説明

高耐熱ゴム組成物とそれを用いた電解コンデンサ用封口体

【課題】電気絶縁性、バリア性等に優れる上、圧縮永久ひずみが小さいなどゴムとしての特性にも優れ、ハロゲンの含有量が極力少なく、しかも耐熱性にも優れた単層構造の電解コンデンサ用封口体を形成しうる高耐熱ゴム組成物と、前記各特性に優れた単層構造の電解コンデンサ用封口体とを提供する。
【解決手段】高耐熱ゴム組成物は、基材ゴムとしてシリコーン変性エチレン・プロピレン系ゴムに、前記基材ゴム100質量部あたり30〜80質量部の鱗片状粉末、鱗片状粉末100質量部あたり1〜4質量部のシランカップリング剤、および基材ゴム100質量部あたり5〜20質量部のカーボンブラックを含有させた。電解コンデンサ用封口体4は、前記高耐熱ゴム組成物を成形し、架橋させて形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサ用封口体の形成材料として適した高耐熱ゴム組成物と、前記高耐熱ゴム組成物を用いて形成した電解コンデンサ用封口体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、一般的な電解コンデンサ1の内部構造を示す断面図である。図1を参照して、前記電解コンデンサ1は、電解液を含浸させたコンデンサ素子2を有底筒状の外装ケース3内に収容した状態で、前記外装ケース3の開口を封口体4によって封口して構成されている。
すなわち外装ケース3の開口に封口体4を挿入後、前記外装ケース3を、図中に示すかしめ部5において封口体4ごと径方向内方に圧縮変形させるようにかしめるとともに、開口縁部6を外装ケース3の内方に折り返すように変形させることで、前記外装ケース3の開口が封口体4によって封口されている。
【0003】
コンデンサ素子2には、封口体4を貫通する一対の電極タブ7、7が接続されており、それぞれの電極タブ7、7の先端は封口体4から外方へ突出させて一対のリード8、8とされている。
また封口体4には、前記電極タブ7、7が挿通される一対の通孔9、9が、互いに離間させて設けられている。
【0004】
前記封口体4は、一般にゴム組成物によって形成され、下記の各特性等を有していることが求められる。
・ 前記一対の電極タブ7、7間や、あるいは前記電極タブ7、7と外装ケース3との間での短絡を生じないために、特に表面抵抗値が1010Ω以上という高い電気絶縁性を有していること。
・ 電解液中に含まれるγ−ブチロラクタム、エチレングリコール等の溶媒やその気化したガス等が封口体4を通して外装ケース3外に漏れ出したり蒸発、揮散したりするのを防止するとともに、逆に水分や酸素等が前記封口体4を通して外装ケース3内に侵入するのを防止するために、前記各種の液体や気体に対するバリア性に優れていること。
・ 圧縮永久ひずみが大きいと、外装ケース3との界面での、主として前記かしめによって付与される圧接力が経時的に大きく低下して、前記界面を通して電解液が液漏れしやすくなったり、逆に水分や酸素等が侵入しやすくなったりするため、これを防止するべく圧縮永久ひずみができるだけ小さいこと。
・ 高温に長時間曝され続けることによって熱分解して質量や体積が大きく減少したり、前記圧縮永久ひずみや引張特性等で規定されるゴムとしての特性が熱劣化によって大きく低下したりすると前記圧接力が大きく低下して、外装ケース3との界面を通しての前記液漏れ等を生じやすくなるため、要求される耐熱温度等に対応した十分な耐熱性を有していること。
・ コンデンサ素子2を汚染しないためにハロゲンの含有量が極力少ないこと(熱水抽出量3ppm以下程度)。
【0005】
前記封口体は、従来、基材ゴムとしてブチルゴム(IIR、イソプレンとイソブチレンとを含む2元もしくは3元共重合体)を用いたゴム組成物によって形成するのが一般的であった(特許文献1)。
また前記IIRや、あるいはエチレン・プロピレン系ゴム(エチレンとプロピレンとを含む2元もしくは3元共重合体、EPDM等)、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)等を基材ゴムとして用いたゴム組成物に、充填剤として、平均粒子径が0.5〜10μmの微粒子(タルク、マイカ等の粉末)を含有させて封口体のバリア性を向上することも提案されている(特許文献2)。
【0006】
前記IIR等を基材ゴムとして含むゴム組成物からなる封口体は、いずれも要求される耐熱温度が85〜105℃程度までであれば、前記体積等の減少やゴムとしての特性の低下を低く抑えることができる。
しかしそれ以上の高温、例えば150℃の環境下に長時間曝され続けた際には、熱分解によって体積等が大きく減少したり、熱劣化によってゴムとしての特性が大きく低下したりする。
【0007】
そして、その結果として圧接力が大きく低下して、外装ケースとの界面を通して電解液が液漏れしやすくなったり、逆に水分、酸素等が浸入しやすくなったりする。
封口体の耐熱性を向上するため、前記封口体の一部をフッ素ゴムやシリコーンゴムによって形成することが検討されている(特許文献3〜5)。しかしこれらのゴムは本来的にバリア性が十分でないという問題がある。すなわちシリコーンゴムは水分や水、あるいはγ−ブチロラクタム、エチレングリコール等の溶媒全般に対するバリア性が不十分である。またフッ素ゴムは電解液によって膨潤しやすく、やはりバリア性が不十分である。
【0008】
そのため特許文献3〜5では、前記フッ素ゴムやシリコーンゴムを含むゴム組成物からなる第2のゴム層と、前記フッ素ゴム等に比べてバリア性の良いIIR等からなる第1のゴム層との積層体によって封口体を構成している。
しかし前記2層構造を有する封口体は、例えば150℃の環境下に長時間曝され続けることで、耐熱性の低い前記第1のゴム層において体積等の減少やゴムとしての特性の低下等による圧接力の低下を生じやすい。
【0009】
そして前記圧接力の低下を生じると、第1のゴム層によるバリア性を維持することができず、積層体全体、つまり封口体の全体としてのバリア性が低下してしまう。
また前記2層構造の封口体を製造するためには、それぞれの層を形成するゴム組成物の調製から積層体の形成までに工程数と手間を要する。そのため、単層構造の封口体に比べて生産性が低く、製造コストが高くつくという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3391552号公報
【特許文献2】特開2008−251980号公報
【特許文献3】特開2002−299167号公報
【特許文献4】特開2002−299180号公報
【特許文献5】特開2002−329643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、先に説明した電気絶縁性、バリア性等に優れる上、圧縮永久ひずみが小さいなどゴムとしての特性にも優れ、ハロゲンの含有量が極力少なく、しかも耐熱性にも優れた単層構造の電解コンデンサ用封口体を形成しうる高耐熱ゴム組成物を提供することにある。
また本発明の目的は、前記各特性に優れた単層構造の電解コンデンサ用封口体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、発明者はゴム組成物を形成する各成分について検討をした。
その結果、
・基材ゴムとしては、ゴムとしての特性に優れ、かつ150℃を超える高い耐熱性を満足しうる種々のゴムの中から、ハロゲンの含有量が極力少なく、かつ電気絶縁性、バリア性等にも優れたシリコーン変性エチレン・プロピレン系ゴム(SEP)を選択して用いればよいこと、
・前記SEPに、充填剤として所定の立体形状を有する鱗片状粉末を所定の割合で含有させると、SEPが本来的に有するゴムとしての特性や電気絶縁性、耐熱性等を良好に維持しながら、またハロゲンの含有量が十分に少ない状態を維持しながら、その詳細なメカニズムは詳らかでないがおそらく前記鱗片状粉末の形状異方性に基づいて、電解コンデンサ用封口体のバリア性をさらに向上できること、
