法として、ジカルボン酸の活性アミドを使用する方法があり、ジカルボン酸の活性アミドとして、ジイミダゾリド化合物の合成方法が開示されている(例えば、特許文献2、3、非特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、ジカルボン酸の塩化物とイミダゾールを反応させており、得られたジイミダゾリド化合物に塩素イオンが含まれる恐れがある。そのため、これを用いてポリアミドを製造し、電子部品に適用した場合、腐食の原因になるという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−257031号公報(請求項1)
【特許文献2】特開昭60−127325号公報(183頁)
【特許文献3】WO 2009/031602(請求項12,13)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“Chemische Berichte”1957年,90巻、p1326
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高純度ジアシル誘導体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の高純度ジアシル誘導体は、一般式(1)で表されるジアシル誘導体を主成分とし塩素イオンの含有量が1ppm以下であることを特徴とする。
【化1】

(式中、Aは、単結合、CH2、SO2、酸素原子、硫黄原子、C(CH32、C(CF32またはフルオレン構造の残基を表し、R1、R2は炭素数1〜3の1価の有機基を、R3は水素原子またはメチル基を表し、ZはCHまたは窒素原子を表し、m、nおよびpは0〜2の整数を表す。)
【0009】
また、本発明の高純度ジアシル誘導体は、下記一般式(2)で表されるジカルボン酸と、下記一般式(3)で表される尿素誘導体を含窒素類有機溶媒の存在下で反応させ、水、アルコール、ケトンから選ばれる少なくとも1種の溶媒で洗浄し、その後乾燥して得られたことを特徴とする。
【化2】

(式中、Aは、単結合、CH2、SO2、酸素原子、硫黄原子、C(CH32、C(CF32またはフルオレン構造の残基を表し、R1、R2は炭素数1〜3の1価の有機基を表し、m、nおよびpは0〜2の整数を表す。)
【化3】

(式中、ZはCHまたは窒素原子を表し、R3は水素原子またはメチル基を表す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明の高純度ジアシル誘導体は、ジアミンと重合することで、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリベンゾオキサゾール前駆体となり得るポリヒドロキシアミド、ポリベンゾイミダゾール前駆体となり得るポリアミノアミド、ポリベンゾチアゾール前駆体となり得るポリメルカプトアミドなどを製造することができる。得られたポリマーは塩素イオンを含まない或いは含有量が極めて少ないため、半導体素子の保護膜、再配線膜、ディスプレーの絶縁膜など電気絶縁性が要求される用途に適用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の高純度ジアシル誘導体は、一般式(1)で表されるジアシル誘導体を主成分とし塩素イオンの含有量が1ppm以下である。
【化4】

(式中、Aは、単結合、CH2、SO2、酸素原子、硫黄原子、C(CH32、C(CF32またはフルオレン構造の残基を表し、R1、R2は炭素数1〜3の1価の有機基を、R3は水素原子またはメチル基を表し、ZはCHまたは窒素原子を表し、m、nおよびpは0〜2の整数を表す。)
【0012】
一般式(1)で表される具体的な化合物としては、例えば、下記構造のものを挙げることができる。
【化5】

【0013】
本発明の高純度ジアシル誘導体は、一般式(1)で表される化合物として、1,1′−(オキシジベンゾイル)ジイミダゾール、1,1′−(ジベンゾイル)ジイミダゾール、または、1,1′−(オキシジベンゾイル)ビス(2−メチルイミダゾール)であることが特に好ましい。
【0014】
本発明の高純度ジアシル誘導体は、化合物中に含まれる塩素イオンの含有量が1ppm以下であることを特徴とし、0.5ppm以下であることが好ましく、0.3ppm以下であることがさらに好ましい。塩素イオンの含有量を1ppm以下とすることにより、電子部品に適用した場合において腐食の少ないポリアミドを得ることができる。化合物中に含まれる塩素イオンの含有量は、イオンクロマト分析装置を用いて求めることができる。
【0015】
本発明の高純度ジアシル誘導体は、一般式(2)
【化6】

(式中、Aは単結合、CH2、SO2、酸素原子、硫黄原子、C(CH32、C(CF32またはフルオレン構造の残基を表し、R1、R2は炭素数1〜3の1価の有機基を表し、m、nおよびpは0〜2の整数を表す。)
で表されるジカルボン酸と、一般式(3)
【化7】

