説明

高負荷性を有する直線溶接継目及びその形成方法

【課題】高負荷性を有する直線溶接継目及びその形成方法を提供する。
【解決手段】少なくとも2つの構成要素の間に耐久接合部を形成するために直線溶接継目の耐荷重能力を特に増すための方法において、溶接継目破壊が最も高い確率で生じる位置において、接続線の接線が15°以上の角度を有するように、不連続部が溶接継目内に導入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1及び3の前段部分に記載の高負荷性又は強靱性を有する直線溶接継目及びその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
少なくとも2つの構成要素の間に耐久接合部を形成するために、スポット溶接継目の負荷性又は強靭性を増大させるため、スポット溶接継目を直線的に長くすること、すなわち、溶接部の長さを30mm以上延在させることが知られている。しかし、このような直線溶接継目は高負荷に耐えることができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、高負荷に耐えることができる直線溶接継目及びその形成方法の提供に関する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によって提供される方法に関しては、請求項1の特徴部分に規定され、また溶接継目に関しては、請求項3に規定される。その他の請求項は、本発明の方法の有利な実施形態及びさらなる発展形態(請求項2)及び溶接継目の有利な実施形態及びさらなる発展形態(請求項4)を含む。
【0005】
少なくとも2つの構成要素の間に耐久接合部を形成するために直線状溶接継目の耐荷重能力又は強靱性の増大を目標とするために提供される方法に関して、本発明の目的は、溶接継目破断が最も高い確率で生じる位置が決定されることと、また不連続部と主溶接継目の主軸線との交差部の接線が15°以上の角度(交差角度)を有するように、この決定された位置において不連続部が溶接継目に導入される本発明によって、解決される。
【0006】
本発明において、少なくとも2つの構成要素の間の接続線は、一方で主溶接継目と、他方で構成要素の耐久接合部を形成するための不連続部との間の交差角度として画定される。
【0007】
継目破断が最も高い確率で生じる位置は経験的に決定できるか、あるいは公知の方法によって直線溶接継目の予想負荷状態のシミュレーション(例えば、FEM構造計算に基づく負荷及び制動シミュレーション)によって決定できる。
【0008】
予想される負荷の種類及び直線溶接継目の構造に応じて、継目破断が最も高い確率で生じる位置は、継目延進の中央とまさに同様に溶接継目の端部に生じ得ることが確認されている。その結果、予想される負荷及び直線溶接継目の構造の種類に応じて、不連続部が溶接継目端部か、あるいは溶接継目の延長部に沿った所定の点のいずれかに導入される。
【0009】
驚くべきことに、接合部の耐荷重能力の顕著な増加を保証するために、接続線の接線は互いに垂直である必要がないことが確認されている。15°の角度でも、耐荷重能力の大きな増加が生じるが、45°よりも大きな角度であるとより効果的である。
【0010】
本発明の方法の有利な一実施形態では、不連続部は第1の溶接継目に対して角度付けられて設けられた第2の溶接継目の形態で形成され、この場合、時間及び制御技術の観点から、両方が1つの連続的移動で溶接される場合に特に有利である。さらにまた、両方の溶接継目を互いに時間と無関係に形成することができ、この場合、時間的シーケンスは重要ではない。
【0011】
第2の溶接継目は、第1の溶接継目の幅の少なくとも3倍の長さを有することが好ましい。
【0012】
驚くべきことに、接合部の耐荷重能力の顕著な増加を付与するために、前記溶接継目同士は対称軸線を有する必要がなく、また交差する必要がないことが確認されている。2つの溶接継目の接続線の一方側に15°の傾きを有する場合も、耐荷重能力の本質的な増大を容易にもたらす、ということである。
【0013】
本発明の方法の有利な一実施形態では、溶接継目はレーザビームを用いる溶接によって形成され、これによって、耐久接続部を高精度で非常に迅速に形成できる。また他の種類の溶接、例えば抵抗溶接も同様に利用可能である。
【0014】
スキャナ装置によってレーザビームが表面にわたって移動される場合は、特に有利となる。スキャナ装置は、特に急速かつフレキシブルなビーム偏向装置、例えば(少なくとも1つの単軸又は多軸の制御可能な旋回可能ミラーの)ミラーシステム、あるいはその他の音響光学変調器である。これによって、不連続部の導入中のレーザビームの再配置に必要な時間はほぼ完全になくなる。それにより、レーザシステムの高効率の利用が可能になる。
【0015】
本発明の方法のその他の有利な一実施形態では、不連続部は、第2の接合接続部の形態で形成され、好ましくは変形又は再形成によって、例えばクリンチング、リベット打ち又は継目クリンチングによって得られ、この場合、2つの構成要素の接続線は溶接継目の接続線に対し角度を付けて設けられる。好ましくは、最初に不連続部が形成され、その後に溶接継目が不連続部まで、又はその上方に施される。
【0016】
次に、6つの実施形態及びそれに関連する図に基づき、本発明の方法及び溶接継目についてより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
第1の実施形態によれば、より長期間にわたって、互いに接合される多数のそれぞれ2つの鋼板が、レーザスキャナによって20mmの長さの直線溶接継目によって接合され、また溶接継目に破壊が生じるまで、一連の様々な荷重をそれぞれ受ける。溶接継目破壊の進行が観測され、また溶接継目の破損の開始位置がそれぞれ決定される。統計的評価手段によって、最も頻繁に生じる位置が決定される。この位置は、溶接継目破損が最も高い確率で生じる経験的に決定される位置であるとみなされる。