・ただし鱗片状粉末とSEPとは結合力が弱いため電解コンデンサ用封口体の圧縮永久ひずみを増大させるおそれがあり、それを改善するためには、前記両者間の結合力を高める働きをするシランカップリング剤を所定の割合で含有させるのが有効であること、
・前記鱗片状粉末をSEP中に出来るだけ均一に分散させて、電解コンデンサ用封口体のバリア性やゴムとしての特性等に偏りが生じるのを防止するためには、前記鱗片状粉末をSEP中に分散させやすくする働きをするカーボンブラックを所定の割合で含有させるのが有効であること、
を見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
したがって本発明は、
シリコーン変性エチレン・プロピレン系ゴム(SEP)、
前記SEP100質量部あたり30質量部以上、80質量部以下の、平均粒径が10μm以上、120μm以下で、かつアスペクト比が20以上、70以下である鱗片状粉末、
前記鱗片状粉末100質量部あたり1質量部以上、4質量部以下のシランカップリング剤、および
前記SEP100質量部あたり5質量部以上、20質量部以下のカーボンブラック、
を含有することを特徴とする高耐熱ゴム組成物である。
【0014】
なお鱗片状粉末としては、電解コンデンサ用封口体のバリア性を向上する効果に優れる上、入手が容易なマイカ粉末を用いるのが好ましい。
また前記鱗片状粉末とSEPとの結合力をより一層高めることを考慮すると、シランカップリング剤としてはメタクリル系シランカップリング剤を用いるのが好ましい。
さらに、製造する電解コンデンサ用封口体に求められる所定値以下の剛性を維持しながら十分な量の鱗片状粉末を含有させてバリア性をさらに向上するためには、前記鱗片状粉末とともにゴムの補強剤として機能して剛性を高める働きをするカーボンブラックとして、前記補強剤としての機能が出来るだけ小さいものを選択して用いるのが好ましい。
【0015】
また電解コンデンサ用封口体の電気絶縁性が低下するのを防止することを考慮すると、カーボンブラックとしては電気絶縁性が高いものを用いるのが好ましい。
これらの条件を満足するカーボンブラックとしては、ヨウ素吸着量40g/kg以下、DBP吸油量60ml/100g以下のカーボンブラックを選択して用いるのが好ましい。
【0016】
また本発明によれば、前記本発明の高耐熱ゴム組成物を用いることにより、単層構造で、しかも前記各特性に優れた電解コンデンサ用封口体を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電気絶縁性、バリア性等に優れる上、圧縮永久ひずみが小さいなどゴムとしての特性にも優れ、ハロゲンの含有量が極力少なく、しかも耐熱性にも優れた単層構造の電解コンデンサ用封口体を形成しうる高耐熱ゴム組成物を提供することができる。
また本発明によれば、前記各特性に優れた単層構造の電解コンデンサ用封口体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一般的な電解コンデンサの内部構造を示す断面図である。
【図2】本発明の電解コンデンサ用封口体(封口体)の、実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図3】試験例、従来例のゴム組成物を用いて形成した架橋物について、150℃での促進劣化試験を実施した際の質量変化率(%)の推移を示すグラフである。
【図4】前記150℃での促進劣化試験を実施した際の伸び変化率(%)の推移を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〈高耐熱ゴム組成物〉
本発明の高耐熱ゴム組成物は、
シリコーン変性エチレン・プロピレン系ゴム(SEP)、
前記SEP100質量部あたり30質量部以上、80質量部以下の、平均粒径が10μm以上、120μm以下で、かつアスペクト比が20以上、70以下である鱗片状粉末、
前記鱗片状粉末100質量部あたり1質量部以上、4質量部以下のシランカップリング剤、および
前記SEP100質量部あたり5質量部以上、20質量部以下のカーボンブラック、
を含有することを特徴とする。
【0020】
(シリコーン変性エチレン・プロピレン系ゴム)
シリコーン変性エチレン・プロピレン系ゴム(SEP)としては、例えばエチレン・プロピレンゴム(EPM)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)等の、エチレンとプロピレンとを含む2元もしくは3元共重合体をシリコーンによって変性した種々のSEPを用いることができる。特にシリコーン変性EPDMが好ましい。
【0021】
かかるSEPは、先に説明したようにゴムとしての特性に優れ、ハロゲンの含有量が極力少ない上、電気絶縁性に優れている。
またSEPはバリア性にも優れている。例えば、通常のシリコーンゴムを用いたゴム組成物からなる架橋物の水分透過量が40〜70mg・mm/cm程度であるのに対し、SEPを用いたゴム組成物からなる架橋物では、前記水分透過量を7mg・mm/cm程度まで小さくできる。
【0022】
なお水分透過量を、本発明では下記の測定方法によって測定した値でもって表すこととする。
すなわち開口径φ26mm、深さ18mmの容器に純水10mlを入れ、前記容器の開口に厚み2mmの試験片を密着固定して容器内を密封したサンプルを作製し、前記サンプルを85℃で24時間静置したのち質量W(mg)を測定し、さらに85℃で24時間静置した後に再び質量W(mg)を測定して、W−Wにより質量変化量(mg)を求める。
【0023】
そして前記質量変化量(mg)を容器の開口面積(cm)で徐算し、かつ試験片の厚み(mm)で乗算して水分透過量(mg・mm/cm)を求める。
さらにSEPは高い耐熱性をも有している。例えば150℃での、式(1):
【0024】
【数1】

【0025】
によって求められる質量変化率(%)の推移の一例を図3に示す。
図3より、加熱開始から1000時間後の時点で、従来のIIRを用いたゴム組成物からなる架橋物では質量変化率が−6%程度と大きいのに対し、SEPを用いたゴム組成物からなる架橋物では−1.3%程度まで小さくできることが明らかである。
前記SEPとしては、いずれもシリコーン変性EPDMである信越化学工業(株)製の下記の製品等の1種または2種以上が挙げられる。
【0026】
SEP−1711−U〔タイプAデュロメータ硬さ:70、切断時伸び:600%、引張強さ:17.0MPa、引裂強さ(クレセント形):35kN/m、反発弾性:50%、圧縮永久ひずみ:40%、線収縮率:2.5%〕
SEP−1411−U〔タイプAデュロメータ硬さ:40、切断時伸び:600%、引張強さ:17.0MPa、引裂強さ(クレセント形):35kN/m、反発弾性:50%、圧縮永久ひずみ:40%、線収縮率:2.5%〕
SEP−1721−U〔タイプAデュロメータ硬さ:72、切断時伸び:550%、引張強さ:11.0MPa、引裂強さ(クレセント形):30kN/m、反発弾性:50%、圧縮永久ひずみ:45%、線収縮率:2.7%〕
SEP−1421−U〔タイプAデュロメータ硬さ:40、切断時伸び:550%、引張強さ:11.0MPa、引裂強さ(クレセント形):30kN/m、反発弾性:50%、圧縮永久ひずみ:45%、線収縮率:2.7%〕
SEP−1731−U〔タイプAデュロメータ硬さ:70、切断時伸び:600%、引張強さ:14.0MPa、引裂強さ(クレセント形):30kN/m、反発弾性:51%、圧縮永久ひずみ:28%〕
SEP−363−U〔タイプAデュロメータ硬さ:70、切断時伸び:400%、引張強さ:4.8MPa、引裂強さ(クレセント形):25kN/m、反発弾性:50%、圧縮永久ひずみ:28%〕
SEP−1631−U〔タイプAデュロメータ硬さ:68、切断時伸び:800%、引張強さ:15.3MPa、引裂強さ(クレセント形):36kN/m、反発弾性:49%、圧縮永久ひずみ:40%〕