(式中、ZはCHまたは窒素原子を表し、R3は水素原子またはメチル基を表す。)
で表される尿素誘導体を、有機溶媒の存在下で反応させ、乾燥して得られた化合物であることが好ましい。
【0016】
前記一般式(2)で表されるジカルボン酸において、Aは、単結合、SO2または酸素原子がより好ましく、酸素原子がさらに好ましい。Aが、単結合、SO2または酸素原子であると、ジアミンと重合して得られたポリマーを含む感光性樹脂組成物の露光感度が向上する。R1、R2は、炭素数1〜3の1価の有機基を表す。R1、R2は、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基を表す。R3は水素原子またはメチル基を表し、水素原子が好ましい。m、nおよびpは0〜2の整数を表し、0または1が好ましい。mが0、nが0、pが1であることがさらに好ましい。ZはCHまたは窒素原子を表し、CHが好ましい。
【0017】
前記一般式(2)で表される具体的なジカルボン酸としては、好ましくは、下記構造のものを挙げることができる。

【化8】

【0018】
一般式(2)で表されるジカルボン酸は、より好ましくは、ビフェニルジカルボン酸、オキシ二安息香酸、スルホニル二安息香酸であり、オキシ二安息香酸がさらにより好ましい。
【0019】
前記一般式(3)で表される好ましい尿素誘導体としては、下記構造のものを挙げることができる。
【化9】

【0020】
一般式(3)で表されるより好ましい尿素誘導体は、1,1′−カルボニルジイミダゾール、1,1′−カルボニルビス(2−メチルイミダゾール)であり、1,1′−カルボニルジイミダゾールがさらにより好ましい。
【0021】
一般式(3)で表される尿素誘導体は一般式(2)で表されるジカルボン酸に対して、2.0〜5.0モル倍用いることが好ましく、2.1〜3.0モル倍用いることがより好ましい。
【0022】
本発明の高純度ジアシル誘導体を製造するとき、一般式(2)で表されるジカルボン酸と一般式(3)で表される尿素誘導体を反応させるために有機溶媒を用いる。有機溶媒としては、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどのケトン類、酢酸ブチル、γ―ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、1,3−ジメチルー2―イミダゾリジノン、テトラメチル尿素、アセトニトリル、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどの含窒素類、ジメチルスルホキシド、スルホランなどの含硫黄類を用いることができる。有機溶媒としては、含窒素有機溶媒類が好ましく、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドがより好ましい。有機溶媒は、単独で使用してもよく、複数種組み合わせて用いてもよい。
【0023】
有機溶媒の使用量は一般式(2)のジカルボン酸100重量部に対して1から40重量倍用いるのが好ましく、2から20重量倍用いるのがより好ましい。
【0024】
本発明の高純度ジアシル誘導体を製造するとき、反応温度は0℃〜溶媒の沸点の範囲が好適であるが、室温から100℃の範囲がより好ましい。反応時間は1時間から1週間が好ましく、2時間から1日がより好ましい。反応の雰囲気としては、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気が好ましい。
【0025】
本発明の高純度ジアシル誘導体を製造するとき、反応終了後、抽出、濃縮、晶析、ろ過、カラムクロマトグラフィーなどの方法で、目的のジアシル誘導体を単離精製することができる。目的物の沈殿が発生しているものはろ過を行い、目的のジアシル誘導体を得ることができる。
【0026】
本発明の高純度ジアシル誘導体を製造するとき、反応終了後、水、アルコール類、ケトン類から選ばれる少なくとも1種類の溶媒を添加して、ろ過を行うか、または、常圧もしくは減圧下で濃縮して溶媒を一部留去した後ろ過を行い、目的のジアシル誘導体を得ることもできる。
【0027】
本発明の高純度ジアシル誘導体を製造するときには、目的物の沈殿から、ナトリウム、鉄などの金属を低減させるために、水、アルコール類、ケトン類から選ばれる少なくとも1種類の溶媒で洗浄を行うことが好ましい。水、アルコール類、ケトン類から選ばれる少なくとも1種類の溶媒の使用量は、一般式(2)のジカルボン酸に対して0.1から20重量倍用いるのが好ましく、1から10重量倍用いるのがより好ましい。アルコール類としては、イソプロパノール、イソブタノールなどが好ましく、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトンなどが好ましい。反応終了後に添加、洗浄に用いる水、アルコール類、ケトン類から選ばれる少なくとも1種類の溶媒は、単独、または複数組み合わせて用いても良い。
【0028】
また、必要により、本発明の高純度ジアシル誘導体は、再結晶、再沈、カラムクロマトグラフィーなどの方法により精製することもできる。再結晶する場合は、目的物と反応することがない溶媒を、単独もしくは複数種組み合わせて行うことができる。
【0029】
このようにして得られた高純度ジアシル誘導体は、水分、溶媒分を除去して乾燥することが好ましい。
【実施例】
【0030】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【0031】
まず、各実施例および比較例における評価方法について説明する。
【0032】
塩素イオン濃度
各高純度ジアシル誘導体およびそれらから得られた各ポリマーの塩素イオン濃度は、各高純度ジアシル誘導体またはそれらから得られた各ポリマー3gから目的成分を超純水30mlで抽出し、イオンクロマトグラフ分析法(装置:Dionex製 DX−320、カラム:IonPac AS4A−SC)で測定した。
【0033】
実施例1
1,1′−(4,4′−オキシジベンゾイル)ジイミダゾール
【化10】