【0018】
第1の実施形態によれば、溶接継目の一方の端部が、溶接継目破損が最も高い確率で生じる位置であると決定される。
【0019】
互いに接合される2つの同様の鋼板が、レーザスキャナによって20mmの長さの同一の溶接継目によって接合され、この場合、溶接継目の破損の最大の危険を有する端部で、1回の連続的移動によりレーザスキャナが移動されて、接続線の接線が約45°の角度を有するように長さ5mmの第2のレーザ溶接継目を形成する。2つのレーザ溶接継目の接続線の形状が図1に示されている。
【0020】
本発明による不連続部を有するこのような直線溶接継目は、30%以上の耐荷重能力の増加を示す。
【0021】
第2の実施形態によれば、強い振動を受ける2つの湾曲した構成要素を接合する500mmの長さの溶接継目の不具合又は破損が決定される。この場合、破損は溶接継目の延在部の中央で始まる。
【0022】
除去は、図2に従って、溶接された対称な不連続部の導入によって行われ、この不連続部は、破損の危険を有する点において元の溶接継目に交差する。溶接継目の耐荷重能力は、図3による溶接された対称な不連続部の導入によってさらに高められ、この不連続部は破損の危険のある点で元の溶接継目に2回交差する。同様に頑丈なのは、図4による交差部のない破損の危険にある点で溶接された対称な不連続部を有する溶接継目である。幾分より弱いのは、図5による破壊の危険にある点に簡単な交差箇所を有する溶接された非対称な不連続部を有する溶接継目である。
【0023】
強い振動を受ける2つの湾曲した構成要素を含む第6の実施形態によれば、最初に、破損の危険にある点がクリンチされ、次に、直線溶接継目が図6に示したように該点の上方に通過させられる。
【0024】
本発明の溶接継目及びその形成のための方法は、少なくとも時折強力な荷重を受ける構成要素間の従来の接合部を形成するために、特に振動負荷を受ける例えば車体板金のような鋼板のレーザ溶接のために特に適するものとして、上述の実施形態に明示される。
【0025】
本発明によれば、耐荷重能力に関する本質的な利点又は改良を達成することができる。このことにより、部分的な、重量の低減ならびに空間及び費用の節減がもたらされる。
【0026】
本発明は、上述の実施形態に限定されず、さらに広範囲に適用することができる。
【0027】
したがって、直線溶接継目の破壊の危険のある異なる位置に多数の不連続部を設けることも考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】溶接継目に溶接された非対称な不連続部の図である。
【図2】溶接継目に沿って破損の危険があると予測される点における簡単な交差箇所を有する溶接継目の対称な不連続部の図である。
【図3】二重交差部を有する溶接継目に沿って破損の危険があると予測される点で溶接された二重交差部を有する対称な不連続部の図である。
【図4】溶接継目に沿って破損の危険があると予測される点の周りに溶接された交差部のない非対称な不連続部の図である。
【図5】溶接継目に沿って破損の危険があると予測される点における溶接継目に溶接された簡単な交差部を有する非対称な不連続部の図である。
【図6】溶接継目に沿って破損の危険があると予測される点における溶接継目にクリンチされた非対称な不連続部の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの構成要素の間に耐久接合部を形成するために直線溶接継目の耐荷重能力を特に増すための方法において、溶接継目破壊が最も高い確率で生じる位置が前記溶接継目に沿って決定されることと、前記位置において、接続線の接線が15°以上の角度を有するように、不連続部が前記溶接継目内に導入されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記不連続部が、
前記第1の溶接継目に対して角度付けられた第2の溶接継目であって、好ましくは前記第1の溶接継目及び前記第2の溶接継目の両方が連続的移動で溶接される、第2の溶接継目、
又は
第2の接合接続部、好ましくはクリンチ接続部であって、該接続部の接続線が前記溶接継目の主軸線に対して角度付けられる第2の接合接続部、
の形態で形成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも2つの構成要素の間に耐久接合部を形成するために耐荷重能力を増した直線溶接継目において、接続線の接線が15°以上の角度を有するように、前記溶接継目が溶接継目破壊が最も高い確率で生じる位置に不連続部を有することを特徴とする直線溶接継目。
【請求項4】
前記不連続部が、
前記第1の溶接継目に対して角度付けられて設けられた第2の溶接継目、
又は
第2の接合接続部、好ましくはクリンチ接続部であって、該接続部の接続線が前記溶接継目の主軸線に対して角度付けられる第2の接合接続部、
の形態で存在することを特徴とする、請求項3に記載の直線溶接継目。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−150441(P2006−150441A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−269903(P2005−269903)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(598051819)ダイムラークライスラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【Fターム(参考)】