SEP−855B−U〔タイプAデュロメータ硬さ:56、切断時伸び:750%、引張強さ:13.0MPa、引裂強さ(アングル形):31kN/m、反発弾性:60%、圧縮永久ひずみ:45%〕
なお個々のSEPの、カッコ内に示した特性値は、それぞれ日本工業規格JIS K6249に基づいて測定した値でもって表すこととする。圧縮永久ひずみの測定条件は150℃×22時間とし、その他の測定環境は温度23±1℃、相対湿度55±1%とする。
【0027】
また各測定に用いる試験片としては、それぞれのSEPについて標準に指定されている架橋剤を標準の割合で含有させて、170℃×10分間の1次架橋後、180℃×2時間の2次架橋をして作製したものを用いることとする。
本発明の高耐熱ゴム組成物、および電解コンデンサ用封口体を製造するにあたり、架橋剤としては、前記のようにそれぞれのSEPについて標準に指定された架橋剤を、標準の含有割合で含有させればよい。例えばSEPが前記SEP−1711−U、SEP−1721−U、SEP−1631−U等である場合、架橋剤としては同社製の過酸化物架橋剤C−11をSEP100質量部あたり2.0質量部の割合で含有させればよい。
【0028】
ただし製造する電解コンデンサ用封口体に求められる剛性等の特性に応じてSEPの架橋状態を調整するために、あるいは鱗片状粉末の含有割合を増減させつつ所定の剛性等を維持するために、架橋剤の種類や含有割合は任意に変更できる。例えば前記組み合わせの場合、SEP100質量部あたり、過酸化物架橋剤を1.5質量部以上、3.0質量部以下の範囲で任意に調整できる。
【0029】
(鱗片状粉末)
鱗片状粉末としては、電解コンデンサ用封口体のバリア性をさらに向上する機能を有する種々の鱗片状粉末がいずれも使用可能である。特に前記機能に優れる上、入手が容易なマイカ粉末が好ましい。
前記マイカ粉末等の鱗片状粉末は、平均粒径が10μm以上、120μm以下で、かつアスペクト比、すなわち鱗片の面方向の最大粒径Lと厚みDとの比L/Dが20以上、70以下である必要がある。また鱗片状粉末の含有割合は、SEP100質量部あたり30質量部以上、80質量部以下である必要がある。
【0030】
これらの限定により、SEPが本来的に有するゴムとしての特性や電気絶縁性、耐熱性等を良好に維持しながら、またハロゲンの含有量が十分に少ない状態を維持しながら、電解コンデンサ用封口体のバリア性をさらに向上できる。
具体的には、例えば基材ゴムとしてSEPを用い、かつ鱗片状粉末を含有しないゴム組成物からなる架橋物の水分透過率が7mg・mm/cm程度であるのに対し、前記所定の立体形状を有する鱗片状粉末を所定の割合で含有させることによって、水分透過率を前記値よりさらに小さくできる。
【0031】
鱗片状粉末の平均粒径、およびアスペクト比が前記範囲に限定されるのは、下記の理由による。
すなわち平均粒径が10μm未満では、たとえアスペクト比が前記範囲内であって鱗片状を呈していたとしても、前記鱗片状粉末を含有させることによる、電解コンデンサ用封口体のバリア性を向上する効果は得られない。
【0032】
また平均粒径が120μmを超える大きな鱗片状粉末は、たとえカーボンブラックを併用したとしても、SEPその他の成分との混練が困難で、高耐熱ゴム組成物中に均一に分散させることができない。そのため前記鱗片状粉末を含有させることによるバリア性を向上する効果が不均一になってバリア性の低い領域を生じやすくなり、電解コンデンサ用封口体の全体でのバリア性が低下してしまう。
【0033】
また鱗片状粉末の濃度が高い部分と低い部分とでゴムとしての特性や耐熱性、電気絶縁性等にもばらつきを生じて、電解コンデンサ用封口体の全体での前記各特性が低下するおそれもある。
またアスペクト比が20未満である粉末はもはや鱗片状とは言えず、たとえ平均粒径が前記範囲内にあったとしても、電解コンデンサ用封口体のバリア性を向上する効果は得られない。
【0034】
また平均粒径が前記範囲内にあり、かつアスペクト比が70を超える鱗片状粉末は薄すぎて、SEPその他の成分との混練時に不規則に割れたり粉砕されたりしやすく、かかる割れ等が生じると鱗片状粉末の粒径やアスペクト比が大きくばらつくため、結果的に電解コンデンサ用封口体のバリア性を向上する効果は得られない。
なお他の成分との混練性を向上して、鱗片状粉末を、できるだけ短時間の混練で高耐熱ゴム組成物中により一層均一に分散させて前記各種の問題が生じるのをできるだけ防止することを考慮すると、前記鱗片状粉末の平均粒径は、前記範囲内でも80μm以下であるのが好ましい。
【0035】
また、混練時に前記粉砕等が生じるのを防止しながら、電解コンデンサ用封口体のバリア性をより一層向上することを考慮すると、鱗片状粉末のアスペクト比は25以上であるのが好ましく、60以下であるのが好ましい。
前記平均粒径およびアスペクト比を満足する鱗片状粉末としては、例えば(株)レプコ製の、いずれも天然乾式粉砕マイカであるS−200HG(平均粒径:55μm、アスペクト比:55)、S−400(平均粒径:24μm、アスペクト比:30)、M−100(平均粒径:65μm、アスペクト比:45)、M−150(平均粒径:105μm、アスペクト比:50)、M−200(平均粒径:55μm、アスペクト比:33)、M−250(平均粒径:45μm、アスペクト比:30)等の1種または2種以上が挙げられる。
【0036】
また天然湿式粉砕マイカや合成マイカ粉末であって、平均粒径およびアスペクト比が前記範囲を満足するものを鱗片状粉末として用いることもできる。
前記平均粒径およびアスペクト比の範囲を満足する鱗片状粉末の含有割合が、SEP100質量部あたり30質量部以上、80質量部以下に限定されるのは、下記の理由による。
【0037】
すなわち含有割合が前記範囲未満では、鱗片状粉末を含有させることによる、電解コンデンサ用封口体のバリア性を向上する効果は得られない。
一方、含有割合が前記範囲を超えてもそれ以上の効果が得られないだけでなく、先に説明したように鱗片状粉末は補強剤として機能して電解コンデンサ用封口体の剛性を高める働きをするため、前記電解コンデンサ用封口体の剛性を所定値以下に維持するためには、同様に補強剤として機能するカーボンブラックの含有割合を少なくしなければならない。
【0038】
そのため鱗片状粉末をSEP中に分散させやすくする働きをする前記カーボンブラックの量が不足して、前記多量の鱗片状粉末の分散性が低下する結果、混練に長時間を要したり、鱗片状粉末を含有させることによるバリア性を向上する効果が不均一になってバリア性の低い領域を生じやすくなって、電解コンデンサ用封口体の全体でのバリア性が低下したりするおそれもある。
【0039】
また鱗片状粉末の濃度が高い部分と低い部分とでゴムとしての特性や耐熱性、電気絶縁性等にもばらつきを生じて、電解コンデンサ用封口体の全体での前記各特性が低下するおそれもある。
(シランカップリング剤)
シランカップリング剤を含有させることにより、鱗片状粉末とSEPとの間の結合力を高めて圧縮永久ひずみの増大を抑制できる。そのためSEPが本来的に有するゴムとしての特性や電気絶縁性、耐熱性等を良好に維持しながら、またハロゲンの含有量が十分に少ない状態を維持しながら、前記鱗片状粉末の形状異方性に基づいて電解コンデンサ用封口体のバリア性をさらに向上することができる。
【0040】
前記シランカップリング剤としては、例えばアミノ系、ビニル系、メタクリル系等の、鱗片状粉末とSEPとの間の結合力を高める働きをする種々のシランカップリング剤がいずれも使用可能であり、特に鱗片状粉末とSEPとの間の結合力を高める機能に優れたメタクリル系シランカップリング剤が好ましい。