温度計、三方コック、攪拌機を備えた1Lの4つ口フラスコに窒素気流下、1,1′−カルボニルジイミダゾール(東京化成工業(株)社製)106.6g(0.66モル)とN−メチル−2−ピロリドン(NMP)(ナカライテスク社製)557gを仕込んだ。室温で攪拌して溶解した後、4,4′−オキシ二安息香酸(東京化成工業(株)社製、Feは10ppm、Naは12ppmであった)75.5g(0.29モル)を36℃以下で添加し、攪拌した。62℃まで昇温し、炭酸ガスの発生が終了後、5℃以下まで冷却し、イオン交換水415.6gを10℃以下で滴下し、沈殿を濾過した。沈殿をイオン交換水68.5g、イソプロパノール(ナカライテスク社製)153.4gで洗浄後、50℃で減圧乾燥し、1,1′−(4,4′−オキシジベンゾイル)ジイミダゾールを103.6g(収率:99%)得た。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した純度(HPLC純度)は99%であった。Fe及びNaの含有量を誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)により分析した結果、Fe、Naともに1ppm以下であった。塩素イオン濃度をイオンクロマトマトグラフ法で分析した結果、塩素イオン濃度は0.25ppmであった。
【0034】
得られた1,1′−(4,4′−オキシジベンゾイル)ジイミダゾールをIRスペクトル分析及びNMRスペクトル分析したところ以下の結果が得られた。
IR(ATR)cm-1:1694、1589、1251;1HNMR δ ppm(CDCl3,400MHz):7.20(s,2H)、7.25(d,4H,J=8.3Hz)、7.56(S,2H)、7.90(d,4H,J=8.3Hz)、8.11(s,2H)。
【0035】
実施例2
1,1′−(4,4′−オキシジベンゾイル)ジイミダゾール
温度計、三方コック、滴下ロート、攪拌機を備えた1Lの4つ口フラスコに窒素気流下、1,1′−カルボニルジイミダゾール(東京化成工業(株)社製)35.17g(0.217モル)とN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)(ナカライテスク社製)178gを仕込んだ。4,4′−オキシ二安息香酸(東京化成工業(株)社製)25.04g(0.097モル)をDMF131gに溶解した溶液を滴下ロートから15分間で滴下した。67−69℃(30−36Torr)で溶媒を濃縮し、留出液が195gになった時点で濃縮を終了し、窒素気流下、10℃以下まで冷却し、アセトン(ナカライテスク社製)195gを滴下し、沈殿をろ過した。沈殿をイソプロパノール(ナカライテスク社製)50gで洗浄後、65℃で減圧乾燥し、1,1′−(4,4′−オキシジベンゾイル)ジイミダゾールを30.86g(収率:95%)得た。HPLC純度は99%であった。Fe及びNaの含有量を分析した結果、Fe、Na共に1ppm以下であった。塩素イオン濃度をイオンクロマトマトグラフ法で分析した結果、塩素イオン濃度は0.25ppmであった。
【0036】
実施例3
テレフタロイルジイミダゾール
【化11】

温度計、三方コック、攪拌機を備えた100mLの3つ口フラスコに窒素気流下、テレフタル酸(東京化成工業(株)社製)3.38g(0.020モル)とNMP(ナカライテスク社製)22gを仕込んで攪拌した。1,1′−カルボニルジイミダゾール(東京化成工業(株)社製)7.32g(0.045モル)を数回にわけて添加した。室温で1.5時間攪拌後、アセトン(ナカライテスク社製)11.9gを滴下し、生じた沈殿を濾過した。沈殿をアセトン7gで洗浄後、50℃で減圧乾燥し、テレフタロイルジイミダゾールを5.14g(収率:95%)得た。HPLC純度は97%であった。塩素イオン濃度をイオンクロマトマトグラフ法で分析した結果、塩素イオン濃度は0.26ppmであった。
【0037】
得られたテレフタロイルジイミダゾールをIRスペクトル分析及びNMRスペクトル分析したところ以下の結果が得られた。
IR(ATR)cm-1:1709、1248;1HNMR δ ppm(DMSO−d6、400MHz):7.19(t,2H,J=1.2Hz)、7.75(t,2H,J=1.2Hz)、8.00(d.4H.J=0.4Hz)、8.27(d,2H,J=0.8Hz)。
【0038】
実施例4
1,1′−(4,4′−ジベンゾイル)ジイミダゾール
【化12】