前記メタクリル系シランカップリング剤としては、例えばモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のSILQUEST(シルクエスト、登録商標)A−174 SILANE(γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)、Y−9936 SILANE(γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)、信越化学工業(株)製のKBM−502(3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン)、KBM−503(3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン)、KBE−502(3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン)、KBE−503(3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン)等の1種または2種以上が挙げられる。
【0041】
前記シランカップリング剤の含有割合は、鱗片状粉末100質量部あたり1質量部以上、4質量部以下である必要がある。その理由は下記のとおり。
すなわち含有割合が前記範囲未満では、シランカップリング剤を含有させることによる、先に説明した鱗片状粉末とSEPとの間の結合力を高めて圧縮永久ひずみの増大を抑制する効果が得られない。また前記範囲を超えてもそれ以上の効果が得られないだけでなく、バリア性が低下したり、圧縮永久ひずみが増大したりしてしまう。
【0042】
なおシランカップリング剤は、鱗片状粉末の量の増減に合わせて、前記含有割合の範囲を維持しながら増減させることができる。
前記シランカップリング剤は、SEP、鱗片状粉末、およびカーボンブラックを混練して本発明の高耐熱ゴム組成物を調製する任意の時点で添加することができる。
例えばSEPと混練する前の鱗片状粉末とシランカップリング剤とをあらかじめ混合して、前記鱗片状粉末の表面をシランカップリング剤でシラン処理したのち、前記シラン処理をした鱗片状粉末をSEPと混練してもよいし、先にSEPと鱗片状粉末とを混練した後にシランカップリング剤を加えてさらに混練しても良い。
【0043】
ただし、特に鱗片状粉末がマイカ粉末である場合には後者の手順を採用するのが好ましい。すなわちマイカ粉末は層状の結晶体であって応力が加わると層間剥離を生じやすい。
そのため前者の手順を採用した場合には、シラン処理したマイカ粉末をSEPと混練する際に、応力によってマイカ粉末が層間剥離してシラン処理していない新しい面が露出するため、前記シランカップリング剤による、鱗片状粉末とSEPとの間の結合力を高めて圧縮永久ひずみの増大を抑制する効果が十分に得られないおそれがある。
【0044】
これに対し後者の手順を採用した場合には、SEPとの混練によってマイカ粉末を十分に層間剥離させた状態でシランカップリング剤を添加することになるため、前記シランカップリング剤による、鱗片状粉末とSEPとの間の結合力を高めて圧縮永久ひずみの増大を抑制する効果を十分に発揮させることができる。
(カーボンブラック)
カーボンブラックとしては、鱗片状粉末をSEP中に分散させやすくする働きをする種々のカーボンブラックが使用可能である。
【0045】
ただし製造する電解コンデンサ用封口体に求められる剛性を所定値以下に維持しながら十分な量の鱗片状粉末を含有させてバリア性をさらに向上するためには、前記鱗片状粉末とともにゴムの補強剤として機能して剛性を高める働きをするカーボンブラックとして、前記補強剤としての機能が出来るだけ小さいものを選択して用いるのが好ましい。
また電解コンデンサ用封口体の電気絶縁性が低下するのを防止することを考慮すると、カーボンブラックとしては電気絶縁性が高いものを用いるのが好ましい。
【0046】
これらの条件を満足するカーボンブラックとしては、ヨウ素吸着量40g/kg以下、DBP吸油量60ml/100g以下のカーボンブラックを選択して用いるのが好ましい。
かかるカーボンブラックとしては、例えば旭カーボン(株)製の旭#35(ヨウ素吸着量:23g/kg、DBP吸油量:50ml/100g)、旭#15(ヨウ素吸着量:11g/kg、DBP吸油量:41ml/100g)、旭#8(ヨウ素吸着量:14g/kg、DBP吸油量:29ml/100g)、アサヒサーマル(ヨウ素吸着量:27g/kg、DBP吸油量:28ml/100g)等の1種または2種以上が挙げられる。
【0047】
また、前記ヨウ素吸着量の範囲、およびDBP吸油量の範囲を満足するその他のカーボンブラックを用いてもよい。
カーボンブラックの含有割合は、SEP100質量部あたり5質量部以上、20質量部以下である必要がある。その理由は下記のとおり。
すなわち含有割合が前記範囲未満では、カーボンブラックを含有させることによる、鱗片状粉末をSEP中に分散させやすくする効果が得られない。そのため鱗片状粉末をSEPその他の成分と混練するのが困難で、高耐熱ゴム組成物中に均一に分散させることができない。
【0048】
また前記範囲を超えてもそれ以上の効果が得られないだけでなく、先に説明したようにカーボンブラックはSEPの補強剤として機能するため、製造する電解コンデンサ用封口体に求められる所定値以下の剛性を維持しながら十分な量の鱗片状粉末を含有させてバリア性を向上するのが困難になる。
すなわち前記範囲を超えてカーボンブラックを含有させると、電解コンデンサ用封口体の剛性が高くなりすぎるおそれがあり、それを防止するために鱗片状粉末の含有割合を少なくするとバリア性が低下してしまう。
【0049】
またカーボンブラックは導電性であるため、前記範囲を超えて多量に含有させた場合には電解コンデンサ用封口体の電気絶縁性が低下するおそれもある。
カーボンブラックは、先に説明したようにSEP中に鱗片状粉末を分散させやすくする働きをする。そのためSEPを素練りして可塑化した状態で、最初にカーボンブラックを加えて混練したのち、鱗片状粉末等を順次加えて混練して高耐熱ゴム組成物を調製するのが好ましい。
【0050】
本発明の高耐熱ゴム組成物には、例えばSEPと良好な相溶性、共架橋性を有する他の基材ゴムや各種の添加剤等を、前記SEP、鱗片状粉末、シランカップリング剤、およびカーボンブラックの各成分を併用することによる効果を阻害しない範囲で適宜、含有させてもよい。
本発明の高耐熱ゴム組成物は、特に電解コンデンサ用封口体の形成材料として好適に使用できるが、前記封口体と同様の特性が求められる様々な部材の形成材料として使用することもできる。
【0051】
〈電解コンデンサ用封口体〉
図2は、本発明の電解コンデンサ用封口体(封口体)の、実施の形態の一例を示す斜視図である。
図2を参照して、この例の封口体4は、前記各成分を含む本発明の高耐熱ゴム組成物の架橋物によって、全体が単層構造の厚肉円板状に形成されている。また前記封口体4には、その中心軸線と平行でかつ互いに離間させて、先に説明した電極タブ7、7を挿通するための一対の通孔9、9が設けられている。
【0052】
図1、図2を参照して、前記封口体4を用いて電解コンデンサ1を組み立てるには、従来同様に、まずコンデンサ素子2に繋がれた一対の電極タブ7、7を前記通孔9、9に挿通した状態で、前記コンデンサ素子2を外装ケース3内に収容するとともに、前記外装ケース3の開口に封口体4を挿入する。
次いで前記外装ケース3を、図中に示すかしめ部5において封口体4ごと径方向内方に圧縮変形させるようにかしめるとともに、開口縁部6を外装ケース3の内方に折り返すように変形させることで、前記外装ケース3の開口が封口体4によって封口されて電解コンデンサ1が得られる。
【0053】
前記封口体は、剛性を示す50%引張応力M50が従来のブチルゴム配合の封口体と同程度、詳しくは6MPa以上、8MPa以下程度であるのが好ましい。これは、従来のブチルゴム配合の封口体を用いた電解コンデンサの封止設備をそのまま転用するためである。すなわち従来の封止設備においては、一般的なブチルゴム配合の封口体の剛性に合わせた設定がされているため、新たな本発明の封口体を用いる場合も、その剛性が近い方が新たに設定をやり直したり部品を交換したりする必要が無いため生産上好都合である。
【0054】
封口体の50%引張応力M50を前記範囲内に調整するためには、先に説明したように補強剤として機能する鱗片状粉末、およびカーボンブラックの種類と含有割合を調整したり、架橋剤の種類と量を調整したりすればよい。なお50%引張応力M50を、本発明では封口体と同じゴム組成物によって形成したダンベル状試験片を用いて、日本工業規格JIS K6251:2004「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」所載の方法に則って求めた値でもって表すこととする。測定環境は温度23±1℃、相対湿度55±1%とする。
【0055】
また封口体は、先に説明したように一対の電極タブ間や、前記電極タブと外装ケースとの間での短絡が生じるのを防止するために、表面抵抗値が1010Ω以上であるのが好ましい。表面抵抗値を前記範囲内に調整するためには、先に説明したようにカーボンブラックの種類と量を調整すればよい。
また封口体は、これも先に説明したようにコンデンサ素子を汚染しないために、ハロゲン含有量が、熱水抽出量で表して3ppm以下であるのが好ましい。3ppm以下であれば電解コンデンサの機能に影響ないといわれている。SEPはハロゲンを含有しないが、マイカ等の鱗片状粉末やカーボンブラックに微量の不純物としてハロゲンが含まれる場合があるので、ハロゲン含有量を前記範囲内に調整するためには、使用する鱗片状粉末やカーボンブラック等のハロゲン量を把握するようにすればよい。
【実施例】
【0056】
以下の比較検討における高耐熱ゴム組成物の調製、および各種試験を、特記した以外は温度23±1℃、相対湿度55±1%の環境下で実施した。
〈比較検討1−充填剤の検討〉
(試験例1−1)
基材ゴムとしてのSEP〔前出の信越化学工業(株)製のSEP−1711−U〕100質量部と、充填剤としての鱗片状粉末〔天然乾式粉砕マイカ、前出の(株)レプコ製のS−200HG、平均粒径:55μm、アスペクト比:55〕20質量部と、カーボンブラック〔前出の旭カーボン(株)製の旭#15、ヨウ素吸着量:11g/kg、DBP吸油量:41ml/100g〕10質量部と、前記SEPの架橋剤〔前出の信越化学工業(株)製のC−11〕2.0質量部とを配合し、混練してゴム組成物を調製した。
【0057】
混練の手順は、まず3リッター加圧型ニーダにSEPを投入し、素練りして可塑化した状態で、カーボンブラック、および鱗片状粉末を順に投入してさらに混練した。次いで前記混練物を、14インチロールを用いて混練しながら架橋剤を加えてさらに混練した。
混練条件は、ニーダの回転数:30rpm、初期加熱温度:70℃、鱗片状粉末の混練時の冷却水温度:40℃、ロールの回転数:15〜20rpm、冷却水温度20℃とした。
【0058】
(試験例1−2)
充填剤として、鱗片状粉末に代えてクレー〔表面処理焼成カオリン、ほぼ球形の粒子、林化成(株)製のトランスリンク#37、平均粒径:1.4μm、アスペクト比:約1〕を同量配合したこと以外は試験例1−1と同様にしてゴム組成物を調製した。
(試験例1−3)
充填剤として、鱗片状粉末に代えてシリカ〔ほぼ球形の粒子、東ソー・シリカ(株)製のSS30P、平均粒径:9μm、アスペクト比:約1〕を同量配合したこと以外は試験例1−1と同様にしてゴム組成物を調製した。
【0059】
(試験例1−4)
充填剤としての鱗片状粉末を配合しなかったこと以外は試験例1−1と同様にしてゴム組成物を調製した。
(混練作業性評価)
前記各試験例でゴム組成物を調製する際の混練作業性を、下記の基準で評価した。
【0060】
良好:各成分を短時間で均一に混練することができた。
可:各成分を均一に混練できたが、そのために「良好」の場合の2倍以上の時間を要した。
困難:各成分を均一に混練することはできなかった。
(バリア性評価)
前記各試験例で調製したゴム組成物を、加熱プレスを用いて加圧しながら170℃×20分間加熱して一次架橋させ、次いでオーブン中で150℃×4時間加熱して二次架橋させて、厚み2mmのシート状の試験片を作製した。
【0061】
次いで開口径φ26mm、深さ18mmの容器を用意し、前記容器内に純水10mlを入れたのち、前記シート状の試験片を前記容器の開口に密着固定して容器内を密封したサンプルを作製した。
そして前記サンプルを85℃で24時間静置したのち質量W(mg)を測定し、さらに85℃で24時間静置した後に再び質量W(mg)を測定して、W−Wにより質量変化量(mg)を求め、前記質量変化量(mg)を容器の開口面積(cm)で徐算し、かつ試験片の厚み(mm)で乗算して水分透過量(mg・mm/cm)を求めて、各試験片の水に対するバリア性を評価した。
【0062】
結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
表1より、いずれの試験例においても混練作業性は「良好」であったが、充填剤としてほぼ球形のクレーまたはシリカを含有させた試験例1−2、1−3は、それぞれ水分透過率が6mg・mm/cm代であって、充填剤を含有させなかった試験例1−4の7.3mg・mm/cmとほぼ同等であったことから、これら略球形の充填剤がSEPのバリア性を向上する機能を殆ど有しないことが判った。
【0065】
これに対し、充填剤として鱗片状粉末を含有した試験例1−1の水分透過率は4.4mg・mm/cmであり、前記鱗片状粉末がバリア性を向上する機能に優れていることが判った。
〈比較検討2−鱗片状粉末の形状検討〉
(試験例2−1)
基材ゴムとしてのSEP〔前出の信越化学工業(株)製のSEP−1711−U〕100質量部と、鱗片状粉末〔天然乾式粉砕マイカ、(株)レプコ製のS−60H、平均粒径:185μm、アスペクト比:80〕50質量部と、カーボンブラック〔前出の旭カーボン(株)製の旭#15、ヨウ素吸着量:11g/kg、DBP吸油量:41ml/100g〕10質量部と、前記SEPの架橋剤〔前出の信越化学工業(株)製のC−11〕2.5質量部とを配合した。そして試験例1−1と同条件で混練を試みたが、ゴム組成物を調製することはできなかった。
【0066】
(試験例2−2)
鱗片状粉末として、前出の(株)レプコ製のM−150〔天然乾式粉砕マイカ、平均粒径:105μm、アスペクト比:50〕を同量配合したこと以外は試験例2−1と同様にして各成分を配合し、試験例1−1と同条件で混練してゴム組成物を調製した。
(試験例2−3)
鱗片状粉末として、前出の(株)レプコ製のS−200HG〔天然乾式粉砕マイカ、平均粒径:55μm、アスペクト比:55〕を同量配合したこと以外は試験例2−2と同様にしてゴム組成物を調製した。
【0067】
(試験例2−4)
鱗片状粉末として、前出の(株)レプコ製のS−400〔天然乾式粉砕マイカ、平均粒径:24μm、アスペクト比:30〕を同量配合したこと以外は試験例2−2と同様にしてゴム組成物を調製した。
(試験例2−5)
鱗片状粉末として、レプコ製のS−XF〔天然乾式粉砕マイカ、平均粒径:3μm、アスペクト比:15〕を同量配合したこと以外は試験例2−2と同様にしてゴム組成物を調製した。
【0068】
前記各試験例で調製したゴム組成物について、先に説明した混練作業性、および水に対するバリア性を評価した。結果を表2に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
先に説明したように、平均粒径が120μmを超え、かつアスペクト比が70を超える鱗片状粉末を用いた試験例2−1は、前記鱗片状粉末をSEP等と混練してゴム組成物を調製することができず、混練作業性が「困難」であった。
一方、平均粒径が120μm以下で、かつアスペクト比が70以下の鱗片状粉末を用いた試験例2−2〜2−5は、いずれも混練作業性が「可」ないし「良好」で、ゴム組成物を調製することができた。