実施例2において、4,4′−オキシ二安息香酸のかわりに、4,4′−ビフェニルジカルボン酸(東京化成工業(株)社製)を用いる以外は実施例2と同様の操作をして、1,1′−(4,4′−ジベンゾイル)ジイミダゾールを得た。収率は95%、HPLC純度は97%であった。塩素イオン濃度をイオンクロマトマトグラフ法で分析した結果、塩素イオン濃度は0.25ppmであった。
【0039】
得られた1,1′−(4,4′−ジベンゾイル)ジイミダゾールをIRスペクトル分析したところ以下の結果が得られた。
IR(ATR)cm-1:1709
【0040】
実施例5
1,1′−(4,4′−オキシジベンゾイル)ビス(2−メチルイミダゾール)
【化13】

実施例2において、1,1′−カルボニルジイミダゾールのかわりに、1,1′−カルボニルビス(2−メチルイミダゾール)を用いる以外は実施例2と同様の操作をして、1,1′−(4,4′−オキシジベンゾイル)ビス(2−メチルイミダゾール)を得た。収率は92%、HPLC純度は95%であった。塩素イオン濃度をイオンクロマトマトグラフ法で分析した結果、塩素イオン濃度は0.26ppmであった。
【0041】
得られた1,1′−(4,4′−オキシジベンゾイル)ビス(2−メチルイミダゾール)をNMRスペクトル分析したところ以下の結果が得られた。
1HNMR(CDCl3,400MHz)δ ppm:2.43(s,6H),7.10(s,2H),7.25(m,4H),7.46(S,2H),7.90(m,4H)
【0042】
実施例6
ポリマーA
窒素気流下500mLの三頭フラスコ中に2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン36.6g(0.1モル)およびNMP300gを入れ、室温で攪拌溶解させた。その後、実施例1で得られた1,1′−(4,4′−オキシジベンゾイル)ジイミダゾール35.8g(0.1モル)を室温で添加した。この混合物を80℃で4時間攪拌した。さらに、この溶液にシス−5−ノルボルネン−エンド−2,3−ジカルボン酸無水物3.28g(0.02モル)を添加し、80℃のままさらに4時間攪拌した。反応終了後、溶液を室温まで冷却し、5Lの純水に投入した。沈殿したポリマーを濾別し、5Lの純水に再分散後濾過する工程を3回繰り返した。最終的に濾別したポリマーを50℃で3日間真空乾燥し、ポリマーAを得た。得られたポリマーAの塩素イオン濃度をイオンクロマトマトグラフ法で分析した結果、塩素イオン濃度は0.1ppm以下であった。
【0043】
実施例7
ポリマーB
実施例1で得られた1,1′−(4,4′−オキシジベンゾイル)ジイミダゾールの代わりに実施例2で得られた1,1′−(4,4′−オキシジベンゾイル)ジイミダゾールを用いた以外は実施例6と同様にしてポリマーBを得た。得られたポリマーBの塩素イオン濃度をイオンクロマトマトグラフ法で分析した結果、塩素イオン濃度は0.1ppm以下であった。
【0044】
実施例8
ポリマーC
実施例1で得られた1,1′−(4,4′−オキシジベンゾイル)ジイミダゾールの代わりに実施例3で得られたテレフタロイルジイミダゾールを用いた以外は実施例6と同様にしてポリマーCを得た。得られたポリマーCの塩素イオン濃度をイオンクロマトマトグラフ法で分析した結果、塩素イオン濃度は0.1ppm以下であった。
【0045】
実施例9
ポリマーD
実施例1で得られた1,1′−(4,4′−オキシジベンゾイル)ジイミダゾールの代わりに実施例4で得られた1,1′−(4,4′−ジベンゾイル)ジイミダゾールを用いた以外は実施例6と同様にしてポリマーDを得た。得られたポリマーDの塩素イオン濃度をイオンクロマトマトグラフ法で分析した結果、塩素イオン濃度は0.1ppm以下であった。
【0046】
実施例10
ポリマーE
実施例1で得られた1,1′−(4,4′−オキシジベンゾイル)ジイミダゾールの代わりに実施例5で得られた1,1′−(4,4′−オキシジベンゾイル)ビス(2−メチルイミダゾール)を用いた以外は実施例6と同様にしてポリマーEを得た。得られたポリマーEの塩素イオン濃度をイオンクロマトマトグラフ法で分析した結果、塩素イオン濃度は0.1ppm以下であった。
【0047】
比較例1
1,1′−(4,4′−オキシジベンゾイル)ジイミダゾール
窒素気流下、温度計、三方コック、攪拌機を備えた250mLの3つ口フラスコにイミダゾール(東京化成工業(株)社製)27.2g(0.4モル)とN−メチルー2−ピロリドン(NMP)(ナカライテスク社製)30gを仕込んだ。室温で攪拌して溶解した後、4,4′−オキシジベンゾイルクロリド(日本農薬(株)製)29.5g(0.1モル)を80gのNMPに溶解させた液を温度が10℃を超えないように1時間で滴下した。滴下後、室温にて反応溶液を3時間攪拌し、1Lの純水に投入した。沈殿物を濾別し、1Lの純水に再分散後濾過する工程を3回繰り返した。最終的に濾別したポリマーをイソプロピルアルコールで洗浄、ろ過し、50℃で減圧乾燥して1,1′−(4,4′−オキシジベンゾイル)ジイミダゾールを31.9g(収率:89%)得た。HPLC純度は、93%であった。塩素イオン濃度をイオンクロマトマトグラフ法で分析した結果、塩素イオン濃度は14ppmであった。
【0048】
比較例2
ポリマーF
実施例1で得られた1,1′−(4,4′−オキシジベンゾイル)ジイミダゾールの代わりに比較例1で得られた1,1′−(4,4′−オキシジベンゾイル)ジイミダゾールを用いた以外は実施例6と同様にしてポリマーFを得た。得られたポリマーFの塩素イオン濃度をイオンクロマトマトグラフ法で分析した結果、塩素イオン濃度は2ppmであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるジアシル誘導体を主成分とし塩素イオンの含有量が1ppm以下である高純度ジアシル誘導体。
【化1】