【0071】
しかもこれらの試験例のうち、平均粒径が10μm以上で、かつアスペクト比が20以上である鱗片状粉末を用いた試験例2−2〜2−4は、平均粒径が10μm未満で、かつアスペクト比が20未満である鱗片状粉末を用いた試験例2−5に比べて水分透過量を大幅に抑制できることが判った。
そしてこれらの結果から、鱗片状粉末の平均粒径は10μm以上、120μm以下で、かつアスペクト比は20以上、70以下である必要があることが確認された。
【0072】
また前記試験例2−2〜2−4のうち、平均粒径が80μm以下である鱗片状粉末を用いた試験例2−3、2−4の混練作業性が「良好」であるのに対し、平均粒径が80μmを超える鱗片状粉末を用いた試験例2−2は混練作業性が「可」であり、混練作業に、前記試験例2−3、2−4の2倍以上の時間を要した。そのため鱗片状粉末の平均粒径は、前記10μm以上、120μm以下の範囲内でも80μm以上であるのが好ましいことが確認された。
【0073】
〈比較検討3−鱗片状粉末の含有割合検討〉
(試験例3−1)
基材ゴムとしてのSEP〔前出の信越化学工業(株)製のSEP−1711−U〕100質量部と、鱗片状粉末〔天然乾式粉砕マイカ、前出の(株)レプコ製のS−200HG、平均粒径:55μm、アスペクト比:55〕20質量部と、カーボンブラック〔前出の旭カーボン(株)製の旭#15、ヨウ素吸着量:11g/kg、DBP吸油量:41ml/100g〕10質量部と、前記SEPの架橋剤〔前出の信越化学工業(株)製のC−11〕2.5質量部とを配合し、混練してゴム組成物を調製した。
【0074】
(試験例3−2)
鱗片状粉末の量を40質量部としたこと以外は試験例3−1と同様にしてゴム組成物を調製した。
(試験例3−3)
鱗片状粉末の量を70質量部としたこと以外は試験例3−1と同様にしてゴム組成物を調製した。
【0075】
(試験例3−4)
鱗片状粉末の量を100質量部としたこと以外は試験例3−1と同様にしてゴム組成物を調製した。
(圧縮永久ひずみ試験)
前記各試験例で調製したゴム組成物を、加熱プレスを用いて加圧しながら170℃×20分間加熱して一次架橋させ、次いでオーブン中で150℃×4時間加熱して二次架橋させたのち打抜いて、日本工業規格JIS K6262−1997「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの永久ひずみ試験方法」において規定されたリング状試験片のうち大型試験片を作製した。
【0076】
次いで前記試験片を用いて、前記JIS K6262−1997所載の圧縮永久ひずみ試験を実施して圧縮永久ひずみ(%)を求めた。試験条件は105℃×72時間、圧縮割合25%とした。
また前記各試験例で調製したゴム組成物について、先に説明した混練作業性、および水に対するバリア性も評価した。結果を表3に示す。
【0077】
【表3】

【0078】
表3より、鱗片状粉末の量を、80質量部を超える範囲とした試験例3−4は混練作業性が「可」であり、前記量を80質量部以下とした試験例3−1〜3−3の2倍以上の時間を要する上、圧縮永久歪みも大きいことが判った。
また前記試験例3−1〜3−3のうち、鱗片状粉末の量を30質量部以上とした試験例3−2、3−3は、いずれも前記量を30質量部未満とした試験例3−1に比べて水分透過量を大幅に抑制できることが判った。
【0079】
そしてこれらの結果から、鱗片状粉末の割合は、SEP100質量部あたり30質量部以上、80質量部以下である必要があることが確認された。
〈比較検討4−シランカップリング剤の検討〉
(試験例4−1)
基材ゴムとしてのSEP〔前出の信越化学工業(株)製のSEP−1711−U〕100質量部と、鱗片状粉末〔天然乾式粉砕マイカ、前出の(株)レプコ製のS−200HG、平均粒径:55μm、アスペクト比:55〕70質量部と、シランカップリング剤としてのビニル系シランカップリング剤〔ビニルトリエトキシシラン、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のSILQUEST A−151NTJ SILANE〕1質量部と、カーボンブラック〔前出の旭カーボン(株)製の旭#15、ヨウ素吸着量:11g/kg、DBP吸油量:41ml/100g〕10質量部と、前記SEPの架橋剤〔前出の信越化学工業(株)製のC−11〕2.5質量部とを配合し、混練してゴム組成物を調製した。
【0080】
混練の手順は、まず3リッター加圧型ニーダにSEPを投入し、素練りして可塑化した状態で、カーボンブラック、および鱗片状粉末を順に投入してさらに混練した。次いでシランカップリング剤を投入してさらに混練したのち、前記混練物を、14インチロールを用いて混練しながら架橋剤を加えてさらに混練した。
混練条件は、ニーダの回転数:30rpm、初期加熱温度:70℃、鱗片状粉末の混練時の冷却水温度:40℃、ロールの回転数:15〜20rpm、冷却水温度20℃とした。
【0081】
鱗片状粉末100質量部あたりのシランカップリング剤の量は1.42質量部であった。
(試験例4−2)
シランカップリング剤としてメタクリル系シランカップリング剤〔γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、前出のモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のSILQUEST A−174 SILANE〕を同量配合したこと以外は試験例4−1と同様にしてゴム組成物を調製した。
【0082】
鱗片状粉末100質量部あたりのシランカップリング剤の量は1.42質量部であった。
(試験例4−3)
シランカップリング剤としてエポキシ系シランカップリング剤〔γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のSILQUEST A−187 SILANE〕を同量配合したこと以外は試験例4−1と同様にしてゴム組成物を調製した。
【0083】
鱗片状粉末100質量部あたりのシランカップリング剤の量は1.42質量部であった。
(試験例4−4)
シランカップリング剤としてアミノ系シランカップリング剤〔γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のSILQUEST A−1100〕を同量配合したこと以外は試験例4−1と同様にしてゴム組成物を調製した。
【0084】
鱗片状粉末100質量部あたりのシランカップリング剤の量は1.42質量部であった。
(引張試験)
前記各試験例で調製したゴム組成物を、加熱プレスを用いて加圧しながら170℃×20分間加熱して一次架橋させ、次いでオーブン中で150℃×4時間加熱して二次架橋させたのち打抜いて、日本工業規格JIS K6251:2004「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」において規定されたダンベル状試験片を作製した。
【0085】
次いで前記試験片を用いて、前記JIS K6251:2004所載の引張試験を実施して、50%引張応力M50(MPa)、降伏点引張応力My(MPa)、および降伏点伸びEy(%)を求めた。
(硬さ測定)
前記各試験例で調製したゴム組成物を、加熱プレスを用いて加圧しながら170℃×20分間加熱して一次架橋させ、次いでオーブン中で150℃×4時間加熱して二次架橋させて、日本工業規格JIS K6253−1997「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」所載のデュロメータ硬さ試験用の試験片を作製し、前記試験片を用いてタイプAデュロメータ硬さを測定した。
【0086】
また前記各試験例で調製したゴム組成物について、先に説明した混練作業性、および水に対するバリア性を評価するとともに、圧縮永久歪み(%)を求めた。結果を表4に示す。
【0087】
【表4】

【0088】
表4より、シランカップリング剤を含有させることで圧縮永久ひずみを小さくできること、特にシランカップリング剤としてメタクリル系シランカップリング剤が前記効果に優れることが判った。
〈比較試験5−配合手順の検討〉
(試験例5−1)
鱗片状粉末〔天然乾式粉砕マイカ、前出の(株)レプコ製のS−200HG、平均粒径:55μm、アスペクト比:55〕に水を加えてスラリーを調製し、前記スラリーに、シランカップリング剤としてのビニル系シランカップリング剤〔ビニルトリエトキシシラン、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のSILQUEST A−151NTJ SILANE〕を加えてかく拌し、ろ過し、次いで乾燥したのち粉砕してシラン処理された鱗片状粉末を得た。得られたシラン処理鱗片状粉末における、鱗片状粉末SとシランカップリングCの質量比S:C=70:1であった。
【0089】
次に、3リッター加圧型ニーダにSEP〔前出の信越化学工業(株)製のSEP−1711−U〕100質量部を投入し、素練りして可塑化した状態で、カーボンブラック〔前出の旭カーボン(株)製の旭#15、ヨウ素吸着量:11g/kg、DBP吸油量:41ml/100g〕10質量部、および前記シラン処理をした鱗片状粉末71質量部を順に投入してさらに混練したのち、前記混練物を、14インチロールを用いて混練しながら架橋剤を加えてさらに混練した。
【0090】
混練条件は、ニーダの回転数:30rpm、初期加熱温度:70℃、鱗片状粉末の混練時の冷却水温度:40℃、ロールの回転数:15〜20rpm、冷却水温度20℃とした。
鱗片状粉末100質量部あたりのシランカップリング剤の量は1.42質量部であった。
【0091】
(試験例5−2)
鱗片状粉末〔天然乾式粉砕マイカ、前出の(株)レプコ製のS−200HG、平均粒径:55μm、アスペクト比:55〕に水を加えてスラリーを調製し、前記スラリーに、シランカップリング剤としてのメタクリル系シランカップリング剤〔γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、前出のモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のSILQUEST A−174 SILANE〕を加えてかく拌し、ろ過し、次いで乾燥したのち粉砕してシラン処理された鱗片状粉末を得た。得られたシラン処理鱗片状粉末における、鱗片状粉末SとシランカップリングCの質量比S:C=70:1であった。
【0092】
そして前記シラン処理された鱗片状粉末を同量配合したこと以外は試験例5−1と同様にしてゴム組成物を調製した。
鱗片状粉末100質量部あたりのシランカップリング剤の量は1.42質量部であった。
前記各試験例で調製したゴム組成物について、先に説明した混練作業性、および水に対するバリア性を評価するとともに、圧縮永久歪み(%)、およびタイプAデュロメータ硬さを求めた。また引張試験をして50%引張応力M50(MPa)、降伏点引張応力My(MPa)、および降伏点伸びEy(%)を求めた。
【0093】
結果を、試験例4−1、4-2の結果と合わせて表5に示す。
なお表中の混練手順Aは、試験例4−1に記載のように先にSEPと鱗片状粉末とを混練後にシランカップリング剤を添加、混練手順Bは、試験例5−1に記載のようにあらかじめ鱗片状粉末をシランカップリング剤で処理後にSEPと混練したことを示す。
【0094】
【表5】

【0095】
表5より、鱗片状粉末としてマイカを用いる系では、混練の手順として、先にSEPと鱗片状粉末とを混練後にシランカップリング剤を添加する混練手順Aを採用するのが好ましいことが判った。
〈比較試験6−シランカップリング剤の含有割合検討〉
(試験例6−1)
基材ゴムとしてのSEP〔前出の信越化学工業(株)製のSEP−1711−U〕100質量部と、鱗片状粉末〔天然乾式粉砕マイカ、前出の(株)レプコ製のS−200HG、平均粒径:55μm、アスペクト比:55〕50質量部と、シランカップリング剤としてのメタクリル系シランカップリング剤〔γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、前出のモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のSILQUEST A−174 SILANE〕0.2質量部と、カーボンブラック〔前出の旭カーボン(株)製の旭#15、ヨウ素吸着量:11g/kg、DBP吸油量:41ml/100g〕10質量部と、前記SEPの架橋剤〔前出の信越化学工業(株)製のC−11〕2.5質量部とを配合し、混練してゴム組成物を調製した。混練の手順は手順Aを採用した。
【0096】
鱗片状粉末100質量部あたりのシランカップリング剤の量は0.4質量部であった。
(試験例6−2)
鱗片状粉末の量を70質量部、メタクリル系シランカップリング剤の量を1.5質量部としたこと以外は試験例6−1と同様にしてゴム組成物を調製した。
鱗片状粉末100質量部あたりのシランカップリング剤の量は2.14質量部であった。
【0097】
(試験例6−3)
メタクリル系シランカップリング剤の量を1.5質量部としたこと以外は試験例6−1と同様にしてゴム組成物を調製した。
鱗片状粉末100質量部あたりのシランカップリング剤の量は3質量部であった。
(試験例6−4)
メタクリル系シランカップリング剤の量を3質量部としたこと以外は試験例6−1と同様にしてゴム組成物を調製した。
【0098】
鱗片状粉末100質量部あたりのシランカップリング剤の量は6質量部であった。
前記各試験例で調製したゴム組成物について、先に説明した混練作業性、および水に対するバリア性を評価するとともに、圧縮永久歪み(%)を求めた。
結果を、試験例4−2の結果と併せて表6に示す。
【0099】
【表6】

【0100】
表6より、鱗片状粉末100質量部あたりのシランカップリング剤の割合を1質量部以上、4質量部以下とした試験例4−2、6−2、6−3は、いずれも前記割合を1質量部未満とした試験例6−1に比べて圧縮永久ひずみを小さくできること、前記割合を4質量部を超える範囲とした試験例6−4に比べて圧縮永久ひずみ、および水分透過量を小さくできることが判った。
【0101】
そしてこれらの結果から、鱗片状粉末100質量部あたりのシランカップリング剤の割合は1質量部以上、4質量部以下である必要があることが確認された。
〈比較試験7−カーボンブラックの含有割合検討〉
(試験例7−1)
基材ゴムとしてのSEP〔前出の信越化学工業(株)製のSEP−1711−U〕100質量部と、鱗片状粉末〔天然乾式粉砕マイカ、前出の(株)レプコ製のS−200HG、平均粒径:55μm、アスペクト比:55〕50質量部と、シランカップリング剤としてのメタクリル系シランカップリング剤〔γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、前出のモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のSILQUEST A−174 SILANE〕1.25質量部と、カーボンブラック〔前出の旭カーボン(株)製の旭#15、ヨウ素吸着量:11g/kg、DBP吸油量:41ml/100g〕2質量部と、前記SEPの架橋剤〔前出の信越化学工業(株)製のC−11〕2.5質量部とを配合した。そして試験例4−1と同じ手順、同条件で混練を試みたが、ゴム組成物を調製することはできなかった。
【0102】
(試験例7−2)
カーボンブラックの量を10質量部としたこと以外は試験例7−1と同様にして各成分を配合し、試験例4−1と同じ手順、同条件で混練してゴム組成物を調製した。
(試験例7−3)
カーボンブラックの量を20質量部としたこと以外は試験例7−2と同様にしてゴム組成物を調製した。