(式中、Aは、単結合、CH2、SO2、酸素原子、硫黄原子、C(CH32、C(CF32またはフルオレン構造の残基を表し、R1、R2は炭素数1〜3の1価の有機基を、R3は水素原子またはメチル基を表し、ZはCHまたは窒素原子を表し、m、nおよびpは0〜2の整数を表す。)
【請求項2】
下記一般式(2)で表されるジカルボン酸と、下記一般式(3)で表される尿素誘導体を、有機溶媒の存在下で反応させ、乾燥して得られたことを特徴とする請求項1に記載の高純度ジアシル誘導体。
【化2】

(式中、Aは、単結合、CH2、SO2、酸素原子、硫黄原子、C(CH32、C(CF32またはフルオレン構造の残基を表し、R1、R2は炭素数1〜3の1価の有機基を表し、m、nおよびpは0〜2の整数を表す。)
【化3】

(式中、ZはCHまたは窒素原子を表し、R3は水素原子またはメチル基を表す。)
【請求項3】
前記一般式(1)中、mが0、nが0、pが1である請求項1または2に記載の高純度ジアシル誘導体。
【請求項4】
前記一般式(1)中、Aが酸素原子であり、R3が水素原子である請求項1〜3のいずれかに記載の高純度ジアシル誘導体。
【請求項5】
前記一般式(1)中、ZがCHである請求項1〜4のいずれかに記載の高純度ジアシル誘導体。
【請求項6】
前記有機溶媒が、含窒素有機溶媒である請求項2〜5のいずれかに記載の高純度ジアシル誘導体。
【請求項7】
下記一般式(2)で表されるジカルボン酸と、下記一般式(3)で表される尿素誘導体を含窒素類有機溶媒の存在下で反応させ、水、アルコール、ケトンから選ばれる少なくとも1種の溶媒で洗浄し、その後乾燥して得られたことを特徴とする高純度ジアシル誘導体。
【化4】

(式中、Aは、単結合、CH2、SO2、酸素原子、硫黄原子、C(CH32、C(CF32またはフルオレン構造の残基を表し、R1、R2は炭素数1〜3の1価の有機基を表し、m、nおよびpは0〜2の整数を表す。)
【化5】

(式中、ZはCHまたは窒素原子を表し、R3は水素原子またはメチル基を表す。)

【公開番号】特開2012−77045(P2012−77045A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225348(P2010−225348)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000187046)東レ・ファインケミカル株式会社 (153)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)