【0103】
(試験例7−4)
カーボンブラックの量を30質量部としたこと以外は試験例7−2と同様にしてゴム組成物を調製した。
(試験例7−5)
鱗片状粉末の量を25質量部とし、かつカーボンブラックの量を30質量部としたこと以外は試験例7−2と同様にしてゴム組成物を調製した。
【0104】
前記各試験例で調製したゴム組成物について、先に説明した混練作業性、および水に対するバリア性を評価するとともに、圧縮永久歪み(%)、およびタイプAデュロメータ硬さを求めた。また引張試験をして50%引張応力M50(MPa)、降伏点引張応力My(MPa)、および降伏点伸びEy(%)を求めた。
結果を表7に示す。
【0105】
【表7】

【0106】
先に説明したようにカーボンブラックの量を5質量部未満とした試験例7−1は、鱗片状粉末をSEP等と混練してゴム組成物を調製することができず、混練作業性が「困難」であった。
一方、カーボンブラックの量を5質量部以上とした試験例7−2〜7−5は、いずれも混練作業性が「良好」で、ゴム組成物を調製することができた。
【0107】
しかしカーボンブラックの量を、20質量部を超える範囲とした試験例7−4は50%引張応力M50が大きいことから剛性が高くなりすぎることが判った。また剛性を低くするために鱗片状粉末の量を少なくすると、試験例7−5に見るようにバリア性が低下することが判った。
そしてこれらの結果から、カーボンブラックの割合は、SEP100質量部あたり5質量部以上、20質量部以下である必要があることが確認された。
【0108】
また試験例7−2のゴム組成物を、加熱プレスを用いて加圧しながら170℃×20分間加熱して一次架橋させ、次いでオーブン中で150℃×4時間加熱して二次架橋させたのち熱水抽出試験を実施してハロゲン含有量(熱水抽出量)を求めたところ1ppmであった。
〈従来例1〉
従来のブチルゴム配合を再現した。
【0109】
すなわち基材ゴムとしてのブチルゴム〔エクソンモービル社製のButyl 268〕100質量部、カーボンブラックGPF〔三菱化学(株)製のダイアブラック(登録商標)G〕50質量部、水酸化アルミニウム粉末〔昭和電工(株)製のハイジライト(登録商標)H−32〕120質量部、エポキシ系シランカップリング剤〔3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業(株)製のKBM−403〕1質量部、ステアリン酸〔花王(株)製のルナック(登録商標)30〕1質量部、亜鉛華1号〔ハクスイテック(株)製〕5質量部、および架橋剤〔アルキルフェノール・ホルムアルデヒド縮合体、田岡化学工業(株)製のタッキロール(登録商標)201〕15質量部を配合し、混練してゴム組成物を調製した。
【0110】
前記従来例1で調製したゴム組成物を、加熱プレスを用いて加圧しながら180℃×10分間加熱して一次架橋させ、次いでオーブン中で180℃×4時間加熱して二次架橋させたのち打抜いて、日本工業規格JIS K6251:2004「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」において規定されたダンベル状試験片を作製した。
そして前記試験片を用いて、前記JIS K6251:2004所載の引張試験を実施して、50%引張応力M50(MPa)、降伏点引張応力My(MPa)、および降伏点伸びEy(%)を求めた。
【0111】
また前記ゴム組成物を、加熱プレスを用いて加圧しながら180℃×10分間加熱して一次架橋させ、次いでオーブン中で180℃×4時間加熱して二次架橋させて、日本工業規格JIS K6253−1997「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」所載のデュロメータ硬さ試験用の試験片を作製し、前記試験片を用いてタイプAデュロメータ硬さを測定した。
【0112】
結果を、先の試験例7−2の結果と合わせて表8に示す。
【0113】
【表8】

【0114】
表より、いずれのゴム組成物を用いて形成した架橋物も、ほぼ同等のゴムとしての特性を有していることが判った。
〈促進劣化試験〉
(質量変化率)
前記試験例、従来例のゴム組成物を用いて形成した架橋物の加熱前の質量(g)を秤量したのち、150℃のオーブンに入れて加熱を開始し、一定時間経過ごとに質量を測定して、式(1):
【0115】
【数2】

【0116】
によって質量変化率(%)を求め、その推移をプロットした。結果を図3に示す。図3中の−○−○−が試験例7−2、−■−■−が従来例1の結果である。
図3より、従来例1のゴム組成物からなる架橋物では質量変化率の増加が大きいのに対し、本発明にかかる試験例7−2のゴム組成物からなる架橋物では前記増加を小さくできることが判った。
【0117】
(伸び変化率)
前記試験例、従来例のゴム組成物を用いて、それぞれJIS K6251:2004「加硫ゴム及び熱可塑性ゴム−引張特性の求め方」において規定されたダンベル状試験片を作製した。
そして試験例のゴム組成物からなる試験片については降伏点伸びEy(%)を加熱前、および150℃のオーブンに入れて加熱を開始して一定時間経過ごとに測定して、式(2):
【0118】
【数3】

【0119】
によって伸び変化率(%)を求め、その推移をプロットした。
また従来例1のブチルゴム配合のゴム組成物からなる試験片では引張試験をしても降伏点が現れないので、代わって切断時伸びEb(%)を同様に一定時間経過ごとに測定して、前記式(2)と同様の計算によって伸び変化率(%)を求め、その推移をプロットした。結果を図4に示す。図4中の−○−○−が試験例7−2、−■−■−が従来例1の結果である。
【0120】
図4より、従来例1のゴム組成物からなる架橋物では、伸び変化率の増加が大きいのに対し、本発明にかかる試験例7−2のゴム組成物からなる架橋物では前記増加を小さくできることが判った。
【符号の説明】
【0121】
1 電解コンデンサ
2 コンデンサ素子
3 外装ケース
4 封口体
5 かしめ部
6 開口縁部
7 電極タブ
8 リード
9 通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン変性エチレン・プロピレン系ゴム、
前記シリコーン変性エチレン・プロピレン系ゴム100質量部あたり30質量部以上、80質量部以下の、平均粒径が10μm以上、120μm以下で、かつアスペクト比が20以上、70以下である鱗片状粉末、
前記鱗片状粉末100質量部あたり1質量部以上、4質量部以下のシランカップリング剤、および
前記シリコーン変性エチレン・プロピレン系ゴム100質量部あたり5質量部以上、20質量部以下のカーボンブラック、
を含有することを特徴とする高耐熱ゴム組成物。
【請求項2】
前記鱗片状粉末は、マイカ粉末である請求項1に記載の高耐熱ゴム組成物。
【請求項3】
前記シランカップリング剤は、メタクリル系シランカップリング剤である請求項1または2に記載の高耐熱ゴム組成物。
【請求項4】
前記カーボンブラックは、ヨウ素吸着量40g/kg以下、DBP吸油量60ml/100g以下のカーボンブラックである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の高耐熱ゴム組成物。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の高耐熱ゴム組成物からなることを特徴とする電解コンデンサ用封口体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−207976(P2011−207976A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75889(P2010−75889)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】